Coolier - 新生・東方創想話

東方文明ごっこ・前編

2009/12/26 06:02:55
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*注意*
・「文明の終わる日」のおまけ編です
・すごくゲームネタです
・無駄に長いです

――

<紀元前3000年。原始時代に移行しました>

 視界の片隅で、そう書かれたポップアップが表示された。早苗は驚いた顔で周囲を見渡す。
「バーチャル・リアリティーってやつですね。さすが幻想郷、現代の常識を超えています」
『いや、こいつは妖術の一種だよ。あ、聞こえてるかい、早苗ちゃーん』
「はい、よく聞こえてますよ、にとりさん」
 早苗の眼下には、まるで先の見通せない暗雲がどこまでも広がっていた。しかしいま彼女が立っている地点の真下だけは、ぽっかりと霧が晴れて手つかずの原野が顔をのぞかせている。
 空中に立つというのも妙な表現だが、現に足の裏では畳を踏んでいる感触がするのだからしかたない。
 隣では、諏訪子も物珍しそうな顔であたりを見回している。
「あのさあ、にとり。これお手洗いとか行きたくなったらどうするの」
『左上のほうに、「オーバーラップ」っていうスライダーが見えますよね。いまそれが100パーセントになっちゃってるけど、目盛りを下げれば現実側の感覚に切り替わります』
 早苗は空中に浮かんで見えるスライドバーに指をあて、軽く左に動かしてみた。するとさっきまでの妙な風景が消え去り、元の自分の部屋の眺めになる。目盛りを中間あたりにしてみると、両方の風景が重なって見えた。
 諏訪子も、現実には見えないツマミをしきりに左右に動かして面白がっている。
『永琳の目薬は近くに置いてますか? 大丈夫とは思うけど、もし具合が悪くなったらそいつで幻覚を解除してください』
 姿を見せず音声のみでそう語る河童、河城にとりの声ははずんでいる。
『いやあ、それにしても外の世界のゲームか。ずっと興味あったんだよね、私』
「本物だってここまでの臨場感はないよ。さすが妖怪の力」
 たったいま、月の兎の鈴仙が幻想郷のあちこちにスキマ輸送されて、このゲームの参加者たちに幻術をかけて回っているところだ。そうやって全員で同じ幻覚世界に没入し、外の世界で人気があるというゲームに興じようという企画である。
 ゲーム自体の管理進行は八雲藍が、念波の中継は鈴仙・U・イナバが担当する。インターフェースまわりの制御とプレイヤーサポートがにとりの仕事だ。
『さすがは八雲紫。面白いこと思いついてくれる』
「えーと、あのひとの場合、単に自分が遊びたいだけですよ」
 早苗が少し困り顔で言うとにとりはくすりと笑い、じゃあまたと言って通信を閉じた。
「うっし、久しぶりのゲームだ。これは腕が鳴るよ」
「はあ。私は見てるだけでいいですか? 諏訪子様があんまりハメ外さないように見張っておけ、とのお達しですし」
 遠慮がちにそう言う早苗に、指をばきばき鳴らしていた諏訪子が振り向く。
「なに言ってんの。えっと、ちょっとここの、旗みたいなマークにカーソル合わせてみて」
 カーソルなんてないのだけど、早苗はとりあえず言われた場所に指を向けた。するとやや大きめのポップアップが表示される。

――守矢文明 指導者:東風谷早苗――
勤労志向:遺産の建築を加速/工業施設の建築を加速
宗教志向:革命時の混乱状態を回避/宗教施設の建築を加速

「なんです、これ」
「プレイヤーは早苗で登録しといたよ。キャラ性能を決めたのは藍かな。勤労に宗教……かなりの内政屋ね。ピラミッドは絶対に建てたいぞ、できればアレクサンドリア図書館も……」
 ぶつぶつとひとり作戦を立てはじめた諏訪子。放置されかけた早苗はその目の前に回った。
「じゃあ、まずどうしたらいいんですか、このゲーム」
 顔をあげた諏訪子は笑顔になる。
「まずはね、ユニットのマーカーをオンにして……そうそれ」
 言われたボタンを押すと、人物を描いたフキダシが二つ、眼下の森林の中に表示された。
「杖を持ったやつが開拓者。街を作る能力があるよ。棍棒を持ったやつが戦士。今の武装じゃ野生動物に勝てるかも怪しいんで、さっさと弓か青銅器を開発したいね」
 面食らっている早苗を置き去りに、諏訪子は得意げに解説を続ける。
「次は資源マーカー、そのハテナマークね。すぐそばの資源は、豚と、魚と、トウモロコシ……食糧ばっかかよ。でもまあ、まずまずの配置かな」
 どう口をはさんだものか早苗が迷っていると、ジャン、という効果音とともに目の前に新しいウィンドウが開いた。

<すべての参加者がそろいました。これより文明ごっこを開始します>

「よし! 早苗、開拓者を選んで『都市の建設』をクリックだ」
「はいっ。ええと、この、これ?」
 それっぽいボタンを押すと、開拓者ユニットの姿が消えて小さなウィンドウが現れる。
<都市名を決定してください>
「あー、なんでもいいですよね。はい、では守矢神社……っと」
 名前を書き込んで『OK』を押す。さきほど開拓者がいた場所に、いくつかの粗末な小屋が出現した。
「都市? これどう見ても村じゃ」
「今はね。さ、都市の生産物を決めるよ。とりあえず戦士を二体で、次は労働者」
 忙しいですねえ、とぼやきつつ指示通りの操作を行う早苗。
「オッケー。じゃああとは、その戦士を隣の丘の上に移動させて」
 これまた言われた通りに操作すると、動かしたユニットの周囲だけ黒い霧が晴れた。
「真っ暗になってるとこは、まだ調査してない領域だから。今のままじゃ世界がどんな形かもわからない。最低限、首都近辺の資源とライバル勢力の所在は把握しとかないとまずいね」
「んー、本当にやること多いですね」
 まだ1ターン目も終わっていないのに、早くもうんざりしてきた。
「本格的に面倒になってきたら私が動かすよ。でも見てるだけじゃ眠たくなっちゃうでしょ」
 諏訪子はくるりと早苗に背を向け、塗りつぶしたように青い空を見上げる。
「こうやって、また早苗とゲームできるとはねえ。小さいころは泣かせてごめんね」
 謝るのならこっち向けばいいのに、と思いつつもそこは口に出さない早苗。
「今となってはいい思い出です。最初から最後まで貧乏神を押し付けられたり、ハシゴを登ろうとして延々とタイヤで殴り落とされたり」
「あーうー、聞こえなーい。ターンエンドしよう、その赤い丸のボタン押して」
 ターン終了後しばらくの間、<他のプレイヤーの終了を待っています>とのメッセージが表示される。
 そして。

<博麗文明で博麗神社が建設されました>
<魔法の森文明で霧雨魔法店が建設されました>
<紅魔文明で紅魔館が建設されました>
<冥界文明で白玉楼が建設されました>
<八雲文明で八雲邸が建設されました>
<月人文明で永遠亭が建設されました>

 次々と現れるメッセージでログ画面が埋められていく。諏訪子が次なる指示を下そうとしたとき、二人の目の前で大きなウィンドウが開いた。
「さあ始まりました、幻想文明ごっこ。まずは優勝候補の一角と呼ばれる洩矢諏訪子さんに、今回の意気込みを語っていただきましょう。どうぞ」
 画面の向こうで調子よくまくしたてる女性、烏天狗の射命丸文が諏訪子にマイクを向けるしぐさをする。
「意気込みと言われてもねえ。私今回はサポート役だし。早苗、パス」
 文は帳面を構えて早苗に向き直る。
「え、あ、えーと。私たちはスポーツマンシップにのっとり、正々堂々最後まで戦いぬくことを誓います!」
「んー、いい感じに空回ってますね。それでこそ早苗さん」
 むっとした表情になる早苗には目もくれず、文はまた諏訪子に向かい合う。
「では参謀閣下。正直言って私、この遊びがいまいち把握できてないんですけど。どのような要素が勝敗を分けるとお考えですか」
 諏訪子は無言でうなずき、空中のボタンを押す。ひときわ長大な、まるで巻物のようなウィンドウが現れて三人の周囲を取り囲んだ。何十という数のアイコンが並び、それぞれが横線で結ばれている。
「テクノロジー・ツリー。原始から近未来までの、外の世界の科学を表した図よ」
 早苗は目を丸くして、文は目をひそめてこの図表を眺める。
「うーむ。この『光ファイバー』とか『超電導』とか、意味は知りませんが馬鹿っぽくて強そうな響きです」
「神授王権、ナショナリズム、民主主義……なんか歴史の勉強してる気分に」
「別にリアルの歴史を覚える必要はないよ。というかむしろ、やってるうちに覚える」
 言いながら諏訪子は、ツリーの起点、表の左端を指さす。
「守矢文明の初期技術は、車輪と神秘主義だね。輪っかと柱……まあいいや、今はまだ農業も漁業も知らない」
 早苗は首をひねり、表の端から端まで目をやってうんざりした顔つきになる。
「宇宙は遠いですね。どうやれば新しい技術がもらえるんです?」
「ええとね、神秘主義の右下、『多神教』をクリック」
 早苗の押したボタンがへこみ、『6ターン』と表示される。
「おっと、さすがに『迅速』設定か。あと6ターンで多神教が発明できるよ。次は農業・採掘・畜産と進めよう。今のままじゃ資源が無駄だし。その次は……弓と青銅、どっち優先がいいかな」
 腕組みして考えこみだした諏訪子の隣で、文はあごに手をあてる。
「つまり、この技術の樹をどんどん登って行く者がより強く賢くなれると。ふふん、実に人間的な発想です」
 妖怪の社会ではおおむね、古いものほど強くて偉い。『新しいものほど良い』などと言い出す輩がいたら、浅ましい人間かぶれと馬鹿にされるだろう。
「まあそう言いなさんなって。こういう遊びなんだから」
 話しこんでいるうちに、このターンの制限時間が迫ってきた。画面端に表示されているタイマーが残り30秒を切っている。
「早苗、戦士をもう一歩左上に進めて」
 言われるがままに早苗は一歩駒を動かす。すぐに次のターンが始まった。
「じゃあもう一歩、今度は右上の森に。基本は森の中か丘の上を歩かせてね。平地で動物に襲われたら、運が悪いと食べられちゃうから。そのうち二体目の戦士が完成するから、そいつには南を探索させよう」
 目を輝かせて指図する諏訪子と、諦めモードでそれを聞く早苗。メモ帳から顔をあげた文は二人を一瞥して通信を閉じた。

<八雲文明が八雲信仰を創始しました>
<守矢文明が守矢信仰を創始しました>

「うおっと。なんだこりゃ、信仰って」
 眉をひそめる魔法使い、霧雨魔理沙の向かい側で、アリス・マーガトロイドは分厚いマニュアルをぺらぺらとめくっている。
「特定の技術に一番乗りすると、宗教が創始できるようね。布教された都市の幸福度・文化力にボーナス、総本山に金銭収入……地味に強力ね」
「じゃあ私らも発明しようぜ、魔法の森信仰」
 無言のアリスはハイペースでページを読み進める。
「ん? うーん。にとり、にとり、聞こえてるかしら」
『はいはーい、どうしたの』
 音声だけでにとりが答える。
「宗教の名前がマニュアルと違うんだけど。こっちは仏教とかヒンズー教って書いてあるわよ」
『そこは変えたほうがいい、って藍さんが。キリスト教徒の吸血鬼とか、イスラム教徒の巫女なんてどうかしてるじゃないか』
「霊夢がイスラムなら腋出し禁止だな……っと、また斥候ができたぜ。次は戦士か?」
 手元から目をそらさずにアリスが答える。
「戦士が役立つのは最序盤だけでしょうね。旧世代のユニットを溜め込んでも給料が無駄になるだけみたいだし、次は兵舎がいいかな。志向の特典もあるから」
 アリスの目の前のポップアップウィンドウには、こう表示されている。

――魔法の森文明 指導者:霧雨魔理沙――
攻撃志向:白兵・火器ユニットの戦闘力を強化/訓練施設の建築を加速
諜報志向:全都市の諜報力産出を増加/諜報施設の建築を加速

 魔理沙が横から覗きこんで口を出す。
「私が攻撃型のキャラだってのはわかるが、諜報ってのはなんだ」
 勝手にページをめくろうとする魔理沙の手を、アリスはぴしゃりと払いのけた。
「あーはい、諜報、諜報……スパイを作って他国に送り込めば、技術を盗んだりできるみたい」
「うむ、すばらしい。積極的によそからパクるとしよう」
 手をあごにあて満悦の表情を浮かべる魔理沙を放置して、アリスは斥候一号を南に移動させた。すると新たなメッセージが表示される。

<守矢文明と接触しました>

 魔理沙の斥候と早苗の戦士が互いに視界内に入ったため、両勢力の外交ルートが成立した。自動的に外交交渉ウィンドウが開く。
「あら。魔理沙さん、アリスさん、この世界でははじめまして」
 画面の向こうで早苗が頭を下げる。隣では諏訪子が手を振っていた。
「やっほー。どう、楽しんでる? このゲームはちょっととっつきにくいと思うけど」
「心配するな、面倒は全部アリスが引き受ける」
 アリスは手持ちの冊子で軽く魔理沙の頭を小突く。
「この本、もう少し強度があれば鈍器に使えるわね」
「言っとくが私の頭は頑丈だぞ」
 飽きもせず軽口を叩きあう二人の魔法使いを、早苗は少しうらやましそうに見守っていた。
「しかしあれだ、たまにはシミュレーションも悪くないな。ロールプレイングばかりじゃ飽きてきたし」
 意外な単語を聞いて、驚きの顔になる早苗。
「あれ。幻想郷にもあったんですか、RPGなんて」
「ああ、例の道具屋にもらったんだ、赤い箱のやつを。しばらくこいつとサシでやってたらレベルアップしすぎちまった」
 と言ってアリスを親指で指す。
「二人用のRPGなんて珍しいですね」
「まあね。本当は六、七人ぐらいがちょうどいいんだろうけど。さすがにパーティーメンバーが足りないんで、アリスの人形にもダイスを振らせてるよ」
 ますます早苗は首を傾げる。この二人の間で『ロールプレイングゲーム』の概念には大きな違いがあるのだけど、それを理解できたのは、今のやりとりをニヤニヤしながら眺めている諏訪子だけだった。
「あとで早苗も混ぜてもらいなよ。そんときは私も呼んでね」
「構わないけど……」
 いつも魔理沙相手にゲームマスターを務めているアリスがそう答えたとき、このターンが終了した。
「さすがに序盤は、やること少ないしみんなのターンエンドも早いね」
 言いながら諏訪子は戦士を北に――魔法の森文明の本拠地があるであろう方向に進める。アリスも黙って斥候をさらに南方に動かす。
「それじゃ、またあとで挨拶に顔出すよ」
 さすがにアリスはマニュアルを全部読むタイプっぽいな、と諏訪子は推測する。とはいえしょせんは初心者。可能であれば、戦士の上位ユニットを生産される前にさっさと彼女らの首都を落として、好立地を確保してしまいたい。
「ええ、できればお手柔らかに」
 この文明ごっこ、経験者はこの神様と八雲紫だけである。最初に出会ってしまったのは運が悪い。ほかにターゲットがなければ獲物にされかねない。そうアリスは懸念していた。魔法の森文明は現在、弓術を開発している途中だ。兵舎完成後は全速力で弓兵をそろえようとアリスは心に決めた。
 表面上はほがらかに微笑みあいながら、それぞれの思惑を抱えて、二人の参謀は交渉ウィンドウをクローズした。

