Coolier - 新生・東方創想話

梅雨明けの社

2007/07/16 21:28:02
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よく晴れたある日の博麗神社。
いつものように黒白の魔砲使いがやってきた。
「おっーす、霊夢~居るか~?」
しかし返事は無い。
「れーいーむー?お邪魔するぜ~?」
返事も無いのでずかずかと上がり込む魔理沙。
「おーい、サボリ巫女~餓死してないか~?」
適当に襖を開けて霊夢を探す。
「お、こんなとこで寝てたのか」
「…何よ、来たの?」
「人のセリフをパクっちゃ駄目だぜ?」
「ぬすっとってホント猛々しいわね」
「私は正々堂々と借りてるだけだ」
「一応自覚あるんだ」
ぐたりと寝転んでる霊夢に適当に、本当に適当に話しかける魔理沙。
しかし霊夢は霊夢で起きもせず、只いいかげんに応えるだけであった
「ところで、何をやってるんだ」
寝転がっている人間に何をやっているは無いだろう。
しかし、そう思ったからと言って。
「見たら分かるじゃない」
と霊夢は言わない。
「洗濯物の真似かしら」
「にしては風に吹かれて気持ちよさそう、ってとこからは程遠い姿だな」
「んー、じゃ取り込まれたアンタんちの洗濯物でいいわ」
「わたしはちゃんと畳んでるぜ」
「私の勘だと、ベットの上に畳んでから放り投げてると見た」
「じゃって何だよ」
「突っ込むのが遅い」
「時間差攻撃だ」
「ふーん、とりあえずアンタが悪い」
「何だよそれ?」
「時間差攻撃」
「それこそ何なんだよ」
梅雨明けの空に風の通る神社。
やらなきゃならないことは何も無い。

「茶くらい出てこないのか」
「お茶が勝手に出てきたら、私の仕事が増えるじゃない」
「これでも客だぜ?」
「いきなり人の家に入り込んでくるのは客じゃない」
「なら主のように振舞わせて頂きますわ」
スカートをちょっと上げて、魔理沙は丁寧にお辞儀をした。
「じゃあ私の分のお茶もお願いね」
「ご免被ります」
「主のクセに?」
「霊夢には言われたくないなぁ」
ぶつぶつ言いながら座る魔理沙。ここは畳の間。
「ところで、何か用事?」
「そりゃもう、愛しの霊夢に会いに来たんだ」
「じゃ用は済んだんだからお引取り下さい」
「酷いぜー」
「だってそうじゃない、こっちは用なんか無いんだもの」
「こっちも用が無いんだから居てもいいじゃないか」
「そういうもんなの?」
「そういうもんだぜ」
雨の上がったある日のこと。
時間はゆっくり流れていく。

「仕方ないわね…」
「お、ついに茶が出るのか?」
「そんな訳無い、アンタも寝転がりなさい」
「何でだ?」
「魔理沙だけが起きてるから、私がだらけてるように見えるの」
「だから私が寝ればそうは見えないと?」
無重力巫女だからこそ言える、正直どうしょうもない理屈である。
「座布団はそこにあるから枕にでもどーぞ」
「相変わらずグータラだな」
「忙しくすればいいってモンじゃないでしょう?」
「小人閑居をして不善を成す、だぜ?」
「泥棒活動に精を出して忙しい魔法使いを、私は知ってるわ」
「非道いぜー」
「確かに非道いわね」
「まぁとりあえず私も寝転がらせて貰うぜ」
「ん、そうしなさい」
自分の座ってた座布団を枕にして横になる魔理沙。
少し動くと汗が滲んでくる季節。
太陽の時間が長い季節。

「なぁ、霊夢ー」
「何?」
「こうしてて楽しいのか?」
「全然」
「じゃあ何かしようぜ」
「何かしてて楽しいの?」
「きっと楽しいぜ~」
「それじゃ、気をつけてね」
そう言って寝返りをうつ霊夢。
「何だよ、つれないなぁ」
「たまにはアンタが私に釣られたら?」
「今釣られるから暇なんだよ~」
寝ながら手足をバタバタさせて駄々をこねる魔理沙。
「ほらほら暴れないのー、ほらほら~」
寝ながら玉ぐしをデンデン太鼓のように振って魔理沙をあやそうとする霊夢。
「じゃあ何かしようぜ」
「それじゃアンタ、何か適当に話しなさい」
「何を話せばいいんだ?」
「何でもいいわよ、その隙に寝るから」
「ひどいぜー…」
「寝ないような話をすればいいじゃない」
向かい風でも追い風でもない風が、神社の中をさーっと吹き抜ける。
太陽が幾ら神社を照らしつけても彼女らは寝たまま動こうとしない。
魔理沙はうつぶせになったまま、霊夢は魔理沙の方を向いて寝ていた。

