Coolier - 新生・東方創想話

紅魔 黒白を

2006/08/06 20:03:35
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「……まずいな」

ここは、我等が紅魔館の一室、レミリア様の私室である。

「申しわけございません。すぐに、淹れ直してまいります」
「ああ、違うのよ咲夜」

紅茶を、ダメだしされたとおもい、淹れなおうとする咲夜を止めるレミリア様。

「…それならば、何がまずいのでしょうか。お嬢様?」
「…………」

紅茶でないのならば、何がまずかったのか、怪訝に思い聞く咲夜。
しかし、レミリアは何か迷うように黙ったまま答えようとしない。

「お嬢様…?」

答えないレミリアを、不審に思ったのか再度尋ねる咲夜。

「……そうだな、誰かに訊いた方がいいか」
「お嬢様…?」
「咲夜、お前に聞きたい事がある。他言無用でな、門番はもとよりパチェにもフランにもだ」

そのレミリアの言葉に、咲夜は驚きを通り越して驚愕した。
なぜなら門番の美鈴はともかく、相談役兼親友兼厄介事の種のパチュリー様と、はたから見ていたら、おもわず知りあいの薬師に診察通り越して手術を頼もうかと思うほど危ないくらい溺愛している妹のフランドール様にまで喋るなとは…
いままで仕えてきて、一度もなかったことだ。

「お嬢様…それは一体……?」

緊張しながらも、聞き返す咲夜。

「咲夜は、黒白…いや霧雨魔理沙を、どう思う」
「は…魔理沙…ですか?」
「そうだ!!あのスーパーサイ○人ぽい魔理沙だ」
「……なぜスーパー○イヤ人…?」
「昔は、髪の色が違うのに金髪に変化しているし、か○はめ波ぽいものを撃つからよ。…それよりどう思っているのよ」
「……………」

(なぜそんなことを、聞くのだろ? まさか、あいつも宇宙人だというのだろうか?)

「どうなのよ、咲夜」
「迷惑千万な普通の貧乳魔法使いだと思っております。……超闘○ではだめなのでしょうか?」
「超○士だったら、角がなければカップラーメンが出来上がるころに、死んでしまうでしょう……ふむ、では近頃の門番はどう思う」
「美鈴ですか?…近頃は、マスタースパークをくらってもしばらくしたら回復していますし、お仕置きの殺人ドールをくらってもいつのまにか治っていますので、回復力が上がっていますね。あとは魔理沙に突破されるのが、くやしいのか重い服を着たまま空気イスをしていたりトレーニングをしているのをよく見かけるので、頑張っていると思いますよ」

それを聞き、腕を組み考え込むレミリア。

(なにか、まずいことを言ったかしら?)

「門番の名前…美鈴だったかしら?何か違和感があるのだけれど…」
「ええ、美鈴であっていますよ。紅く美しい鈴と書いてクレナイミスズと読みます」
「言われてみたら、そんな気がするわね。まぁ、名前で呼ぶこともないし、どうでもいいか…そんなことより、パチェやフランの事もどう思うか、聞かせてくれないかしら?」

(……なぜ、そんな事を……?)

二人のことなら、メイド長の自分より、親友であり姉妹であるレミリア様の方が詳しいはずである、ということに思い当たり
咲夜は、二人の事というより自分…メイド長『十六夜 咲夜』の目から視た二人を、どう思うかと聞かれているのに気づき

「パチュリー様は、近頃図書館の一角に、十八歳未満立入禁止の区画を作り。以前と比べて、かなり健康的になられた様子です。主に変態的に」
「…あの、歩く有害指定図書が…」
「フランドール様は、部屋に魔理沙グッズを置いていますね」
「魔理沙グッズ?」
「ええ、魔理沙のぬいぐるみに、魔理沙の抱き枕、魔理沙のティーカップ、魔理沙のハブラシ、魔理沙のパンティーなど、です…ぬいぐるみの中に何故か蝶ネクタイをし、ヒゲを生やした魔理沙?人形がありましたが、見たところ魔理沙マニアですね」
「うう私のフランが…それにしても、ぬいぐるみや人形?は、例の人形遣いの作ったものでしょうが、ハブラシやパンティーはいったい誰が?」
「お嬢様、誤解していらっしゃるご様子ですね」
「誤解?」
「はい、たしかにぬいぐるみや人形?は、人形遣いから奪い取ったモノです。しかし、ハブラシやパンティーは、魔理沙の家から盗ってきたモノです」
「うおおおおおおおわだしのおおおおおわだぢのぶらんがぁぁあぁぁぁぁぁぁ」

