Coolier - 新生・東方創想話

魔理沙のギリギリ研究記

2009/12/07 21:48:32
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紅葉に黄葉が舞い踊る博麗神社。
季節は秋、風が涼から寒へと移り変わる時期に差し掛かっていた。
ただ、日差しはまだ優しく陽にあたる者を等しく眠りへと誘う様な陽気である。
そんな天気の中、社務所の縁側ではいつもの様に紅白と黒白の二人がお茶を飲んでいた。
障子には魔理沙が突っ込んだのかポッカリと穴が開いているのもまた、いつもの風景と言えた。
特に何をするでもなく、のんびりぼんやりと言った様子の二人であったが、黒白の魔法使い霧雨魔理沙は自らの開けた
穴を見つめ、何かを思いついたようだった。

「……」

何を考えているのやら、じっと霊夢の顔を見つめる魔理沙。
特に気にするでもなくお茶を飲んでいたが段々とその視線に耐えられなくなったのか鬱陶しそうに口を開く霊夢。

「…何よ、私の顔に何かついてむぐっ」

突如、魔理沙が手を伸ばし霊夢の顔の中心である鼻をきゅっとつまむ。
おもむろに鼻を摘まれ目を白黒させる霊夢だったが直ぐに反撃の拳骨が飛ぶ。

「痛っ、何すんだよ霊夢。」

ポカリと頭を叩かれた魔理沙は恨めしそうな目で口を尖らせる。

「何すんのはこっちの台詞よ!さっきから人の顔ジロジロ見たり鼻摘んだり。」

そう言ってギロリと睨まれ、魔理沙はふむ、と思案顔になる。
当然反省の色は微塵も見られない。

「いや、さ。さっき私が障子をぶち破ってこの部屋に来た訳なんだが、お前は特に怒る様子も無く
 『ちゃんと直しておきなさいよ。』の一言だけだったんだ。コレって結構普通じゃないと思ってな。
 普通はきっと怒る。かと言ってお前の心が仏のように広いのかって言うとそうでもない気がしてな、よく怒るし。」

「…それがなんで人の鼻を摘むことにつながるのよ?」

「だから、何をしたら怒るのかなぁ…と思ってさ。」

それを聞いた霊夢は心底下らないといった様子で呆れ顔になる。
 
「ホントにあんたっていつも下らない事を思いつくわね。怒りの沸点なんて人それぞれに決まってるでしょうに…
 大体障子なんて直せば元通りになるし。だからあんたが直さなかったら勿論私は怒る。」

後半は全く聞いてなさそうに見えた魔理沙は怒りの沸点か…などとブツブツ呟いている。
魔法使いの特性なのか、一旦思考に入ると周りの声が一切聞こえなくなるようだ。
こうなると暫く何を言っても無駄だろうな…と思った霊夢は再びお茶を楽しむことに決める。
空は高く、深い色をしている。
空気も澄んで稔子と静葉の香りがしてきそうだ。
そろそろ炬燵も出さないとなぁ、なんて事を考える。

お茶を一杯半飲んだ所で、魔理沙はにやりと笑いながら、よし!と呟く。
あ…またコイツしょうもないこと考えた、巫女の勘が働く。
とりあえず引き止めるべきかと思い声を掛けようとしたら、

「悪いが霊夢、用事を思い出した。またなっ!」

魔理沙はシュビッと挨拶をして、さっさと飛んでいってしまった。
…逃げられた。

「障子を直してから行けえぇぇぇぇぇ!」

そして霊夢の怒鳴り声がこだましたのだった。









       ~ 魔理沙のギリギリ研究記 ~













霧雨魔理沙はご機嫌だった。
近頃キノコ実験が滞りがちで何か気分転換にいい研究対象は無いかと探していた所だったのだ。
其処に下りてきた天啓が巫女の言う『怒りの沸点』。
まさに巫女からの天啓、巫女サマサマという訳だ。
考えてみると、ここ幻想郷には随分とのんきなヤツが多い、気がする。
ならば、何をすれば怒るかを調べてレポートにするのは中々に面白そうではないか。
うまくいけば御阿礼の子あたりからレポートと引き換えに資料なり小金なり手に入るかもしれない。
と、そこまで考えて魔理沙は口に手を当てうししと笑う。

「…さて、そうと決まったら先ずは近くの紅魔館だな。」

舵を向けるのは霧の湖。
こうして魔理沙の珍妙な沸点を巡る旅は警鐘の鐘を鳴らしながら開始されたのだった。

暫く飛行を続けると薄らとした霧に包まれた湖が段々と顔を覗かせる。
霧の下から鮮やかな紅葉が見え隠れしていて、赤と白の調和が趣を感じさせてくれる。
その中に一点、ポツリと不自然な青が映える。
ご存知、氷の妖精チルノである。
冬に近づき力を増してきた彼女は遊び相手を探していて、ちょうど黒白を発見したという次第だ。
勿論魔理沙も丁度良い相手が見つかったと、唇の端がつり上がる。

「やいっ黒白!今日こそあたいの新ひっさつわざでやっつけてやるわっ!」

「ようチルノ、元気か?」

「うん、あたい元気だよ。」

簡単に会話のペースを掴む魔理沙。
…まあ妖精なんてこんなもんだ。
そんなわけで、早速実験を開始する。

「ば~か。」

「なっ!だれが⑨よっ!?ばかって言ったヤツがバカなのよ!!」

「あっ、今自分で言った。」

「うっ…うるさいっ!ば~かバ~カ!!くらえ、アイシクルフォール-easy-」

適当にチルノをあしらいつつ退散する魔理沙。
うむ、結果としてはボチボチだな、と満足顔である。


・チルノ…馬鹿にすると怒る


こうして、紅魔館に突入していつもの様に本を借りるのだが全く持っていつもと同じ手順なので割愛させていただく。


・中国   …(勝手に)門を通る(突入する)と怒る
・パチュリー…(勝手に)本を借りる(盗む)と怒る


「さて、次のお相手は…と。」

館内を疾走しながら次の標的を探す魔理沙の前に見覚えのあるメイド服が見えてくる。
紅魔館が誇る完全で瀟洒なメイド、十六夜咲夜である。
魔理沙はキキッと急ブレーキをかけ、咲夜の前で箒を降りる。

「よっ。」

「あら?魔理沙じゃない。」

思いがけない訪問者に目を丸くする咲夜。
普段は意識的にメイド長から逃げ回っている黒白が自ら出てきたことに若干の驚きを隠せないようだ。
実験開始、とばかりに早速そのメイド長の鼻を摘む魔理沙。

「…あにやってるの?」

されるがままの状態で首を傾げる咲夜。
さすが完全で瀟洒なメイド、この程度で怯みはしないか!
内心歯噛みしながら魔理沙は次の一手を繰り出す。
…なんと、彼女のきめ細かそうな頬をむにっと掴んで横に広げたのだ。

