Coolier - 新生・東方創想話

孤高に咲く二輪の花

2009/11/15 01:56:32
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射命丸 文は部下である犬走 椛が最近、遊んでいると小耳に挟んだ。

椛の警護している付近には滝つぼがある。
その滝から流れていく川原沿いに椛が面倒臭がって家に帰らず、立て篭もっている小屋がある。

小屋に椛の姿を探しに行けば案の定、にとりと将棋盤を挟んで睨めっこしていた。いや、椛の手は素早い。
長考してるのは、にとりだけ。

椛は駒を置く速度に躊躇いはない。千手先を読んでるかのように。

それはなにも将棋だけではない。

椛の千里眼は何処に居ようと侵入者を発見できる。
だから将棋をしていも問題はないけれど、いざ戦うとなった時に心構えがどうしても遅れてしまうだろう。

もし、椛が怪我をすれば全部、文の管理責任になってしまう。
万が一の戦闘を考えて椛にわざわざ尋ねた。


「最近、遊んでばっかりね。なんでなの?」


にとりが息を吐いて、額の汗を拭った。
椛が「少し休憩を挟みましょう」と、にとりに告げる。
そして、上司の心配を他所に、椛は嬉々として答えた。


「それは仕方ないですよー。だって、誰も来ないですよ?あんな所にあんな人が居座ってしまえば」
「あんな人って誰?巫女とか鬼のあの方とか?」
「いーえ、違います。向日葵が山の麓を遮るように沢山生えてるんです。巫女も伊吹様も山へ訪れようとしたみたいでしたが、向日葵畑で泣きながら引き返していきました。いつだか記事にしたじゃないですか。風見 幽香の性格は最悪だって」


だから、良いんです。と、椛はなにも考えてないかのように笑った。


「じゃあ、その風見 幽香が山に侵入してくるとは考えなかったの?」


へ?と、泥棒が空き巣に入って、いきなり目の前にギロチンの刃が落ちてきたような顔で椛は硬直した。
額に珠の汗を浮かべ、だらだらと滝のように流し始める。


「今からあの妖怪の所へ―――ぐえっ!?」


今頃仕事を思い出し、駆け出した椛の襟首を文は掴んで引っ張る。


「やめてよ、もう」
「っ、なんでですか?今更ですが、失態を償わせてください。私なりに危険かどうか、見極めての休暇だったんです……」
「ふぅ……それは嘘。椛に危険を見極める力は無いわ。ここでしばらく頭を冷やしてなさい」
「っっ」


椛は拳を握り締め、俯いた。別に苛めるつもりはない。
ただ、問題は椛が風見 幽香に対抗しうるのか、どうか。きっと苛められて終わり。
汚名を返上しようとして失敗じゃあ、椛が落ち込む様が眼に浮かぶ。


「あははー、優しいねぇ」
「えっ?」


椛が顔を上げて、にとりを見つめ、瞼を瞬かせる。
にとりは椛の視線に笑いかけ、そして文にも笑みを向ける。その眼を”私には分かってるよ”と、言わんばかりに細めて。
文は両肩を竦めて、踵を返した。


「そういう訳ですからにとりさん。椛を頼みますよ」
「了ー解。文さんも気をつけてねー」


にとりは、ぱちりと小気味良い将棋の駒を指して文を送り出したのだった。










秋の紅葉に彩られた山を降っていく。滝つぼから連なる川を沿ってひたすら進む。
そうすると果てには人里近くへと、たどり着く。―――はずだった。

途中、秋色に負けじと黄色い太陽の花が咲き乱れている。一見、端が見えないぐらい広い向日葵畑がそこにはあった。


「あややー。こりゃあ、また面倒な場所に来たものね」


これじゃあ、人が山に登りづらく、また妖怪も人里へ降りづらい。
どうりで、椛が仕事中なのに将棋を始めるわけだ。

「それにしても……なんでここなのか、よね。理由が分かればあの人とはいえ、なんとか出来ると思うけど」

これだけ広大な向日葵の中、幽香を探すのは一苦労だと容易く想像がつく。
文は肩を落としたくなる衝動を抑え、探そうと地上を飛び立つ。


「理由を知れば何をなんとか出来るの?」


背後で気配も無かったのに、唐突に声がした。文は中空で体を翻した。
くるり、くるり、と暇つぶしのように日傘を回しながら、風見 幽香は穏やかに笑っていた。

そう、穏やかに―――――――身も凍りつくような殺気を放っている。
幽香は最初から戦る気満々だった。


口内の唾液を嚥下して、文は言葉を紡ぐ。

「ええ。幽香さんに別の場所へ移動して貰える様、話が出来ると思います」
「ふーん?じゃあ、理由。教えてあげようか?」
「是非、お願いします」


くふ、と幽香は笑みを深めた。


「山の麓には紅葉の神様が居ると聞いたわ。だから、向日葵で紅葉の景色を乱して、ああ――いえ、折角なので私も混ぜて貰おうと思ったのよ」


文は閉口した。
内心、やっぱりこの人は性格悪いとうんざりしていた。
しかし、顔に出したつもりは無いのに幽香は告げた。


「あら?なにその顔。嫌ねぇ、そんなに私と遊びたかったの?良いわ、かかって来なさい」
「………」


その上、幽香は暇を持て余してる。
さながら遊歩する台風のような存在だ。
そんなものにこれ以上、近寄るのは得にもならない。


「いやいやいや、まったくもって私は良くないです。それに、個人的な用事でしたら気軽にお相手も出来たんですが、今回は天狗社会の一員として来たんです。だから、簡単に遊ぶ事は出来ないのです。こう見えて立場がそれなりのものですから」


文は言外に、もし遊ぶのであれば天狗の組織を相手取る事になりますよ、と告げたのだ。
幽香もキョトン、と眼を丸くして、くすくすと喉を鳴らし始める。


「組織って面倒ねぇ。貴女、息苦しくないの?」
「それが天狗ですから。それで幽香さんはどれぐらいこの地に滞在するつもりですか?秋が終わるまでですか?」
「いーえ。私がこの地を後にするのは、仰々しい天狗の群れを駆逐してからよ」


ぴしり、と文の中で何かが弾けた。
不味いと思った。しかし、言葉は滑らかで口からするりと飛び出した。


「へぇ、それじゃあ幽香さんは此処で一生を終えるんですね?」
「そうかしら?まぁ、三日ぐらいの暇つぶしにはなるんじゃないかと私は見ているわ」
「………今すぐ人生終わらせたいんですか?」
「貴女の?」


幽香は楽しそうな表情で、くるり、くるりと傘を回し続けていた。
しかし、指一本動かせない程の凍えるような殺気が辺りを覆いつくしている。
緊迫した空気の中、文はゆっくりと地に足をついた。


「その傘、さっきから回してますね。どうやら私では幽香さんの傘回しより退屈を払拭できなかったようです」
「―――ああ」


言われて初めて幽香は傘回しを止める。
そして、「なるほど」と呟き、やっぱり楽しそうに声を漏らした。


「そうね、貴女は傘回しより退屈だったわ」
「そうでしょう。幽香さんにそう言って貰えると、ホッとしますよ」
「あは、あはははははっはっ!」


耐え切れないと、幽香は空を仰ぐように笑い始める。
文も微笑む。右手の拳を震えるほど強く握り締めて。


「可笑しいわ。中々の啖呵でした、及第点をあげましょう」


幽香は文に近寄っていき、握り締めた拳を手にとった。
指を一本ずつ丁寧に広げていき、掌にフリルの付いた小さな袋を置いた。


「これは?」
「アリスから貰ったクッキーよ。喉も渇いたでしょうからお茶を飲みながら食べてちょうだい」


袋の口を小さな赤いリボンで結ってある。
リボンにまでフリルが付いており、文はさすがアリスさんですね、と感心する。


「ええ。アリスの器用さは私が保証するわ」


文は眼を瞬かせた。
そんな反応が気に入らないのか幽香は笑みを潜め、不機嫌そうに右目だけを細める。


「なにかしら?私が保証したら不味いの?」
「いえ、そんなことないです。ただ、幽香さんみたいな方がアリスさんを認めている事に驚いただけです」
「さりげなく侮辱された気がするけど、まぁ良いわ。でも、貴女はアリスの事を見誤っているみたいね」
「アリスさんを、ですか?」
「忘れて頂戴」
「え、はい?忘れてって」
「あの娘の真価は私だけが知っていれば良いのよ」



今度こそ、文は魚のように口を半分ほど開けて、絶句する。
言葉と共に幽香が寂しげに微笑を浮かべているからだ。
そして、それを言及してしまう、口さがないのは職業病だろう。


「……私は新聞記者です。全てを知りたいと思っています」
「あら。貴女の口を塞ぐのに私の手は一本余ってしまうわ。喉も絞めてあげるわね」
「呼吸を止めても筆は止まりませんよ?」
「そうね。じゃあ、両手を切り落として、文字が読めないように眼を焼いてみるわ」


うわぁ。と、文は口端を引き攣らせる。
幽香はさらりと言ったから。本気でやりかねない楽しそうな視線が怖かった。
そこまでいくとサドスティックな性格とかじゃなくて、ただの拷問嗜好だ。
すぐに文は頭を下げる。


