Coolier - 新生・東方創想話

永遠の夜は繰り返されず (完成版)

2012/04/13 20:35:14
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 「輝夜・・・・・・お願いだ!なんでもする!だから・・・・・・だから刻を止めてくれ!」
 
 夜空に浮かぶ月が輝き、妖怪達が最も活発になり始める亥の刻。
 迷いの竹林奥深く、永遠亭で一人の少女の叫びが聞こえた。

 「なんでも・・・・・・ね。いいわよ。その願い、かなえてあげる。汚く、みすぼらしく足掻く姿を私に見せて頂戴」

 その美貌が伝説として語り継がれた月の姫は、永遠に続く夜を作り出す。
 
 今宵の月は満月。200年前の永夜が繰り返されようとしていた。 
 

 ―――――――――――


 同刻、幻想郷内に起こる僅かな変化に気付く4つの陣営があった。
 
 魔法の森に住む 『星の魔法使いと七色の人形遣い』
 冥界の管理人 『半人半霊の庭師と白玉楼の姫』
 結界の術者 『楽園の巫女と境界の妖怪』
 紅き屋敷の支配者 『人間のメイドと紅い悪魔』

 「さすが星の変化に関しては敏感ね、私だけじゃ気づけなかったかも」 「お前に褒められると褒められてる気がしないぜ」
 「妖夢、準備はできてるわね」 「はい、幽々子様。いつでも出向くことはできます」
 「霊夢、異変よ」 「・・・・・・これが、異変なの?初めてのはずなのに懐かしい・・・・・・」
 「・・・・・・ずいぶんと懐かしい夜ね、咲夜」 「そうですわねお嬢様。時間を操るのは私だけで十分ですわ」
 
 永遠亭にて、新たな蓬莱人が誕生するための儀式が行われようとしていた。
 幻想郷、いや世界の法則を乱すその行為を妖怪たちが許すわけはない。

 人間はこんな夜が続いては困る。妖怪たちはこんな夜はあってはならない、と口々に言う。
 永遠の夜が終わらす為にそれぞれの陣営は動き始めた。

 
  ―――それは、一人の蓬莱人が一人の友を救うために起こした、悲しく憐れな異変。

    

      ――――――永遠の夜は繰り返されず――――――











  
 今からおよそ200年前、13代目の博麗神社の巫女、博麗霊夢が亡くなった。
 歴代の巫女と異なり、妖怪にも友好的に関わっていた彼女が亡くなったことは、種族を問わず幻想郷中に瞬く間に知れ渡り、多くのものが悲しんだ。
 
 そして彼女の死は、幻想郷のパワーバランスにも大きな影響を与えた。
 歴代の巫女の中でもずば抜けて強力な能力を持っていたため、それ以降異変を解決できるほどの実力を持つ者が少なくなってしまったのである。
 博麗霊夢が現役であった頃に異変を起こした妖怪が、おいそれと異変を起こせる訳もなく・・・・・・妖怪たちはその多大な時間を持て余していた。

 しかし、それから200年後、博麗神社には新たな風が吹き込んでいた――――――

 「霊夢ー、酒が無くなったぞぉー」
 「あのね、萃香。ここは居酒屋じゃないの。分かる?」
 「そんなの関係ないだろぉー。お酒持ってこーい!」
 「ったく親父かっつうの・・・はいはい今持ってきますよー」

 ――――――境内には新たな博麗の巫女の姿があった。
 彼女の名は博麗霊夢、13代目の巫女と同じ名前の少女であった。

 容姿、性格、能力に至るまで瓜二つであった彼女は、その気質を八雲紫に見抜かれて霊夢と名付けられたのであった。
 
 ・・・・・・そして・・・・・・博麗神社は今までと変わらず、妖怪達のたまり場となっていた。
 人間の参拝客が来ることはなく、かといって妖怪の山を本拠地とする守矢神社のように、妖怪達からの信仰もなく、霊夢は相変わらず貧相な生活を送っていた・・・・・・。
 
 「はい、こんなものしかなかったけど、いいかしら?」
 「おお!ありがとう霊夢!一生感謝するぞぉ!」

 ちなみに今萃香に渡した一升瓶の中身はただの水である。ご神水だとかでもない。
 山の上では水の調達が面倒なため、空の酒瓶に水を入れて、倉庫などにまとめておいてあるのだ。
 それに、昔どこかで聞いた名言で 『良い酒は水に似る』 というものがあった気がするし、まぁ間違ったことはしてないと思うことにする。
 
 「あー、酒はいいよなぁ♪本当にありがとうなぁ霊夢♪」
 「・・・・・・」

 少し・・・・・・罪悪感に囚われる・・・・・・。すぐにそんなものは振り払うが。

 そういえばこの鬼も異変を起こしたことがあったんだっけ、と霊夢は思う。
 13代目の巫女が亡くなってから、異変が起こる頻度はめっきり減ってしまった。
 歴代の博麗の巫女の中でもずば抜けて実力が高かった彼女は、幾度も異変を解決してきた・・・・・・と今代の霊夢は聞かされている。
 それもあってか13代目の巫女の存在は妖怪達の中でも大きく、妖怪達も安心して異変を起こせていたのであったらしい。

 「異変、ねぇ」
 
 誰にも聞こえないぐらいの小さな声で、そっとつぶやく。
 そのつもりだったのだが、この鬼には聞こえていたようだ。

 「そうだ霊夢。私が起こした異変の話を聞かせてやろうか」
 
 しまった、この鬼に限らず妖怪たちの昔話は長い。
 そして萃香の話す昔話はその中でも特に長いのだ。
 いや、何回も聞かされている私からすればそれはもう長いではない。永いに等しい。

 「いや、いいです」
 「まぁ遠慮せずに。あれは250年程前のことでな―――」
 「(また始まった・・・・・・)」
 「―――宴会を頻繁に起こさせて」
 「(これだから年寄りの話は嫌いなのよ・・・)」

 と、考えてから、霊夢は早くも後悔することになる。
 話が長いだけでなく、この鬼は妙に勘が鋭く、余計なこと考えると――――――

 「むぅ・・・今私のこと年寄りだと思ったろう」
 「そういうとこだけは鋭いのね」
 「だてに鬼やってないからね。こんな身なりだけど」
 「鬼なのと勘が鋭いのは関係ない気もするけどね」
 「で、話の続きなんだが―――」
 「(掃除の続きするか・・・・・・)」

 そういえば、私の名前は13代目の巫女と同じらしい。13代目も博麗霊夢、私も博麗霊夢。
 名前を付けたのは、スキマ・・・・・・もとい八雲紫なのだが、色々と話が混ざることがあり、面倒くさい。全く、妖怪の考えることは理解しがたい。
 おかげで人里の人間には私が思ってる以上に信頼されるわ、妖怪達にも期待されるわでたまったものではない。
 私は博麗霊夢という一個人であって13代目の博麗霊夢ではないのに。

 「・・・・・・なぁ霊夢」
 「なぁに萃香」
 「あんたは13代目の霊夢とそっくりだよ」
 「へー、まぁ私も霊夢だからじゃない?」
 「いやそういうことじゃなくて、言動も性格も力も瓜二つさ」
 「ふーん、見たことないし、あんたらの言うそっくりって言うのも買いかぶりじゃないのー?」
 「そーやってひねくれてるところとかそっくりさぁ」

 ひねくれてるのは似ていてもうれしくないのだが、褒め言葉として受け取っておこう。

 「ま・・・・・・ありがと、萃香」

 それにしても、この鬼は本当に勘がいいな。励ましているつもりだろうか?
 その励ましが逆効果になることもあるというのに。・・・・・・とりあえず考えないことにしておく。

 「そうだ萃香、せっかくここに来たんだから、掃除の手伝いもしてくれない?」
 「んー、いいけどー?」
 「あんたの力、掃除にも便利だからね、はい集めて」
 「お酒の提供者には逆らえないよ。ほら」
 
 ほこりや木の葉が一か所に集まる。
 萃香の力、特に『ものを萃める力』は本当に便利だ。・・・・・・主に雑事に。

 「ありがと、萃香」
 「酒をくれるなら、いつでもやってやるさ」

 こうしていつも通りの日常が平和に過ぎていく。
 赤い月が顔をのぞかせることも、異様に長い冬が続くことも、巨大な月が現れることもなく、限られた日々はただただ消費されていく。
 
 今夜までは――――――


 ――――――――――――


 境界の妖怪、八雲紫が博麗神社を訪ねたのは、ちょうど日付が変わった亥の刻過ぎであった。

 「霊夢、起きてる?」
 「・・・・・・なによ・・・・・・こんな夜中に・・・・・・」
 
 結局今日も萃香以外には、魔理沙すらも姿を見せずに、境内の掃除のみで一日が終わってしまった。
 最近は宴会が開かれることもなく、久しぶりにゆっくりと寝ていた頃に来客である。
 しかもこの八雲紫、結構性質が悪い。
以上のことから私の機嫌はかなり悪化していた。

 「用があるなら手短にお願いね・・・・・・私、まだ寝たいのよ」
 「とりあえず、外に出てくれないかしら、話はそれから」
 「・・・・・・?」
 
 寝巻がかなり崩れて胸元も見えているが、今はとにかく早く寝たい。
 早々に帰ってもらうためにとりあえず外に出て周りに目を凝らす・・・・・・のだが・・・・・・。

 「・・・・・・いや、別に何も感じないんだけど」
 「あら?博麗の巫女ともあろうものがこんな単純な変化にも気づけないの?」
 
 うっさいなぁ。こいつの言うことはいちいち皮肉めいてる気がしてイラつく。
 さすがに付き合ってられないと、振り返って寝床に戻ろうとする。

 「まぁ待ちなさい。空を見て、星がきれいでしょ?」
 「空・・・・・・」
 
 空を見る。
 いい天気。雲一つなく星の輝きがよく見える、月も満月で、もし今日がもう少し暖かかったら、酒の一杯でも酌み交わすのに。

 「星の動きをよく見て、しばらくそのまま見ていなさい―――」


 ――――――・・・・・・何も起こらない。
 何かが落ちてきたりしたわけでもない。特別どこかの星が輝いた訳でもない。
 満月はいつも通りにまんまるで、星は普段と変わらずまたたく。
 
 ――――――つまり、そういうことだ。結局またこの妖怪にからかわれただけか。
 なんとなくわかっていながらも従った自分にイラつきを通り越して呆れを感じる。

 「何も起こらないわね。じゃあ私また寝るから。なんかあったら呼んでね」
 「だから少し待ちなさいって」

 早々に会話を切り上げ寝床に戻ろうとしたが、またしてもそれは防がれた。
 まだ何か言うことがあるのか。今日はいつもよりしつこいな。

 「今空を見てて何か気づいたことがあったらいいなさい」
 「別に何も起こらなかったわよ」
 「ええ、何も起こらなかったわね。でも何も起こらないって変じゃない?」
 「・・・・・・?」

 何も起こらない・・・・・・何も起こらない?