咲夜の話を聞き、泣き崩れるレミリア様。このまま灰になってしまいそうな勢いだ

                         ~一時間後~

「落ち着かれましたか?」
「……ええ…もう…もうだいじょう……ぶ…よ」

とても、大丈夫そうに見えないレミリア様。
無理もない、無二の腐れ縁形親友と、最愛の妹が変態になっていたのだから、バスタブいっぱいになるほど、涙を流した事が誰に責められようか

(100%お嬢様の涙風呂…フフフ…)

「咲夜?…何を笑っているの?」
「いえ何でもございません。それで、お嬢様。先ほどの、お聞きなられたことは何だったのでしょう?」

誤魔化された気がするが、追求しても教えてくれないどころか、新たな心の傷ができそうな気がしたので話を戻す事にする。

「さっき話した、三人の変異の共通点を、気がついているかしら?」
「共通点ですか?」

三人というと
門番 美鈴は、回復力が上がりトレーニングをして鍛えている
居候 パチュリーは、年齢制限がかかる本を読みふけっている
妹様 フランドールは、魔理沙魔理沙魔理沙一色になっている

「………魔理沙ですか?」

門番は、魔理沙に勝つために
居候は、魔理沙に使うために
妹様は、魔理沙に○○ために

それぞれが、魔理沙を主軸に変化している

「そのとおり、三人が三人とも魔理沙を意識して好意を抱いてるのよ」
「フランドール様と、パチュリー様は兎も角、美鈴は好意とは違うのではないでしょうか?」

もっともな意見を、咲夜が言うと

「私も、それを期待して聞いた事があるわ」
「美鈴は何と…」

半ば予想ができた咲夜だが、そう聞かずにはいられなかった。

「『この世で一番名前で呼んで欲しい人』『自分を認めてもらいたい人』らしわよ」
「…………………」

音一つ無く、耳が痛くなるほど静かな空間が、そこに存在した。

「このままでは、紅魔館は黒白館……または百合館になってしまう」
「………………………………」

その言葉に、答える術は十六夜咲夜には無かった。








「お嬢様…殺りましょう」

恋人に裏切られたような顔をした咲夜が、呟いた。

「あの節操無しの天然スケコマシを、人間から食材に変化させましょう」
「落ち着きなさい咲夜、そんな事をすれば、霊夢に退治されるわよ」

すくにでも包丁を持って、魔法の森に飛んでいきそうな咲夜をいさめるレミリア。

「大丈夫です。霊夢には魔理沙…もとい肉を使ったメンチカツでも『ごちそう』してあげれば黙認してくれます」
「………………………………………………………」

(……いくら霊夢でも、そこまで堕ちては………………いそうだな…」

いつか見た、食料も茶葉もきれて、何も食べるものが無いからと、湯のみをかじっていた霊夢が思い出される。
ヤツならありえると確信をし、今後あの巫女には注意をはらっておこうと思う紅魔館当主。

「お嬢様!!どうか御命令を!」
「それでもだめよ。魔理沙が、死んだら皆が悲しむわ」

その言葉に、ショックを受けた咲夜は

(……そうよ!魔理沙を殺したら、あいつを慕っている美鈴やフランドール様が悲しむわ。……だけど、この状態を受け入れる事は、私にはできそうに無い。ああ、どうすればいいの…いっそのこと皆一緒にメンチカツに………)

と、危ない思考に堕ちこもうとしている。

「…夜……咲夜!!聞いてる?咲夜」
「……はっ…申しわけございませんお嬢様。メンチか、串か考えていて、聞いていませんでした」
「……?ま…まあいいわ。それより話を戻すわよ。今度はちゃんと聞きなさいよ」
「はい!お嬢様」

トリップしていた咲夜に、少し引きつつも話を進めようとするレミリア。

「魔理沙を殺せば皆悲しむ、皆の悲しむ顔など私は見たくない。ならばどうするか?そんなのは簡単だ、皆から魔理沙を嫌いになるようにすればいい」
「……お嬢様。具体的にはどうすれば…?」
「…クックック」
「お嬢様?」
「さっきも言ったが、そんなのは簡単だ『魔理沙は人形遣いと一緒に住んでいる』『魔理沙は香霖堂の店主に好意を抱いている』『魔理沙はよく霊夢と○○○している』とでも言えばいい」
「それは…皆を騙す事になるのではないでしょうか」

