Coolier - 新生・東方創想話

憧れのビスクドール

2009/08/24 14:23:19
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【注意】
霊夢の生い立ち、博麗の巫女に関する設定、アリスの母を断定しているところなど、多少のオリ設定が含まれます。

それと、分割してないですが長いです。
二つにするかしないかけっこうびみょんな長さ。

それでも良い方はどうぞ。




































春が盗まれた異変の日、

しんしんと降る雪の中で、

私は彼女と再会した。




クルクル回る。彼女は回る。

繰る繰る回る。人形と共に。








誰だかわからなかった。


雪が降っていたのもあるだろう。妖精が邪魔だったのもあるだろう。彼女が弾を撃ってきたのもあるだろう。

正体の掴めない敵がうっとうしい。雪と寒さが不快でならない。妖精が目障りでしょうがない。莫迦みたいに派手な
七色の煌きが、眩しすぎて直視できない。


とりあえず、勘に頼って札を撒き、見えない相手に針を投げる。
どんなに強大な相手だとしても、そうすることで勝ってきた。第六感には自身があった。

妖精は次から次へと堕ちていき、相手のスペルも看破した。これもいつもどおり。
そうしているうちに雪が弱まり、彼女の姿が現れた。


「夜は冷えるわね。視界も最悪だし」
「冷えるのは、あなたの春度が足りないからじゃなくて?」
「いや、足りないかも知れないけど」


なんてことない言葉の応酬。これもいつものこと。
大抵向こうから話しかけてくる。私はなんとなく相手をしているだけだ。

だけど、今回は違った。


「しばらくぶりね」


私は、言葉の意味を上手く理解できなかった。
そのせいで突拍子もないことが口からでる。

「さっき遭ったばかりだってば」
「いや、そういう意味じゃなくて」

まあ、そういう意味じゃないことはニュアンスでわかっちゃいたけれど。

「しばらく巨人?」
「私のこと覚えてないの?まぁ、どうでもいいけど」

覚えている?
正直、心当たりは無かった。
色々な妖怪をとっちめてきたが、こんなド派手な魔法使いは見たことがない。
いくら周囲に無頓着な私でも、一度見たら忘れられそうにない娘だった。


その後も何か話した気がするが、覚えていない。
どんな弾幕を、どうやってよけたのかも覚えていない。
私の心の中は、すでにあの言葉に占められていた。


「しばらくぶりね」


まあ、そのときはいくらがんばっても思い出せなかった。
思い出せないものは仕方がない。思い出すときは思い出すだろう。
とりあえずはその七色魔法莫迦をとっちめて先に進んだ。
姦しい三人組を吹き飛ばし、緑の剣士を地に臥させ、紫の蝶と華麗に舞った。


ほどなく春は戻り、陽気な日差しと桜の下でお茶が楽しめるまでになった。





魔理沙が彼女を神社に連れてきたのは、春一番の宴会の日だった。





~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~






地底から湧き出る温泉騒動も終わり、一ヶ月が過ぎた。
幻想郷は、まだまだ深い白銀に覆われている。
冬の妖怪は湖で氷精と戯れ、里の子供達は雪で戯れていた。


冬独特の凛とした空気が肌を刺す中、私「博麗 霊夢」は、積もり積もった雪と格闘していた。
毎年のこととはいえ、うら若き乙女には何とも耐え難い重労働だ。
幻想郷が山の中にあることを恨み続けて十数年。恨んでも空しいことだと悲しみに暮れるのも十数年。
今年もようやく「日課」と呼べるまでに習慣に馴染んできたが、精神と肉体にかかる苦痛はやはりやわらぐことはない。

スコップで掘っては捨て、掘っては捨てとくり返して、ようやく境内に道が開けた。
さながら気分はモーゼ。私は雪を割る女。
・・・どこぞの類~似と被ったせいか、もしくは幼稚な思考だと気付いたせいか、なんかすごく悲しくなった。


腰を反らせて、伸びをする。今日も闘いは終わった・・・と、充実感が心に満ちていく。
ちなみに、石段の除雪はしないことにしている。
あのバカ長い石段を一人で除雪しようとしたら、半日とまではいかずとも、かなりの時間がかかるだろう。
雪はほぼ毎日のように降っているのに、そんな非建設的なことをやっていられるか。
石段が雪のせいで登れないなど知ったことか。どうせ参拝客なんて来ないんだ。
・・・またまた心が虚しくなった。漢字が違うのはちょっと意味が違うからです。
さっきの「空しい」は効果がないという意味。今回の「虚しい」は内容がないという意味。
・・・確実に悪化しているなぁ。


よっこらしょ、と重い腰を縁側に乗せて一息つく。
お茶が飲みたいが、流石に今は用意をするような気力は無い。

ふと、空を見上げる。
最近では珍しく、雲ひとつ無い快晴だった。冷たい風が頬を刺す痛みもあるが、それ以上に陽光の暖かな光が頬を温め心地良い。

帰ってきた至福の時を堪能しつつ、やはりお茶は飲みたいと思い直し立ち上がろうとした時だった。
南の空に人影が見えた。誰かがこちらに向かってきている。

はじめは魔理沙かと思ったが違うようだ。あいつなら、いたと認識した次の瞬間には爆音と共に境内に降り立つ。
この間もせっかくどかした雪を舞い上げて、私の2時間の苦労を無駄にしてくれやがった。
もちろん、心を込めて折檻をさせてもらった。

人影は緩やかに神社の上空にたどり着き、顔を出したばかりの石畳に優雅に着地した。

「ごきげんよう、霊夢」
「あら、今日も来たのねアリス」

七色魔法莫迦・・・もとい、七色の人形遣い「アリス・マーガトロイド」。
美しい金の髪と、蒼い瞳、蒼い服が印象的な魔法使い。
流石に寒いからか、いつものドレスは身に纏っておらず、厚手の蒼いロングコートを着ていた。

「きちゃ迷惑かしら?」
「休憩所代わりに使われて、お茶まで飲まれて、疲れがとれたら帰っていく。あなたならどう感じるの?」
「だから毎度お茶菓子を持ってきているじゃないの」
「そのお土産が無かったら迷惑って話よ。どこぞのモノクロ魔法使いのようにね」

言いながら、二人分の座布団を押入れから引っ張り出す。
アリスはいつものように、縁側から上がりこんできた。

「まあ、アレよりは上に見てもらえているのは喜ばしいことだわ」
「そんなに喜べないわよ?アレより酷いのなんてそうそう居ないのだから」
「それは確かに」

あらかじめ温めておいたお湯で、濃厚な緑茶を淹れる。以前は緑茶を苦手にしていたアリスだが、しつこく緑茶を出し続けた成果もあり克服していた。
最近は紅茶よりも緑茶を飲むことのほうが多くなったという。
緑茶党へと洗脳完了。つぎは紅魔館にも緑茶を布教したいものだ。

座布団に正座したアリスは、手提げ袋の中から大福の包みを取り出した。毎度毎度緑茶に合った土産を持参してきてくれるおかげで、最近はお茶菓子には困らない。



アリスは、地底での騒動が一段落してからよく神社に来るようになった。
なんでも、鈴蘭畑の毒人形の生態について調べているらしく、同じような存在の人形を作り出せないものかと試行錯誤しているらしい。
毒を触媒にするとアリスも触れ難いので、断続的に魔力が噴き出すポイントに人形を数体配置して、毎日観察を繰り返しているようだ。
魔力を触媒にすることで、あの毒人形のような存在が作り出せるかなんてわからないが、アリス曰く、「何事も試してみることが重要」らしい。
魔力のポイントがあるのは神社のすぐ南西。近くということもあってか、天気の良い日はここに寄るのだ。



他愛もない話で盛り上がり、お茶を啜る。最近増えた新しい日常。
悪い気はしない。他人と話すのは別に嫌いではないし、アリスとは付き合いも長いので色々と話しやすい。
研究がはかどらない、雪かきを魔理沙が無駄にした、などと愚痴をこぼしあうことなどしょっちゅうだ。


「・・・でさぁ、パチュリーったら魔理沙を捕まえるために、人間用のネズミ捕り器を河童に作ってもらったらしいのよ。こ~んなに大きいやつ。届いた次の日に早速使ったらしいんだけど、何故か使い魔がネズミ捕りにかかっちゃったらしくって、救助している間に本棚一つ分の本が消えたらしいわ。」


アリスの話に耳を傾け相槌を打ちながら、視線を彼女に向ける。

透き通った金色の髪。透き通るように白い肌。人形のような端整な顔立ち。どこまでも蒼い瞳。
同姓の私から見ても、間違いなく美人だと思う。私がもし男だったなら、放って置かなかっただろう。


「まあ、咲夜やレミリア、使い魔にも秘密で用意をしていたらしいから、ある意味悪いのはパチュリーなんだけど。
かわいそうに、使い魔は身包み剥がされて雪の海に放り出されたらしいわ。」


つっけんどんな態度をとることが多いが、心を許した相手とはこうして楽しそうに会話をする。
・・・私も、心を許した相手ってことで問題ないわよね?

宴会の時に料理や後片付けを文句を言いながらも手伝ってくれるあたり、根は優しく、意外とおせっかいだ。
何事も器用にそつなくこなし、人形繰りから裁縫、料理、果ては彫刻までやってのける。およそ女性が羨む、全てのものを持っていた。


「せっかくの秘策が台無しな上に、魔理沙にネズミ捕り器を見られちゃったから、『もうこの手は使えないわね・・・』って、割と本気で落ち込んでいたわ。」
「全く、災難ねぇ」


相槌だけでは足りないかと思って、一言陳腐な感想を漏らす。


・・・この子もずいぶんと変わったものだ。
いつか、魔界で戦った時とはまるで違う。
違いすぎたせいで、長すぎる冬の事件で再開した時も誰だかわからずじまいだった。
そう、気付けなかったのだ。


顔には出さず、話を聞くフリをしてアリスを隅々まで観察した。
出てくる感想は「綺麗」、「可愛い」。それ以外の言葉が見つからない。
何度も何度も同じ事を考え続け、ふと、アリスのことばかり考えている自分に気付いた。
とたんに恥ずかしくなり、目線を境内に逸らす。

なに考えているのよ私は・・・
折角遊びに来てくれたアリスの話を聞きもしないで。

アリスは話続けているが、目線はまだ戻せそうにない。
不審がられるまえに戻さないとと思いながらも、彼女の容姿を羨み続ける自分が恥ずかしくて情けなくて、
どうにも戻せないままでいた。


