Coolier - 新生・東方創想話

狸寝入り。

2009/10/28 22:12:43
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※読まなくても大丈夫だとは思いますが、作品集89の『文々(あやや)。新聞』の設定が含まれています。
※この作品を読んだ後にでも読んで頂けると嬉しいです。
※設定により、小町を文がとても仲がいいです。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 空の散歩はとても楽しい。
 歩くわけではなく飛ぶという行為ではあるが、それでも自由に進むという点では同じだと思う。
 風が頬を撫で、微妙にくすぐったい感覚につい笑みがこぼれてしまう。
 ふと周りを見渡せば、そこには青い空に浮かぶ白い雲。木々の間を流れる綺麗な川。
 まるで自分が、幻想郷に生きるストーリーの中の主人公に思えてくるから不思議である。
 それがなんだか嬉しくなって、目を閉じて幻想郷にあるものすべてを受け入れようとしてみる。
 そして頭を過るのは、親友の死神の本当に嬉しそうな――綺麗と言うよりも可愛いと思っている――顔だった。
 
 ――射命丸文は、今日も友人の死神へと会いに行く。
 友人に負けないぐらい、最高の笑顔を浮かべながら。
 
「――さて、今日も楽しい一日になりそうです」
 
 
 
―◇―
 
 
  
 机と椅子、そして出入り口しか無い広い部屋。
 その部屋には大男の幽霊と、表情の硬い小さな少女がいた。
 小さな少女が、見た目通りの可愛らしい声で――しかし、目の前の男へと挑むような視線を投げかけて問いかける。
 
「貴方は自分の罪を自覚してますか?」
 大男は小さな少女に向かって、太い首を縦に振る。
 
「貴方は自分の罪の重さを自覚していますか?」
 大男は小さな少女に向かって、少し迷った後に太い首を縦に振る。
 
「貴方は殺人の罪を負いました。それは、白黒つけるならば黒……地獄行きになるべき罪です」
 大男は小さな少女に向かって、太い首を小さく縦に振る。
 
「しかし貴方は、心から自分の罪を罪として認めていません。それどころか、それが正しかったと思っていませんか?」
 大男は小さな少女を黙って見続けた。それが肯定の意であると、小さな少女は理解した。
 
「貴方は、一人の人間によって一夜で家族全員を失った。そして貴方は家族の無念を晴らすためにその人間を殺した。家族のためにと自分に言い聞かせて。そして貴方はしてはいけない罪を、しなければならない罪として捉えてしまった」
 大男は尚も黙り続けている。しかし、何かを憎む表情から小さな少女は大男の考えを読むことが出来た。
 
「生前、貴方は多くの人に好かれていました。ボランティアを通して多くの人に慕われていたからです。そして、貴方は人のために生きて人のために逝く……それが自分に出来る善行だと思っていたはず。しかし貴方は、最後の最後で自分の家族を本当の意味で救うことができなかったのです」
 それは違う――と、大男は小さな少女を睨みつける。
 
「いえ、貴方は救えなかったのです。本当は分かっているのではありませんか? そのような行いに善行を見出すことが出来るはずがありません。それに、それはご家族が貴方に求めた事では無いはずです。憎しみは人を救いません。憎しみで生きる糧となる人もいますが、憎しみは憎しみを生みます。現に貴方の憎しみを果たした相手のご家族は、人と不条理な自分の人生に疑問を持っています」
 大男は初めの言葉に少し迷いを見せた後、それがどうした――と言うかのように、小さな少女を睨む力をより強くした。
 
「確かに貴方にとっては殺人者の家族も憎らしいでしょう……その気持ちを変えろとは、私にも言えません。ですが、貴方の心は憎しみだけで染まっているのですか? 貴方は何故ボランティアをしたのですか? 何故人々を救いたいと思ったのですか? 貴方のご家族は、貴方のその姿を誇りとしていたのではないのですか?」
 大男は全ての問いに対して何も反論しなかった。否、出来なかった。
 
「そう、貴方の罪は殺人……しかしそれだけではありません。ここへ来る前に船頭死神にお金を渡したでしょう? その多さが貴方が生前の行いで救えた人の気持ちです。貴方を最後まで信じてくれた人々の思いや、貴方の家族の気持ちを踏みにじった。それが貴方のもう一つの罪なのです」
 そして大男は、今までボランティアを通して得た人々の笑顔……そして、最愛の家族の思いを思い出し――大男は頭を下げた。幽霊なので涙は流せないはずだが……小さな少女には心の底からの涙を流しているように見えた。
 