 ――――――ああ、なるほど――――――

 紫の言いたいことがわかった。それにしても、神社に近いと結界が邪魔して少し気づきにくい。
 境内の中心の方まで走って少しでも変化を読み取れるようにする。

 もう一度空を見上げ、月や星に目を凝らす。

 「これは・・・時間を操る類の術が働いているのかしら・・・・・・星が全く動いていないわ・・・・・・」
 「ご名答♪このままでは何が起こるか分かるかしら」
 
 以前、阿求の屋敷を訪ね、幻想郷縁起を見たときの記憶を引きずり出す。
 確か、似たような事例があったはず。

 「夜が・・・・・終わらなくなる・・・・・永夜異変のこと?」
 「そうよ。あの時は私たちが夜を止めていたのだけどね」
 「なにさりげなくとんでもないこと言ってんのよ!?そんなこと初耳よ!」

 月を隠していた犯人は永遠亭だが、色々と不明なことが多い永夜異変。
 その真犯人は、まさかの妖怪の賢者であった。

 「はいはい五月蠅いわよ。でもね、多分この永夜はただの余波みたいなものよ。核にはもっと大きな計画があるはず」
 「えっと、ってことは」
 「異変の解決に出かけるわよ霊夢。準備ができたら呼びなさい」

 紫が扇を宙にかざし、スキマを開く。気づいた時にはその中に消え、スキマの跡すらも無くなっていた。
 
 ・・・・・・これが、異変。意識してみると、はっきりと幻想郷内の変化が感じ取れる。
 不思議だ。自然と気分が昂ぶる。さっきまで私を支配していた眠気も吹き飛んでしまった。
 
 異変を解決する、いや、しなければならない。それしか考えることができなくなる。昔何度もこういったことを体験したようだ。
 先代の霊夢もこんな感情を異変の度に抱いていたのだろうか。そんなことすら考える。

 とりあえず・・・この寝巻のまま異変解決に出かけたのでは格好も何もあったものではない
 寝床に戻り、いつも通りの巫女装束に着替える。

 「紫、準備できたわよ」

 さ、異変の解決に出かけましょうか―――――――





――――――――――――





 

 ここ幻想郷は、人間と妖怪がお互いの住む領域を侵さずに共存する地である。

 人間は妖怪を恐れ、また妖怪は人間による報復を恐れ、必要以上の干渉を避けて生活している。
 中には人里を時々訪れては、買い物などをしていく妖怪もいるのだが。
 
 しかし、妖怪と人間、この2つの種族の間に大きな隔たりがあるのはもう一つの要因がある。
 生きる時間、つまり寿命が合わないのである。

 人間である限り肉体の老化には耐えきれず、いずれ朽ち果ててしまう。
 かといって妖怪も不死ではない。
 自然の現象に近いものとはいえ、いずれ誰からも忘れ去られてしまい消え去る。

 過去、人間と友好的な関係を築こうと思った妖怪は少なからず存在した。
 人間が亡くなるたびに彼らは悲しみ、いつしかその悲しみを味わうことに恐怖し、そして人間から離れていったのであった。

 しかし、そのどちらにも属さない種族があった。永遠の時を生きる者、蓬莱人である。
 
 迷いの竹林の案内人、藤原妹紅は後天的な(そもそも先天的なものがいるかどうかも分からないが)蓬莱人である。
 
 寿命がない彼女に、人間にも妖怪にも友ができるはずもなく。一人寂しく彼女は生きてきたのであった。

 しかし妹紅にも、幻想郷に移り住んでから、ある一人の親友ができた。
 人里に住む、半人半妖の教師、上白沢慧音である。
 
 元々人間であるものに後天的に妖怪の性質を持ってしまう例と、生まれつきそれぞれの性質を持つものがいるが、慧音は前者である。
 
 半妖はなんとも悩ましい種族である。
 人間以上、しかし妖怪未満の刻しか生きられず、だれとも同じ時間を生きられない。
 その在り方は、蓬莱人に似ているとも言えるであろう。
 
 そして―――――上白沢慧音も人間の何倍という時間を生き、今宵その命の灯が消え去ろうとしていた。

 妹紅は親友が死にゆく様を見、そして思った。
 『なぜ私の前からみんな消えてしまうのだろう。嫌だ、何をしてでも慧音を死なせたくない』と。
 こうして妹紅は蓬莱の薬を求めて永遠亭までやってきたのであった。
 この1000年悩み続ける原因を作った蓬莱の薬を求めるとは、なんとも皮肉なことである。


 ――――――――――――


 「それで刻を止めるのはいいけど、どうやってあの半妖を救うつもり?」
 「もう一つお願いがあるんだ・・・・・・蓬莱の薬を譲ってくれないか。慧音には時間がない、時間を止めてくれなければ今夜にも消えてしまう。薬が手に入っても服用できなれば意味がないんだ」
 「・・・・・・あなた自分が薬を飲んだこと後悔してなかったっけ。それをあの半妖にも味わさせるの?酷い子ねぇ」
 「・・・・・・頼む」

 畳に手をつき、頭を下げて助けを乞う、それもこの輝夜にだ。屈辱的なこと極まりない。
 だが慧音を救うためならこの程度、なんてことは、ない。
 今の私にとっては、慧音を失う以上に怖いことなんてない。

 「(・・・・・・この子が蓬莱人になった時も少し驚いたけど、まさかこんな姿を私に見せるほどあの半妖を慕っていたとはね)」
 「・・・・・・」
 「少し・・・・・・待っていなさい」
 「!」
 「永琳に蓬莱の薬があるかどうか聞いてくるわ」

 あの性悪な輝夜のことである。こんな姿を見せても、願いを聞き届けてくれる希望なんてほとんどなかった。
 それでも、今は輝夜に頼るほか手段がなかった。
 
 「ありがとう・・・・・・ありがとう輝夜」

 ――――――しばらくして輝夜が件の薬師を連れて、戻ってきた。

 「姫様、本当にいいんですか?この子に蓬莱の薬を渡して」
 「いいわよ。妹紅の珍しい姿も見れたし」
 「そうですか・・・・・・姫様が言うことには逆らえません。それでは」

 永琳に声をかけられる、そういえばこの医者とこうして話をすることになるのは初めてだったかもしれない。
 
 「とりあえず涙を拭きなさい。話はそれから」 

 言われてから急いで頬を拭うと、両目から涙が零れ落ちているのに気付いた。
 土下座のみならず、泣き顔も見られてしまうとは、本当に悔しくてたまらない。自然と顔が紅潮するのが自分でもわかる。
 ただ本当にこれで慧音を救えるんだな。
 そう考えると、いくら拭っても涙があふれてくる。

 「それで、あなたには悪いのだけれどね。はっきり言わせてもらうと、今永遠亭には蓬莱の薬がないの」
 「え」
 「だからあなたには調合材料を持ってきてもらいたいんだけど、その材料も月にしかないものがほとんどなのよ」
 「な!ふざけるな!私がどんな気持ちであんな醜態『落ち着きなさい』~~~っ!」

 月にしかないということはあきらめろと言っているのと同じじゃないか!
 やはり輝夜になんか頼むんじゃなかった。腹の底から沸々と暗い感情が湧き上がってくる。

 「私は月の頭脳と呼ばれた薬師よ」 
 「だからなんだ」
 「代用になるもので薬を調合することも容易いわ」
 「!」
 「この紙に材料を書いてあるわ、どれも取った瞬間からどんどん劣化していくから、なるべく早く持ってきてね。あ、でも姫様の能力が効いてるから大丈夫かしら?」

 永琳の手から奪うように紙を手に取り、それに目を通す。
 そして次の瞬間、硬直した。

 「・・・・・・これ、本当に存在するものなのか」
 「蓬莱の薬自体幻に近いものよ。ある程度伝説に近いもの同士で調合しないとできるわけないでしょう。幸いここは幻想郷、伝説になったものなんて腐るほどあると思うわ」
 
 紙に書かれていたものは、どれも伝承でしか聞いたことのないものばかりだった。
 いくらここが幻想郷とはいえ、集めるのにはかなり時間がかかるだろう。

 だが・・・・・・確かに永琳の言うことも理にかなっている。奇跡を起こすにはそれなりにリスクが必要ということだ。
 それにご丁寧に、それぞれの材料の特徴も書かれている。

 「わかった・・・採ってきてやるよ。だが約束しろ、必ず薬を完成させると」
 「あなたがその紙に書いてあるものを持ってこれるのならね」
 「このぐらいすぐ採ってきてやるさ!待ってろよ!」

 輝夜の永遠を操る術が効いているとはいえ、それもただの時間稼ぎ程度にしかならないだろう。
 時間をかけすぎては博麗の巫女を代表として、永遠亭に異変を解決しに来るものが出てくるだろう。
 それまでに材料を集めてこなければいけない。

