Coolier - 新生・東方創想話

現実~幻想

2009/10/19 20:50:25
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私という存在が認識できた頃、私には見えないものが見えていた



『気』という存在
誰も知らないそれを、無意識に使っていた
音の『気』を吸い取り無音にさせること
人を転ばせる事なんてのもあった
私の存在も朧げにさせることもある
それは私を恐れるようになった
誰も私を認めようともしない
射程を逃れるように遠ざかる者達
私は笑顔でそれに答えた
しかし心は妖怪に存在してはいけないものがあった
好かれたい、と
気が緩まる
力が緩まった
「殺すなら今じゃないか?」
そんな声が聞こえてきた



――私が何をしただろうか



ある時、『気』をコントロールできると私は気が付いた
私は善人として生きれるようになった
転びそうな者を逆に立ち上がらせたり
気が足りないものに送り込んであげたり
勿論それは悪を倒すような事も出来た
力の関係を逆転させるなんて事も
朧げにする事を利点として取り扱い
皆が私を頼りにしてくれていた
皆が温かく迎えてくれた
皆が妖怪という存在を忘れようとしていた
私はいつの間にか、知りもしない間に英雄とはやしたてられた
――私の能力
妖怪という存在を私が忘れた
誰もいないところで、私は僅かに満足をしていた



皆が、といっても例外がいることに私は気が付いた
大人は私を気味悪がり
力の有る者は私を妬み
私にやられた者は様々な噂を立てる
そして善意で行ったことが、逆に転換していった
私自身も、ニンゲンに関与しなくなった



ニンゲンが逃げ狂おうとも
殺され、連れて行かれ、たとえその後が目を覆い隠したくなるものがあったとしても
私は関与しないことにした
とても楽だった
とても苦しかった
――私はドッチ?
賊というものが、ニンゲンにそこまでの恐怖を与えていたとは思ってもいなかった
何回か分からない急襲
ニンゲンは扉を締め切り
歯を食いしばり
暗い光景がそこにあった



ある日、私は物陰からまたもその光景を見ていた
気の力によって参戦することは無かった
動けない。拒絶されたくなかったのかもしれない
私から見て稚拙なニンゲン達の略奪は、妖怪の捕食よりも生々しいものだった
そして、知らず知らずに『気』使ってしまう。
逃げようとするものを捕まえるその手を払い
気を使える射程ギリギリまでを妨害した
いつしか賊は、それを恐れ逃げようとする
収穫の無い者は殺される。そんな事はお構い無しに
私はその光景をみて驚いていた。妖怪には急襲したものが逃げることなんて滅多に無かったから。
それが第三者が介入したとしても
この世界には私が最後の妖怪だ、だれにも捕食されることはもうない
だからこそ、私にはやることがあるのかもしれない。
逃げる光景を見た私はそれを追うようにしていた
―許せない
そんな言葉が私の心をよぎった
―卑怯だ
なにが
―ニンゲンが
じゃあどうするの
―報復





――反省しなさい――





賊のアジトで私は妖怪だった
妖怪としての内面を前面に出し
肉を食い、血を滴らせ



喰らう、喰らう、喰らう、喰らう喰らう喰らう喰らう


私の周りは血で染まった。賊も全員倒れた。
これで周りは安全だろう、脅威となることは無い
そして私は力も無く先ほど襲われた町へと戻る。どうせ恐れられている身だ、その上力まで使ってしまったから。
このまま疲れた体で嬲り殺されるのも一興だろう。
ボスと思しき者の顔を抱え民家の前で倒れる
町の者達は恐る恐ると私の近くへと来た
もう―疲れた
殺されたい


「ありがとう」

薄れ行く意識の中で
そんな声が聞こえる。


なんで?なんで?なんで?なんで?


人を殺すという行為が人を喜ばせる。何とも皮肉なことか
私はうっすらと笑うとそのまま顔を伏せる
しばらくすると私の体が楽になってきた


――これで、死ぬのか


私の周りが白くなり、否。私が白くなり消えていく
私はようやく天国にいける。
これでようやく妖怪という鎖に繋がれることは無い










しかし私は一つ間違いを犯していた
次に行くのは天国などでは無い、と
私は感謝された。故に私は妖怪という認識では無くなった。
妖怪という存在は忘れられたのだ
感謝の言葉は尽きることなく私に注がれる



そして私は次へと進む




『忘れられたものが集まる郷』へと
ありがとう
これは『気』使う者にとって幸せでしたでしょうか


※これは気を他者に送り込めるという前提で話を行っています
know
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コメント



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人間って皮肉ないきものですね
よかったです