 そしておよそ10ターン、現実時間で30分程度経過した頃。
<守矢文明がストーンヘンジを完成させました>
<紅魔館ではこれ以上ストーンヘンジを建築できません>

「え……なによこれ、咲夜!」
「一般の建築物と違って、ストーンヘンジは『世界遺産』に分類されていますね。そんな史跡が世の中に複数あるのはおかしい、ということでは」
 唇の形を歪めさせてぷりぷりと立腹している闇の帝王は、食べかけだったロールケーキをひときれ口に放り込んで咀嚼しながら、メイド長にいらだった視線を向ける。
「んむっ……やつらに先を越されてしまったから、ここ何ターンかの労力が無駄になったと。そういうこと?」
「ご明察かと。クリームついてますよ」
 威風堂々とした佇まいで、口元についた生クリームを拭き取らせるカリスマの権化たる幼女。頭を冷やすために紅茶――のような色あいの液体を口に運びながら思索を巡らす。
「ねえ咲夜。私たちが今後とるべき方策について、どう考えるかしら」
 考えてはみたものの、いいアイディアが浮かばないのでとりあえず頼れる部下に丸投げしてみた。
「このゲームにおけるお嬢様の特性を考慮するなら、中期的な方針は自明ですわ」

――紅魔文明 指導者:レミリア・スカーレット――
カリスマ志向:全都市の幸福度を増加/ユニットのレベルアップを加速
帝国志向:大将軍の誕生を加速/開拓者の生産を加速

「開拓者のすみやかな派遣によって生産拠点を確保、のちに精鋭兵力をもって隣国に攻め入るべきでしょうね。都市の幸福が増えるという効果も、戦線維持のために有効のようです」
 レミリアは眉をほんの少し動かし、飲んでいる最中のティーカップから口と指を離した。そのおよそ0.1秒後、落下しかけたカップが水滴ひとつこぼさずに消失して、咲夜の手の中に納まる。
「あの、やめていただけます? こういうお遊び」
「どうして。せいぜい私の服が汚れて、着替えが必要になる程度でしょ」
 は……と軽く咲夜が息を吐くと、その手のカップがまた消失する。ちなみに、彼女が時間を止めて洗い場まで移動中に、『答えが気に入らないならそう言えばいいじゃない』と愚痴っていたのは誰にも聞こえていない。
「今回の遊びを企画したのは八雲よね。あいつらの目には、私はひどく好戦的な妖怪だと映っているみたい。戦争向きの能力しかないんだったら、さっさと喧嘩を始めるのが得策だなんてわかってるわ。問題はどことやるか。うちの隣って……」
 ここまで言って、顔をしかめ言葉を濁すレミリア。咲夜がそのあとを続ける。
「アレとアレ、ですね」
 紅魔文明の首都、紅魔館は大きな湖の東岸に位置している。現実の配置と似ていなくもないのはただの偶然か、それとも意図的なものか。
 ほぼ真東には、第二都市『不夜城レッド』がある。海産資源には恵まれているものの、都市周辺がジャングルに覆われているせいで遅々として開拓が進んでいない。それもレミリアを苛立たせているひとつの要因であった。
 その海のむこうにも島影が見える。魔理沙の国がその先にあるのは確認できたが、詳細は未探査。
 この二都市の近隣に他国の都市はなく、まだまだ拡大は可能である。問題はその先。
 などと長考していると、前触れもなく外交ウィンドウが開いた。
「ねえレミリア。そっちの馬が余ってるでしょ。うちの鹿と交換しない?」
「お断りだ。文字通り馬鹿な話ね」
 たかが都市衛生度+1の鹿資源と、騎乗ユニット生産の前提条件である馬資源。戦略的にどちらが重要かなんて明らかだ。
「誰が上手いこと言えと……じゃあ毛皮、毛皮もつけるから」
 ちらりと咲夜のほうを見ると、彼女は軽く首を横に振る。
 レミリアはスコアランキング表示部分に指を向け、現在第三位につけているこの交渉相手の能力を確認する。

――博麗文明 指導者:博麗霊夢――
攻撃志向:白兵・火器ユニットの戦闘力を強化/訓練施設の建築を加速
宗教志向:革命時の混乱状態を回避/宗教施設の建築を加速

 志向そのものは可もなし不可もなし。特化した部分がないのが特徴といってもいい程度の能力。問題はプレイヤー自身だ。
 レミリアも咲夜も、これまでに何度か彼女と手合わせしてきた。弾幕戦、あるいは格闘戦を交わすたびに感じるのが、『本当にこれが本気か?』という疑念であった。いくら追い詰めたつもりでも、そのたびにするりとかわされて状況をひっくり返されてしまう。
 つまりはまるで実力の底が測れない女、博麗霊夢。こいつが大陸北方に陣取っている限り、いくら手駒があろうと安心などできない。
 わざわざ貿易で馬を欲しがるということは、この先領土にできそうな範囲にその資源がないということだ。好きこのんでライバルの戦力増強に手を貸すほど、レミリアは馬鹿でもお人よしでもなかった。
「貝ならあげる、無駄に三つもあるし」
「ちっ……じゃあ鹿と貝で」
 それぞれが交渉テーブルに資源アイコンを乗せて、受諾。これで両勢力の全都市の衛生度が少し増加する。すでにどちらもターンエンドのボタンを押していたけれど、まだ他のプレイヤーの終了待ちの状態だ。
「この待ち時間って妙に暇よねえ。外の世界のゲームって、もっとせわしなく機械をいじるような印象だったけど」
 前に霊夢が拾い読みした娯楽漫画では、ゲームというのは宙返りしながら前歯でボタンを押すような曲芸を要求される競技だった。
「たまにはのんびりした遊びもいいのじゃない。そういえばあなた、パートナーは? ずっと一人でやってるけど」
 霊夢は苦い顔で、くいくいと親指で背後を指し示す。だがレミリアに見える画面にその先は映らなかった。
「飲んで寝てる。『展開がたるい、将棋のほうがマシだ』って言って。正直私も、紫がしつこくこれを勧めてくる理由がわかんないのよね。自分の仕事サボってまでやることかっての、まったく」
「え。あー、そうかしら」
 たかが仮想世界といえど、一国の支配者気分にひたれるのでそれなりに楽しんでいたレミリアだった。それを霊夢に否定されて少しへこむ。なんと言い返そうか迷っていたらこのターンが終了した。
「どんな遊びだろうと、私にとって重要なのは勝利か敗北か、ただそれだけよ」
「そーなのかー。まあ頑張って」
 両腕を横に広げてそう答え、霊夢は一方的に通信を切った。ふくれっつらのレミリアの背後で咲夜は笑いを押し殺している。

 約10ターン後。
<守矢文明がピラミッドを完成させました>

 さらに数ターン後。
<守矢文明が万里の長城を完成させました>

 さらに十数ターン後。
<守矢文明が空中庭園を完成させました>

「なんという遺産祭り……明らかに勤労持ちね。でも大図書館だけはゆずれないわ」
 渋い顔でメッセージウィンドウを眺める紫。橙もそのすぐ脇で膝立ちになり、紫の操作画面を覗きこむ。
「図書館がそんなに大事なんですか」
「普通の図書館はさほどでもないけど、アレクサンドリア図書館だけは別格よ。そこで大科学者を出してアカデミーを建てるの。技術開発で圧倒すればあらゆる点で優位に立てるわ」
 なにせこちらは最強の志向を持っているのだから、と内心でほくそ笑む。

――八雲文明 指導者:八雲紫――
金融志向:全都市の経済力を増加/商業施設の建築を加速

 ちなみに彼女だけ志向が一つしかないのは、本人いわく経験者ゆえのハンデとのこと。
 なおこの件に関して洩矢諏訪子いわく、『うわ、金融かよ。しかも弱体化前の仕様でしょそれ。ほかの志向三つぐらいないと釣り合わないよ、チートだチート』とのことであった。
 得意げな紫の横で橙は申し訳なさそうな顔をしている。
「むう……難しいですね。わーっと一気に攻めてっちゃ駄目なんですか」
 紫は画面から目を離し、橙へ微笑みかけて頭をぽんぽんと叩く。
「だからあなたは将棋が弱いのよ。ねえ、藍」
「……あ……はい。橙には、向いてませんよ。というか、いま話しかけないでください」
 二人からやや離れた所で瞑想している藍が、途切れ途切れに返答する。
「はいはい、ターンエンドするから」
 さらにしばらく無言が続き、やがて藍は目を開けた。
「ふう。皆が操作していると負荷が大きいんですから、気を散らせないでもらえますか」
「そうだったの。まだ手番が終わっていないのって誰?」
 紫の何気ない質問に藍は目をそらす。
「言えませんよ、私は中立です。わかっていて聞いてますよね」
「残念。ここで口を滑らすようなら叱る口実になったのに」
 にやにやする紫に、藍は憮然とした表情になる。だが本当に怒っているわけではないと橙にはわかった。いつものじゃれあいのようなやりとりだ。
「よかった。紫様、もとに戻ってくれて」
 そっと身を寄せてくる橙の肩を、紫は軽く抱いてやる。
「そんなに私の様子、変だったかしら」
「はい……あー、はい」
 先日、久々に再開したときの紫の様子。疲れ果ててなにをするにもおっくうといった感じで、非常に婆臭かったのだが、それを口にするのははばかられる橙だった。
「ま、このあいだは醜態を見せてしまったけど……」
「本当に醜態でしたね」
「うるさい。おかげでちょっとは熱も冷めたわ。ゆっくり休んで力も戻ったことだし」
「御柱に潰されたあと、まる七日間寝てましたよね。このまま目覚めないんじゃないかと期待、じゃなくて心配しましたよ」
 妙に突っかかってくる式に対し、紫は何か文句を言おうとする。それを制して藍はさらに不満を述べた。
「だいたい私に頼らずとも、お一人で脳内でやったらいいじゃないですか」
「試してはみたんだけど、変数も乱数も全部把握できちゃうからさっぱり面白くないのよね」
 はあ……と大げさにため息をつく藍を、橙は不安げなまなざしで見る。やや沈黙が訪れたそのとき。
「ゆーかーりー。お小遣いちょうだいな」
 目の前で画面が開き、満面の笑顔で亡霊少女が両手を差し出した。
「お小遣い? ああ、『通貨』が完成したのね」
「ええ。この『外交交渉による金銭取引が可能』って、つまりお小遣いよね。ちょっといま懐が寂しくて」
 まだ両手を差し出したまま、西行寺幽々子は上目遣いになる。
「いいけど、交換材料は」
「いいから、有り金全部」
 互いに微動だにせず見つめ合い、刻々と時間だけが過ぎる。しばし見守っていた藍は、軽く唇の端を吊り上げて瞑想の体勢に戻った。
「時間です。進行しますよ」
 ターン開始の効果音がポンと鳴ると同時に、紫が口火を切った。
「そっちからもなにか出しなさいよ。恐喝なんて軍事力で勝ってからにして」
「まあ怖い。ちょっと援助を頼っただけでこのあしらいなんて」
「いいからその通貨をよこしなさい。これと、これ、あげるから」
 八雲文明の保有するいくつかの下級技術と、国庫の約半分の金銭が交渉テーブルに乗せられた。幽々子も渋々通貨を提示し、技術交換が成立した。
 紫はメイン画面をスクロールさせ、冥界文明との国境付近をズームアップする。
「というか、この時期に戦力が弓だけってまずいわよ。よそに食われるぐらいなら私が奪うからね」
「あらま。略奪宣言? 困ったわ、でも紫になら……」
 扇で口元を隠して身をよじる友人を見なかったことにして、紫は偵察に出した馬車(チャリオット)兵を移動させる。そして少し目を見開いた。
「思い切った手に出たわね。ある意味正解だけど、初心者向きの作戦じゃないわよこれ」
 言われて幽々子は首をかしげる。その態度を紫はいぶかしんだ。
「そっちの志向を最大限に生かすつもりなんでしょ。ほとんど一直線で通貨を開発したのも、そのためよね」

