Coolier - 新生・東方創想話

HEAT LOVE ACTION! ~愛情と日常と発情と~

2011/08/25 13:05:56
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 暗い地底の底に存在する、灼熱地獄跡。
 どこまでも殺風景な景色の広がるこの場所に、堂々と姿を構える地霊殿。その、とある一室。
 異変は、すでにそこで始まっていた。


「はぁ……はぁ……」


 部屋の片隅にある、大きく柔らかなベッドの上。
 そこで四つん這いの姿勢をとりながら、火焔猫燐は荒く息を吐いた。
 そしてそのまま、お燐は自身の体の下に居る主人に向かって囁きかけた。
「ほら、さとり様ぁ……あたいと、しましょうよぉ……」
「…………っ」
 言って、お燐はその顔に、薄っすらと妖しい笑みを浮かべた。
 お燐の体の下、古明地さとりはその言葉を聞いて、ごくりと唾を飲み込んだ。
 さとりは、今まさに危機的状態にあった。ベッドの上で仰向けになっている体の上に、重なる様にお燐が四つん這いの姿勢をとっている。両手は動かせない程にがっしりと掴まれ、逃げる事も、抵抗する事も出来ずにいた。
「ねぇ……さとり様ぁ……」
 思わず身震いしていまいそうな程の、蕩ける様な甘い猫撫で声。囁くお燐の口元はだらしなく緩み、はぁはぁと息を吐くたびに、真っ赤な舌を覗かせている。
 明らかに、まともな状態ではなかった。
「………………」
 そんなお燐の淫らな表情を見つめながら、さとりは強く後悔していた。今の状況に軽い恐怖を覚えながらも、自分の迂闊さを悔まずにはいられなかった。
 どうして、忘れてしまっていたのだろうか。
 この事態を引き起こした原因。数年に一度の周期で起きる、お燐特有の興奮状態。


 つまりは────『発情期』を。


 …………………………
 それは、ほんの数分前の事だった。


 コンコン、


 部屋の扉をノックする音が、室内へと小さく響いた。
 自室で椅子に座って本を読んでいたさとりは、それに気付くと、音のした方へとゆっくりと顔を向けた。
「さとり様、あの……少しお話したい事があるんですけど、よろしいでしょうか……?」
 続いて聞こえてきたのは、ペットであるお燐の声。
 さとりは特に気にするでもなく、扉の向こうの彼女へと言葉を返した。
「構わないわよ。鍵は開いてるから、入ってらっしゃい」
 そう言って、さとりは再び読みかけの本へと視線を落とす。
 さとりが読んでいるのは、偶然手に入った地上の古書だった。最初は暇潰しくらいの気持ちで手に取った物だったが、読んでみるとこれがなかなか面白い。
 お燐が部屋に入って来たのも気にせず、さとりは続きの内容を目で追って行った。


 …………思えば、これが失敗だった。


「あの、さとり様……あたい、実は……」
「……?」
 静かに、部屋の扉を閉める音。そして間もなく、ぽつぽつと話し始めたお燐だったが、なんだか妙に歯切れが悪かった。
 小声気味で話すその声は、いつもの口上手なお燐からはとても考えられない事だった。
 さとりは、思わず感じた違和感に、読んでいた本から再び視線を外すと、扉の方へと目を向けようとして、


 ────きゅっ、


 そっと、後ろから抱きしめられた。
「…………!」
 まったく気配を感じさせる事なく、さとりはいつの間にか後ろに回り込んでいたお燐から、首から両腕を回される形で優しく抱かれていた。
 うなじの辺りに感じるお燐の双丘の感触が、不覚にも少しだけ心地がよかった。
「……お燐、これは一体何のつもり?」
 そんな心の内を悟られる事なく、さとりはお燐へと当然の疑問を投げかける。
 問いつつも、どうせ軽い悪戯程度だろうと、さとりはそう考えていた。
 しかし次の瞬間、さとりはすぐにその考えを改める事になった。
「さとり様……あたい、体が熱いんです……さとり様の事を思うと、どうしようもなく火照っちゃって……」
 お燐は言った。
 それを聞いたさとりは、背筋にゾクリと緊張が走るのが分かった。
 まさか、もう『あの』時期になってしまったのか。
 季節も天候も変化しない地底では、そういった時期的な現象にはつい疎くなりがちである。最近の代り映えしない平凡な日々に、完全に油断していた。
 数年に一度起こるお燐の『発情期』を、さとりはすっかり忘れてしまっていたのだ。
「さとり様……好き……大好きです……」
 最早理屈ではなく、本能に近いその言葉。さとりは自身の額に、嫌な汗が浮かぶのが分かった。
 とにかく、このままではいけない。
 なんとか事態を穏便に収めようと、さとりはお燐へと優しく語りかける。
「……お燐、落ち着いて。ほんの少しでいいから、私から離れてくれないかしら?」
「……嫌です……あたい、もう離れたくない……」
 そう言って、抱きしめるお燐の腕に力が加わる。


 …………これはまずい。


 いつの間にかお燐の状態は、さとりの気付かない内にかなり深刻化しているようだった。予め分かっていれば、対処の仕様があったものを。
 どうしたものかと、さとりが全力で考えを巡らせていると、
「ねぇ、さとり様ぁ……あたいと『良い事』しませんかぁ?」
 お燐の口から、とんでもない言葉が呟かれた。その喋り方は、さっき以上に酷く甘さが増してきていた。
「ま、待ってお燐。まだ心の準備が……」
 自分でもよく分からない事を口走りながら、さとりはあたふたと手を動かす。焦りで、まともに思考が働かなくなりつつあった。


 ────やばい、やばい。


 このままでは危険だと、頭の中で何度も警鐘が鳴り響く。
 前にお燐が発情した時の記憶が、さとりの脳裏にありありと思い描かれる。
 さとり自身、あの時に何が起きたかを忘れたわけではない。筆舌に尽くし難い、それはひどい痴態を繰り広げられたものだ。
 それが再び、今この場で再現されようとしている。それだけは、何としても阻止しなければいけなかった。
 どうにかしてお燐を宥めようと、さとりはもう一度言葉を発しようと口を開こうとした。


 ────その時だった。


 するりと、お燐の手が、さとりの胸元の衣服を掻き別けて侵入して来た。
「…………っ!」
 さとりは、声にならない悲鳴を上げた。
 目は大きく見開き、一瞬息が止まりそうになる。


 ───駄目、駄目!


 頭の中で、必死に叫ぶ。
 なんとかしなければと思うのに、心臓の鼓動が速くなるだけで、緊張で体が動かない。
 しかしさとりの意思とは無関係に、お燐の手はどんどん服の内側へと侵入していく。
 そして、ついにお燐の手が障害を抜けて、さとりの胸を直に触りかけた、瞬間────
「…………嫌ぁ!」
 今度こそ、さとりは叫んだ。
 弾かれたように椅子から立ち上がり、さとりはお燐の体を思いっ切り突き飛ばした。


 ────がたんっ!


