Coolier - 新生・東方創想話

東方絵真説-其の二-

2008/06/01 20:58:51
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※注意書き※


 この作品には、オリジナルキャラクターが登場します。

しかもそんなに自重してません。そんな気がします。ですので、お読みになる方は

そういった事情をそれはもう考えた上で、本作をお楽しみください。宜しくお願いします。


お勧めBGM:東方緋想天より「甲論乙駁」とかその辺。







-本編-



 博麗神社の中にある、客間というか居間。霊夢と絵描きはのんびりとお茶を飲んでいた。

もちろん。ただのんびりとしていた訳ではなく、ちゃんと幻想郷の説明もした。偉い。

「とまぁ、大体これで分かってもらえたかしら」

霊夢の言葉に絵描きはこくりと頷くと、

「霊夢はちゃんと巫女さんでした」

そう言って頭を下げた。


東方絵真説 -其の二-


 境内を桜の花びらが舞っている。

「それで、今度はあなたの事を聞かせてもらおうかしら」

緑茶を飲み干し、霊夢がゆったりとした視線を向けて絵描きに尋ねた。

「えーっと」

しばらく絵描きは言葉を考えて、ようやっと口に出した。

「川合真彦、学生。絵描き見習い。えーっと、好物は桃とか柿とか。秋が好きかな」

その自己紹介はいかがなものかと思われる。

「あ、羊羹食べる?」

聞いちゃいない。

返事も待たずに霊夢は席を立ち、奥の方へと引っ込んでいった。

単に自分が食べたいだけに違いない。今までの会話からなんとなく絵描きはそう思った。

だが、別段それを気にするほど彼は細かい性格をしていない。つまり暢気だった。

「さて」

霊夢の居ぬ間に思いを巡らす。何だかんだと言って不思議な出来事に遭遇したのだ。

彼にも色々と考える時間が必要だった。ぽつぽつと呟きながら思考を開始する。

「ここは幻想郷。以前自分が居た世界とは隔絶された世界。妖怪達の天下」

妖怪と口にした時、彼は口元が緩んだのを感じた。

「外の世界で幻想と呼ばれる者達が辿り着く場所。まぁ適当に言えば不思議世界みたいな」

「そう不思議世界。幻想郷へようこそ」

「ご丁寧にどうも…って、はい?」

霊夢はまだ戻ってきていない。そして声は背後から聞こえてきた。

「ごきげんよう外の人。ここは気に入っていただけたかしら?」


 振り向くと、そこには上半身だけの何者かが居た。


「………」

しばしの沈黙の後、絵描きはゆっくりと席を立ち、『彼女』の周りをぐるぐると回り始めた。

その様子を彼女は面白そうに眺めている。だいたい三周くらい彼女の周囲を回った辺りか、

色々と下の空間に手を伸ばしたりした後、徐に絵描きは瞳を閉じると、直後

「うぎゃー! ばーけーもーーのーーーーーーー!!!!」

目をカッと見開いて叫んだ。

「神社に出るなんて舐めた真似してくれるじゃない! って、紫?」

声を聞きつけて駆け込んできた霊夢が、彼女を捉えてそう言った。

「はーい霊夢。遊びにきたわよー」

紫と呼ばれた妖怪は、それなりにいい感じの笑顔で手を振った。ポーズもとった。

「あんた、結界の修復はどうしたのよ。しっかりやれって言ったでしょ」

どことなくいぶかしむ様な口調で霊夢が言う。羊羹が一つ減った。

「はいはい、急かさないの。ちゃんとそれはやってるから安心なさい」

よっこいせという掛け声と共に、紫はその全身を現した。

「あれ、上半身お化けじゃなかったのか」

「失礼ね。私は寒くないわよ」

「どうでもいいけどもう絵描きさんの羊羹はなくなったわよ」

理不尽。

「ごちそうさまでした」

紫がナプキンで口を拭う。上品の仕草だがやった事はただの泥棒である。

「で、こちらの殿方はどこの馬の骨かしら?」

「外来馬よ」

「国産です」

なんとなく絵描きはこの場のノリというものを理解し始めていた。


 しばらくの間、紫と霊夢は絵描きをそっちのけで自分勝手に話を進めていた。

「ということで、霊夢。もうちょっとこの辺はどうにかできないのかしら?」

「それはダメよ。そんな事したら面倒臭いわ」

「私だって面倒臭いのは嫌よ。じゃあこれも藍にやらせるという事で」

「決定ね」

話の行く末をのんびりと見守りながら、絵描きは見知らぬ藍という人物の身を案じた。

どこか遠くで鳥の鳴く声がした。

「ところで」

紫がちらりと視線を彼に向ける。

「あなたはこれからどうするつもりなのかしら?」

だいたい絵描きが考えをまとめた頃に聞いてきた辺り、彼女の智慧が窺える。

「二択ですか?」

「何のこと?」

霊夢の問いはさらりと受け流して会話が進む。

「極端に言えばそうなるわね」

「結論はまぁ決まっているんだけど、乗り出す勇気がないんです」

「だから何の話よ!」

ボカッ

「いてっ」

野良猫が境内を横切った。

「ちょっとは深読みしてみなさいな」

「つまりピラミッドの地下に行くかどうかが問題なんでしょ?」

「そう言われると怖くなってくる…」

そうは言いつつも、だいたいの方向は決まったようだ。

「ってことで、残ろうと思います」

「そう言うと思ったわ」

「ほらやっぱり木乃伊ね!」

したり顔で霊夢がウィンクした。

「木乃伊か冒険者かはこれからの行い次第ね」

空間に開いた何かに腰掛けて紫は何やら思考を開始する。とりあえず放置しておこうと

