Coolier - 新生・東方創想話

続・ある妖狐のレンタル事情

2009/09/12 16:07:28
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「ある妖狐のレンタル事情」を読んでいただければなお楽しめます。
また、今回はある程度自己解釈が入っておりますのでご了承ください。





いつもと変わらない部屋
いつもと変わらないイス
いつもと変わらない机
いつもと変わらない紅茶
いつもと変わらない日常




魔導書を読みながら今日も知識と日陰の少女はいつもと変わらない日々を送っていた。
小悪魔は相変わらず本の整理を行い、そして時折こける。そこは小悪魔のアイデンティティーの一つであるので、パチュリーもあきらめている。そのため、そんな些細なことは気にせずに黙々と魔導書を読み続ける。
その反対に座るのは若い魔法使い、人形遣いのアリスである。こちらもパチュリーと同様、魔導書を読んでいる最中。いつもは傍らに寄り添っている人形たちは小悪魔の傍らにおり、手助けをしている。それでも小悪魔はこける。


二人とも昨日の宴会には参加したのだが、それでも朝からずっと読書三昧である。というのも、昨日の宴会は早々に切り上げたため体調は勿論、二日酔いも全くないので苦でもない。実際は久しぶりに参加した小悪魔が勢いに任せてアルコールを摂取しすぎ、べろんべろんに出来上がってしまったためではあるが、本人は何事もなかったようにケロンとしている。
伊達に悪魔を名乗っているわけではないのだろうか。
そんな小悪魔を紅魔館に連れてくるのにパチュリー一人では体力的に心もとなく、アリスが付き添ってあげたわけである。なぜアリスなのかというと、単にほかに適任がいなかったからである。メイド長である咲夜はレミリアに付いているため離れられず、美鈴は今回参加していない。紅魔館の住人以外のパチュリーの知り合いで最も信頼されているのがアリスしかいなかったわけである。どこぞの白黒では後日に世話代と称し魔導書を略奪されかねないため問題外。
小悪魔を紅魔館に無事連れて帰った後アリス自身も帰ろうとしたのだが、翌日図書館には用がありパチュリーの勧めもあって泊まることにした。その際にパチュリーがあんなことやこんなことを想像ながら必死に勧めていたことをアリスは知る由もない。
あんなことやこんなこととは、魔界人の体のつくりを調べたり、自分との魔法使いとしての性能の違いを詳細に探ったり、人形の操作方法を解読したりであり、世間一般なあんなことやこんな事など、18分の9ほどしか考えてはいないので安心してもらいたい。


さて、朝から黙々と魔導書を読んでいた二人だったが気がつけばもうお昼。二人とも食べなくてもさして問題はないのだが、休憩にはちょうどいいタイミングであり読んでいた魔導書を閉じ、注いである紅茶に手を伸ばした。



「お昼、どうする? 」
「う~ん、気分転換にでも少しいただきたいのだけれど、いいの? 」
「別にかまわないわ。貴方は客人、客人をもてなすのは当然でしょ。それに客人は少し傲慢なくらいがちょうどいいのよ 」
「傲慢すぎるやつもいるのだけれどね」
「白黒は客人じゃなくネズミなのだから仕方がないわ。ネズミはずるがしこくてすばしっこい。おまけに欲も深いものだからたちが悪いわ」
「それはあいつに限ってのことでしょ。まぁ、それじゃあお言葉に甘えて、いただこうかしら」
「ただし、ここは悪魔の館。食事になにか混入していても知らないわよ」
「そんなことはしないって信じているから大丈夫よ」
「なら今すぐこの栄養剤という名の特性媚薬を厨房に届けないと。あ、特性呪縛剤も入れておこうかしら」
「あなたに先に試食させるわよ」
「アリスったら、そんなに私を自分のものにしたいの? 」
「そっくりそのままあなたに返すわ」
「私はもちろんイエスよ」
「できればノーと言ってほしかったわ」
「自分に正直なの」
「友達なくすわよ」
「友達よりも親友のほうがほしいものでね」
「なら親友を失わないように気をつけてよ」
「善処するわ」



パチュリーはメイドを呼び、軽めの昼食を持ってくるように言うと持っていたものを渡そうとする。もちろん、全力でアリスに阻止された。


しばらく紅茶を飲みながら待っていると、サンドイッチを持ってメイド?が図書館に入ってきた。
さて、ここでメイドの後ろに?が付いているのだが、そのわけは二人がメイドなのか判断ができなかったからである。メイド服は紅魔館のものを着用していたのでメイドで間違いはない、と思われるのだが、それ以外にもいろいろと付属している。しかも二人とも知っている。



「八雲、藍、よね、紫の式の 」
「頼むからそんな得体のしれない生命体を目の前で発見しましたみたいな目で見ないでくれ。そしてそこの七曜の魔女、勝手に写真でとろうとするな 」



後ろに輝く九つの美しい稲穂色の尻尾、頭にちょこんとキツネ耳、そしてメイド服。何処からみても九尾の妖狐?が昼食のサンドイッチを持って現れた。
メイド服は一般のメイドたちや咲夜とは違い、ロングスカートの少し古風なデザインである。とりあえずサンドイッチを受け取り、ことの詳細を尋ねた。




