Coolier - 新生・東方創想話

チョコ菓子味の誘惑

2013/11/11 20:17:44
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いつからだったか、どうやら私、霧雨魔理沙は七色の人形使いことアリス・マーガトロイドに恋をしているらしかった。
少し前までは会うたびにいがみ合っては弾幕ごっこをしていただけで、嫌なヤツ、くらいの印象だったのに、こんな感情を抱くなんて思ってもみなかった。
多分きっかけはあの、夜が終わらなくなった異変のときだろう。
あの時はアリスの足を引っ張らないように必死で、そんな自分が情けなかったから、アリスから魔法のコツを盗んでやろうって考えてたんだっけ。
アリスに弾幕ごっこを吹っ掛けたり、アリスの家に上がりこんで本を読ませてもらったりとか、色々としてみた。
その度にアリスは、口では嫌味を言ってくるけどなんだかんだで世話を焼いてくれた。
初めて家に上がったときに普通にお茶を出してくれたから驚いたのを覚えている。
少ししたら私の思惑もばれてきて、直接魔法を教わることも出てきた。
あいつ、教えるのがうまいんだよな。自分で作った魔法だから熟知してるってことかな。
まあ、とにかく、そんなことをしている内に、気づいたら好きになってたんだ。
とはいえ、この気持ちを伝える気はまだ無い。というかそうする勇気が無い。
せっかくそれなりに親しい関係になったのにそんなことをして拒まれたら、と思うだけでどうしても尻込みしてしまう。
しかもそれを知ってか知らずか、アリスはたまに私を誘うような真似をしてくる。
きわどい格好をしてきたり、間接キスしてきたり、箒に二人乗りしてる最中に胸を押し付けられた時は、墜落しないようにするのに必死だった。
あいつは冗談か何かのつもりでやってるんだろうけど、私としては気が気じゃない。

ふと、私はアリスのことばかり考えてるな、と自覚した。
今アリスの家に向かっている真っ最中、って言うのもあるとは思うけど。
ちなみにいつも勝手に上がってるようなものなのにお菓子やら何やらを作って振舞ってもらうのも気が引けたので、今日は人里で偶然安売りしてたお菓子を買ってきてる。
自分で作れれば、とも思ったけど私はお菓子とかそういうのの作り方は全くわからない。
アリスは何でもできて羨ましいなぁ、と思ったところで、またアリスのことを考えてるじゃないか、と気づく。
…アリスの家に着くまでこの顔の火照りは消えてくれるだろうか。


アリスの家の前に着いた。
何とか平静を保つことにも成功したので、とりあえず入らせてもらおうかな。
コンコン、とノックをして
「おーい、アリスー?いるかー?」
「はいはい、今行くからちょっと待っててー。」
声をかけたらすぐに返事が返ってきた。
少ししたらドアが開き、中ではアリスが手招きしていた。
「さ、入って入って。」
「おう、お邪魔させてもらうぜ。」
アリスの家に上がって、二人でリビングまで向かう。
いつ見ても片付いている。私の家とは大違いだな。
「じゃ、お茶入れないとね。上海ー、手伝ってー。」
「あ、そうそう、今日はお菓子を買ってきたんだ。」
「あら、珍しい。どうしたの?」
「いや、いつもお菓子とかいろいろ振舞ってもらって悪いじゃないか。だから、さ。」
そんなの気にしなくていいのに、とアリスは言っているがそうもいかない。
「気にするよ。出来れば手作りのにしたかったけど、私はお菓子とか作れないし。」
「それこそ気にしなくていいわよ。それに、魔理沙が作ったのなら多少下手でも食べてあげるわよ?」
「それはプライドとかいろいろと駄目になりそうだからやめておくよ。」
「そう。なら、私が教えてあげるわよ?」
「いいのか?」
「それくらいなら構わないわ。」
願っても無い話だ。アリスと一緒にいるいい口実にもなる。
「じゃ、今度お願いするぜ。」
心の中では小躍りでもしたいところだが、あくまで平静を保って返事をする。
さて、と。今日も本でも読ませてもらおうかな。