 立ち上がった反動で、椅子が大きな音を立てて倒れた。
 続いて、勢いよくお燐が床に倒れこむ。
 ……そして、時が止まった。
 静寂が、辺りへと広がる。
「…………うぅ……痛いよぉ……」
「あ……」
 少し間をおいて、お燐が小さく呻いた。
 そこでようやくさとりは、自分が何をしたかを思い返し、息を飲んだ。
「あの……お燐……ごめんなさい……でも、さっきのはお燐が……」
 さとりは言い訳をしながらも、倒れたお燐へとゆっくりと近づいて行く。
 柄にもなく、取り乱してしまった。
 いくら発情期中とはいえ、痛めつけるつもりはなかったのに。
 歩きながらも、自然と第三の目がお燐の心を覗く。痛い、痛いと、第三の目で見たお燐の心は鳴いていた。
「…………」
 罪悪感を感じながら、さとりはお燐を立ち上がらせようと、そっと手を差し伸ばす。


 ────勢いよく伸びてきたお燐の手が、さとりの手ではなく手首を、がっちりと強く掴んだ。


「……え!?」
 さとりが驚く間もなく、お燐はその場で素早く立ちあがると、そのまま向きを変えて歩き出した。
 必然、さとりもそのまま引っ張られる事になる。
「ちょっとお燐……痛っ……」
 不意に腕を掴まれたのと、お燐の立ち直りの早さに戸惑いを隠せないさとりは、手を引かれるまま覚束ない足取りで歩き出す。
 お燐が向かう先は、僅か数メートル先に置いてあるさとりのベッドだった。
 嫌な予感がしたさとりは、もう一度お燐の心を、第三の目で覗き込んで…………ゾッとした。
 お燐の心の中ではすでに、さとりとの情事に励む事しか考えられていなかった。


 ────さっきの心は嘘?


 いや、違う。お燐はさっきまで、確かに痛いと心で訴えていたはずだった。
 だとすれば、お燐はあの痛みを一瞬で忘れ、すぐさま、さとりとまぐわう事に思考を切り替えたとしか考えられなかった。
 その可能性を考えて、さとりはあまりの衝撃に、思わずその場で足が止まりそうになった。
 しかし当然、お燐は止まらない。逃げ出そうにもお燐の握力は強く、とても腕を振り払う事は出来なかった。
 そうこうしているうちに、ついにさとりは自分のベッドの前まで連れて来られてしまった。
 お燐はそこで足を止めると、掴んだ手はそのままに、もう片方の手でさとりの腰を持ち上げた。
「お燐……やめ……」
 次に何をされるかを理解したさとりは、無駄と知りつつも、お燐に制止を呼びかけようとして…………


「……にゃーん!」


 鳴き声と共に、さとりの体はそのまま放り投げられた。
「きゃっ……!」
 その速さに、さとりは小さく悲鳴を上げた。
 受け身すら取らせない程に勢いよく投げ出された体は、しかしぽふんと、ベッドの柔らかな感触に迎えられる。
 発情時のお燐は、興奮し過ぎて理性だけでなく、力加減も利かないようだった。痛みはなかったが、これがベッドの上でなければただでは済まないところだ。
「…………」
 いや、今はそんな事を考えている場合ではない。
 それ以上に危険な事が、今まさに起きようとしているのだ。
 早くここから逃げようと、さとりはベッドから体を起こそうとした。
「……どこ行くんですかぁ、さとり様ぁ?」
「…………っ!」
 が、すでに手遅れだった。
 お燐は素早い身のこなしでさとりの体の上に跨ると、そのまま抵抗できないように押さえつけてしまった────────
 …………………………


 …………こうして、話は現在に至る。
 全て、さとりの油断が招いてしまった結果だった。
 自分の甘さ故に、こうなる事を回避し切れなかったのだ。
「……はぁ、はぁ……さとり様ぁ……」
 その甘さ以上に甘ったるい淫らな吐息が、お燐の口から吐き出される。
 さとりは、最早抵抗する意思すら薄れかけていた。
 両手は押さえつけられ、体の上にはお燐が乗っかってしまっている。こうなってしまっては、さとりにはどうする事もなかった。
 正面にあるお燐の顔を、さとりはただぼんやりと見つめ返す。
 これが自分が招いた結果ならば、さとりは甘んじて受けるつもりですらいた。
「さとり様ぁ……あたい、もう我慢できない……!」
 ついに痺れを切らしたお燐が、ゆっくりとその顔を近づけてきた。
「────っ」
 ……ここまでか。
 せめて行為が終わった後には、お燐が元に戻っている事を信じたい。
 さとりは覚悟を決めて、ぎゅっと目を瞑り…………


 ────バタン!


 その瞬間、大きな音を立てて、入口の扉が開かれた。
「…………!?」
 さとりもお燐も、突然響き渡った大きな音に、ビクンと体を震わせる。
 そうしてお互いに、音のした方へと顔を向けた。
「大丈夫ですかさとり様!? さっき凄い音がしましたけど生きてますか!?」
 見やる二人の視線先。そこに在ったのは、相当急いで来たのか血相を抱えて荒い呼吸を繰り返す、霊鳥路空の姿だった。


         *


 間一髪だった。
 あと数瞬遅れていたら、さとりとお燐の唇は重ね合わさっていた事だろう。
 そんな奇跡の様なタイミングでのお空の登場に、さとりはドクン、ドクンと自身の心臓が激しく脈打つ中、ほっと息を吐いた。
 それでもまだ、危機的状況から脱したとは言えなかったが。
「さとり様……それに…………お燐?」
 ようやくお空が、ベッドの上で折り重なる二人の存在に気付いた。
 信じられないものを見たかのように、お空はパチパチと何度か瞬きを繰り返すと、突然はっと気付いたように目を見開いて、その顔が見る見るうちに赤く染まっていった。
 さらに肩もプルプルと震えだし、ぎりりと音がしそうな程に拳を握り込んだ。
「こっちが心配して来てみれば……一体これはどういう事ですか!? ……まさかお燐、貴方の仕業なの!? 早くさとり様から離れなさい!」
 主人の上に跨るお燐の姿を見て、お空は眉を吊り上げて不満を露わに叫んだ。
 そのまま二人の居るベッドへ、ずかずかと大股で数歩近付いたところで────


「来ないで!」


 しかし今度は、お燐が絶叫した。
「……!?」
 その悲鳴に近いお燐の叫びに、お空は思わず足を止め、さとりは驚いてお燐の顔を仰ぎ見る。
「え……お燐……?」
 普段とは明らかに違うお燐の様子に、お空は戸惑いの表情を浮かべると、小さく呻いた。
「邪魔しないでお空……あたいは、さとり様と良い事するの……!」
 重苦しく響き渡る、唸る様なお燐の声に、場の空気がピン、と張り詰める。
 さっきの甘い口調と、淫らな表情からは一変して、お燐の目は切れそうなほどに鋭く細められ、お空の事をじっと見据えていた。
 その言葉と視線から感じ取れる威圧感は、最早殺気と呼ぶに相応しく、明確な敵意を持ってお空へと突き付けられていた。
「さとり様……一体これは……?」
「……今のお燐は発情期で、心が不安定なの……だからお空、下手に刺激しては駄目よ……」
「え……発情って……まさか、あの時の……!?」
 何が起きたか分からない様子で立ちつくすお空に、さとりはそっと注意を促した。
 第三の目で覗いたお燐の心。
 その中はまるで燃え盛る炎の様に、強い憤怒で染め尽くされていた。刺激を与えてしまったら、すぐにでも爆発してしまいそうな危うさすら感じさせる。
「…………」
 そんな不安定なお燐の感情の変化に、さとりは内心肝を冷やしながらも、今が又とない好機だとも考えていた。
 一時は諦めかけていたが、お空の登場で状況は変わっていた。今、お燐の意識はお空へと向けられ、さとりからは意識が外れつつあった。この期をうまく利用すれば、さとりの貞操は守られ、事無きを得る事が出来るかも知れないのだ。
 僅かな希望を抱きながら、さとりはこれ以上ないくらいの速さで思考を巡らせて行き、更なる打開策を講じようとしていた。
 ────しかし。