――冥界文明 指導者:西行寺幽々子――
創造志向:全都市の文化力産出を増加/文化施設の建築を加速
哲学志向:偉人の誕生を加速/教育施設の建築を加速

 幽々子はまだその言葉が飲み込めていない。後ろに控えている庭師の方をちらりと見るが、彼女も面食らった顔をしている。
「そっちの領土、水辺沿いが全部農場になってるけど。そこは小屋を建てて市街地に育てるのが定石よ」
「小屋ぁ? 駄目よアレ。食糧が増えないじゃないの」
「それはそうだけど……食糧生産だけ増やしてどうするの」
 幽々子は閉じた扇の先端を唇にあててつぶやく。
「ご飯がいっぱいだと、なんか幸せでしょ」
 盛大につっぷす仕草をする紫。
「それだと無駄に人口が増えてしまうじゃない。維持費ばかりがかさむわよ」
「そうなのよねえ。市民の不満度ってのがどんどん上がっちゃって。腹が立ったから、奴隷をかたっぱしから強制労働させて口減らししてるんだけど」
 それも間違ってはいない。というか上級者向けのプレイスタイルである。
「それでも金策が苦しくなってきて、私に泣きついてきたと」
「うん。これからどうしたらいいかしら。けっこう難しいわねこの遊び」
 話しこんでいるうちに持ち時間をだいぶ消費してしまった。紫は手持ちの労働者に次なる指示を与え、大陸各地に散らした偵察部隊を進軍させながら語る。
「通貨まで来たのなら、次は『法律』ね。完成したらカースト制を施行して、余った食糧で科学者か商人を雇いなさい。人口増加もそれで止まるから。ついでに宗教も創始できるし、幸福度にも余裕が出てくるでしょ」
 ぼうっとして講義を聞く幽々子の後ろでは、庭師の妖夢がしきりにメモをとっている。
「あの、紫様。幽々子様の志向がどうとか先ほどおっしゃいましたけど」
「それね。都市にずっと専門家がいれば、そのうち偉人が生まれるわ。哲学志向ならその速度が二倍になる。活用しない手はないわよ」
 またもや忙しく書きものをする妖夢を、幽々子は優しげな目で見る。
「そういえばさっき、大科学者『上白沢慧音』とかいうのが勝手に生えてきたわね」
 ちっと紫は舌打ちする。こちらが喉から手が出るほど必要としている偉人ユニットを、ルールも把握していない相方がすでに持っているのが癪だった。
「そいつには首都でアカデミーを作らせなさい。偉人は貴重品よ、序盤は特に。都市に定住させるもよし、消費して一時的に加速するもよし。初めてでそこに目をつけたのは鋭いと思ったんだけど」
「だそうよ、妖夢」
「あっ、はい」
 妖夢はメモ片手に、ややおぼつかない手つきで画面を操作しだした。紫の横で目を白黒させて今の会話を聞いていた橙がぽつりとこぼす。
「攻めちゃえば勝てそうな相手がここに……あっ、いえなんでも」
「楽に勝てるでしょうね、今の幽々子になら」
 まだ通信中だというのに不穏な相談が始まって、妖夢はぎこちなく主人のほうを見る。
「幽々子様っ、早急に軍備を」
「簡単に負けちゃうでしょうね。あの吸血鬼との国境を手薄にしてまで、紫がこっちを攻めてくる気なら」
 幽々子は悠然と構えたままだった。紫は人差し指を立て、聞こえよがしに橙に告げる。
「どっちのお嬢様も食わせ物だけど、どう考えたって危険なのはあっちでしょう。いま幽々子を攻めたらレミリアに背中を向けることになるわ」
「お台所で使う刃物なら、包丁で十分じゃない? 使うあてもない刀を抜いたって仕方がないでしょ」
 笑顔の主人にたしなめられ、妖夢は口をぱくぱくさせた後に赤面して横を向いた。

 そして同時刻。この大陸の西のかなた。
「姫様。たった今、陸路で到達できる範囲の探索が完了ました」
 報告を受けたお姫様は、軽くうなずいて話の続きをうながす。
「結論から言うと、我々は小さな大陸に押し込められています。陸上で国境を接しうる相手はいません。海路ではいくつかの文明と接触できましたが」
 不機嫌顔の姫君は、話の途中で座卓に突っ伏して目を閉じた。板面のひんやりした感触が心地よい。
「それっていい知らせ? 悪い知らせ?」
「首位を争うつもりなら不利な状況です。国土面積で負けたまま経済力で勝つのは困難でしょうし、かといって海を越えて攻めるとなれば、相当数の輸送船団と護衛船団を生産しなくてはなりません」
 話を聞いているのかいないのか、無言のままの姫に向かって教育役は説明を続ける。
「しかしながら、二番手を目指すには最高の立地です。三番手以下の全ての勢力が首位に破れるよう仕向ければいいんですから。防御だけなら鉄壁ですし」

――月人文明 指導者:蓬莱山輝夜――
組織志向:全都市の衛生度を増加/国家の維持費を削減
防衛志向:弓・火器ユニットの戦闘力を強化/防衛設備の建築を加速

「討って出られないのじゃ意味がないじゃない。こんなお遊びの世界でまで引きこもってなくちゃいけないの? なんの嫌がらせよ」
 輝夜はやっと顔を上げて、ここ千年来の側近に食ってかかった。彼女は腕組みをしてうなる。
「ふうむ……では多少危険な賭けになりますが、漁夫の利でも狙ってみましょうか」
 卓にあごを乗せている輝夜に向かって、薄く笑ってそう問いかけたところで。
「さあさ、今回のダークホース、月の頭脳八意永琳が語る秘策とはいったいいかなるものか。これは聞き逃せませんよ」
 突如としてウィンドウが開き、その向こうで射命丸文が調子よくまくし立てる。先ほどまでぐったりとだらけていた輝夜は、すっと背を伸ばして襟元を正した。
「口の達者なカラスさんに、そんなこと教えられるもんですか」
「あやや、心外ですねえ。中立なる報道、それが我々天狗ジャーナリストのモットーだというのに」
 おどけたそぶりで弁明する文を、輝夜は指さす。
「確かにあなたは中立ね。注目さえ集まれば主義主張は問わないって点で」
 永琳はにこやかな顔で片手を挙げ、二人の会話を止めに入った
「まあまあ、そう大した策でもないから。いわゆる二虎競食の計です」
 二人から特に質問の声はあがらない。とはいえ今の言葉だけで飲み込めた風でもないので、永琳は話を補足してやる。
「私たちは、二番手ではなく三番手を目指します。そして上位の二大勢力がおたがいに争い、消耗したところをまとめて頂くという寸法です」
 文はほうほうとうなずきながらペンを走らせる。
「お説は立派ですが、そう思惑通り行くものですかね」
 輝夜は眉をひそめて何か言い出そうとしたが、永琳に先を越されてしまった。
「実行してみなければなんとも。介入の時期が早すぎても、遅すぎても、兵力の無駄遣いに終わるだけですから。その一度きりの機会を逃してしまったら、もう挽回の余地はないでしょうね」
「ふうむ。勝ちを狙うには厳しい配置でも、勝負を投げる気は毛頭ないと。なかなか面白い展開になりそうです」
 そう言って書き物を始めた文の向かいで、さっき口をはさみ損ねた輝夜は不満気にしている。
「こんな状況だっていうのは、うちのイナバも初めから知っていたんでしょ。こっそり教えてくれたらいいのに」
 あえて怒った演技をしてみせる輝夜に、永琳も調子を合わせる。
「まともに会話できる状態じゃありませんって。薬漬けにして妖力を増幅しないと術が維持できないんですから」
 他者に幻覚を見せる妖術は、月の兎、鈴仙・U・イナバのもっとも得意とするところであるが、基本的に近距離単体にしか効果がない。幻想郷の各所に散らばった参加者たち全員に個別の幻を与えるとなると、ちょっと過激なドーピングが必要になってしまう。
 このあたりの事情はもちろん輝夜も知っているが、『運営が身内だから不正を働いた』などと勘ぐられないために、あえて文の前で小芝居を演じてみせた。
 ちなみに今の鈴仙の状況だが、刺激を与えると無意識に暴れだすおそれがあるので、目隠しと拘束衣を装着して倉に閉じこめられている。さらには、ときおりうわごとを口走るのが気持ち悪いと監視の兎から苦情があったので、さるぐつわも噛まされている。
 人間だったら正気を失ってしまいかねない仕打ちだが、妖怪はいろいろ頑丈なので問題ないと考える永琳だった。
 投薬される直前に、これから自分がなにをされるのか説明されて、おびえきった瞳で師を見つめる愛弟子の姿。それを思い出すだけで永琳はうっとりと恍惚の境地に浸ってしまえる。
「愛の形は様々ですねえ。そちらもあとでじっくり取材を……っと、それではまた」
 どこかはるか遠くを見つめている永琳と、面倒くさそうに自分を見る輝夜の視線がうっとおしくなってきて、文は通信画面を終了した。ついでに幻覚状態のオーバーラップも解除して、主観的には元の私室に戻ってくる。
 うんと背伸びをすると肩のあたりがごきりと鳴った。烏天狗というのは肩甲骨が四つもあるので普通の二倍肩がこりやすい。阿修羅よりはましだが。
「題名どうしよっかなー。暇を持て余した実力者たちの幻想遊技……ちと長ったらしいか。幻想文明ごっこ開催! ぐらいで」
 ここでむくりと起き上がり、彼女はナイフを取り出して鉛筆を削り始めた。手元の作業に集中しながらも思索は止まらない。
「ついに出揃った七強は、いずれも一癖二癖ある強者ばかり。このうち誰が落ち、誰がのし上がるのか。そして誰がみごと第二幻想郷の覇者となるのか。闘いはますます加速していく……いける!」
 文は両目を見開き、研ぎたての芯先を藁半紙に突き立て、猛烈な速度で執筆を開始した。

「ふわぁあはぅあ……」
 派手なあくびをひとつたてて、伊吹萃香は目を覚ました。まだ寝ぼけまなこでむくりと起きあがる。いつのまにか廊下の板の上で眠り込んでしまったらしい。
「れーむー。水、お水ー」
 大声で呼んではみたものの、ここの家主はいっこうに返事をしてくれない。いつもなら、なんやかんやと憎まれ口を叩きながらも消極的に世話を焼いてくれるのに。
 とりあえず耳を澄ましてみると、居間の方から霊夢の話し声が聞こえた。あんにゃろうめ、お客に夢中になって私の声が聞こえなかったのかと腹が立ってしまう。
 どすどすとわざと足音をさせて彼女のいる方へ向かう。そしてその姿を見つけたとき、萃香は絶句して動きを止めた。
 霊夢は会話していた。なにもないただの壁と。身振り手振りまで交えてどことなく楽しそうに。
 一体こいつの身になにがあったというのか。普通なら狐憑きかなにかを疑うところだが、あの霊夢がそこらの雑魚妖怪の術にかかるとは思えない。では空腹に耐えかねて毒キノコでも食べてしまったのか、はたまたあてもなく妖怪退治を続けるだけの人生に嫌気がさして空想の世界に旅立ってしまったのか。いずれにせよ、自分が酒をかっくらって寝てしまうまではいつもの彼女だったのに。
 ……寝る前? なにしてたっけ。ああ、そういえば。
 やっと状況を思い出し、ついでにさっきから視界の片隅に妙な物が浮かんでいたことにも気がつき、萃香は指を伸ばしてそのツマミを目盛りの右端まで移動させた。
「れーむー、のどかわいたよー。おみずー」
 あえて幼児的に駄々をこねてみる。こういう態度をとれば、霊夢に限らずわりとみんなが優しくしてくれると経験的に知っていた。かつて人間の都を荒らし回っていた頃の自分からは想像もつかない所行だけど、細かいことは気にしない。
「自分で汲んでこい。私はあんたの女房か」
「あらま、素敵な旦那様ですことねえ」
「黙らっしゃいっての」
 横から声をかけてきた萃香と、画面の向こうから茶々を入れる早苗に交互に突っ込む霊夢。大忙しである。
「まだやってたんだそれ。飽きない?」
「だいぶ面倒になってる。でもここまで来て投げ出せないわよ、罰ゲームも怖いし」
 そう聞いて早苗は眉を垂れる。
「ですよね。なにを要求されるか知れたものじゃないし。まあビリにさえなんなきゃいい話ですけど」
 この遊びの始まる前、八雲紫からひとつの提案があった。内容は単純。『勝者となった者は、敗者のうち誰か一人になんでもひとつ命令できる』という賭けだ。
 だがあまり横暴な要求が通ってしまっても困る。そこで、指名されなかった者たちのうち半数以上の反対があった場合、別の要求にしなくてはならないと定められた。
 また、指名された者は自分より下位の者にその仕事を押しつけてもいいとされた。
「ちょっとちょっと、どうしてそんな弱気なの。目標はあくまでトップ獲得よ」
 早苗の背後から突如として諏訪子が現れた。本人としては普通に部屋の戸を開けて入っただけなのだけど、幻覚世界の側からは急に出てきたように見える。
「うーん……一番になるのは難しくても、大陸ぐらいは統一しておきたいですね。魔理沙さんだけは根絶やしにしておかないと、いつ寝首を掻かれるかわかりません」
「とは言ってもなあ、アリスがやっかいなのよね。あいつ、ユニットを全部ばらばらに動かしてるのよ、毎ターン何十体も。下手に開戦したらひたすらゲリラ攻めされるよ」
 諏訪子のぼやきに霊夢が首をひねる。
「そんなの各個撃破すればいいんじゃない? 兵力は一カ所にまとめた方が強いって聞いたけど」
「単純な戦力ではそうなんだけどね。制限時間がきつくて。もたもたしてたら次のターンに進んじゃうし、かといってあせって操作ミスしたらやり直しがきかないし」
 ははあ、と霊夢は合点が行った。何体もの人形を自在に操ることができるアリスのことだ、単純な指示しか受け付けないゲームの駒など、百や二百を同時に動かしたってさほど苦にならないのだろう。
「魔理沙の方は、あんたたちがいつも一歩先を進んでるから手が出せないって悩んでたわよ。まあ適当に頑張って。どっちが勝とうとこっちには影響ないから」
 これまでに各勢力が行った探索の結果、この世界の地図がおおむね明らかになっていた。
 霊夢がいるのは、四文明のひしめき合う巨大大陸。そこから群島地域をはさんだ東方には、守矢文明と魔法の森文明に二分された中大陸がある。そして巨大大陸の西方に、月人文明の独占する小大陸という分布になっている。
「ずいぶん冷たいんですね」
「しょせんはひとごとさ、遠い国で起きてる戦争なんて。それより霊夢。これと、これ。どう?」
 言いながら諏訪子は画面を操作して、自分の保有する『ギルド』の技術と、霊夢の保有する『教育』の技術を交渉テーブルに乗せた。霊夢は無言で指を伸ばし、守矢文明側の提供リストに『火薬』を追加する。諏訪子は悲鳴を上げた。
「うひゃあ。ないよそんなの。せめて、こう」
 諏訪子の操作によって、博麗文明が現在所有する現金の全額が提供リストに加えられた。霊夢は笑顔で、交渉ウィンドウ右上のバツボタンに手を伸ばす。
「これから魔理沙に挨拶してくるわ。じゃ、また」
「うわ、ちょっと。飲むから、さっきのでいいから……ったく、足元見やがって」
 小声でぶつぶつ文句を言う諏訪子を見て、萃香は大笑いしている。
「霊夢のごうつくにゃ神様も形無しだねえ。それにしたって意外とノリノリじゃないの。興味ないとかめんどくさいとかさんざん言ってたわりに」
 霊夢の肩に肘を置き、酒臭い息でまとわりつく萃香。霊夢は肘でぐいと彼女の顔を押しのけた。その光景に、早苗はなんとなく先日のできごとを思い出す。
「おんなじ抱きつかれるのでも、こういう酔っぱらいは嫌ですねえ……」
「ああ。あっちの幼女は心根が純粋だったからねえ」
 さらに悪ノリして、ほとんど霊夢の腕にぶら下がるように抱きつく萃香。
「ねえ、そんなにこいつらと遊ぶのが楽しい? 私と飲んでるより楽しい? ねえねえ」
「ええいうっとおしい、甘ったれるな」
 霊夢が強引に腕を振り払うと、萃香はぺたんと女の子座りになってしくしくと泣きまねをはじめた。
 だんだんと痴話喧嘩じみてきたこのやりとりに、早苗はそっとまぶたを押さえて通信をオフにした。

