Coolier - 新生・東方創想話

はためく虹の翼 紅き剣

2007/06/17 21:39:08
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#「霊夢×フラン?なのか?私にもわからない。どう読んでもそう見えなくなりましたが、これはこれでいいと思うのでお暇な方は、お読みくださいませ」




























はためく虹の翼。
飛翔する紅白。
交わる事のないあの出来事が、きっと出会いだったのだ――――
















あの日の出来事は忘れもしない。
レミリアお姉さまが作り出した紅霧のおかげで、日の光は遮られ、昼の世界でも私は空へと飛べたあの日。
私と対峙した黒髪の巫女を。

私はただ無性にはしゃぎまわりたくて巫女に勝負を挑み、巫女は異変を解決する為に勝負を挑んできた。
結果は惨敗。私の力はとても危険な物だとレミリアお姉さまに教えられていたというのに、この巫女に傷一つつけられなかった。
それがとても悔しかったのと、今度は負けないって思ったのと、もっと、もっとこの巫女と遊びたいと思った。

それからの私は、夜になれば度々博麗神社に足を運ぶようになった。
名前も知らなかったあの巫女…博麗霊夢と遊びたくて。
レミリアお姉さまも、霊夢に興味を持ったのか。よくあの神社に行くたびに何度も一緒に空へと飛翔した。

レミリアお姉さまに外出の許しを貰えないときは霊夢と会ったらどうしよう、今度は負けない。そんな事をずっと想いながら眠りについていた。
徐々にその弾幕ごっこ以外に、私は霊夢と他の遊びや、一緒にお茶を飲んだり、他の妖怪達や人間とも様々な人たちと遊んだり、神社で行われる宴会にも、レミリアお姉さまと従者である咲夜と行ったり、この数年間で、今までの私の生活が嘘のような「友達」がたくさん出来た。
だから、私は気づかなかったんだ。ただ楽しくて、ただ面白くて、幸せな時間に浸りすぎて、自分の想いにどれだけ自分が気づいていなかったのかを。












「お月様が綺麗だね~」
「…えぇ、そうね」

満月が夜空に浮かび、雲一つない空の中。
今日も博麗神社へと向かったフランは、弾幕ごっこはせずに霊夢と共に神社の縁側でお茶を飲んでいた。
本当は遊びたかったのだが、霊夢が、少し調子が悪いと言ったのでこうしてお茶を飲んでいる。

「今日は晴れてよかったね」
「えぇ…そうね」

隣で座っている霊夢は、さっきからこの相槌ばかりしている気がする。
自分の話が聞き流されているんじゃないかと思い、月を見上げていた顔を霊夢に向ける。

「…霊夢?」
どうしたのだろうか。頬が赤くなっていて、何もしていないというのに息が乱れている。
それに、頬は赤くなっているというのに、血の気がないぐらいに顔は蒼白だった。

「………」
虚ろな眼で何処を見ているのか。今の今まで、気づかなかった。
明らかに、今の霊夢はおかしい。

「霊夢……大丈夫?」
調子が悪いと言っていたのはこれだったのかと思い、虚ろな目をして横に座っている霊夢の腕に触れるフラン。
「……フラン」
腕に触れられて、息を乱したまま、霊夢はフランに顔を向ける。

「………ごめん、なさい。ちょっと、無理」
だが、顔を向けたまま徐々に下がっていって。
「……え?」
バタリと、横に倒れた。

















あの時の出会いは忘れもしない。虹色の翼をはためかせ、紅き剣を振り回しながら、無邪気に笑っていた幼き吸血鬼との最初の出会いを。
あれからよく姉の吸血鬼であるレミリアと共に私の所に足を運んできた。
弾幕ごっこをしたり、一緒にお茶を飲んだり、宴会の場で共に騒いだり。

無邪気に笑うフランの顔がとても好きだった。
それが、自分に向けられている時は、とても嬉しかった。
自分は他人に興味を持てないと想った。常に´平等´であることが博麗の巫女である事の義務であったし、今のような、様々な「友」がいれば私は満足であったはずなのだ。