「それなら、こんなところにいないでレミリアの妹のところにいてなくていいの?」
「こんなところなんて失礼ね。パチュリー大ショック」
「危なげな魔導書がそこら中に沸いてある図書館なんだから仕方がないでしょ」
「あら、せっかくかわいこぶって両手を軽く握りしめて口元に添え『いやーん』的なリアクションしたのに突っ込みなしなんてひどいわ」
「てっきり素なんだと思って無視したのよ」
「白黒じゃあるまいし、それにそんな素であったらお笑いものよ」
「確かに。魔理沙ならありそうね」
「で、期間限定の九尾のメイドはここに何用?」



魔女らしい笑みを浮かべるパチュリーに対し、気苦労がうかがえる笑みがにじみ出る藍。ようやくここに来た目的をパチュリーに告げる。目的とは、物語を数冊借りたいというものである。メイド長の咲夜からフランドールについて2、3聞いていた時に物語ものが好きだと言っていたのでとりあえず寝ている合間に借りておこうと思い立ったわけである。
幸い、紅魔館には幻想郷一の図書館があるため、きっとあるだろうととりあえず来てみたのだ。


パチュリーは、話を聞くと小悪魔を呼び、数冊持ってくるように指示した。本当にあるのか、と少しびっくりな藍。図書館なのだからあっても不思議ではないのだが。
とりあえず、まだ時間がかかりそうだったので時間つぶしに机に置いてあった魔導書をとろうとした瞬間、図書館のドアが開き一匹の妖精メイドがあわてて入ってきた。
妖精メイドはパチュリーの前に来ると、息切れしている呼吸を落ち着かせながら大慌てで用件を伝えた。



「白黒がまた来ました! 相変わらず無茶苦茶なんですが、今日は特に無茶苦茶で! 今門番長が応戦してるんですが門番長が今日は白黒が荒れてるって伝えるように言われました! 」
「少しばかり文法がおかしいのだけれど、それはいつものことだからいいとして。今日も来たの? てっきり来ないと思っていたのに」



意外そうに答えるパチュリー。それもそのはずで、宴会後は二日酔いに襲われているのが通説な魔理沙なのだ。どうしたものかと考えていると一つの仮説にたどりついた。状況、人物像、性格を考慮すると、おそらくこの仮説で間違いはないだろう。
そして、そうとわかると余計に邪魔したくなるのが魔女たる性分。
おそらく門番が連絡を回したということは、自分では押さえる気がないということだろう。となると残るコマは限られる。ナイトの咲夜では確率は五分。キング、クイーンはまだ睡眠タイム中。小悪魔論外とすると。
いつもなら咲夜、とコマを動かすところだが、今日はもっといい駒、ダークホースが、それも目の前にいる。それに咲夜にもたまには休ませなくては。パチュリーは今日の自分は血を5回リバースしても(アリスに)全力で飛びつけると感じるほどの運を感じた。


そして、パチュリーは意気揚々とダークホースを手に取ると、勝ち誇った笑みを満面に浮かべ前列へと進めた。


















「ああ~頭いて~ぐわんぐわんする~」



門番との弾幕に勝利した魔理沙は目的地に向けて着々と足を進めていた。二日酔いは現在進行形で続いており、歩くたびに頭の中で鐘が響くような気持ち悪さが襲ってくる。ここで神出鬼没のメイド長に出くわすと厳しいなぁ、と咲夜に出くわさないことを願いながら速度を上げ、ご自慢の帽子を深くかぶり直す。
昨日は宴会で勢いよく酔っ払い、そのままバッタンキューといういつも通りの流れであったので、朝も当然いつもの流れでアリス宅にいるものとばかり思っていたため、起きたてで霊夢を見たときは大変だった。その時魔理沙が霊夢に対してよからぬ疑い、主にアリスを『おそい』に来たとか思っていたことは、彼女の数少ない名誉の返上と交友関係の悪化を防ぐためにも伏せる、または見なかったことにしておく。

今朝のことを思い出すと、一層釣り目になり不満を口に出す。



「宴会後の私の世話はアリスの役目だろ。それを無視しやがって。まったく何さまのつもりなんだよ」



何さまもへったくりも、アリスは数少ない幻想郷に存在する常識人として数少ない友の手助けをしただけであり、付け加えるならばアリスは魔理沙の世話係ではない。
という正論は魔理沙の前ではマスタースパークで蹴散らされてしまうわけで。
とにかくアリスへの理不尽ないらだちがおさまらず、これまた二日酔いと絡み合って気分は最悪。不機嫌の塊なわけであり、美鈴がパチュリーに連絡をまわしたのも目に見えてそう見えたからだ。


紅の廊下を進んでいくと目の前に人影がうっすらと確認できた。
この場合は妖精影って言った方がいいかな、と洒落をきかせ懐からおもむろに八卦炉を取り出して前に構える。これでたいていのメイドはすたこらさっさと後ろに振り返り逃げ出す。
が、目の前のメイドは逃げ出さず仁王立ちを保ったままだ。新人メイド? と意味のない憶測を立てるものの、このままでは邪魔なだけであり、それに加え何かしらのプライドを傷つけられた気分になり八つ当たりも含めて八卦炉に魔力を込める。

さあぶちまけろ! そして吹っ飛べ!