と、遠くの空に再び人影が見えた。今度は一発で誰だかわかった。

・・・全く、間がいいのか悪いのか。

「アリス。雪が神社に吹き込むから、人形にガードさせてくれない?」

私の言葉を聞いたアリスも、同じように空を見上げる。
すぐに理解したアリスは、どこからともなく人形を召喚して毒づいた。

「なんで私がガードするのよ?霊夢が結界を張ればいいだけじゃないの」
「結界って張るのに結構な集中力と体力を使うのよねー」

人形が5体、部屋の入り口に配置される。
それらはすぐに光を放ちはじめ、人形たちを頂点に置いた五芒星を一瞬で空中に描いた。

「要するに、面倒くさいだけじゃないの!」
「ご名答~♪」

魔法結界が展開されて10秒もしないうちに、黒い塊が空のかなたから落ちてきた。
激突する寸前に、声が聞こえた気がする。

「霊夢ううぅぅぅぅ!!あったかい茶をよこせえええぇぇぇ!!!」


爆音と共に、境内に吹雪が生まれた。
着地(私には墜落にしか見えないが)の衝撃が空気を押し流し、空気は突風となって周囲の雪を吹き上げる。
ぬくい部屋の中で、吹雪誕生から消滅の瞬間まで見れるというのはなんとも素晴らしいじゃないか!
と、脳内が自動的に現実逃避を開始する。


ああ・・・今日もわたしの2時間が無駄になってしまった・・・。


部屋の中は、アリスの魔法のおかげで雪も風も入ってこなかったため、全くの無傷だった。
私の心はズタズタにされてしまったが。


「・・・ねぇ、アリス?ちょっと私につきあってみない?」

アリスも、この後の私の行動が予想できたのだろう。邪悪な笑みを浮かべた。

「楽しそうね。どんなことでもつきあっちゃうわよ」


アリスと二人で外に出る。
掃除をする前よりもちらかった境内では、「霧雨 魔理沙」が雪に頭から突き刺さり、逆直立不動の体性を保っていた。




「すまん、私が悪かった。調子に乗った。謝るから、謝るからさ!井戸に落とすのはやめてくれえええぇぇぇ!!」

お仕置き完了。アリスも楽しそうでなによりだ。




「お前ら鬼か。こんな季節に凍った井戸に突き落とすなんて、人間のすることじゃないぜ。いや、片方は確かに人間じゃないんだが」

風呂上りの魔理沙が何度目かの非難を口にする。
ここ最近の悪天候のせいで洗濯が出来なかったため、換えの冬服は用意できなかった。
仕方がないので夏用の浴衣に半纏を羽織って我慢してもらっている。
何で浴衣なんだ、いじめか!と怒鳴られたが、お門違いだろう。
むしろ、着るものを必死に探してあげたことに感謝すべきだ。

「しかも笑い声まであげて。鬼じゃなきゃ悪魔だな、この外道巫女が」
「あのまま凍死させておけばよかったかしら?」

ちょっと本気でそう思った。
次にやったら必ず殺すと、何度も何度も言って聞かせても結果はこれだ。
こう、晴れの日に毎度毎度やられちゃあ身も心も持たない。
すでに今年の冬だけでも・・・えっと、何回だっけか・・・?
・・・・・・そういえば、20回を過ぎたあたりから数えてなかったわね。

「もういいじゃないの。もうすぐ上海たちが片付け終わるから」

と私を諌めながら、アリスは境内を見る。
つい30分前の惨劇が嘘だったかのように、境内はもとの姿を取り戻しつつあった。
上海人形たちがせっせと雪かたしをする姿は、見ていてなんとも可愛らしい。

全く、アリスは甘い。大甘ちゃんだ。そんなところは嫌いではないが。

八卦炉で服を乾かしていた魔理沙が、唐突に「そうだ!」と大声を上げた。

「そうだった、忘れてたぜ。アリス、お前に用があって来たんだ。ちょっとすぐに私の家まで来てくれないか?」

私?とアリスは訝しげな顔をする。最近のアリスの研究は魔理沙も知っているらしく、ここによく寄ることもアリスから聞いているそうだ。

「一体なんの用なのよ」
「いやぁ、研究でちょっと問題が発生してな。わたしにはどうにも原因がわからないんだ」

こちらを見向きもせずに、魔理沙はもくもくと服を乾かし続けている。

「研究がまったく進まなくて夜も眠れないんだ。というわけで、来て手伝ってくれ」
「却下よ。私には私の予定があるの。そうやって時間の無駄に巻き込まないで頂戴」

一言で切り捨てられた。ざまぁみろ。

「なぁ、頼むよ。あと一押しで成功しそうなんだ!」

今度は流石にアリスに向き合って頼んでいた。捨てられた子犬のような・・・とは、このことをいうのだろうか。普段は決して見れない寂しいとも苦しいともつかない表情で、魔理沙はアリスを見つめた。

「そんなこと言ったってねぇ・・・」

アリスの顔がだんだんと困ったものに変わっていく。
まずい。アリスは押しにかなり弱い。頼まれたら断れないというか、面倒見がいいというか・・・。
このままだと、折角のお茶会が強制終了させられてしまう。

「はいはい、そこまでよ。アリスは私とお茶していたの。勝手に連れて行かないでくれる?」

神社の平和なだけでなく、楽しみまで盗んでいく気かこの阿呆は。

「いいや、もう私も眠れない日々とはオサラバしたいからな。力づくでも連れて行くぜ!?」

そうですか、奪う気ですか。
いいわよ、久しぶりに本気で潰したくなったわ。
魔理沙を鋭く睨みつける。だが、魔理沙はひるむどころか挑戦的な笑顔を作り、私を睨み返してきた。

空気が凍っていく。さっきまでの暖かさはどこへいったのやら。
私は、袖の中にある針とお札に手をつけた。これでいつでも投げることが出来る。
一方魔理沙も、八卦炉を右手に持ち直して臨戦態勢に入っていた。
まさに一触即発。今にも弾幕ごっこが始まりそうな緊張が、部屋を支配し始めた。
私はゆっくりと、ゆっくりと狙いを一点に絞っていく。
八卦炉さえ奪ってしまえば、今の魔理沙は無力だ。あんな格好で外に出ようとも思うまい。
一撃で決めるように、足にも手にも力を込めた。
先手必勝。先に動くことを決め、戦いの始まりの合図となる一投目を投げつけようとした瞬間、

「はいはい、わかったからストップよ。境内の片づけが終わり次第すぐに出発。これで満足でしょう、魔理沙?」

アリス自身によって、お茶会の幕は下ろされてしまった。



「ごめんね霊夢。また今度寄らせてもらうから、続きはそのときにね」

そう言ってすぐに、アリスと魔理沙は境内から飛び去ってしまった。
ああ全く、勝ち誇った魔理沙の顔が憎らしくてしょうがない。
今度境内に突き刺さったら、そのまま雪だるまにしてしまおう。


アリスは、私と魔理沙では魔理沙の頼みを優先する。
「決して友達として優劣をつけているわけではなく、ただ魔理沙を一人で行動させると危なっかしいからってだけよ。誰かがそばで見張っていないと、何をしでかすかわかったもんじゃないわ」
と以前言っていた。
だが、アリスにどんな理由があれ、「私より魔理沙を優先する」という事実は変わらない。

毎回毎回、アリスが取られてしまうという事実は変わらない。

・・・取られてしまう?だから何を考えているんだ私は。
少し前までは、ここまでアリスを気にかけることはなかったはずなのに・・・。
アリスを連れて行ってしまう魔理沙に、怒りとは違う、なんともいえない熱くて濁った感情が湧き出してくる。
アリスは魔理沙のものではないというのに、アリスが折れることをわかって好き勝手にしてくれちゃって。
私だってアリスと・・・・・・・・・


うん、やっぱり最近の私は少しおかしいみたいだ。

二人の消えていった西の空を見ながら、今日は早めに寝てしまおうと決めたのだった。





夕暮れの博麗神社。
雪が橙に輝いて、輝光を網膜に焼き付ける。
太陽も眩しいが、雪も負けじと輝いていた。


いそいそとお茶会の片付けを進めるが、どうにもはかどらない。
こんなこといつもならすぐに終わるのに、今日はなぜか体が重い。

お茶をかたしてはため息一つ。
大福をしまってはため息一つ。
湯飲みを洗ってはため息一つ。

片付け終わったらため息一つ。

一体何が起こっているのだろう。
私を何が蝕んでいるのだろう。
そう、蝕まれている。今までに見たことも聞いたこともない何かに体が、心が浸食されている。

気付いてはいるけれど、原因はわからない。
・・・本当に?


腹いせに境内の灯篭へ向けてお札を投げた。
まっすぐに飛んでいく。
まっすぐに飛んでいく。
だが、灯篭にたどり着くことは無かった。

灯篭の手前に、空間のひずみが生まれる。
空間が裂けるというのは、まさにこのことを言うのだろう。
裂けた奥に広がるのは、黒と、赤と、数え切れないほどの目。
その奥から、何者かがズルリと外に出てきた。
無数の瞳が輝く裂け目から現れたのは、スキマ妖怪「八雲 紫」だった。

「あら、ごきげんよう霊夢」
「ごきげんよう紫」


隠れていたスキマ妖怪は、存在がばれても妖しい笑顔を崩さず、当然のように縁側へと腰掛けた。
片づけが終わった霊夢も、紫の隣に腰掛ける。

「で、いつから気付いていたの?」
「魔理沙たちが出て行った時にはもう居たわよね?気付いたのはそのあたりよ」

紫は珍しく驚いたような表情になった。それもすぐに元の笑顔に戻ったのだが。

「あらあら、博麗のカンとやらもずいぶんと鈍ったんじゃないかしら?」
「それはどういう意味よ」
「そのまんまの意味よ。私は、あなたが人形遣いと大福を食べ始めたあたりで来たわ。それからずっと、いつ霊夢が気付くかとワクワクしながら見ていたというのに、気付いたのはついさっき?本当にらしくない」
「・・・・・・」

そんな前から見ていたのかこのスキマは。
確かに、そこまでの長時間紫に気付けないとは不覚だった。
いつもなら・・・

「いつものあなたなら、のぞきなんて1分以内で見破るわよ?調子が悪くても3分過ぎたことは無かったわ。」
「あんたがわかりやすすぎるのよ。邪気が丸出し」
「邪気とは失礼な。霊夢かわいいな~って見ているだけよ、私は」
「それが邪気だって言ってるのよ」

いけない。
紫に何を言われるかわからないが、口を開いて欲しくない。
最近の私の歪みを、的確な言葉で指摘されそうで。
それは、なんとなくだが紫に知られたくなくて。
そう、知られたくない。自分がおかしくなってきていることを、知られたくない。

「用がないならさっさと帰ってくれない?片付けも終わっちゃったし、もうお茶もお茶請けも出てこないわよ」

紫を追い返しにかかる。
焦りを出さないように、出来るだけいつもの自分を装って。

「あらぁ、お茶が出ないのは残念ね。なら、また今度にしようかしら」
「次来ても出すかはわからないわよ」

おもむろに紫は立ち上がると、縁側から降りた。
内心ほっとした。あの紫が、いつも以上に不気味で胡散臭かったからかもしれない。
紫はゆっくりと境内を歩き、灯篭の前で足を止めた。
こちらへ振り返る。

「そうそう、一つだけ言っておかなきゃならないことがあるわ」
「――――!」

紫の笑顔が消えていた。
眉は吊りあがり、目は細い。これが、「真剣な顔」なのだと、唐突に思った。


「アリス・マーガトロイドに、それ以上近づくのはやめなさい」


頭の中が、一瞬真っ白になった。
紫は今、なんて言った?

