Coolier - 新生・東方創想話

線香少女/閃光少女

2010/12/31 22:59:01
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「彼女の天狗としての誇りある生涯に、黙祷」
 上司が死んだ。ある寒い冬の事だった。

 今年の冬は例年の数段上の寒さだった。
 幻想郷に襲い掛かった寒波は、寒さに対抗する術を殆ど持たない人間も、寒さを跳ね除けて生きる事しか知らない妖怪も区別する事は無い。
 降りしきる雪に生活は困窮し、人々は口々に冬に対しての呪詛を吐き散らし、冬の忘れ物は物悲しげな瞳で空を見上げた。
 それでも長かった冬に終わりが見え、やっと春がやって来ると言う時、最後に凄まじい大寒波がやって来る。
 妖怪の山に篭もっていた私も、あの日の事は良く覚えている。大雪で来るはずも無い、来れはしない侵入者を見張って、ずっと凍りかけの滝の上で雪を見ていたのだから。
 そんな中、上司の鴉天狗は吹雪の中を飛び回っていたらしい。いつも通り新聞のネタを探しているうちに吹雪いてきて、何とも間の悪い事に里で迷子の話を聞いてしまったのだとか何とか。
 叩きつける雪と風にまみれた幻想郷を飛び回った後、見つけた子供を里に送り届ける途中で翼に限界が来たらしい。子供を庇うように墜落した後の死因は低体温症か心臓発作かわからないが、里の灯りが見える程に近くまで来ていたから、全くの無駄死にではなかった……と言う。
 現に今妖怪の山で行われている彼女の葬儀だって、助けた子供本人がわざわざ嗚咽を漏らして鼻水を啜り上げているのだから彼女にとっても本望であろう。周囲を妖怪やら神様やらに囲まれて恐ろしいだけ……ではないと信じたい。

 棺に入れられた彼女の遺体。その顔は血の気が無い事を除けばやすらかで、微笑みすら見える。
 代わる代わる訪れる彼女と親交のあった人妖。天狗世界でそれなりに重要な人物だった彼女は、幻想郷単位で見てもそれなりに重要な人物だったらしく、今日限りは何の能力も持たない人間も彼女の友達と言うだけで妖怪の山に足を踏み入れる事を許されている。
 特に親交の深かった人妖達は、ある種達観した考えを持っているらしく……まぁ、参列者の神妙な顔を崩さない程度なら、少しばかり別室で騒いでいて貰っても構わない。

 そっと、抹香臭い部屋を抜け出して外に出た。天気は快晴、雪はまだ溶けずに幻想郷中を覆い尽くしている。
 参列者達も、人里の復旧作業がまだまだ山ほど残っているだろうに。一体彼女の何処がこんなに慕われていたのかは、良く振り回されていた私にはよくわからないのだけれど。
 くしゅん、とくしゃみが出た。体が冷えている。けれど、しばらく屋内に戻る気にはならなかった。

「……線香の匂いは好きじゃない、な」

 上司が死んだ。ある寒い冬の事だった。
 そんな彼女の亡骸に添えられた遺影は、白い。


    ――――――――

    線香少女/閃光少女

    ――――――――


「でさ、どうするのさこいつの遺影」

 魔法使いのその言葉に、誰もが頭を抱えて考え込んだ。亡骸を前にして沈黙する顔ぶれは誰も彼も少なからず幻想郷の問題児で、むしろ頭を抱えたいのはこの面子を集めて何事も無いとは到底思えない私の方なのだが。

「って言っても無い物はしょうがないしねぇ……」

 そう言って眉間に皺を寄せる博麗の巫女も、巫女の筈なのに問題児。と言うか死んだ上司からしてある種問題児だったのだから、それに関わる者が問題児じゃないわけが無い。
 と言う事は自分も問題児なのだろうか、と思うけれど、頭を振って否定した。私の生活は哨戒と将棋で満ち足りていて、この上司はどちらかと言えばイレギュラーだ。私はごくごく普通の白狼天狗で充分だし、普通が嫌だとも思わない。

