Coolier - 新生・東方創想話

AA「豊満戦隊デカレンジャー」前編

2004/12/04 11:03:02
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(前作「A」を読んでいないと恐らく意味不明だと思われますので
出来る事ならそちらから読んでいただく事をお勧め致します)




これまでのあらすじと次回予告


貧相戦隊ぺタレンジャーとの最終決戦に赴いたデカレンジャー。

しかしそこで待っていたのは何と新たな敵「月の女帝 ペタケトリーカグヤ」だった。

カグヤを加えてぺたんパワーが増大したぺタレンジャーに手も足も出ないデカレンジャーは

ついにとっておきの秘密兵器「豊満不死鳥 モコモコデカフェニックス」の封印を解く決意をする。

しかし女帝ペタケトリーカグヤとその従者「デカドラッグえーりん」の恐ろしき野望もまた動き出そうとしていた。

どうなるデカレンジャー!そして比較的大型でありながらぺタレンジャーに味方するえーりんの真意とは!?



次週、豊満戦隊デカレンジャー最終回「月まで届け、ぺたんの叫び」



君のハートに☆フジヤマヴォルケイノ!!



・ ・ ・



幻想郷の、とある小高い丘の上。
鮮やかな夕日に照らされて果てし無く広がる草原。
さあ、と風が吹くたびに草がさざ波の様に揺れ泳く様は、まるで金色の大海原。



そんな情緒溢れる郷愁の風景を、五つの不協和音がこれ以上無いほどブチ壊しにした。



「カリスマだだ漏れ!デカリスマゴースト幽々子!!」

「スキマで年増で暇でデカい!ビューティパープル八雲デカリ!!」

「大型はっちゃけ中間管理職!デカプリンテンコー藍!!」

「もうキモいとは言わせない!溢れる夢が胸一杯、キモデッカー慧音!!」

「……ふ、不死のデカさを焼き付けてやる……モコモコデカフェニックス……」



「「「「五人揃ってッ!!」」」」



「「「「豊満戦隊デカレンジ『アホかあんたらはぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』




─ 豊満戦隊デカレンジャー 最終話 ─




─月まで届け、ぺたんの叫び─





・ ・ ・





輝夜を加えたぺタレンジャーに完膚無きまでに敗北を喫したデカレンジャー。
全くの予想外だった輝夜の参戦により、ほぼ対等だった双方のパワーバランスが
一気にぺタレンジャー側に傾いてしまった。このままでは明らかに拙いと言う事で、
今は戦力増強の為に無理矢理連れてこられた妹紅を巻き添えにしながら
初心に立ち返って決めポーズの練習をしている所だった。
しかしそれまで渋々ながらも付き合っていた妹紅も、最後の最後で
ついに我慢の限界に達したのか、声の限りに思いの丈をぶちまけた。


「もう、折角カッコよく決まったところなのにぃ」

「これがカッコいいにカテゴライズされるならこの世からカッコ悪いって概念自体無くなるわ!
って言うか何の関係も無い私がどうしてこんなアホな事しなきゃいけないのよ!?」


気分よく盛り上がっている所に激しくツッコまれて、幽々子がむーと頬を膨らませる。
妖夢がこれを見たら胸のトキメキ120%増量間違い無しのチャーミングな表情だが
生憎妹紅には何の効果ももたらさなかったどころか、逆に神経を逆撫でしてしまった様だ。
と、慧音がそっと妹紅に歩み寄り、手をきゅっと握り締めた。


「すまない妹紅、人間の里を守る為に今しばらく力を貸してくれ……頼む」

「里を守る為ってそんな大層な目的なんか……うっ……!そ、そんな目で見ないでよ……慧音……っ」


心底申し訳無さそうな、そして何処かすがり付くような表情で言う慧音。
その表情の可憐さと来たらまるで雨に濡れた子犬ならぬ雨に濡れたワーハクタクだ。
幽々子の拗ね顔には何の反応も示さなかった妹紅だが
これには相当ダメージを受けたらしく、見る見る内に頬が紅く染まっていく。
金色に染まった草が揺らめく夕日の丘で、手を取り合って見つめあう少女が二人。
傍目には実に妖しすぎる光景、花で表すとすれば百合だ。


「妹紅……私達だけではとても…………妹紅が居ないと、駄目なんだ……」

「っ!?……う……あ……そ、その……あ~……」


思い詰めた様子で慧音が呟く。
うっすらと涙目、おまけに握っていた妹紅の手を
ぐいと自分の胸の辺りまで引き寄せて妹紅の目を真正面からじっと見つめた。
その真剣そのものの表情は、とても嘘を付いているようには見えない。
強烈な一撃に妹紅の理性と書いてフジヤマがそこはかとなく鳴動と書いてヴォルケイノする。


