Coolier - 新生・東方創想話

弾幕勝負と魔法使い

2009/08/31 21:39:35
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 私、アリス・マーガトロイドは、自宅で魔理沙と紅茶を飲んでいた。魔理沙のほうから訪ねてきたのだ。
 別段、それが珍しいわけではないが、ここ二週間音沙汰が無かったので少し驚いた。また家に篭って、魔法の研究でもしていたのだろう、と勝手に予想する。そうだとしたら弾幕勝負をしようと言ってくるだろう、とそこまで考えたところで、魔理沙が言った。
「というわけで、だ」
 魔理沙が紅茶の入ったカップを置く。陶器が軽い音を立てる。
「どういうわけなのか知らないけど、何?」
 紅茶を飲みながら、私は先を促す。
「新しいスペルカードを試させてくれ」
 案の定だった。
「そんなことだろうと思ったわ」
 言いながら、人形達を魔法で手繰る。上海人形と蓬莱人形が飛んでくる。
「手加減はいらないのね?」
「当たり前だぜ」
 私は紅茶をもう一口飲み、立ち上がる。魔理沙も紅茶を飲み干し、立ち上がった。
 扉を開き、私と魔理沙は外へ出る。晩夏の風が私たちの横を吹き抜けていく。
「行くぜ」
「いらっしゃい」
 私たちは、空へ舞い上がる。












 私と人形の繰り出す弾幕を、箒に跨る魔理沙が私から見て右に弧を描き回避。標的を失った弾幕が大気の抵抗を受けて消失していく。相変わらずすばしっこい、と内心で悪態をついた。
 魔理沙の弾幕を最小限の動きで回避しつつ、弾幕を射出。速度はないが、浮遊機雷のように私の周りを漂うその弾幕は、私に接近しようとする者の動きを牽制する。
 が、魔理沙は接近せず、颶風となって空を旋回していく。高速で動く魔理沙の指先から、弾丸型の弾幕がばら撒かれる。それは速度のある直線的な弾幕。私が苦手とする弾幕だった。
 魔理沙に向かって左に飛翔し、弾丸の群れを回避するも、更なる弾丸の群れが襲来。魔力を脚に集中し、体勢を崩しながらも空を蹴りつけさらに横へと回避。その勢いのままに空を疾走。飛燕となった魔理沙が、疾走する私を追ってくる、と思い機雷を撒いたが、予想に反して魔理沙は疾走を止めていた。私と魔理沙の間は約五十メートル。
 私の戦慄と魔理沙の叫びは同時!
「マスタースパークっ!」
 魔理沙の握る八卦炉から、膨大な魔力が射出。魔力は熱や光エネルギーに変換されながら、白銀の波濤となった魔力の奔流が、迅雷の速度で私へと襲来。光が私を飲み込もうとする。
 先程までの無理な疾走で体勢が良くなかった私に、単純な回避は不可能と瞬時に判断。私の左に配置されていた人形二体に指示を飛ばす。人形達が私の意思を受け取り、私の襟飾りを掴み、全力で上に飛翔。膨大なエネルギーの波濤が私の靴裏を掠めながら疾走し、大気を焦がす。マスタースパークほど膨大な質量を上方へと持ち上げることは魔理沙には出来ないと踏んで、上方へと回避したのだ。
「避けるのかよ!」
 斜め下前方で魔理沙が叫ぶが、落胆したかのような叫びは囮と予測。
 予測は的中。 
 私の下を流れていたエネルギーの大河、光と熱の奔流を裂いて、星型の弾丸が襲来。まさかそこから来るとは予測していない!
 七色の星の群れへと、左右に配置していた人形を突進させる。私は最高速度で前方へと空を疾走。星の群れの尖兵と人形が衝突、威力を相殺。群れの疾駆が刹那の間停止する。その瞬間に星の群れの軌道から離脱、魔理沙がいるであろう方向へ疾走。
 マスタースパークの奔流はまだ消えておらず、魔力が放出され続けていた。
 どう考えても長すぎる。疾走しながら思考を展開。
 魔理沙のマスタースパークは発動の準備に手間がかかるが、準備を終えた状態ならば一瞬の間隙もなしに打ち出すことが出来る。
 だが、八卦路のサイズ、魔理沙の膂力、その他の条件から、発動していられる時間というのは長くない。今まではそうだった。
 そのはずが、今現在マスタースパークは十秒以上も続いている。これは明らかに、魔理沙がマスタースパークに工夫を加えたということだ。
 そして、熱量の塊とも言うべきマスタースパークの奔流を、他の弾幕が貫通して来た。これも明らかに今までとは違う。そんなことはありえないはずだった。マスタースパークの熱に、他の弾幕が溶解しないはずがない。
 導き出される結論は一つ。
 疾走の終着点たる光の奔流の根元へ到達。私が見下ろす魔理沙の表情には驚愕。星の群れに私が被弾したと思っていたのだろう。マスタースパークの弱点の一つは、発動者の視界が光に塞がれることなのだ。
 慌てて魔理沙はこちらへ向き直ろうとする。だが、接近して魔理沙の注意を奪うこと、それが私の狙いであり罠だった。私の罠は、魔理沙を捕らえた。
「私の勝ちよ」
「え?」