「いえ、戯言でした。忘れてください」
「うん。忘れてあげるわ」


それでも綺麗な笑顔は見るものを魅了する。
アンバランスな言動と表情は人に危険な刺激を与える。さながら、毒を持つ花のように。

されど、知っているものは触れはしない。
知らないものは容易く触り、毒の強さを知り、二度と近寄らない。

誰も彼もが好き好んで近寄ろうとはしない。

それは、なんて―――孤独。
いや、風見 幽香は孤高なのだろう。

文は思う。どれぐらいの高さまで飛べば、その孤高に辿り着くのか?と。

とはいえ、本題を忘れている訳でもない。
コホン、と咳払いをして尋ねる。


「それで……、この向日葵なんですけどー」
「そうね。でも、貴女はどうすれば良いのか答えを知っているでしょう?」


答え?
文は眉を沿え、黙考する。
しかし、考えても答えは出ない。

ふと、幽香は笑い出し、―――――傘を回し始めた。

「あっ!」
「ふふ、駄目ねぇ。それでも新聞記者なの?」

うっ!と、文は言葉が突き刺さった胸を押さえる。
一本取られ、誤魔化すように苦笑いしか出来なかった。


「あやや……。分かりました、良いでしょう。私が幽香さんの退屈を払拭してさしあげます」


だけど、しっかりと答えを紡ぎながら文は飛び立つ。
文の言葉に幽香は嬉しそうに一つ、頷いたのだった。




















蝋燭と月明かりの差し込む部屋。

文の私室は畳が敷かれている。部屋の中心にある丸いテーブルの上には乱雑に書き散らされた原稿。

文の仕事は速かった。
ソレを書き上げたのは夜中の事だった。

朝一番に印刷所へ、そしてから幻想郷中に配り尽くそう。

そう思い、テーブルの上に頭を落とし、文は眠気のままに意識を手放したのだった。















寺院内で聖 白蓮は、文字が浮遊している透明な巻物を広げては、閉じてを繰り返していた。
その度に文字は入れ替わり、聖は視線を蛇のように這わせる。


「聖。今、宜しいですか?」


声に誘われ、聖が面を上げると寅丸 星が一枚の紙を手にしながら近寄ってきた。
ただし、星の顔は少しだけ、苦そうな顔をしている。


「なにか問題が起きたの?」
「いえ全然問題ないです。ただ、聖にとっては問題かもしれないです」


私にとって?と、聖が反唱しながら星の差し出した紙を受け取った。
書かれている言葉を吟味して、口にする。


「傍迷惑ナ妖怪、駆除求ム……?」
「花を咲かす妖怪だそうです。どうにも、人も妖怪も困っていると。恐らく苦情が相次いだのでしょう」
「でも、辺り一面に向日葵を咲かしているだけと書かれているわ。それが、なんで駆除なんて……うん?」
「ええ、気づきましたか。下の欄に『すでに巫女と鬼が退治に向かって失敗した』と、ありますね」
「泣きながらって……私が封印される前は鬼なんて恐怖の代名詞だったのに、それもあの巫女が泣きながらって一体……?」


さぁ、どうするんですか?と、星は無言で聖を見つめる。



「会いに行きましょう。この幻想郷では鬼よりも危険な者達は居るはずです。それに」
「それに?」


星は微笑を浮かべながら聖の言葉を待つ。
そして、聖は楽しそうにひっそりと告げる。



「このお寺の周りにも花が咲いていたら良いと思わない?」



























「まぁ。楽しめたかしら?」

幽香は空の彼方を見つめながら、呟いた。


事が起きたのは先刻。

大きく育てた向日葵の幹に、背を預けて昼寝をしていたら、どこぞの馬鹿が大きな声で喚いていた。


「退治してあげるから出てきなさい!」と。


顔を見せれば、唐突に名乗りだし、馬鹿の一つ覚えのように「退治するわ」の繰り返し。
天人だかなんだか知らないけれど、人の昼寝を邪魔して良いものではない。

これは妖怪だろうが人間だろうが守るべき鉄則だ。
幽香は氷精にでさえ伝わるように、優しく語りかけた。


「私は昼寝をしていたのよ。それを起こすなんてどう責任をとってくれるの?ああ、寝つきの良い枕が良いわね、ソレで良いわ」
「何言ってるのよ、貴女は此処で私に退治されるの。だから、寝つきの良い枕なんて用意しないわ」
「うん?何か勘違いしてるみたいだけど、貴女が枕になるのよ。大丈夫。死体の冷たさがきっと心地良くてすぐに眠れると思うわ」
「なっ……!」
「それに、腐ったら花の養分にしてあげる。そうすれば何の役に立たない天人でも、閻魔様に顔向けできるでしょう。感謝しなさい?」
「っ―――――やってみなさい!!」


だけど言葉を尽くした幽香に、怒り出した天人は剣を地面に突き刺したのだ。
何をするのか、胸を躍らせて見ていた幽香の眼が、次第に輝きを失って冷めていった。

地面が揺れ始め、所々で破裂したのだ。それも巨大な岩で向日葵を根こそぎ潰しながら。

「はぁ」

幽香は緩やかに右足を大きく踏み出し―――、地が爆ぜた。

「えっ?」

眼と脳が繋がってないかのように、天人の反応はあまりに遅かった。
天人の隣には閉じた傘を振りかぶる幽香の姿。
避けもしない天人に幽香は容赦なく、振り抜いていく。

メキリ、と音がした。この傘は滅多に折れない。
だから目頭に傘を減り込ませた、天人の顔が潰れた音だろう。

「ぷぎゅるっっ!?」

風を裂く音。霞のように撒かれる赤い液体。

あっというまに天人は空の彼方へ、小さくなって見えなくなった。――完。

そして今。
幽香は辺りを見回す。荒れた大地に、引き千切られた向日葵の亡き骸しかなかった。
しかし、幽香が傘を広げ、日の光を遮ると同時に向日葵も生え始め、一分も経たない内に背を均等に揃っていた。


「これで良し、と。…………それで?貴女はどんな用事かしら?」


幽香が振り返れば、そこには黒い洋服の少女が、上品な笑みを浮かべて佇んでいた。
天人が暴れ始めた時には、既に少女は素知らぬ顔で其処に居た。

視界に入れて初めて、幽香は少女の存在に気づいたのだ。

ただ、殺気を向けても反応が無いのだから無視をしていたのだけど。


「果たしてあの天人は気づいていたのかしらね…」


自分が捨て駒にされた事を。
何故なら少女はずっと、幽香の事だけを見ていたのだから。
最初から、天人が負ける事を予想していたかのように。


「初めまして。聖 白蓮と申します。宜しくお願いします」


頬を綻ばせ、白蓮は近づいてくる。
幽香はより強い殺気を当てる。しかし、白蓮は涼しい顔で幽香の目の前まで進んできた。


「………白蓮さんね。私は風見 幽香。ただの花を咲かすだけの妖怪よ」


ふと、白蓮は右、左と見渡し、最後に幽香に顔を向ける。


「そうですか、花は好きですよ。私の名前も白い蓮と書きますもの。それに、秋に咲き乱れる向日葵というのも良いものですね」
「ええ、そうでしょう。ところで花のどんな所が好きなの?是非、聞きたいわ」
「花が一面に咲いている景色。まるで人が踏み入れるのを拒んでいるような、怖い所がですね」
「花が怖い?貴女はどれだけ臆病なのよ」
「幽香さんは怖くないんですか?向日葵に囲まれて独りで居る事が」


白蓮の表情は優しいけど、眼の奥が揺れている。何かを訴えかけているかのように。
幽香は白蓮の言葉を吟味し、考える。


「……いまいち貴女の言いたい事が分からないわ。それに私は花に包まれていれば十分なのよ」
「それは贅沢で自由な生き方ですね。ですが、今回は大丈夫でしたが幽香さんの力が及ばず、大変な眼にあってしまうかも知れないですよ?でしたら、」


いよいよ本題を切り出してきた。
幽香は内心楽しみだった。どんな言葉を聞かせてくれるのだろう。

唐突に昨日の烏天狗とのやり取りを思い出した。

射命丸 文が書面で何かを配った事は知っていた。
そして、納得する。
天人が何故、ここに来たのか。遅れながらも幽香は気づく。
―――あの天狗、やってくれるわね。
きっと、記事の見出しは”強者、求ム”とか、そんな感じだろう。

あはは、と笑い出しそうな衝動を抑え、白蓮に尋ねる。


「それで私はどうればいいの?」


最近は舌戦ばっかりだった。
霊夢も鬼も鴉天狗も満足できる程度に苛められたから。
たまには山の一つや二つ、潰すような弾幕ごっこをしてみたかった。

さっきの天人より、目の前の少女は幾分かマシだろう。
幽香は傘を閉じて白蓮の言葉を待つ。

ゆっくりと流れる時間がもどかしかった。
白蓮の口が開き、そして、言葉を紡いだ。



「私と同棲してください」


けろり、と蛙が鳴くような気軽さで白蓮は告げた。
さすがの幽香もこれには硬直する以外は何も出来なかったのだった。































どさり、と何かが落ちた。
幽香の視界には落ちるような物は何も無かった。
何事だろう、と白蓮が体を半身にして後ろを振り返った。

白蓮に隠れる形だった新しい来訪者は、今さっきの幽香と同じように硬直していた。
その人物の名前を珍しく震えた声で幽香は呟く。


「アリス…、なんでここにいるの…」


アリスの足元には木網のバスケットが転がっている。
中からはサンドイッチが地に撒かれていた。
両隣に浮いている二体の人形が「アリス、ダイジョウブ?」と、心配そうにアリスを見上げていた。


