Coolier - 新生・東方創想話

早苗レター

2010/01/18 01:05:24
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私は特別だと思っていた。自分が。
幻想郷。
跳梁跋扈。魑魅魍魎。そんな言葉が似合うこの世界。
私は十分に実力をつけたつもりだし、正直余裕だと思ってました。
でも。
もう駄目かもしれないです。



     ・・・




 「諏訪子…お前の言い分は理解できる。だがな、世の中には“不可能”って言葉があるんだ」

 私が神社の境内で掃除をしていると、裏の方で神奈子様の声が聞こえてきました。どうせまた喧嘩しているんだろうなあ。

 「ふふふ相変わらず仲がいいんですから二人は…」

 微笑ましくなって私は裏を覗いてみました。

 「うん理解してるよ神奈子。幻想郷に来た事も納得しているし、むしろ感謝している。でもね」
 「解ってるさ。だから」
 「うん」
 「私の注連縄を揚げようとするなあああ!」
 「邪魔すんなババア!!!!俺は…俺は…ポンデリングが食いたいんやああああああ」

 どでかい鍋に油が煮えたぎっており、それに糖衣をまぶした注連縄らしき物を揚げようとする諏訪子様。それを必死に止めようとする神奈子様。

 今日も神社は平和です。

 「で終わるかあああああ!!!!」

 とりあえず諏訪子様にドロップキック。

 「あ」
 「あ」

 ドボン!という音。そしてテンプラが揚がるような雨音のような心地のいい音。

 あ、今日のおゆはんテンプラにしよっと。

 「神奈子様今日のおゆはんテンプラでいいですか?」
 「おお久しぶりだねえテンプラ…って諏訪子!?」

 反応の遅さは年齢ゆえにでしょうか?
 必死に御柱で諏訪子様らしき残骸を挟んで油から上げようとする神奈子様。

 「油取り紙取ってきますね!」

 今の私に出来る事はそれぐらいしかありません。

 「あ、神奈子様、天つゆ派でしたっけ?それともお塩?」
 「私はお塩かなあ…って早苗もしかして」
 「嫌だなあ…おゆはんの話ですよ…怖いなあ神奈子様は…」
 「え、ああうんそっか。ほらあのさ、一応自分とこの神様なんだし、その心配とかさ、ほらしないのかなあって」
 「全くしてません☆」
 「いやあの星って口で言うのはどうかと私は…」
 「そんな事よりさっさと諏訪子様助けなくていいんですか?」
 「そうだった!」

 さてと、油取り紙どこにしまってたかなあ。
 台所に入り、がさごそ探すも見当たらない。

 「ないみたいですね…」

 ないなら仕方がない。神社裏に戻ってみると、神奈子様とほんのり小麦色に焼けている諏訪子様がいました

 「いやしかしあれだな。ロリの小麦色の日焼けってこう背徳感があるな」
 「暑かった…マグマレベルだった…」
 「あ、諏訪子様。油取り紙見ませんでしたか?」
 「へ?油取り紙ならそこにポンデリング用に用意してたけど」
 
 諏訪子様の指差す方向に確かに何枚もの油取り紙が敷いてあった。なるほど揚げてあそこで油を切ると。

 「助かりましたわ。丁度諏訪子様が揚がったらあそこで…って割と平気そうですね諏訪子様」

 油で揚げられてもピンピンしている諏訪子様を同じ生物だと私は認めない。
 そして舐めるような目線で諏訪子様の太ももを見ている神奈子様も私の神とは認めない。

 「いやあしっかしすごい量の油吸っちゃった。皮膚呼吸はこれだから不便なのよねえ」
 「まさに神だけに油取り神って感じですね」
 「イエスイエスイエスイエス、今の発言超COOLだぜええええ。もっと下げていこ!空気とか温度とかああああ」

 急に寒波が押し寄せてきたと思ったら、山に住む雪女のレティさんがいきなり乱入してきました。

 「冬は揚げられて死ね」
 「え、あ、ちょ、暑いのはらめえええええええ」

 そのまま諏訪子様に鍋に突っ込まれるレティさん。
 
 「さて。話を戻そうか」
 「なんの話でしたっけ?」
 「ミスドさあ幻想郷にオープンしないかなあ」
 「そこじゃないですよ諏訪子様。テンプラはお塩派か天つゆ派かという事で言い争っていたんですよね?」
 「いや早苗それは違うぞ。日焼けはやはり水着の後が一番だと私は思うのだが…」
 「そういう目で見られると素直にキモイよ神奈子」
 「正直失望しました。御柱の妖精かなんかに呪われて一生這い蹲って下さい」
 「え、なんか今酷い事私言われなかった?」
 「とにかく今日のおゆはんはテンプラですからね!」
 「ドーナッツ!ドーナッツ!」
 「いや這い蹲るて…死ねとかの方がマシやん…マジで」
 

 そうやって楽しく談笑していると、私は風を感じました。
 寒い風を。

 「話は聞かせてもらったで!」
 「どうやら笑いが足りひんらしいな!」
 「うちら秋姉妹に任せとき!」
 「そらあもう落ち葉の如くドッカンドッカン笑いが落ちてくるでえ」
 「姉さんオチ担当やもんね…ププっ」
 「穣子笑うんは後や…いくらおもろいからってここで笑ったらプロちゃうで…な?」


 オレンジ色の衣装を包んだ二人がやかましくやってきました。
 これを神だと私は断じて認めないっ!