<紅魔文明がバチカン宮殿を完成させました>

「来たっ。やったわ咲夜、ついに紅魔館にも世界遺産が」
「おめでとうございます、お嬢様」
 瀟洒に祝意を述べながらも、主人のこのチョイスには疑問を感じざるを得ない咲夜だった。
「ほうほう、このへんが狙い目でしたか。どうせ守矢に取られちゃうからってんで、みんな遺産建造には消極的だったんだよね」
 生の胡瓜をぼりぼりかじりながら、河城にとりが口をはさむ。どのプレイヤーもだいぶ操作に慣れてきたので、顔出しして世間話をして回る余裕が出てきたらしい。
「ふふん。まだ外にいた頃は、バチカンの連中と血みどろの抗争を繰り広げていたものだったけど――」
 窓の外、夕焼けに赤く染まった空を見やるレミリア。彼女はふと幼い日々のことを思い出していた。今は亡き紅魔卿・スカーレット伯爵が、おしよせる吸血鬼ハンターどもを片っ端から八つ裂きにしていた、あのほんのり甘酸っぱい記憶。
「――いまや教皇庁も我々の軍門に下った。この第二幻想郷では、我が『闇のバチカン』が紅魔信仰の牙城となる!」
 咲夜は即座に直立の姿勢をとり、惜しみない拍手を送る。そのネーミングが気に入っただけですか、などとは間違っても口に出さない。
「遺産って、外の世界に実在する建物なんだよね。その宮殿の効果はなんでしたっけ」
 なんの気なしににとりが尋ねる。
「あなた知らないの? 運営側なのに」
「そっちは藍さんの仕事ですから。私が把握してるのは生産物の種類と費用と、生産可能条件ぐらいで」
 フンと鼻で笑い、レミリアは咲夜に軽く視線を送った。やっぱり知らなかったんですか、という言葉をまたしても飲み込む咲夜。時間を止めてからマニュアルを入念にチェックして、また元の体勢に戻る。
「紅魔信仰を布教済みの国家に、政治的決議を提案できるようになります。一定の賛成票が集まれば、特定国への貿易停止・宣戦布告などが強制できるようですね」
 ふうん、とにとりはうなずき、何かを思い出す。
「あ、そういえばそれ、勝利条件のひとつじゃなかったっけ」
「そうね。『自分の勝利を確定』なんてのも提案できますけど……」
 レミリアは首をひねる。
「そんなもの、自分自身以外に誰が得するっていうの」
「可能性としては、そうですね……すでに敗北が確定しており、かつ、このままだとさらに順位が下るだろうという勢力であれば。その場合、すぐに勝者を確定してゲームを終了させた方がまだましです」
 レミリアは肩をすくめ、飲み物を一口すする。
「考慮の埒外ね。やはり全世界を制圧しての勝利が望ましいわ」
「完全に統一せずとも、陸上面積の大半を支配すればゲームセットですわ。それ以上続けたって退屈なだけでしょうから」
 二人の会話を黙って聞いていたにとりは、目をそらして寂しげな表情になる。
「戦争、戦争、また戦争……実際人間たちの歴史なんてそんなものだし、これはそういう遊びだから仕方ないんだけど――」
 なにか? と視線だけで尋ねる咲夜の目を見つめ返すにとり。
「私は別の勝利条件、宇宙勝利ってやつに浪漫を感じますね。国家の総力を挙げて、新天地に旅立つ宇宙船を打ち上げるの」
 このゲームで扱われる雑多なテクノロジーは、大きく三つに分類できる。内政を強化する技術、軍事力を強化する技術、そして移民ロケット建造のための技術。
「宇宙の船ねえ。こないだ月に行ったときは、すでに原住民で溢れかえっていたけど」
「月なんて、たかが惑星天の一番内側です」
 にとりは上を向き、すっと息を吸い込んだ。
「はるか恒星天のかなた、光の速さだって何年、何万年もかかるような先。外の人たちだってただ見上げて眺めてるしかないような領域に、いつか私が一番乗りしてやるの。今回はその予行演習なんです、私にとっちゃ」
 拳を握りしめ鼻息を荒らげる河童に、レミリアはあきれ顔になる。
「そ。無事に到着できたなら、北斗星君にでもよろしく言っておいて。進路を間違えて死兆星に突っ込まないように祈っておくわ」
 冗談で言ってるんじゃないってば、などとつぶやいて不機嫌になってしまったにとりだが、やがてはっと顔を上げる。
「おっと、お客さんだ。ではまた、気軽に呼んでください」
 二人に軽く手を振ってから、にとりは忙しく画面を操作して別の参加者に通信先を切り替えた。

「何度もごめんなさい。マニュアルだけじゃはっきりしない部分があって、それで確認させてほしいのだけど」
 にとりがうなずくと、やや早口でアリスは質問を続けた。
「諜報任務を実行すると、された相手にも、スパイ活動が行われたっていうのがわかっちゃうのよね。成功失敗に関わりなく」
「うん。誰の放った忍びかまではわからないことが多いはずだけど。詳しい確率は知らないよ」
「どうせバレバレだからそれはいいや。で、成功すれば続けて任務が行えると」
 にとりは首を横に振る。
「その場合、いったん自国首都に帰還するよ。単にスパイユニットが消えないってだけ。じゃないとスパイ一体で延々と活動できちゃうし」
 意外な回答にアリスは顔をしかめる。
「この記載ってそういう意味だったの。じゃあ……」
「おいアリス。いいからこのボタン、押しちまおうぜ」
 人差し指をやや震えさせている魔理沙の目の前の画面には、『諜報任務:技術の奪取』という文字が表示されている。
「待ちなさいって。じゃあここ、『任務に成功したら諜報ポイントが消費される』ってあるけど、失敗の場合は消費されないって解釈でいいの?」
「うん、合ってる。悪いね、この説明書が発行されてから、さらに細かくルールが変わってるみたいなんで……」
「もういいや、限界だ、押すね」
「ちょっと!」
 アリスの制止も聞かず、魔理沙は指をほんの少し前に突き出した。すぐに任務選択ウィンドウが閉じて、ポップアップが表示される。
<守矢文明から銀行制度を奪取しました>
「っしゃあ!」
「っしゃあ、じゃないでしょこの馬鹿。今のでむこうにもばれた。事実上の宣戦布告よ。そうそう乱発できる手じゃないわよこれ」
 思わずガッツポーズを決める魔理沙に、アリスは人差し指を何度も縦に振って詰め寄る。
「なんだよ、いいだろ。これ渡せば霊夢もうちと取引してくれるはずだーって、言い出したのはおまえじゃないか」
 胸を張って開き直る魔理沙。だがその瞳の奥に後悔の念が浮かんでいるのが見て取れた。
「……っとにもう。ありがと、にとり」
「いいよお礼なんて。それにしても、ふふっ、本当に仲いいね君たち」
 思わず見つめ合う二人。魔理沙はきょとんとした顔で、アリスは少し頬を赤らめて。
「そうか? 別に私ら、そんなに仲良くないよなあ」
 アリスは絶句し、すぐ顔を背ける。
「そうね。犬猿の仲ってやつよね」
「ええっ。そこまで仲悪くもないだろ」
 これを見て肩を震わせていたにとりを、アリスは軽くにらみつける。にとりはまだニヤニヤとしながら手を振って通信を閉じた。
 アリスは何度か咳払いする。
「ともかく……ゲームの話に戻るわよ。こっちは兵の質で負けてるわ、いま開戦したらまずい。むこうもさほど軍事に偏ってはいないんで、すぐには動かないと思うけど」
 言いながらゲーム画面に向き合った彼女は、流れるような動作で駒を動かしていく。労働者たちに道路の敷設・森林伐採・鉱山開拓を指示。各都市の人員配置状況と生産予定リストに漏れがないかを順繰りに確認。後方都市で生産された防衛ユニットを前線に配備。守矢領内に潜入させたスパイをさらに奥地へ移動。
 それを眺めているだけで、魔理沙はいつまでも飽きがこないのだった。
「ドンパチ始めるのはテクノロジーで追いついてからだ、って言いたいんだろ。じゃあ霊夢呼ぶぞ。この『銀行』と『哲学』ってのセットにして、『教育』買えばいいんだよな」
 魔理沙はスコアボード上の『博麗霊夢』の文字をクリックする。だが表示されたのは、<他プレイヤーと交渉中です>のメッセージだった。
「ありゃ、話し中かよ」
「まずいわね、一足先に売れちゃわないといいけど。哲学がまだなのって、霊夢とレミリアだけだし」
「どうすんだ、そんときは」
 アリスは忙しく手を動かしながら、やや首をひねる。
「教育は自力研究かな……盗んだ方が早いか。どっちにしろ、うちがさらに出遅れてしまうわね」
 ちっと魔理沙は舌打ちする。
「意外と使えないよな、スパイってやつ。おまえの名前で登録しとくんだった」
「そうでもないわ、初期配置の運が悪かっただけ」
 魔理沙は腕組みして首をかしげる。
「守矢と隣り合ったのが運の尽きってことか?」
「というか、ほかにターゲットがいないのが問題ね。同じ大陸じゃないと工作の効率が落ちるから。だけどあいつら、遺産の効果で大スパイを一人出してたのよ。諜報力で追い付くのにひどく苦労したわ」
「……目の上のたんこぶってのはこのことだな、早苗のやつめ。早いとこ潰しとかないと後がないぜ」
 きっとあっちもそう思ってるでしょ、とアリスが言おうとしたとき、通信待ち状態が解除されて魔理沙と霊夢の交渉ウィンドウが開いた。

「ここまでは思惑通りの進行ね、おおむね」
 先ほどまで霊夢と話していた紫は、通信を終えてからそうつぶやく。
「いいんですか? またタダで技術あげちゃって」
 いまは紫の膝の上にいる橙が、上体を大きくひねって後ろをふりむき見上げる。紫が指先でその頬を何度かつつくと、橙はくすぐったそうな顔をしてまた前を向いた。思わずぎゅっと抱きしめてしまう。
「いいのよ、減るもんじゃなし」
 背後から、いらだちと嫉妬の混じった視線が向けられてくる気配を感じ取った紫だが、とりあえず無視しておいた。たまには自分がこの子を猫可愛がったっていいじゃないか。最近妙に反抗的な式に対する懲罰なのだと内心で言い訳する。
「単純な数の問題よ。二対二なら互角だけど、三対一なら圧勝でしょう」
 八雲文明から見て、西方に位置する幽々子はすでに手懐けた。というか元から彼女はこの遊びにさほど乗り気ではなかったのだ。紫がしつこく頼んだため、ほかの皆も出るのなら自分も……というスタンスで参加している。常に紫と共闘していれば最下位を避けるのは容易だろうし、それが彼女の望みでもあるはず。
 問題は北方のレミリア。予想通りと言うべきか、彼女の国家運営は軍備増強に傾倒している。紅魔文明の南方前線都市には、おびただしい量の斧兵とカタパルトが集結していた。こんな奴と初期配置で隣接してしまったのは、まことに運が悪いと言わざるを得ない。
 それでも紅魔軍が攻めてこないのは、第一にこちらの防備ユニットの質が高いためだ。防壁都市に籠城した長弓兵は、あらゆる非火薬ユニットに圧勝する。
 そして第二に、さらに北方に陣取っている霊夢の存在がある。もしもいま、レミリアが全軍を挙げて八雲攻めを行ったなら、いくら防御効率が高くてもこれほどの物量差はくつがえせない。延々と消耗戦を続けた後に、都市の二つ三つは落とされてしまうだろう。
 そして同時に霊夢もその隙を見逃さないはずだ。なにせ博麗文明は立地が悪い。首都近郊の数都市以外はみな、ツンドラ沿いか、砂漠沿いか、極端な海沿いのクズ都市ばかりだ。ジャングルさえ伐採してしまえば好立地となる赤道近辺になんとしても南下したい所だろう。
 であれば、八雲が博麗を支援しない理由はない。やはり経験の差というのは大きく、技術開発のトップはほぼ常に八雲、次を守矢が追っている。そのおこぼれを霊夢に無償供与しやっても、自分になんらデメリットはない。
 以前与えた『教育』に次いで、今度は『活版印刷』をあげたから、これで研究力はだいぶ向上するはずだ。
 すべては思惑通り、なんの問題もない。今の勢力図に大きな変化がなければ、やがて宇宙脱出を決めるのは間違いなく自分なのだ。さて、哀れな敗者にはどんな言いつけをしてやろうか……
 などという思索をほぼ一瞬のうちに巡らせ、紫はにんまりと笑みを浮かべた。

――助かった。恩義には感じておくけど、なんのお返しもできないわよ――
――かまいません。この段階でトップが確定するのは好ましくない、それだけですから――

 胸甲騎兵。
 あまり聞き慣れない言葉であるが、ようは『火縄銃で武装した騎士』である。旧来の騎士の、あらゆる攻撃から身を守るという発想をあきらめて、上半身のみを守る鎧――胸甲を装備しているため、この名で呼ばれる。
 その胸甲騎兵隊、三十ユニット近くが、紅魔領東端の群島都市『プリンセスウンディネ』に集結していた。