 与えられた時間は長くはない、その状況に押し潰されそうになりながらも、妹紅は永遠亭を飛び出す――――――


 ――――――――――――

 
 ――――――妹紅が薬の材料を求め、永遠亭を飛び出した頃、幻想郷の空には一つの影があった。
 
 「ねぇ紫、だれにも会わないわよ」
 「珍しいわね、いつもだったら力を付けた妖怪の一匹や二匹がちょっかい出してくるんだけどね」

 奇妙な光景だった。誰がどう見ても人の姿は一人分だけなのに、聞こえる声は2つあった。 
 話声につられて、異変の影響で好戦的になった妖精が霊夢に突撃してくる。

 「にしてもうっさいわね、普段の妖精ってこんなに好戦的だったかしら?」
 「異変があるとね、こんな風に好戦的になるのよ」

 難なくと妖精達の放った弾幕を避けた霊夢は片手間に弾を放ち、妖精を落とす。

 「ふーん、なにかに当てられてるのかしら」
 「異変の余波を受けている、という感じかしら」

 13代目の巫女が異変を解決している時は、異変の度に何匹か異変に関係ない妖怪が手を出してきたらしい・・・・・・のだが。
 不思議なことに今夜は自分以外何も影が見えない。
 ちなみに紫はスキマにこもって移動している。姿も見せず、今回は私のサポートに徹するようだ。

 「このまま異変の主犯まで着いちゃったりしてね」
 「それはともかく霊夢、どこに向かうか分かっていて?」
 「もちろんよ、私の勘は外れないわ、多分こっちの方よ」
 「・・・・・・・」
 「どうしたの?」
 「もしかして適当に進んでる?」
 「だから私の勘は外れないから大丈夫よ」
 
 博麗の巫女としての勘がこっちに行けと先導する。
 不思議なことに全く外れる気がしない。

 「はぁ・・・全く、200年前を繰り返してるみたいだわ・・・あなたも霊夢だし」
 「?」
 「今回はおそらく永遠亭が主犯よ、ここしばらく大人しくしてたから油断してたわ」

 永遠亭というと竹林の奥の病院(?)か。
 以前あった永夜異変の際に、その存在が幻想郷中に広まったらしいのだが、一度退治されてまだ懲りていないのか。
 しぶとい連中だ。やけに兎が多かった印象の方が強いが。――――――

 ――――――そのまましばらく飛んでいくと、竹林の入り口が見えた。

 「あれ、気が付いたら竹林まで来ちゃったわね」
 「・・・・・・ここまで誰にも会わないと、さすがに怪しいわね。何か結界でも張ってあるのかしら」
 「うーん、特に何か張ってある感じもしないわよ」
 
 確かに紫の言うとおり、人どころか妖怪にも遭遇にもしなかった。
 さすがにここまで来れば誰かに会うのではないかと思っていたが、それらしき気配もない。
 
 「それじゃあ行きましょうか」
 「待ちなさい霊夢」
 「・・・・・・?どうしたの紫」
 「今回の異変に気付いたのは私たちだけじゃないみたいね」
 「?」
 
 この異変の解決に出かけたのは私たちではなかったのか。
 周りに気を配り、振り返って後ろを見る。

 向こうから何か光のようなものが―――――――
 
 「え!嘘!きゃあ!!!」

 ――――――光の点だと思っていた者は急速に大きくなり、こちらに突撃してきた。
 ぶつかる寸前で体を横にずらし、すれすれで回避する。
 ・・・・・・危うく轢かれるところだった。
 
 それにしても早い、ということはあの光は、多分――――――

 
 「――――――魔理沙・・・・・・」
 「おお。霊夢か、久しぶりだな」
 「魔理沙、なんで霊夢がいるのよ、今回は私たちだけが異変解決に出るんじゃなかったの?」
 
 魔理沙だけじゃなくてアリスもいるのか。私も紫と一緒だけど。
 まぁアリスがいるなら話も通じそうだから、少し安心した。

 「あれは嘘だ」
 「まぁなんとなくそんな気はしてたけど」
 「魔理沙、今回は博麗神社が異変を解決させてもらうわ、主に私のお賽銭のためにね」

 ただでさえ収入が少なくて、貧相な生活を送っているのだ。
 異変のようなまとまった収入がはいる好機を逃すわけにはいかない。

 「・・・・・・悪いけどそういうわけにもいかないんだなぁ。今回の異変は霧雨魔法店が解決させていただきます。あとアリスな」
 「真似しないでよ」
 「うっせ」
 
 仕方ない。やはり話し合いで解決はできないようだ。
 
 「紫、強行突破よ。あいつらを落とすわ」
 「そうね。それしかないんだけれど・・・・・・霊夢、あの二人はかなり強いわよ」
 「大丈夫よ、私だけならともかく、今はあなたのサポートも期待できる」
 「確かにそうだけど、あなたは『弾幕ごっこ』の経験はなかったわよね」

 少し心配したように、紫が言う。
 一応修行では何回か実践を想定して練習はしているけど、けどね紫――――――

 「――――――・・・・・・それ、修行で何回も弾を避けさせたあんたが言うこと?紫」
 「修行と勝負じゃ全く勝手が違うわ。しかも今回はタッグになりそうだし」
 
 私の皮肉など全く聞こえていないように紫は話を進める。無視しないでほしい。
 まぁでも・・・・・・・二対二か。
 『弾幕ごっこ』じゃ異質な部類に入るだろうがそれはそれで面白そうだ。

 「いいわよ魔理沙、勝った方が異変解決を続行していいということで」
 「望むところだぜ」

 魔理沙がミニ八卦炉を構え、アリスの人形たちが槍を構える。
  
 「紫、結界で防御お願いできる?」
 「了解よ、ただあまり過信しないでね」

 紫の発言を引き金に、魔理沙達から弾幕が繰り出される。
 いかに相手が強敵であろうと、博麗の巫女としてこちらも負けるわけにはいかない。
 陰陽玉を周りに展開し、札と針を構える。


 迷いの竹林の入り口で、閃光と爆音が轟いた――――――





 

 ――――――――――――






 虹―――魔理沙達の放つ弾幕を表すにはそれだけで十分だった。
 目が眩むほどの八卦炉が放つ無機質な光を、人形たちが七色に染め上げ、竹林を色鮮やかに照らす。
 
 もともと『弾幕ごっこ』―――もとい『命名決闘法』は、その放つ弾幕の美しさによって勝敗を決するものでもある。落とされなければよいという訳でもない。
 決闘が始まってから数分もたたないうちに、既に霊夢達は境地に立たされていた。

 魔理沙の重視する派手さ、そしてアリスの持つ機能美は、霊夢が避けるだけに集中せざるを得ない状況に追い込み――――― 

 「魔符『アーティクルサクリファイス』!」
 「このっ!」

 ―――――スペルカードによる追い討ちを仕掛ける。
 
 アリスが投げた人形から全速力で離れる。―――――瞬間、背後から爆発音と激しい爆風が霊夢を襲った。
 熱風を顔に受け、思わず目を瞑る。そして――――――

 「霊夢!結界!」
 「―――――え」
 
 爆発に気を取られていたほんの数秒、それこそ瞬き程の隙に、周りを人形たちに囲まれていた――――

 「終わりよ」
 「―――――っ!『二重結界』!」 

 結界を展開し、周りの人形たちを一掃する。
 
 先ほどから似たような展開が何度も繰り返されていた。
 追い詰められ、追い討ちされ、消耗させられる。
 今のアリスの弾幕で、肝心のスペルカードも、切り札以外のものは全て使い切ってしまった。
 
 「まさか人形を爆発させるなんてね。結構えぐいのね、あなた」
 「そういうことは勝ってからいいなさい。まぁ勝たせる気なんてさらさらないけどねっ!」
 
 ・・・・・・せめて、態度だけでも余裕があるように見せかける。
 どこか、起死回生の手はないのか。悪い想像ばかり頭を駆け巡っていく。
 
 「・・・・・・・」
 「(さすがに決闘経験なしだと厳しいわね・・・・・・どうするか)」

 確かにただの力なら霊夢は魔理沙やアリス、紫にも匹敵する。
 ならばなぜ今ここでここまで実力が開いたのか・・・。
 経験の差であった。

 数百年もの間『弾幕ごっこ』を繰り返してきた魔理沙やアリスに比べ、霊夢は圧倒的に経験が足りなかった。
 これが数回目ならまだしも、今回の『弾幕ごっこ』は霊夢にとって初めての経験であるのだ。

