Coolier - 新生・東方創想話

巫女と甘味と混乱と

2010/02/01 04:54:15
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博麗神社。人間から妖怪まであらゆる生き物が何故か集まってくる場所。
今日も今日とて例外ではなく、一人の妖精がこの神社を訪れていた。
「何か用?」
一応何しに来たか聞いておく。鳥居の近くでチョロチョロ動き回っている青い妖精、チルノは
「面白いこと探してる」
と言って木の根元を覗いたり、鳥居の柱の周りをグルグル回っている。同じことばかり繰り返していることには気付かないらしい。
面白いこととは何だ。
曖昧な答えに呆れつつ、境内の掃除を始めることにした。
箒で落ち葉を掃くのは特に面白いことではないとチルノも知っているのだろう、やらせてとは言ってこない。
しかし自分もやりたいとは思わない。
そうだ。
「あー楽しい。落ち葉を掃くのがこんなに楽しいなんて!」
一計をめぐらすことにした。できるだけ楽しそうに箒を動かす。そして横目でチルノを見てみると。


目を輝かせていた。


多分上手くいってる。
「あたいも!あたいもやる!!」
乗ってきた。単純というかバカと言うか、まぁそこがチルノの特徴でもある訳で。
「やりたい?」
なんて聞いてみようものなら
「やりたい!」
と元気よく返してくる。利用しない手はない。
しかしここですぐにやらせてあげると言うのも違和感があるはず。
だったらここは多少の引きが必要だ。
「でも私もやりたいし。どうしよっかな」
悩むような仕草で対応してみた。
さぁ、どう出る。
「ずるい!あたいもやるの!やらせなさいよ!!」
予想通りの返答。というか、段々命令形になっている。どんだけやりたいんだ。
「仕方ないわね、ほら」
そう言って箒を渡す。全然仕方なくないけど。チルノは嬉しそうに箒を掴んで前後左右に地面を掃く。
何だか本当に楽しそうに見えるのは気のせいか。別に羨ましくもならなかったので、霊夢は縁側に腰を下ろした。
境内の掃除が面白い訳ないのに素直にやっているのは、もしかしたら面白くないことに気が付いていないだけかもしれない。
もしそうなら本当に抜けているとしか言えないんじゃ…。
そんなことを考えていたが、掃除をやってくれているんだし、特に気にすることもないかと結論を出した。
よいしょっと立ち上がってお茶を淹れに行くことにした。
緑茶とお茶受けの饅頭を用意して縁側へと戻る。目の前にはまだ落ち葉と格闘しているチルノ。なかなか片付いてきたみたいだ。
真剣にやってるわねと感心感心。お茶を啜って饅頭を一齧り。一息ついてああ幸せ。
そうこうしてるうちに掃除も終わって落ち葉もきれいに集まった。
「お疲れ様」
まさかやり切るとは思わなかったが、労いの言葉を掛けておく。
チルノは反応し、振り返って一言。
「全然楽しくないじゃない!!」
今更言うな。
バカだ、と分かりきっていたことを再確認してもう一度お茶を啜った。
山になった落ち葉の上に箒を投げ捨て、チルノは私の方に歩いてやってくる。
「霊夢の嘘つきー。嘘つき霊夢ー」
不服そうに頬を膨らませて隣に座ってきた。普通始めに気付くでしょうが。まったく。
「嘘はついてないわよ、私は楽しかったんだし。あんたがやりたいって言うから譲ったんじゃない。文句言わないの」
楽しくはなかったけど嘘は言っていない。チルノが勝手に解釈しただけなんだから。
「むー…」
あらら、拗ねちゃった。まぁ結果的に私は楽できたし、感謝してあげても良いかな。
「でも掃除してくれて助かったわ。ありがとう」
そう言って頭に手を伸ばした。少しくせがある綺麗な蒼い髪の感触を楽しみながら、優しく撫でてみた。
そしたらチルノ、嬉しそうに笑ったのよ。
さっきまでの怒り顔はどこへやら、くすぐったそうに私に撫でられてて、なんか可愛かった。
子どもっぽいのは外見だけじゃないみたいね。
「そう言うなら許してあげても良いわ」
上から目線が少し気になったけど、少し頬が赤くなってるのがまた可愛くて、もうちょっと撫でてようと思った。
撫でて機嫌も直ったらしいチルノは
「ねぇ、お饅頭一個ちょうだい」
と頼んできた。私より背が低いから上目遣いで。うわ何これ、すごく可愛いんですけど。何処ぞのメイドが鼻血出すのも分かる気がした。
「霊夢?」
おっと意識があらぬ方向に。黙ってたからチルノが覗き込んできた。
「良いわよ、食べて」
何事も無かったのように承諾する。我ながらちょっと苦しかったかな。
でもチルノは食べて良いというところだけ理解してすぐに饅頭に齧り付いた。単純で助かった。
粒あんの入った饅頭を美味しそうに頬張る姿が何とも言えないくらいに、可愛い。あれ、私可愛いとしか言ってないような。
ぁ、端にあんこ付けてる。
私はチルノの口のところに付いたあんこを指で掬うように取った。
「もっと落ち着いて食べなさいよ」
ほんとに子どもなんだから。そう言って笑ってたらチルノが私の指をぱくりと口に含んだ。
一瞬何が起こったのか分かんなかったけど、指に当たる舌の感触と、チルノの口の中の冷たさが現状を理解させてくれた。
多分あんこを取られてなるものかと起こした行動だったんだと思う。うん、きっとそうだ。
あんこを舐め取ってすぐに私の指は解放されたけど、指先は少し湿っている。チルノはまた饅頭を食べることに専念し始めた。
私の顔は段々熱くなっていって、少しだけ心臓の動きも速くなった。何よこれ。
訳が分かんなくなってお茶を淹れ直すことを口実に台所へと急ぐ。台所に入るとすぐに戸を閉めて、その戸に凭れ掛かった。
私ったら何考えてんのよ、何感じちゃってんのよ。ドキドキして落ち着かないじゃない。
チルノの行動に驚いて、いつも通り冷静にはなれなかった。そんな自分におかしいと思いつつ、舐められた指をじっと見る。
あんこは見る影もなく舐め取られたようだ。一体どんだけ食い意地張ってんのよ。
そんなことを思いながら、私は無意識の内にチルノに舐められた指を口に含んでいた。
少しだけ、甘く感じた。あんこの味はしないけど、何となく甘い。
ってこれじゃ私変態みたいじゃない!どうしちゃったのよもう!意味分かんないわよ!!
水で手を洗ってついでに顔も洗ったけど、あんまりすっきりしなかった。
それよりもさっきやったことが思い出されて、恥ずかしくなって顔を手で覆ってしゃがみ込んだ。顔はまだ熱い。
もう少しの間、チルノのところには戻れそうにない。