「え・・・な、なにを・・・」
「これは忠告よ。“博麗の巫女”への、私からの忠告」

アリスに近づくな? 何故? なにが? 私が?

紫の言葉が、理解できない。紫の心も、理解できない。
碌な考えもできず、碌に返答も出来ないまま時間は過ぎる。


気がついたときには、すでに紫の姿はどこにもなかった。


まるで白昼夢でも見たかのような感覚。
頭のなかは、まだ混乱してぐちゃぐちゃのままだ。


しばらく何も出来ないまま、呆けていた。
太陽はすでに、地平線の向こうに隠れてしまっていた。





~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~





「ごきげんよう霊夢」
「今日も来たのね、アリス」

紫の“忠告”から2週間が過ぎた。私は、相変わらず変化のない日常を過ごしている。
雪の降る量が減ってきたせいか、反比例してアリスが来ることが多くなっていた。
もうじき、雪も溶け出すだろう。春はもうすぐそこだ。

「今日は最中を持ってきたわ。里においしいお店があったのよ」
「流石ねアリス。私の好物を持ってくるなんて、やるじゃないの」
「その口上は聞き飽きたわ。あなたはなんでも好物じゃない」

いつものやり取りを終えて、いつものお茶会が始まる。
いつしか毎日の楽しみとなっていたお茶会。甘味な日常。
お茶も、だんだんと良い物を出すようになっていった。
お茶会にふさわしいお茶を選ぶため、里の老舗にも通うようになった。
日常が変化していることに気付いても、その変化が心地よすぎたためか、全て受け入れた。

私は確かに変わりつつある。自分でもそう思う。
だけど、変わることは悪いことなのか?
否、悪いわけがない。
こんなにわくわくすることが、悪いわけがない。
例えこれが悪いことだとしたら、
私は、悪い子でかまわない。


「・・・最近は暖かくなってきたわね」
「そうねぇ。雪の量も減ってきたから、雪かたしも半分くらいの時間で終わるようになったわ」
「いいことばかりでもないけれどね。寒くなくなって元気になってきた妖精が、また人間を森で迷わせるようになったのよ。私の家の前で助けを求められて、仕方なく助けて・・・研究がはかどらないわ」


紫の“忠告”は無視する事にした。
何を考えてあんなことを言ったのかは知らないが、余計なお世話だ。
アリスの方から来るのだから、もてなすのが礼儀というもの。
それを私も楽しんでいるだけだ。何が悪いというのか。

そういう結論が出たのが、紫が来た次の日。
アリスがまた尋ねてきた時だった。

アリスが、研究が終わって来なくなるのなら仕方がない。
終わりは来るもので、受け入れなければならないことだ。
だからこそ、それまではいいじゃないか。
楽しくお茶を飲むくらい、いいじゃないか。


「・・・霊夢、ちょっといいかしら?」
「なによ?」

アリスの表情が変わった。“戸惑った”という感じの顔。

「相談があるのだけど・・・」

珍しいこともあるものだ。
私が相談をすることは良くあるのだが、アリスからというのは初めてだ。
だてに「悩みなど一つもない」と言ってはいない。
まあ、私の相談というのは『いかにして冬でも参拝客を集めるか』とか、『魔理沙を懲りさせるのに効果的な折檻はなんだろうか』や、『今日の晩御飯決まらないのだけど』といった、なんとも即物的なものが多かったのだが。

「実は・・・明日図書館に行かないといけないのだけれど、どうも罠が仕掛けてあるみたいなのよ」
「罠?パチュリーがあなたを罠に?」

「パチュリー・ノーレッジ」
動かない大図書館の異名を持つ、魔女の一人。
幻想郷でもかなり名の通った魔女だ。
というのも、本人の実力もさることながら、あの紅魔館に住んでいるというのが大きい。
パチュリーは、同じ魔女同士ということもありアリスとの交流もあったはずだ。
彼女が魔理沙相手ではなく、アリス用に罠をしかけるというのは、なんとも眉唾な話だった。

「なんでそんなことがわかるのよ?」
「・・・いや、実はね。前に対魔理沙用のネズミ捕り器の話をしたでしょう?」

そういえば、そんな話もあった気がする。
確か、魔理沙シャーベットができそうで出来なかった日だった。
そして紫が・・・

・・・嫌なことを思い出してしまったわね。

「その時のネズミ捕りを、対妖怪用に改造したらしいのよ。魔理沙とパチュリーが共同で」
「共同で?パチュリーは魔理沙を狙っていたんじゃなかったかしら?」
「研究に関しては二人とも結構協力し合っているのよ。魔理沙提案で、パチュリーが場所を提供して始まったらしいわ」
「やけに詳しいじゃないの」
「本を返しに行った時に、パチュリーの使い魔に聞いたのよ」

魔理沙とパチュリーの関係は、私から見たらそこまでいいものではない。
それもそうだろう。図書館の管理人と本泥棒が仲良くなれるかと聞かれて、自信を持ってなれるとは答えられまい。
魔理沙の襲撃はすでに紅魔館の日常の一部となってしまっているようで、専用に『壁修理メイド』を雇い始めたようだ。咲夜が宴会で愚痴を漏らしていた。
パチュリー自身も、宴会の愚痴を聞く限りでは魔理沙に相当まいっているのだろう。最近は、防御や警戒の魔法の開発に余念がないようだ。

だが、アリスの話では二人の仲はそこまで悪いものではないらしい。
研究を共同ですることもあれば、この間の異変では協力して地獄烏をお仕置きしに行ったという。

「で、使い魔が私に警告もくれたのよ」
「警告?」

はぁ、とため息一つ漏らしてから、アリスは続ける。

「魔理沙の提案で、ターゲットは私になったらしいわ。どうも彼女、いつか雪だるまにされた時のことをまだ根に持っているらしいのよ。霊夢を図書館におびき出すのは難しいから、共犯の私が狙われたってわけ」

私は呆れて言葉に詰まった。仕掛けたのは魔理沙からだろうに。
・・・確かにアレはちょっとやりすぎたけど。
それより今一番の問題は、復讐の矛先がアリスに向かっていることだ。

「元は私がやりすぎたのがいけないんだし、アリスは図書館に行く必要はないわよ。本当に仕返ししたいのなら、向こうから来るでしょう」
「・・・それがね」

再び歯切れの悪い回答。
こちらを申し訳なさそうに見てくるアリス。
・・・しおらしいアリスっていうのもまた・・・

・・・ハッ!

私はまた何を考えて!いや、かなり可愛いと思うけど!

「図書館から借りている本の返却期限が明日までなのよね・・・。約束は破りたくないしー・・・」

改めて、生真面目な娘だと思った。
恐らく向こうも、そんな彼女の性格について熟知しているからこそ、確実に来るとわかっている明日に仕掛けるのだろう。
自分を狙っている相手に、進んで本を返しに行く。愚かすぎて話にならない。
いつもの私なら、「そんな理由で行くのなら、やられるのも勝手ね」と言って、この相談を無視したことだろう。
だが、今回の件は違う。魔理沙は気が晴れるなら、私とアリスのどちらでもいいのだろう。
主犯は私の方だというのに、アリスが酷い目にあわされる。
大切な友達が、私のせいで酷い目にあう。
それはダメだろう。
そんなの、私の心が許さない。

「なら、私も図書館についていくわ」

アリスの口が開いた。塞がる気配はない。

「え?・・・えぇ?ついてきてくれるの?」
「何をそんなに驚いているのよ?相談してきたのはそっちでしょうに」

アリスは慌てて両手を振る。

「い、いやいやいや。別についてきて欲しいって言うんじゃなくて、どうすれば正体不明の罠にかからないようにできるかっていうことを・・・」
「だから、私もついていってアリスのボディーガードになればいいでしょう?向こうも二人でこちらも二人。これなら公平ね」
「公平とかそんなんじゃ・・・あぁもう~!」

アリスは両肘を机について頭を抱えた。何をそんなに気にしているのか・・・・・・あっ。

「まさかあんた、私に迷惑がかかるとか考えているんじゃないでしょうね?」

ビクッとアリスの体が跳ねた。どうやら図星らしい。なんてわかりやすい。

「もともと、あれは私たちが共犯でやったこと。むしろあんたは手伝っただけで、主犯は私なのよ?それなのに私に迷惑がかかるとか、何考えてるのよまったく・・・。むしろ私の方が、あんたの迷惑になったんじゃないかと思ったくらいよ」

アリスが顔を上げて私を見た。

「確かにその通りなんだけど、でも~・・・」
「でもじゃないでしょ。ともかく、私も行くからね」
「あ~う~」

人が良いにもほどがある。
おそらく、私に相談しても私が動くわけがないとたかをくくって自分一人で全て解決するつもりだったのだろう。
だが、予想は大ハズレ。
今の私は、動くことに何のためらいも無かった。

しばらく考えていたアリスだったが、深いため息を吐きながら「わかったわよ・・・」と承諾した。
勝った。第三部完!!
・・・いや、今終わらせてどうする。明日が本番だというのに。

明日は忙しくなりそうだ。
逆恨み魔法使いと、「友人<研究」の魔女を懲らしめに行く。
私がアリスを守りきる。ちょっと気合が入ってきた。
罠に突っ込むというのに、厄介ごとだというのに心が弾む。
自分でもわからないが、明日が待ち遠しい。楽しみで仕方がない。
こんな気持ちは初めてかもしれない。



次の日、私たちは紅魔館へ向けて空を飛んでいた。
運良く今日も快晴で、まさに最高のお出かけ日和。
道中でアリスに、「機嫌が良い霊夢なんて、ちょっと気持ち悪いわね」と言われて湖に落ちそうになった。
いつもはそんなに仏頂面ですかそうですか。
どうせ笑いませんよーだ。ほっとけ。


湖の向こうに、紅い建物が見えてくる。
まるで血でコーティングされているかのような、真っ赤な洋館。
昼間だというのに蝙蝠が周囲を飛び、巨大な時計塔が存在を誇示している。
吸血鬼姉妹の館、紅魔館が悠然と建っていた。


門番とアリスは仲が良いらしく、すんなりと中に通してくれた。魔理沙も見習うべきだと思う。
入り口で咲夜に驚かれたが、すぐに元の冷静な顔に戻ったあたり、彼女の能力の高さが伺える。
・・・ていうか、館に来たくらいでみんな驚きすぎよ。私は幽霊か何かか。

咲夜に用件を話すと、
「壁や床などを余り壊さないようにして頂戴ね?」
と念を押された。
やはり相当参っているようだ。
確約は出来ないとだけ言って、地下へと向かい始めた。
一体どんな罠が待ち受けていることやら。