「おーい、諏訪子……おい諏訪子」
 間近で声をかけられても諏訪子はまるで反応しなかった。夢遊病者のように、目の前につきだした人差し指をあちらこちらへと動かしている。隣で早苗が眠たそうな目をしていた。こちらにも今の呼びかけは聞こえていないようだ。
 神奈子はやや強めに諏訪子の肩を叩いた。びくりとして彼女はふりむき、神奈子には見えないなにかを指で動かす。すぐに目の焦点が合った。
「ん、なに?」
 神奈子は腰に手を当て、前屈みの姿勢になる。
「あんたたち、はたから見てるとものすごく気持ち悪いわよ……まあいいや、ごはん」
「今日はパス」
 神奈子の頬がひきつる。
「そう言うと思ったから、あんたのは用意してないわ。お風呂なら沸いてるよ」
「それもパス」
 不機嫌顔で背を向けた相方の肩を、神奈子がつかむ。
「あのねえ、また同じこと言わせる気? ゲームは一日一時間、守んなかったら電源隠すわよ」
「ええっ。今日は特別って言ったじゃん。というか色々ツッコみ所が」
 半分寝ぼけていた早苗も、諏訪子が誰かと会話していることに気がついた。それが画面の向こうではなく、背後にいる人物に対してだと知ってあわてて振り向く。
「ふがっ、神奈子しゃま……うー、よだれ垂れた」
 勝手にあたふたしている祝は放っておいて、諏訪子はヘの字口になる。
「お風呂なら終わったら入るから」
「駄目。あんたはすぐそうやってだらける」
「だってさ、ゲーム始めた場所から離れたら幻覚が止まっちゃうのよ。プレイヤーの座標が特定できなくなるから、とかで」
 またそれか、と神奈子は内心で愚痴る。外の世界にいたころだって、『セーブしたら行くから』だの『代わりのギルメンが来たら寝るから』だのとわけのわからぬことばかり言って、結局は一日中ゲームにのめりこんでいたのだった。
「怒るわよ。なんのための二人組なの」
 でもなあ、早苗じゃなあ……と諏訪子は言いかけて、さすがに本人の前なので言いよどんだ。一方、その視線だけでおおむね察したのか、早苗は両手を膝に当ててまっすぐ諏訪子を見る。
「大丈夫です。任せてください」
「あー、でもね」
 早苗は一度目を伏せ、すぐに上げる。
「こんなことでまた喧嘩しないでください。諏訪子様だって女の子なんですよ。身だしなみぐらいきちんとしていただかないと、私……恥ずかしいです」
 二人がかりで説得され、ぷいと顔を背けて諏訪子は立ち上がった。
「十分。十分で戻るからね」
「せめて二十分ぐらいつかってきなさいな」
 きまり悪そうな顔で早苗の部屋を退去しようとした諏訪子だが、寸前で立ち止まり、振り向いた。
「早苗、ユニットは動かさなくていいから。今の生産予定が終わった都市は、あと生産力を資金に回しといて。十五分したらまた来るよ」

 およそ五分後。
 紅魔領『プリンセスウンディネ』に停泊中だった月人文明のガレオン船団が、一斉に所属を変更、紅魔文明に寄贈された。
 同ターン、全ての胸甲騎兵ユニットがこの輸送船団に乗り込む。さらに、紅魔文明所属の大芸術家ユニット『ミスティア・ローレライ』が消費され、同都市の文化力が一気に増大した。
 さらに三分後、次ターン。
 先の文化力増大により、紅魔領東端の文化圏が大幅に拡大。その結果、守矢領西端の一部が紅魔側の領土となった。
 同ターン、ガレオン船団が接岸、胸甲騎兵隊が上陸。
 諏訪子が在席中であったなら、きっとこの異変には気がついていたことだろう。北からの侵攻に備えて前線に回す予定だった防御ユニットを、ほぼノーガードの沿岸都市に回すこともこの時点なら可能だった。
 しかしながら、早苗に同じ対応を期待するのは酷というもの。
 このターンの終了と同時に、彼女の目の前で外交ウィンドウが開く。
「やあ神様……って、あなた一人?」
「諏訪子様ならご入浴中ですけど。なんの用です?」
 突然押しかけてきたこの吸血鬼が、なぜかひどく楽しそうにニヤついているのが気になる早苗だった。
「あ、技術とか資源の交換ですね。まいったなあ、私一人じゃ決めらんないし」
「ククッ……安心なさい、今回は交渉にきたのではないわ。こちらの用件は、通告よ」
 レミリアがかっと目を見開く。その瞳は獰猛な紅に染まっていた。
「東風谷早苗。貴公の首は柱に吊されるのがお似合いだ」
 早苗に指を突きつけるようにして、レミリアは『開戦』のボタンを押した。全プレイヤーの耳に勇ましいファンファーレが鳴り響く。

<紅魔文明が守矢文明に宣戦布告しました>

「え、え?」
 一方的に通信を切られて、早苗はまだ事態を把握していない。たとえ把握できていても、もはや手の打ちようなどないのだが。
「吶喊!」
 べつに音声入力システムが備わっているわけでもなく、格好つけて叫ばなくても自軍ユニットを敵都市上に移動させればそれで事足りる。
 守矢文明の後方都市には、治安維持のために数合わせの弓兵が数体置かれているだけだった。都市自体、建設されてからさほど間もないため防御力が低い。
 三体目の騎兵が突撃を仕掛けたところで、第一の目標となった港湾都市はあっさり陥落した。続けて第二目標のやや内陸の都市も、攻撃側にわずかな犠牲が出ただけで守備兵は全滅した。
 後詰めの兵たちがそれぞれの街に入城して、ガレオン船団は増援を運ぶために一時撤退。ここで紅魔文明はほぼターンエンドとなる。
「う、そ……なんで。諏訪子様、諏訪子様!」
 思わず立ち上がった時、またもやウィンドウが開いた。目の前にいたのは白黒のいでたちでそろえた魔法使い。なぜか彼女は帽子をまぶかにかぶっており、表情はよく見えない。
「大変なことになっちまったな、早苗」
 極力感情を押し殺した声で魔理沙が言う。だがその声が、そして肩がかすかに震えていた。彼女の後ろにいるもう一人の魔法使いは、そんなパートナーをやや呆れ顔で眺めている。
「早く言っちゃいなさいよ」
「焦るなって。まだお客さんがそろってないじゃないか」
 魔理沙は帽子をとった。そのとたん、早苗はぞっとするような違和感を感じ取った。
 霧雨魔理沙は、早苗にとってわりと大切な友人だ。かつて何度か立場の違いから衝突したこともあったけれど、それだって後腐れのあるいさかいではなかった。今となっては気兼ねなく思い出話として語ることができる。もちろん今回のゲームだって。
 大げさに言うならば、魔理沙の一途な無鉄砲さを早苗は愛し、尊敬していた。
 それなのにどうして、彼女は今、さっきのレミリアのようないやらしい薄笑いを浮かべているのだろう。
「どうした早苗っ」
 あわてて諏訪子が駆け込んできた。頭と体に、それぞれバスタオルを巻き付けただけの姿で。拭き取りきれなかった水滴が首筋を伝っている。
「おっと、水も滴るいい女……ってほどでもないな、おまえじゃ」
「いいからさっさとやりなさい」
 アリスに急かされて、魔理沙はぴんと人差し指を立てて開戦のボタンを押す。
「貴公らの首は、柱に吊されるのがお似合いだぜ!」

<魔法の森文明が守矢文明に宣戦布告しました>

「ぱぱぱぱうあー、どどんっ。この音楽、耳に残るなあ」
 魔理沙の独り言は無視してアリスの指が踊る。いつのまにか国境ぎりぎりに集結していた兵たちが、一斉に散開して前進を開始する。
「あ、あ……ごめんなさい。諏訪子様、ごめんなさい」
 ここで早苗を責めるなどという身勝手な真似はできない。
「問題ないよ、こっちの備えは万全、のはず……」
 魔法の森文明の主力は歩行ユニットだ。城攻めを受けるまでにあと3ターンの猶予がある。しかしながら、攻撃部隊の編成に諏訪子は異常を感じ取った。
 敵の兵種が妙に高級だ。最後にスパイを送り込んだターンには、奴らの主力はいまだ斧兵と弓兵だったはず。ところが今は、上位ユニットの『槌鉾(メイス)兵』と『弩(クロスボウ)兵』にアップグレードしている。
 それだけの資金を一気に稼ぐ方法など……急いで過去のメッセージログをあさってみると、このような表記があった。
<魔法の森文明で、大商人『森近霖之助』が誕生しました>
 こいつか。15ターンほど前に生まれていたらしい。おそらくついさっき、遠隔の文明に送り込んだ大商人を消費して大金を稼いだのだろう。
 だとしても。
「軽く蹴散らしてやる、ってわけにはいかなくなったね。でもまだ大丈夫」
 こちらの損害が大きくなってしまうけれど、籠城だけではなく騎士を中心とした迎撃部隊で打って出るべきだろう。敵に損害を与えて攻撃の手を緩ませつつ、時間を稼いで後方から増援を呼び寄せるのだ。
 そう思って画面をスクロールさせた諏訪子は、ありえないものを目撃してしまった。
「え……なにこれ」
 街がふたつ、すでに落ちていた。いつの間にかレミリアの領土になっている。あわててその場所に指を置いて、敵の編成を確認する。
「胸甲ラッシュ? そんなの聞いたことないよ」
 胸甲騎兵は実に中途半端な性能のユニットだ。もう少し時代が下ればより強力な銃器が登場する。ラッシュをかけるのは当然その時になってからだ。今はまだまだ準備期間……という経験者ゆえの思いこみによって諏訪子は風呂場に向かい、結果この惨劇が起きた。
 だがしかし、紅魔文明の技術で騎乗ユニットといえば騎士が関の山だったはず。胸甲騎兵を出すには、あと三つほど新技術を入手しなくてはいけなかったはずなのに。
「いつのまにやられたの」
「ついさっき、あっというまに」
 まさか。海越えの宣戦なら上陸だけで1ターンを消費してしまう。沿岸都市だけならともかく、内陸都市まで開戦と同時に占領できるはずがない。そう早苗に問い正そうとしたとき、紅魔文明の領土が妙に広がっていることに気がついた。
「文化爆弾……その手があったか」
 大芸術家による文化力増大効果は、戦略上の重要拠点をも平和的に奪い取ってしまう。食らう側にとっては、時として核攻撃にも匹敵する脅威だ。ゆえについた異名が文化爆弾。
 とりあえず、奪われた港町近海に偵察用のキャラベル船を出してみた。そこで諏訪子はまたしても驚愕することになる。
「ガレオン? なによもう、ありえないって」
 すぐさまテクノロジー情報画面を開く。『天文学』を知らなければガレオン船は造れない。だがやはり、紅魔文明はこの技術を開発していなかった。
 生産すら不可能なユニットを、なぜこれほどの数保有しているのか。答えはひとつ、別の文明からもらったのだ。
 現時点で天文学を開発済みなのは、八雲文明と月人文明。諏訪子はすぐさま交渉ウィンドウを開いた。まずは八雲紫。

「はあい。大変なことになってしまったわね」
 開口一番、紫は微笑んで挨拶を述べた。
「あなたも一枚噛んでるの? この戦」
 そう問われた紫は、自分の口元を扇で隠した。そういう仕草ひとつとっても胡散臭いんだよなこいつと、つい勘ぐってしまう。
「まさか。私にも予想外です。これ以上戦争屋に拡大されたら始末に困るわ」
「だったらいますぐ、レミリアに宣戦布告……」
 諏訪子が言いかけたところで、紫は扇をびしりと突きつける。
「もうすぐ『共通規格』が完成するわ。各都市に劇場も建造中。言っている意味がおわかりかしら」
「……グローブライフルラッシュか。王道だね」
 『共通規格』の技術自体は、前提条件が重いわりにさほどメリットがあるものではない。だが次世代の兵種、ライフル兵を生み出す『ライフリング』の前提条件となっている。
 じつのところ、火縄(マスケット)銃はさほど強力な武器ではない。非火薬ユニットでも、そこそこ数で勝っていれば十分に対抗できる。ライフル銃の登場によって初めて、旧来の兵種が無用の長物となるのだ。
 また、一定数の劇場を設置することで建設可能となる大劇場、グローブ座は、建設した都市からの無尽蔵な徴兵を可能にする。
 娯楽と愛国心という麻薬で洗脳された群衆による、国家総力戦によってこの時代の軍拡は一気に加速するのだ。
「話が早くて助かります。こちらはまだ準備中。おたくも、敵さんに余分な経験値を与えてしまわないよう気をつけてくださいな」
 諏訪子は画面を閉じ、ちっと舌打ちしてから輝夜へのチャンネルを開こうとした。しかし表示されたのは<交渉を拒否しています>のポップアップのみ。
「月の連中め、なに考えてる」
 レミリアにガレオンを贈ったのは月人たちに違いない。胸甲騎兵の前提技術を教えたのも彼女らだろう。だが交渉拒否までするとは、よほど自分たちの思惑を知られたくないのだろうか。
 そろそろこのターンの制限時間が気になってきた。もたもたしている暇はない。次は霊夢。
 敵の敵は味方というではないか。強引な大陸越えをしてきた以上、紅魔本土の防衛は手薄になっているはずだ。
「あ、霊夢。技術でも資源でも出せる分だけあげる。だからあいつを攻めてちょうだい」
 そうまくしたてる諏訪子に、霊夢は複雑な顔をする。
「あ、うん。そういう腹だったのか、レミリアめ……」
 返答のはっきりしない霊夢に、諏訪子がさらに詰め寄る。
「なに、なんかまずい事情でもあるの」
「事情というか。ついさっきね、やっとあいつが馬をくれるっていうから、代わりに和平条約ってのを結んじゃって」
「はあっ?」
 一度結んだ条約は、10ターンの間は破棄できない。やられた、と歯ぎしりする諏訪子。
「そっか。ごめん、無理言って」
 ゲームシステム上できないものを要求しても仕方がない。諏訪子はまたひとつ舌打ちしてマップ画面に目を戻した。

