Coolier - 新生・東方創想話

妖夢「熊さんって食べられるんですか、幽々子様?」

2010/08/09 14:54:55
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夏の白玉楼。
桜の木は青い葉を茂らせている。
私、魂魄妖夢はいつものように庭園の手入れを終わらせたところであった。

「やっと終わった……」

私はふぅ、と軽く安堵のため息をつく。

「花の咲いた桜の木もきれいだけど、葉っぱだけの桜の木もきれいだなぁ……」

桜に目をやって私は呟いた。
葉っぱだけになった桜の木を見ると夏が来たんだなぁ、と感じさせられる。
そこで改めて私はあることに気づいた。

「それにしても暑いなぁ……夏だから当たり前なのだけれど」

そう言いながら額の汗を拭う。
仕事に集中している間はあまり気にはならなかったけど、今日はまた一段と暑い気がする。
とりあえず仕事も終わったことだし暑い庭からはさっさと退散しよう。

「家に上がってゆっくりと冷たい麦茶でも飲もう……ちょうど喉も渇いたことだし」

私はそう言って台所へと向かった。


「んぐんぐ……ふぅ、生き返ったぁ!」

麦茶を一気に飲み干した私は一人でそう叫んでいた。
こんなに暑い日には冷たい麦茶が一番だ。

「そうだ、幽々子様にも持っていこう」

幽々子様も喉が渇いていると思うしね。
私は麦茶をコップについで、お盆に載せて居間へと向かった。
居間へと向かう廊下を歩いていると居間のほうから幽々子様の声がした。

「ねぇ、紫、これおいしいの?」
「もちろんよ。少し食べてみたけれどものすごくおいしかったわ」

紫様もいるようだ。
話の内容から察するに紫様がまた何か食べ物を持ってきたみたい。
しばらく二人にさせておいたほうがよさそう。
いきなり出て行って二人の話に水を差すのもどうかと思うしね。

「へぇー。で、これには何か名前はあるのかしら?」
「もちろんあるわよ。確か……『白熊』って名前だったわね」

私が別の部屋に行こうとしたとき、二人はそう話し始めた。
白熊……?
熊って言うと森に住んでいる大きな動物の熊さんよね?
でも白い熊さんってなんだろう?
少し気になった私は失礼だとは思ったけど、外で盗み聞きすることにした。

「熊って森とか山に住んでいるあれの事?」
「そうねぇ……そうだとは思うけど……」
「外の世界には白い熊なんているのねぇ……」

幽々子様は感心したような声を出した。
どうやら白い熊は外の世界に生息しているらしい。
外の世界って凄いんだなぁ……

「あ、よく見ると可愛い顔をしているわね」
「そうね。ちょっと食べるのが惜しいくらいよね」

か、可愛いの!?
ちょっと見てみたいかも……
実は熊さんのぬいぐるみとか持っていたり……あ、いや、今のは聞き流してください!

「でも食べ物に情なんて移していたらこの世のものは全部食べられなくなるわよね」
「まぁ、そうよねぇ」
「という訳で私はガブリといくことにするわ」

ちょ、幽々子様……
確かにそうですけれど……
あなたは何も罪もない可愛い動物を食べる気なんですか!?

「で、これはどうやって食べるのかしら?」
「これはスプーンでこうやってすくって……」

紫様、さらっと酷いこと言いましたよね!?
その熊さんが生きているのか死んでいるのかは分かりませんけど、
動物をスプーンですくって食べるってどんな食べ方ですか!?
……なんかその様子を想像したら吐き気がしてきた。

「それにしても……流石の私でもこんなにたくさんは食べ切れないかもしれないわねぇ」
「何言ってるのよ。あなたならこれくらい朝飯前でしょう?
 それにこれだけじゃなくて、まだたくさんあるんだから」
「一つだけでもよかったのに」
「あなた、絶対一つじゃ満足しないでしょう?」

そう言って紫様はふふふ、と笑った。
まだたくさんあるんだ……
つまり幽々子様一人のために何匹もの熊さんが犠牲に……
外の人って怖い……可愛い熊さんまで食べちゃうなんて……

「それじゃあ頂こうかしら?」
「そうね、それじゃあ私も……」
「あ、妖夢にも食べさせてあげないと」

わ、私ですか!?
激しく遠慮したいんですが!
私には可愛い熊さんをスプーンで抉り取って食べるなんて出来ません……!