メンチカツにするのはは平気なのに、嘘をつくのを嫌がる咲夜。

「安心しろ、誰も騙すとは言ってはいない」
「へ……?」
「『魔理沙は人形遣いと一緒(の森)に住んでいる』『魔理沙は香霖堂の店主に(兄妹的な)好意を抱いている』『魔理沙はよく霊夢とケンカしている』だ、嘘はついていないぞ、隠しているだけだ」
「な…なるほどしかし、もし隠しているのがばれた場合は、惨劇になりそうな気が……」
「そんなときは、例の天狗から聞いた話だといえばいい。誰もが納得するだろう」

そんな外道な事をのたまうレミリア様に、咲夜は

「最高ですわお嬢様。まさに悪魔の作戦ですわ」

外道な主に、外道な従者 ここは悪魔の住まう館『紅魔館』

「さあ作戦開始よ咲夜。まずは門番から行くわよ」








幸いなことに、天気は曇り
問題無く着いた、紅魔館門前

「……で、どこに門番がいるのよ?」
「………いませんねぇ」

本来、門の前に二十四時間いるはずの門番の姿が、見当たらない。

(…美鈴ったら、こんな時にどこへ…?)

咲夜はそのとき、地面にいくつも穴が開いているのに気がついた。

「……お嬢様。美鈴の居場所が分かりました」
「え」
「地面をご覧下さい、穴がいくつも開いているのがおわかりでしょう」
「穴?確かに開いているけれど…これでどうして門番の居場所が分かるのよ?」
「先ほど申し上げましたとおりに、現在美鈴は重い服を着ています。それも足が地面に沈み込むほどの重さの服を…」
「沈み込むっていったいどれ程の……?ということはこの穴は」
「はい、美鈴の足跡と思われます。この足跡を追ってゆけば……」
「自然と門番が見つかるという訳か」

足跡は、門から少し離れたところにある丘につづいている。

「確かあの丘の向こうには、花畑があったはずです」
「ハナバタケェ?そんなところでなにやっているのよ」
「お嬢様…『花畑=用足し』という隠語をご存知ですか?」
「……何が言いたいのよ?」
「いえ…何でもございません」
「……ま…まぁいいわ。そんなことより追いかけるわよ」
「はい。お嬢様」

美鈴の足跡を追って、丘を登ってゆく二人、やがて…

「・・・・・で・・が・・・・・ょう」
「・・・・って・・・・・・・・んな・・・・・・・・・・・・」

話し声が、聞こえてきた。
一人は、今追いかけている美鈴で、間違いないだろう。
だかもう一人は…?

「だれかと、話しているようね?」
「たぶん小悪魔だと、思います。あの二人、髪の色が似ているせいか、気が合うみたいですから」
「ふ~ん…まあいいわ。それより作戦はこうよ、飛び出して早口でまくしたてる。以上よ」
「…早口ですか?」
「こういうのは、相手に考える隙を与えたらだめなのよ。一つ目の情報に混乱しているところに、二つ目三つ目と続けて出すことで、思考を停止させて、詳しく考えられなくするのよ」
「さすがです。お嬢様」

美鈴達から見えないように近づき、タイミングを合わせる悪魔の主従

「行くわよ。準備はいいわね」
「はい」
「せ~の!!」

がばぁ

いきなり飛び掛るように、飛び出す二人
そして……

「門番!大変よ!!」
「ど、どうしましたお嬢様!」
「魔理沙が、人形遣いと一緒(の森)に住んでいるそうよ」
「ええ!?!」
「それだけじゃないわ、魔理沙が、香霖堂の店主に(兄妹的な)好意を抱いているらしいわ!」
「そ、それは本当ですか咲夜さん??!」
「さらには、魔理沙は、よく霊夢と○○○しているとのことよ!!」
「!!?#!??\?&%??」

矢継早に繰り出される情報に、混乱する四人。

(……四人?…)

レミリア様と咲夜は、美鈴と小悪魔と思っていた様子だが、実際には小悪魔はその場に存在せず。

「そ、それは本当なの…お姉様!?」
「へ……?」

聞き返したのは、金の髪と色とりどりに輝く羽を持つ悪魔の妹『フランドール・スカーレット』

(フ、フランなんでここに?)

