Coolier - 新生・東方創想話

鬼と悪魔と最強超女?

2005/04/19 20:59:20
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明鏡止水な湖を越え、ひっそりとそれでいて周りを威圧するような紅を振り撒きながら佇んでいる紅魔館。
しかし、今日の紅魔館は些か『ひっそり』という修飾に似つかわしい状況ではないようだった。

「神槍『スピア・ザ・グングニル』!!」
スペルカード宣言と同時に右手に凝集される力をレミリアは躊躇なく目の前の相手に投げつける。
相手との距離は零。まさに必殺の間合い。
そこらの雑魚妖怪ならば、幾百連なろうが弾丸の前の塵紙宜しく貫いてしまう一撃である。
当然、発射共に相手の姿は掻き消えてしまうのだが、館を振動させるにしても音が鋭すぎた。
そう、それは何も抵抗を受けていない槍が館の壁をぶち抜いた音によく似ていたのだ。

……手応えがない!?

その確信に従って咄嗟に後方に飛び退る。
それとほぼ同時に置き去りにしてきた残像が爆炎によって吹き飛ばされていた。
「ちょっと、いきなり問答無用で仕掛けてくるとはどういう了見よ!」
爆炎の主は床にへばりつくような格好でそう怒声を発する。
先程の槍もそうやって回避したのだろうが、この体勢では怒声にしても迫力不足の感は否めない。
「ここは私の館よ。不審な生物がいれば排除するのは当然じゃない。」
レミリアはその怒声に対してあくまでも冷淡に言葉を返す。
口調は余裕たっぷりであったが、悪魔の翼はピンと張られたままであった。
「失礼な、私はきちんと正門から入ってきたよ。私の存在に気がついたかは別としてね。」
それは立派な不法侵入なのだが、2本の角を持つ鬼に悪びれなんて言葉は無かった。
「それで目的は何?」
軽く溜息をつきながら、レミリアは腕組みをして萃香を睨みつける。
「目的? そんなものあるわけないじゃない。私は一にして全、全にして一。振られたサイコロの目に理由なんてありはしないわ。」
「なら、さっさと帰りなさい!! 『レッドマジック』」
基本的にこの幼きデーモンロードの気は長くないのである。
レミリアは無数の紅弾をばら撒きながら、己の体を赤い霧へと変質させていく。
「うーん、流石に符なしではきついかな? 疎符『六里霧中』」
それを見た萃香は面倒くさそうに頬を人差し指でかきながら、こちらも自分自身の身体を霧散させた。

それは傍から見れば異様な光景だったのかもしれない……。
無数の弾が空間から突如発生しては文字通り空を切ってあらぬ方向に飛んでいく。
しかも、その弾のひとつひとつが十分な致死性を秘めているのだからたまったものではない。
だが、やっている方はもっとたまったものではなかった。
弾が当たらないということは決着がつかないのだ。
無論、スペル発動時間も無限ではないのだが……。
(あ~、やってられない。疲れるだけだし、そろそろ帰ろうかな~)
先に飽きたのは萃香だった。
気まぐれにここにきて、気まぐれに弾幕合戦に参加したのだ。やめるのも気まぐれで何が悪い?
そんな感じで萃香はこの消耗戦を早くも放り出し、霧散していた身体を萃め始めた。