「その気持ちを忘れてはいけません。貴方を最後まで信じてくれた人を最後まで大切に想い続けなさい。人を最後まで救うことが、貴方の家族が貴方自身に求めていたことなのだから」
 大男は小さな少女に向かって、力強く太い首を縦に振った。
 
「では、最後に問います――貴方はもう一度人のために尽くしたいと思いますか? そして、後世では道を違えないと誓いますか?」
 大男は小さな少女に向かって、太い首を――――。
 
 
 
 
「ふう…………」
 
 人を裁き、新しい輪廻転生へ魂を導く閻魔――四季映姫・ヤマザナドゥは一人ため息をついていた。
 今日も3人に対して白黒はっきりとつけたところである。
 大体なら閻魔というものは資料にある通りの情報から白黒つけるだけであるが……映姫はしっかりと前世の行いに対して説教をして、魂に更生を誓わせるのである。
 先ほどの大男なら後世でも人のために、今度は道を違えず進めるだろうと映姫は思っている。
 説教は、人の進む道を指し示せるものだと映姫は信じているのだ。
 そのせいで説教くさいとよく言われるが……人々の幸せを願う映姫としては、特に否定することでも無い。
 さすがに「おばあちゃんみたい」と言われたら、半日を掛けて若さとは何かについて問うであろうが。
 
「さて……ん、次の魂は来てないようですね」

 両腕を上へと突き上げ、胸を反らすようにして思いっきり身体を伸ばす。
 ……部下の死神より凹凸が無いのが悔しい。
 それでも、全身の疲れた筋肉がほぐされたような気がして身体が軽くなった感じがする。
 気持ちは重くなったが…………。
 そして見るのは書類の束。
 それを見るとつい頭を抱えたくなってしまうのである。
  
「はあ…………」
 
 重いため息を深く吐き、書類の束に目を通す。
 裁いた罪人たちの資料やら後世での行いやら――さまざまな情報がそこには載っていた。
 
「……それにしても少ないですね」
 
 先ほど書類の束を見ると頭を抱えたくなると言ったが、とりたて資料の束を見ることに頭が痛くなるわけではない。
 問題はその少なさにあるのだ。
 
「私の説教を受けた魂が、後世で素晴らしい成功を成し得ているのは喜ばしいことですが」
 
 そして、もう一度深いため息をついて続けた。
 
「あまり働かない部下のせいで、仕事の少なさに萎えてしまいますね。このたまった気持ちを、サボっているであろう小町にぶつけるとしましょう」
 
 そう言うと映姫は多少の身支度を整えて、部下の死神の元へと向かうことにした。
 怒りながらもつい微笑んでしまう。何だかんだで小町に会うのが楽しみなのだろう。
 本人は真っ赤になって否定するであろうが。
 
 
 
―◇―
 
 
 
 文は危うく落ちそうになった。
 不意打ち、突然の事故、居眠り飛行などではない。
 いつも笑顔で出迎えてくれるはずの友人――小野塚小町が、仕事もしないで大きな岩に寄りかかっていたからだ。
 しかし、小町が仕事をしないことは今に始まった事ではないので驚くことではない。
 ただ、目を閉じて鼻ちょうちんまで作っていたので……面白いくらいベタ過ぎて、危うく落ちそうになったのである。
 
「あやややや、また寝てますね。まだ仕事中でしょうに」
 
 これが一度目では無いので、文は遠目で事の成り行きを理解することが出来た。
 ついでに言うと、最初サボっている小町を見たときは彼岸花の中にうつ伏せで倒れている時だった。
 そのため文は「し、死んでる!」と口元を引き攣らせて、その場に固まり――その直後、大きな悲鳴を上げたのである。
 文の騒ぎを聞きつけた映姫がすぐさまやってきて、とりあえず混乱している文を宥めた。
 多少落ち着いた文の説明を受けた映姫も驚き、脊髄反射の如く小町の元へと駆け寄ったのである。
 そして映姫が「こ、ここここ小町! おおおおお起きてください!!」と言いながら、力の無い身体を抱き起こすと――小町の幸せそうな寝顔がそこにはあった。
 それが分かった瞬間、文と映姫が顔を真っ赤にして小町を叩き起こしたのである。
 その後、文と映姫による説教で一日を無駄にしたことは言うまでもない。
 
「もう驚かないと思ってましたが……ここまであからさまにサボっていると思わず気が抜けてしまいますね。アレを何度も経験してるのに未だ慣れない映姫さんの過保護っぷりにも気が抜けますが……」
 