 ことここに至っては、明らかに文明存亡の危機である。
 北方、対魔法の森戦線の対処は次のターンからで問題ない。問題はすでに二都市も奪われてしまった西方、対紅魔戦線。
 騎兵ユニットの天敵といえば槍兵だが、ノーマルの槍兵ではさすがに歯が立たない。上位ユニットの長槍兵はまだ少数しか生産しておらず、かついずれも北方最前線に配備されているので、今から移動させていては間に合わない。それに、あちらから兵力を抜くのは危険すぎる。
「早苗、革命よ。社会制度を変更するの」
 全部自分で操作した方が早いのだけど、さっきからずっとうなだれている早苗にもなにか仕事をさせた方が良さそうだ。
「社会制度はこの王冠のマーク……うん。じゃあ『カースト制』から『奴隷制』に、それと『宗教の組織化』から『神権政治』に」
 言いながら諏訪子は、各都市の生産予定リストを次々とキャンセルし、長槍兵の生産に切り替えていく。
 おぼつかない手つきで、早苗も先ほどの指示通りにした。その直後にターンが経過する。同時に諏訪子は、各都市で容赦なく奴隷を徴発して長槍兵を完成させた。
「なんだか、人口がガンガン減ってますけど」
「いいのいいの。お国が大変なこのご時世にだねえ、国民の人権なんぞ知ったことじゃないよチミィ」
 人口あたりの生産力が低い前近代社会において、奴隷制は非常に優秀な社会制度である。カースト制を採用していた頃は、専門職カーストを維持するために過剰な都市人口が必要となっていたけれど、戦争が始まってしまったらそんな無駄飯食らいを置いておく余裕はない。さっさと戦場に行ってもらうに限る。
「んー、こんな国には住みたくありませんねえ」
「なんだ、冗談言う余裕出てきたじゃない」
「……いえ、わりと本気で」

 その後2ターンの間、西方戦線は激しい攻撃にさらされた。
 槍は馬に強いとはいえ、今回の相手は鉄砲。騎士の突撃なら確実に止められる長槍兵だが、紅魔の胸甲騎兵に対しては、野戦における勝率で負けている。その上、数でも負けているのだからいかんともしがたい。頼みの綱は都市防御ボーナスのみ。
 急募した長槍兵はよく防戦したものの、攻撃部隊の半数以上を打ち倒したところで全滅してしまった。
 さすがにこれ以上は押してこれないだろうけど、それにしても三都市は痛すぎる。守りやすかったはずの西端都市にもっと兵を置いておけば、戦場はそこになっていただろうに……と、今更ながらの後悔をしてしまう。
 そして北方からも、最前線を目指して雲霞のごとく兵が押し寄せてきた。むこうがもっと固まってくれていたら迎撃目標も絞れるのだが。
 アリスの指揮するスタック――ひとつのマスに存在するユニットの編成――は、絶妙にお互いの弱点をカバーしあっていた。兵種同士の相性など考えず適当に進軍しているのなら、各個撃破もたやすい。だがこれでは、手持ちのどのユニットを突入させようとも必ず相性の悪いユニットで迎撃されてしまう。それを承知で押しつぶすには、こちらの物量は貧弱すぎる。
 などと逡巡しているうちに、守矢文明の最北端都市『第五分社』に、魔法の森軍が押し寄せてきた。

<第五分社にて都市反乱が起きました>

「反乱? なんです、これ」
「決まってる、スパイの仕業よ。わかってはいたけど、諜報力で追い越されちゃったからねえ」
 反乱の発生した都市では、一時的に都市防御力が失われる。効果がたったの1ターンとはいえ、砲撃で城壁を削るよりはるかに早い。
 同時に敵カタパルト隊が突入してくる。都市を守る長弓兵の反撃によって次々と壊滅していくが、むこうも初めから捨て駒のつもりで突入させているはずだ。
 投石・砲撃兵器は複数の敵に巻き添えダメージを与える特性を持つ。この効果によって守備側の各ユニットは大きなダメージを受けてしまった。
 その刹那、諏訪子の指が動く。都市上の全ユニットを選択し、1マス南へ移動。
 ほとんど入れ替わるようにして攻撃部隊が前進し、無抵抗の都市は制圧されてしまった。
 早苗は驚きの顔に、諏訪子は苦い顔になる。
「撤退撤退。やり合っても結果は見えてるから。むこうのカタパは潰したから御の字よ」
 西の戦線に目を移す。紅魔文明はいったん攻撃の手を弱め、代わりに小部隊のスタックを散開させて前進してきた。
 ターン経過。同時にさっきの胸甲騎兵が『略奪』を実行した。長い時間かけて育った町が、村にランクダウンする。そのかわり襲撃側にはいくばくかの金銭が入る。
「くそ、うぜえ!」
「まあ乱暴な言葉遣い」
 ゲームについていけない早苗は、まだ乾いていない諏訪子の髪を丁寧に拭いている。ちなみにこの神様はいまだにバスタオル一丁である。
「あいつら、もう奇襲が通じないからって小遣い稼ぎを始めたわ。これだから騎兵相手は嫌なのよ」
 こういった地味に嫌らしい策は、あのお嬢様の好むところではないだろう。きっと咲夜の操作に違いない。
 まだ長槍兵の生産数は十体にも満たない。できればあまり損耗したくないが、放置するわけにもいかないので特攻させる。もともと勝率はあまり芳しくないので、適度に叩いて引き上げた。
 そのまま海上に目を向けてみる、さっきのガレオン船団はまだ到着していない。なので、奪われた港湾都市の入り口を今あるだけの旧式艦で封鎖しておいた。輸送艦が沈めば乗り込んだユニットも海の藻屑となる。一隻でもガレオンが落とせれば大戦果だ。
 本当はフリゲート艦を出して完全に海上封鎖をかけたいところだが、今から天文学を開発している余裕はない。敵増援の阻止は断念するほかない
 あとは北方戦線の敗残ユニットを最寄りの都市に収容して、ターンエンド。
「なんだかどちらも劣勢ですが」
 心配そうにささやく早苗の横で、諏訪子は静かにほくそ笑む。
「あと少し。あと少しで決戦兵器が出せるから。その時こそ反撃に出るよ」

 そしてしばらく、紅魔・守矢間ではにらみ合いが、魔法の森・守矢間では城攻めが続いた。

<魔法の森文明で、大将軍『神綺』が誕生しました>

「おっと、来たぜ来たぜ、二人目だ」
「なんなの、その人選は……」
 身内をネタにされて、ややアリスが不機嫌になる。
 偉人ユニットのユニット名を、プレイヤーたちの知り合いの名前に差し替えるというのは藍の発案だろうか。だったらあとで文句を言ってやるとアリスは心に決めた。
「で、どうするこれ。また定住させるのか」
「これ呼ばわりはやめて。ええとね、今度は『既存ユニットに経験値を与える』ってのをやってみましょう」
 大将軍。戦争を行うことによって獲得できる特殊な偉人ユニット。使い方はほかの偉人と一緒で、都市に定住させて都市機能を向上させるか、ユニットを消費して特殊効果を発動させることができる。
 相変わらず鮮やかな指さばきで兵を指揮するアリスの脇で、魔理沙は首をひねった。
「ん、それは効率が悪いんだろ。あとあとのことを考えたら、これから作るユニットを強くした方がいいって言わなかったか」
「気がつかない? 今のターン、守備隊の回復が異常に速かった。向こうの将軍ユニットが特殊な回復スキルを持ってるのよ」
 そう告げられて、魔理沙は現在攻略中の都市に指を向けてみた。確かに、先ほど決死の攻撃で与えたダメージがかなり回復してしまっている。
「『犬走椛』、こいつか。斥候のくせに生意気な……んにゅ?」
 敵のユニット一覧を見ながら、魔理沙が妙な声を上げる。
「なんだこの、えーと……テキダン? 擲弾兵って」
 先ほどの戦いで、守備側には新種のユニットが加わっていた。いまごろ気づいたの? とは口に出さないアリス。
「それは爆弾を投げて攻撃する兵士よ」
「ああ、おまえのことか」
「馬鹿言ってないで。首都で待機中のチャリオットがいたでしょ。それに神綺様を乗せてちょうだい」
 本当はさっさと自分で操作してしまいたいアリスだったが、こういうレアなイベントは自分でさせてもらえないと魔理沙が怒るのだ。
「りょーかい。カボチャの馬車に乗った魔女のお婆さん、ってか」
「……本気でぶつわよ」
「すまん」
 あごを震わせながらゆっくり振り向いたアリスに、魔理沙は即答で謝った。これ以上この件でいじったら、もはやゲームどころではなくなりそうだ。
「しかしなんでまたこんな旧式を? あ、いや、馬車のほう。紀元前に作ったやつだろこれ」
 一息ついてアリスは画面に目を戻す。
「回復が専門なら、戦力の低い方がかえって標的にされずにすむわ」
 そんなもんかねえとぼやきつつ、魔理沙はチャリオット兵と神綺を合流させた。
「魔神合体! おお、経験値どっさり。全部回復魔法に突っ込めばいいんだな」
 魔法なんてないから、と指摘する気力も失せてきたアリス。兵士の移動と各都市管理の業務に戻る。
 気がつくと魔理沙がすぐ横にいた。アリスの肩に頬が触れてしまいそうな距離で、じっと彼女の操作する画面を見つめている。
「んっ……ねえ、なによ」
 さすがにアリスが指を止めると、魔理沙は拡大された都市管理画面を指さす。
「どの町でも、妙に不満度が増えてないか」
 そのぐらい自分で確認すればいいだろうに、なぜこう密着してくるのか。まあ別に嫌ではないからいいけど。
「だからマニュアルぐらい読みなさいって。攻め戦で損害が大きいと、市民は不満になるわ」
「奴隷にしても不満、兵士にしても不満と来たもんだ。どんだけ贅沢なんだ、この市民様どもは」
「その発想おかしいから。でも全都市に刑務所を建てておいたから、少しはましになってるはずだけど」
 魔理沙は横目でちらりと『刑務所』の効果を確認した。『厭戦による不満:-25%』、これか。
「ムショで不満が減るってのも妙な話だな。逆に増えないか?」
「不満を述べる市民は、かたっぱしから牢屋送りなんでしょ」
「……えげつねえ。この国にだけは住みたかないぞ」
 自分で政権をしいておいて何言ってるんだか、と思ったアリスだが、今の意見については全面的に賛成だったのでこれ以上は触れない。
 まあしょせんはゲームだ。よくやってるロールプレイングだって、魔理沙と人形たちのパーティーが今までに何百匹のゴブリン類を惨殺してきたことか。などと考えているうちにターンエンド。
「ともかく、このターンでの制圧は無理ね。どうせなら一気に攻めて停戦に持ち込みたいところだけど、相変わらず技術で負けてるし」
「じゃあうちも恵んでもらえばいいだろ。全部タダで」

<守矢文明で大将軍『八坂神奈子』が誕生しました>

「あらま、神奈子様」
「来た、神奈子来た。タイミングばっちり」
 こいつらなんの話をしてるんだ? と、諏訪子の着替えを持ってきた神奈子が冷や汗を流す。例によってプレイ中の二人は気がついていない。
「すぐに出陣願いましょう、神奈子様さえいれば!」
「いくら強力でも、個人技で戦局は変わらないよ。ベホマ係は二人もいらないし」
 では? との早苗の問いかけに、諏訪子は一度指を高く掲げる。
「私のターン! 八坂神奈子を消費して、第一分社に士官学校を設立。さらにカノン砲を生産開始!」
 諏訪子の瞳がこれまでになく輝く。
「ついにキャノンの時代が来たよ。よし、こいつらはガンキャノコ部隊と名付けよう」
 神奈子には、わからない。数千年の時を共に過ごしてきたこの相方が、いまなぜこれほど熱狂しているのかまるでわからない。ただ漠然と、もしかして私は馬鹿にされているのか? という感想を抱いた。
 とりあえず背後から軽く蹴り倒してみる。無抵抗に前のめりになったので、巻き付けられていたバスタオルをはぎ取り、丸出しのお尻をぺちりとひっぱたいておいた。
「うわっと、ひゃっ、なにすん……あー、ごめんなさい。調子に乗りました、服着させてください」
 全裸で正座して、上目遣いで許しを請う少女がここにいた。というか神様だった。神奈子はすぐに着替えを投げて渡す。
「まったく。今のあんた、人間たちには見せられないよ」
「そうですね。信仰は増すでしょうけど、大事な何かを失います」
 この二人の間では、『見せられない』の意味あいが大幅に違っていた。
 もそもそと服を着ながら諏訪子は指示する。
「さなえー、もっかい社会制度変えるよー。カースト制に戻して、あと官僚制から主従制に」
 意味はよくわからないが言われた通りにする早苗の後ろで、神奈子は腕組みしている。
「なんだか知らないけど、さっきからやけに忙しそうね」
「ああ、うん。レミリアと魔理沙にまとめて攻められてる所。ちょっとまずい状況かな」
 神奈子はぴくりと眉を動かす。
「ちょっと、最下位だけは勘弁してよ。誰にどんな借りができるか知れたものじゃ……」
「わかってる。だからこれから巻き返す。やっと準備ができたんだ」