反応したのは、フランだけではなく

「どうなのよ?!答えてよレミィ!!」

(パチュリー様まで!?)

悪魔の親友であり、ネグリジェを着た本の虫『パチュリー・ノーレッジ』

「い、いや…これは…その…あ…あの天狗に聞いた話で……」
「へ…?知りませんよ。そんな話」

と答えた、最後の四人目は

「し、新聞屋!!なぜここに?!」

黒き翼を持ち、飛翔速度なら幻想郷一を誇る新聞屋『射命丸 文』

「いやぁ~たまたま近くを飛んでいたら、いつもは図書館の奥と地下室の奥にこもっているお二人が、そろって外に出ているじゃありませんか。これは何かあったのかと思い、話を聞いていたところなんですよ」
「そ・・そうよ、なぜ館の外にフランとパチェがいるのよ!!」
「魔理沙に花冠を、作ってあげようと思って、パチュリーに作り方を教わっていたのよ」

頬を赤く染め、答えるフラン

「そんな事より、さっきのはどういうこと?お姉様?」
「それは……」

言葉に詰まるレミリア。

「本当のことですよ。フランドール様」
「え…」

答えるは、悪魔の従者 十六夜咲夜

「魔理沙は、人形遣いと一緒に住み、香霖堂の店主に好意を示し、霊夢とよく○○○しているらしいです」
「「「そ、そんなぁ~」」」

咲夜の言葉に、愕然とする三人
しかし

「それはおかしいですね。さっきアリスさん宅に、取材に行ったのですが、何日も誰にも会っていなかったみたいで、すごく歓迎されましたよ」

その文の言葉により

ピキーン

と、空気が凍ったように感じられる。

「それに、神社にも行ったのですが。そこに魔理沙さんがいたので聞いてみたところ『香霖?悪いヤツじゃあないけれど、一緒になりたいとは思わないな』との事です」

チリチリチリチリ

三人から感じるなにかが、渦巻いているように感じられる。咲夜とレミリア。

「あと霊夢さんと魔理沙さんは、○○○とか×××の経験は一切無いみたいで「ドムッ!!ガッ!!」!?すぅ…よ」

ドサッ

とりあえず、レミリアのボディブローと、咲夜によるナイフの柄での顎への一撃で、喧しいカラスを黙らしたが

「二人とも説明はしてくれ」るの?」るんでしょう?」ますね?」

三者三様によるその言葉を受けて、レミリア様と咲夜は

「「………………………」」

何もしゃべる事が、できなかった。

「何も言わない「ということは「認めるのね「自分達が「犯した「罪を「私達を「騙し「愛する「魔理沙を「汚した「事を」

(殺される…このまま何も言わなかったら…)

すくむ足を、震える口を、渇ききった喉を、なんとか奮い立たせ言葉を紡ごうとするレミリア様、しかし

「あれは「「「死ね」」」ヒィィ!!」

フランドールとパチュリーが浮かび、美鈴が拳を構える。
それを見た、紅魔館主とメイド長は逃げ出そうとする。

「逃がすかぁぁあ!!」

ズッッ……ッドォゥゥン

「ヒァ…?!」
「わわ!?」

美鈴の放った震脚により、地面がゆれ門が砕け湖が割れた。
そんな、震脚とも呼べないような威力に耐えられるわけも無く、逃げようとした二人は無様にも転び

「人の恋路を邪魔するヤツは……」「馬に蹴られて……」「「死んでしまえ!!」」

紫色の大図書館は、呪文を唱え
紅い妹は、紅き剣をかまえ

「日符 ロイヤルフレア」

紫から生じた紅炎が、紅の妹に放たれた。

(…?)

それを見た、紅の主従は

(た、たすけてくれるの?)

と、淡い期待を抱いたが

「…喰らえ…レーヴァテイン」

カッッ

「ッッ!!?」

紅炎が、紅い妹のかまえる紅剣に当たった瞬間、光がほとばしり
光がやんだそこには

「…ああ…あああ……」

二十メートルはあると思われる、紅い破壊のための剣

「これがレーヴァテインの真の力…」
「レーヴァテインの第二の姿…」

「「合符 ロイヤルレーヴァテインフレア」」

ロイヤルフレアを…日の力を吸収した、紅の剣がふるわれる。
空間も、時間すら破壊しながら
紅の主従に、向かって

(…駄目!時間が止められない。このままじゃあ避けきれない…せめてお嬢様だけでも)
(この体制では避けられない!私はともかく、咲夜があれを喰らえば……防ぐしかない)