「……無理です」


 お空がぽつりと呟いた。
「……あの時、私が気付いたのは全てが終わってしまった後でした。お燐を止める事も、さとり様を助ける事も出来なかった……でも、今は違います。今なら、それを止められる。二度とさとり様をあんな……恥ずかしい目に合わせるわけにはいきません!」
 そう言い放つと、お空は右手に備えた制御棒を、迷うことなくお燐へと構えた。
 自身に向けられた制御棒を見ても、しかしお燐は表情一つ変えずに、放たれる殺気だけが静かにその密度を増した。
 一触即発の空気が、辺りへと広がり始める。
「…………!」
 さとりは思い返す。確かに、あの時お燐に蹂躙されたさとりの姿は、それはもう酷い在り様だった。
 あれと同じ結末だけはさとりも回避したいとは思うが、しかし今この流れも非常にまずかった。
 もしこの場所でお燐とお空の力がぶつかりあえば、さとりの部屋は間違いなく崩壊し、地霊殿内部に甚大な被害を及ぼす事は想像に難くない。
 さとりの貞操はなんとか守られそうだったが、しかし今度は違う危機が迫りつつあった。
「ちょ、ちょっと待ってお空────」
 さとりが、慌ててお空を止めようとした、その瞬間────


 さとりの上から、ふっ、と重さが消失した。


「…………え!?」

 さとりの上に跨っていたはずのお燐の姿が、目の前から掻き消えた。
 そして、


 ────ドスッ!


「……かはっ……!?」
 聞こえてきたのは、重苦しい打撃音と、お空の吐き出されるような声。
 さとりはその声のした方を見て、眼前の光景に思わず目を疑った。
 一瞬の間にお空との距離を詰めたお燐は、その右の拳でお空の腹部を殴り捉えていた。



「……だから邪魔するなって……言ってるでしょ!」


 激高したお燐の追撃は止まらない。
 お燐はその場ですっと体の向きを変えて僅かに腰を落とすと、今度はまるで体当たりするかのように、左の肩口でお空の体を打ち抜いた。
「がっ……!」
 その衝撃をもろに受けたお空の体が、後方へと大きく吹き飛んだ。
「……あっ!」
 それを見て、さとりが短い悲鳴を上げた。
 なぜならお空の背後には、数メートルはある大きなガラスの窓があり────


 …………ガシャン!


 飛ばされた勢いのまま、お空は背中から窓ガラスに激突すると、凄まじい音を立ててそれを突き破り────その下、中庭の方へと落ちて行った。
 お燐は割れたガラスの淵までゆっくりと歩いて行き、その下を覗き見る。そして何かを確認すると、ふと首だけ振り返って、さとりの方を見た。
「…………!」
 さとりの体が、ビクンと跳ね上がる。
 するとお燐は、切れそうな程に鋭く細められた目をにやりと歪ませて、目だけで笑った。
「……ちょっと待っててくださいね、さとり様。邪魔者はちゃんと排除してきますから」
 そう言い残して、お燐はガラスの淵から小さく跳躍すると、自身も中庭の方へと降りて行った。
 後には、さとり一人だけが部屋に取り残された。


「………………はぁっ……!」


 誰も居なくなり、緊張状態から解かれたさとりは、大きく息を吐きした。
 立ち上がりかけていた体は、そのままベッドの上にぺたりと座り込んでしまう。
 全身から、一気に力が抜けて行くのが分かった。
 ……静寂。
「………………」
 思考が、うまく働かない。
 瞬く間に起きた出来事に、心がそれに追いついていなかった。
 茫然とした体で、さとりはベッドの上から動く事が出来ずにいた。


「…………どうして、こんな事に……」


 何に対してなのか、誰に対してなのかも分からない問いかけを、さとりは一人呟いた。当然、答えは返ってこない。
 壊れた窓にぽっかりと開いた闇だけが、さとりの事をじっと見つめていた。
 さとりの言葉はゆっくりと静寂の中へと広がり、融けて混じり合い、やがて聞こえなくなった────────


         2


 地霊殿の壁から僅かばかり離れた所に造られている中庭は、灼熱地獄跡の名残で草木は一本も生えておらず、ごつごつとした固い地面だけが広がっている。
 一面赤土色に染まるこの場所で、お空はゆっくりと立ち上がった。
「……うぅ……」
 ふらふらと立ちあがりながら、お空は小さく呻いた。体を動かすたびに、ズキリとあちこちに痛みが走る。
 それなりに高い所にあるさとりの部屋から突き落とされて、そのまま地面を転がったのだから当然だった。
 骨には異常がなさそうなのがせめてもの幸いと、お空は腕や足を軽く動かしながら思った。
 そうして自身の体の状態を確かめながら、お空は近づいてくる仲間に向けて、静かに身構えた。

 
「まだ動けるんだ……しぶといなぁ」


 向こう側から歩いてきたお燐は、呆れたようにそう呟くと、お空から少し距離を置いた所で足を止める。
 その目はどこまでも冷たく、お空の事をじっと見据えていた。
「お空が悪いんだよ? 折角さとり様と良い事出来ると思ったのに……それを、横入りして邪魔しようとするからっ!」
「お燐…………」
 怒りを露わに、お燐は鋭い視線を飛ばしながら、お空を怒鳴りつけた。
 しかしお空は一切気圧される事無く、真正面からお燐の事を見返した。その瞳は、お燐に対する深い憐れみの色が込められていた。
「……何よその目は……あたいは本気だよ!? さとり様の事が好きで好きで仕方ないの! 体が熱くて……もう抑えきれないの……! だからお願いお空……邪魔しないで……」
 言葉を発するたびに、お燐の表情が苦しそうに歪んでいく。
 さっきまでの怒りが鳴りを潜め、苦渋の表情を浮かべるお燐を見て、お空の心が僅かに揺らぐ。
 しかしお空は、懇願するお燐に対し、静かに首を横に振った。
「……さとり様を好きなのは私だって同じだよ。でも、私達はそんな勝手なことしちゃいけないって、分かってるでしょ? 前の時も……今だってさとり様に迷惑かけて……発情期だかなんだか知らないけど、早く目を覚ましてよ、お燐!」
 お燐に向けて、お空はきっぱりと言い切った。
 普段のお燐ならば、決して今の状況を望んだりはしない。だから、止めるのだ。後に後悔する事になるのは、お燐自身なのだから。
 そうしてお空は、俯かせていた顔を上げた。
 どんな答えが返って来るのかと、お空は再び、お燐の顔を見返した。