「恋符『マ」
「式輝『狐狸妖怪レーザー』」





レーザーとともに聞こえてきた声はとっても予想外なスペルカードだった。



















「上出来。ここのネコよりもネコ度がいいわね」
「私はイヌ科の妖獣だ。それよりも頼んでおいたものを早く渡してもらえないだろうか」
「犬も猫も同じ四足獣。違いなんて集団行動か単独行動か、あとはニオイとか犬歯とか水の飲む量とかしかないのだからいいじゃない」
「いや、それ以前に私はイヌ科であって犬ではない、妖狐だ」
「四足獣なのは変わらないわ。ま、ちゃんとネズミは捕まえてくれたんだし」



そう言って席を立つと小悪魔を呼んだ。後は小悪魔が持ってくるから、と藍に伝え、藍の後ろに視線を移す。そこには少し黒こげな白黒、もといい魔理沙がぐるぐる巻きにされて



逆さまに吊るされていた。




「ねぇ、パチュリー。いくらなんでも逆さまは、その、魔理沙も一応人間なんだし」
「人間なら逆さまでもそうそう死にはしないわ。 何時間も吊るされなければね」
「お前なら吊るしかねないから怖いんだよ。さっさとほどけー! 」




ジタバタする魔理沙を見上げながら、パチュリーは息を落とした。余談ではあるが、ぐるぐる巻きなのでスカートがオープンゲートしているわけではない。全力でアリスに止められたわけだ。
一方、藍は小悪魔からいくつかの本を受け取るとパチュリーに軽く挨拶をしてから図書館を後にしようとした。不機嫌丸出しな魔理沙は、攻める矛先をパチュリーから藍へと向け直し、退出しようとしていた藍を呼びとめた。
しかしながら、確かに何も事情を知らない魔理沙にしてみれば藍がこんな場所にいて、メイド姿で襲撃してきたことは予想外であったので、元々の好奇心もあっての呼びとめでもある。襲撃といっても、実際は魔理沙自身が襲撃していた側なのだが、いつものようにスルーである。
魔理沙は不平不満をぶつけるように、なんでここにいるのか、なんでメイド服なのか、なんで邪魔したのかと今の藍の状況を洗いざらい追求した。藍自身は、魔理沙などにはあまり知られたくはなかったのだが、このままではフランドールの部屋に戻るのに時間がかかってしまうだろうと察し、手短に説明してやった。



カクカクシカシカ

ウマウマパクパク




状況を聴いているうちに、魔理沙の顔がどんどん吹き出しそうになり、案の定吹いた。大笑いである。振り子運動をしながらの大笑い。クネクネとぐるぐる巻きな状態にもかかわらず器用に動いており、少々異様だったが、それほど面白かったのだろう。
藍はそんな魔理沙にまったく、とあきれながら図書室を後にした。
図書館の門に手をかけた時、おもむろにまだ笑いつ告げている魔理沙に向ってこう言って去っていった。





「そろそろ、正直にならんといかんぞ、人間 」


その言葉を魔理沙が聞いていたかどうかを藍は確認しなかった。

















フランドールの部屋に戻ると、まだフランドールは寝ていたようで起こさないように気をつけながらベッドのそばに置いてある椅子に腰をかけた。起きない程度の明りを付けると小悪魔に渡された本を確認する。地下室であるので、明りは全くなく、全体を照らしてしまうとフランドールが起きてしまう恐れもあったので、指先を一本立て、集中し鬼火を小さめに焚いた。小さな明かりがあるだけであった地下室に淡い黄色の光が加わって藍の手にある数冊の本を照らした。
本の物語はいずれもごくごく普通の、囚われのお姫様を助けにいくものであったり誘拐された仲間を助けだすものだったりといったものだ。小悪魔いわく、たまにフランドールが借りたがる本の種類をピックアップしたらしいので、フランドールの好みなのだろう。
ふと後ろの尻尾に違和感を感じた。振り返るとやはりフランドールだった。抱いていた尻尾の代わりはベッドの下に転がっており、本物をしっかりと抱いている。


藍自身と同じ、金色の髪をやさしくなでてやる。手入れが良いのだろう、肌さわりがよくさらさらと流れる。自分の式である橙の髪はどちらかというとくせ毛が多く、活発な印象であるが、フランドールはおとなしく、真っ直ぐな印象であった。
髪の毛をなでていると、フランドールの口元がかすかに動いた。起きたのだろうかと、なでていた手を止めて様子をうかがう。



フランドールの口は、数回開け閉めを行っただけだった。



















「さて、魔理沙。そろそろ本題に入りましょうか」


げらげらと笑いながら振り子運動を繰り返す魔理沙に向ってパチュリーはそういった。その顔は、面白いことを今からしますといった魔女らしい笑みであった。



「なんだ? 悪いが今日も本は借りてくぜ。 てなわけでさっさと縄をほどけ」
「お生憎さま。本も貸さないし縄も解かないわ。そんなことより、昨日は残念だったわね。」
「ん?なんで残念なんだよ。昨日は宴会で楽しかっただろうが。」
「昨日は1人で眠れたかしら?」
「バカにしてるのか?」
「先に言ってくれたらそれ相応に対応してあげたのに。悪かったわね」
「さっきから会話に脈絡がないぞ、パチュリー」
「そうかしら。なら結論を言うけど」



言葉のキャッチボールならぬ言葉のドッチボールを繰り返しその終わりにパチュリーは一言。





「アリスと一緒にいられなかったからって、そんなに不機嫌にならなくてもいいんじゃない」
「な!な!な!!」




真っ赤っ赤な魔理沙。顎が一定の範囲しか動かないらしく何を言うにしても「な!な!」という鳴き声しか発せられない。つまりは図星だったらしい。事実、魔理沙の今日の目的もアリスだった訳であるし。本人に自覚症状が無いのは当たり前のことである。もちろん、そんなことは重々承知でこうなることも予想済みでパチュリーは言ったわけだ。