けれど、いつの間にか、私はフランの事で頭がいっぱいになっていた。
雨が降れば今日は来ないのかなとか、来たらどんな遊びを一緒にしよう?とか。
フランが笑顔でいてくれるだけで、私の心はとても幸せになっていった。

だから、空は快晴で、夜になればきっとフランが来るだろうと思って、調子が悪い身体を休ませる為に朝、昼と横にしてあったのだが…。
フランが来た頃には身体は悪化していた。
節々が痛く、夏だというのに身体は酷く寒かった。

ぼんやりとしている景色を必至に繋ぎとめて、フランの横にいた。
だけど、それもあまり持たなくて。
不安そうな表情をしたフランの顔を見たのを最後に、私は意識を闇に落としてしまった。
















「…霊、夢?」
倒れた霊夢は息を乱して目を閉じながら身体を小刻みに震わせている。
「霊夢!」

必至に身体を揺らすが、苦しそうな顔をしたまま意識は戻らない。
「ど、どうしよう」
こんな時どうすればいいのか。
フランは「風邪」をこじらせた人間等見たことがなく、倒れた人間をどうすればいいかなんて知る由もない。

「と、とりあえずこのままじゃ…」
意識を失った霊夢の身体を抱き起こし、首と足の方に腕を回してお姫様抱っこをする。
そのまま居間まで運び、一度床に降ろした。

「えっと……」
前に、神社で泊まった時の事を思い出しながら、他の部屋の押入れから布団を取り出し、居間へと持っていって霊夢の横に敷く。
「よいしょ……」
もう一度抱き上げて、敷いた布団に霊夢を寝かせる。
息は荒いまま、顔に汗が浮かび苦しげな表情のままだ。

「……霊夢」
寝かしたからといって体調がよくなるわけではないだろう。
フランは必死にどうすればいいか考える。
「…誰か、誰かを呼べれば…」

考えてまず思い至るのは、誰かに助けを求める事だ。
だけどこんな状態の霊夢を一人にしておくわけにはいかない。
「………あ!」
一つだけ、閃いた。
助けを呼びに行けないなら、気づいてもらえればいいのだ。

「霊夢…ごめん、少し待っててね…」
苦しい表情をしたままの霊夢にそう言い、急いで境内へと走る。
「すぅ…はぁ…」

境内の中央で止まり、右手を頭上に掲げ、一度深呼吸して目を閉じる。
頭上に輝く月を見上げ、力を高めていく。
自分の「破壊」の力をこんな事の為に使うのは生まれて初めての事だ。
「……よし」
イメージするのは頭上の満月に突き刺す感覚。




「………………禁忌」






初めて、「破壊」ではなく助ける為に紅き剣を形成する!
「レーヴァテイン!」
叫びと共に、掲げた右手から紅い剣が満月を突き刺さんと頭上に伸びる。
「…ック」

いつもの限界を超えた紅き剣を形成していく。
「誰か……気づいて!」
頭上に伸びていく紅き剣を更に伸ばし、何処から見ても気づけるように、何かあったのかと思わせる為に、それを維持する。
果たして誰か気づいてくれるだろうか?

フランはそんなよぎった思考を捨てる。
気づくまでこの紅き剣を維持すればいいだけの事。
あの苦しげな霊夢を助けられるなら、例えこの身が朽ちても、いい。











「……あれは」
レミリアは自室の窓から博麗神社の方角に、巨大な紅い柱が浮かんでいるのを見た。
「…フランのレーヴァテイン…?」

博麗神社に遊びに行ったなら弾幕ごっこぐらいするかもしれない。
けれど、あれは度が過ぎている。博麗神社と紅魔館からはかなりの距離があるというのに、ここで見えるという事は、博麗神社を覆い尽くす程の巨大なレーヴァテインをあっちで作っている事だろう。