 そう言うと、文は小町を起こさないように出来るだけ静かにその横へと降りた。
 普段なら「小町さん、映姫さんが来ますよ」と言って起こすのであるが、今回は小町の寝顔観察へと切り替えた。
 あまりにも気持ちよさそうに小町が寝ていたので、なんとなくそうしたくなっただけである。
 別にやましいことを考えてのことではない。
 無いったら無い。
 
 
 
 
 文には一つ、悪戯と言うほどではないが……どうしてもやりたかったことがあった。
 
「ふむ……良い機会ですから、少し小町さんの船を調べてみましょうかね」

 そう言うと文は、岸に止めてある小町の船を調べ始めた。
 と言っても、小町もちゃんとした住む家があるので生活必需品などは入ってなく、特に気をひかれるものは見られない。
 ただ船そのものに何かしらの力が感じられることから、三途の川を渡る際に絶滅した古代魚などに襲われないような何か仕掛けがあるのだろうか――と思案したりしていた。
 その後も少し調べてみたが、特に面白そうなものは無いか――と諦めたとき、何か引き出しのようなものが見つけられた。
 普段小町が船頭死神として船を漕ぐときに立つ位置は、どうやら箱の上みたいになっているようで、丁度その横の引き出しが見えたのである。
 小町が寝ているので多少の罪悪感もあったが……それよりも記者としての好奇心が勝り結局見ることにしたのである。
 
「さーて、心苦しいですが仕方ないのです。船頭死神・小野塚小町の秘密を新聞記者・射命丸文がまさに今解き明かそうと――あれ?」 
 
 引き出しを開けてみると、そこから見えたのは古びた新聞の束だった。
 文は、その一つを手に取って目を凝らして見てみた。
 多少湿気で印刷された文字が滲んでしまってはいるが……それでも、大事に保存されていたのがよく分かる。
 
「…………」
 
 文は言葉が出なかった。
 見間違えるはずがない……これは文の書いた新聞の束である。
 何故自分の新聞がここにあるのだろうか?
 それに、ここにあるのは今まで発行した新聞の中でも古いものばかりで――
 
「――まさか」
 
 文は、何かを思いついたような顔をした後ページをめくり出した。
 そして手に取った新聞は、予想通り全て≪文々。新聞≫を一人で書き進めるまでの新聞だったのである。
 そして文は少し昔のことを思い出した。
 
 少し前の――≪文々。新聞≫が出来る前であるが――新聞を作る自分は、人に見てもらいたいという大事な気持ちを忘れていた。
 そのせいで新聞を見てくれない人を恨み、自分の新聞が認められないことに腹を立てていたが……その考えを正してくれたのが小町であった。
 自分が何のために新聞を書き、何のために新聞を見てもらいたかったのか……それを改めて理解したことで、文は今の新聞記者としての道を見つけることが出来たのである。
 そうして、二人で新しく発行したのが今の≪文々。新聞≫なのだ。
 一人で新聞を書き進めるまでは小町の力も借りたのだが――その頃の、今の自分の新聞の原点がここには詰まっていた。 
 そのまま文は、出来る限り丁寧にページをめくり続けた。
 一つの新聞を読み返したら次の新聞、そしてまた次の新聞――そして、気付いたころには全ての新聞を見終わっていた。
 最後の新聞には『私の友人』という題で自分と小町の写真が載せられてあった。
 この写真を撮った後『今日が最後の二人の新聞だ』と言った小町の顔が今でも忘れられない。
 文はその時「私は小町さんと一緒に新聞を作り続けたいです」と言いたかったが、その思いを堪えて首を縦に振ったのである。
 
 ――なぜなら、これは私の新聞だから――――。
 
「貴方は本当に……」
 
 しばらくして、あたりを見回してみると少し日が傾いていた。
 どれほど時間が経っただろうかも覚えては無いが、大体1時間は過ぎただろうか。
 短時間で全てを読み切れるほどに、この自分と小町の作った新聞の束は少なかったのである。
 未だに素晴らしいほど可愛らしい寝顔で鼻ちょうちんを出してる小町。
 そしてその横にはちょこんと文が座っている。
 小町を起こしてあの日言えなかった言葉を言おうかとも思ったが……それは、小町の気持ちを裏切るような気がして言えなかった。
 
「小町さん」
 
 文は未だ起きない友人へと言葉を投げかけた。
 
「やっぱり、貴方は私の一番の親友ですよ。これからもずっと」
 
 ――今日はなんだか疲れたなあ。
 そう思うとなんだか身体が急に重くなった気がする。
 文は横に首を傾けると、そこには先ほどよりも気持ちよさそうに寝ている小町が見えた。
 
