Coolier - 新生・東方創想話

小さなお団子

2009/09/20 03:52:32
最終更新
サイズ
6.16KB
ページ数
1
閲覧数
406
評価数
4/16
POINT
720
Rate
8.76

分類タグ


「―――月ぬ美しゃ 十日三日 女童美しゃ 十七つ」
永遠亭の縁側に、かの大国主神とも交友があるとかないとかいう、因幡てゐが私の二人分くらい隣に腰掛けて歌っている。
今宵は十三夜のお月見である。

「それって琉球民謡じゃない、どこで覚えたのよそんなの」
月見用のお団子を運んできた鈴仙・優曇華院・イナバが切りの良い節で口を出す。

「ちょっとちょっと、私を誰だと思ってるんだい?少なくとも鈴仙よりかはこの国をよーく知ってるよ。むしろ何で鈴仙がこの歌を知ってるの?宇宙兎のくせに」
したり顔で皮肉るてゐ。

「し・・・師匠に教わったのよ。無知で無能な宇宙兎で悪かったわね。大体、なんでそんなに琉球弁が流暢なのよ」
「っていうか、何で月見団子運んでんのさ、今夜は十三夜なのに。里芋じゃないの?」
ウドンゲは質問に答えようとせず、代わりに後ろのふすまから吐き出された人物が言葉を継いだ。

「いいじゃない、地上でどんな風習が行われようとも月の民には一切関係無いのよ。貴方は地上の兎だから分からないでしょうけどね」
兎たちの師匠であり、私の従者、八意永琳である。優しくて強くて頭もいいんだけど、ちょっと説教臭いところがあるのよね。
同じ説教臭いにしても、イナバもといウドンゲよりは威厳はあるのだけど。

実際のところ、と永琳が二本目の矢を継ぐ。
「私たちが償うべき罪人、嫦娥は中国の人だから、中国の風習で月見するのよ、十三夜であってもね」
「あんな蛙野郎の罪なんて、償うことないのに」

愚痴を漏らすてゐ。永琳は何も言わなかった。沈黙。虫の声に、兎たちの餅を搗く音ばかりが響き渡る。
この静かな時間が永遠なら、どれだけ寂しいことだろう。徐々に傾く月を眺めながら、そんなことを考えみた。

「姫様も、少しは手伝ってくださいよ・・・・・・姫様?」
輝く月がウドンゲの顔にすり替わり、目に焼きついた月の光のせいで、私は彼女の顔を判別するのにやや時間がかかる。

「あら、イナバじゃない、どうしたの?」
「いや、だから、姫様も・・・」
「ウドンゲ、もう準備は出来たからいいわ。」
そう言って、私の右隣に腰掛ける永琳。無意識に距離を取ってしまう私。まあ一寸にも満たない距離だけど。

そして、四人全員が縁側に座った

てゐは足をぶらぶらさせながら、鈴仙に言葉でのしかかる。
「ねえ鈴仙、肩車して、月が見えない」
「あんたの真横に座ってる私はあの月がくっきりはっきり見えるんですけど」
しょうがないわね、と結局しちゃうとこが、ウドンゲらしいというかなんと言うか。

「この時間が永遠に続けばいいのにねえ、ねえ永琳」
「結果的には、永遠に続くのですけどね」
少し考えてから、少し真面目な顔つきになってまた話し始める。
「この月に一度の月見は、所詮は須臾。命あるものにとって、永遠の死の中に存在する一瞬の生みたいなもの」
永琳は月を見上げたまま、空に語りかける。
「あの月でさえ、永遠ではない。では終わりの無い私たちは一体何なのでしょう。我々は月の死でさえ見ることが出来る・・・」

死んでるのと同じなんじゃない、と言いたかったけど、なんとなくやめた。
だって私たちは今、月を見ている。兎たちの搗いたお餅を食べている。虫の声を聴いている。永琳が隣にいる。

なんとなく、さっき離した距離を詰める。床についていた永琳の手に、私の手を重ねる。これも、なんとなく。
今日はなんとなくが多いなあ、と思いながらも、なんとなく、月じゃなくて彼女の横顔を見つめてみた。
何も言わない永琳。きっと、時の経過を感じているのだと思う。
私たちは、命あるものを見ることでしか、「時間」を感じることが出来ない。

揺れるすすき。昼寝する巫女。傾く月。頭で三つ編みを何本も作っているてゐと、それに気付かないウドンゲ。大変な頭になってるわね。あの子。
生きている、って実感できるのはいいけど、同時に悲しくもなる。今も同じ。
意識あるもの全て、終わりがあるから頑張れる。別に仕事を怠ける口実じゃないけれど。

過去は永遠にやってくる。未来は永遠にそこにある。でも、そこに希望が見えることは少ない。
私たちの希望は何?死ぬこと?それとも、今まで知り合った全ての人物と永遠にこの時間を過ごすこと?
それが不可能なら、いっそ死んでしまいたいと思うときがある。永琳はどうなのだろう。