身体を萃め終わると、不思議とレミリアからの弾も発射されなくなっていた。
まあ、萃香としてはそっちの方が帰るのが楽だったので、特に気にしてはいなかったのだが……。
「じゃあ、私帰るね。飽きたから。」
レミリアが存在しているであろう、空間に向かってそう萃香は声を掛ける。
「はいはい、さっさと帰って頂戴。それともう来なくて良いわよ。」
「えっ?」
レミリアの返事を聞いて、萃香は初めて驚きの声を上げた。
はじめから返事など期待してなかったのだ。
それも道理、『霧に口無し』なのである。
「どこにいるの? この私に気配を感じさせないなんて……。」
「それは私が聞きたいくらいよ。」
お互いの声からは明らかな戸惑いが含まれていた。
嫌な予感を感じて、萃香は本気になってレミリアの気配を探る。
そう、幻想郷を包むこの鬼にとって、この幻想郷に存在するもので見つけられないものはひとつを除いて存在しない。
……しかし、レミリアの存在はこの幻想郷において発見できなかった。
自由奔放、豪放磊落な鬼の顔から音を立てて血の気が引いていく。
「ちょっとあんた、右手を挙げてみなさい。」
「なによ、突然……。」
「いいから早く!」
「わかったわよ。」
突然逼迫した萃香の声に気圧される様にレミリアは右手を挙げる。
同時に萃香の右腕も無意識に挙がった。
「はぁ……。」
「ちょっと、その溜息はどういうことよ。」
心外そうに抗議する紅い悪魔。
「わかりやすく説明するよ。今、私が左手を挙げるから。」
その言葉と共に萃香は左手を挙げる。
「あれっ、何で私の左手も……」
そこまで口にしてレミリアも何か悟ったのか口を噤む。
「ねえ、この部屋に鏡か何かある?」
「吸血鬼は鏡に映らないわよ。」
「鬼は鏡に映る。」
「そうなの?」
レミリアの意外そうな言葉と共に身体が勝手に歩き出して、レミリアの部屋に飾られていた大きな銀皿の方へと向かう。
「銀製品は悪魔の敵じゃないの?」
「『銀皿に退治される悪魔が見てみたいわ。』っていう皮肉を表しているのよ。弱点をそばに置くことこそ一流の余裕じゃない。」
「うーん、何か違う気がするんだけどなぁ……。」
萃香が首をかしげた時には、既に銀皿の手の届くところまで到達していた。
「いい?」
「もう覚悟はできてるわよ……。」
レミリアの腹を決めたというよりも諦念に近い返事を合図に、萃香は恐る恐るといった感じで鏡面のように磨かれている銀皿を覗き込んだ……。

幻想郷を包む鬼が唯一見つけることのできないもの。
それは誰もがそうである様に、自分自身の姿なのである。
とどのつまり、レミリアを発見できなかったということは……

黄土と灰青が混じってできたオリーブ色の髪、
腰と肩の中間をとった羽の付け根にかからないギリギリの長さである。
瞳の色はやや紅の強い赤橙色。
頭上には見覚えのある2本の角と背中には蝙蝠羽が各々の特徴を残してはいたが、最早、完全に別の容姿であった。
唯一変化がなかったのは身長を含めた体格くらいなものだろうか?

「「ああっ~~~~~~~!! 身長が縮んでる!!」」
まあ、その事実はお互いに認めたくなかったようなのだが……。



           ◆   ◆   ◆



「……図書館にあった本によると、これは『超合体』と呼ばれる現象ね。」
「「超合体?」」
「正確には超女合体。」
「「更に嫌だ……。」」
パチュリーの言葉にレミリアと萃香は一緒に呻き声を洩らす。

場所は紅魔館の大広間。
レミリア(と萃香)の悲鳴を聞きつけた紅魔館の住人が謎の不審者を発見して、ひと悶着あったあとの時分である。
ひと悶着といっても、いちいち説明することが面倒になった紅魔館主が「紅符『不夜城レッド』」で簡潔に己の存在証明をしただけのことなのだが……。
「それでパチェ、どうやったら元に戻れるの?」
合いの手などの例外を除いては、基本的にレミリアが主立って発言していた。
「そうねぇ、この本によれば合体は互いの友情が壊れた時に可能になって、友情が回復した時に合体が解けると書いてあるわ。」
「全く、そんな複雑な設定じゃぁ読者は付いてこれないぜ。」
パチュリーの隣で、普通の魔法使いがやれやれと肩をすくめて見せる。
どうやら、偶然図書館に遊びにきていたらしい。
「それじゃあ、この合体が解けるには私とあいつが仲良くしなきゃいけないわけ? 嫌よ、そんなの。」
「こっちだって願い下げ。」
1人の口からふたつの拒絶の言葉が飛び出す。
「それなら諦めることだぜ。幸い、力はその超女合体とやらで数倍になってるみたいだしな。」
レミリアと萃香の合体によって力が増幅されているということは、不夜城レッドの犠牲者となった中国が非常にわかりやすく体現してくれた。
無論、罪名は侵入者を2名も許したという『職務怠慢』である。
「確かに今の状態なら、幻想郷で一番強大な力を有しているという自負はあるけど……。」
「最強超女だな。」
「最強超女ね。」
2人の魔女が口をそろえてそう評価する。
「「超女っていうな!!」」
「じゃぁ、最強幼女……ってわかった、悪かったよ。だから両方の手でスペルカード掲げるのは止めてくれないか?」
帽子を胸元に当てて、魔理沙は降参の意を示した。
流石にこれは魔理沙に非があるだろう……。
「そうだ、紫の能力ならどうにかなるかもしれない。」
つっこみ以外は沈黙を守ってきた萃香が口を開く。
同時に身体のイニシアチブも獲得したようで、表情に希望の光が伺えた。
だが、魔理沙が自分の足元に落ちている紙を拾ったことでそれもすぐに終わりを告げる。
「おっと、突然お便りが届いたぜ。なになに……ラジオネーム『楽園の素敵な妖怪』さん。私としては『楽園のスキマな妖怪』さんの方があっていると思うけどな。お便りの内容は『スクリュードライバーはそれでひとつのお酒だから美味しいの。そこにはウォッカとオレンジジュースの境界なんて存在しないわ。』だそうだ。」
「つまりダメって事ね。」
パチュリーが1分の容赦もなく止めを刺した。