 ────こちらを見るお燐の顔から、一切の表情が抜け落ちていた。


「………………っ!」
 ゾッとした。
 まるで心を持たない人形の様な無表情さで、お燐はお空の事をじっと見つめていた。
 あまりの不気味さに、思わず後ろに飛び退きそうになったのを、お空は辛うじて堪える。
「……………………」
 間もなくして、お燐の眉が徐々に釣り上がり、目には怒りの炎が灯り始めた。
 その気配から、戦いは避けられないと悟ったお空は、覚悟を決めて静かにお燐の反応を待った。
 見る間にお燐の口が、徐々に徐々に開いて行き、そして。
「……なら……二度と邪魔出来ないように痛めつけてあげる!」
 お燐が、宣戦の言葉を叫んだ。
 同時に、お空へと攻撃を仕掛けようとした────その時。


「────やめなさい!」


「……!?」
 お燐の声をかき消す程の勢いで、さとりの声が中庭へと響き渡った。


         *


「……ふぅー…………」

 
 二人の動きが止まり、視線が自分へと向けられる中、さとりは安堵の溜息を吐いた。
 猫の様な身のこなしが可能ならともかく、それが出来ないさとりは窓から飛び降りる分けにもいかず、急いで地霊殿内部の階段を下って来たのだ。
 僅かに息を切らしながら、さとりは薄っすらと額に汗を滲ませ、大きく肩で深呼吸をする。
「さとり様……あ、えっと……」
 お空が何かを呟こうとして、しかし言えずに、言葉を濁した。
 今まさにお燐と交戦しようとしていた場面でのさとりの登場に、お空は戸惑いを隠せないでいた。
 さとりはそんなお空へと顔を向けると、そっと言葉を投げかける。
「お空、さっきは助けてくれてありがとう。でも、もういいの。貴方は下がっていて」
「え……!?」
 さとりは言った。それはとても穏やかな物言いだったが、どこか有無を言わせぬ威圧感があった。
 戸惑うお空を尻目に、さとりはゆっくりとお燐の方へと足を進め始めた。
 そうして近づいて来るさとりの様子を見て、お燐は何かに気付くと、高らかに笑った。
「あははは! そっかぁ、ようやくさとり様もその気になってくれたんですねぇ。さぁ、早くやりましょう! なんならあたいは別にこの場所でやっても構いませんよ!?」
 お燐がだらしなく顔を緩ませて、さとりを誘う。
 話すお燐の淫らな心の内は、第三の目を通してさとりに全て伝わって来ていた。
 それを見て、思わずさとりは小さく笑った。
「ふっ……そうね、私もこの場所の方が都合がいいわ……」
 さとりが、足を止めた。強い意志の籠った眼差しで、真っ直ぐにお燐を見据えた。


「さぁ、やりましょうお燐。貴方と私で、全身全霊を賭けた一対一の真剣勝負を!」


 そしてさとりは、眼前に立つお燐へと言い放った。
 場の空気が、一瞬にして固まった。
「…………さとり様……今、なんて?」
 お燐が訝しげに眉を寄せて、さとりへと問い返した。
「言葉の通りよ。お燐、私と戦いなさい。もちろんただで、とは言わないわ。もしお燐が私に勝てたら、その時は貴方の望む事、何だってしてあげる。まぐわいだろうと何だろうと、好きなことを望むといいわ」
「なっ……!?」
 それを聞いて、今度はお空が驚きの声を上げる。
「ちょっと待ってください! 何もさとり様がそんな事する必要はないじゃないですか!? お燐の事は私が何とかしますから、どうか考えを改めて……」
「いいえ、お空。今回の件の責任は全て私にあるわ。お燐がこうなるまで気付かずに放っておいてしまった、私の責任。だから、私がけじめを着けなければいけないの。お空は手を出さないで」
「さとり様…………」
 納得のいかない様子のお空に、しかしさとりはきっぱりと言い切った。それが、さとりの下した決断だった。
 お空が沈黙したのを見て、さとりは今一度お燐へと向き直る。
「もし私が勝ったらお燐には……そうね、一週間自分の部屋で謹慎でもして貰おうかしら。どうするお燐? 結構な好条件だと思うけど、貴方の答えは……って、もう聞くまでもないみたいね」
 さとりは一人頷くと、後ろに下がりお燐から距離をとった。
 答えを聞くまでもなく、覗き見たお燐の心は、すでに喜びで打ち震えていた。


「……勝ったらさとり様が何でもしてくれる……勝ったらさとり様は私のもの……ふふふ、もう我慢できない……! 行きますよ、さとり様ああああ!」


 それが開戦の合図となった。
 お燐が歓喜の叫びを上げ、手から無数の青白い炎弾を放った。
 すでに攻撃を予見して距離をとっていたさとりは、慌てることなくすぐさま回避行動に移った。
「…………くっ」
 ほぼ全方位へと高速で放たれるは炎弾は、お燐の前方に立つさとりにだけではなく、様子を見ていたお空の方にも飛来した。堪らずお空は後方中空へと飛び上がり、弾の範囲から逃れようとする。
 さとりは第三の目でお燐の事を注視しつつ、顔だけお空の方を仰ぎ見た。
「それでいいわお空! 私達の戦いに巻き込まれない所まで下がっていなさい!」
 お空へと聞こえるように、さとりは大きな声を飛ばした。
「っ……! さとり様……どうかご無事で……」
 お空は飛びながら、辛そうな目でさとりの事を見つめ、ようやく言葉を絞り出す。
 しかしそれでもさとりの意を汲んで、そのまま背を向けてお空は二人から離れて行った。
「……ごめんなさいお空……でも、これは私が終わらせなければいけないの……」
 飛んでいくお空の後ろ姿を見送りながら、さとりはまるで自分に言い聞かせるように呟いた。
 地霊殿の主であり、お燐の飼い主である自分の、それは定めだった。
「……あはははっ、余所見してるなんて随分余裕ですねさとり様ぁ! ほらほらほらほらっ!」
 そんなさとりへと向けて声高らかに、お燐は容赦なく炎弾を殺到させる。
 さとりは再び、顔ごとお燐の方へと向き直った。
 無数に飛んでくる青白い炎の弾幕は、本来避けるのは決して容易な事ではない。
 しかし心が読めるさとりには、お燐がどこへ攻撃を放つのか、その物量の中に潜む僅かな隙も、しっかりと見えていた。右へ左へ、さとりは軽いフットワークで華麗に炎弾を避けていく。
「………………」
 そうしてさとりが、無言で避け続けること数十秒。
「…………これじゃ駄目か」
 体感的にはもっと長い時をさとりが感じていた中、不意にお燐が、ぽつりと小さく呟いた。
 さとりの体にかすりもしない事に業を煮やしたのか、お燐はぴたりと炎弾の放出を止める。
「だったら……これならどうです!」
 お燐は上に掲げた左手をそのままに、間髪いれず次の攻撃を発動した。


「贖罪『旧地獄の針山』」


 直後、お燐の左手から、巨大な炎の車輪が出現した。
 自身の身の丈を軽く越える程に大きな、燃え盛る炎の車輪を複数、お燐は前方へと悠々撃ち放った。
「まだまだぁ!」
 叫び、お燐は続けざまに、今度は大量の光弾を自身を中心に円状にばら撒き、さらにさとりへと追撃を掛ける。
 飛来する炎の車輪と光弾は、なるほどさっきの炎弾の群れよりも避けづらそうだった。
「さぁ、思う存分やられちゃってください! さとり様ぁ!」
 一切容赦のないお燐の攻撃に、しかしさとりは眉ひとつ動かさない。
 すでに、準備は整っていた。
 さとりは迫りくる攻撃を避けようともせず、その場に足を止める。
 そして、さとりは静かに口を開いた。


「……想起『旧地獄の針山』」


 小さくさとりが唱えた瞬間、その声に呼応する様に第三の目が僅かな輝きを放ち始め────さとりを中心に、それは巻き起こった。
 さとりの左手から、炎の車輪が複数撃ち放たれ、直後に大量の光弾が周囲にばら撒かれる。
 それらは、お燐から放たれた攻撃と、寸分違わぬ形で飛んで行った。


 ガシャン!