ちなみにアリスは魔理沙が赤くなった理由がわかっていない。それ以前に話をまともに聞いてすらいない。魔理沙の赤面もパチュリーにいじられているのだろうと特に気に留めず、優雅に紅茶を片手に読書としゃれこんでいる最中である。



「そんなのだから、影でプレイガール魔理沙と書いてヘタレ魔理沙と読むなんて天狗の新聞に書かれるのよ」
「な!!!」
「な、はもういいから。とりあえず紅茶でも飲んで落ち着きなさい」



未だに「な!」現象の魔理沙は、パチュリーの言うとおりに紅茶を勢いよく飲んで。



















壮大に吹いた。




「アアアアじじじじじじじーっ!!!」


さっき藍が入れていったばかりの紅茶はばりばりでまだ温かい。いや熱い。そんな紅茶を一気飲みのごとく口に放り込んだのだから、当然の結果。紅茶からはしっかりと湯気も立っていた訳であるしそれを見落とした魔理沙にも落ち度はいくらかはあった。
もっとも、こうなることを想定して魔理沙に紅茶を勧めたパチュリーな訳である。
想定通りの反応な魔理沙に極上の笑みをたんまりと浮かべている。生粋の魔女である。



魔理沙は、高熱の紅茶を躊躇なく口に入れたものだから舌は焼けるわイタイわで大騒ぎ。舌を賢明につきだし、冷やすために手で必死に仰ぎ、アジィ~、とうめきながら動き回っている。



見るに見かねたアリスが仕方がなさそうにため息をつくと、読み途中の魔導書を閉じ、魔理沙の元に向かった。もはや半泣き状態で目がウルウルな魔理沙をなだめながら口から飛び出ている舌に手をかざし治療用の魔法を唱え、空いた手は頭へと乗せた。無論、魔理沙の頭にだ。

その行為に子供扱いするな! と聞き取りづらい声で抗議したが自業自得よと軽く足逢われる。治療してもらっている立場なためか、はたまた相手がアリスなためか、強く主張できず、頭はなでられたまま、治療は続いた。



恥ずかしいものの、アリスの手が自分の髪の毛にふれている感覚が心地いいのを魔理沙は悔しながら感じていた。アリスの手は白くて細い。まるで、それこそ人形みたいな綺麗な手だ。魔理沙の記憶の中にかすかに残っている、そう、それはまだ実家にいた幼い頃。もう顔もしっかりとは思い出せなくなりつつある母の手になでられていた時の、やわらかい手だ。それとアリスの手は似ていた、ように思った。














薄暗い部屋の中、頬に当たる柔らかいふさふさモフモフに睡眠から覚まされた。どうやら柔らかいクッションを抱いて寝ていたのだろう。ゆっくりと目をあけて確認すると、やはり金色によく似た黄色のクッションを抱いていたようだ。最近のクッションは毛並みも付いているんだ、と感心しつつもう一度目を閉じようとした。思わぬじゃまが入ったからだ。


それは声で、それも普段聞きなれている声ではなくて、最近覚えたばかりの妖怪の声だった。今度はしっかりと目を開いた。



「ん、起きたのか? おはよう」



鬼火が人影を照らす中、声の主、八雲藍はフランドールにそう言った。鬼火は藍の周りをゆっくりと円周運動している。この場合、鬼火ではなく狐火といった方が正解だろうか。尻尾を抱かれていたため、体勢的に後ろを振り返っている。
紅魔館には基本的に幼めな容姿が多く、そのため藍のような女性らしい姿をした者はあまり見る機会がない。メイド長の咲夜か門番の美鈴くらいで頻繁に会うわけでもない。
かくいうフランをドール本人も、容姿は幼めに属しており少なからずコンプレックスもないわけではない。そのため、藍のような成長した姿にはちょっとした憧れをもっている。


不覚にも、フランドールは藍の事を、本当にきれいだと思っていた。



「....この前の.」
「おはよう」
「.....なんで」
「お は よ う」
「......お、おはよぅ」



よろしい、と頬笑みながら金色の髪の毛をなでられる。昔、誰かに同じことをされた気がした。フランドールは、それが誰だったのかを思い出せなかった。
とりあえず、抱いていた尻尾から離れると藍はフランドール向かい合う形になった。ベッドで正座したフランドールは、そこで初めて藍がメイド服姿であることに気がついた。


当然、不思議に思う。藍とは以前一回会っただけであるし、そもそもそのメイド服は紅魔館のものだ。それに、この地下室にわざわざ来る理由が思い浮かばない。
実は藍が今ここにいる理由にフランドールが関係していたとは、当の本人は知る由もない。
藍は苦い表情を浮かべながら簡潔に今の状況をフランドールに伝えた。


キャハハッ、と藍の説明が終わると同時に吹き出した。そのままベッドの上をお腹を押さえた状態で転げ回って大いに笑うフランドール。それはもう思う存分に笑いこけており、ベッドを何度も叩いたりシーツをしっかりと握りしめ笑うのをこらえたりと表情がコロコロと変化していく。


藍が眺めている中、しばらくその状態は続いた。ようやく落ち着いたらしく動きも鎮静化していったところで藍はフランドールに問いかける。



「いつもはこの後は何を?」
「アハハハハぁ、はぁ、え? 寝起き? 寝起きはねー、ぼーっとしてる。本を読んだりー壁壊したりーぼーっとしてたり。あ! あとお話で聞いた外のことを思い浮かべながらー自分と弾幕ごっこしあったりー壊しあったりかなー」