「それもそうね。幽々子、それじゃあ妖夢を呼んで来てくれるかしら?」
「もちろんよ。彼女、こういうもの好きそうだしね。おいしいおいしいって言って食べるわよ」

いえ、大嫌いです。
というかこの話聞いたおかげでしばらく肉が食べられなくなりそうです。
私が二人の話に震えていると障子がガラッ、と音を立てて開いた。

「あら、妖夢じゃない。こんなところで何をしてるの?」
「ゆ、幽々子様……!」
「今紫がおいしいものを持ってきてくれてねぇ。一緒に食べる?」

いつもと変わらない優しい笑顔だったけど、
この時ばかりは幽々子様の天使のような笑顔が悪魔の微笑みに見えてしまった。

「い、いや……え、遠慮しておきます……」
「そんなこと言わないで。あなたが好きそうなものよ?」
「ちょ、ちょっと、引っ張らないでください……や、やめてぇええええ!」

幽々子様に引っ張られながら私はただ叫んだ。
あぁ、この先にはどんな光景が待ち構えているのだろうか……
私は心の中で泣きながら部屋に入った。
……って、あれ?
熊さんは?
卓袱台に目をやると……
そこには大きな白いカキ氷が。

「白熊って言う食べ物らしいわよ」
「……え?」
「たまたま外に行ったときにおいしそうだったから買ってきたのよ」

そう微笑む紫様。

「え、えええええええ!?」
「ど、どうしたの、妖夢?」

いきなり叫んだ私に幽々子様も紫様も驚いていた。
ふふふ……なんだ、白熊って……これのことかぁ!
可笑しくなった私は思いっきり笑った。


「まったく、失礼ね。私たちがそんな極悪非道に見えるのかしら?」
「い、いや、幽々子様なら食べかねないかなぁ、とは思いました……」
「ふふ、その通りね。幽々子なら熊ぐらいなら食べてしまいそうよねぇ」
「むー、流石にそれはないわよ……」

私達は紫様の持ってきた白熊を食べながら談笑していた。
白熊は……甘くて、冷たくて、とてもおいしかった。。
ふんわりとした氷とトロリとした練乳、色とりどりの果物の組み合わせがなんともいえない。
外の世界にはこんなにおいしいものがあるのかと感心してしまったくらいだ。

「それにしてもそんな想像をした妖夢も凄いわよねぇ」
「いや、話だけ聞いたらそう思っちゃいますって!」
「まぁ、そうよね。私も最初『外の人って熊を食べるのね』って思ってしまったもの」
「熊さんを食べるなんて……私には出来ません!」

私がそう叫ぶと二人は固まってしまった。
……あれ? なんか私、変なこと言った?

「ぷっ、あはははは! く、熊さんだって……!」
「ゆ、紫様!?」
「いや、妖夢の口から熊さんなんて単語が聞けたから……可笑しくって!」
「そういえば妖夢の部屋には熊のぬいぐるみが何個かあったわねぇ。
 確か森の人形遣いにくださいとせがんだとか……」
「ゆ、幽々子様、それは言わないでくださいよぉ!」

私は真っ赤になって幽々子様の口を押さえたが、時既に遅し。

「い、意外と可愛い物好きなのね、妖夢……ぷっ、くくく……」
「わ、笑わないでくださいー!」

真っ赤になった顔でそう叫ぶ。
し、知られてしまった、私の秘密が……
いや、これはまだいいけどあれだけは知られるわけには……

「そうそう、実は妖夢はぬいぐるみに名前をつけて一緒に寝てるのよー」

言われてしまった!

「あっはははは! それ本当!? これは面白いことを聞いたわー!」
「もういいです……好きなだけ笑ってください……」
「でもそんな妖夢も私は可愛いと思うわよ?」

幽々子様はそうフォローしてくれたが、秘密を知られてしまった私には何の効果もなかった。


こうして紫様の持ってきた白熊によって私の秘密は幻想郷中に広まってしまったのだった。
はぁ……白熊はおいしかったのだけれど……
おいしいものを食べた代償がこれとは……
納得がいきませんよ……
幽々子様は幽々子様でまた食べさせろといって私を困らせてくれますし……
うぅ、私って本当についてないなぁ……

おわり
勢いで書いた、反省はしている……orz
ものすごく久しぶりにギャグを書いた気がしますね。
ちなみに次回は久々に百合物を書こうと思います。
キャラは……まぁご期待くださいw

それにしても白熊って知っている人どのくらいいるんですかね?
東京に行った鹿児島人が
「あー、こんな暑い日には白熊食べたいなー」
と言ったところ、
「え!? 鹿児島の人って白熊(肉的な意味で)食べるの!?」
……と、東京の人に驚かれたエピソードがあるらしいです。
今回の話はそのエピソードを元にしてみました。
ゆゆ様なら本当に熊一頭を食べきってしまいそうですけどねw
関係ないけど白熊はおいしいですよw
あ、ちなみに作中の「可愛い顔」というのは
白熊のフルーツの飾り付け方が白熊の顔のように見えるからということからきています。

前回に引き続き、私事ですがtwitterをしていますので、興味のある方はどうぞ。
双角、soukaku118で出ると思います。

それではお目汚し失礼いたしました。
双角
[email protected]
http://blogs.yahoo.co.jp/soukaku118
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コメント



0.1180簡易評価
2.70名前が無い程度の能力削除
ガチガチでないしろくまとは……解せぬ。
まあコンビニで普通に売ってますけどね。
5.90名前が無い程度の能力削除
おいしいよねあれ
8.90名前が無い程度の能力削除
そんなエサに釣られクマー