 始めに放たれた炎の車輪同士が、まず最初にかち合った。


 ガシャン! ガシャン!


 双方から放たれた複数の炎の車輪は、次々とぶつかり合うと凄まじい音を立てて砕け、あらぬ方向へと弾け飛んだ。
 耳障りな音を鳴らしながら、破片がばらばらと地面に転がり落ちてゆく。
「な……!?」
 お燐が驚きの声を上げ、目の前の光景を信じられないと言わんばかりに、大きく目を見開いた。
 その間にも、炎の車輪の後に続く光弾同士がぶつかり合い、全て相殺されていく。
「……何を驚く事があるの、お燐。私の能力を、まさか忘れたわけではないでしょうね?」
 さとりは、余裕すら窺える笑みを、その顔に浮かべて言った。覚悟を決めて戦いに臨む今のさとりには、先の自室で感じていた不安や戸惑いと言ったっものが、完全に払拭されていた。
 心を読めるというアドバンテージを駆使して、さとりはお燐の心を、じわり、じわりと追い詰めていく。
 これが地霊殿の主であり、怨霊も恐れ怯える少女と呼ばれたさとりの、真の姿だった。
「……まだです……まだ終わってませんよ!」
 叫び、お燐が再び同じ技を繰り出した。
「……無駄よ」
 燃え盛る炎の車輪、ばら撒かれる光弾を、しかしさとりは想起で受け返す。


「何度やっても同じよ、お燐。貴方の攻撃は────」


 私には通用しない。
 さとりがそう宣言をしようした瞬間────お燐が素早く前かがみの姿勢をとり、勢いよくその足で地面を蹴った。
「!」
 相殺される弾幕の中を、凄まじい速さでお燐は駆け抜け、さとりとの距離を一気に詰める。
 そうして瞬く間に、さとりへと肉薄したお燐は、驚くさとりの左腕をがっちりと鷲掴みにした。
「……あははははっ、捕まえましたよさとり様ぁ! もう勝負なんていいです。このままさっきの部屋での続きをしましょう……!」
 恍惚に顔を歪ませたお燐が、そう言ってさとりを押し倒そうとした、刹那。


「…………狙い通りよ、お燐」


 さとりはすっと元の冷静な表情に戻り、口元に僅かな笑みを浮かべて、言った。
 そうして空いていた右手でさとりは素早く『剣印』を作ると、ビタリとお燐の目の前へ突き付けた。
「うっ…!?」
 そのさとりの挙動にお燐が一瞬怯み、慌ててさとりから離れようとする。
 しかし、遅い。


「想起『恐怖催眠術』」


 さとりは呟き、それを発動させた。


「……っにゃあああああああ!?」
 途端、お燐が悲痛な叫び声を上げて、両目を手で塞いだ。
 そのまま勢いよくお燐は地面へと倒れ込むと、ごろごろとその場でのたうち回り…………やがて、大人しくなった。
 決着が、付いた瞬間だった。


         3


 倒れたお燐へと、さとりは静かに目を向けた。
「……どう、お燐? 蘇る恐怖の記憶の味は。これで少しは落ち着いたかしら?」
 弾幕による攻撃ではなく、直接相手の精神に作用する催眠攻撃。これにより、お燐の発情を恐怖で上書きし、無理矢理精神状態を元に戻す算段だった。
 さとりは第三の目で、倒れたお燐の心をじっと見続ける。、
 恐怖で乱れに乱れていたお燐の心は、徐々に落ち着きを取り戻していき、発情の波も見えなくなっていた。
 多少賭けではあったが、さとりは自分の狙いがどうやらうまくいった事に、ほっと胸を撫で下ろす。
 しかし、それでもまだ油断は出来ないと、さとりは注意深くお燐の観察を続ける。
「……あ、ああ…………」
「………………」
 お燐が、恐怖の余韻で小さく声を漏らした。
 そんなお燐の姿に、思わずさとりの胸は締め付けられそうになった。他に方法がなかったとはいえ、それでもこうしなければならなかった事に、さとりは心苦しさを覚えずにはいられなかった。
 つくづく、自分は甘いなと思いつつも、さとりが沸々と感傷に浸り始めていた……その時。


 ────じゃりっ、


 お燐の心に、僅かにノイズが走った。
「…………!?」
 そのノイズは、さとりが見る間にどんどん大きさを増していき、巨大な感情の塊となってお燐の心を侵食していく。


「……あ…………あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」


 地面に倒れ込んだまま、お燐が絶叫した。
 そして、そのまま両手を広げると、お燐は所構わず炎弾を撃ち始めた。
「お燐……ぐぅっ!?」
 至近距離で放たれた炎弾の一つが、さとりの右肩を撃ち抜き、その衝撃でさとりの体は小さく後ろに吹き飛んだ。
 そのまま、さとりは背中から地面に落下した。
「う……あ……」
 受け身も取れず、さとりは苦悶の声を漏らす。
 お燐は尚も炎弾を撃ち続け、そのうちのいくつかは近くの地面に着弾したため、さとりとお燐の周りには濛々と土煙が沸き始めていた。
 痛む右肩を左手で押さえながら、さとりがよろめきながら立ち上がる頃には、お燐の姿は土煙に紛れて完全に見えなくなっていた。
「………………」


 …………これは、感情の暴走だ。


 さとりは気付いた。
 催眠による発情の抑制は、確かに成功していた。
 しかし、発情期で心が不安定だったところに無理に催眠を加えたものだから、お燐の心がそれに耐えきれず混乱し、暴走を始めたのだ。所謂、副作用のようなものだった。
 「ほんと……詰めも甘いわね……」
 さとりは自身の迂闊さを呪った。
 だが悔んでいる暇はなかった。早くお燐を見つけて、動きを封じなければならない。
 そうしてさとりが、まずは邪魔な土煙を吹き飛ばそうと、技を繰り出そうとして────さとりの手を、何かが掴んだ。
「なっ…………!?」
 さとりは硬直して、目を見開いた。
 右手と左手、続いて右足と左足に一か所ずつ、冷やりとした不気味な感触が走った。
 慌ててそこに目を向けたさとりは、それらを見てさらに驚きの声を上げた。
「……ゾンビフェアリー……!」
 それは、呪精だった。
 土煙で視界が利かない中、死角を突いて現れた呪精が、さとりを拘束する様に四体、その小さな体でさとりの両手足にしがみ付いていた。
「……くっ、離れなさい貴方達……」
 呪精は小柄な見た目に反して、強い力をその身に秘めていた。
 さとりは必死に呪精達を振り解こうとするが、しかしまるで鉛で固められたかのように、手足はピクリとも動かなかった。
 そうこうしている内に、辺りの土煙が徐々に晴れていく。
 立ったままそこから動けないさとりは、土煙が晴れていく様をただ眺める事しか出来なかったが、薄っすらと見えてくる中庭の光景の中に、さとりはそれを見た。
 数メートル先に未だ薄ぼんやりとではあるが、立ち上がりこちらを窺っている様子のお燐の影…………そして。


