Coolier - 新生・東方創想話

八雲紫は嘆いた

2009/08/27 13:54:55
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八雲紫は嘆いた

「橙は……私の事が嫌いなのかもしれない……」




















 ある日、藍がある病で倒れた
 永琳いわく、割と珍しい病気だが、薬を飲んで安静にしていればすぐに良くなるらしい
 てなわけで藍(家事係)がいない訳だが、心配は御無用
 藍に家事を仕込んだのは私なのだ
 家事程度なんということもない
 とりあえず外に干してあった洗濯物を取り込む
 それを畳みながら、私は橙に聞いた

「ねぇ橙、今晩は……」
「今晩はどこに食べに行くんですか?」

 食べに行くのが前提かよ

「いや橙、今晩は私がつくってあげるわ」
「………ぇ」

 え?今えって言った?否定の意志表示された?
 まったく、確かに橙がいる時からは私がご飯を作ったことは無かったとはいえ、橙は私を過小評価しすぎだ
 ここは一つ、飛び切り美味しいものを食べさせて、意識を改善させなければ

「遠慮はいらないわよ橙、なんでも好きなものを挙げなさい?」
「…………………………………………お鍋が食べたいかな……………」

 遠慮しまくりじゃん
 それ作るって言わないよね
 それ料理って言わないよね
 しがも考えすぎ
 まったく、なんでも好きなものをあげてくれればいいというのに

「だめよ橙、鍋とかは藍がいる時に食べましょう?」
「じゃあ………………………………………………………………………………………………………………………………………………目玉焼き」

 いやいやいやいやいやいや
 それは晩御飯なのか
 どんだけ遠慮してんのこの子
 私としたことが自分の式の式に少しずつ怒りが芽生えてきたわ
 落ち着きなさい八雲紫、常に落ち着きのある態度がカリスマというものよ

「そ、それだけじゃ足りないからもう一品作るわ。なにが食べたい?ハンバーグ?それとも魚の天ぷらかしら?」
「…………………塩焼きが食べたいな」

 だからなんでそんなイージーメニューなの!?
 駄目だ、言われるがまま作っていては私のカリスマがピンチだ
 橙に見せてやらねばなるまい、八雲紫の手捌きを!!


 よーし、おかあさん頑張っちゃうぞー

<適当にお魚フルコース的なノリ>
・秋刀魚の塩焼き
・鱚の天ぷら
・鰤の煮付け
・刺身(鮪、鮭、鯛)
・鰹のたたき
・鯵のひらき
・ししゃも
・骨せんべい
・目玉焼き(おまけ)

 ……とまぁこんなもんか
 フルコースって言うからにはとにかく増やしてみた
 前菜?なにそれおいしい?
 あら、なら美味しいものを前菜にすればいいのかしら
 私は好物とか後にとっておくタイプなんだけどね
 ケーキのいちごとか



「どぉ?橙、言っとくけどスキマで持って来たんじゃないからね?」
「はい、美味しいです」
「でしょう?私も本気出せばこんなもんよ」
「…………らんしゃま、なんで倒れちゃったんでしょうねぇ」

 ボソリと

「倒れちゃったってそんな、過労じゃあるまいし」
「本当に美味しいです、紫様の料理」

 おいおい台詞が何一つ噛み合っていないぞ橙
 そしてこのどこか含みのある、いつもの無邪気とは違う声音……
 流石に橙が暗に何かを言おうとしてるのは解る
 何だ、何が言いたいんだ橙
 八雲紫の天才頭脳が高速回転を始める
 どうしたの?言いたい事があるならはっきりといいなさい、とかは言わない
 大人げないから
 こういうときは大人が空気を読むべきなのだ

「こんなに美味しいなら私、紫様の料理もっと普段から食べたかったです」

 決まった
 つまりはこういうことだろう

(なんで紫様はこんなに家事が出来るのにらんしゃまを手伝わなかったの)
(らんしゃまが倒れたのは紫様のせいだ)