ちょっと白熊買ってくる
9.80ワレモノ中尉削除
白熊は食べたことないんだよなあ。甘いものが好きなので、いつかは食べてみたい。
さらりと読めて、涼しい気分になれるお話でした。
13.80名前が無い程度の能力削除
白熊おいしいですよね、どちらかと言うとガリガリ君派ですが。
でも本当の熊もおいしいですよっ、鍋にすると油のコクがたまりません。
14.無評価双角削除
白熊の元祖といわれる某店で食べた白熊はふわふわで、綿飴のような舌触りでしたw
カップのは大体がガチガチだと思いますよ^^;
っていうか白熊って全国区の食べ物だったんですね・・・
逆にかるかんとかがマイナーそうですw

熊の手は珍味とか言うのを聞いたことがありますね。
熊といえば矢口高雄氏の「マタギ」って漫画が面白かったなぁ・・・って関係ないなこれ^^;

コメントありがとうございます^^
16.90名前が無い程度の能力削除
(´・(ェ)・`)シロクマー
17.100虎姫削除
タグの熊をみて、地底にいる角のある熊かと思ってしまった。
ちょっとお凜に運ばれてきます…
18.70ダイ削除
どうせならブラックモンブランとかにすればいいのに…
19.無評価双角削除
星熊さんwww
その発想はなかったw
そしてブラックモンブランを知っている人がいたとは・・・驚きですw
アレって確か九州辺り限定だったような。

コメント感謝してます!
21.100名前が無い程度の能力削除
え?カップじゃない白熊さんとかあるの?
ふわふわの白熊…ジュルリ
ちなみに自分はガリガリ君派ですけどね。
23.無評価双角削除
白熊の本家ではメニューの一つとして食べられますよ^^
氷は削りたてなのでふわふわですよw
ガリガリ君は自分も好きですねw
詳しくは天文館むじゃきで検索・・・って何故宣伝しているんだろう・・・^^;
24.90終焉皇帝オワタ削除
コンビニにアイスバーの白熊があったようななかったような・・・

汚い空気を排気しろ~
きれいな空気を吸気しろ~
↑ちょっと前のCM
25.無評価双角削除
白熊・・・どれだけ全国に広まっているんだ・・・w
そしてそのCM懐かしいwww
たしかエアコンのCMでしたよね?

コメント感謝です!
28.70名前が無い程度の能力削除
カップ式はベタベタするので、アイスバーの白くまを買うことが多いです。最近は某七十一のコンビニでも見ますね(当方が九州島民だからでしょうか?ミルクックも美味しいですが)。

妖夢が勘違いをしてアタフタする姿が目に浮かびました。しかし話の山がもう少しほしかったです。妖夢の感情や見た風景の細かい描写があると深まったのかもしれません。

しかし、コメント欄の白くまトークに吹きました。ローカルネタもいいですよね。
29.無評価双角削除
自分はバーよりも氷の粒が入っているカップのほうが好きですね。(ただしセイカ製の白熊に限る)
たしかに改めてコメントを見直すと白熊トークになっている・・・

そしてアドバイスありがとうございます。
ほんの些細なことでもアドバイスをもらえるのはとても嬉しいです。
よろしければこれからもよろしくお願いします!
30.100リペヤー削除
そんなアイスに俺がクマー
妖夢が可愛くて良かったですw
白くま買ってこようかなぁ
32.無評価双角削除
可愛い妖夢と言ってくださり、ありがとうございます。
もっともっとキャラをうまく書けるように努力していきます!
もちろん地の文のほうも努力したいですね。
36.90名前が無い程度の能力削除
地下の熊さんを料理しようとする話かと思ってしまったw

白熊か…ガチガチのしか食ったことないな
37.無評価双角削除
地底の星熊さんがまた来た・・・w
コンビニに売ってる白熊って基本的にガチガチなんですよねぇ。

コメントありがとうございます!
38.80蛮天丸削除
白熊は名前だけ知ってましたが、それでもニヤニヤが抑えきれませんでした。
スプーンのくだりが特に。
39.無評価双角削除
白熊・・・有名すぎますね・・・^^;

スプーンのくだりですか。
・・・なるほどw
想像だけすると凄い食べ方ですよね。

コメントありがとうございます!
41.60暗幕係削除
オチが途中で分かってしまったのが痛いところ
一人称の違和感などもありますが、キャラは全体的に生き生きとしていました
42.無評価双角削除
オチ・・・確かに途中で分かってしまいますね・・・
人称も結構ぶれたりしていますし・・・
この点は反省していきたいと思います。

コメントありがとうございます!
46.100名前が無い程度の能力削除
天○館む○ゃき行って食べたくなりましたw
ほのぼのとした雰囲気が良かったです。
52.90ミスターX削除
美鈴「外の世界には熊の手料理というのがありましてですね」
幽々子「じゅるり」