 「(仕方ない・・・・・・・)霊夢」
 「何よ、紫」
 「分が悪すぎるわ、一度撤退しましょう」
 「・・・・・・仕方ないわね、逃げましょう」  
 
 魔理沙達の隙を見て、竹に身を隠しつつ、竹林の奥へと進んでいく。

 「あっ!待て逃げるな!」
 「仕切り直しよ!」

 まさか相手に背を向ける羽目になるなんてね。あいつら絶対に落としてやる!――――――


 ――――――――――――


 「あ!待て逃げるな!」
 「仕切り直しよ!」

 このまま続けても、ただの消耗戦になるのに気が付いたのか、それとも諦めたのか、霊夢達は竹林の奥へ撤退していった。

 「逃げるなんてあいつらしくないな」
 「そうね・・・・・・ふふっ」

 特に面白いことを言ったつもりはなかったのだが、唐突にアリスが笑った。

 「何笑ってんだ、気色悪い」
 「ああ、ごめんなさい。あなたが昔と変わらないなぁと思ってね」
 「?」
 「そのセリフ、あの時と同じね」
 
 あの時―――永夜異変のことか
 確かに似たようなことを口走ったような気がする。

 「ああ・・・・・・それに、状況が同じだな。私たちが追って、霊夢達が逃げた」
 「そ、だからおかしかったのよ」

 確かにアリスの言うとおり、ここまで状況が似ていると面白い、自然と頬が緩む。
 ――――――だけど、このまま同じになるわけにはいかない。

 「あの時は、私たちが落とされたが、今回はこっちの方が優勢だ。そう易々と負けるわけにはいかない」
 「そうね・・・・・・魔理沙、私のポリシーって知ってるわよね」
 
 いつも余裕ぶった態度、大人びた言動、こいつのポリシーは―――――

 「―――決して本気を出さない、だろ?」
 「ええ、そうよ。でもね、私も久々に昂ぶってきたわ。今夜だけは本気を出してあげる。だから――――――」 

 いつも霊夢には負けてばかりだった。
 あの霊夢は昔の霊夢じゃないけど、この状況は偶然とは思い難い。紫もいるし。
 
 今回勝つことは200年前の勝負に勝つことに等しい。
 
 「―――――わかってるさ。絶対に、勝つ」


 ――――――――――――


 「ねぇ紫、なんか作戦はない?」
 「作戦というか・・・・・・・無駄な動きが多すぎるわ。弾幕の量に圧倒されがちだけど、あれは派手さも兼ねているんだから、そこまで動かなくても避けれる」
 「それができたら苦労はないんだけど」
 「でもね、あなたにできないはずはないのよ、だってあなたは―――――」
 「―――――霊夢、だから?」
 
 妖怪の賢者としての勘、だろうか。紫には、この子が先代の霊夢の生まれ変わりとしか思えなかった。
 あの霊夢にできたことだ。この子にできない道理はない・・・・・・と思いたい。

 だとしたら、私に今できることはなんなのか。と紫は思う。
 付け焼刃のアドバイス、その場しのぎのサポート、全て、無駄だ。
 
 霊夢が一番力を発揮できる状況、それを作り出すためには――――――

 「――――――あー・・・・・・・・霊夢。私が今言ったことは全部忘れなさい」
 「は?」
 「あなたはあなたらしくあればいい。いつも通りに、面倒くさがり屋で、さぼりがちで、境内でお茶ばかり飲んでる博麗霊夢らしくありなさい」
 「何を・・・言っているかよくわからないんだけど」
 「鈍いわね。変に気を遣うとあなたには逆効果のように思えるわ」

 つまりどういうことなんだ。いきなり何を言い出すのかこの妖怪。
 もっとちゃんとしたアドバイスをくれ。

 「気を抜いて、今までの修行のことなんて思い出さなくていい。あなたは何をしないでも完成形なんだから」

 それこそ、手を加えては本来の美しさを損なう、自然物のように、と紫は思う。
 
 「まぁ・・・いいわ、あなたの言うことなんだから間違いはないでしょう。自然体でいればいいのね」
 「ええ、それできっと――――――」

 目を閉じ、今までずっと張り続けていた気を緩める。境内で箒を持っている時の自分をイメージする。

 ・・・・・・不思議だ。絶対にこの状況でリラックスなどできないと思っていたのに。
 
 何度も、何度もこんな状況を体験したような錯覚にとらわれる。

 先ほどまで、変に色々とこだわっていた自分はなんだったのだろうか。周りの張りつめた空気とは裏腹に、私は少しずつ冷静になっていった。

 「―――――勝て・・・・・・る」

 ――――――八雲紫は先代の博麗霊夢が亡くなってから、不思議な無気力感に苛まれていた。
 
 結界に不備があるなら修正する。外の世界からの迷い人を元の世界に返す。ただそれを繰り返す毎日。
 紫を楽しませてくれるものはなく、異変も数えるほどしか起きない。

 それは今代の霊夢が生まれてからもそうだった。
 今代の霊夢が誕生した瞬間、その瞬間は確かに歓喜し、式の藍も驚く程の喜ぶ姿も見せた。

 ただ、それからというもの、特に紫が興味を持つようなことはなかった。
 霊夢はそこまで力があるようにも見えず、現にいま、紫が期待していたような戦いは見せてくれなかった。
 
 ――――――この瞬間までは。
 今ならなぜ今代の霊夢が力を発揮できなかったのかわかる。
 彼女は真面目すぎた。
 元々先代の霊夢は修行などほとんどしていなかったのだ。霊夢は何をせずとも霊夢であり、最も力を出せる。

 「(ああ、やはり私の眼は、間違っていなかった―――)霊夢」
 「ええ、行きましょう紫。さっきのようにはいかないわよ」 

 今なら、おそらく先代の霊夢にも並ぶ、そう紫は確信する。

 さ、続きと行きましょうか――――――

 
 ――――――――――――


 「見つけたぜ!」
 「今度は逃がさないわよ」

 魔理沙達に追いつかれた。だが先ほどまでの焦りはもうない。
 今なら―――――勝てる。

 「また会ったわねぇ魔理沙、アリス。でもさっきの私と今の私を同じにしないでね」
 「そういうのは負ける奴が口にするんだよっ!」
 
 言うが早く、魔理沙は八卦炉を構え弾幕を展開する。
 アリスの人形たちもそれに合わせて一斉に色とりどりの弾を放ってくる。

 「口だけじゃないわよ。私は博麗霊夢なんだから」
 「見せてあげなさい、霊夢。今のあなたは、さっきとは別人よ」

 ――――――さっきまでは手加減していたのだろうか、弾の量が桁違いに多い。
 だけど今の私にとっては――――――

 「――――――こんなの時間稼ぎにしかならないわよ」

 ちょっと私かっこよくないか、と、頬を緩ませ、魔理沙に「どうだ」という顔を見せつける。

 「へぇ、やるじゃないか。こっちも、もう手加減なんてしないぜ。アリス、離れてろ」
 「了解。上海!蓬莱!後ろへ!」

 アリスが魔理沙の後方に離れ、同時に魔理沙の持つ八卦炉の光が今までないほどに強くなる。
 それを私に向け、投げた――――――

 「は?」
 「・・・・・・!そこから離れて!」
 「――――――光線!『ディカプルラインズ』!」

 魔理沙が投げた八卦炉が眩しい程に輝き、そして――――――

 「霊夢!身を屈めなさい!―――『四重結界』!」
 
 ――――――それを中心に、弾けたように周辺にレーザーを展開――――――

 「しまっ―――!」
 
 霊夢の視界が眩い閃光に包まれた――――――


 ――――――――――――

 
 「ねぇ魔理沙」
 「なんだアリス」
 「あなたまだ盗賊やめてないのね・・・・・・」
 「ばれたか、さすが魔法使いだな。輝夜のスペルカードを『参考に』させてもらった」
 「はぁ・・・・・・」

 そういって魔理沙は子供のような笑みを浮かべる。
 魔理沙は人間だったころから盗み癖があった、主に紅魔館の図書館から・・・・・・。
 ちなみに彼女のスペルカード『ノンディクショナルレーザー』もラーニングしたものだ・・・・・・と言われている。
 
 「安心しろ。あともう一枚誰にも見せてない技が残ってる」
 「それもラーニング?」
 「いや、私のオリジナルだ。焼き増し感が否めないがな」
 「そう。あ、私はもうスペル残ってないわよ」
 「私もこれが最後の一枚だ。霊夢も序盤で頻繁に使ってたからな。多分最後の一枚というところだろ」

 この一枚で決着をつけなければいけない。
 
 ――――――――――――

 「・・・・・・霊夢」
 「大丈夫、食らってないわ・・・・・・でも危なかった」
 「そう・・・・・・よかった。でも・・・・・・」
 「もう結界系統のスペルカードは使い切ったんでしょ?防御には期待しないでってことよね」
 
 『弾幕ごっこ』では一度使った技はもう使えない。
 防御に使える結界系統のスペルは今、紫が使った『四重結界』で最後だ。
 このまま勝負が長くなってもこちらが徐々に押されるばかりだ。

 攻撃系のスペルでゴリ押しするしかない
 幸いあちらもスペルは残り少ないはずだ。

 「前を見なさい霊夢、あちらは次の攻撃の準備をしているわよ」
 
 魔理沙が投げた八卦炉を回収していた。
 
 「紫、スペルはあといくつ?」
 「これだけしかないわ」

 紫が見せた札には『飛行虫ネスト』と書かれていた。
 攻防どちらにも使えるが、一発逆転を狙うには少し心もとない。

 「・・・まぁ、勝てる可能性はありそうね」
 
 でかい口を叩いた後にこの状況だ。少し恥ずかしくて顔が紅潮する。
 リラックスするのと、油断するのは全く別物だ。

 向こうに目を向けると魔理沙の八卦炉がこちらに向けられていた。
 先ほどのように八卦炉が眩しい程に輝く。

 「よし・・・・・・行くわよ」
 「恋符!」
 「『飛行虫ネスト!』」
 「『クオドラプルスパーク!!』」

 ――――――マスター、ダブル、そしてクオドラプル。
 その名の通り、四本の光の奔流が霊夢達に迫ってくる。
 
 ただ、その一本一本が恐ろしい程の大きさを持っていた。

 おそらく4本とも『マスタースパーク』にも匹敵する大きさ。
 抵抗もできないまま霊夢達は光に飲み込まれた――――――


 ――――――――――――


 「・・・・・割と、呆気なかったな・・・・・・」

 霊夢と紫のことだ。この程度突き破って何か仕掛けてくると思っていたのだが、一瞬で飲まれてしまった。
 やはり経験不足か、もっと成長してから勝負を仕掛けるべきだったと後悔する。