「咲夜、この状態で『パパの文庫用紙』って言ってみてくれ。」

「…? ファファのウンコようひ。」

「ぶふぅっ…!!」

あの名高いメイド長がこんな事を言っているというギャップに思わず吹いてしまう魔理沙。
だが、咲夜は相変わらず不思議そうな顔をしながらこちらを見ている。

「(馬鹿なっ!? 紅魔館のメイド長、ここまでの存在なのか?)」

ここまでされて怒る気配の無い咲夜に魔理沙は戦慄する。
前を見ると頬を伸ばされながらも整った美しい顔。
下を見るとスラッとしたスタイルに均整の取れた胸。
え~い、こうなりゃヤケだとばかりにその胸をガチっと鷲掴みにする。

「…ガチっ…?」

掴んだ腕の先を見てみるとソコにあるのは柔らかい胸ではなく肉厚のナイフであった。

「いってぇ~!?」

ナイフを掴んで痛いのは当たり前である。
血の滲んだ指をふーふーしていると、首にナイフを突きつけられる。

「貴方、どさくさに紛れてナニをしようとしているのかしら?」

先ほどの穏やかな瑠璃色と違い、激しい緋色の瞳をしたメイド長がそこには、いた。

「(…ヤバッ!)」

咄嗟に隠し持っていたコショウ煙幕を発動させる。
捕まれば命は無いだろう。
まだ、逃げ足だけは幻想郷一を主張する魔理沙は持てる力を出し切ってそこから脱出する。
滅茶苦茶に飛び回ってどうにか逃げ切ったのであった。


・咲夜…胸を掴もうとすると怒る


気がつくと目の前に大きな扉、気付かないうちにこの館の主の部屋まで来てしまったようだ。
…レミリア・スカーレット、幻想郷勢力の一角を担う彼女は何をすれば怒るのだろう。
魔理沙はワクワクしながら目の前の扉を開いた。
薄暗く紅い部屋からは微かに紅茶の匂いが漂っている。
その先に、この屋敷の主はいた。
爛々と深紅に輝く瞳、最強の種族吸血鬼の証である漆黒の翼が横に突き出ている。
背格好に似合わない豪奢な椅子に足を組み、肘をついて座る姿は具現するカリスマだ。
強者特有の余裕と言うものが滲み出ている。
普通の人間なら相対しただけで足が竦み動けないほどだ。

「あら、今日は珍しいお客様ね。いつも挨拶だってしに来ないのに。」

黒白の姿を見つけレミリアは妖しく笑い問いかける。

「ああ、偶には顔を出さないと拗ねる主がいるからな。」

売り言葉に買い言葉、魔理沙は怪しく笑い答える。
そうして普通の人間でなく、普通の魔法使いは臆する事無くレミリアの前まで歩いていく。
大きな椅子であるため、目線は同じだ。
尊大な姿勢を崩さないレミリアに対して、先手を打つ魔理沙。
先ほどは触れること叶わなかった胸へ手を伸ばし、ぺったんぺったんと触ってみる

「何それ…新しい挨拶かしら?」

「…まぁそんな所だ。」

クソっ!あのメイド長が心酔するだけの事はある。
咲夜が真っ赤になって怒ったのに、コイツは顔色一つ変えないなんて…
内心冷や汗をたらしながら不敵な笑みを絶やさない魔理沙。

「それで、今日は何の用かしら?」

「あ、ああ…それなんだが…」

今迄で体験した中で出し惜しみ無しの最強の一手が敢無く撃沈した事によりしどろもどろになる魔理沙。
(どうすればいい!?考えろ、考えるんだ霧雨魔理沙!)
必死になって頭を高速回転させる魔理沙。
と、目の前にヒラヒラとしたスカートが映る。
よし、これだ!エイヤとばかりに、がばりと目の前の布を捲り上げる。
目の前には純白に輝くドロワーズ。
アクセントのコウモリ型リボンが実に可愛らしい。

「なっ…なっ、なぁっ!?」

余りに唐突だったためレミリアは目を白黒させるコトしか出来ない。
馬鹿なっ!?まだ怒らないと言うのか?
実際、現状を把握し切れていないだけなのだが、魔理沙は更なる一手を伸ばそうとしていた。
これぞ約束された勝利の一手!
ドロワーズをむんずと掴み思いのままに引き下げようとした瞬間っ、

悪寒が走る。

死ぬ気でその場から身を投げ出すと、ついさっきまでいた場所を鋭い爪が空間、そして後ろの壁まで抉り取っていた。

「しゅくじょに対して何すんのよ!この変態!!」

涙目で鼻息を荒くした吸血鬼。
…コレはヤバイ。
魔理沙は咄嗟にマジックミサイルで壁を打ち抜く。
穴が開いた壁から陽光が差し込んで来る。
日の光が弱点の吸血鬼はこれで容易には襲いかかれないハズだ、きっと。
スタコラと其処から外に逃げ出した魔理沙。
後ろからは…

「う~っ!咲夜ぁ~~!!」

悲痛な、れみりあの叫び声が木霊していた。


・レミリア…下着を脱がそうとしたら怒る


実に有意義な研究結果だ、とスッキリした顔で紅魔館の外門を目指す魔理沙。
因みにフランドールを怒らせたら自分の身が本気で危ないので研究対象からは除外してある。
実にいらん空気を読む魔法使いだ。
…と、向こうから人影が見えてくる。

「あ~、そういえばコイツを忘れてたか。」

赤い髪に特徴的な羽、図書館の司書をしている使い魔、通称小悪魔だ。
大方、主の命令で里へ買い物へでも出かけていたのだろう。
向こうもこちらの姿を確認してペコリと頭を下げてくる。
勿論彼女は研究対象から除外などされていない。
先ずは軽いジャブからだ。

「やい、小悪魔。お前は本当に無能だな。」

「…はい?」

突然のことにぽかんと口を開けて固まる小悪魔。
(やはり紅魔館の住人、氷精のようにはいかないか。)
とんっ、と小悪魔を突き倒して更に攻める。

「お前みたいな役立たずの石潰しは必要ないって言ってんだよ。」

倒れている小悪魔を軽くげしげしと足蹴にする。
因みに全て棒読みなのも愛嬌だ。
すると小悪魔は頬を赤くしてフルフルと震えだした。
おっ?こりゃ怒るかな?と期待を寄せる魔理沙。
だが…

「…ぁ…ハ、はいぃ…私は下衆で低脳な屑なんですぅ…も、もっと罵ってくださいぃ…ぅ…」

何故か彼女の息は荒いし目も潤んでいる。
やたら艶っぽい姿だ。
ありゃ…怒らせるどころか悦ばせてしまったようだ。
魔理沙は眉をしかめる。
スペードを引き伸ばしたような小悪魔の尻尾がクネクネと扇情的に魔理沙の足へ絡まってくる。
更には突き倒されて露になった白い太ももをモジモジさせている。

「はっ…早くぅ、この惨めな小悪魔にぃ…はァっ…た、耐え難いお仕置きをっ…」

「…こ、ここまでやられて怒らないのか?」

「…ぅ…ここでヤめられたら怒っちゃいますぅ…」

「な、ならここで御仕舞いだぜっ!じゃあなっ!」

慌ててその場から飛び去る魔理沙。
物欲しそうな視線でこっちを見ている小悪魔には気付かないフリをした。


・小悪魔…弄るのを止めると怒る…?


