Coolier - 新生・東方創想話

花と人形

2010/01/06 22:59:54
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時折雪が降り出し始めた頃
幽香が家にやってきた

「服を作ってもらえないかしら」

珍しい客が来たかと思えば、唐突にそんなことを言われる
「コートが欲しいのよ お気に入りのをこの前ダメにしちゃってね   折角だからあなたに新しいのを作ってもらう事にしたの」
当然の如く中に入ってテーブルに座り、お茶くらい出してくれるわよね?と笑顔で要求してくる
招かれざる客とはこのことか
居座られても困るけど・・  仕方なしに上海に紅茶と茶菓子を持ってこさせる
幽香は ありがと、と微笑み上海と握手をしている
「何で私に」
「貴方、服作れたでしょ?」
「作れるけど・・」
「じゃあ決まりね ちゃんと代金も支払うわよ」
笑顔でごり押しされては断るに断れない
その上、相手が幽香とあっては猶更だ
「いつまでに出来そう?」
返事をした覚えは無いのに、いつの間にか作る事に決まっている
小さなため息を一つ やっぱり、私に選択権は無いのね
「一週間もあれば出来るとは思うけど  まずは寸法を取らせてちょうだい
 それと、希望があれば今のうちに聞いておくけど」
「動きやすくて暖かいのをお願い  他はお任せするわ」
「随分大雑把ね
 ケープでいいかしら? 赤の生地に白のファーで、今の服に合わせやすいように 
 アクセントに黒糸と金糸を使って  そうね、ヒマワリのブローチでも作る?あなた好きでしょ
 デザインを描くから見てちょうだい」
簡単なデッサンを描き終え顔を上げると
困った客は上海を抱いて楽しそうに笑っている
「随分楽しそうね  面白い事でもあったの?」
「いえね、アリスが私のために服を作ってくれるのが嬉しくて」
「自分で頼んでおいて何言ってるのよ」
しかも、半ば無理やり  頼ってくれるのは嬉しいけどね
幽香は相変わらずくすくす笑っているね

採寸が終わって作成の手順を考えている時
「ねえ、アリス?」
そう言って何かを包むようにして両手を合わせ

ポンッ

と音をさせると、開けた手から色とりどりの花が溢れ出す
赤に黄色に紫に  色鮮やかなパンジーの花束
「前金代わりよ  出来上がるの楽しみにしてるわね」
強引に花を私の手に渡し、とっておきの笑顔を残してさっさと出て行ってしまった
強引というか、我侭というか
行動が唐突すぎて意味が分からない
「何なのよもう・・」

少ししてから、上海人形が一体行方不明になってるのに気が付いた
「上海を盗られたのは初めてね・・・  乱暴されてないといいけど」






ー翌日ー
散歩をしに外に出てみると変わった事があった
昨日まで寂しかった花壇が、たった一晩で花で埋め尽くされてしまっていた
誰の仕業かは想像が付くけど、服と花を交換でもするつもりかしら? 
「どこかの泥棒魔女よりはよっぽど気が利いてるけどね」
急に賑やかになった花壇をのんびり眺めていると
雪を踏む音と共に声がかかる
「上手く咲いてくれたみたいね」
日傘を差し、上海を抱えて幽香が現れた
これだけ見るといいとこのお嬢様に見えなくも無いけど、中身を知ってるせいで魅力三割減かしら
それでも 見ほれるくらいには綺麗なのよね
「何よその顔は」
「上海を攫った事を怒ろうか、花壇の事でお礼を言おうか迷ってるのよ」
「お礼だけでいいわよ」
「ありがとう」
「どういたしまして」
形だけのお礼を言うと、にっこりと微笑んで応えてくる 本当にやりづらい相手
会話もそこそこに上海を引き寄せ、変な事をされてないか確かめる
いい香りがするのは頭に載せた花冠のせいかしら  これはジャスミンね
まるで天使のよう
幽香もかわいい事するじゃない
「異常なし、と」
「心配しなくても大丈夫よ あなたのものを壊したりはしないわ」
「それでも一応ね」
「大事にされてるのね   この花壇は気に入ってくれた?」
「ええ、とっても  冬にこんなきれいな花畑が見られるとは思わなかったわ」
「ふふ、そう言ってもらえると嬉しいわ」
「ここは寒いわ  そろそろ中に入りましょ」
「お邪魔するわ」