従者は、主を逃がすために、主をひっぱり
主は、従者を守るために、足を踏ん張り

「お嬢様お逃げくださ…い?」
「咲夜私から離れる…な?」

ひっぱっているところに、踏ん張られ
踏ん張っているところを、ひっぱられ
その結果

「「きゃあ?!」」

再度その場に転がり、逃げる事も防ぐ事もできなくなる主従。
そんなことに構わず、振るわれる紅の剣
絶体絶命と思われたその瞬間、紅の主従に猛スピードで迫る黒い影があった。
しかし、影と紅の剣が二人に襲い掛かるのはほとんど同時・・・その結果

ズッ………………ッドォォォオオオオオオオオオオォォォォォォォゥゥゥゥ……………








(…………あれ?……生きてる?)

爆発が収まった後。レミリアは、自分が生きているのを不思議に思った。
先ほどの、破壊の剣はまともに喰らえば、五百年を生きる吸血鬼といえど、消滅するほどの威力だったはずだ。
なのに、擦傷などはあるが、五体満足でほとんど無傷に近い。

(…はっ!! まさか咲夜が……?)

咲夜がどうにかして、助け出したのではないかと、思い咲夜に振り向くレミリア。

「…ケホッ…ケホッ、ありがとうございます。お嬢様。おかげで助かりました」
「……私じゃあないわよ」
「えっ、それではいったい誰が?」

てっきり、咲夜が助けてくれたと、思っていたレミリアだが、どうも違うらしい。

(こっちが、聞きたいわよ。あんな中で、いったい誰が?……ん?)

とそんなことを、考えていたレミリアは、少し離れたところに、誰かが倒れている事に気がついた。

「お前は…」
「魔理沙っ!しっかりして、魔理沙!!」
「ぐぅっ…」

同じく気づいた、フランがかけよる。
フランの呼びかけに、苦しげに答えるのは、今回の事の元凶『霧雨 魔理沙』

(なぜヤツが、ここに…?)

先ほどまでいなかった人物。しかも、なぜか軽傷とはいえない怪我をして、苦しげに呻いている。

「魔理沙…なんで、あの二人を助けたのよ。あの二人は、魔理沙を侮辱し汚したのよ…それなのに、そんな怪我までして……」

パチュリーの、その言葉によって、レミリアは全てを理解した。
あの剣が、振られた瞬間、剣と同時に魔理沙が突っ込んできて、咲夜と一緒くたにふっとばし、剣に自分があたったのだ。
つまり、妹の放つレーヴァテインから、咲夜と自分を命を賭けて助けたのだ。
その結果、自分は避けきれず、レーヴァテインを、喰らってしまったのだろう。
もっとも、直撃すれば形も残ってないはずだから、結界かなにかで防いだのだろうが…

「グッ…ハァ…ハァ」
「くっ…中国!早く魔理沙を、館の中に!!」
「は…はい!!」

先ほどの、怒りはどこへやら
門番が、傷だらけの魔理沙を、担いで館の中に入っていく。








「あははは、あ~死ぬかと思ったぜ」
「笑い事じゃあないわよ……はぁ…死んでても、おかしく無かったんだからね」
「悪い悪い、助かったぜ」

魔理沙が、笑いパチュリーが、溜息を吐く。
魔理沙が、運び込まれてから二時間近くがたつ。
魔理沙の怪我は、幸い思ったほど酷くは無く(それでも、背中は丸焦げで、左腕が取れかかっていた)パチュリーの治癒魔法と、美鈴の気功でほとんど治っていた。
今は、大事をとって、ベッドに寝かされている。
周りには、安心して緊張の糸が切れたせいか、寄りかかるように寝ているフランと、気功を使いすぎたのか、潰れたカエルのように倒れている美鈴がいる。

「もう、二度としないでね。今度も、また助かるとは限らないんだから」
「おう!もう、二度とごめんだぜ」
「………………………」

パチュリーは、ベッドの横のイスに、腰掛けて文句をたれている。
治癒魔法を、使いすぎたせいかふらふらして、すぐにでも倒れてしまいそうである。
その隣には、押し黙ったままの、レミリアと咲夜がいる。