 少しずつ光が弱まって、はっきりと見えるようになってくる。
 先ほどまで霊夢達がいた場所には何もない。
 ・・・・・・多分落ちたのだろう。

 「アリスー、次の目標は永遠亭だ。行くぞ」
 「・・・・・・」
 「アリス?」
 「魔理沙、油断大敵って言葉知ってる?」
 「なっ!」

 アリスからの返事はなく聞こえたのは霊夢の声だった。
 八卦炉を構えて素早く振り向く。
 目の前には霊夢がよく使っている札と針が――――――


 ――――――――――――


 「――――――あれ?」
 「はい、今回は私たちの勝ちね」

 魔理沙が目を覚ます。
 とりあえずどうしたらいいかわからなかったので、竹林の入り口まで運んできたのだ。
 
 「・・・・・・スキマは、ずるくないか?」
 「油断して落とされた癖に何言ってるのよ。あなただってラーニングしたり盗んだり、反則気味のこといつもしてるじゃない。それに紫は自分の力を抑えて使ってるわよ。いつでもどこでもスキマを使えるわけじゃないわ」
 「ちくしょー・・・・・・・それを知ってたら勝ってたんだけどなー」
 「能ある鷹は爪隠す、奥の手は最後まで隠しておくものよ。あなたみたいにね」
 「けっ。仕方ない、負けたからには潔く帰るとするか。アリス」
 「負けちゃったわね。本気出すの久しぶりだったのよ?」

 だけど・・・・・・正直あそこまで簡単に引っかかってくれるとは思わなかった。
 最後まで勝負を引っ張らなかったら向こうも警戒して引っかかってくれなかっただろう。
 とりあえず今回は私たちの勝ちだ。このまま永遠亭にまで向かうとしよう。

 「お疲れ様霊夢」
 「ん。紫もありがと、あれがなかったら負けてたわ。結構簡単に引っかかってくれたけど」
 「魔理沙は先代の霊夢とはよく競ってたのよ。あなたと似てるから、勝ったと思って調子に乗りすぎたのかもしれないわね」
 「へー、じゃあ今回は昔の霊夢にも助けられたのかもしれないわね」
 「そうとも取れるわね」

 結局魔理沙は200年前の勝負に2度負けたことになってしまった。
 しかし久々に霊夢と勝負できた気がして、それも悪い気はしなかったのである。

 証拠に、彼女が別れ際に見せた顔には、満面の笑みが浮かんでいた。

 「じゃあ永遠亭を目指しましょうか」
 「変な妖怪とかに会わなければいいわね」
 「ちょっと紫、変なこと言わないでよ」
 
 少女達は永遠亭をめざし竹林を進む――――――


 ――――――――――――


 霊夢達が魔理沙を落とした頃、また別の竹林の入り口で2つの陣営が火花を散らしていた。

 「ここまでだ。剣をおさめろ紅魔館のメイド」
 「・・・・・・申し訳ありませんお嬢様」

 妖夢が咲夜の喉に剣を突き立てる。
 誰がどう見ても勝負は決まっていた。

 「お疲れ様、妖夢。そしてありがとう紅魔館の方々、私も中々に楽しめたわ♪」
 「・・・・・・」
 「じゃあこの異変は私たちが解決させてもらうわよ。吸血鬼のお嬢さんはお家にお帰りなさい」
 「このっ・・・・!」
 「白玉楼の姫。それ以上のお嬢様の侮辱は私が許しません」

 懐のナイフに手を伸ばし、時計に手をかざす。
 亡霊はこちらを一瞥し、こう言い放った。

 「・・・・・・あら。ごめんなさいね。言い過ぎだったわぁ♪」
 
 本当にこの西行寺幽々子という亡霊は腹が読めない。
 先ほどまでとは別人のように、無邪気な振る舞いを見せる。演技なのか?

 「それでは幽々子様、行きましょう」
 「そうね、いつまでも敗者に構ってはいれないし」

 そうして2人は竹林の奥に消えた。

 「お嬢様・・・大丈夫ですか?」
 「大丈夫よ咲夜。それにあなたはいい働きをしたわ。今日は満月なんだけどね・・・・・・これで負かされちゃ言い訳できないわ」
 
 今日は満月。吸血鬼であるお嬢様が最も力を発揮できる夜だ。
 それなのに負けてしまった。一体あの亡霊はどれほどの力を持っているのか・・・。
 それにあの庭師―――私の時間を止める能力が何回か通用していなかった。

 「今回は場所が悪かっただけですわ。次こそは『咲夜!』・・・・・・」
 「言い訳は愚者のすることよ。完璧で瀟洒なあなたには似合わないわ。今日は大人しく帰りましょう」
 「はい・・・・・・。」

 永遠亭を目指す影は、4つ――――――





 ――――――――――――





 
   
 「・・・・・・まさか本当に持ってくるとは思わなかったわ、ご苦労様。まだあなたには一仕事残っているのだけど少し休んでいなさい」
 「ああ・・・少し疲れた・・・・・・。かなり時間はかかったけどな、何とか早く集められたよ。休ませてもらう・・・・・・」

 幻想郷の端から端まで飛び回ってなんとか集めることができた。
 さすが幻想郷、聞いたことしかなかったものもよく探せば案外簡単に見つかった。
 後は、薬ができるのを待つだけか。いや、もう一仕事私には残っているのか・・・・・・。

 そう思って座って休んでいるとゆっくりと襖が開いた。
 開いた隙間に目をやると、珍しい服に身を包んだ兎、確か・・・・・・鈴仙とかいうのが立っていた。

 「お師匠様、姫様が時間を操っているのに気付いた者がこちらへ向かっています。恐らく異変として解決しに来たのかと」
 「少し待ってね鈴仙・・・・・・これは、博麗神社の巫女と、白玉楼の2人かしら。八雲の主もいるわね」

 この肝心な時に邪魔者が出てくるとは、予想はしていたが。

 「仕方ない、私が出向いてくる。時間稼ぎには自信があるんだ」
 「あ、待ちなさい、あなたはもう少しここにいてもらわなきゃならないの。鈴仙、てゐを連れてできる限り足止めしてきて」
 「了解しました。」

 ふすまが閉められる。
 それにしても私の仕事が足止めではなければなんだろう。
 ・・・・・・疑問に思いつつも今は薬が完成するかどうかに集中したい。早く慧音に飲ませなければ。


 ――――――――――――


 しばらく妖精を退治しながら進むと見覚えのある景色になってきた。
 
 「ここまでくれば永遠亭ももうすぐね。見覚えのある景色だわ」
 「だったらいいのだけれど・・・ここまで妖精のほかに私たちに立ちふさがったのは魔理沙達だけよ。不自然すぎる」
 
 竹林に入れば魔理沙達のほかにも妖怪たちが襲ってくると思っていたのに結局一匹も襲ってこなかった。
 人除け・・・・・・ではなく妖怪除けの結界でも張ってあるのだろうか?
 夜の竹林は入ったことがないので、この少し暗い雰囲気が元々のものなのか、それとも異変が起こっているからなのか判断もつかない。
 
 「そういえばさ、紫。なんでスキマを使わないで普通に飛んでるのよ。さっきまで潜ってたのに」
 「・・・・・・さっきまでは平気だったのだけれど、ここに来て急に開けなくなったのよ、開こうとしてる扉を抑えられてるみたいに」
 「何か細工でもされているのかしら。空気が少し嫌な感じなんだけど」
 「恐らくあの薬師の仕業ね。私の能力を妨害するほどの妖力を持ったものなんて、ここらへんではあの医者以外にいないわ」

 さっきからここに漂う雰囲気は人為的なものだったのか。
 それにしても紫が認めるほどの妖力を持っていたのか、あの医者は。
 八意永琳とか言ったっけ。あまり強い力を持っているようには見えなかったのだけれど・・・・・・。

 順調に永遠亭に近づいていく。それと同時に何か強い妖力が近くに感じられるようになってきた。
 
 ――――――近くの竹やぶから、何かが飛び出すのと同時に目の前を弾が通り過ぎた。

 「そこの紅白!止まりなさい!」
 「・・・・・・鈴仙、だっけ?悪いけどあんたの相手なんてしてられないの、早々に落とされてもらうわよ」
 「そうはいかないわよ。今はてゐもいるんだから、ここでしばらく足止めさせてもらうわ」
 
 ・・・・・・足止めが目的なのか。こいつらは。
 となると面倒なことになった、ただ勝負するだけなら早々に勝敗を付けられるのだけど。防御に徹されるとさすがに突破するのに時間がかかる。

 「紫、さっさと倒していきましょう」
 「・・・・・・その必要もないみたいよ霊夢。私たちは私たちなりにこいつらを足止めしましょう」
 「足止め?足止めされてるのは私たちでしょう、なんで私たちが足止めしなきゃならないの」
 「とりあえず考えなくていいわよ。いい霊夢?私たちは足止めに徹しましょう。分かった?」
 「・・・・・・まぁそういうならいいけど、あなたなりに考えがあるんでしょう。従ってあげるわ」


 ――――――――――――


 ――――――・・・・・・しまった、安心しすぎて眠っていたようだ。
 そろそろ薬もできているだろうか、蓬莱の薬が完成までにどの程度の時間がかかるか知らないが、あの薬師の腕ならそう長くはかからないだろう。

 「・・・・・・ごめん、寝ていた。薬はどうだ、もうできたのか」
 「いえ、あと少しよ、後もうひと手間かければ完成するわ。・・・・・・さて、あなたの出番よ」
 
 後一仕事あると言っていたが、やっと私の役目が来たか。
 一体何をするのか。少なくとも私には薬の知識などほとんどないんだが。

 「私が月で蓬莱の薬を作った時は、姫様の能力を借りたのよ。でも、今は姫様は能力を行使していて、こっちには使えないの」
 「そこで私が役に立つのか」
 「そうよ。少し辛い役目になると思うけどね。蓬莱の薬を飲んだものにはね、生きていくうちに薬の元になるものがたまっていくのよ」