何時ものように取るに足らない雑談をしながら本を読んだり魔法の練習とかをしていて、ふと私が買ってきたお菓子のことを思い出した。
「アリスー、そろそろこれ食べようぜー。」
お菓子の箱を指し示して言うと、
「わかったわ。じゃあ、お茶入れるわね。」
と返事をして、アリスは紅茶を新しく入れ始めた。
特にすることもないのでお菓子の箱を眺めてみる。
ただ安売りしてたから買っただけだったけど、なかなか美味しそう。
何やら外の世界のお菓子をもとに作られたらしい。
棒状のスナック菓子に持つ部分を除いてチョコがかけられている。
箱に書かれているpocky、というのは名前か。ポッキーって読むのかな?
「魔理沙、お茶入ったから食べましょ。」
「おう、そうだな。」
箱をあけ、中にある袋も開けて、中身をお皿の上に出していく。
箱に書いてある通りの見た目をしている。いや、当然だが。
「じゃあ、食べるか。いただきます、と。」
「私も食べてみるわ。いただきます。」
ポキ、ポキ、という小気味良い食感とともに、チョコの甘い味が入ってくる。美味しい。
「ん、うまいなこれ。」
「そうね。結構美味しいかも。」
アリスが作ったお菓子のほうがおいしい、とは思ったが口には出さないでおく。
さすがにそんなことを言う勇気はない。
いくらかこのお菓子の感想を言ったりしながら食べ進めていく。
お菓子とかを食べてるアリスも綺麗だよなー、とか考えながらぼーっと眺めていたら、残りはかなり少なくなっていた。というか一本しかない。
やばいやばい、私ぜんぜん食べてない気がする。
そのラスト一本もアリスの手にある。
「うわあああ、アリス、待って!ストップ!」
「ふぇ?」
時すでに遅し。アリスはポッキーを食べ始めてしまった。
「あぁ、間に合わなかった…。」
「ど、どうしたの、魔理沙?」
「いや、私ポッキーぼーっとしててあんまり食べてなかったから…。」
「ああ、やけに食べるペースが遅いと思ったら。どうしたの?何か悩みでもある?」
「い、いや、特にないぜ。」
まさかアリスが食べてるところに見とれてたとか言えるわけがない。
「んー、なら、さ。」
アリスは食べかけのポッキーの先を咥えて私に突き出してきた。
「ん。」
「え?…ええぇ!?」
え、何?これを食べろと?そういうことなんですかアリスさん?
いやでもその食べさせ方はどうなんですか。色々と危ないでしょ、ねぇ?
やばい、完璧にパニックだ。何だって急に。
「ふぉふぁ、ふぉうひふぁふぉ?ふぁふぇふぇふぃいほふぉ?(ほら、どうしたの?食べていいのよ?)」
ポッキーを咥えたまましゃべるアリス。いやいや、だからってその格好は…。
目を閉じてさ、こう、色っぽいというか、そういう表情までして。
これはいつもみたいなそういうからかいなのか?ちょっと辛抱できなそうなんだけど。
……えぇい、こうなったら!
私はアリスに突きつけられているポッキーを咥え、思いっきり折った。
そしてポッキーを飲み下し、文句を言ってやる。
「ちょっとアリス!冗談にしてもやりすぎだぜ!」
「…むぅ。」
アリスのほうを見ると、ものすごく不機嫌な顔をしている。
「…文句を言いたいのは私のほうよ。」
「え?」
「私がこういうことをしても、いつも真っ赤になるだけで何もしてくれないじゃない。嫌なら嫌ってはっきり言ってよ。そうじゃないなら少しくらい乗ってくれたっていいでしょ。」
「え、ええ?どど、どういうことなんだぜ?」
「あんたは冗談だと思ってるみたいだけど、私は本気でやってるんだからね?」
ちょっと待った、つまり、アリスが私を誘惑するようなことをするのが本気ってことは…え……っと、まさか、そういうことな訳か?
「ねぇ、魔理沙、ちゃんと答えてよ。やっぱり嫌なの?」
「……嫌、じゃない…ぜ……。」
「……本当に?」
「ああ。……だって私は、」
待て私、言ってしまっていいのか?
心のどこかで私を止める声がする。……でも。
ここで言わなかったら二度とこんな機会は来ない、そんな予感がしたから。
………だから。
「私は、アリスのことが、好きだから。」
「……嘘、だ。」
「嘘じゃない。怖かったんだよ。手を出して止められなくなって……それで嫌われるのが。」
「ねぇ……なら……。」
いつの間にか手に持っていたポッキーを見せながら言う。
「もう一回、ちゃんと……して?」
「う、うん……ってあれ?さっきのが最後じゃなかったか?」
「ごめんね、いくらか隠してたの。早くやってみたかったから。」
「おいおい。……まあいいよ。じゃあ……するぞ」
「うん……。」
アリスがさっきのようにポッキーを咥え、目を閉じる。
でも、アリスの顔はさっきと比べ物にならないほど真っ赤になっている。
私も顔が今までにないくらい熱くなっているのを感じる。
私はアリスが咥えているポッキーを食べ始める。
さっきと違い、折るような真似をせずに食べ進めていく。
少しずつアリスに近づいていき、私も目を閉じる。
「ん……」
「んぅ……」
唇に触れるやわらかい感触。きっとこれは、アリスの唇だろう。
口の中で溶けているチョコも相まって、とても甘く感じた。
――――どれだけの間、唇を重ねていただろうか。
ポッキーなんてもう影も形も残っていない。
とても長い時間に思えたキスは、実際は数秒ほどだったのかもしれない。
「んぁ……はぁ……はぁ……。」
「ぷは……っ……んはぁ……。」
アリスと私の唇が離れる。名残惜しかったけど、息も苦しくなってたし仕方ない。
「なあ……アリス……。」
「……なぁに……?。」
「返事……ちゃんと聞かせてくれないか…?」
「……言わなくてももうわかってるでしょ?」
「でも、アリスの言葉で聞きたいんだ。」
「うん。魔理沙……。私も、あなたのことが大好き。愛してる。」
「ああ。私もだぜ。アリス。愛してる。」
二人で愛の言葉を囁き合い、もう一度唇を重ねた。