フランドールは普通にそういったが、対する藍はどうしたものかと頭を悩ませた。さすがに、はいそうですかとフランドールのいう通りのことをするには少々気が引ける。何よりあのシスコン吸血鬼が黙っていない。



「貴方がついていながら、このていたらくは一体どういうわけ?」
「八雲の式ともあろうものが、レディ1人の世話もできないほど無能だなんて」
「尻尾のモフモフは素晴らしいのに、それ以外はてんでだめなのね、貴方。期待した私が悪かったわ。ごめんなさい」



あぁ、きっと言われるだろうレミリアからの嫌味。こんなものですめばいいのだが、藍の脳裏には腕を組み嫌みたっぷりの笑みを浮かべたレミリアがいくつもの嫌みフレーズを永遠と浴びせている姿が思い浮かべられる。





はてさて、これはどうしたものか。


















「しかし、貴方もつくづくお人よしね。本当に魔法使いなのか疑っちゃうわ」
「そう? パチュリーが意地悪すぎるだけじゃないの」
「私は意地悪じゃないわよ。ただ魔理沙をからかうのが好きなだけ」
「好きな人こそ意地悪したくなるっては言うけど」
「あら、アリスはやきもち妬いてくれているの? ならどんどん魔理沙をいじらなきゃ」
「そうね、って言ったら」
「うれしくて今すぐアリスを拘束するわ」
「なら謹んで否定するわ。あぁ魔理沙まだ話そうとしないの。舌のやけど治るまで我慢してて」



魔理沙とアリスは仲が悪い。前にそんなことを小悪魔が言っていた。これは間違っているようで間違っていない。ただし、正解でもない。それが動かない大図書館ことパチュリー・ノーレッジの見解だ。
そもそも、仲のよさとは他人が客観的に決められるものではない。
ケンカするほど仲がいい。
この諺がよい例であり、客観的な行動のみでは仲の良さなどわからないというわけだ。
二人は他人から見ると決して仲が良いとは見えないが、いち友人的立場であるパチュリーから言わせえば、少なくとも魔理沙はアリスのことを嫌ってはいない。
そして、アリスもそれほど嫌っているわけではないだろう、たぶん。



「はぁ、日ごろの行いの結果ってことかしらね」
「パチュリー様、また独り言ですか? 最近多いですね」
「しかたがないでしょ。困った友人を多く持っているのだもの。独り言も増えるわよ」
「そんなのはじめて聞きましたよ。普通はため息とかじゃないですか? 」
「口から吐き出すものでしょ。似たようなものよ」
「ははぁ、そうですか」
「そんなのだから一人前になれないのよ」



それはひどいです、と泣きそうになりながら抗議する小悪魔をよそにパチュリーは二人を眺めている。
さっきの客観的な行動って、これだけ見た場合は仲よさげにしか見えないわよね、とツッコミを入れつつ再びポロリと独り言を漏らした。



「似た者同士、集まりやすいのかしら」
「――であるからして、ってパチュリー様聞いてます? それにまた出てますよ。」
「そう、善処するわ」
「あー聞いてない! 絶対に聞いてないですその返事は! それと似た者同士ってあの二人のことですか?」
「さぁ? 似たものが集まってきたって言った方が正しいかしら」
「またわけのわからないことを、しっかり教えてください」
「だから貴方はまだ未熟なのよ。いっそほかのとこに研修に行ってきたら?」
「ぁああ! そうやってまたはぐらかす! それよりも研修って何ですか未熟って何ですか! 私だって自分なりに必死にこれまで忠実に―――」



今夜はゆっくり眠れるかしら、小悪魔の抗議を右から左に素通りさせてそう頭を悩ませるパチュリーであった。









そんなわけがない。
レミリアが勢いよくドア開いたのはそろそろ夕食の時間であろうかという時だった。パチュリー、アリス、魔理沙はそれぞれ読書に勤しんでいたがそこへ慌てた形相で入ってきたレミリアは入ってくるなりパチュリーを大声で叫んだ。
うるさい、とのパチュリーの感想をもかき消すレミリアの勢いにどうしたものかと視線をレミリアに移すアリスと魔理沙。もっとも、アリスは心配、魔理沙は好奇心と抱く感情は違っているという罠。
パタンと魔導書を閉じから回っているレミリアをなだめ目的を聞き出す。
それを聞きながら、今日も長くなるだろうと肩を沈ませた。



















日も沈み、辺りもうっすら暗くなってきた中、悪魔の妹と短期間限定専属メイドは歩いていた。飛ばずに歩いているのはフランドールたっての希望である。
そもそも、なぜ外に出歩いているのかというと藍が連れだしたからだ。
フランドールが目を覚めた後、この後どうしようか頭を悩ませていると唐突に外に行きたいと言い出した。確かに長い期間地下にいてみれば外に出たくもなるだろう。
初めはそれも考えたが、最近になって外に出る回数も数回ではあったがあったため格段興味がないと思っていた。てっきり弾幕で時間を稼ごうかとしていたところ、思わぬ提案が出てきたのだ。



「前にも外に出たことはあるだろう。それも数日前に」
「うん。ほかにも何回かはあるんだ。でも、どれもなんかわーって感じで。だからゆっくりしてみたいなーって」



確かに、咲夜から聞いたフランドールの情報の中での外出記録ではゆっくりとは程遠い騒がしい外出であった。そうか、外出か。咲夜からは外出は極力避けるように言われているしそうなった場合は連絡を入れるようにとも言われている。
考え込む藍にフランドールはすこし不安げに、ダメ? と藍の服の袖をつかんで呟いた。
そういわれてしまうと、藍も断りづらい。藍の頭の中でフランドールとレミリアの天秤が揺れ動く。