「はぁ、変な広告が出回ってるから来てみれば、なんてタイミングだったのかしら…」


白々しく大きな溜め息を吐いて、アリスはしゃがみ込み、バスケットの中に土塗れのサンドイッチを無造作に詰め込み始める。

「それじゃあ、お幸せに」
「ちょっと、アリス!」

アリスの足取りは素早く、幽香の声にも無反応。
淀みない速度でアリスの背中はすぐに見えなくなっていった。

駆け出そうと踏み出した足が引こうにも引けず、それが幽香にはもどかしかった。

白蓮が「んー?」と、人差し指で顎を押さえて、首を傾げる。
そして、何を思ったのか嬉しそうに口を開いた。


「人形が喋ってましたがアレは妖精さんですか?」
「五月蝿いわよ……!」

何が妖精さんだ、アンタの頭が妖精レベルだ!
憤りをまったく隠さず、幽香は歯を剥いて噛み付くように告げた。

幽香にとってアリスは数少ない友人であり、ゆっくりと談笑できる間柄でもあった。
先ほどの白蓮の言葉じゃないが、ずっと独りでも良いと思っている。
ただ、気が向いた時に簡単に足が向く方向がある、というのは実に楽なのだ。

いつ訪れてもアリスは不快な顔も快い顔もせず、淡々と迎えてくれる。
花のようにそこに居てくれるだけの存在はとても気が休まる。それでいて、暇つぶしに言葉も交わしてくれるのであれば最高だ。

なによりも幽香はアリスの作るお菓子と紅茶がとても好きだった。


そんな日常が、二度と訪れなくなる。


「アリスに変な誤解されたじゃないの……!どう責任とってくれるの……?」

剥き出しの殺意を当てつけ、さすがの頭の中に妖精を飼っている白蓮も神妙な顔で頷いた。


「じゃあ、とりあえず我が家に来ま」
「貴女はもう喋らないで二度と口を開かないで言葉を吐かないで今すぐ呼吸を止めて大気汚染を防いでついでにそのまま死んで野晒しのまま鳥葬して肉片一つ消え去ってちょうだい」
「そういえば――うぐっ!?」


黙らない白蓮の口を幽香は力づくで押さえる。
荒い呼吸で怒気を吐き散らしながら、右手で白蓮の口を押さえ、左手で白蓮の右手を背中へと追いやる。
一歩、二歩と白蓮は幽香から逃れようと後退し、右足の踵を左足に躓かせ、倒れこんだ。

「きゃっ!?」

衝撃で白蓮の口を押さえていた手は外れ、幽香は両手を白蓮の顔の両隣についた。
後頭部を地面にぶつけ、白蓮は眼に涙を溜める。
何か更なる誤解を呼びそうな体勢だと、幽香が頭の片隅に浮かべた。

瞬間。

眼を一瞬だけ眩ませる光。
パシャリ。小気味良い音、ただし幽香にとっては今、最もおぞましい音が聞こえた。

ゆっくりと首を捻り、左側を見る。

「ふふ、うふふふ、くふふふふ、うふうふふふふふふふ、あは、くぅふぅうふふふふふふふうっふふうふっふうふふふ」

頬が裂けそうなぐらいの不気味で酷薄な笑みを浮かべた鴉天狗が居た。
しっかり白蓮と幽香が入るように膝を屈めており、またカメラを構える。

「幽香さん。はい、ち~ず」

文はシャッターを切った。

パシャリ。眩い光。

「っっ~~~!」

幽香が体を起こし、駆け出すこと一秒。
文が「ぷっぷー」と、口を隠して嘲笑するのに二秒。
幽香の伸ばした手が文の体に影を作るまで四秒。

そして、文が地を蹴り、


「幻想郷最速は伊達じゃないですよーーーだ!!」


空の彼方へ飛んでいくまでが―――――コンマ一秒。

幽香では決して出せない域の速度だった。
ぎちり、と握り締めた拳から血があふれ出る。
歯を噛み締め、空を燃やし尽くすかのように真っ赤な眼で文の消えた先を睨んでいた。

「それでは追いましょうか」
「………はい?」

隣に白蓮が素知らぬ顔で並ぶ。
幽香は口端を引きつらせながら、射殺すような視線を向ける。


「それとも幽香さんはさっきの方を追いますか?なら、私は写真を取り返しに行きますよ」


にっこりと白蓮は人の気も知らずに笑う。
能天気にも程がある。こんな奴を気難しいアリスの所へ、向かわせられない。
それに鴉天狗の行動速度は異常だ。あの調子だと浮かれたまま記事にするだろうが、堪ったものじゃない。
少なくとも、人手は無いより合った方が良い。


「アリスの家へ、後で一緒に行くわよ」
「分かりました。謝らせてもらいます」


素直に言い分を聞いて承諾する白蓮は、歪な感じがした。


「……白蓮って言ったわね。貴女もしかして、ただのお人よしなの?天人を当て駒にしてたけど」
「当て駒?それは勘違いです。私はただ、順番を守っただけですよ」
「順番ねぇ。あんまり体の良い言葉ばかり使ってると胡散がられるわよ。どっかの賢者みたいに」
「嗚呼、噂の八雲 紫さんですね。是非とも話をしてみたいですわぁ」


遠くを見つめ瞳を輝かせている白蓮を横目で見ながら、幽香は右肩を回す。
白蓮はくすっ、と穏やかな笑みを薄く引き延ばして、横目で幽香を見る。まるで狐のような目で。

その眼は幽香に行動を共にするには十分だと思わせる類だった。

これで役立たずだったらどうしようもないと思う反面、恐らくそんな事はないだろうと、何故か確信していた。

そして、二人は山へと空を飛びながら向かっていく。
天狗の本拠地であれば、執筆や記事発行に必要なものがあるはずだから。


「あ、アリスさんって何が好きなんですか?謝りに行くにしろ、何か手土産があった方が良いと思いますよ」
「……なるほどねぇ。花は今更だから、お菓子も……アリスの作る食べ物は美味いし……洋服も…自分で作っちゃうから…」
「あれ自分で作られたんですか?嗚呼、やっぱり女の子って良いわねぇ。やることが可愛くて」
「女の子って、白蓮も女じゃない。何言ってるのよ?」
「いえいえ、私に出来る事なんてちょっとした法術だけですよ」
「ふーん、じゃあ私に出来るのは花を咲かして鴉天狗を苛める事しか出来ないわね」


幽香と白蓮はゆっくりと眼下に広がる紅葉を見つめながら進んでいく。
ふと、幽香はある事実に気が付き、白蓮に尋ねる。


「そういえば、さっきの鴉天狗の住処って分かってるの?」
「………私を慕ってくれている者達なら分かると思いますが…」
「はいはい。素直に分からないって言いなさいよ」
「分かりません。ごめんなさい。だから」


あまりに簡単に謝るものだから幽香は、苛めようとしていたのに、その気も無くなってしまう。
ちなみに幽香自身も住処は分かっていない。
そんな悪意にも気づかず、または無視していた白蓮が前方を指差しながら、語りかけた。


「だから、あの方に聞いてみようと思います」


示した先に居るのは巫女の服を着た少女。
それも幽香の知らない緑色の巫女だった。


「あの霊夢さんが退治に失敗した程の妖怪、貴女が風見 幽香ですね!私が退治してあげます」


言葉と共にお払い棒の先を向けられた幽香は「面倒ね」と、呟く。


「幽香さんをご指名ですけど?」
「さっき白蓮が行くって言ったじゃないの。私は嫌よ、あんな霊夢の二番煎じみたいなのは」
「もう少し優しい言葉をかけないと駄目ですよ?ほら、顔を真っ赤にして震えてるじゃないですか」

白蓮の言葉どおり、巫女は震えながら雄たけびを上げる。


「ああ!!こっちに来てから色々な人に物真似とかパクリよね、と言われ続け、最近ではようやく言われなくなったのに……!」


巫女の苦労する様子が目に浮かぶようだった。
だったら、巫女服は止めればいいのにと幽香は思う。
白蓮は苦笑を幽香に向ける。

「幽香さんの所為で怒ってますよ?」
「本当に面倒臭いわ。折角の紅葉を眺める時間が減っちゃうじゃないの」
「やっぱり秋は良いですよねぇ。私、紅葉って黄色から紅色に変わる時期が一番好きです」
「嗚呼、紅葉の変色は気温によるの。人里は山と比べ暖かいから、まだ見られると思うわ」
「本当?だったら手早く済ませましょう」
「………やっぱり貴女って色々確信犯でしょ」

「何をごちゃごちゃ言ってるんですか!そんな余裕があるとでも………え?」

十歩分の距離を置いて二人は止まり、”各々の行動”を開始する。

白蓮は手と手を合わせ、空高く広げる。すると間に綺麗に発光している文字が浮かび上がる。両手にはいつのまにか巻物のような物が握られていた。


「早苗さん、すみません。ちょっと急いでますので手加減はしないですよ」


幽香の体から白い霞が発せられ、薄っすらと姿を覆い、そして左右に幽香と、もう一体の幽香が姿を見せる。


「ああ、怖い怖い。巫女が怖いから、魔砲撃っちゃおうかしら」
「ちょ、二対一は反則です!!」

早苗と呼ばれた巫女の嘆きに二人の幽香は可笑しそうに笑い声を上げ、閉じた傘の先端を向ける。

「どう見ても三対一でしょ?」

幽香は傘の先端に妖力を集め始めた。
白蓮の周囲から玉のような光が流れ始める。

「”光魔”スターメイルシュトロム」

流線型の弾幕が巫女の周囲を掠めるように発射される。
横目で幽香を気にしながらも早苗は危うくも、しっかりと白蓮の弾幕を避けている。
そして、幽香の傘からは……。

「っっ、白蓮さんのでも、キツイのに……、っ!?」

早苗の目が大きく見開かれ、全身を硬直させる。
避けることも忘れる程、いや、避けることも諦めてしまうような大きさのレーザーが早苗の全身を包み込んでいき――――――。
瞬間、黒い流星の軌跡が早苗を掠め、過ぎ去っていった。



























