フランちゃんとパソコン

私は退屈している。

４９０年間、地下に監禁状態だから当たり前かもしれないけれど。

出して貰えない理由はわかっている、私の能力が危険だから。

私も別に出たいと思わない、興味がない…違う、本当の理由は知らない世界が怖い。

だからあえて出ようとしなかったかも。

でもっ……でもさぁ、少し部屋を出たからって咲夜が何故か私を直ぐ見つけて「駄目です、直ぐにお戻りください。」だよ。

やだって言っても気づけば部屋に戻されてるし。

汚いよね時間を止める能力って、チートだよチート、やってられないよ。

お姉様の命令でトイレにもお風呂にも着いてくるし、何この嫌がらせ…ストレス溜まって暴れれば気が触れてるとか、イジメだよイジメ。

誰のせいで暴れるのか小一時間問いただしたい。

今度絶対にお風呂の水を聖水に変えてやる、もちろん私は入らないけどね。

お姉様は「うー☆」とか言って紅茶飲んでれば良いのよ。



でもこの日から私の日常が大きく変わった。

ことの始まりは一人の妖怪、スキマ妖怪と言われている八雲紫との出会いだった。

いきなり何も無い所が割れて、「始めましてフランドール・スカーレット、私は八雲紫よ。」っと言って変な紫色の目がいっぱいある中から現れた。




『フランちゃんとパソコン』




「暇ならこれ覚えてみない？」と言われ紫が出してきたのは見たことも無いものだった。

外の玩具と言われ直ぐに興味を持った私。

いつも遊ぶと言えば美鈴と弾幕ごっこや格闘戦……それもごくたまに。

門番に支障をきたすからあまり無茶も出来ないって。

お姉様もたまに遊んでくれるけど……私が暴れるときだけ。

話もろくにしてもくれない、やっぱり嫌われてるのかな私。

まあこんな状態の時に玩具出されれば興味持つに決まっている。


その玩具の名前が『パソコン』、なんでも外の世界の情報が見れたりゲームが出来たり、いっぱい面白い事が出来るんだって。


でもそれをやるには色々勉強が必要みたい。

まあ勉強は嫌いじゃないけどね。

たまにパチュリーが来た時に本借りたりするし。

後は力加減が必要みたい……私にはこれが一番難しいかも。

何せこの玩具、人間でも簡単に壊せてしまうほど脆いらしいから。


紫はある程度説明してくれたが、パソコンマニュアルって本を筆頭に様々な本を置いていった。

親切に読む順番も教えてくれた。

ただ最後に


「後はあなたが自分で覚えなさい、わからない事があったらこれで呼びなさい。　私の式が教えてくれるから。」


っと言って、通信機ってのを置いていった。

もちろん使い方も教えてくれた。







それからと言うもの兎に角紫が置いて行った本を読み漁った。

専門用語がいっぱい出て来た時は、本気で何言いたいんだこの本はって言って思わず『ギュッとしてドカーン』をしそうになっちゃった。

本の中に専門用語辞典があったのでそれを見ながら覚えていった。

たださ紫…なんで専門用語辞典が読むの最後になってるわけ？

とりあえず通信機で文句を言っておいた。



ある程度読み漁ると大体パソコンとは何かどうやって使うのかがわかって来た。

パソコンの起動の仕方など初歩的な事から、インターネットっと言うので情報が見れるとか遊び方とか。

私の貰ったパソコンはノートパソコンと言うお手軽に持ち運び出来るタイプの物だとか。

まあその他もろもろ。

しかしここまで結構な日にちがたったんだよね。

それなのにまだ一度もパソコン起動させてないんだよね。

もうそろそろ良い感じで覚えてきたから使ってみようかな。

力加減は触る程度でいいかな。

今回は普通の本なのに破かなかったし平気だと思う。



それじゃあスイッチぽんっと。







……楽しい、楽しすぎるよパソコン！！

あれから一年、本当にパソコン尽くしの毎日。

外ではそれを引き篭もりと言うらしいんだけど、出して貰えないんだから仕方ないでしょ。

ただ最初お姉様がパソコンの存在を知った時、っと言うか紫からのプレゼントって理由だけだすごく怪しんだ……なんで？

ああそうだ、パチュリーが私の読み終わったパソコンの本持ってっちゃった。　やたら鼻息荒くてキモかった。



とは言えなんかこの頃、弾幕ごっこ？　何それ美味しいの？って言いたくなる位楽しんでいる私。

そう言えば弾幕ごっこ……一年くらいやってないよ。

まあ良いよね。

そしてたどたどしかった私のタイピングも今や紫や紫の式の藍もビックリするほど速くなっていた。



関係ないけどこの時、藍の式の橙が一緒に遊んでくれたんだ、パソコンで。

二人で動画見ながら「「可愛いよね、ぬこ！！」」とか言って猫動画を見ていた…和んだ。







あれから更に一年がたったんだけど、お姉様が泣きながら「お願いよフラン！！私と戦って！！」なんて言ってきた。