流石は紅魔館、ツブ揃いの恐ろしい所だったぜ…
そう振り返りながら魔理沙は紅魔館を後にするのだった。


「さて…次は何処に向かおうか。」

箒に乗っかり腕を組んで考えていると、何処からか軽快な音楽が聞こえてくる。
聞き覚えのある曲だ、たしか騒霊の三姉妹だったな…
新たな標的を見つけニンマリとする魔理沙。
早速音の元のほうへ向かって空を駆けていくのであった。
高い高い秋の空、昇れば昇るほど色鮮やかな幻想郷の景色が映りこんでくる。
空高く飛ぶことは大きな空を独り占めしている気分になれるので特に魔理沙のお気に入りなのだ。
上空を飛んでいると彼方に楽器を楽しそうに鳴らす三人の姿が確認できた。
相変わらず騒がしい連中だなと思いながらゆっくりと近づいていくと、メルランが声を掛けてくる。

「あっ、やっほ~黒白。こんな所へわざわざどうしたの?」

魔理沙の姿を確認した他の二人も演奏をやめてこちらに注目する。
特別親しくも無い人間がわざわざここまでやって来たのだ。
とりあえず用件くらい聞くのが礼儀と言うものなのだろう。
そんなプリズムリバー家の常識をちゃぶ台でひっくり返すような魔理沙の一言。

「ば~か。」

「はい?」

「…また変な薬でも飲んだのか?永遠亭へ連れてってやろうか?」

怒らすどころか逆に心配をかけてしまったようだ。
考えてみれば一対多数のやり取りはこれが初めてだ。
(まさかこれほどやりにくいとはな…!)
じっとりと湿る手の平を服でごしごしと拭く魔理沙。
先程のような接近戦で攻めてもいいのだが、相手は多数だ。
怒る前に止められてしまう可能性が高い。
そうなるとこっちが不利になってしまう。。
何とかうまい手で三人絡めて纏めて吊り上げないといけない。
勿論吊り上げるのは怒りのボルテージを、だ。
ボンデージではない事を明示しておく。

「いや、悪いわるい。ちょっと考え事していて独り言が洩れてたみたいだ。」

…どんな考え事をしていれば相手に向かって悪意ある独り言が洩れるのだろう。
誰もが疑問に思うが其処を指摘しないのがプリズムリバー家の優しさである。
なんと言っても相手は魔理沙だし。

「そ…そう、それで今日は何の用?」

すかさずフォローを入れるように質問を返すルナサ。
長女としてお転婆な妹達を纏めているだけあってしっかり空気を読めている。

「ああ、この中で一番演奏がうまいのは誰なんだろうな~って疑問に思ってな。いや、純粋な好奇心だ。」

咄嗟に出した魔理沙の質問にリリカが胸を張って答える。

「それはモチロン私だよ!私がいないと姉さん達ったら曲にまとまりが無いんだから。」

「何を言ってるのよ、私がいないといつも盛上りに欠けてるじゃないのさ~。」

「…盛上りすぎているのを誰が収めていると思ってるのよ。まだまだ、二人とも修練が足りないわ。」

やいのやいのと言い争いを始める三人娘。
女子三人寄れば姦しいとはまさにこの事だろうか。
ここで魔理沙のとどめの一撃が入る。

「…要するに皆下手くそってコトでいいのか?」

「「「むっ!そう思うのなら私達の演奏聴いて逝くがいいわっ!」」」

…結局一戦交えることになったがうまく誘導することに成功した魔理沙であった。


・プリズムリバー三姉妹…本当のコトを言うと怒る


(さて…此処からだと白玉楼が近いか。)
次の目的地の目処を立てる、と言っても目の前の門を越えるだけなのだが。
お次の標的は冥界の主、西行寺幽々子だ。
いつものんびりおっとりで怒った所なんて見たことないし想像も出来ない。
さぞかし厳しい戦いになるであろうことを予感して武者震いする魔理沙。
ひょいと幽明の門を乗り越えて長い階段を飛び続ける。
ここ冥界は一年を通して肌寒い。
気温的なものもそうだが、心が寒いのである。
夏はまだいいが、これからの季節はしんどいな。
そんな事を考えながら暫く階段を上り続けてふと空を見上げたら…

斬撃が振ってきた。

よっと体を半回転させて箒にぶら下る様な体制をとり、刀の斬撃を箒で受け止める魔理沙。
箒は強烈な一撃を受けミシミシと歪むが長年連れ添った相棒だ。
魔力強化もされていて、この程度で壊れることは無い。

「コラっ!また勝手に幽明の門を超えて!生者は許可無く此処に着ちゃ駄目だって言ってるだろ。」


・妖夢…(勝手に)門を通る(突入する)と怒る
(中国と同じか…)


「…あ~、残念ながらもうお前に用はないぜ。」

「何だとっ!馬鹿にしているのか!?」


・妖夢…馬鹿にすると怒る
(チルノと同じか…)


「いや、やっぱり大事な用があった。妖夢、お前はもっとアイデンティティを大事にしたほうがいい。」

「えっ、えっ?どういうこと??」

「要するにまだまだ、半人前だってコトだ。」

「…!むきーっ!!」


・妖夢…本当のコトを言うと怒る
(プリズムリバー三姉妹と同じか…)


スゴイ勢いで抜刀して襲い掛かってくる妖夢。
接近戦だとこっちが不利だ、というか今日はまともにやり合うつもりもない。
箒の中心を持ちクルリと半回転、箒の軌跡が魔方陣を描く。
その魔本陣の中へ全速で突っ込み流星と成す。
彗星『ブレイジングスター』を使った二百由旬鬼ごっこだ。
…結局、妖夢を撒くのに半刻ほどかかってしまった。
瞬発力なら天狗にも劣らないとはよく言ったものだ。
門を出るフリをしたのできっと諦めたと思っているはず。
よもや白玉楼に侵入しているとは思うまい。
魔理沙は抜き足差し足忍び足で幽々子の元へと向かう。
(…いたいた!)
華胥の亡霊は暢気にお団子とお茶を楽しんでいる最中のようだった。

「よう、邪魔するぜ。」

こっそりと部屋に入り戸を閉める。
これで妖夢も呼ばれない限り入って来ない筈だ。

「…まあ!妖夢が突然モノトーンになってしまったわ!?」

「いやいや…」

「ふふ…冗談よ。でも、モノトーンってなにかしらね?」

相変わらずのマイペースっぷりである。
会話のペースなど微塵も掴めそうに無い。
(コイツは思った以上に手ごわいぜ…!)
攻撃の糸口が全くつかめず舌を巻く魔理沙。
(いや!今までの自分の培った経験(エクスペリエンス)を信じるんだ!)
先ずは小手調べとばかりに鼻を摘んでみる。
…が特に反応は無い、というか変わらず団子を食べ続けている。

