Coolier - 新生・東方創想話

八雲家の一日

2010/01/15 05:20:25
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 冬。
 幻想郷は今年一番の雪に見舞われて一歩先の景色すら見ることが出来ないほどだ。人間の里では人々が道の雪よけや、積もりすぎないように屋根の雪おろしなどで忙しそうである。
 博麗の巫女曰く、「明日には神社が潰れてしまいそうな勢い」だそうだ。
 氷の妖精や冬の妖怪達が活動を活発にしてここぞとばかりに悪戯をしたり人を食べたりする。そんないつもの冬。
 またそれとは別に冬眠を始めたりする者もいる。

 そして本来なら冬眠するはずの無い妖怪がここにいた。
 まあ本人は毎年冬眠していると言うのだが。

「紫様、紫様」

 そんな一番幻想郷で妖怪らしい妖怪は今日も、寝ていた。

「起きてください。外が大変なんですから」
「なあに…?今ものすごく眠いのだけれど」

 すごく眠たそうな顔をして自分の式に問う。そんな主人を見て式は、

「三日も眠りっぱなしだったのに何を言いますかねこの主人は。どんな夢を見てたんだか知りませんけど、へらへらした顔で布団に寝技かけたりするのはやめてください」
「あら、寝ている時に起きたことは私の責任じゃないわ」

 そんなの屁理屈にもなりませんと主人の発言を一蹴して話を進める。

「そんなことより雪よけが追いつかないのでなんとかしてもらいたいと思いまして」
「雪…?そんなことで私を起こしたの?」
「はい、多分今年一番の大雪ですし」
「…私にどうしろっていうの?」
「雪よけを手伝ってもらいたいんです」
「橙は?」
「疲れ果てて寝てます。長い時間働かせてしまいましたから」
「じゃあ貴女だけでやればいいじゃない」
「私一人じゃあ追いつかないからわざわざ起こしたんですけど」
「私寒いの苦手だもん」
「そんな口調を使う年ごろじゃないでしょうに…」
「なにか?」

 否定の意をこめて式は首を横に振る。でも、その口調は本当に如何なものか…。人前ではあまり使ってほしくないなと式は思う。

「大体雪よけなんてしなくてもいいでしょう。どこかに行きたいならスキマから送ってあげるわよ」
「いちいち紫様を起こさなくちゃいけなくなりますけどいいんですか?」
「…それは不愉快だわ。藍、雪よけをしなさい」
「だから手伝ってくださいよ。境界を弄って雪を消す訳にもいかないでしょう?」

 それはそうだと紫も思う。
 そうなればやれ異変だと博麗の巫女やあの泥棒魔法使いが問題を追及しに来るに決まっている。なによりそう簡単に幻想郷の均衡も崩していいものではない。いやまあよく崩しちゃいるんだけど…。八雲紫は渋々といった様子でようやく寝技をかけられた布団から離れて立ち上がった。

「面倒くさいわね…本当にそんなにひどいの?」
「ええ、それはもう。雪の塊が落ちてくるようなもので」
「じゃあちょっと外の様子を見てくるわ」
「危ないですよ。それなりの格好をしていかないと。寒いですし」
「大丈夫よ。少し見に行くだけだし」
「そうですか?ならいいんですけど。じゃあその間外で着るものを用意しておきますね」
「ええ、お願い」

 

そういって紫が外に様子を見に行ってから数十分。式である藍が防寒具を用意し終えて戻ってきてから言えば十数分といったところだ。戻ってくる気配はない。
 なにかあったのかと藍が玄関へ急ぐと玄関の戸が開いており、ちょうど人一人分くらいの雪山ができていた。

「…何だこれ」

 恐る恐る雪山に近づくと、か細い腕が一本出ていた。ついでに雪山の上の屋根からはごっそり雪が抜け落ちていた。

「紫様、大丈夫ですか」

 腕が少し動いて虚空にSOSを描く。ちょっと不気味だなと藍は思った。

「ちょっと待ってくださいね。今雪をよけますから」
「藍。寒い。冷たい」
「ええ、寒いでしょうね…。やっぱりこういうことが起こると思ってました」
「なによその、自分じゃなくてよかったと言わんばかりの言葉は」
「言わんばかりというか本当に自分じゃなくてよかったと思ってますし」
「うぅ…鬼ぃ。悪魔ぁ」
「それの何十倍も怖い貴女にそんなことを言われても…」