それも、一瞬ではあったが。
さて、それでは行くとするか、そう言って腰を上げるとフランドールに手を差し伸べる。それは穏やかに、そしてやさしい笑みを浮かべる藍の手を見てフランドールは言う。




いいの?
外に行きたいのだろ?
うん
なら行こうか
でも、お姉様に
あぁ、それはあのレミリアなら怒るだろうな
だったら
なに、その時は一緒に謝ればいいさ





「あれ、藍さん。どうしたんですこんな時間に? もう妹様も目を覚ましますよ?」


藍に声をかけたのは紅魔館の門番、紅美鈴。この紅魔館において、おそらく唯一礼儀正しく常識を持っている妖怪でもある。



「そうなんだが、何せ殺風景な地下室だろ。せめて私がいる間だけでも花を置こうと思ってね。それに一応私も休暇っていうことでここにいるわけだし気分転換に外を散歩しようとね」
「休暇でメイド、なんですね」
「ははは、これも主の命令さ」



本当に迷惑の何物でもないのだがね、という藍の本音は口には出さない。目で語ってはいるが、そのくらいは許されるだろう。そんな藍に苦笑いを浮かべつつ美鈴も同情する。



「心中お察しします。そろそろ妹様も目が覚めるでしょうからあまり長くならないようにしてくださいね。」
「気をつけるよ。もし遅れたりしてしまったらその時は頼むよ」
「いや私まだ門番の仕事残ってますし」



門番である美鈴に別れを告げると藍は森の中へ進んでいった。門番の気配が薄くなったところで立ち止まると一応周りの気配を探る。よし、大丈夫だろう。後ろに向って、もういい大丈夫だ、というと尻尾の中からピョコっとフランドールが顔を出した。
外出となると最大の難関はどうやって外に出るかであった。強行突破では今回の目的であるゆっくりした外出ができない。だからと言ってほかの者に相談すれば外出そのものに待ったがかかる。
そうなると残るのはただ一つ。ばれないように外出するしかない。
そこで、古典的ではあるがフランドールを藍の尻尾でかくして藍だけが外出しているように見せようと試みた。
これは、藍の式である橙がよく藍の尻尾の中でう蹲っていたことを思い出して背丈も似ているフランドールもできるのではないかと試したところ、見事にできたのでやってみたのだ。


見事に作戦は成功し、無事に外出に成功したフランドールは名残惜しそうに藍の尻尾から出てきて地面の上に立った。
一回大きく深呼吸をすると、じゃあ行こうか、と空を飛ばずに歩き始めた。









辺りは暗くなり始め、少し欠けた月がゆっくりと見え始めたころ合い。夜風特有の冷たさと心地よさに気持ちよさを感じるフランドール。自然と鼻歌を歌い始めた。
鼻歌は夜風に乗って辺りにキーンと響き混ざっていく。地下室とは違い、壁の代わりに木、明りは月明かり、そして床は地面。外に出てじっくりと感じたことなどなかったが、フランドールはそれらを不思議とすんなり受け入れられた。
藍は何も言わずに、フランドールの後ろを同じ速度でついてくる。一歩進むたびに足と地面に転がる小さな小石がすれ合う音が鼻歌に混ざってくる。
一歩、また一歩と歩いていく。
そのたびに、足元からのコーラスは混ざっては消え、混ざっては消えを繰り返した。


「楽しいか?」


おもむろに藍が口を開いた。うん、とフランドールはすぐに答えた。そしてとてもうれしそうに笑った。
そのうちあれは? これは? といろいろと質問するようになった。フランドールは指をさして、藍はそれぞれの問いに答えながら歩いて行った。
そうしているうちに、近くにある湖が見えてきた。青色の風景が木の奥から見え始めると、目をかっと見開き、あれが湖? と藍に問いかけた。そうだよ、という答えを聞くや否や湖に向って駆け出した。
湖につくと、縁の近くにしゃがみ両手を湖の中に入れてみる。引き締まる冷たさが指先から全身に伝わって思わず肩を震えさせる。それでもその冷たさが気持ちよく、バシャッと顔にそのままかけてみた。思った通り、冷たくて気持ちがよかった。


少し遅れて湖についた藍がフランドールをみると顔全体が水で濡れていた。大丈夫か? と聞くと気持ちいいよ、とニッと笑って答えた。このまま勢いで湖にダイブしそうな位、楽しそうな笑みだ。さすがにずぶ濡れでレミリアに見つかれば、火に油は目に見えている。
顔の濡れたフランドールを呼ぶと、手元からハンカチを取り出し丁寧に顔を拭いた。何回も顔に水を浴びせたのだろう、髪も少し濡れている。おまけに少しくしゃくしゃだ。
顔を拭き終わると、今度は後ろを向かせてかぶっていた帽子をとり、クシを使って髪の毛をなでていった。
はしゃぎすぎだ、もう少し落ち着け、と藍が忠告するも、えへへ、だって楽しいんだも―ん、と聞く耳持たずという具合に忠告を無視。
丁寧に髪をとかしている中、フランドールは自分の髪の毛を手先でくるくるといじっていた。