「本人を呼び出して自分で撮らせれば良いじゃない」

 言ってる傍から問題発言である。常人には及びも付かない発想をケロリと吐き出したのは冥界の亡霊嬢で、まぁ冥界の管理をしてるくらいだから口寄せくらいはお手の物なのだろう。と言うかそれは遺影なのか?
 その意見に賛同してそれでいこうと囃し立てる周りも周りであった。私一人がボケッと口を半開きにして会話から取り残されている。今賛同したのは……鬼と天人と吸血鬼か。覚えておこう、そして近寄らないようにしておこう。

「でも魂だけ呼び出してどうするの? 体はもう死んでるのよ」
「だからまぁ、誰かが憑り代になるんでしょうねぇ……」

 人形遣いに風祝がそう返事をして、人妖達の視線が彷徨い、交錯し、首を振る。そりゃまぁ誰だって当事者にはなりたくなかろう。他人が困っているのを見るのが楽しいのであって、自分が困ったらそれは何も楽しく無い。
 はてさて、こういう時に貧乏くじを引くのは誰だったか。掴まされるのだっけか。最初から貧乏くじしかないと言う説もある。
 そんな事を考えていたら亡霊嬢と目が合った。
 私は全力でこの場に残っていた事を後悔した。



「あややや、どうしたんですか皆さんお揃いで」
「あんたの葬式の準備よ」

 私の姿と私の声で起き上がった上司の第一声はひどく呑気な物だった。
 上司の声も巫女のツッコミも、いくらなんでも緊張感が無いのでズッコケそうになる。が、人魂状態の私には足が無いのだった。

「あれま、立派な棺ですねーこりゃ」
「叩くな壊すな。わざわざ死んだお前さんを呼び出したのにはちゃんと理由があるんだぜ」

 はて? と上司はわざとらしく首を傾げる。ちんちくりんな私の姿でそんな小憎たらしい所作をやられても何も面白く無い。
 にとりが愛用のカメラを手渡す。それでようやくその顔が少しばかり引き締まった、気がした。

「浸水してたから修理しておいたよ、フィルムの中身までは無理だったけど」
「で、射命丸さんにはそのカメラでご自分の遺影を撮って頂ければ、と。現像はこっちで出来ますので」
「……遺影、ですか」

 若干の間をおいてから呟くように言葉を発する。それで私はすっかり困惑している物だと思ったのだが、次の瞬間にはカメラを受け取って棺に入った自分にカメラを向けていた。
 しばらくあーでもないこーでもないと角度を確かめながら、ようやくシャッターを……切らない。そのまま硬直する上司こと射命丸文。
 どうした事かと皆が不審に思ったその時、唐突にこっちを振り向いたかと思えばタハハと頭を掻きながら苦笑する。

「あーなんかフィルム切れてたみたいですね。香霖堂で買って来ますんでちょっと待っててくれますかね」

 そう早口で言い終えるが早いか遺体を抱えて全速力で山を駆け下りていく射命丸文。取り残された人妖はみな呆気に取られて何も言えず。
 あの速度ならそろそろ麓に辿り着いただろうか……と思った頃、不意ににとりが口を開いた。

「……フィルム、ちゃんと入れておいたんだけどな?」
「そういえば、フィルム買って来るだけなら遺体連れてく必要無かったわよね」

 またしても私は人魂状態で精一杯頭を抱えて転げまわった。絶対こういう厄介ごとに発展するなんて言うのは目に見えてた事なのに。
 逃げたわね、嗚呼逃げたな。そんな声があちこちから聞こえてくる。私は眩暈を起こしてその場に倒れこんだ。人魂だから浮きっぱなしだった。
 挙句、まぁそのうち戻ってくるよな、なんて魔法使いが笑ってたりする。たまったもんじゃない。私は自分の体を人質に取られている様な物なのだ。何をしでかされるか不安でしょうがない。

「ん? 椛さん、もしかして不安なのですか?」

 半霊の庭師の言葉に全力で首を縦に振る。ここに集まった面子の中では比較的マトモと言える彼女になら私の不安が伝わるかもしれない。
 私の反応を見て、庭師は亡霊嬢に声をかける。亡霊嬢が私を見る。楽しそうに笑う。何となく、また嫌な事になる予感がした。