「っ……ああもう、分かったわよ!やればいいんでしょやれば……って、そこの年増!
今笑ったでしょ!いや間違いなく笑ったッ!!あんた一体慧音に何を吹き込んだの!?」

「吹き込んだなんて失礼ねぇ。ただ私はあの四人が今度は人里に繰り出していって
そこで胸の大きな女性を片っ端から切り捨ようとしてるって情報を掴んだからそれを教えてあげただけよ」


危うく陥落しかけた妹紅だが、自分と慧音を見つめる紫の顔が一瞬ニタリと歪んだのを見逃さなかった。
確かに慧音自身はまったく嘘を付いていなかったが、問題は別のところにあった様だ。
この時妹紅は、これっぽっちも表情を変えずにいけしゃあしゃあと語る紫を正直者の死で消し飛ばしてやろうかと思ったが
どう考えても紫は正直者にはカテゴライズされそうに無いので効果無しと判断し踏み止まった。


「何そのあらゆるベクトルにうさんくささ全開の珍説ッ!?
道理で最近慧音が落ち着かない様子だと思ったらあんたの仕業だったのね!!」

「仕方ないじゃない、向こうは五人でこっちは四人。しかもこっちの面子は
全員あの四人の誰かしらに既に負けてるわけだし、まともに弾幕(や)り合ったって勝ち目は無いわ」


この時妹紅は「勝つとか負けるとか以前に別に闘う必要なんか無いじゃない」と思ったが
この年増にはもう何を言っても無駄だと判断した為、あえて黙っていた。
そして紫を説得するのは諦め、もう一人の主犯格と思われる幽々子に話の矛先を向けた。


「……って言うかあんた達の他にもう一人襲われたんでしょ?その人を仲間に入れれば……」

「うーん、一応声はかけたんだけど……
『咲夜さんを敵に回す事になったらもう紅魔館で生きていけません』って
大瀑布の如き涙を流して嫌がったから、本人の意思を尊重してメンバーから外したの」

「じゃあ何で私の意思はアウトオブ眼中なのよッ!」

「だって貴方のインペリシャブルシューティングって
そこはかとなく響きがいやらしいじゃない。特に前から五文字~八文字目辺りとか」

「この軍団の入隊基準ってやらしさなの!?」


幽々子の切ないくらいに天才的な発言に、思わず感動の涙を流す妹紅。
そして同時にフジヤマヴォルケイノで遙か彼方に吹き飛ばしてやろうかと思ったが
万が一それをしてしまったが最後、別に何もやましい所は無いはずなのに
何故か更にスケベ扱いされるような嫌な予感がしたのでどうにか堪えた。


「ふぅ……それにしても、天然大食い幽霊とぐーたらコアラ女は兎も角として
何で貴方みたいな常識人……じゃなくて式がこんな……って……ッ!?」


ポケットに手を突っ込んで、心底呆れ返ったという感じで溜息をつく妹紅。
そしてこの中で唯一の常識人ならぬ常識式だと思われる藍に助けを求めようとして声をかけたが、
振り返った先に広がっていた惨劇を目の当たりにして言葉を失った。


「……ふ、ふふふ……これで……好きなだけテンコーが……ふふ……テンコ……テンコー……く、くくっ……」


正気を失った人の見本みたいなトリップし過ぎの表情で謎の呪文を呟き続ける藍。
どうやら普段真面目な人程一線を越えると手が付けられなくなるという話は真実だったらしい。
もはや藍の頭の中にあるのは霊夢達への仕返しでもデカレンジャーとしての使命でもなく、
ただ単に「この馬鹿騒ぎに乗じて好きなだけテンコーをぶっ放せる」と言う悪質な愉快犯じみた思考だけの様だ。


「……慧音、こんな変態達に付き合う道理はないわ。もう帰るわよ」

「し、しかし……このままでは里の女性達の命が……」

「そんなもんあの年増の嘘に決まってるでしょうが!!」


もはやこの三馬鹿を正気に戻す事は不可能と判断し、慧音を促して立ち去ろうとする妹紅。
未だに紫の大嘘を信じている慧音が不安そうな表情を浮かべたが、
それに構わずすたすたと紫達から離れていく。