 今からかなり前、冥界の亡霊と庭師の2人(?)組に弾幕ごっこを仕掛けられた時にも言われたな。確か――――――

 「――――――『肝』に溜まるんだよな」
 「正解。よく知ってるわね」
 「昔色々あってな・・・・・・私の肝が必要なのか?」
 「ええ。その通りよ、悪いけど薬の原料を集めてきてもらっただけで、かなり貢献してくれたんだけどね、こればっかりはあなたの他に任せられる人がいないのよ」
 「まぁ確かにな。あの輝夜の肝を使った薬を慧音が飲むなんてぞっとする。まさかあんたに全部させるわけにも行かないしな」

 永琳から小刀を手渡される。
 何度も傷ついたとはいえ、さすがに自分で内臓を抉り出すのは躊躇いがある。

 「・・・・・・少し待ってくれないか。落ち着きたい」
 「本当だったら麻酔でもなんでもしてあげたいのだけどね、時間もないわ。そもそもあなたに麻酔が効くかどうかもわからないし」
 「ああ、わかってる」

 ・・・・・・小刀を両手で握り、刃先を腹に向ける。

 しかし・・・・・・手が震えて汗が出る。落ち着け、私の腕。この程度なんてことないだろう。
 止まれ、止まれ、そう思うほどに腕の振るえは激しく、額からの汗が止まらなくなる。

 これが終われば慧音を救える、という希望。そして自分の腹を裂くことへの抵抗。二つが混ぜ合わさり、落ち着かない。

 「何度も死んでるんだけどな、こればっかりはさすがに慣れない」
 「生き返るとは言っても苦痛は消えない。かといって死ぬこともできない。元々寿命の長い私や姫と違って、あなたはずっと苦しんできたのね。」
 「・・・・・・それが今更なんだ」
 「別に他意はないわ、ただあの半妖にも同じ苦痛を味わさせるのかと思っただけ」
 
 ・・・・・・この医者。まさかここまできてこんな台詞を吐かれるとは思わなかった。
 止めているつもりなのだろうか。

 「その位、わかってるさ。でも、それでも私は慧音に死んでほしくない」
 「つまりただのあなたの自己満足・・・・・・と」
 「そういわれても仕方がないな。だが、もう覚悟はできているんだ」
 「そう・・・・・・」

 ・・・・・・もう一度深呼吸する。自分が今から成すことが、世界にとって間違っているのも分かった上でのことだ。
 今更誰にも止めさせはしない。
 ――――――さぁ、逝こうか。

 両腕に力を込め、高く振り上げ――――――

 「・・・・・・・・・・・・」

 ――――――歯を音がする程食いしばる。

 「・・・・・・行くぞ」

 ――――――思いきり振り下ろ――――――
 

 ――――――その瞬間永遠亭を囲んでいた空気が一変し、勢いよく襖が開けられた。

 「妖夢!止めなさい!」
 「はい!」

 開いた襖に跳ねるように目をやると、以前会った亡霊がいた。
 だが今確かに庭師の声が――――――
 
 「しまっ――――――!」

 ――――――気づいた時には、持っていた小刀は柄から上が無くなっていた。

 「くそ!薬だけは―――――」

 次の瞬間視界に広がったのは、庭師の靴底だった。
 
 「――――――え」

 思いきり蹴飛ばされて、後ろの襖を突き破る勢いで吹き飛ばされた。

 「妖夢!早く薬を斬りなさい!」
 「っ!させるか!不死『火の――――――」
 「――――――亡舞『生者必滅の理』 悪いけどこの異変は何があっても成就させるわけにはいかないの。冥界の管理者として、ね」
 
 亡霊が手に持つ扇子を振り、背後に同じ形をした翼のようなものを広げる。

 「あなたに蓬莱人2人の相手が務まると思って?しかも、そこの庭師は私には勝てないわよ」
 
 いかに冥界の管理者とはいえども、蓬莱人2人の相手は務まるはずがない。
 だが・・・・・このままでは薬を持って逃げることもできない。
 
 それにしても、永遠亭の庭には輝夜がいたはずだ、能力を使っているとはいえ、スペルカードの使用程度ならできるはずなのに・・・・・。

 「幽々子様、このままでは埒があきません」
 「そうね、でもこちらには切り札があるわ」
 
 切り札・・・・・・?

 「八意永琳」
 「なにか?」
 「私たちがここに来るまでに3体の妖怪と、一人の蓬莱人に出会ったわ」
 「それが何か。従者としてこのような言葉はあまり言いたくないのですが、『弾幕ごっこ』に敗れた程度で姫様は死にませんよ。人質には期待しないほうが」
 「妖夢がまだ未熟だった、50年ほど前なら・・・・・ね」
 「!」

 亡霊が襖の影からなにか引っ張りだした。
 それは・・・・・輝夜だった。

 「!・・・・・・・ですが!言ったでしょう!人質は無駄だと!」
 「これでも?妖夢」
 「はい、幽々子様」

 庭師がおもむろに剣を抜き、輝夜に刃を向ける――――――

 「―――――― 『私』 は 『永遠』 を――――――」
 「!待ちなさい!」
 「どうしたの?人質は無駄なんじゃなかったかしら?」
 「・・・・・・輝夜を『斬』るつもりね・・・・・・」
 「さすが月の頭脳ね。・・・・・・なら、後はわかるでしょう」
 
 何が起こったのかが全く理解できない。
 輝夜には悪いが、今ここで輝夜の為に薬を諦めるわけにはいかない。なぜなら輝夜は生き返れるのだから。

 「お、おい・・・・・・・」
 「妹紅、ごめんなさい・・・・・・・薬は、完成させられそうにないわ」
 「幽々子様、薬は」
 「いいわ、そのままやってしまって」
 「はい」

 庭師が薬の方へ歩み寄る。このままではすべて台無しにされてしまう。
 
 「くそっ!どけ!この亡霊が!」
 「それは無理な相談ね」
 「永琳!早く止めてくれ!あんたならあの庭師位どうとでもなるだろう!」
 「・・・・・・姫の命には代えられないわ・・・・・・・」

 どうして、どうしてだ。何故永琳は止めてくれない。
 永琳程の力があれば、あいつらなんてどうとでもなるのに。

 輝夜に向けたように、庭師が長刀の刃を、薬の入った器に向ける――――――

 「―――――― 『私』 は 『永遠』 を 『斬る』 ――――――」

 頼む、お願いだ、止めてくれ――――――


 ――――――次の瞬間、視界にはさっきまで薬であったものが舞っていた

 何が起こったか理解すると同時に畳に這いつくばり、できる限りでも散らばった粉を集めようとする。
 しかしそれも無駄な抵抗だった。何かしらの能力なのか、粉は畳に落ちた瞬間消え去っていった。

 「・・・・・・嘘・・・・・・だろ・・・・・・なんで・・・・・・」

 そして理解した。何故永琳が止めてくれなかったのか、何故斬られただけで薬が消え去ったのかを。

 詰まる所、この庭師は「あらゆるものを斬ることができる」のだ。それには蓬莱人の持つ永遠も含まれる、ということか。

 顔をあげて冥界の亡霊の顔を見る。私を憐れむような素振りさえ見せず、今起こったことは必然だったような表情をしている。
 こいつらさえいなければ、こんな状況にはならなかったはずなのに。

 「なんでだよ・・・・・・なんで!もうすぐ終わるはずだったんだ!後少しだったのに!」
 
 怒りに身を任せ目の前の亡霊の胸ぐらをつかもうとする。
 だがそれさえも叶うことはなかった。庭師が目の前に立ちはだかり、またしても蹴り飛ばされる。

 だが―――――その痛みは、すぐに怒りで塗りつぶされた。
 『復讐』ただその単語しか頭に浮かばない。

 「・・・・・・消し去ってやる・・・・・・お前ら全員ここで消えてしまえ!私の記憶からいなくなれぇ!!!」

 肉が焼け、骨まで焦がすような痛みが体中に走る程の炎を背負う。普段なら制御の効くが、今は全く勢いが止められない。
 もうどうでもいい、私の邪魔をした奴も、私も全部燃えて無くなってしまえ。

 ああ、ごめんな、慧音。私はお前を救えなかったよ――――――


 ――――――――――――

 
 体が・・・・重い、足に鉄球をぶら下げているようだ。先ほどから体中を責める、鈍い痛みも止まらない。
 なにより、呼吸が上手くできない。

 「ははっ・・・・・・・私も、衰えたか」

 里の者達から、妹紅が私を救うと言い残し、永遠亭へ飛んで行ったと聞いた。
 皆の制止を振り切ってここまでやってきたが、妹紅はいるだろうか・・・・・・。
 あの子は間違ったことをしている。それだけは伝えなければ・・・・・・。

 永遠亭が見えてきた。ただしいつもと外観が異なっているのだが。
 ところどころが壊れ、そして――――――

 「あれは・・・・・・妹紅の妖術か?」

 ――――――赤い光があふれている。あれほどの炎を操れるのはおそらく妹紅しかいない。
 ああ、早くいかなければあの子が壊れてしまう。
 体を引きずりながら、私は永遠亭に急ぐ。


 ――――――――――――
 

 「全部!全部!消えてしまえばいいんだ!『待て妹紅!』」
 「妹紅・・・・・・待ちなさい」

 私も含めその場にいた全員が声のする方を向く。
 そこには――――――

 「――――――慧音・・・・・・」
 「悪かった妹紅・・・・・・まさか君がそこまで追い詰められているとは思わなかったんだ」

 背負った炎を消し、慧音に駆け寄る。

 「違う・・・謝るのは私のほうだ・・・ごめん慧音、私は蓬莱の薬を完成させられなかった・・・・・・」
 「・・・・・・違うんだ、あのな妹紅よく聞ゲホッゲホッ!!」
 「慧音!しゃべらなくていい!もういいよ・・・・・・。」