あんなに私が暴れるのを嫌がっていたのに、何なんだろう。

折角今から『パチュリーと小悪魔のねっちょりした一日』って言う私の作った動画をニ○ニ○動画にうpしようと思ったのに。

正直面倒くさかったけど、二年も体動かしてないからお姉様と遊んでみた。

結果惨敗、なんか高笑いして部屋に戻っていくお姉様、私はインドア派なんだから無理させないでほしい。

まあどうでも良いや、兎に角動画をうｐしよう。



結果、運営に消された……私乙　orz



気晴らしにこの前ネット上で偶然見つけた『ゆめにっき』と言うゲームでもやろう。



……どこから突っ込んで良いのかわからないし、余計に鬱になった。

何あの後味の悪い最後？

ありえん（泣）

遊びに来たのか、丁度スキマから紫が出てきたので問答無用に引きずり出して、あの無駄にでかいおっぱいから血を吸ってやった。

「不味い」って言ったら「せめて美味しいと言ってほしかったぁぁぁぁぁぁ！！」と泣きながら叫んでスキマに潜ってしまった。

むしゃくしゃしてやった、今は反省している。



折角だから自分でゲームを作って見ようと思った。

まず用意、絵は自分で書こう、次にイラストレーターと言うソフトを紫の会社『ボーダー商事』からネット購入。

もちろんマニュアルも一緒に購入、後はこのＡＤＶ作成フリーソフトの『使って輝夜♪』って言うのをダウンロード。



さて内容は恋愛物にしよう。

主人公は男の人間が良いかな。

ヒロインは紅魔館のみんな、お姉様、咲夜、パチュリー、美鈴、小悪魔、私。

性格はお姉様は何時もカリスマカリスマって言ってるから、物語の中ぐらいカリスマあふれるキャラにしてあげよう。

咲夜は何でも完璧なキャラだよね、そして時々見せるデレなんか良いかも。

パチュリーは冷たい感じで病弱キャラ、やっぱり時々デレ。

美鈴は可愛い感じ、何時もニコニコ。

小悪魔はドジっ子、うん完璧。

私……気の触れた悪魔の子にしよう、それも隠れキャラ、二週目以降にある一定の条件を満たせば登場！！

ここまで考えて思ったんだけどさ、紅魔館って恋愛ゲームに持って来いの舞台だよね。

女の子しかいないし、人間は咲夜だけだけどさ。

まあバットエンドが多そうだけど。



とりあえず絵から始めよう、まずはお姉様と咲夜を説明もなしに私の部屋へと拉致る。


「さくやぁ～！！助けて～！！また聖水風呂に入れられる～！！」

「ああ、お嬢様のその悲痛の顔……私は、私は！！……ぶぼらぁ！！」


その途中こいつら色々駄目だと思った。

色々説明してモデルになって貰った。

モデルが終わった後、お姉様も咲夜もゲームが出来たらやらせてほしいと言って出て行った。

後は庭に出る許可は貰っているので門にいる美鈴を書いて、紅魔館を書いて辺りの風景を書く。

図書館に行ってパチュリーと小悪魔、図書館全体を書く。

最後に内装の廊下や部屋、トイレ、お風呂、食堂などを書く。

後はイラストレーターで色々作業。



ここまでで凄く日にちが過ぎた、尋常じゃなく疲れた。

はっきり言ってなめていた、ゲーム作り。

全部出来るに何年かかるんだろう。

まあ良いや、始めたからには最後までやり遂げよう、時間はたっぷりあるんだし。







四年かかった…手直しとかなんだかんだ含めて。

何回も挫折しそうになった、でもこうして出来上がった。

その間にも色々あったよ。

お姉様はまだかまだかと急かすし、見た事の無い人間、博麗霊夢っておめでたい服着た巫女が問答無用で喧嘩吹っかけてきたし。

負けたけど良い運動になったと思う。

霧雨魔理沙っていう人間の魔法使いは私の寝ている間にパソコン盗んでいったし…パソコンが無くなってるのに気づいた時は思いっきり泣いてしまった。

それが聞こえたのかお姉様と咲夜が慌てて入ってきた、この時は誰に取られたのか判らなかったけど、お姉様も咲夜も心当たりがあったらしくすぐに取り返しに行ってくれた。

一時間もしないうちに、盗んだ犯人を私の所に連れてきたお姉様と咲夜、それが霧雨魔理沙。

最初は壊してやろうかと思ったくらいに怒ったんだけど、本気で謝ってるのが判ったので、パソコンにはもう触らないと言う条件で許してあげた。

もしパソコン内のデーターが消えていたら、私自身何をしてたかわからないと思う。



まあ兎に角出来たよ。

恋愛ＡＤＶ『吸血鬼の住まう紅魔館、そして迷い人』

まずは紫を呼び出して見てもらった……凄く褒められた「これ出来良過ぎるから、外の世界で売りましょう。」とか言って『ボーダー商事』で販売することになった。もちろん売り上げは貰える８０％が私の手元に来るとの事。

次はお姉様、ゲーム内のカリスマあふれる自分うを見て「これこそ私！！」っと大はしゃぎ、ただのめり込み過ぎて最後の最後で主人公を自分の手で殺すと言うバットエンドシナリオで「やめて！！殺さないで私！！」ってマジ泣きさせてしまった。