霊夢が言うので、絵描きは再び注がれた緑茶を一口飲んだ。

「そういえばお茶はあるんだな」

「霖之助さんの所で大体は調達できるわ」

適当に聞き流しながらもう一口。緑茶の渋みが口の中に広がっていく。

「ねぇ絵描きさん。あのスケッチブックを見てもいいかしら?」

興味津々と言った様子で霊夢が言う。言いながら既に手はスケッチブックの方へ

向いており、断りでもしたら酷く残念がるか怒るかどっちかする様子だった。

断りようがない。

「別に構わないよ」

そもそも断る気もなかった。なぜなら、

「他には何も描いてないのね」

酷く残念がる霊夢の声がした。

「悪いね。それはここを描きに来る際に新しく購入した物なんだ」

「他に何か持って来てないの?」

霊夢の視線が彼の持っているバックパックに向かうが、

「いい事を思いつきましたわ」

紫の発した一言で注意が逸れた。

「いい事って、またどうせ厄介な事しか考えてないでしょうが」

先程以上の疑いの眼差しを向けながら霊夢がその体を紫へと向ける。

「それは当然」

まさしく当然。

「それでいい事って?」

そして出てくる乗る阿呆。

「私の手立てで彼を人間の里までお連れしようと」

「それは助かる」

渡りに船だ。

「紫はこんなだけど一応もしかしたら大妖怪なのよ」

前言撤回。

「お断りします」

「つれないわね」

「せっかくの好意だから受け取りたいと思うんだ」

「断った方がいいわよ」

「断るべきなのか」

「強い者ほど弁えているのよ」

「巻かれるべきか」

「強い奴ほど胡散臭い」

「木乃伊怖い」

終わらない。


 そして結局……


 夏が近い空は未だその青さを失わず、

「まぁ気が向いた時にでも後ろから化かすわね」

「勘弁してください」

彼は徒歩で里まで向かう事になった。傍らには一羽の烏のような何か。手には白黒玉。

「式神に陰陽玉。まさか本当にそういうご利益にあやかる日が来るなんて」

「意外に詳しいのね、実はその道の人だったりするのかしら?」

「最近はにわか知識が豊富にあるんです」

「インターネットね」

「お婆ちゃんです」

「蜘蛛の巣なんてそこら中にあるわよ」

霊夢の勘はたまに鋭い。

「じゃあそろそろ出ますね。聞けば聞くだけ急いだ方がいい気がするんで」

「そうしなさいそうなさい。夜道には必ず気をつけるのよ」

一番何か仕込んでそうな妖怪が一番親切な言葉を放つ。胡散臭い。が、暢気な絵描きは

それにそこまで危機感を感じることはなかった。多分霊夢のせい。

「それじゃあお世話になります」

「その道の先に楽しき未来のありますよう祈らせてもらいますわ」

流石にそこまで言われるとなんだか空寒くなってきた。

「失礼します」

絵描きはそう言って、博麗神社を後にした。


 博麗神社の家の中に、今もなんとなくその絵は飾られている。


 烏の導を頼りに、のんびりと絵描きは里を目指す。

夕暮れ時の自然溢れるこの道は、絵描きの心に様々な感情を湧き出させていた。

 簡単に言えば魅せられたのだ。

怖いものは怖いし、今まで居た場所に対する未練も当然あった。だが、それ以上に

彼はこの景色に魅せられていた。どうしようもないほどに。

 彼の隣をのんびりと飛ぶ妖精を見つける。

あまりにも当たり前のように飛ぶそれを、彼は特に驚きもせずに見送った。

それはそれとして自然なのだと、説明する時彼女が言っていた。

じゃあそれがきっと幻想という物なのだろう。そう彼は解釈する事にする。

若輩の自分が、この時期にこの場所に立てたという事に感動していた。

『これからどうしていこうか』

暢気にそんな事を考えながら歩みを進める絵描きの視界の先に、里の明かりが見える。

 とりあえず目の前の事をしっかり留めていこう。

そう決意して一歩を踏み出し、

「ずえあっ」

彼は程よい崖から転がり落ちた。

「ったー」

色々と目も当てられないようになったが何とか道具は無事だった。砂を払い立ち上がる。

どこからか子供の笑い声のようなものが聞こえた気がした。

「………」

帰ろうかな?

「行こう」

彼は里に向かって歩き出した。

意外と早く其の二をお届けすることができました。

前回コメントを残してくださった方々に感謝いたします。様々な修正点はなおさせていただきました。



今回も、一見のんびりとした作品を目指して努力はしてみたのですが

それがどう皆さまの目に届けられるのやら。



これからも気が向いたときにのんびり更新できたらいいなと思いつつ。

後書きの筆を置かせていただきます。

懐の広い幻想郷に感謝して。では失礼します。
柳猫三叉
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コメント



0.170簡易評価
2.無評価名前が無い程度の能力削除
これはないは~

変にオリつくんなよ
8.70名前が無い程度の能力削除
 ふわふわとした会話文は私という読み手には

 のんびりとした印象を与え、心地良いものでした。

 そこにもう少しテンポの良さを加えると、全体が

 読みやすくなるように思えます。

 ゆっくりと、自分の描きたいものをお描きになってください。
9.90名前が無い程度の能力削除
会話の場面は東方っぽさの出どころとしてかなり重要だと思っているのですが,
其れに固執して著者自身の味を失わないで欲しいと思うのです。
適度な匙加減でおいしい紅茶が出来上がればいいな。