紅魔館大図書館。
地下に存在する、幻想郷の“智”の集う場所。
外の世界の書物や、伝説となったもの、魔術書や風水書に歴史書など、膨大な量の本が集まる。
見渡す限り本棚だらけ。咲夜が能力で広げているせいで、広すぎて反対側の壁が見えない。
普通に歩いたら迷子になってしまいそうだ。

異様な気配は、入った時にはすでに感じていた。
わかりやすく言えば殺気。
全身にピリピリと、寒気のようなものが走る。狙われているのは明らかだ。
アリスも気付いているらしく、上海人形と蓬莱人形を召喚して警戒していた。

「まずはパチュリーか使い魔の子を探しましょう。本さえ返せば長居は無用よ」

私の言葉に、アリスは頷く。司書も勤めている使い魔を見つけるのが一番理想的だが、そう上手くはいかないだろう。

アリスが右を、私が左を、人形2体が後方を警戒して奥へと進む。
壁まで全て本棚というのは、かなり危険だ。
罠を隠せる場所が多く、カモフラージュしやすい。
本自体が罠になっていたら、見た目での判別はかなり困難だ。
・・・本がいきなり飛び出してきたりしたら、どうしよう。
心臓まで飛び出しかねない。

緊張は続いている。
精神力と体力がじわじわと削られていくが、気にしている余裕は無い。

一歩一歩確実に進んでいく。
進んでいく。
進んでいく・・・。



「着いちゃったじゃないの」
「着いちゃったわね」
「来たのね・・・霊夢もいるなんて珍しい。本はさっさと置いていくのよ」

パチュリーがいた。
それも当たり前のように。
ホールのような広めのスペースで、安楽椅子に座って本を読みふけっていた。

アリスと向き合って見つめあう。
アリスは困惑しているようだ。無論、私もだが。

「デマか何かだったんじゃないの?」
「デマだったのかしら・・・だとしたら、霊夢には悪かったわね」
「気にしなくていいわよ。話に信憑性があったからついてきたんだし、デマは食いついたやつが悪い。つまり、私も悪い」

申し訳なさそうに頭を下げるアリスを弁護しておく。
一人で背負い込むタイプの彼女には、荷を持たせないようにするだけで一苦労だ。

「デマって、何の話?」

読書をしていたパチュリーが食いついてきた。
だが、本から目は話さない。

「魔理沙とあなたが、共謀して私を罠に掛けようとしているって噂があったのよ。だから警戒して入ってきたのだけれど・・・気のせいだったようね」

アリスの説明を聞きながらも、パチュリーは本のページをめくる。
目線は変わらず、しぐさも変わらない。だが、

「――――ッ!!」

パチュリーはその時、確かに笑った。
すぐに本に隠れてしまったが、見間違いはありえない。

私はとっさに、アリスに叫ぼうとした。
なんて叫ぼうとしたのかはわからない。だが、ともかく伝えたかった。警鐘を鳴らしたかった。
だが、一歩遅かった。


突然、あたりが薄暗くなった。それだけではない。

「二人とも覚悟しろおおぉぉ!!」

聞き覚えのある声が、上空から響いてきた。

とっさに上を見上げる。同時に愕然とした。
わけがわからない。あいつは私たちを殺す気か。
いくらなんでもやりすぎよ!

天井から落ちてきたのは、とてつもなく巨大なネズミ捕りだった。

――――ッ、逃げ・・・

上半身を捻り、背後を見る。
確かにそこには通路があった・・・はずだったが。
見渡す限り、どこもかしこも本棚の壁。
通路は綺麗さっぱり消えてしまっていた。

「アリス!」

私は凍りついた自分の足と、動かないアリスに活を入れようという一心で叫んだ。
だが、動けない。何も動かない。
仕方が無い、と言えなくも無いだろう。
落ちてくるネズミ捕り器は、この広間を全て押しつぶすサイズだ。
出口が塞がれた云々を抜きにしても、今から避けようと思って避けられる大きさではない。

ここは、私が何とかするしかなさそうだ。

決断してからの行動は早かった。
足はまだ動きそうに無いが、闘志は沸いている。
恐怖を、打ち消す。博麗は、恐怖などに完全に縛られはしない。

「――――霊符 夢想封印」

霊力を解き放つ。
私の分身とも言える力の奔流が、ネズミ捕り器に向かい押し寄せる。
私の代名詞とも言えるスペル、夢想封印。
さまざまな異変で活躍した、私の相棒。破壊力は折り紙つきだ。

避けられないのなら、壊してしまえばいい。
恐らくネズミ捕り器の上には魔理沙がいるのだろうが、自業自得だ。
やりすぎた向こうがいけないのだ。正当防衛っていうやつである。

轟音、閃光。

霊力の塊は、全てネズミ捕り器に食らいついた。
衝撃音が図書館中に反響して、頭が揺さぶられる。
・・・気持ち悪くなってきた。

舞い上がる埃と煙。
鳴動する図書館。揺れ動く本棚。
そして、

「なっ!?」

傷一つついていないネズミ捕り器。
轟音は止まず、夢想封印で少し空中に浮き上がっただけの木板は、再び降下を開始する。

なんということだ。
私の力が通用しないとは、思いもしなかった。
そういえば、実験で対妖怪用に強化をしたらしいが・・・
ここまでの硬度を持っているとは、私にも予想外だった。

「霊夢!」

背後からの声に、一瞬心臓が跳ねた。
だが声の主を認めると、驚きに喜びが混ざる。

「右よ!右の金具の付け根に、もう一度スペルをぶつけて!」

いつもの調子を取り戻したアリスが、こちらを爛々と輝く瞳で見つめていた。
闘争本能むき出しの瞳。燃え上がる蒼。
表情はいつも通りの冷めたものだが、私にはわかる。
闘いの衝動に突き動かされた一匹の妖怪が、私を見ているのだ。
今のアリスほど、パートナーとして心強いものはない。

人間とは現金なもので、ちょっとした状況の変化でいつも以上の力や勇気を出せたりする。
アリスの声を聞いてからというもの、力が信じられないくらい沸いてくる。
足も動くようになったので、アリスの指示したポイントを狙いやすい位置に向かっていた。
・・・私、こんなに速く飛べたんだ。

アリスはといえば、人形を次々と召喚していた。
大掛かりなスペルを使うつもりなのだろう。足元には複雑怪奇な魔方陣が展開され、魔力がそこかしこに溢れ出しているのがわかった。
召喚された人形は空中に一列に配置され、まるで兵士が整列しているようだった。

「私の合図で霊符を使って!スペルを使い終わったら、すぐに右の壁まで行くのよ!」
「わかったわ!」

そうこう言っている内に、ネズミ捕りが迫る。
もう、激突まで十秒も無いだろう。


まだなのか
            合図は無い

まだなのか
            合図は無い



まだなの!?



「今よ!!」


考えるより先に、口が動いていた。

―――――霊符 夢想封印・瞬


速度の乗った霊塊が、ネズミ捕り器の右の端に炸裂する。
風と反響が再び襲い掛かってくるが、懸命に耐えてスペルを続ける。

「―――ぬぅおお!?」

どこからか、魔理沙の声が聞こえた。聞き間違いでは無いだろう。

同時に、何度も襲い掛かる衝撃に耐えかねたのか、大きな木板は大きく左に傾いた。

スペルを使い切り、壁まで飛ぶ。この距離なら1秒もかかるまい。
見上げると、傾いたネズミ捕り器のさらに上に、本物の天井が見えていた。


「魔符 アーティフルサクリファイス」

アリスの宣言が聞こえ、思わず振り返る。
アリスはすでに反対側の壁際まで移動しており、目線は木板に向けられている。

傾いたネズミ捕り器の向こう側で、一斉に人形が爆発した。
同時に発生した爆発は、ネズミ捕り器を受け流す。

板が回転し、「ぐおん」という、空気を裂く音が聞こえる。
アリスの姿が板の向こう側へと消えた。
それと同時に、凄まじい爆砕音と共にネズミ捕り器が床を押しつぶす。

垂直に突き立った板を見て、私達は無事に罠を切り抜けたことを知った。




「だっ、ちょっ、悪かったってやりすぎたって!あれ、もしかして今回ずっとこんな役回りかよ!や、やめろおおぉぉぉ助けてくれええええぇぇぇぇ・・・・・・」

スペルの衝撃で落下し、再び逆直立不動の体制になっていた魔理沙は、アリスの手によって地獄へと連行された。
ていうか、図書館の床に頭から突き刺さって、何で生きてるのよあいつ。


アリスは久々に本気でブチ切れたようだ。見ればわかる。
彼女が怒っているときは、常に笑顔が絶えない。それはそれは天使のような朗らかな笑顔になる。
歩く無愛想のようなアリスがそんな顔をしているのだ。普段の彼女を知るものならば、それがどれだけ恐ろしいことかわかるだろう。
哀れ魔理沙はパチュリー所有のお仕置き部屋へと連れて行かれてしまった。
・・・何故そんな部屋があるのかは・・・突っ込まない方がいいわよね、やっぱり。


広間に残った私は、必然的にパチュリーと二人きりになった。
先の騒ぎの間も、彼女は眉一つ動かさずに本を読み続けていた。
しかも、パチュリーもネズミ捕り器の落下範囲内にいたのだ。私達が何とかしなかったら、一緒に仲良く二次元の存在へと生まれ変わっていたことだろう。
ネズミ捕り器を回転させた時も、少し位置やタイミングが悪ければ、横っ面に強烈な木製張り手を受けていたことは間違いない。
パチュリーの変人ぶりが出たというかなんというか・・・その神経を理解できない。


「あんたたち、私たちを殺す気だったの?」

パチュリーはこちらも向かずに、本とにらめっこしたままだ。
ここらで、私の堪忍袋が限界に来た。

「ちょっと聞いてんの!?あれはどう考えてもやりすぎじゃないの!!やった魔理沙も魔理沙だけど、協力して止めようともしなかったあんたも最低ね!!」

肩で息をしながら、パチュリーを睨む。
すると、やはりこちらは見ずに、パチュリーは天を指差した。
訝しげに思いながらも、指差された方向・・・天井を見る。

「・・・・・・・・・え?」

そこには、千切れた太い注連縄が、5本ぶら下がっていた。
正方形の角の部分に計4本と、真ん中に1本。
気がついてネズミ捕りを見ると、天井側・・・つまり、本来のネズミ捕りの底の部分には、5箇所に楔が打ち込まれており、そこには引き千切れた注連縄の先端が結ばれていた。

「・・・今回の計画は、魔理沙が命名したものだと『ネズミ捕り器バンジージャンプ計画』。まあ、アリスの頭ギリギリの部分まで、このネズミ捕りをバンジーさせるっていう、餓鬼の発想よ。」
「・・・そ、それじゃあ・・・」
「そう、本来はただのドッキリよ。誰かさんの攻撃のせいで、注連縄が切れちゃったみたいだけど」

