Coolier - 新生・東方創想話

こんな白黒~普通の魔法使い~

2009/11/20 01:26:18
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 「それじゃ、こいつは借りてくぜ!」
 「もっていかないで~」

 はるか後方で、パチュリーの泣き声が聞こえるが、とりあえずは気にしない。
 最速の座は譲ったが、その逃げ足はいまだ健在。ザル警備には捕まりゃしないと、いささかの自信がある。
 妖精メイドを切り抜けて、瀟洒なナイフをグレイズし、門番はすでに夢の中。
 こうして今日も大勝利。霧雨魔理沙の盗人劇は、大団円に幕を閉じる。


 言葉遣いが乱暴で、その7割が嘘である。いつでも何所でも手癖が悪く、その上盗人猛々しい。負けず嫌いのひねくれ者で、弾幕だって極太レーザー。どこに避けろと言うのかと、突っ込みはあえて受け付けない。
 霧雨魔理沙と言う少女は、割とどこでも煙たがれる。八雲紫とは別の意味での、幻想郷の嫌われ者だ。そんな風評の事くらいは魔理沙自身も知っている。
 しかし彼女にゃ夢がある。いつか必ず大成するのだ。目指すは生粋の魔法使い。その研究には余念がなく、陰ではこっそり努力家だった。

 雑然とした自宅にて、盗んだばかりの本を開く。これがずっと欲しかったのだと、会心の笑みも忘れない。
 本の作者はパチュリーだった。あの図書館には珍しくない。半分はやつの自著ではないか? 同業者として関心する。
 あの子はホントにすごいやつだと、心の底から思うのだ。生まれながらの魔法使いで、知らぬ魔法などないだろう。そう、この魔道書にだって、知らない事しか書いてない。

 ……ため息が出た。

 ―――本当はさ、分かってるんだ。私なんかがどんなに頑張っても、あのパチュリーみたいなすごい魔法使いには、きっとなれない……
 パチュリーだけじゃないさ。アリスや、白蓮もすごいやつらだ。私にはできない事を、私には使えない魔法を、私じゃ真似できないような弾幕を、ヤツらは何事もなく使いこなす。

                    ―――ダメだ。

 マスタースパークなんて結局、ミニ八卦炉吹かしてるだけじゃないか。キノコ混ぜたり煮たりするけど、それって魔法と言えるのか?そりゃ爆発したりするけど、それはキノコがすごいんであって、私は混ぜて焼いてるだけさ。

                    ―――違う! あれは立派な魔法だ!
                        私の発見した魔法だ!

 私も魔道書を書いている。いや、書くまねごとをしている。しかし、こんなのただの汚いメモ書きじゃないか。キノコ観察日記じゃないか。理論も何もあったものじゃない。こんなの人に見せたら、一笑に付されるか、憐みの目で見られるか。

                    ―――これは自慢の、努力の軌跡だ!
                        この手帳こそが私の、
                        魔法使いとしての証じゃないか!

 あの三人だけじゃないな。八雲紫も、西行寺幽々子も、霊夢だってそうだ。皆超人ばかりだ。私が追いつけない化け物ばっかりだ。綺麗な弾幕はって、見事なスペルカードを作って、みんな強くて、

                    ―――あいつらが特別なんだ!
                        あいつらが凄過ぎるんだよ!

 そう、あいつらは特別さ。それぬ比べて私は普通の魔法使いなんだ。
 取るに足りない、普通の―――

 「ちょっと魔理沙! あんた聞いてるの!?」
 「おぉう!?」
 
 心底ビビった。霊夢だった。いつの間にやら来ていたらしい。

 「……まぁいいわ。じゃあお茶淹れて」
 「は?」
 「だからお茶淹れなさいよ。せっかく訪ねてきてやったって言うのに、お茶も出さないのこの家は?」
 「えっと……呼んだ覚えはないぜ?」
 「いいからとっとと淹れて来い!」

 なんて理不尽な奴だろう。しかし、ここは素直に言う事を聞いた方がよさそうだ。スペルカードを出されると、勝ち目がないから。


 で、淹れてきたわけだが、さっきまで座っていた椅子を占領している霊夢。
 どういうつもりだチクショウ。

 「ありがとう。いいお手前ね」
 「そりゃどうも……で? お前さんいったい何しに来たんだ?」
 「ん?」
 「だから、わざわざ家に何しに来たんだ?」
 「お茶、しばきに?」
 
 ケロリとそんな事を言う、事もなげな霊夢。

 「だからわけわからん。自分の家でしばきゃいいだろうが」
 「別にいいじゃない。減るもんじゃないし」
 「減るんだ! 時間が! わたしゃこれでも忙しいんだぜ!?」
 「ど~だか~……っと、飲み終わったし、帰るわ」
 「……は?」

 何やら満足した様子で、椅子から立ち上がる霊夢。

 「いやいやいや待て! お前さんどういうつもりだ!? まさかホントに茶しばきに来ただけか!?」
 「そうよ? あんたとお茶したかっただけ。ただ、それだけよ」

 そう、さわやかに言い残し、本当に帰ってしまった霊夢。



 風のように現れて、風と共に去っていく。ホントに何しに来たんだろう? いまいち真意が読みとれないな。
 まぁいい、邪魔もいなくなり、これで研究が再開できる。盗られた椅子を取り戻し、今一度本に取り掛かろう。
 おっと、南無三。私とした事が。
 こんな面白い記述があるのに、ものの見事に見落としていた。
 これは早速試してみよう。手帳とペンを取り出して、キノコを鉢で混ぜ合わせる。
 
 目指すは生粋の魔法使い。
 今夜はきっと、忙しくなる。
 「お茶をしばく」と言うのは、お茶を飲む事を言います。ローカルに過ぎましたしたかね ^^;
 
 人生2作目の投稿作です。ちょっとした試みがあったのですが、う~ん ^^;

 人にはネガティブになる事もあると思います。そんなとき、友達や家族がいてくれたら、どんなに助けられることか。
 そんな事を考える今日この頃です。

 霊夢は勘がいい子ですから。きっとそういう事です。
 あと、魔理沙が種族としての魔法使い目指してますが、そこは二次創作ってことでお許しください。

 では、できればまたお会いしましょう。

 追記 性懲りもなく誤字修正しました。
    確認して投降したつもりだったんですがねぇ ^^;
高機動型ユボン3号
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コメント



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3.80アリサ削除
いい作品だと思います。ただもう少し長くても良かったかな……続きが気になってしまいましたw 次回作を期待してます。
8.80名前が無い程度の能力削除
最初読んだ時は結局何が言いたいのかわからない作品だと思いましたが、二度目に読み直してみると、霊夢が来た後は負のスパイラルに陥っていた魔理沙が見事にいつものポジティブな思考に戻ってますね。成る程、良い作品です。
9.90名前が無い程度の能力削除
負のスパイラルに陥りそうな時にこういう友人が居るといいですねぇ