何度も深呼吸してようやく縁側に戻ってきた。お茶を淹れるのを忘れなかったのはすごいと自分を褒めてやりたい。
「遅かったね。どうかした?」
チルノはのんきに聞いてくる。くそう、あんたの所為だと大声で叫びたいけど、そこはぐっと我慢。
「何でもないわよ」
皿に残っている饅頭のひとつを掴む。そういえば、この子本当に一個しか食べなかったのね。
ほとんど減っていない饅頭を見て思った。
…変なところで良い子なんだから。
「ほら、あんたも食べなさい」
饅頭の乗った皿をチルノの方に寄せる。
「食べて良いの?」
心底意外そうに聞かれると自分がどれだけケチに思われているか感じられるわ。
「いらないなら別に良いわよ」
皿を下げようとしたら
「食べる食べる!霊夢大好き!!」
必死になって饅頭を掴んでいった。でもそんなことより重要なのは後半の言葉。…大好きって言ったわよあの子!私のこと大好きって!!
ああもう何なのよ今日は。ドッキリでも仕込んでるの魔理沙!それとも面白がってるの紫!何でこんな時に居ないのよ萃香!文句言いたくても誰も居ないじゃない!!
いや別に嫌な訳じゃなくて寧ろ嬉しいと言うかって誰に言い訳してんのよ私は。駄目だわ、今日はどうも落ち着かない、というか落ち着けない。
これも全てチルノの所為なんだけど、こいつは饅頭を食べることに集中してるし…。
なんか自分だけ焦ってるのが悔しくなって、私も饅頭に齧り付いた。美味しいはずなのに味が全然分かんないじゃないの。
一服するため、お茶を取ろうとして横を向いたらチルノと目が合った。
な、何でこっち向いてるのよ。またあんこ付けてるし。
でも学んだわよ、同じ失敗は二度と繰り返さない。
「あんこ付いてる」
指摘だけしてやった。これで回避できたはず。学習能力は備わってるつもりよ。
チルノは自分の口の横を触ってあんこを発見、無事に食べた。
これだけなのにほっとした自分が悲しい。
「霊夢」
「はいっ!?」
いきなり呼ばれて声が裏返った。チルノが驚いてる。あほか、驚いたのは私の方よ。
咳払いをひとつして
「何よ」
言い直す。すると
「霊夢もあんこ付いてる」
そう言ってチルノの顔が近付いてきた。
口の横に柔らかい感触。
………え?
「ちょっ…エッ!?な、何してくれちゃってんのよあんたはァァァ!!」
多分顔赤い、絶対顔赤くなってる。何で口で取るのよ何で舐めるのよ何で指で取らないのよぉ!唇の柔らかい感触伝わったじゃないばかぁ!!
「な、何で怒るのさ?」
「怒ってないわよ怒ってる訳じゃないわよただ恥ずかしいのよどうすれば良いのよもう!!」
さっきしたみたいに顔を手で隠して蹲った。駄目もう私の残機は零よボムさえ残ってないわ明日コンティニューさせてお願い。
いやでも明日までこれ続くのは勘弁して欲しいなぁああもうどうすれば。
自分の世界で螺旋階段をずっと上り下りしながら悶々としていた。そしたら頭になんか当たった。こんな時に何よ。
ほんのちょっとだけ頭上げて見たら、チルノが心配そうな顔で私の頭を撫でていた。
やめてやめて体温上がる余計恥ずかしい!
「だ、大丈夫。大丈夫よチルノ…」
顔を上げてチルノの手を掴む。冷たくて気持ち良かったけどすぐに離す。
じゃないと地球温暖化なみにヤバいことになる、私が。
「今日の霊夢変だよ。あたいなんか悪いことした?」
泣きそうになったチルノがまたとてつもなく可愛い。じゃなくて!何考えてんのよ私!!
「違うの!チルノは何も悪いことなんかしてないわ。私がおかしいだけ!!」
自分で言っといて傷付いた。
今日の私は板蒟蒻を縦に置いて手を離したみたいに不安定。なんか例もおかしくなってきた。
そろそろぶっ壊れるかもしれない。もちろん私が。
もしあのブン屋に知られたら…『博麗の巫女謎の発狂、原因は饅頭か氷精か』なんて死んでも死に切れない、死なないけど。
ああもう疲れた。なんとなく目が霞んでるのは疲労か現実逃避か…。
目の前のチルノの唇に目が行った。勝手に手が伸びる。指でふにふにと触ったら搗きたてのお餅みたいに柔らかかった。
私の意味不明な行動に困惑したチルノは
「霊夢、何してるの?」
って聞いてくる。でも反応する気が起きなくてまたふにふにと触り、チルノがもう一度聞こうとする瞬間に
「霊ッ!?」
自分の唇を当てた。うあー、柔らかー。
やっぱりチルノって甘いのか。
……チルノ…甘い………?
甘……………ッなぁぁあにやってんだ私イィィィッ!!
一気に現実に引き戻された。疲れたなんて言ってられるかチルノになんてことしでかしてるんだ私。
そーっとチルノの様子を確認すると。