・・・多分、魔理沙が叫んだあたりで千切れたのだろう。
つまり、なんだ。私たちは、自分で自分の命を危険に晒したと言うことだろうか。

嗚呼、
「・・・馬鹿らしい」
「でしょ?まあ、わかったなら静かにして頂戴。読書の邪魔」


沈黙に包まれる図書館。パチュリーが本をめくる音以外は、心臓の音くらいしか耳に入らない。
静かなのは嫌いではないが、なんとなく居心地が悪い。

とりあえず、パチュリーの正面の椅子に腰掛けた。
アリスと魔理沙はすぐには戻ってこなさそうだから、しばらくは手持ち無沙汰だ。
机の上の本に目が留まったが、それを手に取る気にはなれない。
どうせ活字で埋め尽くされた本しかないのだろう。直感行動派の私は、本を読むのは余り好きではない。
挿絵が全く無い論理書や学術書などを読もうものなら、1ページ読破するのも困難極まりない。
まず間違いなく、夢の世界へと旅立つ事になるだろう。
どこかのハクタクが聞いたら頭突きと説教をもらいそうなことだが、仕方が無いだろう。
人には向き不向きがあるのだ。

パチュリーの使い魔が紅茶を持ってきたので、ありがたく受け取る。
緑茶のほうがいいのだが、贅沢は言っていられないだろう。
なにより、力を使ってのどが渇いてしまった。
紅茶を飲むのも、たまには悪くは無いだろう。


「・・・そういえば、あなたがここに来るなんて珍しいわね。どういう風の吹き回し?」

やることが無くて暇していると、パチュリーの方から声を掛けてきた。
さっきは黙れと言ったくせに。

「あんたもか。今日は会うやつ全員からそんなことを言われてるわよ。なに、来ちゃいけないの?」
「いけないってほどでは無いわ。ただ、周りから『また紅魔館が異変を起こしたのか』って思われるだけ」
「それって、私が動くのは異変が起きたときだけって言われてるみたいなんだけど」
「理解が早くて助かるわ」

・・・思い返してみると、実際言われたとおりかもしれない。
でも、だからって全員からそういう風に思われるというのはなんとも癪に障る。

「いいじゃないの。異変無くたって遊びにくらい来るわよ」
「つまり、今日あなたは遊びに来たってことでいいのかしら?」

パチュリーは、やはり本から目を離さない。
私が遊びを目的に来たなんて毛ほども思っていないのだろう。
さっきの口ぶりがそれを物語っている。

「・・・罠についてアリスに相談を受けたのよ。実行犯は私なのにアリスが狙われていると知っちゃったからね。
来ないわけには行かなくなったってわけ」

理不尽な恨みをもった魔理沙が悪いのよ、と付け足しておくのも忘れない。非は向こうにあるのだ。

そこまで言い終わると、パチュリーが唐突に本を閉じた。
今まで本に向けられていた視線が、私の目線と絡み合う。
深くて濃い紫の瞳が、まるで私の心を見透かしているかのように思えた。
なんとなく、目を合わせていたくなくなって、目線を少し下にずらした。

「あなた、変わったわね」
「・・・・・・は?」

思わず聞き返して、はずしたばかりの視線を再び合わせた。
変わった?
なぜそう思われた?
なぜ、ばれた?

「・・・どこが変わったって言うのよ」

努めて冷静に返す。まただ。いつかの紫と対峙しているかのような感覚に囚われる。
冷や汗が湧き出てきたのが自分でもわかる。

嫌だ 聞くな 嫌だ 

「そうね。じゃあ、ちょっとした連想ゲームでもしましょうか」

薄ら笑いを浮かべながら、さも名案であるかのように、パチュリーは自分の両手を胸の前で合わせた。

「連想・・・ゲーム?」
「そうよ。あなたも暇してたのでしょう?付き合いなさい」

なんだ、何が始まるというのか。
パチュリーの意図が読めない。
私の変化については聞かない・・・のだろうか。
頭の中がない交ぜになって、思考が上手くまとまらない。
このままでは、何か余計なことまで口走ってしまいそうだ。

「連想って、何をするのよ?」

表面の冷静さを保つために、とりあえず会話を進める。
内心を出さぬように、知られぬように。

「簡単よ。私が今から言う名前の人物について、あなたが思っていることを話してくれるだけでいいわ。ただし、正直に答えること。ここが重要よ。」

どうやら、人物から“連想”することを上げていくゲームらしい。
どこがゲームなのかとも思ったが、それを言葉に出すほどの余裕は残っていなかった。

「では一人目。あなたは、この私『パチュリー・ノーレッジ』について、何を連想する?」
「・・・正直によね?失礼なことを言うかもしれないけど、構わないのよね?」
「構わないわ。正直にと念を押したのはこちらの方よ」

パチュリーで連想できること。
まとまらない思考は置いておいて、とりあえず思いつくままに列挙してみる。

「え・・・と、喘息で病弱。百歳を超える魔女。曜日の魔法。根暗。何を考えているかわからない。むきゅ~。
宴会に来るけど本読むだけ・・・・・・これくらいかしら」

「ふむふむ」と、わざとらしく口に出して考え込むパチュリー。
彼女は相変わらずこちらを見続けている。やりにくいことこの上ない。
もうちょっと酷いことを言ってやってもよかっただろうか。

「次は、『霧雨 魔理沙』で連想すること」

・・・魔理沙で連想。色々と出てくるが・・・
まあ、昔のことは黙っておいてやろう。

「白黒、魔法使い、箒、弾幕はパワー、脳筋、盗人、茶泥棒、星、無遠慮、不躾、負けず嫌い、部屋が魔窟、収集家、
宴会幹事、しつこい、暑苦しい、嫌がらせを楽しむ節がある。・・・まだまだあるけど、とりあえずこんなもんでいいかしら?」
「十分すぎるほど出たわね。途中から愚痴になっていたわよ?」

そりゃ愚痴にもなる。ついさっきやらかしたばかりでは仕方が無いだろう。

「じゃあ次、『アリス・マーガトロイド』で連想することを言って。」

アリスか。これも、昔のことは黙っておいた方がいいかもしれないわね。

「・・・人形遣い、魔法使い、妖怪、器用、気が利く、料理上手、面倒見がいい、負けず嫌い、収集家、本気出さない、しっかり者、クール、悩みが無い、押しに弱い、綺麗な容姿、上海、蓬莱・・・こんなもんね」
「・・・・・・」
「・・・?」

今まで熱心に聞いていたパチュリーが、突然ジト目になった。
左手でこめかみを押さえて、わざとらしくため息をつく。
・・・なにかまずいことでも言った?

「なによ、その怒ってるような、諦めたような微妙な表情は」
「呆れているのよ」

即答された。それはもうズバっと、気持ちのいいくらいの即断だ。

「呆れてものも言えないわ。自分で気付いていないあたりが末期ね」
「・・・ちょっと、何をいってるのよ?怒らせたいの?」

流石にムッときた。パチュリーの言いたいことがさっぱりわからない。
私の機嫌が悪くなったことを感じてか、パチュリーは連想ゲームの解説を始めた。

「・・・この連想ゲームは、私が作ったものなのよ」
「え、そうなの?」
「そうよ。これはあなたの深層心理を量る一種の心理ゲームなの。今のあなたの回答で、確実にわかることが一つあるわ」

・・・少し緊張してきた。一体なにを言われることやら。
まあ緊張といっても、かすかなものだ。ゲーム程度で気をもむ必要は無いだろう。
そう思った。さっき受け取った紅茶を飲もうと、カップに口をつける。
正直、油断していた。



「あなた、アリスに特別な感情を抱いているわね」
「―――ぶふふぅうぅぅっっッッ!!!??!?」



吹いた。
口の中の液体は全て噴き出した。
パチュリーの目が、割と本気で怒っている。
机の上にあった本はビシャビシャ。確かに怒るのも無理は無いが・・・
どう考えても非は向こうにあるはずだ!私は悪くない・・・はず。


「―――いい?まず、私に対して言った言葉を、3種類に分けるとするわ。内訳は、+イメージ、-イメージ、通常イメージの3つよ」

むせった私の咳が止まってから、パチュリーは話を再開した。
涎や紅茶が口の端から流れている私を見かねてか、使い魔がタオルを持ってきた。よくできた子だ。神社に欲しい。

パチュリー曰く、言葉から感じるイメージで分類するらしい。
『魔法使い』などの、どちらともいえない単語は通常イメージとなる。

「わたしの場合は、+0、-5、通常2ってところね」
「むきゅ~は+じゃないの?」
「お黙りなさい」

怒っているパチュリーが怖いので、追及はしないことにした。
チャームポイントは活用した方がいいと思ったのは私だけだろうか。

「魔理沙の場合は、+1、-10、通常6だったわ」
「あれは・・・まあ、日ごろの行いがねぇ」

愚痴をこぼしたのが効いたみたいだ。昔のことも上げていたら確実に-20はいっていただろう。

「で、最後にアリスだけど・・・。+10、-1、通常6よ」
「へぇ、それは・・・・・・」

――――あれ?

言い間違い?いや、聞き間違い?いっそ勘違い?

「・・・+多すぎじゃない?」
「私のセリフよ。内訳を聞くまで気付かないとは、相当なものね」

やばい。滅茶苦茶恥ずかしくなってきた。
見なくてもわかる。私の顔は今真っ赤だろう。レミリアが舌なめずりしそうだ。

自分がわからなくなる。

アリスが・・・特別?
特別な感情を抱いている?
私が?何者にも縛られないこの博麗 霊夢が?
あんな、私に3回も4回も負けた妖怪を?
本気を出さず逃げてばかりいる弱虫を?
あの人間臭さが取れない妖怪を?

もう、妖怪の彼女を?

人間で、巫女の私が?



「全てに平等であろうとするあなたがここまで贔屓をするなんて、特別以外になんて言えばいいのかしら?」
「・・・贔屓?」
「そうよ。私達以外の評価もたかが知れているわ。レミィに幽霊嬢、月の姫に山の神、地底の主や閻魔だって、あなたからここまでの評価をもらうことはないでしょうね。あって+2がいいところよ」
「え・・・いや、そんなことは・・・」

無いと言い切れない。
いや、言えない。
だって、多分その通りだから。

自分勝手でしつこい吸血鬼。
迷惑極まりない能力と性格の幽霊。
数千年隠れ続けた臆病者の姫。
つけあがった山の軍神。
ペットの管理もできない地底の嫌われ者。
頭の固い説教垂れ閻魔。

そして、胡散臭さが着物を着て歩いているような、ぐうたら大妖。


そう、贔屓している。
自分でもわかるのだ、他人から見たら筒抜けだろう。
わからない、なぜ。
なぜ、彼女なのか。
なぜ、贔屓するのか。

「・・・パチュリー。まだ、頭がよく動いていないのだけど・・・なんでアリスを贔屓しちゃうのか、あなたにわかる?」

パチュリーは一度大きくため息をつくと、首を左右に振った。

「あなたの心の問題でしょう。私にわかるわけ無いじゃないの」
「・・・それは、そうよね。変なこと聞いたわ」
「だけど・・・」

パチュリーは再び私の目をみた。
見たことも無いような、本当に真剣な顔で。

「自分の中で整理をつけなさい。時間を掛けて、納得のいく答えを見つけるの。時間はあるのだから」






アリスが戻ってきたころには、私の顔の赤みも引いて、平静を取り戻していた。
どうやら魔理沙はお仕置き部屋に放置されているようで、戻ってきたのはアリス一人。
彼女の顔はツヤツヤして、まるで憑き物が取れたようだった。

怒っていないときのアリスの笑顔なんて珍しいと、つい見つめてしまっていると、彼女と目が合った。
とっさに目線をそらす。ああもう、ようやく赤みが引いたと思ったら・・・!