「……」
しかもそれは振り下ろされるわけでもなく、頭上に形成されたまま動こうとしない。
「咲夜」
窓からそれを見ながら、レミリアは廊下に控えている咲夜に声をかける、
「失礼します。なんでしょう、レミリアお嬢様」
二回、トントンとドアをノックしてから自室に入ってくる咲夜。

「今日は博麗神社に行かない気だったけれど、あれが気になるから行くわ。貴方も供しなさい」
いつも一緒に行っていたらフランに悪いと思ったが、あんなものを見てしまったら不安になってしまった。
「わかりました」

咲夜は深くお辞儀をしながらレミリアの横を歩く形で、共に紅魔館を出た。







「……何をやっているのかしら、あれ」
何か面白い事はないものかと隙間から幻想卿を見渡していた紫は、突如博麗神社から浮かんだ巨大な紅い柱を見て首を傾げていた。
「……面白い事ではなさそうだけれど」

場所が場所であるし、あんな芸当を出来るのは紅魔館の吸血鬼の片割れぐらいだ。
「藍~」
「何でしょう、紫様」
自分の式神である藍に声をかけ、首根っこを掴む。

「へ?」
「一応念のためねぇ」
そのまま「隙間」を開け、藍をその中に躊躇なく投げ込む。
「ちょ……!」

投げられる時に何か叫んでいた気がしないでもないが、気にしない。
紫も自身の隙間の中に入り、神社へと向かった。






「…オイオイ」
「あれは、何なんですか」
博麗神社で何かご馳走に預かろうと踏んでいて神社の近くを飛んでいた魔理沙だったが、すれ違う形で出会った天狗、文と空で世間話もとい、何かスクープみたいな事はないかと話していた。

そうしたら、突如魔力の波と同時に神社から紅い柱が迸り、それを見上げている。
「…フランの…レーヴァテインか…あれ?」
魔理沙はよくフランと弾幕ごっこをする時に見る紅い剣を思い浮かべる。
だが、目の前で見えているものは遥かに巨大な紅い剣だ。

「何だかネタというより、何かあったみたいですね。あれ」
冷静に横で見ている文はそう判断する。記者云々ではなく、今まで生きてきた直感がそう告げていた。
「あぁ、場所が場所だからな…行ってみるぜ。文も来るだろ?」
「勿論ですよ。幻想卿の記者ですから私は」

頷いて、文は空を蹴って神社へと向かう。
魔理沙も箒を旋回させると、神社へと向かった。









「……ぐ……ぅ」
数分形成しただけで既に右手が痛い。
肉の焼ける臭いが自身の手からしてきて無茶をしているのがよく、自分でも分かる。
けれど、誰か来るまではこれを維持しないと。

「わぷっ!?」
気合を入れなおしてレーヴァテインを維持しようとした矢先に、横でそんな声が聞こえてきた。
「え?」
声がした方を見てみると、境内の地面にうつ伏せに倒れている九尾を生やした人がいた。
「藍、せめて受身ぐらい取りなさい」
続いて同じように、前の宴会で見かけた女の人が空間の裂け目らしきものから出てくる。

「いきなり投げ込まれてそんな事を言われても…」
涙目でそう訴えつつ、起き上がる藍。
「まぁ今はそんな事はいいわ。それよりも…」
藍の訴えを無視してこっちを見てくる。

「フランドール…だったかしら?何をしているの貴方」
「…ぁ、あ」
レーヴァテインを止めて、紫に駆け寄るフラン。

「た、助けて!霊夢を助けてあげて!」
「…何があったの?」
駆け寄るフランの両肩に手を置いて、紫は目線をフランに合わせるようにしゃがむ。

「れ、霊夢が私と話していたら…」
「オーイ!」
と、フランが状況を説明しようとした所に空から呼びかけるような声が聞こえた。
「あら…魔理沙と文じゃない」

そちらに目を向けてみれば、丁度空から境内へと降り立とうとしている魔理沙ともう一人、背中に黒い翼を生やした短めの黒髪の女性がいた。
「紫も来てたのか、レーヴァテインがきになって来たんだが」
「えぇ、今丁度何があったか聞こうとしているところよ」