「……で、にとり。この身体は一体何なの?」
「1/1超合金射命丸だよ。自動で椛の位置情報をゲットしてくれるすごいやつだよ」

 もうこれ以上悪い事にならないだろうと確信していた私は、もう臆す事無く物を言っていく事にした。諦観の境地であった。
 間接を動かす度にガショーンガショーンと奇怪な音を立てる機械の体は、有事に備えてにとりがあらかじめ作っていた物らしい。最初からそれを出せば良かったじゃないか、と言ったら舌を出されながらウインクされた。メタル疾風扇はそれなりの威力があった。
 亡霊嬢の能力でこの機械の体に憑依させられた私は、どうやらこれでアホ上司を追わなければならないらしい。理由は「みんな面倒臭いしどうにかなると思ってるから」と「面白そうだから」。ふざけた話もあった物だ。

 それでも、放っておけば私の不安が拭えるわけでもない。
 そんなに信用ならない天狗だったわけではないが、色々と私の発想の斜め上を行く天狗だったのは確かだ。あとは明らかな嘘をついてまで何をするつもりなのかも気になる。自分の遺体をどうするのかなんて、私には考えたことも無いのだ。
 にとり曰く、本物には及ばないけれどもそこらの妖怪なんかよりは速く飛べる様に出来ているらしい。目を瞑って集中してみると、なるほど何となく何処にアホ天狗がいるのか感覚で把握できる。そんなに長い間使っていたい体でもないので、とっとと追いかける事にする。

「ところでにとり、一つ聞きたいんだけど」
「どしたの?」
「何で私の体『だけ』ピンポイントで場所が把握出来るの?」

 ああ、それは。と、にとりは極めてあっけらかんと言葉を返す。

「単純に生前の文の行動をトレースさせたらそうなっただけだよ」

 頭に血が上る様な感覚を覚えて、私は勢いをつけて坂を駆け下りる。
 充分に勢いがついたところで、高く跳躍。翼を広げると、途端に胃の中で何かが激しく燃え出す感覚。ガショーンガショーンと機械音。
 ああ、そういえば前に将棋をしながら"エンジン"とやらの話を熱心にしてたっけなぁ……と思い出すのは、既に後悔した後。
 瞬くうちに背中から凄まじい勢いで霊力が噴き出して行って、瞬時に亜音速の世界に放り込まれた私は自分の絶叫を聞く事すらままならなかった。



「射命丸さんは、どうして私の写真ばっかり撮るんですか」

 昔の事を思い出してみる。いつ頃だったかはもう覚えていないけれど、いつ頃だったか覚えていないくらい昔の事だ。
 哨戒で滝周辺をウロウロしていると、ちょくちょく写真を撮りにやってきた鴉天狗の上司。ろくに話した事も無い相手、大して私が面白い事をしているわけでもないのに、それなのにどうして写真なんて撮るのだろうと、不思議に思ったまだ純真だった頃の私はバカ正直に尋ねたのだ。

「いやね、ほら、私って幻想郷中を撮りまくってるじゃないですか」
「はぁ」
「幻想郷って、非日常の集まりみたいな物じゃないですか」
「はぁ」

 話しながらも私の上を飛んだり横をぐるぐる回ってみたり、それでいながら常にシャッターチャンスを窺っている物だから、まるで落ち着きが無い。
 この時の私は、それをまだ面白い天狗もいるんだなぁくらいにしか考えていなかった。だから先刻の問いかけも、言うなれば場繋ぎの一つのつもりでしか無かったのだけれど。

「犬走は、いつも真面目に自分の仕事をこなしてるでしょう? 非日常ばっかり撮ってると、そういう日常の風景が余計に撮りたくなるんですよ」
「射命丸さんの言う事はよくわかんないですねぇ」

 この時の私は、やっぱりそれを変な天狗もいるんだなぁくらいにしか考えなかったわけだけれど。
 何度も何度も撮られているうちに、呼び方が砕けた物になっていったり、何となく射命丸文と言う天狗像が掴めて来たり。何事も繰り替えせば発展するのだなぁと思う。
 つまるところ、私たちにとっては写真を撮って撮られてが日常だった。私は変わらず仕事をこなす。射命丸はその写真を撮る。……射命丸、だなんて呼び捨ては天狗社会では許されないし、私たち同士の仲でも最後までそう呼ぶ事は無かったけれど。面倒な相手と思うと同時に親しみを覚えていると言うのも否定できないから、心の中でぐらいこっそりそう呼んだって罰は当たらないだろう。