「あむあむ、急に味がしなくなったわね~、でもこれはこれで食感が楽しめるかも…」

(無反応かよ!?だがこの程度予測の範囲内だぜっ!)
さっと幽々子の後ろに回りこんで、その豊満な胸をむにゅっとわし掴んでみる。
(やっ柔らかい!どこぞのチンチクリンとは威力がダンチだ!?)
余りの柔らかさに思わずこねくり回してしまう。
私にもこれ位のチカラがあれば…なんてコトを思いながら夢中になって揉みしだく魔理沙。
もう既に周りなど見えていなかった。
其処へ団子を一串食べ終わった幽々子にガッシリと捕まれてしまう。
(しまったぁ~油断したっ!!もう此処でゲームオーバーか!)
覚悟を決め硬く目を瞑る魔理沙だったが…

思いに反して幽々子に優しく包まれる。

「思えば貴女も人の子だったわね…私に人の温かみは無いけれど、それで貴女の心が満たされるなら存分に甘えていいのよ?」

か…乾杯だ…じゃなくて完敗だ…
もっと強気に攻めたい所ではあったのだが幽々子の服の構造がよくわからない魔理沙にはそれが出来ない。
っていうか和服ってやり辛い。
もはや反撃の手は無い。
潔く負けを認め全てをこの柔らかい胸に委ねてしまおうかという誘惑に襲われる。
段々と意識がおぼろげになっていく魔理沙の目に一つの光明が見える。
…それは

「残念だが、それは次の機会に取っておくぜ!私は帰らせてもらう!!」

目の前にあった団子をガシッと掴んで魔理沙は障子を開いて勢いよく飛び出…


…飛び出すのをやめる。


何故なら外には視界を埋めつくほどの死蝶の群、群、群!
対比的には空が3、死蝶が7と言ったところであろうか。
むせ返るような甘い死の匂い。

「…あら?かえらないの?」

(輪廻の輪へ)還らないの?と問い掛けられているような気がして顔が引きつる魔理沙。
幽々子は表情を崩さず微笑んでいる…が、何故か壮絶という言葉が頭についても違和感を感じない微笑みだ。

「あ、ああ…やっぱり人のものを取っちゃ、駄目だよな…うん、ごめんなさい。」


・幽々子…食べ物を取ると怒る


「…はぁ、さっきはホントに死ぬかと思ったぜ。」
ある程度の危険は覚悟していたが、あそこまで死に直面するとは思っていなかった。
咲夜、レミリアの時だって危ないと言ったら危なかったのだが、こっちも準備はしてあるし冗談で済むレベルだった。
…と本人は思っている。
だがさっきのは違う。
あそこで霊夢の時のように障子を突き破っていたら間違いなく御陀仏だっただろう。
言い換えれば、今まであったヤツの中で一番怒ったのが彼女だったと言うことだ。
怒りの沸点か…言い得て妙なものだ。
幽々子の沸点はとんでもなく高い代わりに沸騰する前に蒸発、というか引火するのだろう。
要は怒らせたら怖い、と言うことか。

「…さて次はどうするか。」

新たな研究結果を得た魔理沙はまた腕を組む。
(…そうだな、小腹も空いてきたし里に向かうか)
段々と空腹を訴え始めるお腹と相談し、少し駆け足気味に人間の里へ向かうのだった。

収穫祭を終えた人の里は全体的にのんびりとした雰囲気に満ち満ちていた。
今年もう冬を越すだけ、そんな一仕事終えた後のような人々の顔も総じて明るい。
魔理沙は行きつけの蕎麦屋で掛け蕎麦を一杯平らげる。
薫り高くも気取らない庶民の味が大のお気に入りなのだ。
満足げに店を出た所でばったりと、顔見知りに出会う。
上白沢慧音、この里の守護者をしているハクタクの半獣だ。

「おや、魔理沙じゃないか。奇遇だな。」

ふむ、腹ごなしの相手には丁度良いか。
魔理沙は慧音を見てほくそ笑んで早速行動に移る。

「よう、慧音。ちょっとお願いがあるんだが『いっぱい』の『い』を『お』に変えて言ってみてくれ。」

「…む?いっぱいの…だから、おっぱ…って!何を言わせようとしてるんだ!」

むっとした顔で抗議の声を上げる慧音。
頬が少し赤いのも気のせいではないだろう。

「あっるぇ~、どぅしたんです?せんせい~。『いっぱい』の『い』を『お』に変えたら『おっぱお』、だぜ?」

「むう…!」

不満げな顔がありありと見て取れる。
子供騙しに引っかかった自分が許せないといった顔だろうか。
よし!此処が勝負所だぜ、と魔理沙は更なる攻勢にでる。

「んじゃ次だ。『カモメカモメかちんかちん』の『か』を抜いて言ってみてくれ。」

「ん…と、モメモメ、ちん…ってコラァ!!」

「あぁ、もう正直に聞くぜ慧音のおっぱい何でそんな大きいンゴォ!?」

頭突き一閃!
残念、魔理沙の旅は此処で終わってしまった!…と言うわけにも行かず。


・慧音…えっちなのはいけないと思います


「…いつつ、頭が胴体までめり込むかと思ったぜ。」

まだ朦朧とする頭を押さえつつ里をフラついていると段々と人だかりが多くなってきた。
何かと思ってその人だかりを覗き込んでみると、見覚えのある頭が見える。
いや正確には耳、だが。
白くてふわふわの柔らかそうな耳が大層な演説にあわせて忙しくピョコピョコ動き回っている。
永遠亭の詐欺兎こと因幡てゐである。
どうやら新しい商売の投資話をでっち上げているようだ。
よし、腹いせついでにコイツが標的だぜ、と気を漲らせる魔理沙。

「よう、また詐欺まがいのことやってんのか?守護者が来たらうるさいぞ。」

「うげっ!魔理沙!!」

わざと大衆に聞こえるように詐欺は駄目だと大きな声で言う魔理沙。
大層な話が嘘だとわかったら、蜘蛛の子散らすように人々はいなくなる。
そうしてあっという間にてゐと魔理沙の二人だけになってしまう。
こうなったらもう、てゐはカンカンである。

「あとちょっとでガッポリ儲けられたってのに何てコトしてくれんのさっ!?」

あまりの怒り具合に顔を真っ赤にして普段は垂れ下がっている白い耳も上へピンと伸びている。


・てゐ…詐欺の邪魔をすると怒る


魔理沙は上へピンと伸びた耳をむぎゅっと捕まえる。

「人里で悪事を働く妖怪は退治されるものだぜ。」

「いっ痛!ヤダッ止めてよ、耳は敏感なんだから!」

「むむっそれを聞いたら止める訳にはいかないぜ。」

掴んでいた耳をぐいっと持ち上げると、身長の低いてゐは自然に爪先立ちになる。

「ぅあっ、もっ止めっ!アっやまるっからぁ!?」

「この耳やたら気持ちいいな~、羨ましいぜ。」

話を聞かない魔理沙はフワフワ耳に夢中である。
更にぐいぐいと引っ張って遊んでみるもんだからてゐにとっては堪ったものではない。

「あっアッ、駄目!そんなに引っ張ったら、やっ、ダっ…~~~~っ!っっっ!!」

ビクンビクンと痙攣したあとへにゃりと弛緩するてゐ。
掴んでいた手を離すとヘタリと地面に崩れ落ちる。
涎まで垂らして全く持ってだらしない顔だ。
まぁ退治される妖怪だって鼻血なり涙なり何か垂らすのだろう。