 数ターン経過。
 北方では、大将軍の力によって負傷を癒した魔法の森軍の大勢力により、第二の目標都市もあっさり陥落した。諏訪子がまたしても撤退策を取ったため双方の被害も少なく、陣容を整えた魔法の森軍はさらに南下を継続する。
 西方では、やっと援軍の到着した紅魔軍も進軍を開始している。とはいえガレオンが港湾都市への入港を諦めて別地点に接岸したため、展開速度はやや遅滞している。
「頃合いかな。さて……」
 諏訪子は画面に伸ばした指をぴたりと止めた。さて、どちらを叩くべきか。
 紅魔軍は今回、投石兵器――トレブシェットを引き連れている。汎用性重視のカタパルトに対して、攻城戦能力に特化した兵種だ。
 今回は、先制攻撃を仕掛けたときのような電撃的侵攻は行えまい。敵都市の城壁を削り、敵兵を削り、止めの総攻撃を見舞う。それだけの強襲が可能な戦力ではあるが、歩行ユニットの足の遅さだけはどうしようもない。
 ならば先に叩くべきは魔法の森だ。さほど労せずして二都市を落とした大軍が意気揚々と迫ってくる。それが決して帰れぬ旅路とも知らずに。
 常に兵力を分散させて行軍する傾向のあるアリスだが、今回は最先鋒のスタックにかなりの兵力が集結していた。あと1ターン進行を遅らせれば部隊運用にも幅が出るのだろうが、今回はその1ターンが明暗を分けると踏んだようだ。
「やっぱり北が優先でしょうか。でも全部そっちに出すわけにもいきませんよね」
「ふふん、その辺は考えてるさ」
 北方からの帰還兵と、最近生産された新鋭ユニット、それに元から駐屯していた旧式ユニットが入り交じって、第一分社周辺はかなり混雑していた。それらを再編成しなくてはならない。
 まず、戦場から離れた都市の駐屯兵はぎりぎりの最低限、つまり戦士一体でいい。どうせそこまで押されたら敗北は確定している。いちおう形だけは兵士を置かなくてはならないので、古代の戦士を何体か、わざとアップグレードさせないでおいていた。しても金の無駄だし。
 そして西方への援軍だが、敵の編成がシンプルなのでわかりやすい。長槍兵・長弓兵を全て、擲弾兵を半分だけ送る。胸甲騎兵に対抗できるユニットは、カノンを除けばこいつらだけだ。
 それだけでは数量的に不安なので、もう時代遅れのカタパルトもまとめてお供につけておく。
 残りは全て対北方戦線へ。主力はカノン・擲弾兵あわせて十体足らず。あとは雑多な有象無象。
「ふっふっ……この一戦は大陸の歴史に残るよ」
「あんまり正義の軍団には見えませんけど。象とか、トゲ鉄球とか」
「そんなの勝った者勝ちさ。いざ、全軍迎撃用意!」
 次ターン、第一分社まであと三マスに迫った敵先鋒隊に守矢の一大スタックが接近する。諏訪子は試しに、カノンと敵スタックにそれぞれ指を当ててみた。
<勝率:91.6%>
「おっと困った。十回に一回近くも負けちゃうじゃないの」
 薄笑いを浮かべながら、擲弾兵をまとめて突撃させる。敵のトップユニットが何体か爆ぜ飛んだので、もう一度確認。
<勝率:95.2%>
「んー、まだ心配かなあ」
「どっちにしろほとんど百パーセントでは?」
 じゃあ聞くけど早苗、特撮とかで悪の科学者が『ひひひ、成功率は99.99%じゃー』とか言ってたらどう思う? 絶対失敗するに決まってるでしょ――と、食ってかかりたかったがそんな暇はなかった。祈る気持ちでカノンをぶち込む。
 一体目、勝利。巻き添えダメージで敵兵の三割ほどが中破。
 安心したので残り三体もまとめて突撃。当然のことながらカノン側の被害は軽微。与えた損害はというと、敵部隊のほとんどが中規模なダメージを受けて、無傷のユニットは数えるほどだった。
「っしゃ! あとは殲滅……の前に」
 ここで全軍突撃させたら、脇をすり抜けた騎兵に都市を強襲されかねない。適度に本隊から兵士を抜いたあと、大将軍と少数の護衛以外は全部突撃。
 次の瞬間、多くの槌鉾兵、弩兵そして少数の騎士からなる魔法の森軍先鋒部隊は、マップ上から消滅していた。

「んーと、勝っちゃったんですかね。すごい大差で」
 ぬふふふ、と気味悪い笑いで諏訪子は答える。
「この戦、カノンの前に死角はないよ。ライフル以前のユニットに、カノンを越える戦闘力なんてないんだから」
 投石・砲撃ユニットの天敵と言えば騎乗ユニットなのだが、非火薬の騎兵が追加ダメージを及ぼせる対象は投石ユニットのみ。カノンには通用しない。
 普通に強くて、相性による天敵もいない、そのうえ巻き添えダメージありだ。カノン一体で旧式ユニット五体分以上の戦力がある――敵が同クラスの兵種を開発しない限りは。
 二人の前で交渉ウィンドウが開いた。
「おい! ああもう……なんだあの火力は、反則だろ、おい!」
 早苗が嗤う。
「それをあなたが言います? でもやっと魔理沙さんらしくなりましたね。負けっぷりが」
「おまえにだけは言われたくないやい」
 そう言って憤る魔法使いを、もう一人の魔法使いは冷ややかに眺めていた。
「言ったでしょ、せめて1ターン待ちましょうって」
「どっちだって一緒だよ。なあ早苗、諏訪子……」
 魔理沙は神妙な顔で二人を見る。
「ここらで停戦としようや」
 諏訪子は停戦交渉リストの中から『第四分社』と『第五分社』を探した。しかし、ない。もしかして一番下の『倫敦』と『露西亜』というのがそれか? 勝手に都市名を変えやがって。ほかにも『上海』だの『仏蘭西』だのと、ひどくカオスな文明だ。
 とりあえず奪われた二都市をテーブルに乗せる。返すなら停戦してやるという意味だ。
「飲めないわ。こちらの要求はあくまで現状維持での停戦」
「そいつはうちが飲めないね。じゃあ」
 一方的に通信を切った諏訪子。無駄口を叩くぐらいならさっさと兵を動かしておきたい。
 レミリアの軍勢はあまり気にしなくていい。しばらくは粘れる程度の兵を置いておいたし、その『しばらく』の間に紫が参戦してくるだろう。そのときあの吸血鬼も思い知るはずだ。ユニットの世代の差が、戦力の決定的な差であると。
 そうなれば海越えどころではない。向こうの増援さえなければ、そう遠くないうちに軍備で追い越せるだろう……魔理沙に奪われた都市を取り返せたなら。
 北方に向けたユニットはいったん都市に戻す。次のカノンが完成するまで負傷の回復を行って、その間に貯めこんだ資金でトレブシェットを可能な限りカノンにアップグレード。
 さあ、最出撃だ。
「いやはや、先ほどは劣勢からの見事な快勝を納めた守矢文明ですが――」
 ターン経過を待っていたら新たなウィンドウが開いた。その向こうにいたのはメモ帳片手の烏天狗。
「ついに北方都市の奪還に向かう腹積もりですね。勝算のほどは?」
「ん? 勝ち目なんてないよ……あいつらには」
 ほう、と文の目の色が変わる。
「大した自信ですが、その根拠をお聞かせ願えますか」
 やれやれ、説明してやるか。今は少し暇だし。
「むこうはやっとこさ火薬を扱えるようになった段階。でも戦局を変える兵種を出すには、まだあと何段階か技術がいるんだ」
「その技術とは」
「けっこう色々かな。基本は紫の……もう完成してるね、『ライフリング』だけど、ちょっと前提が重いんでうちは『鋼鉄』にした。いずれ両方とも必要にはなるけど」
 文はペンの尻でぱしぱしと帳面を叩く。
「確かに、ここからだんだんと我々にはなじみのない技術が出てきますね。もはや火薬に頼らない兵士は時代遅れであると、そういうことですか」
「ビヨンド・ザ・ソード――剣以上のことを考える時代に突入したのよ。それに追いつけない文明は容赦なく食われる」
 その後しばらく、文とは取材とも雑談ともつかない四方山話を続けた。
 折に触れて彼女から他文明の動向を聞き出そうとした諏訪子だったが、詳しい話になるとうまく話をはぐらかされてしまう。まあそれで正しい。こっちの情報をぺらぺらと漏らされても困るし。さすがにプロとしてその辺のけじめはしっかりしているらしい。
 ほとんど反撃らしい反撃もないまま、三ターン後。元第四分社、現『露西亜』に攻撃隊が接触。
 ここから守矢文明の華麗なる反撃が始まるのだ。心躍る心境でターン経過を待っていると。
「……え?」
 いまなにか、見えてはいけないものが。
「うそ、ちょっと」
 見間違いだ、そうであってほしいと祈りながら、いまさっき目の前の都市に入城したユニット名を確認する。

 胸甲騎兵。

 攻撃隊の視界外からわらわらと集結してくる。その数、十騎近く。
 テクノロジー画面を確認する。胸甲騎兵の前提技術は『職業軍人』。そして魔法の森文明の研究可能技術の中から、それが消えていた。つまりは研究完了したということだ。うかつ。
 だがついさっき、文と話していたときは未習得だったはず。わずか1ターンかそこらでこれだけの数をそろえるには、既存の騎士からのアップグレードしかない。
 研究しながらその資金を貯めた? まさか。市民の厭戦感情に苦しめられているであろう魔法の森文明に、そんな余裕があるはずない。
 ならばもらったのだ。誰に? 月人文明だ、やつらしかいない。それまでに魔理沙たちは全力で資金を貯め、前ターンに技術供与を受け、同時に兵種を転換したのだ。
「くっそ、耐えろ、耐えろ……」
 まずは護衛の擲弾兵を排除するために、雑魚ユニットが次々と襲いかかってくる。アリスにしてみたら擲弾を倒す必要などない。ある程度負傷させて、カノンより後ろに下がらせればそれで十分。
 そして胸甲騎兵突入、一体目、カノンの勝利。二体目もカノンの勝ち。
 やはり胸甲は微妙ユニットだ。カノン対抗能力があるくせに、勝率でそのカノンと互角なのだから。
 だがしかし、互角なのだから勝ったり負けたりもする、全ては確率の問題。三体目の突撃は胸甲騎兵の勝利。同時に全てのカノンが追加ダメージを受けた。
「やめてよ、ちょっと、やだ、やめろぉ!」
 一度でもダメージを受けてしまえば、あとはなし崩しだ。騎兵全てが突入しきる前に、守矢文明の誇るカノン砲兵隊は全滅の憂き目を見た。

 がっくりと肩を落とす諏訪子に、早苗がそっと寄り添う。
「お気を確かに。体勢を立て直してまた討って出ましょう」
 悪いがそんなチャンス、もうない。
 カノンの壊滅自体は甚大な被害というほどでもない。また作ればいい。いま自分たちが失ったのは、時だ。技術の差による決定的優位をもって一気に失地回復できたかもしれない一瞬の『時』は、もはや失われてしまった。いや、初めからただの幻だった。
 二人の前で再度ウィンドウが開く。
「なあお二人さん、ここらで停戦としようや」
 勝ち誇った笑みで言う魔理沙。諏訪子にはもうその目を正面から見る気力がない。代わりに早苗が言い返した。
「全部、演技だったんですね。あの悔しがりようの裏で、こんな――よくわかりませんけど――計画を」
 少しだけ視線を左右に動かしてから、魔理沙は胸を張る。
「ふん、やっと気がついたみたいだな。もう遅いが」
 彼女の横顔にアリスの視線が突き刺さる。『あの時点では演技じゃなかったでしょ』とは言わないであげるのが、この人形遣いのささやかな優しさだった。
「飲めない……ね」
 やっと諏訪子が顔を上げる。このターンの残り時間を確認。まだ間に合う。
「こんな形ばかりの停戦、お断りだね」
 諏訪子が突っぱねるのを聞いて、アリスは黙ってウィンドウを閉じた。
「あの、どうして断ったんです」
「むこうの魂胆はわかってる。ただ時間を稼ぎたいだけよ」
 国内の厭戦感情を和らげ、同時に兵力の再編成と増強を行う、そのための時間稼ぎ目当てなのは明らかだ。準備が済んだらまた戦をしかけてくるに違いない。そのときこそ、守矢は完全に滅ぼされてしまうだろう。なにせ国土面積に大きな開きができてしまったのだから。
「確実な安全保障……もうあれしかないな。ごめんね早苗」
 悔しげにそう言って、諏訪子は新たな通信を開く。
「紫、頼みがあるんだ」
「なんなの。こっちも忙しいんですから」
 八雲紫は、かなり面倒そうにそう言い放った。別の大陸の戦争などかまっていられないという気持ちが見え見えだ。
「やっぱりそろそろか……お願い紫。レミリアの前に、うちに宣戦布告してちょうだい」
 紫は眉をひそめ、早苗が目を丸くする。
「なに、え、なに言ってるんですか」
「……いいのね」
 深く頷く諏訪子。紫は指を伸ばして素早く画面を操作し、開戦を選択する。

<八雲文明が守矢文明に宣戦布告しました>

 ほぼ同時にターン経過。すぐさま諏訪子はもう一度紫と会見する。
「ありがと。じゃあ停戦交渉といこうか……ん?」
 ウィンドウ枠の下からむっくりと、橙が頭を上げた。寝ぼけまなこで紫を、それから画面の向こうの諏訪子を見る。
「おはよう橙。ちょっと邪魔よ」
「ふわうっ、紫様、あれ?」
 橙は立ち上がって、きょろきょろとあたりを見回す。
「よく眠っていたようね。このへんによだれがついちゃったわよ」
「え、あ、あわわ。すいません、すいません紫様」
 ぺこぺこと頭を下げる橙のおでこを紫がつつく。
「吸い取ってもらおうかしら……あ、冗談よ冗談、気にしていないわ」
 橙は安心したように笑って、紫に頭をなでてもらった。そのとき突然、ぷつぷつと画像にノイズが混じり始めた。まもなくBGMも途切れ途切れになり、周囲の景色にモザイクがかかったように画素が荒くなる。
「わっ、だから冗談って言ってるでしょ、ちょっと藍、藍」
 やがて視界は砂嵐のようになり、ザーザーピーピーと耳障りな雑音しか聞こえなくなった。もはやゲームの続行など不可能だ。
「ああもう、こんどは藍に抱っこしてもらいなさい」

 またもや唐突に、世界が元に戻った。ピンポンパンポーンとチャイムが鳴る。
『運営よりお知らせです。ただいま計算式のトラブルにより画像が乱れましたことを深くお詫び申し上げます』
 感情というものを一切廃した、事務的な口調の藍の声でアナウンスが流れる。
『なお、現在計算式は非常にデリケートな状態となっております。過剰なストレスを与えないよう、謹んでお願い申し上げます。では引き続きゲームをお楽しみください』
 ピンポンパンポーン。

「あのさあ」
「わかってます。少々追い詰めすぎました」
「それもそうだけど、共有資産は平等に愛でないとだめよ。本気で関係にひびが入るから」
 さっき神奈子が妙にいらいらしていたのは、自分がゲームに熱中しているからばかりではないのだろう。早苗を巻き込んで、もうほぼ一日中いっしょなのが気に入らないという感情もあったはずだ。これが終わったらしばらく早苗は神奈子の手伝いに専念させてやろうと考える諏訪子だった。
「心しておきますわ」
「お互いにね。それでこっちの件だけど、なんか条件ある?」
 やっとゲームの話に戻ってきたので、諏訪子は講和条件テーブルに『降伏』を置きながら尋ねた。八雲側からの提供物はない。『戦勝国』なのだから当然だ。
「余剰資源は全部提供して。あと寡占技術は勝手に放出しないこと……ぐらいでしょうか。ただの口約束ですけど」
「まあその辺は当然かな。それでは今後ともよろしく。ほら、早苗も頭下げて」
「あ、はい。ははーっ」
 停戦交渉、成立。