 とかそういうことを言いたいんだろう
 まぁ私の超天才頭脳をもってすればナチュラルに自然なそれらしい理由付けることはたやすい
 しかし、子供の思考は単純である
 ここで私がどれだけナチュラルでバイオな自然的理由をつけたところで、橙の中での"らんしゃまをこき使った"事実は変わらないし、変えられない
 ああ、食事中だというのに空気が重い
 まるで夫婦喧嘩の後だ
 さながら私はその子供という立場だろう
 その日学校であった事とか話したいのに、明らかにそういう空気じゃないみたいな
 空気が読めるのは逆に辛いものだ
 何をするにも疑問を抱かず、周囲の視線さえ気にしなかったあの頃が懐かしい
 平安時代ぐらいだっけ
 人殺しに何の疑問も抱かなかったなぁ
 むしろ人を苦しませることが楽しくて仕方なかったなぁ
 今にして思えばあれが妖怪の本分だったんだろうなぁ
 今はそんなことする気さえ起きないなぁ
 ちょうど三十路越えた辺りからマンガやゲームに興味が無くなってきたときみたいな
 あ、でも勘違いしないでよ?私は人間年齢で例えればまだまだピチピチのハタチ
 人を困らせたりするのは割と好きよ?
 例えば霊夢のお風呂覗いた時とかの胸……じゃなくて顔とか見るとね、ホントかわい……じゃなくて面白……
 あれ、まって?人が風呂に入ってる顔の何がおもしろいのかしら……?いや、やっぱなんでもないわ
 とにかく今はそんな話をしていない
 今問題なのは、橙が私をよく思っていない……というか、下手すれば嫌われた可能性もあるんだが、まずは家庭の危機だ
 いや確かに、私と橙とはふれあいが割かし少ない
 藍ばかりだ
 何時からだ?何時から私が嫌われていた?今か?
 ならば、昨日まで橙は私の事が好きだったか?
 思い返してみる。これまでの自分と橙の触れ合いを――――






「らんしゃま~」
「らんしゃま~」
「らんしゃま~」
「らんしゃま~」
「らんしゃま~」
「らんしゃま~」






 あるぇ~?
 おかしい、橙が「らんしゃま~」っていってるシーンしか出てこない






「らんしゃま~」
「らんしゃま~」
「らんしゃま~」
「らんしゃま~」

「紫様、橙から伝言があるのですが……」






 らぁぁぁぁぁぁぁん!?
 アナタ今何て言った!?
 いや過去何て言った!?






「橙から伝言です」
「橙が~って言ってましたよ」
「紫様、橙が――」
「橙が」
「橙が」
「橙が」






 あれ……?
 もしかして私と橙は藍経由でしか話していない?
 そんなばかな、顔を合わせないわけでもあるまいし
 食卓だ。食卓の風景を思い出せ






「らんしゃまあのね~」
「らんしゃま~」
「らんしゃま~」
「らんしゃま~」
「らんしゃま~」






 ちぇぇぇぇぇぇん!!
 こっち向いてぇぇぇぇぇぇぇぇ!!
 ちぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!!





「あら橙、でも~~じゃない?」





 そうよ!話し掛けてもらえないなら話し掛ければいいじゃない!






「それは……~~ですよね?らんしゃま」
「そうだな、~~ですね、紫様」
「ところでこの秋刀魚美味しいですね」
「旬だからな」







 話を逸らすなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
 あと藍に話を振らないでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!
 結局藍経由じゃん!!
 これがホントの藍ケーブル、ってやかましいわ!!

 なんて事……まさかこんな昔から橙に嫌われていたとは……
 まあ橙の好感度的に私が藍に劣るのは理解していた
 藍>紫ぐらいだと思ってた
 藍と私が離婚(?)するとしたらどっちについていく?ってきいたら

「選ぶなんて出来ませんよぉ……」

 って泣きじゃくると思ってた
 でも現実は藍>>>越えられない壁>>秋刀魚>>紫だったのだ
 藍と私どちらを選ぶかって聞いたら即藍しゃまって言うのだ
 いや、橙の場合

「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………紫様、ごめんなさい」

 って考える振りだけして、藍しゃまじゃなくて私に謝るのが先ね
 あの子はそういうタイプよ、うん
 ああ、いかん
 これは家庭の危機だ、一体どうすればいい
 こっそり藍に橙が私に好感を持つよう(せめて嫌悪感くらいなくさせるよう)手回しさせるか……
 いや、汚すぎるだろ……
 汚い流石大人汚いって言われること間違いなし
 そうよ大人は汚いのよ、とかいってる場合じゃないし
 ならば、速い話アッピル……じゃなくてアピールするのが正攻法というもの
 さて、どうアピールするか
 藍に頼らなくても出来る所を見せてやっても逆効果だし……
 いや、やり方次第かもしれない
 例えば……