「ふむ、妖怪退治はこうでなきゃな。」

憂さ晴らしも済み、スカッと爽快にその場を立ち去ろうとする魔理沙に怒声が飛び込む。

「コラ~~!黒白、てゐに何したのよっ!!」

怒鳴り込んできたのは月の兎、鈴仙・ウドンゲイン・因幡だ。
どうやら彼女はてゐと一緒に里へ薬売りに来ていたらしい。
無論売るのは真面目な鈴仙だけで、てゐはインチキ商売に精を出していた訳だが。


・ウドンゲ…仲間が虐められると怒る


「う~ん…何て言うかお前は今更感があるからいいや。」

「酷っ!?」

そんなこんなで、何故か自分がてゐを連れて永遠亭に行く羽目になる魔理沙。
鈴仙は薬籠を背負っているから仕方ないと言えば仕方ないのだ。
しかし、それも好都合と言える。
永遠亭には月の姫、輝夜と紛う事無き天才の永琳という二大巨頭がいる。
正直、勝てる気がしない。
だが!それでもやらなきゃいけない時があるんだ、と勝手にひとり盛上る魔理沙。

迷いの竹林を抜け、姿を現す巨大な屋敷は永遠亭である。
長い間時を止め、忘れ去られた世界に身を置いた建物は今もその壮観さを留めている。
大きな門をくぐれば、其処には立派な日本庭園。
其処に世界の全てを表したとされる庭園は目を向けるものを惹きつけて已まない。
魔理沙も当然その1人であり、てゐを預けた後暫く庭に佇んでいた。
と、そこに鈴の転がるような声が響く。

「どう?うちの庭も中々に立派なものでしょう?」

「(…出たか)」

いつの間にか、真横に佇むは伝説なるかぐや姫、蓬莱山輝夜である。
庭園を見つめ自慢げに微笑む姿は、その世界全てが自らのモノである事を誇っているかのようだ。
佇むだけで空気、いや世界が変わる。
例えるならレミリア・スカーレットを動のカリスマだとするのなら、輝夜は静のカリスマとでも言ったところだ。
辺りに込めるのは畏怖や威圧感でなく、純粋さや月輪感とでも言うのだろうか。
魔理沙には言葉に表すことも難しい。

「まあ折角来たんだし、上がっていったらどう?」

「…ああ!そうさせて貰うぜ。」

こうして、堂々と客間にて相対す二人。
どうやら永琳は診察を行っているようで不在である。
輝夜の全てを見通すような深淵たる黒の瞳に射抜かれて居心地を悪くする魔理沙。

「ふふっ、魔理沙ってば何か企んでる顔をしてるわよ。」

「…まぁ、その通りだぜ。」

「あら、随分正直ね。」

「生憎私は逃げも隠れもするが嘘はつかない性質なんでね。まぁ冗談は言うが。」

此処までくれば小手先は無用、正面からぶつかるだけだ。
輝夜も何をする気なのかを興味深そうに伺っている。
「(余裕ぶってられるのも今のうちだぜ!)」
先手必勝!とばかりに優雅に座る彼女のスカートの裾を捲り上げる…が。

「あれ?」

なんと捲りあげたスカートの下に同じスカートがもう一枚現れる。
確か昔の人間は同じ服を何枚も着ると言う話を聞いたことがある。
そんなことを思い出した魔理沙は、怯む事無く何度もスカートを捲り上げる。

「…馬鹿な!」

「うふふ…貴女のそんな滑稽な姿を眺めているだけで私の一生の退屈も少しは紛れそうよ。」

異常に捲くり続ける途中で魔理沙はふと気が付く。
これは彼女の能力だ、と。
理屈はわからないが永遠と須臾を操る輝夜には造作も無いことなのだろう。

「…あら、もうお終い?もっと楽しませて頂戴な。」

「ああ、言われなくっとも、だぜ!」

ならば下に行くと見せかけて上を攻めるだけだ、と咄嗟に体制を変えたのだが。

「…っとと!」

「んきゃあっ!?」

無理な動きだった為、つんのめってしまう。
転ばない為に反射的に出した手は輝夜の両肩の服を掴むことになる。
そして掴んだ手を拡げ押し倒す形で倒れこむことに…
勿論ボタンはその時の張力に負けてポンポンと飛んでいく。
結局露になるのは輝夜の雪のように白い肌であった訳で。

「ちょ!やだ!?どいて、放してよ!」

真っ赤になりながら抗議する輝夜に魔理沙が一言。

「…お前痩せ過ぎだろ。もっと栄養を取ったらどうだ?」

「んなっ!?」

輝夜の怒りが爆発するかと思いきやその瞬間。

「輝夜!どうしたの!?」

悲鳴を聞きつけた月の頭脳がやって来た。
そして固まる。
覆いかぶさる魔理沙、上半身半裸の輝夜、これはどう善意的に見間違えてもアレだ。
魔理沙死すべし。
そこからの永琳の行動は早かった。
数億に及ぶ魔理沙の行動をシュミレートし、確実に捕らえ滅する方法を導き出す。
部屋は既に結界に塞がれており、逃げ場は存在しない。

「おっおぉ!?」

「言い訳を聞く余地は無いわ。悔いる時間だけは与えてあげましょう。」

みるみる膨れ上がる永琳の力。
人の歴史より遥か昔に途絶えたと言われる神代の奇蹟『魔導』
恐らく食らえば空間ごと消滅するか、事象の彼方に飛ばされるか、一兆度の炎で焼き尽くされるか、碌なことにはならないだろう。
…まずいっ不味い、これはマズイ!直感が逃げる選択をするべきと喚くのだが逃げ場は無い。
あの天才のことだ、千手先でも読まれていると思って間違いない。
打つ手なしの完全な詰み、後は滅びるのを待つしかないのか…いや!
此処で魔理沙は一つの賭けに出る…それは

「輝夜っ!!」

「!?」

「私を助けろ!!」

「う…むぅ…っだぁ~もう!一つ貸しよっ!」

ここで、永琳の誤算があるとすれば輝夜の助けが入る可能性を除外していたことだ。
まあ常識的に考えて、襲ってきた暴漢を警察から助けようとする被害者はいない。
だが、此処は幻想郷、加えて魔理沙は輝夜のお気に入りの玩具の様なものなのだろう。
蓬莱の玉の枝を手に魔理沙を守るように立ちふさがる輝夜を見て一瞬永琳が怯む。

「…!ココだぜっ。」

その瞬間にできた結界の綻びを魔理沙は見逃さない。
結界の歪みに向かって全力を込めた魔砲を打ち込む。
だが綻びているとは言え、永琳の張った結界は強力だ。
ヒビが入るが壊すには一歩足りない!
そこに輝夜から援護の光弾が貫く。
そうして、ガラスが砕け割れるような音を立てながら結界が壊れていく。

「…っく!」

結界の無い場所で強大な力を振るうことは幻想郷にとって危険な行為だ。
慌てて発動中の術を更なる力で強引に押さえこむ永琳。
その隙を突き命からがら逃げ出した魔理沙であった。