文の手に繋がれて空を飛びながらも、早苗は未だ理解ができていなかった。

風見 幽香の攻撃が霧雨 魔理沙のスペルに似ていたからかもしれない。

もしくは、鴉天狗の文が何故、助けてくれたのか?
そもそも早すぎて助けようとしたのかどうかさえ、分からない。


「………助けてくれたんですか…?」


少しだけ、先を行く文が振り返る。
早苗は全身をビクリ、と挙動させた。


「助けた…?何を言ってるんですか!?あんなのを同時に相手するなんて自殺行為です!嗚呼もう、早苗さんの所為で見つかっちゃったじゃないですか…!」


その刺々しい視線と剣幕は、いつもの慇懃無礼な態度からかけ離れていた。
だけど、文はそう怒りつつも早苗の自殺行為を止めたのだ。
なんだかんだで、文の性根は優しく面倒見がいい。
早苗は怒られているはずなのについ、笑ってしまう。


「ごめんなさい。それと、ありがとうございます」
「……はっ、早苗さんに言っても言葉が通じませんからね。もう何も言いませんよ」
「それって褒めてます?」
「ぐっ、ぁぁ~、理解してください。私にはそんな余裕が無いんですよ」


文の飛ぶ速度が少しだけ速くなる。
余裕が無いと思うなら、この手を離して先に行けばいいと早苗は思う。
事実、そうしなければ背後から極小さな形だけど、しっかりと後ろから追いかけてきてる二人に捕まってしまう。


「良いですよ?私を置いて先に行っても。そうすれば少しの時間稼ぎも出来ると思いますし、文さんの速度なら一分で振り切れると思うので」
「本当に私の言葉、聞いてないですね。ソレは自殺行為です、もし。もし、早苗さんが人質にでもなったら面倒なんですよ」
「―――?人質、ですか?もしかして、あの二人に何かしたんですか?」
「それは駄目です。教えられません。知れば、きっと記憶が無くなるまで拷問されますよ?早苗さんは知らないと思いますが、風見 幽香は私の知る中で幻想郷最悪の妖怪なんですよ」
「幻想郷……最悪の妖怪」


山の斜面に開けた滝つぼが前方に見えてくる。
そこ降りましょう、と文は早苗の手を引いたまま、下降していった。

滝つぼから流れる川原沿いに簡素な小屋があった。

砂利を踏みしめながら早苗は文の背中に付いていく。
玄関を横引きし開けると、白狼天狗の椛が盾と剣を構え、立っていた。
文が口を開く。


「これを持って、私の家へ」
「はい、わかりました。文さんは?」
「………ただの弾幕ごっこをするだけ。別に椛が心配するような事じゃないわ。さぁ、行きなさい」


手渡された封筒を抱きかかえ、椛は早苗の隣を過ぎ去り、何処かへ走っていった。
背を見せたまま文は、両手を腰に当てて、ふぅ、と肩の力を抜いた。
そして、振り返って早苗に頭を下げる。


「さて、ここまで連れてきてすいませんでした。早苗さんの出番は終わりましたのでお帰りください」


文は面をあげる。その表情は真剣だった。
自然、早苗も表情を引き締め、毅然とした態度で言葉を紡ぐ。


「二人同時は自殺行為なんじゃないんですか?」
「それは早苗さんの場合ですよ。私は最速。逃げようと思えばいつでも逃げられます」
「だったら、なんで逃げないんですか?さっきの椛さんに渡した封筒が届くまでの時間稼ぎなんでしょ?時間稼ぎなら――」
「駄目です。これは私の仕事の関係です。それに早苗さんを巻き込むことなんて出来ません」


断固とした口調。
突き刺すような視線。
早苗は口を閉ざすことしか出来ない程の気迫。

二人の間には静寂が降りた。

早苗は文の視線と向き合い、だけど文は早苗から視線を逸らす。
文は早苗を見ないようにして小屋から、出て行こうとした。

「さっき、風見 幽香は幻想郷最悪の妖怪と言いましたね」

早苗の背後で文の足音が止まる。

「……それがどうしたんですか?そうだったら、早苗さんに何の関係が?」

その言葉に振り返る。すると、文はまっすぐに早苗を見つめていた。
早苗は喉を鳴らし、力強く言葉を紡ぐ。



「つまり、――――――ラスボスですね!?」



嬉々とした言葉が文の真剣な表情を瓦解させた。
はぁ!?と、眼を見開き、口を大きく開けていた。文は珍しく本気で吃驚していた。
くすくす、と早苗は微笑みながら、更に言葉を続ける。


「きっと私たちはレベル三十ぐらいです。ですが、RPGだと中盤で圧倒的に強い人が出てくるのがセオリーなんですよ。それで負けて、段々と強くなっていくんです。だから、大丈夫。なんとかなりますよ」
「嗚呼、……これは、私の失敗でした。ええ、読み違いというか勘違いというか…。RPGとは何か分かりませんが、一つだけ分かりました」


文はさっきまでの気難しそうな表情は消して、晴れ渡った空のように爽やかな笑みを浮かべた。


「貴女は馬鹿です。だから、言葉も通じないのです」
「えー、それって嬉しそうに言う言葉ですかー?酷いです!」


酷いと言いながらも、えへへ、と早苗は文の左腕に飛びつき、寄りかかりながらも小屋の外へ出て行く。
そして、砂利を踏みしめる足音が四つ。
その内の二つ分を鳴らしながらも、早苗と文は談笑を続けていく。


「重いです。暑苦しいです。離れてください、馬鹿がうつりますー」
「あれ?おかしいな。眼から変な汁が出てきそうです、もしかして本気で馬鹿って言ってます?」
「え?気づいてなかったんですか?これは、重症ですね」
「酷い!鳥に馬鹿って――――――」
「鳥?鳥って言いました?私の事ですか!?鴉は鳥の中でもとても優秀な鳥なんですよ?それこそ、人間よりも優れた知能を―――」
「あー、はいはい。確かに近所の山田さんも駆除に困ってましたね」
「駆除ぉ!?早苗さん!今すぐその山田さんを連れてきてください!地獄を見せてあげましょう……!」
「いやいや、幻想郷の外の世界ですって……、と」


そうして、二人は立ち止まる。
真正面に風見 幽香と聖 白蓮を迎えて。


「あら?良い顔してるわねぇ。とても昨日と同じ鴉天狗には見えないわ」


幽香が傘を差したまま、文と視線を合わせる。


「ええ、今日はプライベートですから。ふふふ、アレ。良い記事になりますよ?」


文は天狗の扇で口元を隠し、ニィぃと眼を細めている。


「それでは早苗さんも向かってくるんですね?」


白蓮が穏やかな微笑みを早苗に向ける。


「はい。貴女は中ボス。さっさとラスボスまで駆け上がって見せましょう」


早苗はお払い棒の先を白蓮に突き向けた。


「じゃあ、行くわよ」


幽香の言葉が戦いの合図であり、同時に辺りを向日葵が埋め尽くす合図でもあった。





































ソレは結果から見れば弾幕ごっこというよりも、一方的な暴虐だった。

幽香の咲かせた向日葵は一斉に文と早苗を視野に入れた。

瞬間。


「”花符”幻想郷の散花」


先ほど早苗が見た、巨大なレーザーが向日葵の顔から一斉に放射される。
文は誰にも見えないような速度で上空へ逃げる。
早苗はレーザーの及ばない一番左端へ逃げていた。

ガッ、と早苗の両肩を”右手と左手”が抑えた。

瞬間移動としか思えない速度で白蓮は早苗の前方に回りこんでいた。
穏やかな表情で、だけど白蓮の両手はギチリと肩を抑えている。


「早苗さん、それではごきげんよう」


早苗が口を開き、何か叫ぼうとする間もなく。
そのまま白蓮は早苗の体を押し――――飛ばした。まるで石を投げたかのような速度で。
低空で飛ぶ早苗は、上半身を捻って背後を見やる。


「そんなっっ!!」


そこにはレーザーが雨のように降り注いでいる。早苗の体は無常にも、レーザーに飲み込まれ、消えていった。

白蓮は幽香を見つめ、その視線に答えるように幽香が一つ頷いた。

レーザーの放射は止まり、向日葵も地底へと潜っていく。

地面は吹き飛び、山の斜面には穴が開き、木々は薙ぎ倒されている。

そんな変わり果てた地に文は降りてきて、足をついた。


「うわぁ、早苗さんをよくも片付けてくれましたね、幽香さん!」
「いや、片付けたってその言い方だとちょっと非情じゃないの」
「良いんです。怪我しない内にさっさと退場していただければ私も本気が出せるのですから!」


文は天高く、天狗の扇をかざす。


「”幻想風靡”」


文の姿が霞み、一瞬で風を裂いてジグザグに空を駆け上って行く。
その間に白蓮は幽香の方へ歩み寄っていく。


「アレ、幽香さんどうにか出来ますか?」
「んー、あの速度……そうねぇ。適当に魔砲撃ちまくるぐらい。もしくは―――――――空ごと一緒に撃ち落とすぐらいね」
「空ごと?」
「逃げる場所も無いぐらいの巨大なレーザーよ。でも、代わりに腕が痺れちゃうのよねぇ、妖力が大きくて」
「でしたら、私に任せてくれませんか?」


幽香にはどうにも手が出せない状況で、白蓮には何か手立てがある。
それは、幽香の興味を十分に促したのだった。


「良いわ、それじゃ貴女に任せるわ」
「はい。―――では」


白蓮の足取りはゆっくりと、荒地の中心へ進んでいく。
そして、立ち止まる。
十二分に開けた場所、それは文にしてみれば格好の狙撃ポイントだった。
だから、文は白蓮を弾き飛ばそうと滑降する。
白蓮の姿が豆粒のように見える程の上空から、白蓮までの時間は一秒もかからない。
まさに雷に迫る速さだった。
白蓮は上半身を屈めて、地面に手を向けていた。
そして。
文が白蓮に衝突する直前。