魔理沙もフランに近寄り、目線を合わせるようにしゃがみこむ。
「ま、魔理沙ぁ…」
自分の知っている人物が来て、緊張していた糸が切れたのか、涙が出てきた。

「何があったんだ?フラン」
「れ、霊夢が…」
涙声になるのも気にせずに、フランは説明しようとする。
「霊夢が……倒れたの」





「うーん……」
苦しげな表情の霊夢を見て、額に手を当てたり、脈を計ったりする紫。
「どうなんだ?」

それを覗き込むようにして後ろで見ている魔理沙とフラン。
藍と文には永遠亭が配給しているはずの薬を探してもらっている。

「脈はまぁ少し早め、熱はそうねぇ…医者じゃないから正確には測れないけれど、軽く40度超えているわね、多分」
「…それってやばくないか?」
「まぁ、少しまずいわね。このまま熱が上がっていけば死ぬ可能性も出てくるわけだし」

それを聞いてフランと魔理沙は不安な顔をしてしまう。
「…ぁー、で、でも大丈夫よ。ちゃんと薬を飲んで、栄養を取れば回復するはずよ」
そんな不安な顔をした二人を見て必死に弁明する紫。

「…その薬なのですが、紫様」
「……まさか」
落ち込んだ藍の顔を見て紫は察したが、藍は言葉を続ける。
「薬箱は見つけたのですが、肝心の薬が中にありませんでした」
「おまけに食料も尽きていますね」
と、文も台所の方から戻ってくる。

「食料が尽きているですって…?」
「えぇ、いつからないのか、お米が入っていたらしき容器にはありませんでしたし、色々と漁ってみましたけど、食材らしき食材もありませんでしたよ」

その言葉に頭を抱える紫。

「……誰かが永遠亭に行って永琳を呼ぶのと、食料を調達して来る必要があるわね」
「後出来たら氷が必要ですかね。この気温じゃ水が生暖かくて額を冷やしようがありませんよ?」
「氷ならチルノを探せばいいんじゃないか?文、確かお前あいつの特ダネを追っていて居場所知っているだろ」
「あぁ、そういえばそうでしたね。いいでしょう、私は氷をというか、チルノをここに連れてきます」
「なら、私は永琳を呼んで来るわ…隙間で移動すれば私が一番早いでしょうし」

そう言って文は境内へ、紫は隙間へと潜り込む。

「じゃあ私が食料を調達してこよう。魔理沙とフランドールは霊夢を…」
「その必要はないわ」

と、藍が境内へと駆け出そうとしていた矢先にその方向から声が聞こえた。
「お姉さま!」
レミリアと咲夜が来て、フランは驚きの声を上げる。
「紅魔館からでもレーヴァテインが見えたと思ったら…無茶したわね、フラン」
レミリアは背中に隠していたフランの腕を掴む。

「!?フランお前、何で黙ってた!」
魔理沙はフランの右手を見て声を上げる。
そこには、レーヴァテインの無茶をした代償か、皮膚がただれて、大きな火傷の跡があった。

「ご、ごめんなさい…でも、私の事より、霊夢をどうにかしたいと思って…」
「……それで貴方のこの傷を見て、霊夢が悲しんだら意味がないわ。咲夜」
声をかけられた咲夜はいつの間に薬箱を持っていたのか、中から包帯を取り出し、フランの腕に巻いていく。
「時間が経過すれば治るでしょうけど、今はそれで我慢しなさい。で、食料の方は紅魔館から持ってくるから魔理沙、咲夜と一緒に行ってくれないかしら。藍…貴方は一緒にここで霊夢の着替えを手伝って」
「……わかった」