「第1回友情を育もう大会だぜ!」
「まずはお互いのことを深く理解することが肝心ね。とりあえず自己紹介でもしてみましょうか?」
「「え~~~~」」
ノリノリと淡々で好対照な魔法使いたちだったが、司会進行は当の本人達を置き去りにするくらいスムーズに進んでいく。
「こらこら、元に戻りたいって言い出したのはお前達だろうが。」
紫に無理といわれ、パチュリーに止めを刺されたことによってレミリアと萃香は元に戻ることを公言していた。
できないといわれたらやりたくなってしまうのは、種族を超えた悲しい性なのだろうか?
「いや、確かに戻りたいって言い出したけど、あれは今にして思えば出来心っていうか……幻想郷全てを見渡せる私に紹介なんて今更必要ないわよ。」
「そもそも、人前で自己紹介なんてできるわけないでしょ? ……恥ずかしい。」
それでも自分のプライドを尊重するあたり、気難しい2人である。
「なら、却下だな。私が見れなければ大会じゃないし、だいいち詰まらん。」
「そうね、合体の瞬間が見れなかったのだもの。分離の瞬間くらいは立ち会いたいわ。」
こっちもこっちで無茶苦茶ではあるが……。
魔女の探究心は鬼をも泣かすといったところなのであった。


「第2回紅魔館主催友情を育もう大会だぜ!」
「次はこの本の第1期の2話を参考にして、拮抗する実力の2人がお互いを認め合うという展開で行きましょうか?」
「要は殴り合いだぜ。」
「……ふと気になったんだけど、その本はいったいどんなストーリーなの?」
どこか疲れたような表情で問いかける。
身体の主導権はより強い意志を発露したものが獲得できるのだが、双方ともその程度の気力しか残っていなかった。
パチュリーはそんな状態の友人を完全に無視して、あくまでも淡々と本のあらすじを伝える。
「やんごとなき身分の宇宙人が地球にやってきて、」
「輝夜みたいなものだな。」
「誤って地球人を殺してしまい、その地球人を蘇らせる。」
「妹紅と蓬莱の薬だな。」
「そして、周りの人々を巻き込んでのドタバタ騒動が起こるという話よ。」
「そして、永遠亭の兎たちを巻き込んだ壮絶な殺し合いだぜ。」
「それのどこに合体の要素があるのよ……。」
魔理沙の言葉を綺麗に聞き流しながら、レミリアはそう一言で感想を述べる。
「たまにシリアスになるのよ。」
パチュリーはどこまでもクールであった。
「まぁ、いいからさっさと始めようぜ? 火事と喧嘩は江戸の華ってね。」
いつの間に移動したのか、魔理沙はかなり遠いところからけしかける。
基本的に人間というのは短命なだけに他の種よりも要領良くできているのだ。
しかし、ノリノリの魔理沙とは対極的にレミリアと萃香は弱ったような力ない笑みを浮かべるだけであった。
「競い合うっていってもねぇ、弾幕合戦の末に合体したわけだし……。」
「それに、ひとつの身体でどうやって殴り合えと?」
……まあ、つまりは第2回もお開きということである。