 さて、射命丸は死んでしまった。今は私の体で幻想郷のどっかを走り回っているんだろうけれど、返して貰わない事にはしょうがない。
 日常の風景が姿を変える。私が見張るのは射命丸の帰ってくる事の無い妖怪の山だし、もう仕事中に執拗に写真を撮られる事も無い。
 どうしたものか、と言う言葉が脳裏を掠めた。どうしたものか。どっから出てきた言葉かは良くわからないけれど、少なくともまぁ私が新しい日常に落ち着くには少し時間がかかるんじゃないのだろうか、などと冷静なフリをして分析してみる。

 私は悲しいのだろうか。それとも私は哀しいのだろうか。嬉しいとか楽しいとか言う事は有り得ないけれど。
 或いはこれからの日々は悲しい物なのだろうか、哀しい物なのだろうか。それも嬉しいとか楽しいは有り得ない気がする。



「で、どうしてこんな姿でこんな所に頭から突っ込んでたんですか」

 目が覚めると私の顔が目の前にあった。しばらくその瞳をまじまじと眺めて初めて、私は自分が仰向けに倒れている事を知った。体は無事でも精神がとても追いつかなかったらしい。
 起き上がると、そこは一面銀世界。雪の積もった平原であった。後ろを振り返ると私が墜落したと思われる形に雪が抉り取られている。追跡機構と音速飛行よりも先に安全な着陸機構を搭載するのが先ではないのか。

「文さんこそ、私の体と自分の遺体で何するつもりなんですか」
「いや、遺影を撮ってるんですけど。中々良い構図が決まらなくって」

 そう言うと射命丸は私の背後を指差す。そちらに目を遣るとそこには確かに遺体が雪の上に寝転がっていた。別に最後に何か異変を起こしてやろうとか、そういう事ではなかったようで若干安心する。

「いやでも、遺影の構図なんて迷う物なんですか? と言うか嘘ついてまであの場から逃げ出す必要があったんですか?」
「迷いますとも。今まで自分をそういう目で撮った事なんて無いし、あの場にいたら何だかんだで緊張して良い写真なんて撮れっこないですし」
「そういうもんなんですかねぇ」
「そういうもんなんですよ」

 いつも通りの、何となく要領を得ない会話をしている気がする。姿形は入れ替わってはいるけれど。
 それでも今日は、いつもより早く沈黙がやってくる。言いたい事は結構ある気がするのだけれど、それが上手く形になってくれないと言うか何と言うか。
 そうして二人して遺体を前に黙りこくっていたら、先に射命丸が口を開いた。

「私ね、線香の匂いって嫌いなんですよ」

 はぁ、と間の抜けた返答が私の口から漏れ出た。何とも緊張感の無い、聞き流し一歩手前のボヤけた言葉。
 線香の匂いを考えてみる。私はさして好きでも嫌いでもなかった。確かに好き好んで嗅いでいたいかと言われればそうではないし、誰かの死と結びつけると気分の良い物でも無いけれども。
 ああでもこれから私は目の前にいる人物の死を弔う線香の匂いを嗅ぐ事になるのか。それは確かに明確に嫌だと言える気がした。

「なんかこう、ずっと残り続ける感じがして。写真なんかに撮ったらそれこそその写真から匂ってきそうな」

 はぁ、と少しだけ乱れた返答が私の口から漏れ出た。僅かに喉が引き攣った気がする。
 残り続ける。それは良い事なのか悪い事なのか。もちろんそんなのは時と場合によるのだろうけれど、線香の匂いを嗅ぐ度に誰かの事を思い出す。と言うか引き摺る。或いは囚われる。それは勘弁願いたい。
 線香の写真なんて見たいものではない。それが匂ってきそうな位に鮮明に記憶と結びつくのなら尚更。記憶と記録、挟み撃ちで思考を掻き乱されるのなんてまっぴらごめんだ。