 せき込み膝をつく慧音を抱きかかえる。そして驚愕した。慧音の体の細さ、そして軽さに。
 よく見ると若干頬もこけ、腕も骨の形が見えるほど痩せている。
 ・・・・・・こんな体になってまで永遠亭まで飛んできてくれたのか・・・・・・。

 慧音がせき込むときに口を押えた手を見ると、僅かに血が付いていた。

 「本当は、もっと長く、話して、いたいんだがな、あまり、時間も、ない・・・・・・・」
 「・・・・・・」
 「妹紅・・・・・・私が、言うことが、全部、あっている、とは、限らない、がな・・・今から、言うことを、少しだけでも、いい・・・聞いてくれ」
 「・・・・・・」
 「生きる者は、死ぬ。たとえ、死ぬことが、できない、と、言われた君も、いつかは、滅ぶ時が来るだろう」

 ヒューヒュー、という息遣いが慧音がもう永くないことを悟らせる。
 言葉を発するたびに苦しそうに顔をゆがめる。

 「だがな・・・・私たち、は、生まれ変われることが、できるんだ。今、私がいなくなっても、いつかまた、君に会える、日がくる」
  
 何度も、何度もうなずく。

 「だから、な。悲しみは、しても、絶望は、しないで、くれ」
 「でも!でも私は慧音に死んでほしくない!また会える日が来るって言ってもそれはいつの話なんだ!いつまでも一緒にいて欲しいんだ!」

 過去、どれほどの人間に会い、別れを経験してきただろうか。
 もう何百年も前にもこうして親しくなった者が死んでいくことはあった。だけど今回だけは防げると思っていた。

 「でも、な・・・妹紅、わかるんだよ。私は、もう、永くないって、ことが」
 
 慧音の体は既に少しずつ消えかかっていた。元々そこまで重くなかった体重も今では綿のようで、触れているとより鮮明にそれが感じられてしまった。

 「そうだ・・・自分勝手だとは、思うんだが、君に、やってほしい、ことが、あったんだ・・・・・・」
 「・・・・・・いいよ、なんでも言ってくれ」
 「1つ目、はな、君には、人里で、私の、役目を、継いでほしいんだ」 
 「寺子屋を教師を継いでほしいってことか」
 「そう、だ」

 人里には慧音を慕っている人が数えきれないほどたくさんいる。慧音がいなくなったら悲しむ人も大勢いるだろう。
 慧音の代わりを私にしてほしいということなのだろうか。
 私のことだけでも精一杯なのに、そんなことできる自信が・・・・・・ない。

 「もう一つがな、妹紅。・・・・・・最後は、笑ってくれないか」

 笑ってくれと、慧音はそういった。
 なんと難しい頼みごとだろうか。今の私には一番酷なことだ。
 だが――――――

 「――――――これは別れじゃないんだろ?また今度ってことなんだろ?」
 「ああ。そうだ」
 「・・・・・・なら、簡単だ」

 悲しみに歪む顔を無理やり笑顔にさせる。これだけのことだけど、これで慧音は救われてくれるのだろうか。
 ああ・・・・・だけど・・・・・・どうしても涙が止まらない・・・・・・。

 「慧音」
 「なんだ、妹紅」
 「また・・・・・・また今度な、幸い私には時間はあるんだ・・・・・いつでも待ってるさ、『ここ』で」
 「・・・・・・ああ、また今度だ。さよならじゃ・・・ない・・・・・・。」

 ゆっくりと慧音は目を閉じる。その閉じた瞳からは涙がこぼれていた。

 しばらく私たちは言葉も交わさずに手を握っていた。
 
 数刻後、そこには人を抱きかかえたような形で座っている、一人の少女がいた。
 傍らには変わった形の帽子、そしてブローチが置いてあった。

 「・・・・・・また今度な・・・・・・」


 そして永遠亭の一室には、夜が明けても大声で泣き続ける少女の姿があったという―――――






 






 ―――――――――――― 











 

 
  
 結局、二度目の永夜異変が成就することはなかった。
 妹紅の願いがかなうこともなく、上白沢慧音は静かに息を引き取った。
 人里の民衆は、皆涙を流し慧音の死を悼んだ。

 生きる者は皆死んでしまってはいつかは忘れられてしまう。
 それは永遠を生きる蓬莱人にも変わりはないのかもしれない。

 だが上白沢慧音はこれから何百年・・・いや、何千年も人里でその存在が忘れられることはないだろう。
 なぜなら――――――

 「妹紅せんせー、ここが分からないんですけど」
 「んー?ちょっと見せてみなさい」

 ――――――私がその遺志を継いでいくからだ。
 
 慧音が死んでから何年かして、私は人里の教師を継ぐことにした。
 慧音並の知識はなくとも、私だって何千年を生きた蓬莱人だ。人並以上、いや、かなりの知識はある。
 そして何より、慧音がここで教師として勉学を教えていたということは、皆に忘れて欲しくない。

 「ここはな、縦書きにして計算するんだよ」
 「えっと筆算ってこの前言っていたやつですか」
 「そうそう、まだ教えてないのによく覚えてるじゃないか」

 最初は大人達も反対はしなかったが戸惑った。
 今まであまり人里に関わらずに竹林の案内をしていた者が、いきなり教師をするというのである。それは戸惑うだろう。
 とりあえず何回か臨時で授業をしてみて認めてもらった。

 そして慧音のしていたことが、いかに大変かも身に染みてわかった。
 
 特に資料作りだ。新聞づくりを稼業とする天狗の集落には、印刷機とかいうものがあるらしいが・・・・・・さすがに数十部しか必要ないのにわざわざ訪問するのも躊躇う。
 なによりお金がない。(そもそも天狗が代償に金銭を要求するかどうかも分からないのだが)

 次に子供の世話だ。
 人里の子(特に男子は)悪戯好きで困る。
 この前なんか扉が開くと上からバケツが落ちる仕掛けがあって、見事に引っかかった私はしばらく子供らの笑いものにされた。
 お前らチョーク投げるぞチョーク。

 「ありがとうございましたー!また明日ー」
 「また明日なー、気を付けて帰れよー」
 「はーい」

 とりあえず今日の授業はこれでおしまいだ。家に帰るとしよう。


 ――――――――――――


 そして――――――

 「あ、妹紅先生」
 「?どうかしましたか」
 「庄吉さんの小屋が先日の台風で壊れてしまいまして。手を煩わせて申し訳ないんですが、直すのを手伝ってくれませんか」
 「それぐらいお安い御用です。庄吉さんの小屋というと確かあちらの方でしたか」
 
 ――――――こうして声をかけられることも前に比べたらずいぶんと増えた。
 あまり人とかかわるのは好きではなかったのだが・・・・・・こうして人を助けられると知ってからは悪くはないと思うようになった。
 
 「えーとこの俵を上に積めばいいんですかね?」
 「はい。そんな感じでお願いします。すいませんねぇ」
 「いえいえ、この程度すぐできますよ」

 しかし、私は慧音の代わりになれているのだろうか?
 もしなれているのだとしたら、嬉しいことに限りないのだが・・・・・・そうすると慧音はもうみんなの中で私に代わっているのだろうか・・・・・・。

 小屋を直したお詫びに、少し高めの日本酒をもらった。今夜は晩酌でもしようか。


 ――――――――――――


 「明日の授業はこんな感じでいいかな」

 私の授業は基本的には全員に同じことを教えている・・・・・・のだが、個人個人で覚える早さは異なる。中々覚えられない子には別の課題を用意して補助をする。といった形式をとっている。
 これが案外難しい。中には意地っ張りな子もいるので、頑として課題を受け取らない子もいるのだ。
 全く・・・・・私の苦労を少しは知ってほしい・・・・・・と慧音も思っていたのかもしれないな。

 そんな愉快なことを考えて少し頬が緩む。

 「大体することも終わったからな、今日は寝ようか」

 ・・・・・・いやいや、何を言ってるんだ私。いい酒をもらったのではないか。
 幸いまだ寝るには早い時間だ。
 教師が二日酔いで休むなど、面目丸つぶれもいいところだが、何事もほどほどにしておけば、いい方に転ぶだろう。
 そう言い訳しつつ一升瓶の蓋を開ける。

 「なんかつまみなかったっけ・・・・・・」 

 つまみを探して棚を探る、確かこの前、八雲紫からスルメとか言うものを――――――

 「――――――大変だ妹紅先生!」
 「ひゃあ!!!」

 突然後ろから声をかけられた。なんだいきなり、ノック位してから扉は開けて欲しい。

 「なにかあったんですか。こんな夜中に」
 「子供たちが何人かいないんだ!親御さんから話を聞いてみると、どうやら子供たちだけで肝試しをしようとしていたらしい!」
 「な!どうして知ってて止めなかったんだ!」
 「いや・・・・・・どうせいつもの悪戯だと思っていたようで・・・・・・・」
 「~~~っ!あいつらのことだ、多分里の外まで出て行っただろう・・・・・・」
 「どうしましょうか?」
 「里の外は危険だから私が行く、ほかの大人には里の中で適当に肝試しに使えそうなところを探してくれと言ってくれ!私はもう行く!」
 「はっはい!了解しました!」

 ああもう!あいつらは本当に手間かけさせる!夜の里の外がどれほど危険か分かってないのか!