「第3回紅魔館主催チキチキ友情を育もう大会だぜ!」
「といっても、他に手段が浮かばないのよねぇ。」
「まあな。」
そういって、腕を組んだまま思案に耽る魔女2人。
萃香はもとより、レミリアもこの2人には既に期待を抱いてはいなかった。
他に頼りになる人物といったら……。
「……あの、お嬢様?」
その思考が相手にも伝わったのか、今まで頑なに沈黙を守っていた紅魔館メイド長が口を開く。
あとはもうこの従者が時間を繰り完全で瀟洒に解決してくれることを祈るしかない。
レミリアの表情が咲夜の発言によって久しぶりに明るくなった。
「何かしら、咲夜。」
でも、その一握の期待すら
「今の御姿のときは何とお呼びすれば宜しいのですか?」
あまりにも簡単に裏切られてしまうのであった。
このメイドは意図していなかっただろうが、結果的に紅い悪魔の時間を止めてしまったという事実はなんとも皮肉としか言いようがない。
「この本に従った命名法なら『スイリア』だけど語頭の摩擦音が若干発音しづらいわね。」
「それならわかりやすく『レミリア・スイカーレット』でいいじゃないか。フランと合体したら『フランドール・スイカーレット』だぜ。」
「でもそれなら、レミィの呼び方自体に変化はないわ。」
「それは好みの問題だろ? 私はスイカーレットと呼ばせてもらうぜ。」
2人の知識人はこの問いに興味を覚えたらしく、伏せがちだった顔を上げて積極的に持論を展開する。
そしてそれは再び当の本人たちを蔑ろにして徐々に熱を帯びていった。
本人たちといっても、姓の方にまわされた萃香はというと悟りきったもので、この無意味な争論の顛末を傍観する気満々なのであるが……。
だがそれも長くは続かないだろうなぁと、小刻みに震えている自分の身体を意識して萃香は内心溜息をついた。
議論はまだまだ続きそうだったが、咲夜は適当なところで切り上げてスイカーレットの方を向く。
「お嬢様はどちらが適当だと思いますか?」
この言葉が一触即発状態であったレミリアの起爆剤の役割を担ってしまった……。
「もう……好きになさい!!」
相手を威圧するような重く鋭い一喝というよりは、裏返ってなんとも間の抜けた怒声といった感じである。
「…………っ!」
それが自覚できたのか、頬を染めたスイカーレットは俯き加減で足早に大広間を出て行った。



空は徐々に暁に近づき、山際からだんだんと青の色が溶け出しているかのようなそんな時刻。
テラスに備え付けられた柵に両腕を乗せて、しな垂れかかっている影がひとつあった。
「ねぇ、いつになったら元に戻れるのかしらね。」
「さてね、でもこの姿のお陰でお日様の下でも堂々と活動できるのだから悪くないじゃない。」
間もなく吸血鬼にとって最大の弱点である太陽が昇るのだが、鬼にとっては日光などそれこそ蝋燭の光と変わらない。
逆に鬼にとって忌むべき豆も、吸血鬼にとっては単なる植物の種子に過ぎない。
共通の弱点があるとすれば、鰯の頭くらいなものであろう。
その点に関してのメリットは確かに多い。
寧ろ、デメリットはひとつだけと言ってしまった方が早いのであった。
「まあ確かに、今度からは日傘を差さずに霊夢のところに遊びに行けるわね。」
「最初は誰なのか気付いてもらえないだろうけれど……。」誰にも聞こえないくらいの小さい声でレミリアは呟くのだが、同じ身体を共有している萃香に聞こえない筈がない。
「前々から訊きたかったんだけどさ。あんたって人間が好きなの?」
見せる相手はどこにもいないのだが、萃香は頭の裏を掻くような仕草をしながら紅い悪魔にそう問いかけた。
「そういえばあんた、あの宴会の時もそんなこと口にしてたわね……。いい? 何度も言うけど私にとって人間はパンと同じ価値しかないわ。嗜好という意味ではB型の人間は好きだけどね。」
こちらも見せる相手は内にいるというのに、自分の胸に手を当てて威風堂々とレミリアは答える。
「本当に? だってあなたは自分に恐怖する人間の血しか吸わないじゃない。それは逆に、あなたを嫌っている人間じゃないと思い切って血を吸うことができないからじゃないの?」
「違う! 私はただ恐怖し震える人間の様を見て楽しんでいるだけに過ぎないわ……。」
挑むような萃香の言葉を大きな声で否定するレミリア。
「悪役に徹するのはなかなか難しい作業だからね。」
「だから違…………。」
ひとり納得するように頷く萃香にレミリアは否定の言葉を重ねようとするが、言葉の途中で発言権を奪われてしまう。
咄嗟に口から出た否定辞を中断させるほど強い意志を持った幻想郷の鬼の言葉、それは……