再び赤みを帯びた頬の熱さは無視して、残り少ない紅茶を飲んだ。
ああ、温い。もっと冷たくなってると思ったのに。


「で、鼠は?」

パチュリーの確認が入る。
アリスの顔を見た私の背筋に、冷たいものが走った。
アリスはニヤリと哂ったのだ。それはそれは妖しく、艶やかに。
まるで悪戯を企む子供のような表情なのに、邪気が無い。
企みを持ったら、普通は邪気が丸出しのはずだ。それが無いのはアリスが企んでなんかいないから。
だからこそ恐ろしい。
何も邪なことを考えず、あんな顔が出来るものなのか。
できるからこその妖怪なのか。
自然な笑顔一つで、アリスが妖怪であることを・・・人間ではないことを思い知らされた感じだった。


「魔理沙なら今頃、お尻を猿のように赤くして泣いているわ。滅多に見れないから、見に行くなら今よ」
「・・・ッ」

何を想像したのか、パチュリーは机に突っ伏して笑いを堪えている。
だが、席を立たないところを見ると、見に行くつもりはなさそうだ。
・・・普段の私ならパチュリーのように失礼なことを考えて、当然のようにお仕置き部屋に突入するだろう。
だけど、今はそれどころではなかった。
頭の中は飽和状態で、碌に考えもできない。
アリスがこちらを見た。
胸が跳ねる。
パチュリーに変なことを言われたせいで、頭だけでなく心臓までおかしくなったのだろうか。

「どうしたのよ霊夢?あなたなら見に行くと思ったのに」
「あんたは私をどういう人間に見てるのよ」

心の中まで見透かされたようで。
心の中まで入られているようで。
気恥ずかしくて、後ろめたくて、すこし憤りも覚えて。
なのに・・・私のことを理解してくれていると思うと、嬉しい。
そう、とても嬉しいのだ。

「魔理沙相手には容赦ない子供」
「言ってくれるわね。後が怖い・・・というより、面倒くさいから見に行かないだけよ」
「あら、なるほど」

何とか納得してくれたようだ。
正直、今は平静を装うので精一杯なのでよかった。




その後すぐに、私は帰ることにした。
アリスにはまた色々と聞かれたが、「嫌な予感がするから」といったら引き下がってくれた。今回ほど勘の良さをウリにしていて良かったと思ったことは無い。


紅魔館から外に出る。
湖の上をゆっくりと飛んで、冷たい風で頭を冷やす。


途中、チルノが絡んできた。風が冷たいのはこいつのせいだったか。


わけがわからないうちに弾幕ごっこが始まっていた。
向こうが勝手に始めただけとも言える。

弾幕ごっこといっても、チルノが一方的に弾を飛ばしてくるだけだ。
私は弾を撃つ気になれない。

撃ってこないことを舐められているととったようだ。チルノは何かを叫ぶと、スペルカードを宣言した。


「凍符 パーフェクトフリーズ」


チルノの代名詞とも言うべきスペルカード。
一度ばら撒かれた冷弾が空中で静止し、その後四方八方に散らばるという、気合避けスペル。
今までは一度も食らったことが無い。

はずだったが。

おかしくなっていた私は、とんでもないことを考えた。



私を取り囲んで、氷の塊が静止する。
一拍おいて・・・
「今日こそ落ちなさい、紅白―!!」
チルノの掛け声で動き出す。
全てが違う方向に進み、まるで意思を持っているかのようだ。

私は、その場を動かない。
1発目がカスった。皮膚が痛い。触れなくても冷気で痛いのだ。
2発目と3発目が、目の前でぶつかって砕け散った。破片が皮膚に触れた。火傷しそうだ。
4発目が、私の背後から迫ってきた。見なくても、冷気でわかった。
わかっていたが、私はそれに当たってしまった。



力が抜ける。湖に落下する。下から吹きつける風が心地いい。

なんだ、堕ちるのってこんなにも気持ちのいいことだったんだ。



気がついたら、湖の湖畔でチルノに介抱されていた。
助けてくれた礼を言う前に、チルノが口を開いた。

「なんで・・・なんで避けなかったのよ!人間のあんたが私の弾に当たったら、どうなるのかなんてわかるでしょう!?マイナス100度とか200度とかなのよ!?」

チルノは、怒りながら泣いていた。
私なら避けると思っていたから、本気の弾を放ったのだろう。
ああは言っても、私が避けることを、心のどこかでは信頼していたのだろう。
負けず嫌いで素直じゃない彼女なりの信頼方法。
それを私は、裏切ったのだ。
言えない。こんなに心配してくれているのに、わざと当たった理由なんていえるわけが無い。



パーフェクトフリーズなら、私の動揺や悩みまで固めてくれるかもしれないと思ったから、だなんて。
笑われてしまう。








図書館でパチュリーは本を読み続けていた。
時間はすでに夜の9時。
アリスは先ほど帰ったばかり。もう読書を妨げるものは何も無い。
パラリパラリとページをめくる。
めくるだけ。今は考え事で、頭がいっぱいだ。

博麗 霊夢が、アリス・マーガトロイドに特別な感情を持っていた。
もしやと思ったのは、霊夢が「アリスに相談を受けて来た」と言ったとき。
今までの霊夢なら、“相談”ごときでは動かなかった。
それこそ、頼まれたり依頼されたりして渋々動き出すといった感じだ。
たとえ自分に非があろうとも、滅多なことでは重い腰を上げはしないだろう。

戯れのゲームを出したのも、霊夢の変化を確かめるため。
心理ゲームとは言ったが、アレはその場で作ったでまかせだった。
今日の霊夢がちょっといつもと違うことは気がついていたから、何が違うのかを確認するために聞いてみたのだ。

結果は私も驚いた。
魔理沙関連かと思ったら、まさかアリスだとは。

おもしろそうだったので、わざと「特別な感情」という言い回しをしておいた。
今頃、悶々と考え込みながら、寝付けぬ夜を過ごしているだろう。

その感情は、別に恋愛感情などというものではない。
普通の人妖ならば、特別でもなんでもないありふれた感情。
「博麗の巫女」だからこそ特別なのだ。
霊夢自身も、初めての気持ちだったのだろう。見事に勘違いを起こしてくれそうだ。


くっくっくっと忍び笑いをしていると、背後から声が聞こえた。

「こんばんは、図書館の魔女。体調は良いようね」
「・・・ええ、おかげさまでね」

振り返らなくても誰だかわかる。だから、振り返らなかった。

「・・・何の用?本を読む邪魔だから、用が無ければ消えて頂戴」
「お客様に向かって邪魔とは失礼ね。紅茶の一杯でも出してくれてもいいんじゃないかしら?」

減らず口を叩かれる。イライラが溜まる前に出て行ってもらいたい。

「生憎、使い魔が風呂にはいっているからね。なにも出ないわよ」
「あらそう、残念ねぇ」
「私も気が長い方じゃないの。さっさと用件を言ってくれない?」

相変わらず人をイラつかせるのが上手いやつだ。
と思っていた。ある意味、油断していたのかもしれない。
だが、

「・・・霊夢に、余計なことを吹き込んでいたわね」

その一言で、空気が変わった。
顔を見ていないから確実ではないが、背後から感じるのは怒気。
あの、八雲 紫が怒っている。

「余計なこととは、なにかしら」
「あの子が、アリスに抱いている感情のことよ」

もはやはぐらかしもしない。
怒気が膨らんでいくのがわかった。

「・・・余計なことだったかしら?」
「そうよ。博麗の巫女が抱くべきではない感情」

紫の言いたいことはわかる。
彼女は、誰よりも幻想郷を愛している妖怪だ。
だから、幻想郷の守護者である霊夢を、理想の「博麗の巫女」に近づけようとしている。

「別に、アレくらいはいいんじゃないの?恋愛感情じゃないのだし」
「そうね、アレくらいなら私も目を瞑ったわ」

首筋を、スベスベした細い指が這いずっている。
命を握っていると暗に言い、脅しをかけているのだ。

「許せないのは、恋愛感情のように思わせようとしたこと。いつ恋愛感情に変化してもおかしくないというのに、それを助長させるのは、見過ごせないわ」

・・・この女は本気だ。いつ首を、頭を握りつぶされるかわかったものじゃない。
だからこそ、正直な私の気持ちを口にだした。

「・・・恋愛感情の何がいけないというのかしら?霊夢だって年頃の女の子よ。問題あるとは思えないわ」
「・・・・・・・・・」

紫は沈黙した。
指はどかしてくれた。なんとか生きながらえたようだ。

「問題無い、か。そう思うなら、成り行きを見守りなさい。もう、私でも簡単には止められない。霊夢自身が進んでしまったら、押し戻すことは出来ない。すべてはあの子の気持ちしだいで決まってしまうわ。そして、抗えぬ地獄が始まるのよ・・・」


・・・そのセリフを最後に、紫は消えていた。


私には、好奇心が満ち始めていた。
霊夢にどんなことが起こるのか知らないが、成り行きを見守ろう。
どうせ本を読むくらいしかすることがないのだ。

読みかけの本に栞を挟んで閉じた。
今日は疲れた、久しぶりに睡眠でもとる事にしよう。





~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~






私はアリスをどう思っているのか?
同姓で、種族も違う。その上、巫女と妖怪という関係だ。
もし、パチュリーの示した通りなのだとしたら・・・
そんなことは、許されるのだろうか。



私は、おかしい。
おかしいということしかわからない。

私は変わってきている。
自分でそれは止められない。


だけど、なぜだろう。
この変化がすごく心地良くて・・・

まるで・・・そう、


雪解けのような。





今日も、アリスは神社に寄った。


「――――だそうなのよ」
「・・・そう」


あの日から、いやがおうにもアリスを意識してしまう。
“特別”について考えてしまう。

「・・・ちょっと霊夢、聞いてる?」
「もちろんよ。魔理沙がまた馬鹿やったって話よね?」
「・・・その話はとうに終わったわよ。ナイフに我慢できなくなった美鈴が、咲夜に決闘を申し込んだって話よ」