 マスタースパークの奔流、その根元から、二体の人形が飛び出した。

「なっ!」
 魔理沙の驚愕の声は、人形たちの弾幕にかき消された。











 
「なんで分かったんだよ、アリス」
「何が?」
 弾幕勝負は、私の勝ちということで決着がついた。
 私は自宅で、魔理沙が負った軽い怪我の手当てをしていた。私の弾幕に威力はない。だが至近距離での弾幕で決着をつけたので、うっすら痣になってしまう程度の怪我を負わせてしまったのだ。
 下着姿の魔理沙の腹部に薬を塗っていると、魔理沙が不満そうな顔で言ってきた。
「今日のマスタースパーク、ただ光ってるだけで威力が無い、って」
「あぁ、そのこと」
 そう。
 魔理沙が放ったマスタースパークには、威力、すなわち熱エネルギーや運動エネルギーが、ほとんど含まれていなかったのだ。
 魔理沙が言うには「ちょっと使うキノコを変えてみたら偶然光るだけのマスタースパークが出来た」ということだった。魔理沙はこれを試したかったのだという。
 私がその可能性を考えた理由は二つある。それは放出時間の長さと、奔流を星型の弾幕が貫通してきたことだ。
 放出の持続時間が長いということはつまり、放出しているエネルギーが少ないということであり、他の弾幕が通過出来るということはつまり、威力が小さいということだ。そこから「このマスタースパークに威力は無い」と判断し、人形達を潜ませたのだ。
「私の弾幕がマスパを貫通したのが、弾幕の方の強化によるもんだったらどうしたんだよ」相変わらず、魔理沙は頬をぶーっと膨らませたままだ。
「だから、あなたの星弾幕に人形達をぶつけてみたのよ。特別威力があるようにも見えなかったから、賭けてみたの」それは本当だ。
 消毒液を含ませた綿を、魔理沙のひざの擦過傷に当てる。
「いててて…それだけで見抜いたのかぁ。この作戦は上手くいくと思ったのに」
 悔しそうに魔理沙が顔を歪めた。形のよい眉の尻が下がる。
 もう服着ていいわよ、と魔理沙に告げて、医薬品を片付けている間、訊きたいことがあったのを思い出した。
「なんで、必殺の不意打ち弾幕を星の弾幕にしたの?」
「んー?」
 あの時、マスタースパークから飛び出してきたのが星の弾幕でなく、もっとスピードのある弾幕、たとえば弾丸型の弾幕だったならば、人形をぶつけることはおろか、回避もままならず、そのまま負けていただろうと思う。
 私が速い弾幕を苦手としていることを、魔理沙が知らないはずはない。
「あー…」
「?」
 魔理沙が言いよどんだ。心なしか、頬に赤みが差したような気がする。
「…なんとなくだぜ」
「そう、なの?」
 なんとなく腑に落ちなかったが、納得することにした。
 その後、二人で紅茶を飲み、魔理沙は帰っていった。いつもは一冊か二冊、本を持っていかれるのだが、今日は持っていかなかった。
 体調でも悪いのかしら、と一瞬だけ心配したが、魔理沙の弾幕の切れを思い出し、杞憂だと割り切った。











 夕陽が綺麗だ。そう思いながら、アリスは人形を直していた。
「今日は楽しかったな」
 そんなことを考えていたら、窓から涼しげな風が吹き込んできた。
「もう秋ね」
 夕陽が綺麗に、空を染めていた。
 明日からもこんな日々が続けばいいな。そう思った。

 











 夕陽が眩しい。そう思いながら、魔理沙は帰路を飛んでいた。
「…星型にした理由かぁ」
 アリスにされた質問を思い返す。自分でも無意識に、星型を選択していた。
 理由は一つしかない。
「…あんまり速いと、アリスが、怪我するかもしれないからなんだよな」
 頬が熱くなるのが分かった。熱くなった頬に、涼しげな風が当たる。
「もう秋か」
 夕陽が綺麗に、空を染めていた。
 頬が熱いのも夕陽のせいにしようと決め、スピードを上げる。
 明日からもこんな日々が続けばいいな。そう思った。
弾幕勝負が書きたかったので。
すいげつ
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コメント



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2.80名前が無い程度の能力削除
もうすぐ秋のなのに春ってどういうことなの…
17.90名前が無い程度の能力削除
あまーい!
でも、魔理沙が弾幕ごっこで手加減するとは思えんから-10点