Coolier - 新生・東方創想話

百を過ぎた永遠の頃

2014/03/24 10:09:55
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 初めは幼い復讐心だった。それはすぐに無力感になって潰えた。
 まどろんだ焚火のゆらめきをまだ覚えている。
 血の海と、硫黄と焦げた死臭が混ざっていたことも。
 化物のように人を殺した美しい神様。
 不死の秘薬と無垢な殺意。

 こんなに明るい夜でなければ、昔のことなんて夢に見ることはなかったのだろう。

 月が降ってくる。私の心臓を射抜きに堕ちてくる。
 瞼の奥まで貫く白光。
 湖に浮かぶ月を割れ。空に沈んでいるのは偽物だ。
 瞼の裏でちらつく過去。
 逃げて、逃げて、逃げるんだ。死に顔のように白い月光が届かない場所まで。
 もっと狂おう?
 きっとこんな目眩も永遠が赦してくれる。
 ふらふらと、くらくらと。
 恐怖に追い立てられて走れ。意識の明滅に合わせて踊るんだ。誰にも邪魔はさせない。
 最果ての狼にまで聞こえるように、天高く。悪魔さえ訝しむくらい高らかに。生まれたての子供みたいに思い切り。
 どうせ月へは届かない。
 吠えているのか、笑っているのか、泣いているのかも分からない。分からなくていい。何も分からなくなってしまえばいい。
 嗚呼、月に冷やされたように冷たい地面だ。お前も私を抱きしめてはくれないのか。
 見るな、誰も私を見るな。何もかもが苛んでしまうから。人も永遠も過去も全てが全て、私を追いつめるためにある。狂気だけが私のよすがだ。
 「……」
 目くるめく星空が頭を揺らす。
 「……」
 たゆたっているようだ。
 「……」
 きっと一刻も過ぎれば正気だろう。
 「……」
 本当に狂えていたの?
 「……………………助けて」

 蓬莱の人の形。
 魂だけの、がらんどう。
読了ありがとうございます。
千年以上もかかってしまいましたが、今は妹紅も幸せにやってるみたいで何よりですね。
雑賀龍々
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コメント



0.460簡易評価
3.80絶望を司る程度の能力削除
狂気を感じますね。最後の一節がなんとも……。
4.70奇声を発する程度の能力削除
おおう…
6.100名前が無い程度の能力削除
最高