「では、晩御飯を作ってきます」
「いや、今晩は私が作るわ」
「え……?よろしいのですか……?」
「ええ、毎日藍に任せているのもあれでしょう?うふふ、藍は橙と遊んであげなさい」
「紫様……!!(目端に涙を浮かべながら)」



 完璧じゃね!?
 私カリスマじゃね!?
 デ〇オのカリスマが100なら80くらいあるんじゃね!?
 なんと最近どこか冷たい藍の信頼も回復出来て一石二鳥!!
 完璧過ぎるわ……
 今、自分の超天才頭脳がなんか怖いわ……
 そのうち円周率の正確な値を導き出せそうで怖いわ……
 怯えてる場合じゃない
 そうと決まれば藍が帰ってくる日(三日後)から行動開始ね
 それまで私は……

 当日滑舌よく、かつかっこよく言う練習でもしようか













 二日間の気まずい食卓の日々の後

「お帰りなさいらんしゃま~」
「お帰り、藍」
「ただいま、橙、紫様」

 藍が無事退院
 さぁ、本番だ

「心配かけて申し訳ありませんでした紫様。私がいない間、家事とかはどうしていましたか?」
「私が全部やっていたわ」
「なんと、本当か橙?」
「はい」

 あ、やっぱり橙にふるんだ

「それはありがとうございます。明日からまた私が……」
「ああ、藍」
「はい?」
「明日も私がやるわ」
「……よろしいのですか?」
「病み上がりを働かせるほど鬼畜じゃないわよ。いままで藍に頼りっきりだったのもあるし、暫くは私が家事をやってあげるわ。あなたは橙と遊んであげなさい。養生よ」

 言い切った!
 私カッコイイ!!
 ちなみに養生はアドリブだ

「ななんと……あの紫様が……」

 藍は驚きを隠せないか
 橙も顔を見れば驚いているのが解る

「…………では、お言葉に甘えさせてもらいます。私の手が必要な時はいつでも言ってください。さ、行こうか、橙」
「はい!らんしゃま!あの、私覚えたい術があるんですが……」
「ははは、今日は紫様のおかげで時間があるから思う存分付き合ってあげられるよ」

 楽しそうに話す二人の背中を見ながら紫はガッツポーズ

(完璧……!)

 あとは家事をすればどんどん好感度があがっていくというもの
 家事をするのもそう苦じゃない
 むしろ食っちゃ寝の生活にはそろそろ飽きて来た頃だ
 たまには忙しいのも悪くない





















































 それから一ヶ月
 藍も橙も寝静まった夜
 博麗神社で八雲紫は酒を飲みながら泣きじゃくっていた

「うっ……ぐすっ……どうして、こんな事にぃ……」
「知らないわよ、自業自得でしょ」

 霊夢は半ば嫌々泣き上戸の紫の酒に付き合う

「業って何よぉ……私なにも悪い事してないもん……」
「でも自分で招いた事でしょう?」
「……ぐすっ……だって……だってぇ……くすんっ」
「ああもう泣くな!あんたが酒もってきたから付き合ってやってるけどね、他人の泣きっ面みて美味い酒がどこにあるってのよ!!え!?」

 霊夢が座布団(※正真正銘ただの座布団です)を紫に投げ付ける
 霊夢は酒がはいるとキレ易くなる

「うっ……いたい……ぐすっ」

 紫は酒がはいると幼児退行する
 ただし、酒には強いほうなのでそこまで酔うのは稀


 端的に説明すれば、橙の好感度をあげるために家事を始めたのに橙と遊べない、というか遊ぶ時間が無い
 藍……あれだけの仕事がありながらプライベートもあれだけこなしていたとは……
 そろそろ仕事を藍に返したいのだが、楽しそうな藍と橙を見てるとどうも返しずらい
 というかあの二人、私を忘れていないか
 完全に二人の世界だ
 食卓でも、こちらから話をふらなければ何も言われない

 何この孤独感



「ねぇ霊夢~私と遊んでよ~」
「酒に付き合ってやってるだろ。それとも弾幕ごっこするか?」
「う~……霊夢こわいわよ~……」


























 次の日

「はぁ~~……」

 私は大きくため息をつく
 また憂鬱な日が始まる
 きょうも朝早くに起きて朝食だ
 しかし、目が覚めると、なにやらいい匂いがして
 時計を見てみる

(じ……十時!?)