 さとりの周りを、ぐるぐると囲うように回っている、薄緑色をした火の玉の姿を。


「………………!」

 さとりは息を飲んだ。
 呪精に続き、いつの間に現れていたのか、地獄の恨霊の姿がそこにはあった。
 全部で六体の恨霊が、等間隔に回りながらゆっくりと、しかし確実にさとりへと近づいて来ていた。
 さとりは自分の顔から、さぁっ、と血の気が引いて行くのが分かった。
 呪精は強いダメージに反応して、体が破裂すると同時に光弾をばら撒き、恨霊は各々の体が触れ合うと、それに伴って大きな爆発を引き起こす習性があった。
 このまま行けば恨霊はさとりを中心に爆発し、それに反応して、呪精が破裂するという連鎖爆発を引き起こしてしまう。至近距離で受けては、間違いなくさとりは無事では済まないだろう。下手をすれば、命に関わる事にもなりかねなかった。
「…………っ」
 爆発に巻き込まれる自身を想像して、さとりは思わず背筋が粟立った。
 考える間にも、恨霊はぐるぐるとさとりの周囲を回りながら、徐々に距離を狭めて行く。
 呪精に押さえつけられ、動けない今の状態では、回避は不可能だった。
「お燐……!?」
 当然これらを操っているのはお燐であろうが、しかし感情の暴走でお燐はまともに思考する事すら出来ないはずだった。
 にも関わらず、ここまで明確な攻撃の意思を向けられている事が、さとりは俄かには信じられなかった。
 ……一体どうして?
 困惑する中、土煙はさらに晴れ間を見せ、お燐の姿がようやく、はっきりとさとりの目に写し出された────瞬間。


「…………さとり様ぁ……?」


 お燐が、微かな声でさとりの名を呼んだ。
 しかし、こちらを見るお燐の目は虚ろで、まるで焦点が合っていなかった。
 体はふらふらと不安定に揺れ、今にも倒れてしまいそうなその挙動は、まるで壊れた人形の様だった。
「……………………!」
 その痛々しいまでのお燐の様子に、さとりは言葉を失った。
 そして、さとりは見てしまった。今のお燐の心の中を。
 そこには、さとりの姿しか映されていなかった。
 思考すらままならない中、たださとりの姿だけが、お燐の心の中に思い描かれていた。
「さとり様ぁ……好き……大好きです……」
 お燐は、言う。
「ぎゅっとしたい……抱きしめたい……行かないでさとり様ぁ……」
「………………」
 まるでうわ言のように、熱に浮かされたような瞳で、お燐はさとりの事を呼び続けた。
 さとりはそれを見て、ようやく理解する。
 今にも倒れそうなお燐を突き動かしているもの、それは、さとりへの愛だった。
 呪精も恨霊も、お燐のその想いに呼応して、さとりに近づいて来ただけだったのだ。
 攻撃の意思だなんてとんでもなかった。そんな事は誰も望んでいない。ただ、一途な想いだけが、そこにはあった。
「お燐…………」
「愛してます……さとり様ぁ……」
 恨霊が、さらに距離を縮めてくる。
 ……皮肉なものだなと、さとりは思った。
 さとりがお燐との行為を拒み、逃げようとした結果が、これだった。
 お燐のためを想い、良かれと思ってやった事が、逆にお燐を苦しめ、さとり自らも窮地に追い立てられていた。
「………………」
 発情していようが何だろうが、最初からお燐の事を受け入れていれば、こんな事にはならなかったのに…………と、さとりは遅すぎる後悔を胸の内に仕舞い込む。
 思えば、お燐は最初から自分との行為しか望んでいなかった。
 お空でも他のペットでもなく、さとりの事だけを、ずっと想い続けていたのだ。
 その上、こんなに心がズタズタになってまでも、お燐はさとりの事を好きだと言う。
 さとりの目に、涙が浮かんだ。


 ────分かっていた、はずだったのに。


 いや、こんな時だからこそ、分かる。
 自分が、どれだけ愛されていたのかを。
 だからもう、拒まない。
 さとりは、怖気づきそうになる心に喝を入れ、今度こそ腹を括った。
 肩の力を抜き、そして大きく息を吸って、


「聞きなさいお燐!」


 さとりは叫んだ。


「私は、お燐の事が好き!」


「……………………!」
 その声に、お燐の体が一瞬、ビクンと反応した。


「それに、お空の事も好き!」


 声を張り上げて、叫ぶ。


「私は、この地霊殿に住むみんなの事が大好き!」


 大声を張り上げ、さとりは自らの想いを告げる。
 まるで、今際の別れの様に。
「ごめんなさいお燐……私が最初から貴方の気持ちを受け止めてあげていたら、こんなに苦しむ事もなかったのにね……」
 遣る瀬無い気持ちで、さとりは心の内を吐き出した。
 自分が居なくなってしまったら、みんな悲しむだろうか。
 お空とこいしは、きっと悲しんでくれると思う。もしかしたら、泣いてしまうかもしれない。
 嬉しいけれど、泣いてほしくはないな、とさとりは少しだけ思った。
 恨霊が、すぐそこまで迫っていた。


「お空に攻撃した事、ちゃんと謝ってね。あの子も私と同じくらい、貴方の事を大切に思ってるんだから……」


「あと、こいしは……あの子はまだまだ分からない事が多いだろうから、色々と教えてあげてね。貴方達が居れば、きっと大丈夫……」


「お燐、貴方は何も悪くないわ。貴方の想いに気付けなかった私への……これはきっと天罰ね。大丈夫、誰も責めやしないわ。だから…………っ」


 まだ言い残す事がある中、しかしさとりは、そこで言葉を切った。
 もう、時間がなかった。
 恨霊が、さとりの体に触れかけた。
 ……だから最後に、さとりは言った。


「お燐……大好きだよ……!」


 どうか忘れないで欲しいと、さとりは最後にそれだけを言い残す。
 私は幸せだったのだと、にっこりと満面の笑みを浮かべて、お燐に感謝の眼差しを向けた────その時。


「──────さとり……様…………!」


 不意に、焦点の定まっていなかったお燐の両目から、涙が零れた。


 恨霊が、静かにさとりの体を覆い、直後、轟音が辺りへと響き渡った────


 ………………
 …………………………


         *


 …………そうして、どれくらい時間が経った頃だろうか。


「ん………………」


 さとりは、その場でゆっくりと目を開いた。
 目を開けて最初に飛び込んできたのは、濛々と立ち込める土煙だった。
 何度か瞬きをした後、ぼーっとした頭の中が、少しずつ冴えてくるのが分かった。
 冷たい地面の感触を背中に感じながら、さとりはゆっくりと思考を働かせ始めた。