「……なんで…」
「ん?」
「何で助けたのよ!!そんな、死にそうになるような怪我までして…」

レミリアが、泣きそうな声で、魔理沙を糾弾する。

「たとえ、私や咲夜が死んでも、貴方に不都合なんて無かったでしょう!!なのに、あんな無茶苦茶して、なに考えてるの!?」
「……………………………………」

そのレミリアの、言葉に魔理沙は、少し間を置いて

「…後悔しそうだったからさ」
「後悔なんて、するわけないでしょう!!本当のことを…」
「するよ」

レミリアの、言葉をさえぎり

「お前達が、私をどう思っているか知らないが。私は、お前たちの事を、友達だと思っている。もちろんパチュリーやフラン…中国もだ」
「………………」
「あの時助けなかったら、絶対に後悔してた。私だけじゃあなく、この三人も後悔していただろうし、悲しんだだろうな、私は、こいつらのそんな顔は見たくないし、お前達の死に顔も見たくない。だから助けたんだ」

(……友達……そんな事で、助けたというの?)

魔理沙の、話を聞き。少なからず、ショックを受けたレミリア。
そんなレミリアを、睨みつける様にしてパチュリーが、口を挿む。

「でも魔理沙、貴方は……この二人は、貴方を侮辱したのよ。それを、知らないから……」
「あ~~その事なんだが…実は……聞いてた」
「「へ?」」
「いやな。めずらしく花畑なんかに、集まってなにかしていたんで、気になってな、つい…」
「ついって、いったい何時から?」
「あ~『し、新聞屋!!なぜここに?!』て、ところぐらいだったかな?」

(ほ…ほとんど聞かれてるじゃないの!?)

「じゃあ……じゃあ私達が何をしたかも………?」
「だいだいは………な」

肩を、すくめる魔理沙。

「正直。アレは腹が立ったけどな」
「じゃあ……なぜ助けたの?知っていたのなら、助ける事無いじゃない。それどころか、一緒に攻撃したって………」

(わからない、なんで・なんで助けたの?そんなことする必要ないじゃない………)

「それは、もう答えたぜ」
「えっ?」
「友達だからってな?」
「っ!!……………」

(バカな、そんなそんな理由で・・・私達は、フランやパチェを盗られたと思い、醜くも嫉妬して、あんな事をしたのに、魔理沙は……)

魔理沙の話が、進むにつれ、どんどん顔色を変えていくレミリア。

(これが私か・・・夜の王 五百年の月日を生きる吸血鬼 スカーレットデビル 『レミリア・スカーレット』 ………ご大層な名だ
本当はただの人間に、嫉妬し、陥れようとした相手に、逆に助けられる……これが『レミリア・スカーレット』か……)

プルプルと、レミリアの体が震える。

(ふざけるな!! この紅魔館が当主『レミリア・スカーレット』が、たかが人間に助けられただと?そんな事があってたまるか!!)

「おい!大丈夫か?いきなり震えだしたりして、どうかしたのか?」
「マリサァ!!」
「な・なんだよ?!」

いきなり震えだし叫びだした、レミリアに少しビビル魔理沙。

「お前、私を殴れ」
「はえ?」
「なんなら、マスタースパークでも、構わんぞ。思いっきり撃って来い」

いきなり殴れなど、撃って来いなど言われて、混乱する魔理沙。

「何で、そんな事しなくちゃなんないんだよ!?」
「私がそうしたいからだ、助けられたままなど、私のプライドが許さん」

その言葉に、魔理沙は

「プライドって………お礼なら、魔道書か何か珍しいものでも………」
「そんなもの、後でくれてやる!先に撃って来い!!」
「って言われてもなぁ……」

そんな事言われても、殴ったりする理由が無く、困ってしまう魔理沙。
その時

「殴ってあげてくれないかしら?」

今まで、静観していた咲夜が、口を出してきた。

「咲夜……?」
「いい?これは、貴方とお嬢様の問題ではないわ。…これは、お嬢様の問題なのよ」
「………………」
「お嬢様は、紅魔館当主……いえ一匹の妖怪として、言っているのよ」
「………妖怪として?」
「そう、人間が、人間に、助けられるのは、普通の事よ。でも妖怪が、人間に、助けられるなんて恥でしかないわ。だからこそお嬢様は、さっき肩代わりした分の攻撃を、よこせといっているのよ」
「そんな事言ったって、いきなり殴れる訳無いだろ!」
「お嬢様が、プライド高いの知っているでしょう?一回ぐらい、殴ってあげなさいよ。友達なんでしょう?」
「……………………………………」