藍は頷いて霊夢の着替えを探すべく別の部屋に探しにいく。
「咲夜はともかく何で私が?」
「箒に括り付けられるじゃない、食料を」

レミリアのその言葉に納得する魔理沙。
「じゃあ私はそれでいいぜ」
箒を片手に持って、境内へと駆けていく。
「では、レミリアお嬢様、私も向かいます」
「えぇ、なるべく早くね」
咲夜も頷いて境内へと出て行く。

「さてと…フラン」



怒られて落ち込んでいるフランドールの頭を撫でるレミリア。
「ぁ…」
「貴方はよくやったわ。無茶をした事は許せないけれど、あのレーヴァテインをしなければ、気づかなかった」
周りに誰かいるときには見せない、妹を想う姉らしい優しい顔をしながら、よくやったと褒めるレミリア。
「……」

そう言われ、声を上げる事なく涙を流すフラン。自分のした事が、無駄じゃなかったと。















「拭くのは藍、フラン、貴方達に任せるわ」
藍が替えの服や下着を押入れやタンスから持ってきて、汗で濡れた服の着替えをしようとして、レミリアは開口一番、そんな事を言い始めた。

「…別に構わないが、何でわざわざ言うんだ?」
「役割を決めた方がいいでしょ?霊夢の身体を誰か起こしておかないといけないのだし、何より、誰かが………脱がさないといけないじゃない」
恥ずかしいのか、レミリアは脱がすと言う所だけ小さくぼそぼそと言った。

「……あぁ、まぁ、だったらレミリア、貴方が霊夢の服を脱がしてくれ」
藍はそれに対して何も言わなかった。主である紫ならここで意地の悪い事を言うかもしれないが、生憎とここで言い合いになれば汗で濡れて、冷たくなっている巫女服を着ている霊夢が可哀相だろう。

「え、えぇ。じゃあ脱がすわよ」
霊夢の上半身だけ起こして、腰の帯を解く。
霊夢は苦しげな表情をしていたが起きる気配はない。
そのまま上を脱がして胸に巻かれているさらしもはずしていく。

「……」
藍はその霊夢の服を脱がしていくレミリアを見ていたが、脱がす度に顔を赤くしていくので、こちらも恥ずかしくなってきてしまっていた。
だが、ここで自分が恥ずかしく思ってしまえばレミリアの手は間違いなく止まってしまうだろう。

表情に出さないように、隣にいるフランドールと共に霊夢の身体を、予めお湯に入れて絞った布で拭いていく。
霊夢の身体は酷く冷たくなっていたが、間近で見てみると、綺麗な少女だと、純粋に思った。
「……・…」
脳裏によぎった邪な思いを振り払いながら、無心になって腕や腹部も拭いていく。
病人を介護するのにここまで大変なものだったろうか?

チラリと、横にいるフランドールの表情も窺ってみる。
フランドールは一生懸命霊夢の身体を拭いていた。
恥ずかしがる素振りもせず、霊夢の苦しさをただ取り除きたいとばかりに。

「………」
そんな純粋なフランドールを見ていたら、浮かび上がった邪念も消えていってくれた。
上半身が拭き終わり、下の袴もレミリアは脱がし、ショーツを脱がそうとした所で、手が止まった。

「……レミリア?」
表情に出てしまっていただろうかと内心慌てる藍であったが、レミリアの表情を見て違う事に気づく。
レミリアは上半身を脱がした時以上に顔は紅く、目が血走っていた。


「……」
本当に、病人介護はこんなに大変だっただろうか?と疑問を浮かばざるをえなかった藍だった。







「ハロー」
「あら、珍しい患者が」
机に座り、薬品の調合をしていた永琳は、横の空間が裂けて顔を出した紫にそちらを振り向かずに応対する。

「生憎と患者は私じゃないのよ。霊夢が倒れてしまったから貴方を呼びにきたの」
「…あの霊夢が倒れたの?」
さして驚く素振りをみせず、永琳は目の前の薬品の調合を仕上げていく。