 苦笑しながらもやっと紫を覆っていた雪を取り払って部屋へ行く。

「で、ああいうことが起こるから雪よけ、まあさっきの場合なら雪おろしをしなければならないわけです」
「ええ、身をもってそれを体験したからよくわかるわ」
「ではここに用意した防寒具を着て雪よけをしましょう」

 面倒くさいとは思いつつ、さっきのようなことがあっては困るとさっさと用意されたそれを身にまとう。
 外は相変わらずまだ雪が降っていて、止む気配もない。

「お似合いですよ、紫様。それじゃあこのスコップを持って邪魔にならない場所に雪をよけてくださいね」
「ええ、わかったわ。…それでどこから手をつければいいのかしら?」

 眼の前には一面の雪景色。僅かに除雪したと思われる道らしきものが残っている。

「ええと…まあ、この雪をよけてあった道をまたやっていきましょう」
「やる気を一気にそがれるわね…。あら?」
「どうかしましたか?」
「あれ、なにかしら?」

 紫の指差した方向には作りかけのかまくら…というか洞穴に近いものがあった。

「ああ、あれは橙がかまくらをつくると言って聞かなかったものですから」
「橙も不器用ねえ。あれじゃあ洞穴じゃないの。でも…かまくらもいいわね。風情があるわ」
「まあ冬ですからね。それにしても紫様が風情を語りますか」
「余計なこと言わない。よし、雪よけついでにあのかまくらを完成させましょうか」
「また急な提案ですね。まあ命令とあらば仕方ありませんね」

 趣旨が変わってしまったけどまあいいかと二人は作業に取り掛かる。


~少女作業中~


「よし、出来たわね。藍、橙を呼んできなさい。あと七輪と食べ物!」
「仰せのままに」

 誇らしげに胸を張る紫の前には二メートルはあろうかという大きなかまくらがあった。
 藍は紫の様子を見てまだ紫様は子供だなあと思う。

「橙、紫様がお呼びだよ。あ、私はちょっと持っていくものがあるから先に外に行っていなさい。寒くないようにちゃんと着こんでいくんだよ」
「むにゃ…わかりました藍さま…ふわあ」

 苦笑して藍は橙の傍に防寒具を用意して紫に言われたものを取りに台所へ向かった。

「紫さま。お呼びですか?うわあ、すごいですね!」

 橙ができたかまくらを見て賞賛の言葉をもらす。

「あ、橙。どう?これがかまくらよ」
「紫様は本当にまだ子供ですね。はい、七輪とか持ってきましたよー」
「何よ―。藍だって出来た時嬉しそうにしてたじゃない?」
「あれ、藍さま。そうなんですか~?」
「そ、そんなことはないぞ!紫様も適当言わないでください!」
「あー、藍ったら顔真っ赤よー?本当のことなんだから隠さなくてもいいじゃないの」
「藍さま、嘘はいけませんよ!」
「うぅ…」

 かまくらの中で火を焚きながらそんな冗談を交わす。

「こんな日もあっていいわね、藍」
「ええ、そう思います。あれ、橙?」
「むにゃ…、ゆかりさまー、らんさまー」
「…寝言ね。ここは炬燵じゃないのだけれど」

 苦笑しながら紫は橙を藍の膝に乗せる。

「こんなところじゃ風邪をひいてしまう。紫様、橙を部屋に寝かせてきますね」
「はいはい。いってらっしゃい」

 気付けば雪はもう止んでいたらしい。明日は晴れるだろうか。なんとなく紫はそんなことを思った。晴れたら何をするというわけでもないのだが。そうだ、博麗神社にでも茶を飲みにいこうか、などと考えながら外を眺める。

「こういう日がもっとあるといいわね…」



 八雲家は今日も平和です。
             
 おしまい
はい。二作目になります。
読んでくれた方々、本当にありがとうございます。
駄文、乱文ではございますが最期までお付き合いくださいまして心より御礼申し上げます。

次回作はまたすごい長い間が空きそうな気がします。
期待せず待ってるといつか出るかもしれませんね。
ハイ、誰モ期待シナイナンテワカッテルサ。
誤字、脱字がありましたら見つけ次第訂正していく所存でございます。
あとがきも読んでくださってありがとうございました!
綾田利カズン
maria2nd@live.jp
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コメント



0.1800簡易評価
30.90期待する程度の能力 その55削除
ふはははは!残念だったな!
「期待する程度の能力 その1」の座は俺がいただいたァ!!

あれ?
31.70名前が無い程度の能力削除
ほのぼの~
38.80ずわいがに削除
いや、このほのぼのっぷりには十分期待出来ますよ!
クスッと笑えるところもしっかりおさえてます。