 昨日飲み過ぎたせいだ
 慌てて起き上がる
 はやく朝食を作らねば
 しかしこのいい匂いはなんだ?

 その正体は台所につくとすぐに分かった

「おはようございます、紫様」
「藍……?」

 藍がそこにいた

「朝食、もう出来てますよ」
「…………」

 紫の中で色々なものがせめぎあって、二の句が告げない

「紫様、昨日の夜の事覚えていますか?」

 記憶を探る
 ……あれ、思い出せ無い
 確か霊夢と飲んでて……

「昨日の夜、飲みつぶれてしまった紫様を霊夢が届けてくれたんですよ」
「あ…………?」
「まったく、そんな目が腫れるくらい泣いて……困った時は何時でも言ってくださいと言ったじゃないですか」
「う……うぅ……」

 不覚にも……早速泣きそうだった

「ほら、はやく朝食食べて、橙が待ってますよ」
「え……?」

 振り返ると、橙がいた

「紫様~!ご飯冷めちゃいますよ~!」

 そう言って手を振った
 ……ああ、腫れた目端が少し染みる

「ありがとう……藍」
「こちらこそ。さ、紫様は橙と遊んであげて下さい」
「ええ……」

 私は目端を擦って橙のもとへ歩き出す

 久しぶりに食べる藍のご飯はとても美味しくて
 食べながら見る橙の笑顔は、何事にもかえがたい幸せだった

「紫様!覚えたい術があるんですが……」
「ふふ、大丈夫……私をコーチに選べば何も心配はいらないわ……」

 紫は笑った






















 そして――――

(うまくいったみたいだな)

 その光景を誰よりも見たかったのは外ならぬ、藍であった
永琳「"やる気"を刺激する薬、貴方もお一つ如何かしら?」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


絶賛下書き消化中
オチに困ったからちょっと無理やりにでもいい話にしてみた
すこしでもイイハナシダナーと思っていただければ幸いです

補足 わかりにくいかもしれませんが、藍と永琳はグルでしたという話です

>6
しまったあああああああああああああ

>43
ブロンティストの道はまだ遠い

>永琳
推敲してるときになんとかほのめかすような描写をするつもりだったんですがね……
ひとえに作者の技量不足です
精進
過剰睡眠摂取症候群
簡易評価

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コメント



0.3040簡易評価
4.70名前が無い程度の能力削除
イイハナシダナー。やる気と勢いを感じました。藍とえーりんがグルなのは解りづらいですね。
最後の方にもう少し付け足しがあった方が良かったかもしれません。
6.無評価名前が無い程度の能力削除
>藍<紫ぐらいだと思ってた
>でも現実は藍<<<越えられない壁<<秋刀魚<<紫だったのだ
不等号の向きが逆ですよ
9.80名前が無い程度の能力削除
いい作品でしたけど、最後のえーりんはなくてもいいような……
14.80名前が無い程度の能力削除
藍ケーブルわろた
15.70名前が無い程度の能力削除
最後藍の内心を括弧じゃなく台詞、呟きにしたほうがよかった気が
24.100名前が無い程度の能力削除
36.90名前が無い程度の能力削除
>>汚い流石大人汚い
正確には、2つめの汚いは平仮名。
39.70名前が無い程度の能力削除
藍ケーブルにワロタ

最後の永琳は無い方が良かったのではないかと
入れるのならもっと紫の行動に違和感を持たせるとかしないと
唐突に出てきてた後付け設定になっている気がします
43.100名前が無い程度の能力削除
面白かったです。内容はもちろん文章のテンポも良くサクサク読めました。
個人的には永琳の部分はなんの違和感も無くそーきたかという感じだったのですが
確かにもう少し作中に藍の行動などでほのめかした方が説得力が増したかもしれません。
難しいところですけどね。
45.100奇声を発する程度の能力削除
紫様も色々と苦労してるんだなぁ…。
50.90名前が無い程度の能力削除
とてもおもしろかったです! 藍ケーブルに吹いたww
60.100名前が無い程度の能力削除
面白かったです。カリスマ無さすぎな紫様に吹いたw
63.100名前が無い程度の能力削除
さすが策士。
72.90名前が無い程度の能力削除
良かった。いいテンポであっというまに読んでしまいました。
73.90名前が無い程度の能力削除
素敵なお話なり~。
77.100名前が無い程度の能力削除
いいやないの
84.100名前を決められない程度の能力削除
藍ケーブルワロタwwwww俺を笑い殺す気かwwwww