「そういやさ、こないだアリスと出かけたんだ」
「なんだかんだ言って仲良いわね」
「妬いてる?」
「うん、とても」
「安心しな、私の愛はノンディクショナルなんだぜ?」
「うん、安心した」
「私は反応が薄くて全然安心しないんだが」
「それで、アリスと何処に行ったの?」
「ああ、買い物に誘われたんだ『反物を買いに行かない?』って」
「ふーん」
「私は人里に行くのは嫌だし、服を作るような趣味も無いぜって断ったんだが、じゃあ香霖堂に行こうとか言い出してな」
「ふんふん」
「まぁそれじゃ私もついでがあるってことで一緒に出かけたんだがそれが夕飯前だったんだ」
「お腹空いてたの?」
「そう、だから途中で御飯を食べに行ったんだが屋台に入ったのが失敗だった」
「夜雀の所ね」
「あそこの鰻は元々絶品なんだが、この時期は特に旨くて酒がすすむ、またアリスは呑むとクセが悪いんだ」
魔理沙は、苦笑気味にそう言いながら仰向けになり、伸びをする。
「ん、ん~…」
そしてそのまま霊夢の方を向いて寝返った。
「ああ、確かにそんな感じね、話してると宴会で人の輪が解けていくし」
「『皆が私を怖い娘だって噂してる~』とか言われてな」
「そりゃ人の家の裏で藁人形に五寸釘刺してるとこばら撒かれたら、怖がられもするわ」
ごっすん。ごっすん。
「そうやって絡まれてるうちに大分遅くなってしまったんだ」
「あらまぁ」
「酔ってふらふらしながらも香霖とこに行ったんだけど、もう店が閉まっててな」
「まだ行こうとするのも、どうかと思うわ」
霊夢もまた、呆れ顔で仰向けになり、伸びをした。
「くっ、ふぅ…」
そして今度は座布団に顔を埋めうつ伏せになった。
「折角来たんだから開けろーってマスタースパーク撃とうと思ったんだが、視点が定まらなかったから止めたんだ」
「思うな、そんで初めから止めときなさい」
「で、アリスが半泣きで、『もういいわよ…ねぇ、帰ろぉ…』とか言うんだ」
「大分酔ってたのね」
「そしたら雨が降ってきたんだ」
「とことんねぇ…」
「『私が…何をしたって言うのよぉ…』って最後は号泣してた」
「まず、買い物に行く前に酒を飲みに行く時点で失敗だと思うの」
「そうだな、帰りは自力で飛べなくなってたから箒に乗せてったんだが、家に戻る前に戻してた」
お食事中の方、申し訳ない。
「うーん、アリスの自業自得な気がするけど…」
「けど?」
「とりあえずアンタが悪い」
「何でだ?」
「時間差攻撃」
「ここでか…」
「まぁ、そういうことにしときなさい」
「そういうことにしとくか」
風はゆっくりと吹いている。
太陽はもうすぐ真上に来る。

「さて、色々喋ったらお腹が空いてきたな」
「…んー」
「そろそろ昼ごはんにしないか?」
「ん…」
曖昧な返事をして、ころんと寝返る霊夢。
「あ、寝ようとするな!この!」
がばっと霊夢の上に被さる魔理沙。
「きゃっ!ど、どこに手を入れてるのよ!?」
「この~人に散々話させといて!こうしてやる」
「ちょ、まっ…あは!ははは、はは!!」
「こいつめ~いい加減起きろよ~」
「あははは!!はは!や、やめっ!ははははは!!」
「弱点丸出しなんだよ!そりゃ!そりゃ!」
さすが腋巫女。
「あはははは!!はははははは!!ちょっ…!!もう!!ははははは!」
「ははは!!どうだ!!この!」
よく晴れた日の昼間。
静かな神社に少女達の笑い声が響き渡る。
特に何をする訳も無く。
少女達の時間は過ぎていく。

何でもない、何にもないそんなある日のこと。
こちらでは始めまして、屑です。
『どんだけ』って方言ですよ。
ちょっと修正(7/16)
欠片の屑
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コメント



0.480簡易評価
10.80SETH削除
女の子してるw
11.80読み解く程度の能力削除
会話分を中心にテンポ良く読めました。それでいて、会話の中身がダラダラ~っとしていた事に微笑ましさがw
今度はもう少し文章量を増やしてもらいたいです。