「その子のことそんなに気に入ったの?」
私が紅茶の準備をしている間中 幽香はずっと上海を撫でている
「私の家にはこういうのがないから、珍しくてね  勝手に持って行っちゃってごめんなさいね」
傷は無かったし、今見てる分にも優しく扱っているようで少し安心した
「乱暴はされてないみたいだし、ちゃんと帰ってきたからいいわよ  出来れば、前もって言ってほしかったけど」
「次からはそうするわ」
ということは、また借りてくつもりなのかしら
昨日裁断まで終わらせたケープを引っ張り出し、必要な箇所だけ縫い付ける
「急いで仮縫いまで終わらせるから、微調整するために一度着てくれない?」
「仕事が速くて助かるわ」


ー少女着替え中ー
幽香からいい香りがする
花に囲まれて暮らしてるから匂いが体に移ってるのかしら
・・・
・・




「きつかったり、動きづらかったりしない?」
「平気よ  上手く作ったものねえ」
やたらとアグレッシブな動きをしてから、そう答える
これを着たまま殴り合いでもしそうな勢いだ
「丈夫に作るつもりだけど 手荒に扱うと流石に壊れるわよ?」
「壊れたら直してもらいに来るわ」
「壊さないように着てもらいたいんだけど」
幽香なら本当に頻繁に壊しそうで、考えるだけで頭が痛い
「あら、そう?  会いに来る口実になると思ったのに 残念ね」
「何を言ってるのよ」
調整も終わり、服と道具をしまう
特にする事もなくなってしまった  幽香はまだ帰る気配が無いし どうしよう
「アリス」
呼ばれて幽香の方を見ると、昨日と同じようにして両手を合わせている
中を覗いてみて、と手を差し出してくる
何が入ってるか気になったこともあり 顔を近づけて覗いてみようとする、 と

「案外簡単にひっかかるのね」
いたずらっ子の笑みでそう言ってきた
「い、いきなり何するの!」
「何って  キスしただけじゃないの」
顔が赤くなる
手の中を見ようとして顔を近づけたら、いきなりキスされた
なんで!
驚きすぎて言葉が出ない 頬が赤くなる
「何考えてるのよっ」
「ふふ、当ててごらんなさい」
幽香は楽しそうにくるくる回っている
こっちはそれどころじゃないってのに!
倒れるようにして椅子に腰を下ろし、一呼吸
まだ心臓がバクバクしている 何でこんな事に
幽香がこちらを面白そうに眺めている
「今日は出直そうかしら?」
「え、ええ、  そうしてくれるとありがたいけど」
そう返すのがやっとだった
とにかく、頭を冷やして落ち着かないと
「やっぱりやめた
 折角淹れてもらった紅茶が勿体無いし、何より貴方の反応が面白いからもうしばらくいることにするわ」
満面の笑みで こちらの都合などお構いなしに心をかき乱してくれる


その後、何故か上海を正面に
私と幽香が隣同士に座ってしばらく話していた
話した、といっても 幽香が庭の花のことを一方的に話していただけだったけど
花の話をするとき、幽香はとても優しい顔をして無邪気に笑っていた
私は平静を取り戻すことが出来ず、幽香に翻弄され続けた
日が落ちてから 幽香は帰っていった
ジャスミンの香りがいつまでも漂っている
次は出来上がった頃に来るって言ってたけど・・
どうしろってのよもーう!







あれから五日
コートはとっくに出来てしまった
幽香からは何の音沙汰も無い
からかわれてるだけだったのかもしれない 幽香だったらやりかねない
でも・・
整理が付かないまま時間ばかり過ぎる
裁縫に没頭してるときはよかったけど、こうして時間が出来ると思い出して恥ずかしくなる
「早く渡してすっきりしたいとこだけど、 幽香の家知らないのよね私」
夏は太陽の畑の近くにいると思うんだけど、冬もそこにいるのかしら
入れ違いになるのも嫌で そわそわしながら家で待っている
ジャスミンの香りはまだ続いている それが余計、幽香の事を思い出させる



「ごきげんよう、アリス
 服は出来たかしら?」
「幽香、来るならもっと早く来てよ」
「ごめんなさいね」

幽香は出来上がったケープを着て嬉しそうに微笑んでいる
表情を見る限り、満足してくれたみたいだけど・・・
それよりもまずはっきりさせたいことがある
「この前のはなんだったのよ  それっきり連絡もないし」
「恋文の一つも送ればよかったかしら?」
「そういうわけじゃ・・・」
段々と声が小さくなってしまう
そういうことじゃ、ないのに
「私だって恥ずかしかったのよ」
幽香はそう言って、拗ねた様にそっぽを向いている
そして真面目な顔をしてこちらを向き
「好きよ、アリス
 だから もうしばらく側にいさせてもらえないかしら」
恥ずかしそうに そう、言ってくれた