「だから出来るだけ爽やかな遺影を撮りたかったんですけど……難しいですよねぇ」
「まぁ、難しいでしょうね」
「どうしましょうか」
「自分で考えてください」

 目の前の線香臭くなる筈の人物がこうもあっけらかんとしているのだから、尚更。

「これはもう、誰かに撮って貰うしかありませんね」

 どうも良い画が撮れない、なんだかんだで冷静になれてない気がします。
 そう言って射命丸は私にカメラを放ってよこした。私は……と言うか1/1超合金射命丸は、反射的にカメラを受け取る。そうしてカメラを手にして、私はどうしたものかと途方に暮れた。写真なんて撮った事が無い。それも人の遺影なんて尚更。

「別に椛に撮って貰うわけじゃありませんよ。『私』に任せちゃってください」

 それでも意味がわからなくて小首を傾げていると、射命丸は苦笑いをしながら私の身体を小突いた。カツンと言う金属音。
 ああそうか、1/1超合金射命丸か。そっと私は目を閉じる。意識を集中していくと、瞼の裏に一つの構図が浮かんでくる。

「文さん、ちょっとそこに横になってください。そうそう、そんな感じで遺体と一緒に」

 射命丸にポーズを指定して、私は機械の翼を広げた。



 そうして撮った遺影が現像されて額に入れられる頃には私の体も無事に元に戻り、射命丸は少しだけ、ほんの少しだけ寂しそうな顔を見せた後笑いながら冥界へと帰っていった。もしかすれば会おうと思えばいつでも会えるのかもしれないが、きっと二度と会う事は無いだろうと思う。私が日常に生きている限り。
 つつがなく葬儀は進み、参列者は泣き、問題児達は酒を飲んで騒ぎ、私は雪まみれになった体の冷えからか風邪を引いた。折りよく非番の日だったおかげで仕事を休まなくて済んだのだけれど、部屋で独り天井を見つめていたら、少しだけ、ほんの少しだけこみ上げた。

 射命丸の遺影は紆余曲折の末に私が引き取る事になった。と言っても単純に私が直接貰って欲しいと言われただけなのだが、他の天狗からはその遺影らしからぬ遺影の是非についてとやかく言われたのだ。
 それでも私は、彼女が最後に撮ったその写真はとても彼女らしくて素晴らしい一枚だと思う。遺影云々はどうでも良いと言う事にしよう。当人が納得しているのだから、それに越した物も無かろう。

 天狗一人が死んだところで、何が変わるわけでもなく世界は今まで通り動く。私も例外では無い。半月ほど経てば、今日も変わらず哨戒の任に就かなければいけないのだ。

「行ってきます、射命丸」

 遺影は何も言わないけれど。
 非日常の中に写った日常の最後の一瞬からは、線香の匂いなどする筈も無かった。
それでも、形として残る物が誰かの心を揺さぶったりするのです。
バーボン
http://twitter.com/#!/mr_bourbon
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コメント



0.840簡易評価
4.100名前が無い程度の能力削除
それでも世界は廻る
面白かったです
5.100名前がない程度の能力削除
匂いとか音楽とかでふっと情景を鮮明に思い出すことってありますよね。
アイツ今何してるのかなぁとか、アイツがまだ生きてたらなんて言うかなぁとか。忘れた頃に夢に出てきたりして、それでも世界は廻るし日常は何にも変わんないしで、でもそれって何だか切ないです。
どっぷり感情移入させていただきました。
18.100夜空削除
たった一瞬だけを収めた二人だけの写真。其処に残された想いはきっと色褪せなくて永遠な……。
端的な文章から伝わるひしとした感情が、読み手の想像を膨らませてくれる素敵な作品でとてもよかったです
もうあやや=この曲がどんぴしゃだと思い込んでた俺にとって「やられた!」って感じでした
20.100名前が無い程度の能力削除
彼女にとって一番しっくり来る、“自分の写真”というのは、
椛が居てこそ成り立つ彼女の日常だったのですね…

24.90名前が無い程度の能力削除
Pixivのイラストから飛んできました。
劇的な展開は無かったけれど、とても素敵な雰囲気でした。
物事の終わりってこんな風に穏やかなものなのかもしれませんね。