・輝夜…体型を指摘すると怒る?
・永琳…輝夜のことになると怒る


「…あ~、さっきは危なかったぜ。」

本日何度目であろうか、数えるのも億劫なくらいの命の危機からの脱出である。
まあそれも普通の人間ならば、の話だ。
毎日のように危険と隣り合わせな生活をしている魔理沙にとってはこれも日常、と言えるのかもしれない。

順調に研究という名の暴走を進めていく魔理沙だが、その先には避けては通れない道がある。
妖怪の山、名前の通り妖怪達の楽園である。
強大な力を持つ妖が多くいるその場所は魔理沙にとって、格好の餌b…いや餌場である。
件の山を颯爽と駆け上がる魔理沙の前に早速妖怪が立ちふさがる。

「あややややや、何やらネタの匂いがプンプンしますねぇ。」

声の主は射命丸 文、幻想郷最速の鴉天狗である。
魔理沙は内心舌を鳴らす。
というのも、彼女も研究対象からは除外してあるからだ。
天狗と言う種族はとても誇り高くて、仲間意識が強く他を見下している特性がある。
なので、と言う訳ではなくただ文の性格によるのもだ。
出会うのなら椛かにとり辺りが好ましかったのだが。

「まったく、遭いたくない時に会いたくないヤツに出会うもんだ。」

「むむっ、不法侵入者が随分な言い様ね。追い返しちゃいますよ?」

此処でコトが大きくなっては後々厄介なことになる。
そう判断した魔理沙は、斯く斯く然々と大まかにあらましを説明する。
それで文も満足したのか、結果の報告と独占取材を条件に快く通してくれた。
因みに彼女が怒ったらあることないこと秘密一切を、その日のうちに幻想郷中にばら撒く、とのコトだ。
どうしたら怒るのかを聞いた所、記者の誇りが云々と長くなりそうだったので切り捨てた。


・文…怒らすとめんどい


こうして、魔理沙が目指すは妖怪の山の頂上、守矢神社である。
相対するは名高き軍神八坂神奈子、自称霊夢のライバル東風谷早苗である。
共に強大な力を秘めた武士(もののふ)である。
厳しい戦いに思い馳せながら気力を充実させる魔理沙。
神社はもう目の前である!

「たのも~っ!」

声を張り上げ、境内に攻臨する故意…いや恋の魔法使い。
そしてそこには……

カエルとネコとカラスがいた。

「…あらっ?」

拍子抜けしている白と黒の影に気付いた三匹が声を掛けてくる。

「やっほ。今日も元気そうだね魔法使い。」

「あれ~魔理沙ジャン。どったの?」

「うにゅ?魔理沙ぁ?」

順に諏訪子、お燐、お空である。
どうやら、三匹は仲良く地面にお絵かきの真っ最中のようである。
よく見ると何やら細かい図面のようにも見える。
間欠泉地下センター関連のものであろうか?
とりあえず目的の相手の場所を聞く魔理沙。

「神奈子達は?」

「神奈子と早苗なら信仰拡大の為って、あちこち回ってると思うよ。用や願い事なら私が聞くけど?」

相手がいない事を知り意気消沈する魔理沙。
居るのは頭の弱そうな動物三匹のみ。
前足や嘴の生えているような連中じゃ相手にしても妖精以下だ。
勝手にそう判断した魔理沙は気のない返事を出す。

「いや、いいぜ。お前らに人間様の悩みが解るとも思えないしな~。」

そう言いながら手慰みに、地面の落書きをぺっぺっと箒で払ってみる。
それを見たお燐とお空は青い顔で叫ぶ。

「ああ~!!脳みそトコロテン装置の図面がぁ~!?」

…何やら物騒な単語が聞こえてきたが気にしない。
諏訪子も顔を真っ赤にして怒っている。

「やいっ魔理沙!今の発言は聞き捨てならないね。動物差別発言だぞ!」

「そうだそうだ!よくも苦労して書いた図面を!!」

「うにゅ~!」

こちらと違い向こうは意気軒昂のようである。
既に向こうは臨戦態勢だ。
ここで一つ、魔理沙に誤算が生じていた。
三匹が構えると大地が震え、怨霊が啼き、空気が紫電を帯びる。
古代より祭り上げられる土着の最高神、地獄の怨霊を支配する火車、太陽の力を飲み込みし地獄鴉。
そう、この三匹力の大きさが超弩級の怪物どもなのだ。
震える山、廻りあい死霊、駆け抜ける核熱の嵐!
軽い気持ちの魔理沙にとってビックリのカウンターアタックだ。

「まっまままて待て待て!そういう意味で言ったんじゃないんだっ!図面は謝るから話を最後まで聞いてくれ。」

この三匹とまともにやり合って勝てるはずもなし。
慌てて魔理沙は此処から逃げ出す為の口八丁を考え出す。
諏訪子を指差しちょいちょいと手招きをする。
訝しむ諏訪子だったがちょこちょこと寄ってくる。
魔理沙は内緒話をするように口に手を当てそっと話しかける。
お燐とお空は二人のやり取りをじっと見守っている。

「(いや、実は悩みってのは胸の大きさの話でな~、早苗も神奈子も大きいだろう?)」

ふむふむと腕を組んで大げさに頷く諏訪子。

「(お前は大きくない。でもお燐とお空のヤツは大きい。大きいヤツらに小さい奴の悩みが解ると思うか?)」

いやいやと腕を組んで大きく首を振る諏訪子。

「そういう意味で言ったんだ。誤解させるようなこと言って悪かった。」

諏訪子は少し考えるような素振りを見せてから、此方を見守る二匹に言い放つ。

「これは不幸なすれ違いから起きた誤解だった。諍いはもう終りにしよう。」

お燐とお空は諏訪子様が言うのなら、と渋々引き下がる。
用は済んだ、と諏訪子と握手を交わしてから無事妖怪の山を去ることに成功する。


・動物…差別はいけません


「いや~我ながら今日は随分頑張ってるな~」

思いつきで始めた研究だったが思いのほか有意義な時間を過ごせている。
霊夢には感謝しなくちゃな、なんて考えながら飛んでいると変わった建物が目に入る。
命蓮寺、最近出来上がった幻想郷唯一の寺である。
そういえばあそこの尼公である聖 白蓮が怒ったところは見たことがないな…
思い立ったが吉日、魔理沙の体はもう命蓮寺へ向かっていた。
好奇心 動き出したら 止まらない 逝く先の道 修羅道なれど by霧雨 魔理沙 
命蓮寺では、顔馴染みであり魔法使い仲間ということで特に騒ぎを起す事無く中に入ることが出来た。
そうして目の前には目的の相手、聖白蓮が柔らかな物腰でニコニコと笑っている。
対する魔理沙は膝を突き既に打ちひしがれていた。

「て、手強過ぎる…!」

…先程のやり取りを思い返してみると最初に白蓮のいる部屋に入るなり、魔理沙は悪態をついた。

「何でそんな馬鹿みたいにニコニコ笑ってんだ?」

「ふふ、魔理沙に会えることを喜ぶ私は馬鹿なのでしょうか。」

このような感じにヒラリヒラリとかわされるのだ。
その後も色々突っかかってみたが暖簾に腕押し、というかこっちが罪悪感に苦しむ程である。
…このままじゃやられる、そう判断した魔理沙は実力行使に出る。
目の前の豊満な胸に手を伸ばす魔理沙。
正座をしている為スカートには手を伸ばせないので仕方ない。


ムニッ

ガシッ

一揉みしたところで手首をガッシリとつかまれる。
押しても引いても動かない万力のような力だ。
変わらず白蓮はニコニコしているが…
動かないなら揉むまでだぜっと再び手に力を込める魔理沙。


むにっ

めきっ

「ふぐっ!?」

掴まれる腕にチカラが入る、っていうか今メキって言ったぞ?
額から脂汗を流す魔理沙、変わらずニコニコ笑う白蓮。
胸は想像通り、いや想像以上に柔らかく、まことに森羅万象である(意味不明)
魔理沙は手の平の先にある天国とそれを掴む地獄に葛藤する。
が意を決する。

「えぇいっ!南無三!」

無二!