真っ赤になって口を押さえてました。


もうッ、私のばかばかばかぁ!!何でいきなりキスするのよものには順序ってものがあるでしょいやそういう問題じゃないでしょばかぁ!!
心の中でチルノに懺悔しまくるけど、現実では頭抱えて縁側の板に突っ伏している私。
どうしよ絶対変態って思われた、チルノに嫌われたぁ…。
そう思ってたら少し気になることが。
チルノが怒ってこない。
すぐ突っ掛かってくるはずなのに黙ってる。
…もしやショックで気を失ってるとか?
焦って思い切り顔を上げた。早急に起こして謝らないとって思ってたら…。チルノは起きていて、私を見ていた。
そして
「…えへへ」
って笑って抱き付いてきた。
「ち、チルノ!?」
何この状況。まさかチルノまで壊れたとか!?
ちょ、巫女である私が異変っぽいの起こしてどうすんのよ。とにかくチルノを正常にッ!
「今の、あたいのこと好きってことだよね?」
…へ?
「あたいも霊夢のこと大好きだよ」
そう言って私に猫のようにすり付いてくる。可愛いけど………えと、これは…。
下手な心配しなくても良かったってことかしら…?
そう思ったら急に身体中の力が抜けた。背中から床に倒れ込む。痛みなんて一寸も感じなかったわ。
「わっ!?だ、大丈夫…?」
私の上に覆い被さるようになって安否を気遣うチルノ。うん、嬉しいんだけど。嬉しいんだけどね。