 ─────生きてる。


 さとりは、まずそれを思った。
 背中に当たる地面の冷たさと立ち込める土煙が、ここが閻魔のところではなく、中庭である事を教えていた。
 どうやら、恨霊の爆発の衝撃で意識を失っていたらしい。
 この土煙は爆発のなごりだろうか。とすれば、あの戦いからそれ程時間は経っていないと考えて良さそうだった。
「…………お燐は……?」
 彼女は一体どこに行ったのか。
 辺りを見渡そうと、さとりはとりあえず上体を起こしにかかる。
「痛っ……!」
 そうして腕に力を入れて体を起こそうとした瞬間、さとりの全身に激痛が走った。
 考えてみれば当然だった。死ぬ事さえ覚悟したあの攻撃で、こうして動いていられる事が、そもそも奇跡に近かった。
 不思議だとは思いつつも、さとりは両腕を地面に突き、無理矢理上体を起き上がらせる。
 それにしても、どうもさっきから下半身の辺りが異様に重かった。その明らかな違和感に、上体を起こしたさとりが、そのまま目線を下に向けて────絶句した。


「…………っ!?」


 それは、お燐だった。
 さとりの下腹部の辺りに抱きつく形で、お燐がさとりの体にしな垂れかかっていた。さとりの足の方に向けてだらりと、力なく体を投げ出すお燐の背中は、血で赤く染まっていた。
「お燐……貴方、まさか……」
 お燐の服は後背部を中心に派手に破けており、背中から覗く大きな傷からは、未だに血が滲み出てきていた。
 それを見てさとりは、あの瞬間一体何が起こったのか、なぜ自分が生きているのかを理解した。
 あの時、お燐は爆発の瞬間、刹那の差で、さとりを爆発の中心から助け出していたのだ。お燐の脚力だからこそ、為せる技だった。
 しかし、完全に爆発の範囲から抜け出し切れず二人は吹き飛ばされ、お燐は背中に思い切り爆風の煽りを受けた。
 この傷はそのために負ったものであろう。お燐はその身を呈して、さとりの事を守ったのだ。
「……そんな……お燐……」
 さとりは震える手で、お燐の体にそっと触れた。
 トクン、トクンと、弱弱しくも、脈打つ鼓動はしっかりと手に伝わって来る。
 しかし、このままではその命も危なかった。


 ────どうしよう……どうしよう……!


 血に体を染め、命の灯すら消えてしまいそうなお燐の姿に、思わずさとりはパニックに陥りそうになった。
 その時────


「……さ……………い…………」


 お燐の口が、微かに動いた。
「えっ……!?」
 呼吸に紛れて、ヒューヒューと漏れだすほんの微かな声を、さとりの耳は確かに聞いた。
 しかし何を言ってるかまでは聞きとれず、さとりはお燐の口元に急いで顔を近づけた。
 そして、
「さとり様……ごめんなさい……」
 お燐は言った。
「ごめんなさい……ごめんなさい…………さとり様……死なないで……」
「…………!」
 うわごとの様にお燐は呟き、さとりの存在を確かめるかのように、ぎゅっと回す腕に力を込めた。
 さとりの目から、涙が零れ落ちた。
「……謝らなきゃいけないのは私の方なのに……死にそうなのも……貴方の方じゃない……!」
 堰を切ったように溢れだす涙を、さとりは抑える事が出来なかった。
「……お燐、ごめんね……それに、ありがとう……ぅく……」
 嗚咽に声が歪み、視界が涙で滲む中、さとりは必死に言葉を紡いだ。
 それからさとりは、お燐の頭を優しく、胸に掻き抱いた。
 抱きしめて、愛さずにはいられなかった。
「ありがとう……お燐……!」
 そうしてさとりが、もう一度感謝の言葉を呟いた直後────声が、聞こえた。


「……さとり様ー! お燐ー! どこに居るんですかー!?」


 お空の声が、辺りへと響き渡った。
 戦いが終わったのを察して、土煙で視界が利かない中、お空が声を飛ばして自分達を探していた。
 涙で濡れた顔で、さとりは空を仰いだ。
 長い長い夢が、終わりを迎えた様な気分だった。
 さとりは、大きな声でお空の呼びかけに応えた────


 …………………………………………


         4


 あれから一週間が過ぎていた。


 地霊殿内で起きたちょっとした異変は、その内部の者以外の誰にも知られる事はなく、ひっそりと幕を下ろした。
 さとりの部屋の窓も完全に修復され、その名残を見せる物は何もなくなった。
 まるで最初から何事もなかったかのように、地底はいつもとなんら変わらない普遍な毎日を送り続けていた。


 ほんの、一部の者を除いて。


         *


 コンコン、


 部屋の扉をノックする音が、室内へと小さく響いた。
 ベッドに腰掛けて本を読んでいたさとりはそれに気付いて、読みかけの本をパタン、と閉じた。
「さとり様、あの……あたいです。入っても、よろしいでしょうか……?」
 扉の向こうから聞こえてきたのは、一週間ぶりに耳にしたお燐の声だった。
 緊張した様子のその声を聞いて、さとりは思わずくすっと笑うと、扉の向こうに居る彼女へと向かって優しく声をかけた。
「入ってらっしゃい。鍵は開いてるから」
「……失礼します」
 小さく音を立てて扉が開き、お燐はおずおずと部屋の中へと足を踏み入れた。
 しかしお燐は扉の近くから動こうとせずに、遠慮がちな視線をさとりへと向けた。
「どうしたの? もっとこっちにいらっしゃい」
「は、はい……」
 その言葉に、お燐は再びさとりの方へと足を運び始める。そして、さとりまであと数歩の所まで近寄ると、お燐は足を止め、どこか居心地が悪そうに顔を俯かせた。
 そんなお燐の様子を見て、さとりは小さく微笑むと、そっと口を開いた。
「もう怪我の方は大丈夫なの?」
「……はい、なんとか歩けるくらいには。もう少し時間が必要ですけど、このまま行けば跡も残らなさそうです」
「そう……それは良かった……」
 さとりは、それを聞いて安堵の息を吐いた。あの大きな怪我だ、背中に傷跡が残ってしまわないか心配だったが、さすがはお燐の生命力の強さだった。
「あの……さとり様……」
「なぁに?」
 お燐が神妙な面持ちで、さとりの事を見つめる。
 一瞬の間。
 さとりにはお燐の言いたい事が視えていたが、しかし敢えて何も言わず、お燐の言葉を待った。


「……さとり様は今回の事……何か知ってるんですよね?」


 その沈黙に堪えかねて、お燐が声に出してそれを訊ねた。
「変なんですよ、あたい。何故かここ数日間の記憶が全然ないんです。気付いたら医務室のベッドの上に居て、起きた瞬間お空に泣きながら抱き付かれて……あたいにはもう何がなんだか……」
「………………」
 困惑した表情をその顔に浮かべて、お燐は言った。
 さとりはただ黙して、お燐の言葉に耳を傾けていた。


 あの後、お空の手でお燐とさとりは地霊殿内の医務室に運ばれ、お燐が意識を取り戻したのはさらにその四日後の事だった。
 目を覚ましたお燐は、あの時の事を含めた、発情する前後の記憶を、一切失くしていた。
 元々発情期になるとお燐の記憶は曖昧になりやすい上に、そこにあの催眠による感情の暴走と大怪我が加わったのだから、何も覚えていないのはある意味当然だった。むしろ、その方が幸いだったとすら思える。
 中途半端に記憶が残っていたとしても、それは余計な混乱をお燐に与えるだけでしかなかった。