アリスしか見えない。
気がつくと、彼女のどこが特別なのかしか考えていない。
そのせいで、会話もいつの間にか聞こえなくなる。

あの一言が、こんなに尾を引くとは正直思ってもみなかった。
・・・全部パチュリーのせいだ。
今度慰謝料を請求してやる。


「大丈夫?最近ずっとそんな調子で・・・。体調とか悪いの?」

心配そうな顔でアリスが見つめてきた。
気恥ずかしくて、つい俯いてしまう。
ああもう、心配かけてどうするのよ。

「大丈夫よ。ただ・・・ちょっと考え事がね。ごめんなさい」

アリスはきょとんとして、すぐに聞き返してきた。

「考え事?私に相談できないの?」

いや、できるわけがない。

「結構重大というか・・・まあ、気になることがあるのよ」

聞き終わると、なぜかアリスはクスクスと笑った。
クスクスと、それはもう楽しそうに。

「・・・謝るべきじゃなかったかしら?」
「いえ・・・ごめんなさ・・・あはははっ!」

言いつつも、笑うのをやめない彼女に、むくれ面を作ってみせる。
・・・ちゃんとむくれて見えているだろうか。
そういえば、表情の作り方なんて気にしたことなかったわね。

「そんなに怒らないでってば」

不機嫌に見えたらしい。ああもう、難しいなぁ!
・・・まぁ、むくれ面は確かに不機嫌な顔なのだが。
なんかもうちょとこう・・・可愛げが・・・無いか。

「なんで笑うのよ」
「だって、あの完全無欠の博麗霊夢ともあろう者が、こんなに考え込んでるのが珍しいんだもの」
「・・・悩みの無いあんたとは違って、私だって悩むことくらいあるわ」
「一つの事をそんなに気にするなんて、霊夢らしくないわよ?」
「らしくない・・・あんたは私をどういう風に見ているわけ?」
「勘とお茶で生きる巫女。ワイルドね」
「それって完全無欠?」
「勘でなんでも解決するからね、完全よ」
「残念。お賽銭が無いから無欠じゃないわ」
「それは確かに」

いつの間にか、いつもの調子に戻っていた。
どうやらアリスは深くは聞かないでくれるようだ。
だけど・・・

こんな言葉の応酬が、楽しくて楽しくて。
だからこそ、うじうじと考え込んでいる自分が嫌で。
こんな楽しい時間をむげにしている自分が嫌で。

だからこそ

「・・・・・・アリスのこと・・・考えてたのよ」

聞いてみようと思ったのだ。


「・・・はい?」

再びのきょとんとした顔で聞き返された。
まあ、そうだろう。私も多分こうなる。

「だから、あんたのことをずっと考えていたのよ!」

・・・なんか、頬が熱い。多分恥ずかしいからだ。
アリスが直視できなくて、また目線が下がる。
私は何をしているのだろう。
私が一番わからない。


「・・・・・・・・・告白?」
「―――――っだあぁ!!?」

何を言い出すのこの色ボケ娘は!!
マズイ、顔がぽっぽしてきた。
今ならおでこで目玉焼きが作れそう・・・
じゃなくて!

「な、な、何馬鹿言ってるの!?」
「そんなに怒鳴らないでよ、冗談に決まっているでしょう。
・・・本気にした?」
「にゃにを、アホな・・・!するわけないでしょう!!」
「あらそうなの?私は霊夢のこと好きよ?」


――――は?

「へ・・・へええええぇぇぇ!!?」
叫び声が境内に轟いた。
驚いた鳥が一斉に羽ばたき飛んでいく。

ああ、え、うあ?
わけわかんない。
頭がぐるぐるする。
ああ、なによなんなのよ?
なんでこんなにあったかいのよ??
なんで嬉しがってるのよ!?


「もちろん、友達としてよ。あなたは大切な友達!」

「・・・あっ」

――――あっ


なんだろう、これ。


「そ、そうよね!あはは、は・・・もう!
何言ってるのよこの七色莫迦!」

二人で笑いあう。
心は笑っていない。

さっきまでの熱さが嘘のように、心は冷めていた。


心のどこかが叫んでいた。


『もっと特別に』と叫んでいた。


アリスが私の特別に・・・ではない。
私がアリスの・・・・・・。


これが特別?
特別に見られたいの?
特別になりたいの?
アリスに・・・見てほしいの?





「――――じゃあ、また来るわね」

日も西に傾いて、夕暮れが目に染みる頃、アリスは帰っていった。


「・・・・・・・・・」

無言で片付けを始める。

湯のみ、座布団、お茶菓子。
所定の位置に、所定の数を、所定の状態で。


・・・心が苦しい。
片づけをしながら、心が空っぽになっていくのがわかる。

さっきまであった何かが、胸から溢れて消えていく。


こんな気持ちは、何度か味わったことがある。

そう、あれだ。宴会が終わって、皆が帰った後に似ている。
アリスや萃香が片付けを手伝ってくれている中、もう終わりなんだと思ったときに感じるアレだ。
名前はわからない、あの感覚。
あれを、何倍にも強くした感じ。

湯飲みを洗って・・・
全て片付いた。
部屋はすっからかん。何も残っていない。

心も、すっからかん。


もう神社には何も無い。
あるとすればそう、私くらいなものだ。
私だけ。
一人。
一人。
冷たい。
暗い。

外はもう真っ暗だった。
静まり返り、虫の一匹も鳴いていない。

「―――あ、れ?」

なんでだろう。涙が溢れた。
おかしいな。
今まではこんなこと、なかったのに。
こんな気持ちになったことは、なかったのに。

あまりにも暖かかったから。
無くなった時の寒さが、とても厳しく感じられて。

パチュリーに言われた日からずっとだ。
アリスが来た日は毎回だ。
駄目だ、今日も泣いてしまう。

弱くあるな、強くあれ。
私は博麗。
何者にも縛られるな。
何事にも動じるな。

私は。

私は・・・


「・・・っく、うぇ・・・え・・・さむい・・・ぃ」


心の穴に風が吹く。

ヒュー  ヒュー
   ヒュー  ヒュー

風が吹く。
反響を繰り返す。


「ああ”ぁ・・・さみしい・・・よぉ」


感覚の正体なんて、とうの昔に知っていた。
私は一人なんだ。
人間にも妖怪にも傾かない存在。
それはつまり、人間でも妖怪でもないのではなかろうか。


「あああ!ああ” あ”ぁぁぁ!!」


昔から言われていた。
時には妖怪の側に立つように。
必要なら人間をも滅するように。
それこそが中立の証。
それこそが博麗の宿命。


人間で無いのなら、私は何?
妖怪で無いのなら、私は誰?

私のほかに、私はいない。


他の人間には、近しい人間がいる。
他の妖怪にも、近しい妖怪がいるだろう。
妖精にだって、仲の良い妖精がいる。


だけど、

私のほかに、私はいない。
私と同じ存在なんていないのだ。
だから一人なんだ。


「いやあぁぁ!い”やあああ”!!さむいのいやあぁぁ・・・」


ずっと一人で育ってきた。

友達はいない。
親ももう、いない。
誰もいなかった。


いつからか、魔理沙が後ろにいた。
彼女は私を追ってきた。

嬉しかった。
こんな私に、近づいてくれる人がいたことが、嬉しかった。


いつからか、友人が増えた。
魔理沙を筆頭に、主に異変に関わった人妖が集まってきた。
皆、私に近づいてきてくれた。


今度は、怖くなった。
いつか、集まってきた皆がいなくなってしまうのではないかと。
不安を晴らそうと宴会を開く。
皆が来てくれて、楽しく笑いあう。
でも、それも終わってしまう。
終わった後に、言いようの無い不安が残る。

皆がいなくなったら、私はさむい。
さむいのは私。
嫌だ。
もっとさむいのは絶対に嫌だ。
じゃあどうすればいい。
どうすれば、これ以上さむくならない?


気がついていたのかもしれない。
もしかしたら無意識かもしれない。
私は、そっけない態度を崩さなくなった。
出来るだけ興味をもたれないように。
出来るだけ近づかれないように。

だって、そうでしょう?

これ以上の暖かさを知らなければ、多分さむくなっても耐えられる。
あったかければあったかいほど、さむくなったときに凍えてしまうんだ。
だったら、いらない。
今のこれが“さむい”なのなら、大丈夫。
耐えられるはずだと思った。


魔理沙だけは、隣にいてほしかった。
初めて知った光は、あまりにもまぶしくて。
さむいのは我慢できても、暗いのは我慢できそうに無かったから。

でも、魔理沙じゃ駄目だった。
彼女は私を追う。
ただひたすらに背中を追う。


隣に立ってはくれない。


追い越すことが、彼女の目標なのだから。

追いつかれたら最後、どこまでも走っていってしまう。
私をおいていってしまう。
光が、消える。


私はただの臆病者だ。
暖めてほしいのに、失うのが怖くて手を伸ばせない。

みんなのいるところに、行けない。



アリスは・・・

特別だと言われた。
自分ではそんなつもりはなかった。
特別なんて、作ってはいけないものだと思っていたから。

でも、意識してからようやく自覚できた。
アリスがいると、暖かい。暖かいのだ。
それも、他の人妖とは比べ物にならないくらい。

いつの間にか、迎える準備をしている。
来るまでの間、心を躍らせて待っている。
来なかったときは、アリスの都合を言い訳にして、心を慰めている。

今まででは考えられない。



知ってしまったんだ。

いつかはわからないが、暖かさを知ってしまっていたんだ。
気付かないうちに、魔理沙よりも私のそばに来ていて・・・
もう、離せなくなるところまで近くにいたんだ。
しかも、追い越そうとはしない。
私を目指してきてくれる。
安心して、迎えられる。



ようやく泣き止むと、ものすごく眠くなった。
泣きつかれるなんて、本当にらしくない。
でも、ここで寝ないとまたさむさを感じてしまいそうだったから・・・
私は、まどろみに堕ちる事にした。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



“霊夢、これで遊んでいなさい。私はこれからお仕事をしてくるから、いい子にしているのよ”