「えぇ、それで薬箱の中身を見ても薬が入ってなかったから、わざわざ私が貴方を迎えに来てあげたのよ」
「貴方も大変ね」
「貴方程ではないと思うけれど?私はこれでも気楽に生きているわ」
今日は特別よと一言付け足して、顔を背ける。

「……まぁ、病に伏しているのなら私の出番ね」
薬品の調合が終わり、永琳は顔を紫の方に向けた。
「それで?意識とかはないわけ?」
「えぇ、意識が無くて熱は高熱、脈は少し早めって所かしら」

霊夢の具合を聞いて永琳は薬箱に色々と詰め込んでいく。
「……まぁ、後は見てみないとわからないわね」
「じゃあ、行くわよ」
紫は隙間から手を差し出す。
永琳は薬箱を片手に持ちながら、その手を掴み、隙間に入っていった。














「嫌だ」
「………チルノさん、そう言わずに」
森の中にある湖の上で、文はチルノの「説得」をしようとしていた。

「何であたいがそんな事をしないといけないんだ」
「人は助け合わねば生きていけないものなのですよ?」
「あたいは妖精だ!」

あ、そうでしたと、分かっていて相槌を打つ文。
「~~~!とにかく!あたいは忙しいんだ!」
「忙しそうに見えないから声をかけたんですが」

ここでやれやれと、いつもならチルノの怒りが下がってから再び来る文であったが、今回ばかりはそういうわけにもいかなかった。
「とにかく、今回は取材とかじゃないんです。チルノさんご本人のお力を頼りに来たのですからそこの所をわかってください」
「わからないね!」

即答でわからないと言ったチルノにこの⑨野郎!と殴りたくなった文であったが、それをしてしまっては終わりだ。
「…ふぅ、仕方ありませんね」
ごそごそとスカートのポッケから何かを取り出す文。
「……!そ、それは………」
そこには、いつの間に撮られていたのか、チルノが木の上で寝ている写真が映っていた。

「脅迫は私の好みじゃありませんが仕方がありません。この写真と交換で手を打ってはくれませんか?」
「………」
さっきの強気は何処に行ったのか、チルノは拳をブルブルと震わせながらも。
「……氷を作ったらあたいは帰るわよ」
神社に行くことを承諾したのであった。
「では、行きましょう」

ニコリと笑い、文はチルノの手を掴んで博麗神社へと戻る。
















「………これは、流石に無理だぜ?」
紅魔館へと戻った咲夜と魔理沙は、レミリアに言われた通り、館に貯蔵してあった食料を運ぼうとしていた。
「無理かしら?」

咲夜は箒に括った米の袋や野菜の袋や…etcを見て、いけるだろうと言う。
「この状態で飛ぶんだぜ?せめて果物類だけでもそっちが持ってくれ」
「…仕方ないわね」

なるべく早く持って来いといわれている事もあり、咲夜は果物が入った袋を箒から外して手に持つ。
「……よし、これなら高速飛翔してもいけそうだぜ」
その場で箒に跨って旋回してみるが、問題はなかった。
「じゃあさっさと行くわよ」

応と答えて、咲夜と魔理沙は神社へと飛び立つ。














「……典型的な重度の夏風邪ね」
霊夢の着替えが終わると、タイミングよく永琳を引き連れた紫が戻ってきて、霊夢の診断をしていた。
永琳は診断し終わると、薬箱から注射を取り出して、霊夢の腕に打つ。

「処方薬を置いていくから意識が戻ったら食後と共に飲ませてあげなさい」
薬をフランドールが受け取り、永琳は道具を薬箱に入れていき、立ち上がる。

「あ、ありがとう」
「医者として当然の事をしただけよ」

フランがお礼を言うが、それをやんわりと流す永琳。

「さて、帰路の便を頼めるかしら?」
「……ハイハイ」
紫はもう一度隙間を開けて、永琳を連れて、隙間の中へと入っていく。
「戻ったぜー」
「こっちも戻りました」

隙間が完全に消えるのと同時に、チルノを引き連れた文が、食料を持ってきた魔理沙と咲夜も戻ってきた。

















それから、どれぐらい経っただろうか?