その時、紫が何やら思わせぶりな笑顔を浮かべて妹紅の背中に声をかけた。


「ふふ、そんな事言っていられるのも今の内よ。
これから私が言う事を聞いたら……参加しない訳にはいかなくなるわ」

「……大層な自信じゃないの…………いいわ、聞いてあげる」


今までのおちゃらけた軽い口調とは明らかに違う紫の言葉。
その雰囲気を察したのか、妹紅が足を止めて振り向く。









「向こうには──蓬莱山 輝夜が居るわよ」





刹那、風が止んだ。





「──な──に──?」





紫の口から『輝夜』という単語が出た途端、妹紅の雰囲気が変わった。
妹紅の醸し出す凄まじい殺気で、ぎしぃ、と周囲の空気が張り詰める。
しかしそれを柳に風と受け流し、紫がにっこりと笑いながら言葉を紡ぐ。



「貴方が輝夜を抑えてくれれば私達も何かと助かるし……
それに何より…………あの子の事、喰べたいんでしょ?」


「──────ッ」


「手伝ってくれないかしら」



しばしの沈黙。
やがて、脳内で紫の言葉を何度も何度も反芻していた妹紅が
クスクスと、心底楽しそうなそして禍々しい微笑みを浮かべた。


「……ふふ……」




「それは それは……」




「願っても無い……ふふ……」


精神力の弱いものなら近くによるだけで失神してしまいそうな殺気を放つ妹紅。
余りにも強烈な感情の奔流に、たまたま数百メートル近くを通りかかったミスティアが
殺気に当てられてしまい運の悪い事にこれもたまたまそこにあった池に落っこちた。


「ま、何はともあれっ」


「巨乳の名誉の為にっ」


そして妹紅と紫のやり取りを見ていた幽々子が満足そうに微笑み、ぽんと手を打った。
にこにこと笑ったまま、右手を前に差し出して高らかに宣言する。


「里の……いや、幻想郷の女性達を守る為に」


慧音が、静かな決意と熱い思いを湛えた瞳で。


「えーと……とりあえず暇潰しの為に」


紫が、怠惰な感情と底知れぬ妖艶さを醸し出す微笑で。


「テンコーサイコーレッツゴー!」


藍が、狂おしい激情とアホらしい夢を垂れ流す異常なハイテンションで。



「──」



最後に妹紅が、燃え盛る憎しみと煮え滾る怨念を秘めた表情で幽々子の掌に自分達の掌を重ねていく。
己の信念を貫く為に、そして生きる意味を見つけ出す為に。
美しい少女達がその命を力の限りに燃やし尽くし、輝こうとしている姿はかくも美しい。
ひとり明らかに異常なのが混ざっているが全員一致で徹底的にスルー決め込んだ。
そして、その様子を心底嬉しそうに見ていた幽々子が鬨の声を上げる。



「新生デカレンジャー……結成っ(はぁと)」









「それじゃあもう一回決めポーズの練習ね」

「それは嫌」




・ ・ ・




一方その頃、永遠亭。
真っ暗な部屋の中にひとつだけ立てられた蝋燭の明かり、
その光の輪の中に、亡、とふたつの人影が浮かび上がった。
そう、月の女帝ペタケトリーカグヤこと「蓬莱山 輝夜」と、その従者のデカドラッグえーりんこと「八意 永琳」である。


「姫」

「何かしら」


背後から声をかける永琳と、振り返りもせずに声だけでそれに答える輝夜。



「『不死鳥』が……動き出しました」



ぴくり、と輝夜が微かに反応する。
やがて肩を小刻みに震わせてクスクスと笑い出した。
そして純粋で可憐な、しかしまるで幼い子供が蜻蛉の羽を千切って遊ぶ時の様な
得体の知れぬ恐ろしさを感じさせる表情で、輝夜が嬉しそうに呟く。



「あら あら あら あら……」





「これは これは……」





「……永琳?くれぐれも……邪魔が入らないように、ね」




「……委細承知」






・ ・ ・







モコモコデカフェニックスこと藤原妹紅がデカレンジャー参戦を決意した、明くる日の朝。
貧相戦隊ぺタレンジャーの大して秘密じゃない基地、博麗神社では
可憐で華麗な紅白の蝶が実に楽しそうに踊り狂っていた。


「神社のそば~の~ 無残な焼け野~原~ まるでわたし~の~ ちいさ~な~胸~♪

ふと思い~出す~ 中国のむーねは~ 私達~には~ まぶ~し~すぎた~♪」


空気はりんと澄み渡り、空は気持ちのいい晴天。
加えて先日の戦いでデカレンジャーに勝利し大変気分がよろしい状態の霊夢が
どことなく自虐めいた歌を口ずさみながら、踊る様に境内の掃除をしている。
飛んだり跳ねたりの余計な動きが多すぎる所為でちっとも奇麗になっていないのだが
そんな瑣末事は全く気にならない程今の霊夢は舞い上がっている。
ちなみに「神社のそばの無残な焼け野原」とは、先日デカレンジャーと闘った時に
魔理沙がそこにあった家ごとマスタースパークで吹っ飛ばした為に出来たものなのだがこの際それは関係無い。