悟入!

「おがあぁ!?」

あまりの痛みに畳の上をゴロゴロ転がる魔理沙。
人というか腕として出してはいけない音が出た、っていうか何をすれば『ごにゅう』なんて音が出るのか。

「いででででってアレ?痛くない。」

絶対骨が折れただろって思ったが腕には何の異常も見受けられない。
首をひねる魔理沙に白蓮は済まなそうに口を開く。

「魔理沙、貴女のような年頃の子がこのような事に興味を抱くのは仕方がないのかも知れません。
 ですが、私も尼僧の身。申し訳ありませんがお戯れはおよしになって下さい。」

悪いのは明らかに魔理沙なのだが、何故か謝られた。
これ以上やったら本当に悪人で変態になってしまう。
というか既に悪人で変態な気がしないでもないが…
…こうして魔理沙は本日最初で最後の白旗を揚げることになる。

「怒ることですか?ありますよ。相手はいつだって不甲斐無い自分自身に、ですが。
 他の人を叱る事はあっても怒ることは決してありません。」

後に事情を話した魔理沙に向かって白蓮はそう語った。
こりゃ敵わないわ…と魔理沙も脱帽するばかりだった。


・白蓮…普通にいい人でした


ふと気付けば陽も傾きかけている。
夕日が紅葉と共に幻想郷を真っ赤に染め上げている。
…今日の所はアリスでも怒らせておしまいにするか。
そんな事を考えながら、魔理沙は我が家のある魔法の森へ向かうのだった。


段々と薄暗くなり、辺りの景色、空共に赤から紫へ移り行き空気も冷えてくる逢魔が時。
魔理沙は漸く魔法の森に着いた。
此処までくれば目的地までも直ぐだろう。
速度を落とし森の上を低空飛行に切り替える。
と言うのも深い森なので場所を見誤ると、あっという間に目的地を通り過ぎて気付かないこともあるからだ。
今日は疲れた、妖怪に絡まれていちいち相手にするのも面倒なものである。
辺りを警戒しながらゆっくりと飛んでいると…見つけてしまった。

「うげ…」

目の前にあるソレを見て思わず声が洩れる。
…何と形容すればいいのだろうか。
大きな樹と樹の間を縫うようにして出来た薄紫に輝く巨大な蜘蛛の巣?のようなもの。
その中心で幻想郷一番の厄ネタ、八雲紫がぐ~すかと寝ているのだ。
気持ちの悪い蜘蛛の巣は嫌がらせのごとく通り道をびっちりと覆っている。
無論彼女は研究対象から除外されている、というのも前に天子が起した異変の時に怒っているのを目撃したからである。
というか極力関わりたくない。
今すぐこの気持ち悪い物体を焼き払いたい気持ちを我慢しつつ、とりあえず箒の頭でつついてみる。
ネバッとした感触と、あっやんっ!という妙な音が出る。
…何だろう。物凄くイラッとくる。

「んむ~…私の睡眠を妨げるのは誰かしら?」

蜘蛛の巣を揺らされたためか、寝ぼけ眼で紫が目を覚ます。
仕方なしに適当に相手にすることを決める魔理沙。

「みんなの魔理沙さんだぜ。お前こんなとこで何やってんだ?というか邪魔。」

「何やってるって、結界の修復をし終わって……ああ、丁度いい樹があったから思わず巣を張って寝てしまったのですわ。」

「そうか、ソイツはご苦労なこった。とりあえずそのキモイの退けてくれ。」

「あら、これはこれは御免あそばせ。」

そういうと紫はふわりと巣から降り立ちしずしずとスカートの裾を持ち上げ始める。
暗がりに見える美しい生足が妖しく扇情的に映る。
おいっ!何やってんだ?と魔理沙が突っ込もうとした所、巣が突然スカートの中に吸い込まれ始める。
ずぞっ、ずぞぞぞ!と蕎麦を啜る様な音で気持ち悪い物体はスカートの中に入っていく。
何と言うかその光景は筆舌に尽くしがたく、もう突っ込んだら負けだなと魔理沙は思う。
時々聞こえる、ふ~ふ~、ぷは~っ等の音に関してはもう無視をするに限る。

「…ふぅっ!それで貴方はこんな時間にどうしたのかしら?」

「別にアリスの家へ…いや、もう疲れたから家に帰る途中だぜ。」

さっきのやり取りでどっと疲れた。
余計なことを言うと更に食いついてくと思った魔理沙は大人しく帰る旨を告げる。

「女子供の夜の一人歩きは危険だわ!私がご一緒しますわ。」

お前と一緒のほうがよっぽど危険だわっ!と声を大にして言いたいが元より何を言っても無駄な相手だ。
結局魔理沙はそうか、勝手にしてくれと呟くコトしか出来なかった。
こうして短い珍道中と相成ったわけだが思いのほか世間話は進む。

「へぇ~、じゃあ結界の修復ってのもお前がやってるのか。」

「そうよ、簡単なものは藍がやってるけど、大きな綻びは私が治すわ。」

「霊夢がやっている所を見たことが無いけど…」

「あの子はまだ若いから自らの使命の大きさを知らないのね。」

どうやら、紫を見誤っていたようだ。
いつもグータラしているようで、人知れず結界の管理をしていたのだ。
…何処まで本当の事か知る由も無いが魔理沙は話を結構鵜呑みにしているようで、目を輝かせて聞いている。

「そうか、聞けば幻想郷が出来てからずっと長い間管理しているらしいな。」

「そうよ~、寝る間を惜しんで頑張っているんだから。」

ちやほやされて紫も満更ではないらしい。
得意げな顔をして笑っている。
そこにいつもの胡散臭さは伺えない。

「全く霊夢はしょうがないヤツだぜ。こんな年寄りに無茶させて自分は茶を飲んでるだけなんだからな。」

「と、年寄…!」

ピシリと紫の笑顔にヒビが入る。
…が、この暗い夜道のことである。
霧雨魔理沙は気付かない。
それどころか、更にヒートアップだ。

「年長者なんだからもっと敬えってんだよな。」

「ね、年長者…!」

モチロン魔理沙には少しも悪気が無い。
無いからタチが悪いとも言える。
どっちにしろ段々と笑顔が消えていく紫。
…そして決定的な一言。

「いや、尊敬するぜ紫。そ~だな、私も歳を取ったらお前みたいな立派なババァ…っいて!」

暗い夜道を興奮して話しながら歩いていた魔理沙は運悪く…いや運良く木の根に足を引っ掛けて転んでしまう。


ガォンッ!!