チルノが氷を作って冷やした袋を霊夢の頭に乗せたり、レミリアと紫が何故か咲夜と藍に料理を作らせずに二人で霊夢の御飯を作ったり、それじゃあ従者として面目がないという提案を受けいれられ、まだ誰も夕飯を食べてないから、今神社にいる皆の文を藍と咲夜で作ったり、氷を作ったら帰ると言っていたチルノを、文がなだめながら私と一緒に霊夢の看病をずっとしたりと、色々な事があった。

皆が色々騒ぎ、お酒を持ってきた辺りから一人、また一人とその場で酔いつぶれて寝てしまった。
私は、お酒は駄目とレミリアお姉さまに言われていた事もあり、最後まで霊夢の看病をしていたのだが…。

「……ふぁ」
小さく欠伸をする。時刻は既に朝の3時。
霊夢の手を握りながら横に座って看病をしていたのだが、睡魔がかなり襲ってきていた。

苦しげな表情をしていた霊夢は、薬が効いたのか、それとも山を越えたのか。今は穏やかな表情で、寝息を立てながら寝ている。
「………」
そんな寝顔を見ていると、もう大丈夫だと思ってしまう。

出来たら、意識が戻るまでは起きていたい。
起きていたいのだが………。





「……………zzzz」


霊夢の手を握り締めたまま、私は瞼を閉じてしまい、そのまま意識を投げてしまった。


















「………ん」
身体がダルイ。
目をパチリと開けて、私は身体を起こす。
「…ん?」
手を握られている感覚に気づき、横に振り向く。
「…………え?」
そこには、スヤスヤと私の手を握りながら寝ているフランが。
「……えーと…」
更に周りを見渡せば、その場でいびきを立てている集団がいて、霊夢は混乱する。

「…ええと?」
昨日は確か……そうだ、体調が悪くて、フランの目の前で倒れたのか私は。
「…呼んできてくれたの…?」
目の前で眠るフランの顔を見る。
すやすやと、幸せそうな顔をして寝ていた。
「……ありがとう。フラン」
寝ているフランを起こさないように頭を撫でながら、霊夢は感謝した。

自分を助けようと頑張ってくれた、最愛の吸血鬼に―――――



(((;;;:: ;: ;;          ;; ;:;::)) ::)
   ( ::: (;;   ∧_,∧   );:;;;)) )::: :; :))
    ((:: :;;  (´・ω・)っ旦;;;; ; :))
     ((;;;  (っ ,r サーセンサーセンwwwwまぁお茶でも
          i_ノ┘
えーと、こんにちは、まず前回の感想ではどうもありがとうございます。
ヴィーナス&ブレイヴス?と言われた感想がありましたが、正にその通りで、それをベースに最初はレミリア回想を書いていたのですが、どうにも侵食されすぎたので削ったというわけです。ですので、あれはクロスオーバー風に書いて色々工夫して書いていつか出せたら出そうかと。

で、今回のフラン×レミリアですが、Q. 何処で死亡フラグが立ったか? A. レーヴァテイン形成した所。
フランがちゃんと霊夢を看病すればこんな大所帯にはならなかっただろうなと見直して思いましたわけで…。
ただ、フラン一人が霊夢を看病?思い浮かばなかった→じゃあ他の人を呼ぶしかない。どうやって?ならレーヴァテインが破壊の能力いわれてるからそれを助けを呼ぶ力に使おう。こんな流れでした。
かなり削ったはずなのですが、ぐだぐだと長くなった感が少し自分としては怖い所です。
お目汚しなければ批判感想お願いします。

次回は、月見酒に書かれていた続きを読みたいといわれたリクも見ましたが、妖夢が狂気に侵されやすいとゲーム内で言っていたそうなので書かない事にします。なので、次回はまた紅魔館辺りから…美咲か…しかしこのカップリング書いている人いっぱいで二番煎じっぽくなりそうで怖い所、イメージが思い浮かんだら書いてみます。
七氏
[email protected]
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コメント