少しの、間を置き

「………わかった……一発だけだぞ」

不承不承と、いった感じで承諾する魔理沙。

「よし!さっさと撃って来い」

目をつぶって、身構えるレミリア。

「いくぞ……」

右手を腰に構え、手を型作り、そのまま照準を合わせて

「……ふんっ!」

ビヂィ

「あうぅ………ぁ?」
「ふぅ……これでいいな?」

と、魔理沙が、右手をプラプラさしながら、額を押さえてうずくまっている、レミリアに聞いてくるが

「なんで……」
「ん?」
「なんでデコピンなのよ!?」

そう、魔理沙が放ったのは拳でも、魔弾でもなく、デコピンだったのだ。

「そりゃあ、デコピンの方が、下手に殴るよりきくからな」
「確かに、地味に痛いけれど・・・」

納得してなさそうに、つぶやくレミリア。

「それに、自分の主や親友が、殴られるのを見るのはいやだろうからな?」
「え?……あ」

うずくまっているレミリアを、心配そうに見ている、咲夜とパチュリー。

「大丈夫ですか?お嬢様」
「額は赤くなっているけど、怪我はなさそうね」

(咲夜はともかく、パチェまで……?さっきまで、あんなに怒っていたのに?)

「なにを、不思議そうにしてるんだ?大事な人を心配するのは、当然だろ?」

悪戯っぽく笑い、楽しそうにしている魔理沙。

(ああ……なんかばからし……)

魔理沙のそんな顔を見ていたら、嫉妬していたのやら、殴れといっていたのが馬鹿らしく思えてきた。

「はぁ……」

なにかあきらめたように、溜息を吐く。

(こいつには、敵わないのかな?………こんなに小憎らしい人間は初めてだ)

楽しそうに、もう一人の受刑者に近づく魔理沙。

(人を馬鹿にして)

くらうまいと、逃げる咲夜。

(騒ぎの中心なのに、素知らぬ顔でひっかきまわして)

逃がさんとばかりに、回り込むパチュリー。

(こんな迷惑な人間、見たこと無い)

捕らえられ、半泣きの咲夜に近づく魔理沙。

(……でも)

先ほどと同じかまえを取る魔理沙、そして……

(なにか…かっこいいな……)

ビヂィ
数日後

「お嬢様、お食事をお持ちしました」
「あっ……………」

部屋の中には、黒い帽子と黒い服を着て白いエプロンをつけたレミリアが、目撃されたと言う




初めましてリモコンと申します。
東方は妖々夢しか持っていません。
それでも紅魔館の連中が好きです。

*修正いたしました。
コメントをくれた皆さん、本話を読んでくれた皆さん、どうもありがとうございました。
超闘士が、そんなに知られているとは思いませんでした。

リモコン
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コメント



0.1500簡易評価
3.80名前が無い程度の能力削除
魔理沙が無駄に格好良過ぎです。天然スケコマシめ!w
15.70シン削除
嗚呼ッ!
「その拳は惑星をも砕き、その輝きは暗黒の宇宙すら光で満たすという遥かな太古より宇宙に伝わる最強闘士!」「そのk(ry
じゃないか!
16.無評価名前が無い程度の能力削除
視点のブレが気になるかな。あと笑い話として見ていたのでオチが少し弱かったと感じた。
18.60名前が無い程度の能力削除
ウルトラマン吹いた。
どうしてくれる。
21.80SETH削除
まりさかっけ!

あと超闘士列伝とはお目が高いw
22.80名前が無い程度の能力削除
ねんがんの めいりん×まりさに おめにかかったぞ!

中盤以降、台詞、地の文とも読点がほとんど無く、少々読みにくさを感じました。
話の流れは良いと思いましたので、この点数で。
23.70名前が無い程度の能力削除
なんだかわからないけど胸がモヤモヤするよ
26.70名前が無い程度の能力削除
句点があったりなかったり・・・この区別に意味があったのならばゴメンナサイ。
ネタとか語り口とかはよかったと思います。既にコメントはありますが、超闘士ネタに乾杯。

>黒き翼を持ち飛翔速度なら幻想卿一を誇る新聞屋『射命丸 文』
幻想卿・・・ありがちだけど一応報告
28.20読専削除
読点があったりなかったり、3点リーダだったり点だったり
感嘆符が半角だったりで読みにくいです。
Googleで「小説 書き方」などで探せば標準的な書式が出てきます。
ご参考までに。