<守矢文明は抵抗をあきらめ、八雲文明の属国となりました>

 戦場に終戦を告げる角笛が響く。開戦時の八都市のうち、紅魔に三都市、魔法の森に二都市を奪われ、ここに守矢の大戦は終わった。
「なんだ、勝手に終わっちまったぞ……うん、いいのか」
「よくない。さっきの画像の乱れはなんだったの。何らかの裏工作が……関係ないか。あれがあってもなくても、諏訪子の狙いはこれだったのよね」
 ひとりごととも質問ともとれるアリスの発言に、魔理沙は首をかしげる。
「ああ、さっき変になったやつか。ありゃ下らん痴話喧嘩かなにかだろ、藍の口ぶりからして。この戦いもぐだぐだになってきてたし、こっちの勝ちってことでいいんじゃないのか」
 アリスはまたユニットを忙しく操作しながら言い返す。
「だからよくないってば。むこうが独立国ならいつ攻めるのも自由だけど、よその属国となるとそうもいかないわ」
 魔理沙は眉をひそめ、拳をあごに当てる。
「む。そっか。今度は紫とも喧嘩しなくちゃいけないのか」
「ええ。目先の目標――国境の拡大はできたけど、大陸制覇はかえって遠くなったわ」
 やれやれだ、と魔理沙はどっかり椅子に腰掛ける。
「さすがに腹が減ったな。なんかメシ」
 じろりとアリスは振り返る。その視線には疲労と若干の苛立ちが込められていた。
「……メシでも作ってやろうか? 台所借りるぜ」
 危ない危ない、そのつもりもないのに怒らせるところだった。そう思って厨房へ駆けていく魔理沙の後ろ姿を、アリスはくすりと笑いながら見送った。

「どういうこと?」
 レミリアは困惑の表情を隠せなかった。
 次なる守矢都市の陥落を目指していた彼女だったが、遅々として進軍ははかどらず、遊撃兵を出しても槍だの爆弾だので撃退されて。やっとのことで敵都市にたどり着いたものの城壁が予想以上に堅く、それでもなんとか破壊に成功したところで、カタパルトの自爆攻撃を受けて地味に痛いダメージを負ってしまった。彼女のストレスはもはや限界に近い。
 しかしながら、ようやっとこのターンから本格的な打撃を与えられると勇んでいたところで突然、攻撃部隊がみな紅魔領まで押し返されてしまったのだ。
「恐れながら、この戦争は終結しました。平和状態では通交条約を結んでいない国に進入できません」
「んなっ、うー、だからっ」
 怒りにまかせて窓枠に何度か拳を打ち付けたところ、枠を支えている壁材ごと派手にひびが入ってしまった。とりあえず見なかったことにする。
「いったい誰が、なんの権限を持って戦を終わらせたというの」
 両翼を大きく広げてレミリアは威嚇する。目の前にいるのが咲夜でなかったなら、衝動的に八つ裂きにしていたかもしれない。
「ルール上は妥当な裁決です。もちろん、お嬢様はそれで納得などされないでしょうけれど」
 デーモンロードの異名を持つレミリアの怒りを目の当たりにしても、咲夜が表情一つ変えることはない。それでこそ私の従者というもの、とレミリアの感情もいくぶんか落ち着いた。
「聞いてあげる。いいえ、教えなさい。何が起きたの」
 はっ、とかしこまって咲夜は説明する。
「いままで我々は、紅魔・魔法の森連合軍として守矢攻めを行っていました。そこへつい先ほど八雲が加わり、形式上は三文明の連合軍となったのです」
 レミリアがぐっと窓枠をつかむ。先ほどはひびだけで済んだが、今度はぐしゃりと粉砕された。
「まさか……その八雲に守矢が降伏したから、それで戦争が終わったと?」
「はい。属国は開戦・終戦の決定権を持たないとあります。我々が八雲と戦争状態にない以上、その属国の守矢とも戦争はできません」
 レミリアはもう一度窓枠を殴打しようとして、そんなものはもうないので当然手がすり抜けて、自分の太ももを思い切り殴りつけてしまった。
「はぎゅっ……なんなの、横取りもいいところじゃない。戦ったのは私たちよ。おかしいでしょそんなルール。納得できるかっ」
 両目に涙を浮かべ、両手と両翼をばたばた上下させて憤りを表す鮮血の魔王であった。咲夜はぐっと目元――のやや下の部分を押さえる。
「こうなったらもう一度開戦よ、今度こそ……」
 レミリアが画面に手を伸ばしたところで。
「お嬢様っ!」
 鋭く呼び止められ、びくりと手が止まった。
「失礼いたしました。よろしいですか、お嬢様」
 おちついた口調で語る咲夜に、レミリアは無言で振り返る。
「――どんなゲームでも、突き詰めて考えればどこかが不自然です。なぜポーンごときがクイーンを一撃で倒せるのかと議論しても始まりません。たがいの進行を円滑にするために、そう簡略化されているのです」
「なにが言いたいの」
「今回の場合、我々にとって不利益となる形でその不自然さが降りかかりました……いえ、振りかけられたのです、八雲によって」
 咲夜はあくまで、全て紫の陰謀であると強調する。
 レミリアは遠方の戦に夢中になりすぎた。そのせいで大陸本土の軍拡が停止してしまっている。それはいずれ破滅を招く選択であると、彼女の狩人としての勘は告げていた。
「このたびの戦い、我々は電撃的な奇襲によって三つの都市を奪い、さらに三名の大将軍を得ました。その際に我が軍のこうむった損害も小規模なものです。まさに大勝利であったと考えますが、いかがでしょうか」
 まじめな顔でよどみなくそう語ってから、咲夜はにっこりとほほえむ。レミリアは一度深呼吸してから腕を組んだ。
「……そう、その通りね。どのみち八雲とは決着をつける。真の敵を見誤ってはいけないと、そう言いたいのね」
 咲夜がうなずくと、レミリアは軽く髪をかきあげてまたゲーム画面を見つめた。
「東部方面軍は防御兵力を残して撤退、対八雲戦線へ振り分けなさい。紅魔本土は引き続き戦闘ユニットを量産。新領地の経営はあなたにまかせるわ」
 咲夜は心底うれしそうな顔をして、胸元へ手を当てる。尽くすべき主から果たすべき使命を授かったのだ。これ以上の幸福などありはしない。
「仰せのままに、お嬢様」

「いやはや、いい記事になりそうです。写真が撮れないのが実に心残りですけど」
 文は両手の親指と人差し指で作ったファインダーを構える。
「得意げに語る洩矢氏、打ちひしがれる洩矢氏、そして八雲氏に土下座する洩矢氏……並べるといい絵になったのに」
 これでもかとまくし立てる文に、早苗の顔色がどんどん赤くなっていく。
「ば、ばば馬鹿にするんですか、諏訪子様の尽力を笑い物にするつもりですか、なんの権利があってそんな」
「よしてよ、調子いいこと言っちゃった私が恥ずかしいから。やっぱりマルチプレイだと感覚が違うね」
 どぎつく挑発されたわりには、もう勝負を投げてしまったかのように語る諏訪子。
「マルチ……多方面の勢力との交渉に失敗したのが、今回の敗因と見ているわけですね」
 諏訪子はちっちっと横に指を振る。
「まだ負けちゃあいないよ。脱落寸前ではあるけど、最初に作った三都市だけは残ったし」
 諏訪子の指さす地図を早苗も覗き込む。守矢文明の領土は、開戦前の半分以下にまで押し込められていた。
「戦争は全てを奪ってしまうのですね。やっぱり平和が一番です」
「そうだね。現人神を御輿に担いで軍事覇権を目指した時点で、とんでもなくゲンが悪いってのに気づくべきだったよ。これからは平和主義でも採用しようか……というのは、おいといて」
 画面上をゆっくりなぞる諏訪子の指が、ひとつの名前の上で止まった。『蓬莱山輝夜』。そのボタンを押すと、ウィンドウが開く。
「あなた一人? ご主人は」
「姫様でしたら、とっくに飽きてお出かけになりましたが」
 八意永琳は、表面上はにこやかに微笑んでそう告げた。諏訪子も唇の片端だけを吊り上げて笑う。
「まあいいや、やっとお話できたね。ここで無視されたらさすがにキレるとこだった」
 なぜ諏訪子が彼女との対話を望んでいるのか、早苗にはよくわからなかった。一方、文にとっては願ってもないチャンスだ。二人の会話を聞き逃すまいとペンを強く握り直す。
「お詫びならしません。あれがこちらの最善策、それだけです」
「わかってる。どう考えたってこのままじゃスキマが勝つ。状況を動かすには吸血鬼を太らせるしかない。うちはあの子のちょうどいい餌であり、サンドバッグだった」
 じりじりと視線がぶつかる中、先に諏訪子が口を開く。
「それはいいの。こっちにもミスはいっぱいあったし、恨んじゃいないわ。ただ」
「ただ?」
 腕組みして、少し考え込む諏訪子。やがて答えが出た。隣にいた早苗の手をぎゅっとつかみ、永琳の前で肩を組んでみせる。
「今度はこの子と、あと神奈子とで、そっちに遊びに行くから。おいしいご飯用意しといてちょうだい」
 永琳は目を細め、わずかに苦笑した。
「おやすいご用です。かないませんね、あなたには」
「それは光栄なお言葉で。じゃあ、期待してるよ」
 そう言って諏訪子は通信を閉じた。文と永琳の回線はまだつながっている。
「ううん……もっと激しい罵倒を期待していたんですが。終わった戦いはどうでもいいんでしょうかね、あの神様」
 ぼやくように問う文に、永琳が呼びかける。
「記者さん」
「はい?」
「食事をおいしくいだたく条件って、なんでしょうね」
 唐突に問い返され、文は面食らう。
「はあ。ご飯そのものの味と、その場の雰囲気が大事では」
「それが答えです」
「……ん? あ、なるほど」
 永遠亭の者たちとおいしい食事がしたい、と諏訪子は言った。つまりは、もう飯がまずくなる真似はするなと言ったに等しい。今後また守矢が月人の障害になる展開になったとしたら、その時は見逃せと暗に要求したのだ。
 洩矢諏訪子はまだ、勝負を投げてなどいない。
「東方文明ごっこ・中編」に続きます。

先に自分でツッコんでおくと、
・登場人物多すぎ
・説明文多すぎ
・場面転換多すぎ

すみません。
書く前からこうなるだろうとはわかっていましたが、好きなゲーム同士の掛け合わせを一度やってみたかったので。
それでも続きが気になるという素敵なかたは、中・後編のほうもどうぞご一読お願いします。

もう一点、わりとどうでもいい注釈を。
この作中のゲームは「デフォルトのCiv4BtSに藍様が独自の調整を加えたもの」としています。
実在するゲームとは表記・動作が異なる場合があります。
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コメント



0.3020簡易評価
12.無評価名前が無い程度の能力削除
貴公はすばらしいSSをUPした(+4)

これはイイciv4w
ちょっと東方MODしてくる
14.100名前が無い程度の能力削除
最近見ないと思ったらこんなとんでもない話を作っていたとは
19.100名前が無い程度の能力削除
civ4知らないとおいてけぼりだろうけど、知っている人にとってはいい具合に混ざっていて楽しいね
23.80名前が無い程度の能力削除
civ4が脳内で再生されるwwww
陣営毎の性格がうまく使われててgoodでした
24.100名前が無い程度の能力削除
遺産祭り+最初の3都市=?
しかし、遺産祭りと専門家使用カノンルートは相性が良くないからそこが響いたか
2国だけの島だったら機械スリングショットがよかったんだろうけどケロちゃんの考えはいかに。
29.100名前が無い程度の能力削除
>ハシゴを登ろうとして延々とタイヤで殴り落とされたり
これは熱血行進曲なのか
30.80名前が無い程度の能力削除
赤箱幻想入りか……
うちのサークルじゃ現役なんだけどな
31.90名前が無い程度の能力削除
シヴィライゼーションをさっぱりしらないけど、これは面白いです
興味はあるんだけど、始めちゃったら他に何も手に付かなくなりそうだからなあ。やれやれ
36.90名前が無い程度の能力削除
D&Dの赤箱……?
地霊の台詞は「?」だったけど、そうか、TRPGなら幻想郷でも遊べるかw
38.90名前が無い程度の能力削除
なんかこの守矢組、私がいつもやられてることをされてるような……
39.100名前が無い程度の能力削除
紅魔組はサイヤ人キュロスで、冥界組は、ペリク
霊夢はモンテスマかよwさすがアイドル。
で、我らが守矢文明は技術といい志向といい、絶望先生サラディンみたいっすね。
絶望志向ではなく勤労志向で遺産祭りできたから、絶望先生ほどの絶望はないな。

あー、アンインストールしたのにまたやりたくなってきた…。
46.100名前が無い程度の能力削除
ああ、ちくしょう、おもしろい。
47.100名前が無い程度の能力削除
レビュー読んで今北産業
おもしれえええ
48.100Admiral削除
魔理沙汚いなきたないな魔理沙。
便乗参戦とかハメでしょ?ウチのシマじゃノーカンだから。

それはさておき。
なにこれ、面白すぎる。
東方もシヴィも大好物の私はホイホイされてしまいました。
早苗さんがかわいすぐる。

これだけ楽しませてもらってまだ3分の1とか…
テラ時間泥棒。作者絶対忍者だろ…
続きも今すぐ読みに行ってきます!
50.100名前が無い程度の能力削除
これは面白いですね。楽しく読めました。
55.100名前が無い程度の能力削除
ちょっくら早苗さんで群島天帝行ってくる。首領はムリ。
56.100名前が無い程度の能力削除
貴公はすばらしいSSをUPした(+5)
素晴らしい実に素晴らしい 
まさかciv東方のssを見れるとは・・・
70.100名前が無い程度の能力削除
うへぁ面白い
75.100名前が無い程度の能力削除
レミリア宣戦のとこで鳥肌立ちました