0.600簡易評価
4.70あーぱー貧血鬼削除
フランかわいいーよー
フラン最高!!
10.100名前が無い程度の能力削除
【フランちゃん頑張る】てフレーズが浮かびました。
メインはフランと霊夢なのに、紫の印象が強く残りました。
次回サクメイ期待してます。霊夢×妖夢をリク願い。
12.60SETH削除
>今回のフラン×レミリアですが

ふいたw
13.無評価七氏削除
フラン×レミリアにしか書いてる自分自身が、私には見えなかったのです…。
姉様と紫様使用すると印象がそっちに持っていかれてしまうような気がしてきた。
とりあえず今回1.夏風邪には気をつけよう2.友達は大事に3.助ける事は尊きこと。 この三つのどれかを感じてもらえれば私はいいかと。
15.無評価名前が無い程度の能力削除
あなたに一個だけ聞いときたいのは原作をやってくれたのか、ということですね。それからここは自由に批評できる場ですよ。これまでもずっとそうしてきましたし。気に入らなかったり理解できないなら読まなければいい、批評もするなというのは読者に対する侮辱です。
16.無評価七氏削除
待った。何を勝手にボルテージ上がってるか知らないが。気に入ったり理解できないなら読まなければいい、批評もするな?いつ言ったかわからないわけなのですが。ただ単純に公式設定で妖夢が狂気に侵されやすかったから書かないという場面をご指摘されるのであれば、それが嫌に見えた人がいるわけでしょう? だから書かないと。 …2作目の「願い」から私はそれなりに読み手に大して慎重に書いてるつもりです。それで侮辱と取るのなら心が狭いとしか言い用がないわけですが。三作目の「記念日」で言われた文章力の欠落が治ってるかもどうかも私一人じゃわからないから一作品ずつ自身の「最高のレベル」で出しているつもりです。それで貴方は読者に対する侮辱だとおっしゃるのであれば、それこそこの作品を読まず、他の方々の素晴らしい作品をお読みになればいいことではないかと思います。
ただ単純に作品にじゃなく、私自身の言葉にしか批判をかけれないのであれば他所に行け本当に。 こっちはいつだって読み手に対して工夫していってるのだから。  






17.100空気を読めない程度の能力削除
妹様が可愛いなぁw 狂気を克服してる妹様が大好きです。吸血鬼だって成長するんだろうし、単純に嬉しい。
七氏は紫様のキャラ立ちが上手いってのかな。そして巧く使われていると思うんですよね。だから紫様がちょい役で登場しても印象に残る。私も紫様の印象が強く残りました。良い意味で。
今度は本当のフラン×レミリアが読んでみたいです。姉妹愛こそ「禁断」「背徳」「究極」「純愛」?
21.無評価名前が無い程度の能力削除
未だに原作を触りもしてないのもアレだが
人様のサイトを使っておいて「気に入らないなら他所に行け」はないだろう……
27.50椒良徳削除
うーん、妹様がそうホイホイ外に出るかなあ?
ちょっとそこがひっかかる。
以前と比べて文章が上達していらっしゃいますな。
ただ、甘々の百合長編というには大分力不足か。
あと、後書きが無粋ですな。
28.100創製の魔法使い削除
あれ?この作品、あとがきの何処に叩かれる理由があるの??
私は良い話だと思いますよ。

霊夢の為に頑張るフランが可愛い・・・・

そして私も霊夢×妖夢か妖夢×霊夢をリクします。
29.無評価創製の魔法使い削除
すみません追記ですが・・・・・

>うーん、妹様がそうホイホイ外に出るかなあ?
SSなんだから余り細かい事は気にせず物語を楽しんだ方が宜しいのでは?

以上蛇足でした。

31.100名前が無い程度の能力削除
おもしろかったー