「あなたは~ 悲劇の~十勝平野です~か~? あなたを~ 膨らませてくれるのは誰ですか~♪

 そうやって~ そこから1mmも膨らまないつもりですか~♪」


歌が進むたびに自分を傷付けている事に気付かない霊夢。
掃除をしていた筈がくるくると回転したりぴょんぴょんと飛び跳ねたり
挙句の果てには箒をギター代わりにかき鳴らして暴れ始めた。
アリス辺りが見たら感動とショックの余り激しく血を吐いてぶっ倒れそうな凄まじい光景だ。


「よし、掃除完了ッ……って、全然奇麗になってないじゃないッ!?
 え?な、何で?何だか誰かが激しく踊り狂った後みたいに散らかってるんだけどッ!?」


むしろ掃除する前より余計に散らかった境内を見て愕然とする霊夢。
楽しい夢ほどいざ覚めて現実に引き戻された時に空しくなると言ういい例だ。


「ん~……また一から始めるのも面倒だし……ま、いっか。後で魔理沙に頼んでマスタースパークで片付けて貰おっと」


それだと散らかったゴミどころか神社もろとも消えて無くなってしまいそうなものだが
あいにく今の霊夢にはその事に気が付くだけの冷静さと思考力は無く、
更に悲劇的な事に普段ならここでツッコんでくれる筈の黒白やメイド長やらも居なかった。


霊夢が箒を片付け、神社の中に戻ろうとしたその時。


「……い……む……ハ……」

「……っ」


どこからか怪しげな声が聞こえ、霊夢が思わず立ち止まった。
素早くぐるりと境内を見渡してみるが、さしあたって怪しげな影などは見当たらない。
しかし何者かの気配と呻き声のような音は絶えなかった。


「む……チ……す……」

「一体……何処から……っ?」


感じられる気配は明らかに人間のモノではない。

この時霊夢はもしかしたら先程の自分の熱唱に心を打たれたルーミア辺りが
神社の敷地内のどこかで感動に咽び泣いているのでは無いかと一瞬考えたが、
自分で考えていて何だか物凄く空しくなったのですぐにその思考を破棄した。
もしかすると怪しい妖怪の襲来かもしれない。最悪の事態を想定し、スペルカードを取り出して戦闘態勢を取る霊夢。


「れ……い……みこ……きま……み……」

「……近付いて来てる……ッ!?くっ……ど、何処から……ッ」


しかし何度周囲を探ってみても動くものは何一つ見つからない。
出所不明の怪しいプレッシャーで、霊夢の背中に嫌な汗が一筋流れる。
こうなったら一か八かで八方鬼縛陣でもぶっ放してやろうか、霊夢がそう思った次の瞬間。



「…………霊夢ー!!私の愛を受け止めはぶじゅッ!?」



いきなり上空からアリスが霊夢目掛けて一直線に墜落してきた。
落下してくるアリスの血走った目と、何故か夥しい勢いで溢れ出している鼻血に
ただならぬ恐怖を感じた霊夢が華麗に身をかわした為、アリスはそのまま顔面から境内に激突した。
余談だが鼻血を流しながらまッ逆さまに落ちていくアリスは、まるで夜空に燦然と煌く真紅の彗星のようで
これ以上なく美しかったとその時たまたま近くを通りかかった騒霊三姉妹が後に語っていた。
とりあえず「怪しい何かの襲来」と言う点で霊夢の予想は見事に当たっていた。


「なッ……あ、アリスッ!?」

「あ、ああ……れ、霊夢……」

「ちょ……し、しっかりしなさいっ!一体何がどうしてこんな……」

「……れ、霊夢の……胸チラ……あぁ……す、素敵……」

「帰れッ!!」


反射的にアリスを階段目掛けてぶん投げる霊夢。
どうやら先程霊夢が歌って踊って大ハッスルしているのを上空から見ていたアリスが
思わぬ衝撃映像に混乱して集中力を失い墜落しただけの様だ。
確かに落ち着いて見てみれば、激しく動き回った所為で巫女服の胸元が乱れている。
ちなみにこの時一瞬だけ見えた霊夢の胸を、アリスが驚異的な動体視力を発揮して一瞬でスケッチし
以後のアリスの人形制作に多大なる影響を与えたと噂されるが真偽の程は定かではない。