「私は人間が好きだよ。」
という至極あっさりとした一言であった。

「人間はそりゃあ、嘘はつくわ、鬼を騙すわ、退治とか言って暴力を振るうわと色々と問題ありだけどね。それでも鬼としては、子供を追いかけて泣かすことも節分に豆をぶつけられて追い出されることも、どちらも楽しいよ。まあ、悪役というのは憎まれ役だからね、ツライ目にあうことの方が多いけど、鬼を相手に必死になって一喜一憂する人間を見ているのが好きなのさ。」
そんな萃香の言葉のあとも、スイカーレットの身体はしばらく微笑みを浮かべていた。
それがどちらの微笑みなのか、双方とも知る由もなかったが……。
「……ふんっ、あんたの好き嫌いなんて聞いちゃいないよ。」
「全く、毎度毎度素直じゃないこと。」
相変わらず傲然としたレミリアの態度に、萃香は諦めたように首を振る。
そして、どちらともなく山間から白んでいく空を見つめた。
「だけど、まあ、日の出くらいは生で見てみたかったかな……。」
「ホント、そういうところだけ素直よね~。」
それが『レミリア・スイカーレット』として発せられた最後の言葉なのであった……。



           ◆   ◆   ◆



幻想郷の住人にとって悪魔の居城として名高い紅魔館。
全てを威圧し、迷い人すら拒絶するこの館において、主はというと自室でただ月を見上げていた。
「咲夜。グラスを2つ持ってきて頂戴。」
誰も居ないはずの部屋でレミリアはそう声を掛ける。
「はい、只今。」
だが、人の居る居ないなど『現在』という時の流れの一点を観測したに過ぎない。
紅魔館メイド長にとってそんなものは路傍の石と大差ないのである。
「ところで、グラスを2つ用意するということは誰かお見えになるんですか?」
そんな疑問を口にしながらも、きちんとテーブルと椅子を2つ用意しているところは流石といったところであろうか。
「もうそこに居るわよ。」
「はぁ。」
咲夜の間の抜けた返事に、レミリアは口元に手を当てて可笑しそうに笑う。
「これで用意が整いましたから、私は退室させてもらいますね。」
卒のない動きでテーブルを整えたあと、咲夜は歩いて部屋から退出する。
一瞬にして姿を消すことも可能だが、こういう能力だからこそ部屋から出て行くことを相手に示すことも重要なのである。
「さて、それじゃあ飲みましょうか? 今日は特上のワインを出してくれる約束だったわよね。萃香。」
そうレミリアは再び誰も居ないところに向かって声を掛ける。
するとこちらも再び誰も居ないところから、2本角を生やした少女が現れた。
「わかってるわよ。そんなに焦らなくてもお酒は無限に溢れてくるんだから。ゆっくりいこうよ、レミリア。」
そんなことを言いながら、萃香は先に席に座りグラスにワインを注ぐ。
「楽しい夜になりそうね。」
「永い夜になりそうね。」
お互いに微笑みを浮かべながら、そう2人はグラスを交わすのだった。

どうも、あんまり間をおかず再登場の葉爪です。

今回はパロディに挑戦してみたのですが、元ネタを知っている方が何人にいらっしゃるか、ちと不安です……。
この作品は雪羅奈界氏のSS「私の瓢箪を返せぇ~~~!(泣)」のあとがきで「レミリアも霧になるのか!?」という言葉からひらめいたものです。
そこからどうして合体に至ったのか当の私も理解できません。
ご存知の通り「レッドマジック」では霧になりはしませんが、ボムが通じないあたり霧と化したとしても不自然じゃないかなぁ~と。
当初では咲夜を真田さんにするつもりだったんですが、収拾がつかなくなるので断念しました(苦笑)

こんな急ごしらえの勢いだけで書いた作品ですが、少しでもニヤリとしていただけたら幸いです。
あと、既出ネタでないことを祈るばかりですヨ……。
葉爪
[email protected]
http://www2.accsnet.ne.jp/~kohaze/
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コメント



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16.無評価しん削除
萃香の問いを否定してるレミリアに    萌えた
(元ネタなんだろう… 知ってるかもしれないが、思い出せん…
18.80SRW削除
レ、レミリア万歳!
元ネタはUFOのアレですな。しかも、第二期
42.80名前が無い程度の能力削除
ゆうきまさみのあれかとおもった。
61.80名前が無い程度の能力削除
こりゃ面白かった。