「なんだか、寝ないと損をしてしまいそうですね…………」
 
 そのまま文は、小町へと身体をあずけて目を閉じた。
 そして、小町の体温と風の温かさに身を預けながら――文は小さな寝息を立て始めた。
 だから、この時文は小町の顔が赤くなっていることには気付かなかったのである。
 
 
 
―◇―
 
 
 
 映姫は目を疑った。
 部下の死神が鼻ちょうちんを出して寝ているのを見つけた時は、額に青筋が浮かんだのだが……その横では、生真面目な天狗が死神に寄り添うようにして寝ていたのである。
 最初は「小町、貴方は私というものがありながら……天狗と逢引だなんて……!」と思い、二人にレーザーでもぶち込んでやろうか――と思ったのであるが、どうやら違うようである。
 天狗の横には、大事に置かれた新聞の束。
 死神の船の引き出しは空いたまま。
 上から見ただけではあるが、大方寝ている死神の横で天狗がいろいろと物色していたのだろうと予想できた。
 二人の前に出来るだけ静かに降りると、映姫はその新聞を手に取った。
 ぱっと見ると、あまりにもふざけた内容ではあったが……少し見てみると、なんだか読んでいるこっちまで楽しくなる。そんな新聞だと映姫は考えを改めた。
 
「これが射命丸文の、真実を遠回しに面白おかしく書く≪文々。新聞≫ですか。これはこれで面白いですね……」
 
 映姫はそのまま、手に持った新聞をめくり続ける。
 時折笑顔をのぞかせながら、時には部下の怠慢な文章に額に青筋を浮かべながら。
 そして、どの新聞にも最後にはこう書かれていたのである。
 
 ――著者:射命丸文・小野塚小町。
 
「そういえば小町、前に文さんと新聞を書いてましたね……その分、私に心配かけまいと仕事をしてくれてましたっけ。今はからっきしですが」
 
 そんな部下の気配りが嬉しくて――でも、それ以上に天狗への気配りが大きそうなことに軽い嫉妬を覚えてしまう。
 幸せそうな二人の寝顔を邪魔しては悪いと自分に言い聞かせ、手に持った新聞を軽い手つきで読み進めることにした。
 
  
  
 閻魔は新聞の続きを……先ほどよりも丁寧な手つきで読み進める。
 天狗は小さな寝息を立てて、幸せそうな顔で眠り続ける。
 死神はその目を少し開けて二人の顔を見つめてから――嬉しそうな寝顔のまま、狸寝入りを続行した。
 
 
 
 
 
こんにちは、ぜくたんです。
正直今回は文章難しく書きすぎました。
読みづらかったら申し訳ないです。

狸寝入りとは小町のことですね。

普段も狸寝入りだったら、映姫に怒られることを望んでるみたいですね。
何だかんだで小町も甘えたがるオトシゴロナンデスヨネ。


まぁ、びしばし怒ってください。
とりあえず改行にはなるべく気を付けてはみました、はい。
よろしければ、作品集89の『文々(あやや)。新聞』を見てください。

では、これからもよろしくお願いします。



10/29 誤字修正しました:罪をを→罪を
            おばあちゃん見たい→おばあちゃんみたい
   

   後初めて100点貰って……かなり嬉しいです(^^; 今後ともよろしくお願いします。
ぜくたん
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コメント



0.1720簡易評価
1.100名前が無い程度の能力削除
いいですね
3.100名前が無い程度の能力削除
なんというハーレムw
何か和みました
6.100名前が無い程度の能力削除
いいですねー
ちと前作も見てみよう
7.100煉獄削除
映姫様の裁判の会話なども良かったですし、後半の文たちの話や小町の隣で
寝ている姿とか面白かったです。

一字余計な部分があったので報告です。
>そして貴方はしてはいけない罪をを
『を』が一字余計ですよ。
13.100名前が無い程度の能力削除
いろいろな要素があって面白かったなあ
14.100奇声を発する程度の能力削除
めっちゃ和みました!!!
18.100名前が無い程度の能力削除
読みやすい文章でしたよ。
和みました。


誤字報告です。
>「おばあちゃん見たい」
おばあちゃんの様な、という意味合いでしょうから
「見たい」は平仮名かと。
19.100名前が無い程度の能力削除
いいね。ありだね。
21.90名前が無い程度の能力削除
なんという愛され系死神
34.100名前が無い程度の能力削除
とても面白かったです
小町×文もありだな!