 ――――――――――――

 
 教師を始めてから人里に慣れるために、あまり飛んでいなかったな。
 久々の感覚だ。と現状とは裏腹にのんきなことを考える。

 「いやいや、そんなことを考えてる場合じゃない、早くあいつらを見つけなければ」

 里から出てしばらくすると松明のような光りが見えた。

 「あれかな?多分皆一緒に行動していると思うんだが・・・・・・」

 いや、よく見るとあれは何かをみんなで囲んでいるような感じだが・・・・・・。
 いったい何を囲んでいるんだと目を凝ら――――――

 「――――――!お前らそこから離れろ!」
 「あ!妹紅先生!」
 
 素早く地面に降り立ち、子供たちのいる方へ走る。
 中心にいたのは妖怪だった。容姿は確認できないが溢れ出す妖力が確実にこいつは妖怪だと知らせてくれる。

 「早く私の近くに来い!食われるぞ!」
 「先生、大丈夫だよ。この人優しいんだから」
 「そんなわけないだろう!そいつは危険だ!早くこっちに!」

 なかなか子供たちが来ないので、近寄ってこない子供を無理やり引っ張ってこちらへ引きずり戻す。

 「おい!あんた子供たちに手を出したらどうなるか――――――」
 「いやちょっと待ってくれ!私は人を食う気はないぞ、そもそも今日より前の記憶がない・・・って、おい、どうした?」

 ――――――頭から延びる2本の角に、緑と白が入り混じった長髪、そしてなによりも、その凛とした目。
 改めて妖怪を見て気が付いた。しばし呆然と目の前の妖怪を見つめる。

 「・・・・・・・おい、あの。どうした・・・・・・」

 それは、何年も前に別れを経験したはずの―――――――

 「――――――慧・・・・音?」
 「ん?君とは初対面のはずなんだが、確かに私の名前は慧音と言うが」

 ――――――竹林の近くに怪しいものがいると聞いてやってきたが、なんだ、年端もいかない少女じゃないか。ん?私か、上白沢慧音という――――――
 
 慧音がいなくなったとき、私は形見を受け取った。帽子とブローチ、私の家に飾ってある。
 ほこりが付いてははたき、汚れがついては拭き、いつか戻ってくる日を夢見ていた。

 「君の名前はなんというんだ?」
 「・・・・・・・も、も・・・こう・・・・」
 「ももこう?ももこうというのか、変わった名前だ。だが・・・・・・なんとも懐かしい響きだな」

 ――――――ほう、君は妹紅というのか、まぁ、ここで会ったのも何かの縁だ、人里の教師をしている。よろしく頼む――――――

 それを見るたびに慧音を思い出し、そして思い出さない日など、一日も無かった。
 眼の奥から熱いものが溢れてくる。

 「慧音・・・けい、ね・・・けいねぇ・・・戻ってきてくれたんだな・・・・・」
 
 慧音の胸に顔をうずめ、その暖かさを感じる。涙がとめどなくあふれてくる。

 「え!い、いや、ちょっと待ってくれ!私はまだ何もしてないぞ!なのになぜ泣くんだ!」
 「ひっく・・・ぐすっ・・・」
 「・・・・・・・いや・・・・だから・・・・・・」

 博麗の巫女が生まれ変わったように、稗田の一族が転生を繰り返したように、慧音が生まれ変わらない道理なんてない。
 
 そして――――――今目の前にいる慧音もいつかは別れが訪れてしまうだろう。
 
 だが、今はもう一度慧音に会えたことの喜びをかみしめたい。
 
 まだ、泣いて喜んでもいいよな。神様。


 ――――――おかえり、慧音―――――――――
 ――――――ああ、ただいま、妹紅――――――
 
 



                                            ―――fin―――
 霊夢 「ねぇ」
 rasan「あの・・・・・・何か・・・・・・」
 紫 「とぼけないでくださる?」
 rasan「いえ・・・・・・なんで・・・・・・」
 霊夢 「なんで、じゃないわよ、なんでいつの間にか私たちいなくなってるのよ」
 rasan「ほら・・・・・・あの空気に上手くお二人をいれられなかったんですよ」
 紫  「ふーん・・・・・・霊夢」
 霊夢 「言われるまでもないわ」
 rasan「ちょ、待ってくださいよ、何針とか構えてるんですか!」
 紫 「今更謝っても遅いわよ」
 rasan「ひっ!――――――」


 鈴仙 「ねぇてゐ」
 てゐ 「どしたの鈴仙」
 鈴仙 「・・・・・・私たちも、あんまり出番なかったね」
 てゐ 「そだね・・・・・・まぁ、許してあげてもいいんじゃないかな」
 鈴仙 「さすがにね、あれ以上はかわいそうかもね」







 ――――――

 お久しぶりですrasanです。
 結局書き始めてからかなり時間がかかってしまいましたが、なんとか終わらせることはできました。

 色々な本とかサイトとか参考にしていますが、本当に書くことも描くことも難しいですよね。
 特にバトル部分、どういう部分を書けばいいのかがさっぱりわからないんですよね。
 
 後、慧音がいなくなる場面も、もう少し長く、深く表現したかったのですが、上手くできなかったので、区切りのよさそうなところで終わりにさせていただきました。


 それと、以前①と②に分けて公開しましたが、そちらの方でも貴重なご意見を下さり、ありがとうございました。反省しつつ、参考にさせて頂いています。

 妹紅と慧音のシリアスものが多く、同じパターンが繰り返されそうで怖かったのですが、こうして何とか完成させることができ、本当にうれしいです。
 こちらも、ご意見、ご感想、お待ちしております。





 あ、最後に設定の方をまとめておきます、わかりにくかったら目を通してください。

①霊夢 今回の話に出てくる霊夢は、大体18代目あたりの霊夢だと思っています。
    話の中でも何回か言いましたが、先代の霊夢の生まれ変わりです。
    後、一応前の霊夢は13代目としました、公式から発表がないようなので。

②魔理沙 この話の魔理沙は魔法使いになった魔理沙です。同一人物ですが、人間ではありません。
     光の魔法使いと、星の魔法使い、どっちを肩書にしようか悩んでいましたが、後者を取らせていただきました。
ちなみに魔力量も桁違いに増えているので、もう茸に頼る必要もなく、ばんばんスパークしています。   
 
③妖夢  妖夢は『剣術を操る程度の能力』から修行を重ねた結果『あらゆるものを斬る程度の能力』を手に入れています。
     簡単に言えば、直死の魔眼のようなものです。
     妖夢の力が及ばないもの(輝夜はぎりぎり同じ程度の力だった)は、物理的に斬ることしかできません。

④咲夜 咲夜さんは死んでいません。ずっと人間のままメイドとして生活しています。
    求聞史紀に「まるで大昔の人のようだ」という記述があるのですが、これを見てから私の中では、肉体の時間とかを色々と操って、ずっと若いまま生きているのではないかと思っています。



     その他、おかしい点があったら、コメント等でお願いします。
rasan
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コメント



0.450簡易評価
2.80名前が無い程度の能力削除
1、2から続けて楽しく読ませていただきました。霊夢生まれ変わり設定は面白かったですが個人的には生まれ変わりじゃくて別人で13代目との違いに葛藤する、というほうが好みかな、と思いました。結局生まれ変わっても霊夢であれば強いんだな、とほんのちょっぴり冷めちゃったので。
それを言っては妹紅たちへの伏線にならないですしあくまで私の好みですがね。
ただ、結局魔理沙は負けちゃうのが個人的にはがっかりでした。
霊夢が強いとは言え経験が圧倒的に足りないのにあっさり勝っちゃうところがなんだかな~、っと思ってしまいました。魔理沙が勝つ流れでも私はいいと思った。
色々いいましたが楽しく読ませていただきました。ありがとうございます。
7.無評価rasan削除
返信 >>2.様
こんなに詳しく感想を・・・ありがとうございます。すごく嬉しいです。

まず霊夢は先代の霊夢とは別人という設定について。
これも何回か考えましたか、どうしても暗い展開しか思いつかなかったので、生まれ変わりという方を採用しました。
霊夢は死んでしまったけど、いつかまた生まれ変わって会える。彼女は覚えてないけど、私たちは彼女を覚えていて、またこうして話すことができる。
慧音も死んでしまったけど、こうして生まれ変わって会えた。
という救いのある展開をどうしても書きたかったのです。

次に魔理沙が勝つ流れについて。
これはさすがに思いついていませんでした。面白いですね。どうやって話を展開していこうか考えさせられます。
私の中では、魔理沙=秀才、霊夢=本当の天才 って感じなんですよね。
経験があろうがなかろうが、霊夢は強くて、少し覚醒すれば簡単に勝てちゃう。
少し残酷かもしれませんが、そういう感じなんですよね。でもいつか秀才が天才に勝る日が来る。そう考えているのもまた事実です。

次回作はもっと練って、もっと詳しく流れるような描写ができるように頑張ります。
8.90名前が無い程度の能力削除
前回コメントさせていただいた者です。
まず即興の文章という発言をお詫びさせていただきます。大変不快に思われたでしょう。申し訳ありませんでした。

作品を読んだ感想ですが、普通に楽しく読むことができました。こういう系統の話は大好きなので。
欲を言えば、せっかくキャラの未来の設定を考えたんだからもっとそのあたりを掘り下げて書いてほしかっです(庫人的に気になるので)。

次回作に期待しています。
9.無評価rasan削除
返信 >>8.様
いえ、不快には思っておりません。確かに言われると結構ガツンと来ましたが、自分の文章が他人から見たらどう見えるのか、ということがよくわかり、こうして練り直して投稿することができました。
建前ではありません。ありがとうございます。

そして、この話のキャラの後日談的なものを、こちらであげると短く多くなってしまいそうなので、とりあえず妹紅が先生をしているシーン、ここだけをpixivなどにupしたいなぁと思ってはいます。
なるべく早く投稿したいと思っているので、そちらも見て頂けたら嬉しいです。
13.100名前が無い程度の能力削除
これは面白い話でした。
メインが妹紅と慧音ゆえの永夜ですね。
良かったです。
14.無評価rasan削除
返信 >>13様
ああああああああーすいません!最近目を通してなかったので見逃していました!

妹紅と慧音の話は多くて、そのため悲しく、ありきたりな話になってしまうのを覚悟して書いたのですが、こうして面白いと言っていただけると嬉しいです。
ですがそうですね、やはりほかの方もこういう話は考えられていると思うので、もっとオリジナル要素、予想のつかないような話を展開していきたいと思います。