…聞いた事の無い轟音が頭上を駆け抜ける。
同時にちっと舌打ちする紫。

「…? どうしたんだ?」

「…いえね、貴方があんまり褒めるからお礼に亜空間にバラ撒…ゲフンゲフン、素敵空間にご案内しようかと思ったのですが…」

「そうか、まぁ今日は遅いからまたの機会に頼むぜ。」

「…ええ、またの機会にね…!」

霧雨魔理沙は気付かない。
たった今、自分の帽子の半分と頭上にある多数の樹木が文字通り空間ごとこの世から消滅したという事実を。

「いや、悪かったな。わざわざ家の前まで。また話聞かせてくれよなっ!」

「…ほほほ、せいぜい夜道には気を付けることね。」

結局家の前まで送ってもらってしまった。
紫はやたらスキマを通らせたがっていたが、歩いても直ぐだったので丁重にお断りしておいた。
去り際に何故か物凄く目がビカビカ光っていたがもういちいち突っ込むのは止めにしたのだ。




…家に帰り、部屋に入るとそのままベットへとダイブする。
今日は非常に有意義な研究が出来た。
まだまだレポートを完成させるためには研究が必要だが、いいスタートを切れたと言える。
正直、(人生の)終わりへのスタート感は否めないのだが。
ご飯もシャワーもまだだけど、とりあえずこの満足感と幸福感に包まれて一眠りしようと思う魔理沙。
レポートが完成ようがしまいが碌でもない未来が待ち構えているであろう魔理沙は暢気にも次の対象に思いを馳せ瞳を瞑るのだった。








オマケ


博麗神社にて

「ぶえっくしょい!ううっさぶっ!魔理沙のやつ、今度会ったら身包み剥いで同じ目にあわせてやるわ。」


紅魔館にて

「さくやぁ~わたし汚されたぁ~!」

「ご安心を、お嬢様。あの痴れ者を全身血で汚す準備は整っていますわ。」


白玉楼にて

「妖夢、貴女はまだまだ半人前ね。私はともかく団子くらいは守れるようにならないと。」

「…はぁ。(何故に団子?)」


寺子屋にて

「先生~『いっぱい』のいを」

めこっ

「じょ、譲吉ぃ~~!?」


守矢神社にて

「とりあえず大きくて御免なさいって言え!」

「なにがっ!?」


命蓮寺にて

「ねぇ星、貴方も私の胸とかに興味はあるのかしら?」

「ええぇ!?いや、あの、その…!」


紫家にて

「藍、偶然に見せかけてあの黒白を亡き者にしなさい。欠伸したら鳥の糞が降ってきて口に詰まって窒息死的な。」

「嫌ですよ、面倒くさい…」
難産の子は変態でした…
血潮滾るバトルにしようと思ったのにどうしてこうなった?

ともあれ、お楽しみいただけたら幸いです。

誤字修正しました…これはヒドイ…
たくさんのご指摘、感想とても感謝しております。
少しでも質の高い作品にてご恩をお返しできればと常々思っております。
飛蝗
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コメント



0.1950簡易評価
2.100名前が無い程度の能力削除
ひでぇ!魔理沙ひでぇ!
何という無駄に命を賭けたチキンレース!
でも魔理沙すごくらしくて良かったですね。
9.100名前が無い程度の能力削除
ババアニラ・アイs(ガオン
11.無評価名前が無い程度の能力削除
こういう暴虐無人で反省しない魔理沙さんのお話を読むたびに、なんでこの人が妖怪に好かれてるのって思ってしまう。
そこが魔理沙らしくて良いんだって言われたら「そうですか」としか言えないけど。
魔理沙さんが嫌なやつ過ぎて私は楽しめませんでした。
15.10名前が無い程度の能力削除
内容がひどいのは仕方ないけど、せめてキャラの名前くらい書いてあげましょうよ。
中国って誰。
16.100名前が無い程度の能力削除
おもしろかった。
ただ永琳を永淋って打ち間違えてる人はよく見かけるが永燐って打つ人は初めてだwww
17.80名前が無い程度の能力削除
構成が点線でつないだだけで、次につながるための前段階じゃないという点は不満です。
つまり、単なる羅列になっています。
それ以外のところを個別に見ていくと、魔理沙らしい少女らしさがよく感じ取れてよかったと思います。
19.90名前が無い程度の能力削除
面白かったんですが、どうせならアリスまで読みたかったです
21.20名前が無い程度の能力削除
↑原作の設定では、魔理沙は決して皆から好かれておりませんぜ。皆から好かれていたりフランやアリスやパチュリーに惚れられているのは二次設定。

魔理沙が傍若無人な行動に出る理由が適当すぎて、ナンセンスとしても上手く消化されておらず、結果として魔理沙が「ちょっとした思い付きだけで、無駄に幻想郷のパワーバランサー達に喧嘩を売る、単なるキ○ガイ」に見えてしまいます。
こういった「自分勝手な人物がやりたい放題して周りに迷惑をかける」というのは普通に眉を顰める類の所業なので、これをギャグとして、或いは「魔理沙はバッカだなぁ」というほのぼのしい笑いに繋げるにはそれなり以上の工夫と段取りが必要になって来ると思われます。

即ち、工夫不足。或いは段取り不足。

そして二次設定のイメージに毒されすぎでしょう。
実際の所、美鈴やパチュリーに対する勝率だって、スペカルールに守られている故に敗戦しても殺されないだけで、決して常勝とは言えない筈なのですから。
二次設定が悪いという訳ではありません。
しかし、原作を土台にした上で二次設定を活用した作品と、単に二次設定を並べただけの作品では、読者の視点からして明白な「差」が生じる物なのです。
ご精進を。
28.80名前が無い程度の能力削除
自分的にネタ自体はかなり好きだったりします。
ただ、こういうのは最後、皆にしっかりやり返されるオチのシーンを描写するのが必要じゃないかなという気も……
31.90名前が無い程度の能力削除
ネタが懐かしすぎるwwww
ところどころエロくてギリギリだったけど、だがそれがいい!
32.無評価名前が無い程度の能力削除
これはうざい魔理沙
33.100名前が無い程度の能力削除
エイキッキの所にも行くんだ!
35.無評価名前が無い程度の能力削除
ああ、最近増えてますよね。
きちんと叱られずに育ったが故に、人の痛みが判らない、
ものの善悪の区別がつかない子供たちって。
あえて東方の人気キャラである魔理沙をそのように描く事で
読者に問題提起をしているわけですね。
41.100名前が無い程度の能力削除
おk。とりあえず、こぁがマぁズイねwww
47.90名前が無い程度の能力削除
魔理沙ってこういう奴だよなぁ……
いつか本当に殺されないかマジで心配