いつの間にか、永琳は月から目を離し今度は私の顔を見つめていた。
「何を考えているのです?姫、月見は月を見るものですよ」
「ねえ、永琳?」
「はい?」

私は少し考えた。珍しく、頭が混乱している。別に珍しくないけど。
「もし、今すぐ死ねるとしたら、貴女は死にたいと思う?・・・やっぱり、永遠は辛い?」
永琳も、少し考えていた。
てゐはこちらの空気に気付いたのか、ウドンゲの髪を結う手を止め、こちらに聞き耳を立てている。
「珍しく殊勝ですわね、そんなことを考えるなんて。」

別に褒められたくて訊いたわけじゃない。ちょっと不機嫌そうな顔で返答を急かす。
「で、どうなの?」
「姫。ここに一つお団子があります。」
と、永琳は団子を一つ、手にとって差し出す。
「それがどうしたのよ」
「これを二人で分けましょう」
永琳は団子を、とても大きい片と、四分程の小さい片に分けた。分けたと言うよりかは摘まみ切ったと言ったほうがいいかも。あんまり聞かない表現だけど。

両方を一回ずつ見て、彼女はまず大きいほうを差し出してきた。やっぱりそっちをくれなきゃね。
「姫、これはお団子ですか?」
「・・・何言ってるのよ・・・当たり前じゃない。お団子よ。ちょっと欠けたお団子。」
納得したような顔で、大きいほうを引っ込めて、今度は小さい方を差し出す。何だって言うのかしら。意味が分からない。
「じゃあ、これは?」
「・・・あんまり認めたくないけど、お団子じゃないの?小さいからって差別は良くないわよね。」

でしょう?と言って、永琳は大きいほうを口に放る。お団子を飲み込んで、また話を始めた。ちょっと唖然。
「姫、小さくても、お団子はお団子です。大きくても、やっぱりお団子です。お団子は必ず大きいものだなんて、誰も言ってません。・・・そう、私たちは、この小さな小さなお団子なのですよ。」

そう言って、永琳は小さい団子片を潰さないよう摘んで、私と彼女との間の床に置く。
「命が、必ず終わりあるモノでなければならないなんて、誰が決めたのです。私たちは確かに死ぬことは無い。ですが、生きていることは、今してるじゃないですか。死なない限り、生きてる限り、命なのです。だから、私は死にたいとも、死んでいるとも思いませんよ。」

永琳はそう言い終わると、微笑んだ表情のまま、また月に目をやってしまった。我ながら、野暮なことを訊いてしまった。私は誰よりも、永遠について、自分の境遇について理解しているつもりだったのに。

「野暮だなあ、姫様は」
けらけら笑うてゐに、たまには優しくしてみようと思ったり・・・するわけないけど。てゐが後ろにぐいぐいと体重をかけ、海老反りみたいになっていく三つ編みだらけのウドンゲを横目に、永琳と同じ月を眺める。
これが生きているって事なんだと、私は思う。


「――――東から上がりょる 大月ぬ夜 幻想郷 八ヶ岳 照ぃらしょうり・・・」
静かな静かな永遠亭に、虫の声とてゐの替え歌が響いては消える。
また幾許か、永琳と距離を詰める。いつの間にか、時刻は巳の刻を回っている。朝になれば、また二人の永遠は動き出すだろう。

隣に座る永琳と手を繋いで、この須臾を噛みしめる夜が、私たちにとっての、小さな小さなお団子なのだから。

~fin~
最後まで読んでくれた人もそうでない人も、初めまして、半透明といいます。

姫様のなんちゃって一人称小説となっております。もしかしたらあるかもしれない設定勘違いと文章力はスルーでお願いします。

※永"淋"→"琳"に修正しました。
半透明
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.440簡易評価
2.10名前が無い程度の能力削除
とりあえず、改行が多いのでどこで話が切り替わってるのかとかの区切りが、分かりにくいですよっと。
あとは、最後のあとがきを見るまで、てゐやらえーりんやらかぐややらと視点が変わっているかと思ってましたわ。
内容的に姫様が途中から入ってきたと思ってました。輝夜がいつからいたのかとかの表現など、足りない部分がありますね。
 
あとは、ふすまから吐き出される、や 二本目の矢を継ぐと言う比喩と言うかなんというか、とりあえずはその場にそぐわぬ表現ですので別の言葉を思案することをオススメします。
10.90名前が無い程度の能力削除
永"琳"ですよ
視点が分かりづらいけど、不死についての考え方が、なんか良かったです。
11.90名前が無い程度の能力削除
最後の永琳のセリフがいいね
14.90支者削除
普段のあなたからは想像も出来ない文ですね。
独特な表現等があり、読んでいて面白かったです。
どうりで国語が強いわけだ…
年下がこんなことをいうのも何ですが、
これから色々あると思いますが、その独特の表現力を生かしてがんばってください。
影ながら応援します。