「……お空はなんて言ってたの?」
「お空は……それはさとり様を庇って出来た傷なんだって……名誉の負傷だって、言ってました……」
「そう…………」
 お空には、さとりの方からすでに全てを話してあった。
 別段口裏を合わせた分けでもなかったが、お燐になるべく不安な思いをさせないように、お空なりに気を使ってくれたようだ。
「お空の言う通りよ、お燐。貴方は私を助けようとして、傷を負ったの。その衝撃で記憶を失ってしまった様だけれど……もう大丈夫よ。全部、終わったの。何も心配する必要はないわ」
 お空が伝えた言葉に合わせるようにして、さとりはお燐へと優しく語りかける。
 その言葉に、嘘はなかった。
 わざわざ終わった事を詳細に説明して、お燐を苦しめる必要はない。
 お燐がさとりのために傷を負ったというのは、紛れもない真実なのだから。


「さとり様……でも……」


 お燐が、小さく呟いた。
「さとり様やお空の言う事を、疑ってる分けじゃないんです……でも……それでも、その忘れている何かが、どうしても心の奥に引っかかるんです。 何かとても大きな過ちを、あたいは忘れているような気がして…………」
「………………」
 納得のいかなさそうな、神妙な表情で話すお燐に、さとりは何も言う事が出来なかった。
 そんな事はないと言ってあげたかったが、言ったところで今のお燐の心を満たすには至らないだろうと思い、口にするのを止める。
 今は気になっても、その心のわだかまりも、時が経つにつれて徐々に薄れて行く事だろう。さとりはそう心の中で結論付け、話を逸らすために別の話題を切り出そうと、軽く息を吸った、瞬間。


「それに、夢かも知れないですけど……さとり様に好きって…………言われた気がしたんです」


「………………!」
 思わず、息が止まりそうになった。
 お燐の口からぽつりと呟かれた言葉に、さとりは大きく目を見開いた。
 驚き、さとりはそっと、自身の胸に手を当てる。
 ドクン、ドクンと、心臓の鼓動がだんだん速くなって行くのが分かった。
「……あっ……!」
 そんなさとりの動揺を見てとったお燐が、自分がとんでもない事を口走ったのに気付き、慌てて声を上げる。
「も、申し訳ありませんさとり様! あたいきっとまだ頭がどうかしてるんです! ど、どうか今のは聞かなかった事に……」
 思わず口を突いて出てしまった言葉に、お燐が実に気まずそうに顔を俯かせる。
 しかしさとりは、それを見て「ふふっ」と声を漏らすと、努めて優しい声で、お燐へと話し掛けた。
「……ねぇ、お燐。貴方は身を盾にして主人を守り、その体に名誉の傷を負った。私はそんな貴方の功績を讃えて、何か私に出来る事をしてあげたいと思うの」
「…………え?」
 あまりにも予想外なさとりの言葉に、お燐が呆けたような声を出した。
「何でもいいのよ? 私にして欲しい事、ない?」
「え、あの……いきなりそんな……さとり様に何かしてもらうだなんて……!」
 両手をぶんぶんと振って断りの意を示すお燐だったが、みるみる内にその顔が紅潮していく。
 さしてさとりは、その心の内を見てしまった。
「……あら、そんなのでいいの?」
 さとりは少しだけ意地悪な笑みを浮かべると、からかうようにお燐へと視線を送った。
「やっ……あのっ、さとり様違うんです、これは……!」
 心の内を見られてしまい、お燐が羞恥でさらに慌てふためく。お燐の顔は、すでに耳まで真っ赤になっていた。
 少しやり過ぎたかなと、さとりはふっと表情を穏やかなものに戻すと、今度は真面目に言った。
「いいわよ。やってあげるから、こっちに来なさい」
「……え? え!? ……いやそんな……」
「いいから、ほら早く」
 自分の隣に来るようにと、ぽんぽんとさとりは手で軽くベッドを叩いて促した。
 お燐は一瞬迷っていたが、さとりが本気だと分かると、恐る恐るといった感じで足を運び、さとりの隣に座った。


 そうして、ゆっくりとさとりの膝の上に…………頭を乗せた。


「膝枕、して欲しかったんでしょ? 恥ずかしがらずに言えばよかったのに」
「……あの……本当に良いんですか? こんな事してもらって……」
「これは貴方へのご褒美みたいなものなんだから、全然遠慮する事はないわ。存分に楽しみなさい」
 そう言って、さとりはお燐の頭を優しく撫でる。
「にゃーん……」
 お燐は気持ちよさそうに声を上げると、さとりの膝の感覚を堪能するかのように、静かに目を閉じた。
 そんな幸せそうなお燐の表情を見て、さとりも自然と顔が綻ろんだ。
 このままお燐が眠るまで続けるのもいいかも知れないなと思いながら、さとりがお燐の頭を撫で続けていた────その時。


 ────バタン!


 入口の扉が、大きな音を立てて開かれた。
 その音に、お燐は体をビクンと震わせ、さとりはふと既視感を覚えた。
 二人が、ゆっくりと扉の方へと視線を向けた。
「さとり様大変です! お燐が医務室から抜け出してどこかに…………ん?」
 血相を抱えて飛び込んで来たお空が、ベッドの上に居る二人を見て────静かに固まった。
 それから程なくしてお空の肩は怒りで震えだし、見る見るその顔が赤く上気していく。
「……心配して探しに来たのに…………お燐、あんたって奴は……一度ならず二度までも……!」
「ま、待ってお空、これには深い訳が! ていうか二度目って何!? それにあたいはまだ怪我人で……」
「言い訳無用! お燐、覚悟おおおおおお!」
「にゃあああああん!?」
「ぷっ……あはははっ!」

 
 いつもとなんら変わらない、普遍な毎日。
 しかしそれが何よりも大切で、かけがえのないものである事を、彼女達は知っている。


 お空の怒声が、お燐の叫びが、さとりの笑い声が、三者三様の声が融けて混じり合い、さとりの部屋に楽しそうに響き渡った────
どうも初めまして、これが初投稿になりまっす

なんかこう、バリッっとしたバトルものが書きたいな~と思って、とりあえず好きだった地霊殿メンバーで構想を始めたのが約一ヶ月前
それが何故か書いてるうちにどんどん展開が紆余曲折して、気付いたらこんな話が出来上がっていた……!
何を言ってるか分からねぇと思うが、私もどうしてこうなったか分からなかっt(ry
色々と至らないところはあると思いますが……少しでも楽しんでいただけたら幸いです
次はもっと軽くて楽に読めるのを書きますそうします(フラグ)

それではまた会えるその日まで……ばいば~いノシ
ヤクミンFBB
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コメント



0.810簡易評価
3.100奇声を発する程度の能力削除
最初の部分でちょっと期待した訳ではないです(何が
お燐が元通りになって良かった良かった
5.100名前が無い程度の能力削除
さとりかっけえ。さとりんがバトルしてるの大好物ですごちそうさまでした。
単純に催眠術で封じておしまい、でなく更に展開が広がったので、楽しめました。
7.100名前が無い程度の能力削除
スラスラと読みやすく面白かったです。
11.100名前が無い程度の能力削除
お燐謙虚すぎるwww
14.100名前が無い程度の能力削除
良かったです。
あのスペカもいいよね。
19.70名前が無い程度の能力削除
ラブラブ一歩手前、バトルストーリーには需要があるようですね