「髪の色、同じだよね」
「ん? あぁ、確かに同じ色だ。ただし、フランドールの方が私より明るい色で、それに長い」
「切るのが、面倒だったんだよ」
「確かに。私も昔は長かったからな。切る気がおきなかったよ」
「そうなんだ。じゃあどうして切っちゃったの? 」
「なに。ちょっとした気持ちの入れ替え、みたいなものさ」
「ふーん」
「髪、切りたいのか? 」
「そういうわけじゃないんだ。ただ」


少し躊躇しつつ、フランドールはそのままつづけた。


「ただ、お姉様は髪短いでしょ。ただでさえ髪の色とか羽根とか違うから、せめて髪の長さは同じにしたら、そうしたら、お姉様の考えていること、少しはわかるかなって」


とかし終わった髪の毛は、丁寧にやったおかげできれいに夜風になびいている。
少し気落ちしているフランドールに、ちょっと座ろうか、と提案する。
雑草の上に座ってみると、地下室の床よりは良かったが、ベッドよりはいささか堅かった。
木の下に座り、気によりかかって夜空を見ると、うっすら星が見え始めた。これが、星なんだぁ、フランドールはまた新しい発見をした。


「この前、レミリアとケンカしたろう」


この前とは、藍と初めて会った日のこと。今ではどうしてケンカをしたのか思いだせない。フランドールはうん、と頷いた。



「ケンカするほど仲がいい、気休めだとしてもいいと思わないか?」
「本当に、気休めにしかならないよ」
「そうか。仲は良くないか」
「ううん、ちょっと、違う。仲が良くないんじゃなくてね。その」



夜空に浮かぶのは数個の星と、少し欠けた月だけ。雲は一切なくスカッとした空にポツンと浮かんでいる。そういえば、だいぶ前に、そうもうどのくらい前かもわからないくらい前に、こんな空を見たことが、見た気がする。


「お姉様は、無理をしてるんだよ。なんでそんなに無理をするのかが、私にはわからない。そして、そんな私が、自分が嫌い」


声は重く、泥のように吐き出された。さっきまでの楽しい気分を根こそぎ持って行ったように、その泥は気持ちが悪かった。
しかし、重い泥はまだ出てくる。


「知ってるんだ。お姉様が私のためにいろんなことを犠牲にしてきたこと。私のために自分の能力使ってること。私が狂った時に止めたときだって、いっぱい傷つけた。元々ここに来たのだって、私のせい」
「そして何より。こんなに大切にしてもらっているのに、私はそれに応えることができない、できていない。それが、すっごく嫌い」



言い終わると、そのまま顔を下げて蹲り一回深呼吸をした。
入れ替わるように、今度は藍が口を開いた。



「昔、まだ私が式ではなく、ただの九尾の妖狐としていた頃。その時につかえていた主に私は捨てられてな」
「捨てられた? 」



そう、と悲しそうな笑みではなく、なんとも気の抜けた、スカッとした笑みでそう頷いた。それとは対照的に暗い表情だったフランドールは、藍の顔を見て不思議に思った。それはそれはとても自然な笑みだった。



「何でそんな笑っていられるの? 」



その疑問はすぐに口にあらわれた。そして止める暇もなくポロッと零れ落ちた。フランドールは、自分が言ったことさえ、あまり自覚していないだろう。そんなフランドールに、藍は微笑んだまま、片手で頬を引っ掻いた。



「長く生きていれば、こんなことでも笑い話の一つになるものさ。恥ずかしいからあまり話さないのだがね」
「そうなの?」
「少なくとも私はそうだった」
「へんなの」




フランドールは藍の話が理解できなかった。自身も、少なくとも人間に比べればはるかに長く生きている。それでも嫌なこと、苦しいことはそのままだ。結局、そんなことは忘れる、もしくは思い出さないようにすることでその場をやり過ごしていた。
藍はフランドールと比べれば、はるかに長く生きている妖怪だ。フランドールは、自分も藍のように長く生きていれば、そう考えることができるのかな? と思ってもみないことを思ってみた。
本当に、思ってもみないことなのに。



そんなフランドールの思考を読んでいるのか、藍はこう続けた。


「いろんなことを経験してみると、昔の自分がとても滑稽に見えてしまってな。後悔することが多くて困る。」


恥ずかしそうにそう言った。フランドールは、静かに耳を傾けていた。
夜風はまだ吹いている。


「フランドールもこれからいろんな経験をするだろう。今はまだ地下室だが、そのうち、お前のわがままな姉がいろんな経験を与えてやるだろう。できれば私の仕事を増やさない程度にしてほしいのだが、そう言っても聞くやつでもないしな」



「私が? 藍みたいにたくさん?」



「あぁ、たくさん」



「そうしたら、今の私のこと、笑っていられるかな」



「そうだと、思っているのか?」



「ううん。全然」



「そうか」







でも




そうだといいなぁ



















まだ夜空を眺めているフランドールを置いて、近くの茂みにやってきた藍。すると夜風がドッと吹き荒れ月影に人影らしきものが浮かび上がった。
徐々に形を帯びると、その人影は赤い眼を藍に睨ませた。
姿が定まるとその赤い眼は一層強みを増すものの、藍は対照的にゆったりとしていた。
やぁ、シスコン、と藍は言った。


「随分勝手なことをしてくれたわね」
「その代わり、いいものが見れただろ。そうそう、怒るなら戻ってからにしてくれ。お前もその方がいろいろと都合がいいだろう」
「その気があるなら見つけた時すぐにでもやっていたわ。――あんな顔見せられたら怒るも何も――」
「うわ、どシスコン」
「ちなみに貴方の処遇は特に厳しく言っておいてあるから」
「それは勘弁」
「それに、他人に過去を話すのはいやなんじゃなかったのかしら?」
「きちんと上履きを脱いでくれたから丁重にもてなしただけさ」