本気で泣いているお姉様を見てさすがに心苦しかったので、ハッピーエンドの行き方を教えてあげた。

「良かったぁ～　良かったよぅ～　幸せになれ私」なんて言っていた……優しい顔で。

他のシナリオはやらないかと聞くと「なんか浮気されてるみたいでイヤ」ってことみたい。

ただしばらくの間「私の彼はどこ？」なんて言って現実とゲームがごっちゃになってしまったお姉様…結構咲夜を困らせたらしい。



今度は咲夜、お姉様もついて来たけど咲夜シナリオの途中で「私の彼が咲夜に取られた！！」と泣いて出て行ってしまった。

この頃よく泣くなお姉様。

流石と言うべきか、咲夜は一回目でハッピーエンドに辿り着いた。

感想を聞くと「仮想の空間とは言え初めて恋愛が出来ました、ありがとう御座います妹様。」と涙ながら言ってくれた。

その言葉に私の苦労が報われた。そして嬉しかった。



パチュリーはやり方だけ説明しておいて私は寝た。

そして夜起きてみると「魔理沙～　私の魔理沙～」とか言ってパソコンを抱きしめていた。

パソコンからパチュリーを引き離して画面を見てみると、パチュリーシナリオのハッピーエンドの結婚式のシーンだった。

主人公の名前を見てみると魔理沙になっていた。

なるほど、ちなみにお姉様と咲夜は最初から入っている私の考えた名前のままやっていた、名前は紅夜。

美鈴と咲夜の名前から取ったと言うのが判ると思う……なんとも安直な私は可愛い。

「今日は魔理沙と初夜をむかえないと。」なんて言っていた。

お姉様と同じで現実とゲームがごっちゃになってるんだと思う。

類は友を呼ぶ、ぴったりの言葉だと思った。

とりあえず魔理沙、色々がんばってね！！



美鈴はやっと休みが貰えたのか何日かたってから来た。

美鈴シナリオは極端にバットエンドが少ない。

ゲームの中くらいお仕置きとかされたりしないで幸せにいてほしいからそうしたんだ。

それなのに何でバットエンド行くかな～

それも最悪の……晴れて恋人になった主人公をお姉様の命令で殺さなければならないと言う、作った自分もムナグソ悪いストーリー。

これ特殊な方法でしか行けないように作ったのに、何でかな？

何か美鈴の目が病んできて「お嬢様の命令は絶対、お嬢様の命令は絶対」とぶつぶつ言い始めたので首筋をチョップ。

美鈴が寝ている間にストーリーをハッピーエンドシナリオ一直線まで持って行き、違和感ない場所で美鈴を起こした。

先程までのは夢だと言い聞かせ、続きをやってもらった。

「まさかゲームの中とは言え、私かウェディングドレス着るなんて夢にも思いませんでしたよ。」なんて照れていた。

「こんな恋がしたいな～」なんて言ってる、すれば良いのにね。　美鈴って綺麗だし。

今度は私のシナリオに挑戦した美鈴。

私のシナリオは兎に角バットエンドが多い。　それも残虐な。

指定が悪魔の子だから仕方ないけど。

主人公のせいで紅魔館全滅シナリオとか私がお姉様に殺されるのとか、主人公の死なんて盛り沢山！！

うふふ、簡単に私を落とせると思ったなら大間違いなんだからね♪

結果、クリアする前にドン引きされた。

誤解を解いておくために自分でやってハッピーエンドを見せてあげた。

やっぱり選択肢一回につき６個とかやり過ぎたかな～

ちなみにみんなのは半分の３個。



最後に小悪魔。

小悪魔シナリオはちょっとエロいんだ。

ドジっ子属性を利用して転んだときに支えた手がおっぱいとか。

転んだ拍子にパンツ丸見えとか。

やっぱり転んだ拍子にチュ～だとか。

王道と言えば王道だけどね。

小悪魔は「ひゃー」とか「エッチなのはいけないと思います！！」とか言いながらやっていた。

売り物にすると決めたときに、エッチなお兄さん達の為に選択肢で『襲う』ってのも追加しておいたんだ。

どう考えても死亡フラグです、本当にありがとう御座いました。

選択肢ならぬ選択死。

クリア後の感想は「楽しかったです、今度人里行って本当の恋人見つけてきます♪」だってさ。

悪い男に捕まったら紅魔館全員でその男をフルボッコにしてあげよう。






こんな感じで私のパソコン生活は続いている。

パソコンを得て物の大事さを知った。

作るときの苦労も知った。

出来上がった時の感動も知った。

壊すだけを得意とする吸血鬼の私が、他の人に感動を与えられた。

そしてこれからも私は自分の為、紅魔館のみんなの為、パソコンをくれた八雲家の為、色々作って行こうと思う。

この大切なパソコンで。

初投稿です、剣といいます。

ネット環境や電気なんかはまあ、ゆかりんマジックで解決。

まあギャグと思って読んで下さいませ。
楽しんでもらえたなら幸いです。