 「いやあしかし秋やねえ」
 「秋やねえ。秋と言えば姉さん、うち最近栗拾いにはまってるんよ」
 「栗拾い?えろい方やなくて?」
 「えろい方やなくて」
 「ああ普通の方か」
 「せやねん。あ、うち栗拾い役やるし姉さん栗やってくれる」
 「お、おう」
 「…」
 「…」
 「(姉さんツッコミやって)」
 「(え?ああ!)な、なんでやねん!」
 「いいよおおおおお超さみぃよそれ!ごっつ寒い略してゴッサムって感じよ!っていうかお前がツッコミかよ!オチ担当じゃねえのかよ!」

 鍋から半分乗り出したレティさん。どうやらまだ元気みたいです。
 雪女って強いんですね。

 「あ、コウモリって揚げると美味しいって聞きましたけど本当ですか?」
 「鳥みたいなもんでしょ」
 「鳥だな」
 「それよりお腹減ったし早苗御飯にしよ」
 「そうだな。外は寒いしな」

 とりあえず寒い三人には油かけときました。

  

 おゆはん時。

 食卓には色彩豊かな具材が揚げられ香ばしい匂いを部屋いっぱいに充満させていました。

 「んぐんぐ…うま!芋うま!飯が美味くて芋ウマ!」
 「穣子はしたないわよ食べながら喋るなんて」
 「揚げられるのは嫌いだけど揚げ物は美味しいよね~」
 「諏訪子。早苗」
 「何?神奈子」
 「何ですか?神奈子様」
 「いや、なぜ当然のようにこいつらがうちで飯喰ってるんだ?」
 「ゴチになってやーす」
 「ちーっす」
 「とぅーっす」
 「あら、食卓は賑やかな方がいいじゃない」

 突然後ろからの声。
 振り返ると、空間の隙間から紫さんが出てきました。

 「テンプラと聞いてやってきました」

 その後から霊夢さんがお茶碗とお箸を持って出てきました。

 「ガンプラと聞いてやってきました」

 霊夢さんの後からアリスさんがザクタンクのプラモを持って出てきました。

 「ナンプラーと聞いてやってきま…あ、ちょっと、ま、まって」

 アリスさんの後から醤油みたいな液体の入ったビンを持った衣玖さんが出てきましたが途中で隙間が閉じたようで顔しか出てません。

 「とにかくみんなで食べて飲みましょう!」

 お酒に逃げるのは決して悪い事ではない。それを多分この幻想郷で一番痛感しました。

 「第68回プチ諏訪対戦~クラシックVSポンデリング」
 「うちらがお笑いだけやと思ったら大間違いやでええ。いくで穣子」
 「霊夢。油取り紙は食べれないわ」
 「だからさあ。あんた達の核技術と私の人形で確実にガンダム作れると思うの」
 「ガンダムとかロボットじゃないから却下」
 「姉さん飲み慣れていないんだから飲み比べなんて…」
 「あ、あの誰か、あの助けてください。く、首がもげる…」
 「あれ?レティさんは?」

 私は宴会から抜け出すと、縁側で独り飲んでいるレティさんがいました。

 「どうしたんですか独りで」
 
 私は彼女の隣に座りました。彼女は心なしか少し寂しそうでした。

 「いや、うん。ああいう場は苦手でね。あったかい所は特にね…」
 「すみません…配慮できずに…。レティさん雪女ですもんね」
 「ここは凄く素敵。心もあったかくなるから。でもねそこに私がいる隙はないの」
 「でもそれって…辛くないですか」

 彼女は笑顔を私に見せました。とても寂しそうな。北風のような笑顔。

 「大丈夫よ。こう見えても結構強いんだから!、うん、じゃあそろそろ行くよ」
 「え、帰るんですか」
 「みんなにありがとうって伝えといて。それじゃあ」


 びゅううと風が吹くと彼女は消えていました。
 彼女の座った後には微かに霜が降りていました。彼女の名残はそれだけ。

 私は立ち上がると宴会へと戻りました。



 「だーかーらー塩が一番合ってるって」
 「醤油ね」
 「素直に天つゆだろ…」
 「生芋かな」
 「ブドウジュース」
 「なんでやねん」
 「だからお願い誰かここから出して…」

 みんながわいわい議論していました。
 私は隣に座る諏訪子様に何を議論しているのか聞きました。

 「テンプラに何つけて食べるか。てか遅いよねこの議論」

 なるほど。でもみなさん分かっていませんね。

 「テンプラにはもちろん!」

 私の声に全員の注目が集まりました。

 「ソースですね!」
 「…」
 「…」
 「…(はっ!これはチャンスや…姉さん!)」
 「…(ナイスアシスト穣子)…そ、そーっすね!あははソースだけに…そーっすねなんて…」



 
 「さっぶさっぶさっぶさっぶあかんてパウダースノウ降るってあかんて吹雪の山荘やって!やっばやっばこれ明後日来るって明後日。デイアフタートゥぐはああ!」
 「いい感じに別れたのに帰ってくんなやあああああ!!!!」

 そのままレティさんを衣玖さんめがけてバックドロップ。
 スポンと音して今度はレティさんの首から先だけが隙間の向こうに消えていました。

 その後何事もなかったように宴会は朝まで続きました。


  ・・・



 翌朝。神奈子と諏訪子が起きると、枕元に一枚の手紙があった。

 


 神奈子様へ諏訪子様へ。

 昨日は楽しかったですね。
 ですがこの一件で私にはこの幻想郷でやっていく実力がない事に気付きました。
 レベルが違いすぎる。そう感じました。
 かくなるうえは武者修行します。
 常識に囚われない思考を身につけるまで帰りません。
 探さないで下さい。



 早苗。











続く?
どうしてこうなった…

好きな言葉:見切り発車。投げっぱなし。瞬発力。
不夜城レッド
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コメント



0.290簡易評価
1.80名前が無い程度の能力削除
こいうのは嫌いではないです。
おそらく5%の読者しかわからないバットマン繋がりのネタ部分にもニヤリと…
8.80ずわいがに削除
最初から既に常識などなかった……