白蓮は――――。


「なっ、嘘っ!?」


――――地面の一部を持ち上げた。
岩と呼ぶにあまりに大きすぎる。まるで鬼のような膂力。


「ですが、岩ごときで―――」


避けなくても突き破れる。
そう思い、文は岩ごと突き貫いた。
速度を少しばかり緩めて、大小の破砕した岩が散開する中を駆ける。
そこで信じられないモノを見た。

それは、並走する白蓮の姿。

白蓮は散らばる岩の中から、西瓜ぐらいの岩を右手で弾き飛ばす。
それも文の進む先へ。

「しゃらくさいです!」

文はぐっ、と拳を突き出す。
岩を砕いた。

瞬間。

文の体がガクン、と揺れ、一気に速度が落ちていく。
砂利との摩擦音が響き始めた。
同時に文は全身から力が抜けていくような気がした。
途端、右足に苦痛が走り、顔を顰めながら足元を見る。


「もう放しませんよ?」


白蓮が地面を滑りながら両手で掴んでいた。
そして、涼しげな表情でニッコリ笑ったのだった。



















早苗は川原でうつ伏せに倒れたまま気絶している。

だけど、意識を覚醒させる程の大きな声が響いた。


「なんなんですか!!?白蓮さんは魔法使いって聞いてましたよ!魔理沙さんとか霊夢さんに嘘を付いてたんですか!?」


幽香と白蓮に囲まれて、地面に座りながらも憤りを見せる文。
だけど、幽香からしてみれば、白蓮の魔法は見たことが無い。
地面を抉り上げるなんて、どう見ても魔法使いの姿からかけ離れているので、文の言葉が信じられなかった。
そんな幽香の釈然としない視線に白蓮は恥ずかしげに笑って答える。


「私、肉体派魔法使いなんですよ」
「へぇ、それは凄いわね」
「へぇですって?へぇ、でそんな簡単に納得しますかフツー?最初から幽香さんは異常だと思ってましたけど、白蓮さんだけは普通の魔法使いだと信じてたのに……」
「正確に言うと身体能力を上げる魔法が得意なだけです。それで私の能力を上げ、そして貴女の体の動作を邪魔する魔法をかけました」


幽香がジロジロと白蓮を足元から頭部まで無遠慮な視線を向け始めた。
白蓮は苦笑を浮かべ、両手で胸元を隠しつつ、視線から逃れるように上半身を捻る。


「なんですか?」
「どうりでスタイルが良いと思ったわ」
「これは自前ですよ」
「じゃあ、アリスの胸は小さいままなのね」
「あれ?幽香さんなんでそんなこと知ってるんですかー?もしかして?それ記事にしていいですか?」
「あ、戦ってて思いついたんですが、アリスさんに和服なんてどうでしょうか?洋服は自分で作ってるって言ってましたよね」
「あのー。今、戦ってて、って言いませんでした?マジですか?嘘でしょう?」
「―――そうね。和服なら、アリスも持ってないと思うわ」
「無視ですかー?敗者には用は無いんですかー?じゃあ帰りますよー」
「すみません。少し私にも喋らせてくれませんか?」


白蓮は巻物を取り出して地面に落とす。
いや、存分に喋ってたじゃないですか!と、文の叫びも虚しく、白蓮の巻物が蛇のように文に巻きついていく。


「この前、人里で良い雑貨屋を見つけたんですよ」
「雑貨屋……和服を扱っている?それって二軒隣に花屋があるところ?」
「そうですね。確かにありますが……花屋さんがなんで出てくるんですか?」
「その内分かるわよ。それよりもさっさと済ませる事が有るわ」


ジャリ、と幽香は文に一歩、近づいた。
もちろん捕縛されている文は逃げようが無い。
さぁ、どんな事をしてあげようかしら、と幽香は唇を舌で湿らせた。
幽香の手がゆっくりと文に近づいていき、文は強張った表情を浮かべ、眼を強く閉じる。
それは強い衝撃に備えた動作だった。
しかし、文の予想は大きく外れる。


「ほら、出しなさい」


文の眼前で幽香は掌を見せていた。
あれ…?と、文は幽香の顔をまじまじと見つめる。


「なによ?素直に痛い目を見たいのならそう言いなさい。私を苛めてくださいって」
「いや、そんな趣味は無いんですが……。今日は幽香さんが変というか、優しい……?」
「………あれの所為よ」


苦々しい顔で幽香は指で、アレと称した白蓮を示した。
とはいえ、白蓮と幽香の関係が分からない以上、文は首を傾げることしか出来ない。


「ふぅ、つまりこういう事よ」
「っぶっ!?」


突然、幽香は文の腹部に蹴りを入れた。


「何するんですか……!肋骨がジンジンするんですが…」
「以前、貴女の書いた新聞読んだことがあるのだけど、写真良く取れてたわよ」
「はっ?ま、まぁありがとうございま、ぐっっ!?」


再び腹部に蹴りを貰い、文は首を傾け、口端を引きつらせる。


「……一体、何がしたいんですか……?」
「魔理沙の泥棒した時の写真。あれはタイミング的にカメラに収めるのが難しかったんじゃないの?」
「あれは本当に偶然でした、ってもう蹴らなくて結構です!」
「あらそう」


膝を曲げ、助走をつけようと持ち上げられた右足を、幽香はすんなりと戻す。


「だから、こういう事よ」
「あいにくと、私は暴力による意思疎通の手段は心得ておりません、そんな事は萃香さんとでもしてくださいよ」
「攻撃されてムカつかない?」
「いや、確かにイラッとしますけど、それは当然の事でしょう」
「じゃあ、記事を褒められて嬉しかった?」
「………縛られて蹴られてなければ素直に喜べましたよ」
「つまり、私はこう言いたいのよ」
「?」


波状の緑髪を右手で押さえ、幽香は眩しそうに空を見つめた。
そして、一言。


「飽きたわ」


その言葉に文はガックリと首を落として、「このどSが…」と、何か呟き始める。
恐らくとても不穏な言葉だろうと、予想できるぐらいの鬱蒼とした雰囲気をかもし出している。
白蓮は文に近づいて、巻物の端を持って引っ張った。
するりと、手の内に巻物が戻っていく。


「それでは写真を返してください」
「………わかりましたよ」


渋々ながらも文はカメラを取り出し、自暴自棄のようにフィルムを一気に引き伸ばした。


「これでこのフィルムで取った画像は現像出来ません。これで良いですか?」
「はい。わざわざすみませんでした」


申し訳なさそうに白蓮が頭を下げた。
新聞記者として、いつも恨まれはすれど、感謝された事は滅多に無く、そして、謝られた事など初めての事だった。
文が戸惑いを表情に浮かべている中、幽香は颯爽と踵を返していた。


「あと、いつも新聞楽しく読ませて貰っています。今度、命連寺にも取材しに来て下さいね」
「―――――」


白蓮はそう告げて、小走りで幽香の後を追っていった。
文の眼には最後の最後で、白蓮が”とてつもなく良い人”として映った。
それも幽香の隣に居れば一層、引き立つ。
そして、何故、幽香が変に思ったのかをなんとなく理解した。

幽香自身、性格の悪さに自覚があったのだろう。
それも白蓮のような者が居れば、否が応でも自覚せざるを得ない。
暇つぶし。
幽香のあの挑発的で脅迫的な言動は全て、その一点に尽きるとも言える。

それ以前に、あの幽香が誰かと行動を共にしている事自体が信じられなかった。

しかし。

今日、文は幽香が傘を回している所を見ていない。

つまり、風見 幽香は聖 白蓮と行動を共にして―――――。


「くふ、あはは。そんなまさか」


それは昨日、会話をしていてずっと傘を回させていた文にとって。


「嗚呼、まったく―――――――――面白くないです……!」


本当に幽香が暇つぶしで傘を回しているのか、どうかなんて関係は無かった。
ただ、自分が白蓮に劣ったと、認識してしまった事実が全てだった。

噛み締めた歯から、ギシリィと古い扉が軋んだような音が響く。


「ふふ、約束は不履行です。まだ、……まだ、楽しんでもらいますよ、幽香さん」


文は口が裂けそうな笑みを、空に向けていたのだった。




























わぁ、と嬉々とした感情を素直に口にして、白蓮は人里を歩いていく。
その隣で幽香も人の波に視線を向けている。
子供が風車を持って必死に回そうと、駆け回っていた。
自然、幽香もふっ、と笑みを溢してしまう。


「やっぱりいつ来ても活気がありますね」
「夜は閑散としてるわよ。妖怪の時間だからね」
「でも、まだ日も降りていないのに、幽香さんは居るじゃないですか?」
「私は特別よ」
「ふふ、そうですね。貴女には明るい時間が似合ってますよ」


ふと、幽香の足取りが止まる。その視線の先、白蓮は嬉しそうに両手を合わせる。


「ここです。霧雨商店」
「ええ、よく知ってるわ」


本当ですか?と、白蓮は幽香に顔を向ける。
ただ、幽香の視線は大きく木彫りで掲げられた看板に注がれている。
その横顔には、また悪そうな事を考えてますね、と白蓮に思わせるニヤついた笑みが浮かんでいた。


「ふふ。今度、魔理沙に報告するのも面白いわね」
「――――?では、入りましょうか」


大きく開いている入り口を潜り、外の日光による眩さが無い、落ち着いた暗さの店内。
真正面には五つの商品棚があり、右方の壁際にはガラス戸で作られた展示スペースがある。
中には着物の生地が首をもたげる様に二つ、三つと折られ、引っ掛けられている。