「ごきげんよう  また来るわね」
「幽香っ」
背を向けて立ち去ろうとする幽香の裾を引っ張り
「あの、その・・   どこで暮らしてるのか教えてくれない?
 待ってるだけは、嫌だから」
幽香は優しい笑みを浮かべ、抱きついてくる
「それなら今から一緒に行きましょ  案内するわ」
「え、ちょっと  いきなりそんなこと言われても」
「私の家までデートしましょう?」
手を繋ぎ、嬉しそうに私を引っ張ってく
そんなこと言われたら 断れないじゃないの     …もう



「ねえ、アリス  パンジーの花言葉って知ってる?
 ふふ、教えてあげなぁい」
初めまして みをしんです
最後まで読んでいただきありがとうございます
今回初めて東方のSSを書いてみたのですが 楽しんでもらえたでしょうか?
思ってたより長くなっちゃいましたが 少しでもにやけてもらえれば幸い
これからも何か書こうとは思ってるので、見かけたらよろしくです


キャラについて少しだけ
アリスって可愛いですよね 人形に裁縫に魔法使いってどんだけ女の子なんだと
幽香さんはドS時々乙女 だととても良いと思います
初々しさが消えた頃好き勝手我侭を言ってアリスを困らせればいいのです
( ゚∀゚)o彡゜幽アリ!幽アリ!



追記:
誤字訂正  『壊れる』の方は敢えてそのままで
ポイント、コメントありがとうございます! 予想以上に喜んでもらえたようで嬉しいです
幽アリはジャスティス!
みをしん
http://tphexamination.blog48.fc2.com/
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コメント



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12.70名前が無い程度の能力削除
( ゚∀゚)o彡゜幽アリ!幽アリ!


×変える気配が無い
○帰る気配が無い
14.100名前が無い程度の能力削除
はい、今、私の中にジャスティスができました。どうしてくれる。
っつーわけで責任とって書き続けてくださいね。
15.100名前が無い程度の能力削除
幽アリ!幽アリじゃないか!
幽アリ合同で目覚めてからSSで読んでみたいなー、と思ってたからこれは嬉しい。
16.90名前が無い程度の能力削除
あー私の中で新たなジャスティスが~~責任持って続きをお願いいたします。
20.100名前が無い程度の能力削除
自分は幽アリ結構いけると思うんだけどいかんせん少ないからな・・・・
幽香もアリスもらしくてよかった。
21.90名前が無い程度の能力削除
幽アリ!幽アリ!
22.100名前が無い程度の能力削除
バカ野郎!幽アリなんて書いたら・・書いたら・・・
あぁもう駄目だ萌えしぬ
24.100名前が無い程度の能力削除
これはいい幽アリ!

壊れる→破れる

ですかね?
26.100名前が無い程度の能力削除
鼻血が止まらんのだが、輸血の血液が無い

幽アリ…ダバダバ
30.100名前が無い程度の能力削除
素晴らしい
32.90名前が無い程度の能力削除
いいなぁ、これはいい
( ゚∀゚)o彡゜幽アリ!幽アリ!
35.100奇声を発する程度の能力削除
幽アリきた!!!
久々に幽アリ読んだ気がする。
39.100名前が無い程度の能力削除
やっぱ幽アリが一番だな。
43.100名前が無い程度の能力削除
( ゚∀゚)o彡゜幽アリ!幽アリ!
素晴らしい。らしいふたりで砂糖吐いた。
54.100名前が無い程度の能力削除
久方ぶりの幽アリだ!
感謝!やっぱ幽アリだな・・・
60.100名前が無い程度の能力削除
幽アリきた!! これで勝てる!
62.100名前が無い程度の能力削除
ゆうかりんとアリス!!!
これは新しい世界だ!!

読みやすくて、意外な組み合わせで新鮮でした。
73.無評価名前が無い程度の能力削除
仮に変なおっさん相手だったら
「アリスはこんなキスされただけで靡くビッチじゃないやい!」
とか言われるのに幽香だと許される。ふしぎ!

でも簡単な理由付けぐらいは欲しいね。
前の異変の時に人形を操る貴女を見て~、とかメチャ適当でも良いから。
それに付随してアリスが幽香に心を許していく描写もあると尚結構。

あと
・花壇の花を冬に咲かせてもすぐ萎れるので幽香の行動として不自然。
・宗教上の理由でもなければ句点を使った方が読みやすい。
78.100名前が無い程度の能力削除
幽アリもいいもんだな
84.80名前が無い程度の能力削除
これは…有りだな!
91.90ずわいがに削除
ぎぃゃぁあああ!
幽アリに萌え殺されるぅっ
100.100名前が無い程度の能力削除
初めて……だと……!?
素敵な幽アリをごちそうさまです。
幽アリはジャスティス!
121.100名前が無い程度の能力削除
上海を抱きかかえた幽香とか、まさに俺得