私とアリスが恋人同士になってから、私は毎日のようにアリスの家に来ている。
今日はアリスにお菓子作りを教えてもらうことになっている。
「うー、なんだかうまく出来そうな気がしないぜ…。」
「大丈夫よ、あんた何だかんだ言って料理は上手なんだから。」
「和食限定だぜ。それにずっと作ってて、まだやっと慣れてきたぐらいなんだぜ?」
「そう謙遜しないの。和食ってすごく難しいのよ?魔理沙は十分上手いって。」
「……で、今日は何を作る予定なんだ?」
「そうねぇ…まあ初めてだし、クッキーとかでいいんじゃないかしら?」
「わかった。がんばってみるぜ。」

アリスに作り方を教わり、悪戦苦闘しながら何とか作っていく。
出来上がったのは、少し形が崩れた不恰好なのが混ざった、星型とハート型のクッキー。
初めてにしてはよく出来たほうなのではないだろうか。
――――二人で作ったお菓子と紅茶を食べながらアリスと笑いあう。
そんな幸せな時間が、永遠に続くことを私は祈っている。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
本日は11月11日、ポッキーの日ということで、それにちなんだネタで書いてみました。
初投稿なので、展開が急だったり文章が拙かったりするところが多々あると思いますが、少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。
しがない名無し
[email protected]
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コメント



0.370簡易評価
1.100非現実世界に棲む者削除
いやいや充分に甘かったですよ。ええマリアリ好きな私にはたまりませんでしたよ。
強いて言うならばもうちょいボリュームがあってもいいかなということぐらい。
私も二人の恋話(?)を題材にした作品を投稿する予定なので、少し参考にさせていただきます。
良い作品でした。
これからも頑張ってください。
2.90奇声を発する程度の能力削除
甘くて良いお話でした
3.90名前が無い程度の能力削除
二人は幸せなキスをして終了
9.100名前が無い程度の能力削除
甘すぎるぜ!
10.90名前が無い程度の能力削除
うん、何年経ってもこの二人のコンビは色褪せないね。
マリアリでもアリマリでもどっちでも美味しくいただけるので尚更だ。
12.100名前が無い程度の能力削除
甘いっ!
積極的なアリスも良いものですねぇ