左側には洋服から和服が整理され、飾られている。
それに手鏡や女物の小物、それに陶器など見下ろせるぐらいの台に並べられている。

白蓮の視線が色々な商品の所為で移ろいでいるが、幽香は迷わずに和服コーナーへ進んでいく。


「………これなんかどうかしら?」


幽香が衣服掛けに吊らされた黄色の着物を手にとって掲げた。


「え、待ってください。今行きますよ」


尋ねられた白蓮は、手に持っていた湯のみを元に戻して、幽香の元へ駆け寄る。
幽香は口端を吊り上げ、眼で怒るという偉業を達成しながら白蓮を待った。


「貴女、ここに何しに来たの?」
「すみません。この前、私の湯飲みを割ってしまったので」
「―――まぁ、良いわ。それで白蓮の眼から見て、これ。どうかしら?」


その着物を見た白蓮は一瞬だけ、驚いたように眼を丸くして、だけどすぐに「良いと思います」と、笑みを浮かべて頷いた。
幽香もふぅ、と軽く吐息を漏らして、すぐに店員に声をかけた。


「これを頂戴したいけど、いくらぐらいになるかしら?」


店の奥で椅子に座っていた白髪の老人は、二コリともせずに値段を答える。
幽香は聞いた値段を二度、三度復唱しながら、着物を元に戻した。


「また来るから、売らないで置いてね」


厳格な雰囲気を纏った老人が一つ頷いたのを確認して、幽香は一度店を後にする。
追従するように幽香の後を追って、白蓮も店の外へ出る。


「買わないんですか?」
「だってお金ないもの」


さらり、と幽香は告げた。その足取りは迷い無く進む。
では、店の人に取って置いて貰っているのに、どうするつもりなのか。心配そうに白蓮は言葉を紡ぐ。


「それでしたら、私がお金を払いますから」


突然立ち止まった背中に、白蓮も急停止する。
幽香は振り返った。
白蓮は幽香が怒ったかと思うも、その表情は意外で、朗らかに笑っていた。


「白蓮の困った顔が見れただけで満足よ」


意地が悪そうに、笑いながら幽香はすぐ傍の店に入っていく。
その店の玄関は沢山の花に彩られている。

店内には胡蝶蘭を運んでいる女性が、来客に「いらっしゃいませ」と、声高らかに叫んだ。
一般的に好感が持てる対応だった。
しかし、その女性はすぐに幽香に対し、お客向けの笑顔と親しいものに向ける笑みを切り換えた。


「幽香じゃない。久しぶりね!」


あはははっ、と幽香に対し、心地良い笑い声を浴びせている。
それは白蓮にとって、胸を抉る程の衝撃を持った光景だった。


「あら、そっちの綺麗な方は初めて見る顔ね?」


咄嗟に白蓮は頭を下げて、名乗った。


「初めまして、聖 白蓮と申します」
「なんだい、畏まっちゃってさ。んで?今日はなんの用だい?」
「少しお金を工面して欲しいわ。友人への贈り物を買いたいの。花を咲かせるのはまた、来春になるけどね」


幽香が穏やかな雰囲気を纏いながら、答えた。
それもまた、どこか白蓮にとって不自然だった。


幽香の足元に小さな子供がゆっくりと危なげに歩いてきた。
そして、幽香はしゃがみ込み、子供を抱き上げる。紺色の質素な和服を着た女の子だった。

ぺちぺち、と幽香の頬を柔らかく叩き、子供は体を捻って女性に「ままー」と、喋った。


「はいはい、よしよし」


それが誰が告げた言葉だっただろう。
白蓮にはソレが分からなかった。気づけば子供を抱きかかえているのは店員さんだったから。

そして、これもまたいつの間にかだろう。
幽香は幾らかのお金を手に持って、白蓮に「行くわよ」と、隣を過ぎ去っていった。

白蓮は一連のどこか欠けた時間を、夢から覚めたような顔で幽香の隣に並んでいく。


「幽香さん、子供好きなんですか?」
「全然。むしろ、大っ嫌いよ。あんな苛めたらすぐに泣き始めるような生き物は」
「それでしたら―――、いえ。なんでもないです」
「……?変なの、まぁ良いけど」


霧雨商店に幽香が入っていくのを見送ったまま、白蓮は店の前で立ち止まる。


「それでしたら。………なんでそんな優しい表情をしていたの…?」


人に迫害された妖怪を守る事の無い世界。
魔法を使って封印される事の無い時代。

千年の月日は大きく人と妖怪の形を変えていた。

白蓮は今、初めて心の奥底からその実感を覚えていた。


人が憎かった訳じゃない。
妖怪が可哀想なだけだった。

それでも。
天人は楽しげに暴れて、吹き飛ばされていた。

鴉天狗は自分の仕事に忠実に活動していた。

巫女は厄介ごとにばかり首を出しては痛い目にあっている。

そして。

ただ花を咲かせるだけの妖怪と名乗った彼女は、怒ったり、微笑んだり、時々殺気を撒き散らして威圧的だ。
それでいて、植物に関しては自慢げに語りだしたり、とても柔らかい表情を浮かべる事が出来る。


―――――それの何処が可哀想なのか?


独りでも良いと言っていた。
それは本当だろう。
それでも、こうして花屋の女性とも親しげな関係を持っている。

自由気侭な気質を示しているようだった。

花は何処にでも咲く。

きっと、風見 幽香は何よりも自由な存在だ。

何事にも捉われない。それは白蓮にとって、この幻想郷を象徴しているようでもあった。

なにより白蓮は風見 幽香と行動を共にしていて、楽しかったのだ。

だから。


「待たせたわね。それじゃ、アリスの所へ行くわよ」


だから、白蓮は幽香の言葉に楽しそうに一つ頷いたのだった。



































森の中を迷うことなく進んでいき、幽香達はアリスの家に辿り着いた。
玄関の前で幽香は立ち止まり、少しだけ、眼を閉じてから扉を叩いた。

家の中から、とたとたとた、と小走りな足音が聞こえてきた。

かちゃり、と施錠が解かれた音。

そして、ゆっくりと扉が開かれる。
アリスが姿を見せた。


「幽香?と……お昼の人……。それでなんの用かしら?」


淡々とした視線は、あの別れ方では少しばかり、鋭さを覚える。
だからと言って、幽香の態度は変わらない。いつもの悠々とした口調で答える。


「ちょっと話があるだけよ。それと、今日はわざわざなんで山の麓まで来てくれたの?」


白蓮は後ろで二人のやり取りを見つめている。
ただ、幽香はニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべていた。

しかし、別れた後に幽香が「アリスに謝りに行く」と、告げた事を知ってる白蓮としては微笑ましい限りだった。


「言ったじゃない、変な広告が出回っているって。だから」
「だから?」
「……よく考えたらアンタに心配なんか無用だったわね」


それだけ告げて、アリスは家の中に戻っていく。
もちろん、玄関は開けっ放しだ。

幽香は大事そうに、白い紙袋に包まれた着物を抱えて家に上がっていく。
その後ろを白蓮もついて行き、そして、玄関の取っ手を掴んでゆっくりと閉めたのだった。

























聖 白蓮は幽香にとって、得たいの知れない人間だった。
いつもニコニコと微笑んでいて、殺気を当てても顔色一つ変えない。
気質の荒い霊夢や、人間らしい感情を押し隠そうとして失敗してる魔理沙とも全然違う。

それでは誰に似ているのか、魅魔とも違う。アリスとも全然異なっている。

ただ、唯一。アリスの親である、神綺に似ていると思った。

だからだろうか?

早々に白蓮はアリスへの謝罪を済ませて、和気藹々と魔法について語っていた。


「その所為で私の魔法も性質を変えてしまったんですよ」
「そうよねぇ、魔界に千年も入れば影響は受けるわよ」
「封印されていたとはいえ、法界は広いです。丁度、博麗神社のような高さに位置していまして、視力を上げればある程度の景色は見れましたから退屈はしませんでしたけどね」
「じゃあ、きっと私の事も何処かで見ていたかもしれないわね」


白蓮はテーブルを挟んで向かい合っているアリスに微笑を向けている。
その間、アリスの周囲では四体の人形が忙しなく動いていた。

一体の人形が幽香の前に置かれているティーカップに紅茶を注ぎ始める。
人形はアリスが魔法で動かしているハズだから、一応は幽香に対し、気を遣っているのが分かった。

肉体派魔法使いと都会派魔法使いの会話がどんなものか、黙って聞いていれば真面目に、お互いの魔法について語り出したのだ。

幽香は白蓮の視線が完全にアリスに向いているのを確認して、テーブルの下に置いてあった紙袋から和服を取り出した。
テーブルの上に、折りたたまれた黄色の着物が置かれ、アリスの視線が着物に注がれた。


「アリス、和服って着たことある?」


幽香の問いかけに、アリスは少しだけ口を閉ざす。


「……いえ、無いわね。で?その向日葵の刺繍が付いた着物は何処から持ってきたの?」
「失礼ね、買ったのよ」
「買ったって、よくお金があったわね」
「あげるわ。着るのも箪笥の肥やしにするのもアリス次第よ」
「ふぅん?」


アリスが着物をジーっと見つめ、幽香を見る。
白蓮は静かに紅茶を口にしていた。


「珍しいわね。幽香が服の贈り物なんて、いつぞやのメイド服以来じゃないの」
「メイド服?」


そんなものを贈った記憶は無かった。
過去を振り返っている幽香に、アリスは呆れた顔で告げる。


「昔、私がグリモワールを使用して戦った時よ。貴女が勝って、無理やりメイド服着せて掃除やら調理をさせたじゃないの。私なんか悔しくてまだ覚えてるのに、アンタと来たら」
「んー、そんな事があったのねぇ。もう忘れちゃったわよ、そんなこと」