「れ、霊夢……愛情表現にしては激しすぎるわよベイビー……」

「(このポジティブさは見習いたいものね……いや、やっぱり見習いたくないわ)」


ズルズルと階段を這い上がってくるアリス。
その姿は正に「妖」しい物の「怪」と言うのが相応しい不気味な風情を醸し出している。
すっくと立ち上がり、ぱたぱたと服に付いた埃を払って霊夢に歩み寄ってくる。


「それにしても散らかってるわねぇ。もしかして誰にも内緒で何かスケベな行為にでも及んでたのかしら」

「散らかってるのは否定しないけど何でスケベな行為に限定するのよ!
……で……何か用でもあるの?まさかただ単に私の事をストーキングしてた訳じゃないでしょうね」

「心配しなくても霊夢の行動は私の人形に調べさせてるから二十四時間逐一把握済みよ。
そうじゃなくて……ほら、これ」


そう言って、アリスが一枚の封筒を差し出した。
白い紙に黒い文字で「博麗 霊夢様へ」とだけ書かれている、何とも飾りっ気の無い地味な便箋。
何やらさりげなく衝撃的な告白をされた様だがこの際そんな事を気にしている暇はない。
後で夢想封印でぶっ飛ばせばいい事だし、と考えて霊夢はとりあえず目の前の便箋に意識を向ける。


「何で私への手紙をアリスが持ってるのよ」

「実は昨日ちょっとマヨヒガに行く用事があってね。そこで紫がこれを霊夢に渡してくれって」

「紫が…………へえ………………ッ……!?こ…………これはッ……!!」


差出人が紫と聞き、霊夢の表情が僅かに硬くなる。
しっかりと閉じられた封筒の口を破り取り、中野手紙を取り出す霊夢。
そしてその手紙に書かれていた内容を読み進めていく内に、霊夢の表情が次第に険しくなっていく。


「ちなみに……あの三人にも同じ文面の手紙が届いてる筈だって言ってたわよ」

「─ッ!」


アリスの言葉に、霊夢の体がびくっと強張った。

そしてしばしの沈黙の後、手に持った手紙をぐしゃりと握り潰す。



「ふん、面白いじゃない……大は小を兼ねるって言うのは
こと胸に関しては絶対成り立たないって事を教えてあげるわ」



そう言って飛び立って行く霊夢。
先程まで晴れていた筈の空は、まるでこの先彼女達を待ち受ける
過酷な運命を暗示しているかの様に何時の間にかどんよりと曇っていた。
おみやげよろしくねー、いざとなったら霊夢の体で良いわよー、と言うアリスの声だけが
境内に空しく響き、そして霧散して行った。





──かくしてカタストロフの幕は開いたのだった。






(続かないでもない)


ついカッとなってやっ(以下略)

恐れ多くも三作目を投稿させていただきます。
一応完成はしましたが妙に長くなったのでとりあえず前後編構成と相成りました。
ある意味では前作「A」も含めて三部構成と言えなくも無かったり。


それでは、やりすぎ感と馬鹿らしさが漂う変態的なアホSSになりましたが
最後までお付き合い頂ければこれ以上なく幸いでございます。


(細部を修正しました)
c.n.v-Anthem
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コメント



0.4350簡易評価
27.無評価おやつ削除
GJ!!後編楽しみにしてます。
32.90名前はまだ無い削除
テンコー!テンコー!
後編期待しております。

二連装夕張メロン(笑)は不参加ですか。
36.60rem削除
理性と書いてフジヤマ、鳴動と書いてヴォルケイノ
これ最高です
47.90紫音削除
なんつーか・・・
「あなたは私を笑い殺す気ですか?」
ええ、盛大に大爆笑させていただきましたとも。相変わらず皆さん、見事なまでのぶっ壊れっぷりですな。でも面白いので全てよしです。後編も楽しみにさせていただきます。
・・・そしてやはり師匠は山脈で輝夜は大平原だったのk(天網蜘網捕蝶の法→蓬莱の樹海コンボ)

>二十四時間逐一把握済み
素直に一言。恐るべしアリス(笑) てか、素でやってそうな気もしまs(首吊り蓬莱人形)
49.70TAK削除
まず、あらすじからして爆笑。
いや本当に面白いです…誇張なしに。

>ひとり明らかに異常なのが混ざっているが
……もうテンコーしか聞こえない(泣)
52.無評価いち読者削除
どのキャラも壊れきってますね、もはや清々しいまでに(笑)。
ええ、霊夢の自虐的な歌には吹きましたよ。『そこから1mmも膨らまないつもりですか~♪』は最高です。
個人的には、ゆゆ様はどちらかと言えば小さゲフンゲフン
とりあえず私はぺタレンジャー側を全力を以って応援いたします(ぇ