それ以上に恥ずかしいのよ。


隠れるところがないから両腕の袖の部分で顔を隠した。
そして
「大丈夫だから…そっとしといて……」
頭に疑問符をたくさん浮かべているチルノ。
説明したくても、私はこの妖精にこれ以上何も言えなかった。
恥ずかし過ぎて。
霊夢の感情面書くのがすごく楽しかったです。ちょっとした『へたれいむ』を楽しんでいただければ。


「夜の蒼」もどうかよろしくお願いします。
コメントありがとうございます。多くの方に読んでもらえて嬉しいです!
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コメント



0.3680簡易評価
8.100名前が無い程度の能力削除
糖分はこのくらいが丁度よい

色々と規格外な大妖怪たちよりもチルノみたいなタイプに翻弄されてる方が霊夢さんらしいと思うんだ
自分のペースを崩さずに相手できると思っていたけど逆に…みたいな
9.100名前が無い程度の能力削除
無邪気に行動する子供の方が、何も分かってない分恐ろしいことがありますよね。
いや、甘い甘い。
12.100名前が無い程度の能力削除
誰か⑨⑨%カカオチョコレート持ってきてくれませんか
14.100名前が無い程度の能力削除
あ、センブリ茶10杯下さい
15.100名前が無い程度の能力削除
あっんまーーーい!
これは確実に饅頭より甘いですよ。ごちそうさまでした。
20.80名前が無い程度の能力削除
うわぁ
こっちの顔まであかくなりそうです・・・
誰かお茶と沢庵を下さい
24.100名前が無い程度の能力削除
グゥアファェウンッ!
死…ぬ………
糖尿病になって…死ぬ…
25.100名前が無い程度の能力削除
ゴバァっと砂糖吐きそうになった
28.100名前がない程度の能力削除
この話は雪見大福いちご練乳だ・・・・・・!
32.100名前が無い程度の能力削除
あまいひたすらあまぜ
33.70名前が無い程度の能力削除
目から砂糖が…
34.100名前が無い程度の能力削除
危なかった…。
珈琲がなかったら即死だったぜ…。
37.100名前が無い程度の能力削除
あまーーーい!
霊夢が可愛すぎるw
38.100名前が無い程度の能力削除
これは…凄過ぎるな…w
45.80名前が無い程度の能力削除
キムチを常備していなかったらやばかった
46.100名前が無い程度の能力削除
あまいあまいお茶お茶
……何、お茶まであまい…だと…
49.100名前が無い程度の能力削除
塩辛・・・いや、ゴーヤが欲しいレベルだなw
50.100名前が無い程度の能力削除
はぅぁ~
55.80名前が無い程度の能力削除
やばい、これはやばい
>お好みで上白糖
いるわけないだろwww
58.100名前が無い程度の能力削除
ちょっとインスリン打ってくる!
62.100名前が無い程度の能力削除
おぉ、甘い甘い……
64.100名前が無い程度の能力削除
今なら青汁とゴーヤのミックスジュースが蜂蜜並みに甘く感じられます
65.100名前が無い程度の能力削除
甘い、甘すぎる
霊チルひゃっほい
66.100名前が無い程度の能力削除
あぁ… 甘い…
68.100名前が無い程度の能力削除
炭酸が抜けたコーラ並みの甘さ…!
これはいい
69.100名前が無い程度の能力削除
甘い甘い!
口に含んでいた飴の甘さが分からなくなるくらい甘いw
74.100名前が無い程度の能力削除
なにこれあまいw
かわいすぎて死んでしまうわwww
77.90ずわいがに削除
チルノの癒し効果は異常
……訂正、チルノの誘い効果は異常
80.100名前が無い程度の能力削除
2人とも可愛すぎるぞw
84.100名前が無い程度の能力削除
なにこれあまい。
87.100名前が無い程度の能力削除
甘いwwしかしよいwwww
89.100削除
激甘っ!!!
90.100名前が無い程度の能力削除
よし、上白糖をもらおうか
92.100名前が無い程度の能力削除
チルノかわいいよチルノ
98.100名前が無い程度の能力削除
マスター、上白糖を