アリスの目が冷たい色を宿し、細まっていく。
だけど、幽香はそれを楽しそうに見つめ、呟く。


「でも、それ以降の事はしっかり覚えてるわ。究極の魔法を教えて貰ったけど、全然役に立たないモノだから代わりにアリスを苛めたり、こっちに家を構えたと聞いて挨拶代わりに魔砲をお見舞いしたり、風邪をこじらせたと聞いて家の窓を開け放ちに行ってあげたり、夏場蒸し暑いからって草刈りしてる時に向日葵を生やしてあげたり、全部覚えてるわ」


頭を抱え、アリスは溜め息と共に俯いた。
さしもの白蓮も乾いた笑いを漏らしている。

四体の人形がそれぞれに包丁やらショートソードやら、光物を構え始める。
幽香は声を出して笑い始めた。嗚呼、だからアリスを苛めるのは止められない、と。


「だから、この着物をあげるのよ」
「……つまり、それで全部チャラにしろってことなの?」


恨みがましい眼でアリスは面を少しだけ上げて幽香を見上げる。
アリスの視線を確認して、幽香は嬉しそうに頷いた。

「うん、そうよ」

同時に笑い声がもう一つ。
アリスが溜め息を漏らしながら、くすくすと笑っている白蓮に非難がましい眼を向ける。

「ごめんなさい。やっぱり可愛いなぁと思いまして」
「あー、はいはい。もう良いわよ、笑いたければ笑えば?」

その言葉に白蓮は首を横に振った。


「いえいえ、あくまでも私がそう思ったのは、幽香さんに対してです」


アリスは目を丸くする。
幽香は笑顔を硬直させた。


「だって、お昼の時、アリスさんが帰った後に幽香さんに怒られてしまいました。アリスに誤解されたじゃないの、どう責任とってくれるの!って……ふふ。それなのに、アリスさんの前では立派に”苛めっ子”してるから、つい」
「っ、そんな事無いわよ。アレは白蓮が―――って、なによアリス?その優しそうな笑みは?」
「珍しいと思ったの。幽香が慌ててるところなんて、初めて見たわ」
「それは、……違うのよ。あの時だけは勝手が違ったのよ。白蓮が変な事を言ったから」
「ああ、アレですか。アレはもう大丈夫です。撤回させて貰いますね」
「はい?別に良いけど――――そういえば、なんであんな事言い出したのよ?流石に私でもアレは吃驚したわ」


くるくると、人差し指を頭上で回しながら白蓮は説明を始める。


「少し身の上話になりますが、……私が封印される前の時代の事です。あの時代、妖怪は無条件で退治される存在でした。紆余左折あれど、私は妖怪のために人を欺き、皆を守ろうとしていました。その癖でしょうか?今朝、幽香さんを駆除して欲しいと言う広告が出回り、守らなければいけないと勘違いをしてしまいました。どうも復活してから幻想郷の有り方を心の何処かで信じてなかったみたいです。ですが、幽香さんのお陰で断言できます。私なんかが幽香さん、いえ、妖怪を守ろうとしなくても十分、この幻想郷は平和だと」


幽香はつまらなそうに、口を開く。


「それで、私を守ろうと「同棲してください」なんて事を言ったの?」
「私の住む家はお寺です。妖怪を守るために建てたとい言っても過言ではありません―――勿論、嘘ですけどね。命蓮寺って知ってますか?最近、人里近くに作ったんですよ」
「また訳の分からないことを…。でも、そのお寺は見たことがあるわね。最近、急に寺が出来て邪魔だから、苛めに行ってあげようと思っていたわ」
「是非とも。幽香さんでしたらいつでも歓迎しますよ」

深い溜め息を付いて、幽香は閉口する。
だから白蓮は苛め甲斐が無いのだと、無言で主張しているようだった。


「それでは…」


口火を切って、白蓮は椅子から腰を上げて立ち上がる。


「ここらで、おいとまさせて貰います」
「もう帰るの?もうちょっと魔法について聞きたかったわ」


そう告げて、アリスも見送りのためだろう、腰をあげようとする。
しかし、幽香が「私が送ってくるから、アリスは座ってて」と、立ち上がるのを遮った。


「それではアリスさん。良ければ命蓮寺にもお茶しに来て下さいね」
「そうね。また今度、そのお言葉に甘えさせてもうとするわ」


幽香が紙袋を手に持って立ち上がる。

「では、お邪魔させてもらいました」

白蓮が頭を下げて、リビングから出て行き、幽香も後ろを歩いていく。

廊下に出て、玄関へと進んでいく。
靴を履き、白蓮が外へ出て行くと、幽香も靴を履いてついていく。

外は紅く染まっている。丁度、日が暮れ始める時間だった。

玄関の扉を閉めて、幽香はガサガサと紙袋の中に手を入れる。

取り出されたのは白いシワだらけの何か。
幽香は無造作にソレを放った。


「あげるわ」


宙で弧を描くソレを白蓮は広げた両手を合わせて、受け止めた。
受け止めたソレを見つめ、首を傾げる。

「後で開けてちょうだい。それと、聖 白蓮」

幽香は楽しげに、持てる限りの殺気を白蓮に浴びせる。
白蓮は今日初めて、強張った表情で幽香の眼を見た。




「近い内に、私と本気で戦ってね?」




可愛らしく首を傾げながらも、くくっ、と低い声で喉を鳴らす。

紅い陽に照らされ、笑顔からは狂気を覗かせているのだろう。

さすがに笑みを浮かべることも出来ず、白蓮は恐る恐る頷いた。



内心で幽香は満足していた。
このタイミングならばいけると、直感のままに従った甲斐があった。

だけど、白蓮は一言告げた。


「もし、私が勝ったらなら……」
「?」


何を言うつもりなのだろか?

白蓮は眼を閉じて、能面のような表情でさらり、と感情を押し殺した。
真っ赤に焼けた空を背負って、白蓮は。



「命蓮寺の周りに沢山の花を咲かせてくださいね」



一つ、微笑んだのだった。


ああ、と幽香は気づかされる。
聖 白蓮は妖怪を守ると言った、その内容に。
妖怪は人間にとって、心の恐怖を映したような存在ばかりだ。妖怪を守ると言うことは、まず妖怪に対する恐怖心を飼いならさないといけない。
何も、初対面の妖怪がすんなりと言うことを聞くはずも無く、また牙を剥かないという保証も無い。

いくら魔法使いとはいえ、守るために妖怪へと背中を見せるには並大抵の精神では務まらないだろう。

つまり、幽香に言わせれば白蓮は―――。



「貴女は――――意地っ張りだったのね」
「……それは幽香さんの方ですよ」


くすくす、と二人の声が重なる。


「それでは、幽香さん。また―――――いずれ」

「ええ。楽しみにしてるわ、白蓮」



























命蓮寺の本堂。
多人数の夕食を終え、食休みをしている席の事だった。

星は白蓮の遅い帰宅に、なんで遅かったのかを聞きたくてしょうがなかった。

いつもであれば、そんな口喧しい事は尋ねない。
だけど、今日は訳が違った。

白蓮が嬉しそうに微笑んでいるのはいつもの事。
しかし、よほど機嫌が良いのか、歌を口ずさみながら湯飲みを掲げている姿は様子がおかしい。


ナズーリンや一輪も気になっているのか、白蓮の様子を黙ってチラチラと横目で伺っている。
水蜜が星に「様子がおかしい、理由を聞いて」と、眼で何度も催促していた。


この場に不在のぬえも居れば、きっと水蜜と同じ事をするだろう。
ぬえを連れて、人間を脅かしに行ってる小傘に、少しばかりの感謝をしながら、星はコホン、と咳払いをして口火を切った。


「今日は何か良いことがあったのですか?」


白蓮はすぐに星へ満面の笑みを浮かべ、湯飲みを丁寧に置いた。


「ええ、楽しいことがあったわ」
「それは……」


星は恐る恐る、尋ねる。
人里の噂で、今日は妖怪の山で酒盛りが開かれているそうだった。
なんでも山の四天王と呼ばれる鬼が二人、招かれているらしい。

今朝の広告を見せてから、もしかしたら聖が山の妖怪たちと酒を酌み交わしているのではないかと心配だった。
山に住む妖怪たちは皆、強靭で長生きしているものが多く、人間に対し排他的な者が多いと聞いていた。
それに加え、鬼ときたものだ。

山で何かあったのだろうか?
楽しそうにしているから、何事も無かったと思うのだけど。

星の心配げな雰囲気を察したのか、白蓮は「大丈夫ですよ」と、前置きを告げる。


「幽香さんという妖怪と知り合ったわ。それに同じ魔法使いのアリスさんとも。二人とも本当に良い人達だったの」
「ああ、それなら良かったんですよ。それで、その湯飲みはお二人のどちらかからの贈り物ですか?」


白蓮はさらり、と告げる。


「ええ、幽香さんと今度、本気で戦うと約束した時に貰ったものよ」
「――――は?」


本堂が一気に静まり返った。
全員が白蓮とのやりとりに聞き耳を立てていたから、全員が停止した結果だった。



「雑貨屋さんに行ったの。その時にコレ、私が湯のみを割っていた事を話したら、幽香さん。買ってくれてたみたいなの」



まるで少女のように白蓮は嬉々としていた。
その幽香さんが良い人だと、贈り物が嬉しいと、そんな雰囲気を全身から発している。


ただ、星は思った。



良い人は絶対に本気で戦えなんて、約束はしないでしょう、と。



星は引きつった笑みで、一同を見渡した。

水蜜はゆっくりと首を回して、星の視線に合わせた。
その瞳は物凄く、揺らいでいて内心で慌てているのがよく分かった。

一輪は声を出さずに、「どうするの!?姐さんが騙されてるよ!?」と、静かに叫んでいた。
ただし、両手を慌ただしく動かしているので一概に静かとは言えないけど。ただ、雲山は静かに何度も頷いている。流石だと、星は感心した。こんな時にでも渋い。さすが雲山。