シスコンの機嫌はあまり良くない。羽がピクピク動いているし眼も吊り上っている。それでも押さえているあたり、本当にシスコンだなぁとあきれてしまう。いつもならもうとっくに爆発している。
藍も藍で、シスコンがこうなっている姿は珍しいので見ておこうと席を外したわけで、内心楽しんで眺めている。
しかし、つい表に出てしまったのか、シスコンの表情が一層きつくなる。どうやら口元に出ていたようだ。あわてて隠すものの時すでに遅し。
機嫌が悪くなったまま、帰る、と藍に背を向けた。
悪かった、と謝罪をする藍。
霧に姿を変える中、藍は先ほどとは異なった声のトーンでこう切り出した。



「いつまでそうしているつもりだ? フランドールはとっくに気づいていたぞ」



その問いに、口を閉ざしたまま。
藍はさらに続けた。






「傍からみるとひどい関係、つくづく変な姉妹だな」






再び夜風は吹き、去っていった。




















「パチェ、ただいま。あら、ネズミとその保護者は?」
「おかえり、レミィ。もう帰ったわよ。で、どうだったの?」
「いたわよ、それもあの狐と一緒に」
「そう、それはよかったじゃない」
「よくない。おかげで無駄に疲れたわ」
「それはこっちのセリフ。いきなり来たかと思ったら妹様はどこだ、索敵しろ、それくらいできるだろ。貴方のわがままには相変わらず苦労させられるわ」
「それくらいいいじゃない。親友なんだし」
「なら、親友としての助言。はいこれ」
「助言じゃないの? それに何これ?」
「一睡で可能な限り疲れをとる薬。ネズミの保護者から譲ってもらったの。竹林の薬師のお墨付きだから効果は期待できるわ。」
「―――なんで」
「それと、親友の私に相談なしにそうしない」
「――――かなわないわね、パチェには」
「当然じゃない。何年貴方の親友やってきたと思ってるの」







これはとある紅い屋敷の物語
あるところに双子の吸血鬼がおりました
姉は運命を操る程度の能力を持ち、将来は素晴らしい吸血鬼になることを疑いませんでした
ところが妹は生まれもったその有り余る狂気のため自由に外に出ることができませんでした
姉は妹のために妹の運命を操りその狂気から助け出そうとしました
しかし妹の運命はそのほとんどがひどい結末でした
姉は懸命にその数限りない運命の中から妹が助かる運命を選んでいきました
姉はそのためなら妹からどう思われようがいいと思いました
そうして495年の月日が経ちました
姉は絶えず運命を選んでは進み選んでは進んで行きました
おかげで自分の能力を妹以外に付けうことができませんでした
それを姉の親友は問いました
姉は笑顔で答えました
姉の親友はその答えに納得するしかありませんでした
そんな495年
ようやく希望への糸口まで来ました
ここまで来るとその運命への障害が強く姉はこれまで以上に負担がかかりました
それでも姉はあきらめませんでした
さて
姉は無事に妹とともに外に出られるのでしょうか


めでたしめでたし
どもです。レイシェンです。
お久しぶりです。
前回、中途半端に終わってしまったので、今回は本来やりたかったことを詰め込んで
結果、少々迷走気味になってしまいました。
本来の書き方ではないので、多少変なところもあるかもしれませんので、何かありましたらコメントに書いていただけるとありがたいです。
一応、見直したので、今度こそ誤字脱字はない、と思います、きっと。

さて、今回は多少自己解釈が入ってしまいましたので言い訳を
まず藍ですが、私の中ではある物語に出てくる九尾の妖狐を元にしてます。これは、そのうち過去話として書こうと思ってます。
あと、レミリアですが
レミリアがあんな能力もってるのにたまに負けたりしてるので
妄想したら

フランのために自分の能力を全部使ってるからほかに使えないんだ!

そういうのを受信しまして
いっそ書いてみました
どうでしたかな?


ではまた
レイシェン
http://cidering.blog45.fc2.com/
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コメント



0.1180簡易評価
3.100名前が無い程度の能力削除
15.80名前が無い程度の能力削除
話は結構良いので、誤字・脱字が多いのはもったいないです
19.100ねこぶくろ削除
良いお話でした。
絶妙なバランスを見せる魔法使い3人の関係。
さりげなく暗示される美鈴と咲夜の関係。
話の主な歯車である吸血鬼姉妹と、それらをかみ合わせるギアたる藍の主軸ストーリーも合わせて、文章の端々からキャラそれぞれの距離感と情愛が伝わってきます。
これはもう、『続々・ある妖狐のレンタル事情』を渇望せずにはいられません。

>「友達なくすわよ」
>「友達よりも親友のほうがほしいものでね」
>「なら親友を失わないように気をつけてよ」

これってアリスは、「私はとっくに貴女の親友よ?」って前提で言ってますよね。
この2人の会話の全てが実に軽妙で感服です。
24.90名前が無い程度の能力削除
>おかげで自分の能力を妹意外に付けうことができませんでした

誤字が無ければなぁ……
25.無評価レイシェン削除
誤字指摘ありがとうございました。
相変わらず、ひどいなぁ……

コメントも書いていただいて本当にありがとうございます。
とても嬉しく、感謝で一杯です。

これからもよろしくお願いします。

次回作も、出来たら読んで頂ければ嬉しいです。