そして、ナズーリンは何を思ったのか、白蓮の背後に正座して、ダウジングを向けていた。
星は「そこに宝は何もありませんよ!」と、検討違いな言葉を音も無く告げるが、ナズーリンの眼はぐるんぐるん、と渦を巻いているのでまったく全然伝わらなかった。

命蓮寺は困惑に包まれたまま、ゆっくりと夜を過ごしていったのだった。


ちなみに、ナズーリンのダウジングは見事、左右に大きく開いていた。
本当に訳が分からない。

しかし、ある意味ナズーリンのダウジングは正鵠を射ていたのかも知れなかった。































命蓮寺の朝は早い。

星の作った朝食を手早く済ませて、白蓮は本堂で正座をしていた。

静かな時間が流れていく。

「姐さん!?本当に昨日、どこで何してたの!?」


――――ハズだった。

一輪が赤い顔をして、本堂に駆け込んできた。何故か、その肩に雲山は居ない。
水蜜とぬえも慌てて、一輪を追って来た。

唐突な喧騒に白蓮は皆を落ち着かせるよう、静かな声で尋ねた。

「何か問題でも起きたの?」

しかし、一輪は白蓮の肩を軽く叩き、次に腕、手と掌など。身体チェックを始めた。
何故か奇妙な一連の行動を、水蜜とぬえは固唾を飲んで見守っていた。

本当に何があったのだろう?

騒ぎに気づいた星がゆっくりと近づいてきた。
ぬえが星に気づき、何かを差し出した。
途端、静寂を切り裂くような声量で星が叫んだ。

「っっそんな、私の聖が!?」


別に星の白蓮ではないけれど、白蓮は星が膝から崩れていく様をただ呆然と見つめた。
床にうつ伏せに倒れ、星は力一杯に床を叩いて嘆いた。


「私はまたっ、聖を守れなかった……!」


流石に黙りかねた白蓮は立ち上がって、ぬえの持った一枚の紙に手を伸ばした。

そもそも、その紙を見た時に白蓮の脳裏を嫌な悪寒が過ぎったのだった。

一瞬だけ、白蓮の表情は微笑から”―――――”に変わった。

「っ、聖………なの…?」

ぬえが涙目で怯えつつ、白蓮に紙を渡した。
果たして、ぬえは何に怯えたのだろう。

さておき、白蓮は紙面に眼を向ける。

「あはは♪」

白蓮が陽気な声で”嘲笑”した。
ぬえも一輪も水蜜も、一斉に白蓮から眼を逸らした。

「一輪?」

しかし、白蓮の呟きに一輪が「は、はいぃ!」と、背筋を伸ばして返事をした。


「雲山はどうしたの?珍しく見ないわねぇ」
「っ、いえ、雲山は体調が悪いらしくて、本堂に入ってすぐに私室に戻ってもらって……」


ああ、どうりでポタポタ、と一定の間隔で血が垂れているわけだ。


白蓮は微笑みながら振り返り、一輪と向き合う。

「これは雲山の血よね。吐血でもしたの?」
「あー、いえ。その、言いづらいんですが……」
「もしかして、鼻血でも出したの?」


一輪の顔が青ざめる。
だけど、白蓮は気にせずにひらり、と紙を向けた。


「仕方ないわ。雲山は男の人なんだから」


紙面には所狭しと、文字が詰まっており読みづらい。
代わりに一目でも分かりやすいようにと、”白蓮が風見 幽香に押し倒されている写真”が大きく掲載されていた。

一輪を含め、誰も何も言えなくなると同時に、本堂を大きく振動させる程の轟音が響いた。

ギシリィ、と床が軋んだ。

白蓮は振り返る。


本堂の入り口に朝日を背負った少女が立っていた。


少女は、風見 幽香はにっこりと口端を吊り上げながら、右手に持った紙を突き向けた。
白蓮も手に持った紙を幽香に見せ付ける。


幽香は左手に持った閉じた傘を背後に伸ばして、魔砲を放つ。
再び、轟音と衝撃が本堂を大きく揺るがした。


「白蓮。昨日、約束したわよね?」


問いに白蓮は頷き、ゆっくりと歩き始める。
確かに約束した。

そして、幽香の言いたいことは白蓮には聞かずとも分かっていた。


『幽香と本気で戦う』だけど、――――――”その相手の指定”まではしていない。


わざわざ約束に指定されるような事をした鴉天狗の顔を思い出しつつ、白蓮は右手に持った紙を離す。


「昨日、山で酒盛りが開かれていたそうですね。それは鬼が招かれた為だそうです」
「あっそう?だから、なによ」


突き放すような返答だった。

幽香は穏やかな表情のまま、「くふふ」と、暗く不吉な笑い声を上げる。
だけど、白蓮も似たような笑い声で「うふふ」と、静かに微笑む。

それはきっと、白蓮の背後にいる者達の聞いたことの無い声音だっただろう。


こうして常に笑みを湛える者同士、二人は向かいだした。



きっと会う者全てを凍りつかせるような笑みを持って。

ただし、二人にとっては、とても楽しげな笑みを持って。




妖怪の山の何処かに、くすくす、と童が笑うような無邪気な声が届いていくのだった。
カッとなって勢いで書いた。凄く反省しています。

最後の最後で色々、おかしくなってしまいました。
この後、少し『ほのぼの』という言葉を辞書で引いてみます。

色々、言い訳したいんですが、最後ら辺で暴走してしまったのでもう何も言いません。

読んで頂いて、少しでも楽しいと感じてもらえれば幸いです。
設楽秋
[email protected]
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コメント



0.2760簡易評価
1.100名前が無い程度の能力削除
意外な組み合わせだけど面白いw
このタッグなら世界を取れる!!
2.80名前が無い程度の能力削除
面白かったです。
誤解されたと思い取り乱す幽香がとても可愛かったです。

ただ二つばかり気になったことが。
アリスにメイド服で奉仕させていたのはたしか魅魔様だったような記憶が。
あと神埼ではなく神綺ですね。
3.70名前が無い程度の能力削除
確かに肉体派魔法使いゆえに、これぐらいの事は素でやれそうだ、姐さん…
あと、「笑顔は本来(ry」を連想してしまったりw
読んでて微妙に読み辛かったりした場所があったので、この点で。
5.90名前が無い程度の能力削除
いいセンスだ。幽アリとはな、わかってる。
ただなんでタグ分離してるのかな?
12.100名前が無い程度の能力削除
うわぁ聖の姐さん格好良いw
幽香とタメ張ると優等生の不良っぽい。学園モノなら霊夢と魔理沙の悪友コンビの5、6歳上の卒業生みたいな。
妄想が止まりまセン!!!
幽アリ最高!!!!
13.90ぺ・四潤削除
いや、面白かった。いろんな意味で無敵と思われていたひじりんが、してやられるというのもなかなか新鮮で。
いつものぽえぽえな笑顔のひじりんも素敵だけど、さでずむな笑顔をしたひじりんも……アリだ!!

ところで、命蓮寺に帰ってきたところで、皆の名前がいちいちフルネームなのがかなり違和感。
19.無評価設楽秋削除
意外と好評で吃驚した!これで次回作も頑張る気が出てきました。

誤字報告、ありがとうございます。すぐに修正させてもらいます。

文章については、そうですね。より一層、気をつけさせてもらいます。

命蓮寺帰宅後は、白蓮視点でのカメラだったので、一人称に近いです。
確かにフルネームは違和感を感じる方もいるでしょう。なんだか、また一つ気づかされました。

読んでいただき、ありがとうございました。
22.100irusu削除
あたふたする幽香がすごく可愛い。
27.60名前が無い程度の能力削除
個別パートはいいのだけれども、まとまりを欠いていたような気がします。
でも前作よりはちょっとつながりを感じ取れたかも。
描写やキャラは好きです。応援してます。
32.80名前が無い程度の能力削除
よくよく考えてみれば意外にいいコンビになりそうな二人組みですね。
ちょっといまいち意味の取れない文もありましたが、なかなか読めるお話でした。
37.100名前が無い程度の能力削除
白蓮さん危なすぎる
生まれ育ちは妖怪にございませんが、心持だけは妖怪よりも妖怪らしくあれと
42.100名前が無い程度の能力削除
聖と言えば、天然お母さんか現在の幻想郷で自分の立ち位置がみつからないと言う苦悩が多い中、戦闘種族聖白蓮というキャラは斬新でしたwでもはまる!
1000年前は封印されるくらい恐れられたのですから、こういうのもアリですよね
43.50名前が無い程度の能力削除
なぜか凄く読みにくい。
プロットを立てずに、思いつくまま文章を打ち込んでいったような。
44.80名前が無い程度の能力削除
命は大事にしようぜ、文。
49.100名前が無い程度の能力削除
幽アリ好きの自分には嬉しい作品でした
聖と幽香のコンビも新鮮で面白かったです
56.100名前が無い程度の能力削除
文、無茶しやがって・・・
58.100名前が無い程度の能力削除
シリーズにして欲しいくらいです!
59.無評価設楽秋削除
嗚呼、しばらく経っても読んでくれる方が居るなんて。
というか、>>58さん
そんな事言うと、本気で書いてしまいますよ?
シリーズかぁ、確かに幽香と白蓮は一回っきりにするには惜しい組み合わせですからね。
少し構想を考えてみます。良い話が出来たら投稿してみますよ。
63.100名前が無い程度の能力削除
続編希望。これならイケる!
65.80名前が無い程度の能力削除
天子ぃぃぃぃぃぃぃ!!!!
75.90名前が無い程度の能力削除
タイトルのセンスが合わないこと以外は良かった