私は、一人だった。


すでに顔も覚えていない、母の声。

目の前には、畳と障子。
障子にはびっしりとお札が貼り付けられている。


これは、結界だ。
内にも外にも出入りできなくするための、私専用の鳥籠。


後は、畳の上に広がるたくさんのおもちゃ。

積み木もあった。
パズルもあった。
紙とクレヨンもあった。
絵本もあった。

そんな中で、私が選ぶのは決まってこれ。

可愛らしい、金髪のお人形。

紫色の女の人がくれた、私の宝物。


この子に、物語を作るのだ。
私だけの物語を。


いつか読んだ絵本よりももっと、
もっと素敵な物語。


この子は王女様。
やさしい王様とお妃様がいて、
たくさんの召使いがいて、
みんなから愛されているの。

そして王女は、隣の国の王子様と恋に落ちる。

二人は結婚して、幸せに暮らす。


そんな陳腐な夢物語。


鳥籠の中以外に何も無かった私は、全てを持った王女様になりたかったのかもしれない。
だから、飽きずに遊んだ。
遊んでいる間だけは、私が王女様だったから。





夢が、ぼやける。

場面が変わる。





今度は春だった。
神社の境内。
にぎやかな宴会。



そして私の前には、魔理沙に連れてこられたアリスがいた。


「それじゃあ、私は先に混ざってくるぜ。幹事がいなきゃ盛り上がりに欠けるだろうしな」

そう言うと、魔理沙はさっさと走っていってしまった。

残されたアリスと私。
この間戦ったこともあり、少々気まずい。

「――――酒でも、飲む?」
「――――そうね、頂くわ」

沈黙は嫌いだ。気まずいのは特に。
だから誘った。それだけのこと。

「・・・なんで来たのよ」

宴会にという意味ではない。幻想郷にという意味だ。
向こうもそれを察する。

「あら、私のこと忘れたんじゃないの?」

私は忘れてなんかいなかった。
ただ、わからなかっただけ。
あのアリスだと、気付かなかっただけだ。

「・・・妖怪になったうえにそれだけ成長していちゃ、わかるわけ無いわ。
あの時は私の方が背が高かったのに」

今は抜かされてしまっていた。
すごく悔しい。

「そういえば、そうね。神綺様に頼んで少し年齢を上げてもらったのよ。魔女になったらもう成長しないからね」

神綺。
アリスたち魔界の民の、全ての母。彼女ならそれくらい、造作も無いことだろう。

「なに、子供っぽいのは嫌だったってわけ?」
「まあそういうことよ。どうせなら、自分の理想の姿で一生を過ごしたいじゃない?」


ずるい。
そんな反則技、卑怯だ。


「で、どうして妖怪に・・・本当の魔女になったのよ」


一番の疑問だった。
彼女は魔界人。ルーツは違うが、れっきとした人間だ。
妖怪になる人間というものには、変わり者が多い。
そして、その多くは辛く苦しい過去を持っていたりする。

それもそうだろう。
妖怪になる理由で一番多いのは復讐だからだ。

どこにいるかもわからない、どれほど強いかもわからない仇敵。
打ち勝つには、それなりの力と回復力、寿命が必要。
そういう負の具現、「復讐者」こそが、自ら望んで人間をやめる者たちの筆頭だ。



アリスには、「負」がどこからも見つからない。
あの母がいるのだ。
幸せに暮らしてきていないはずがない。

彼女にもし、「負」があるとしたら・・・
それは、私と魔理沙と、他二名の責任だ。
一生をかけて償っても償いきれるものではない。
彼女はすでに人間では無いのだから。

だからこそ、殺されても仕方が無いと思って聞いた。
内心は、恐怖で一杯。
背には汗がにじんでいるのがわかる。
目をつぶって、返答を待った。


だが、私の考えは裏切られた。

良い方向へ。



「――――夢のためよ」
「・・・夢?」


しばらく黙っていたアリスはポツリとつぶやいた。


「そうよ。私には・・・アリス・マーガトロイドには夢があるの」


初めて聞く、彼女のフルネーム。
初めて聞く、彼女の感情に満ちた声。
あふれ出ている感情は何なのかわからない。
だけど、そのあふれ出ているものが、私には無いものだとわかった。


「その夢とやらのために、人も、親も、故郷も捨ててきたの?」
「人以外は捨てたつもりはないのだけど」
「捨てたも同然よ。夢なんて、あの母親とあの世界があれば、すぐにでも叶うでしょうに」


彼女は、笑顔だった。
今までに一度も見たことの無い、太陽のような笑顔。

「お母様は関係ないの。私は、私一人の力で掴み取りたいと思ったから、ここに来たのよ。『一人の力で掴み取る』ことも、当然夢の一部よ」


贅沢すぎる。


「後悔は・・・無いの?」
「無いから、こうして笑えるのよ」


なんて眩しいのだろう。
そんな贅沢を、私は何度夢見たことだろう。


アリスは・・・・・・そうだ。


「・・・私も、その夢を応援してもいいかしら」
「? どうしたのよ突然」


私に無いもの全てが、アリスだ。


「別に、ただなんとなくよ」






~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~






気がついたら、居間で横になっていた。
寒い・・・。
まあ、冬だから当然といえば当然なのだが。
体は芯まで冷え切っていて、震えが止まらない。
お風呂に入ろう。そう決めた。
だけど、その前に・・・
一つだけ、やっておきたいことがある。




神社の裏に建つ蔵の中。
薄暗くて、外よりも何倍も寒く感じられる。
ヒューヒューと鳴る隙間風が、それを助長していた。


もう私も、年の暮れの大掃除にしか近づかない蔵の奥。
そこにある、大きなつづらの蓋を開けた。

中にあるのは、全てがおもちゃ。

角が欠けた積み木。
ピースの足りないパズル。
真ん中で折れたクレヨン。
ぼろぼろの絵本。

それらの下に埋まっていた、一つの木箱。
おもむろに取り出すと、埃も落とさずに蓋を開けた。


中には、一体のビスクドール。
頭と手足が陶器で作られたそれは、本来は観賞用のもので・・・。
だからだろう。子供の遊びに付き合った人形はあちこちが欠け、砕け、ぼろぼろだった。
変色もしているし、指も五本そろってはいない。


でも、これこそが私の宝物。
私が欲しかった全て。




「・・・・・・そうか」



唐突に理解した。
パチュリーの言う、特別の意味。


しかし、もう違うのだ。
もうそういう特別ではなくなってしまった。
この数日間で、もう境界は越えてしまっていたのだ。

特別よりももっと深い感情。
きっと、アレなのだろう。鈍感な私にもわかった。
むしろ、『ようやくか』と感じた。
『とうとう』でもいいだろう。予感はあったのだから。




私は人形を抱きしめながら、アリスに会いに行こうと思った。


「・・・・・・」


後ろから覗き見ていた、紫に気付くことはなかった。








~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~







遡ること一時間前。


「取り引きよ。貴女がまっとうしてくれたなら、結果どうなろうとこの魔道書をあげるわ」


霧雨 魔理沙は、今までの人生で最大の選択を迫られていた。

取り引きの内容は簡単だ。
今からアリスと霊夢のところへ行き、ちょっとしたおつかいと、指示されたとおりのセリフをぶつけてくるだけ。
結果としてもらえるのは、すでに幻とも言える魔術書だった。
幻想郷でも、例え図書館でも、短い人の一生でこれほどのものに出会えることはもう二度とないだろう。
そういうレベルの魔道書なのだ。


「で、返答は?」

「・・・・・・何が目的だ」

だからこそ、疑ってかかるべきと魔理沙は判断した。
なにが怪しいって、取り引きの内容も怪しすぎるが、一番の不安要素は・・・。

「貴女には関係の無いことよ」

取り引きを持ちかけてきたのが、あの八雲 紫ということだった。


「正直なところ、私はお前が信用できない。お前が正直に理由を話すのなら、考えてやってもいいぜ」
「それはつまり、魔道書はいらないってことでいいのかしら?」
「ぐ・・・」

魔道書は欲しい。すごく欲しい。
収集家としても魔法使いとしても、特A級の代物だ。

「こんな簡単なことで、貴女は生涯で一度お目にかかれるかもわからない、伝説の代物を手に入れられるのよ?どこに悩む余地があるのかしら?」
「・・・だけど、このセリフは・・・」
「あら、あなたとあの二人の友情が壊れるわけでは無いわ。あの二人の友情も壊れることは無いでしょう。」
「そうかもしれんが、言ったら・・・とんでもないことになりそうな気がするんだ。特に、最近の霊夢はなぜかアリスを気に掛けている。」

そう、霊夢には珍しい・・・というより、おかしいくらいにだ。
だてに霊夢と友達やっているわけではない。霊夢の変化くらい、手に取るようにわかっていた。

「・・・あなたには関係ない。そうでしょう?」
「関係ないわけ・・・!」
「さあ、やるかやらないか選びなさい。選べないなら、他に適任者を探すわ」
「・・・ぐ・・・く」


結局私は、紫の誘いに乗ってしまった。
どうしてもあの魔道書は欲しかったのだ。

私が言うセリフは二つ。
渡すのはアリス宛の一枚の手紙。



「アリスが魔界に帰る」
「魔界の神綺から手紙を預かった」











「パチュリー様、何を見ていらっしゃるのですか?」

図書館内、パチュリーの私室。
図書館に併設されているここでは今、大規模な魔法が使われていた。
部屋の主、パチュリーは大きな水晶玉を覗きこんでいる。

「静かになさい、今いいところなのよ」
「・・・?」

使い魔に見向きもせず、ただ水晶を見つめるパチュリー。
そこには、紫と魔理沙が映し出されていた。

「・・・ああ、遠見の魔法ですか。しかも相手を固定・追跡しながらリアルタイムで写すなんて、流石はパチュリー様ですね」
「褒めても何もでないわよ」

それも、映像だけではない。音声までしっかりと聞こえてくるのだ。
あの紫相手に気付かれずにこの魔法を使えるのは、幻想郷内でもパチュリーくらいだろう。

「それに、機能はそれだけじゃないわ。地底の主の能力を再現した、すでに神器と言っても過言ではないわ」
「それは、ただ悪魔を使役しているだけですよね?」
「・・・もうちょっと悩みなさいよ」
「すみません。私もそっち側なので」

そう、これは写されている者の心の声も、ダイレクトに伝わってくる。
まあ、使い魔の言うとおり、そういう力の悪魔を使役して、真似ているだけなのだが。
彼女の能力と違い、一度に一人しか読めず、水晶に姿が映っていなければならない。
さらに、魔力の消費も尋常ではないと、かなり燃費の悪い代物である。
まあ、それでも私の中では傑作な“遊び道具”なのだが。

「じゃあ、紅茶でも淹れてきますね」
「あら、気が利くわね」

使い魔が部屋を出て行ってから、再びパチュリーは水晶に集中する。
頭のめぐりはいつもの数倍早く、いくつもの推察や思考が生まれては消えていく。

(紫は・・・悪役に徹する気ね。魔理沙も買収されちゃって)

パチュリーはおもむろに指を振った。
すると、水晶の映像が変化していく。
今度は霊夢の姿が映っていた。

『・・・・・・そうか』

霊夢の声が水晶から響く。
この一言で、パチュリーは霊夢の変化を知った。

(あら、どうやら完全に深みにはまっちゃったみたいね。まあ、多分いつかはこうなっていたでしょうけど)

霊夢の感情の変化を助長させたのは自分だが、この結果には関係ない。
そうパチュリーは考えていた。
遅かれ早かれこうなっただろう。
ただ、変化するのが早いか遅いかという違いだけだった。


(さあて、一体どうなるのかしら)


魔女らしい艶のある笑みを浮かべながら、パチュリーは傍観に徹することにした。











紫は焦っていた。


博麗の巫女たる霊夢に、芽生えてはいけない感情が芽生えた。
いや、気付いてはいけないと言ったほうがいいだろうか。
ずっと霊夢の内の内で眠っていた感情。
まだ霊夢が一人だったころ、常に抱いていた感情。


それは、憧れ。


「何者にも縛られない」というのは、間違いだ。
霊夢は生まれた時から、「博麗」に縛られている。


がんじがらめの彼女は、あの冬の異変で、一番会ってはならない人物に出会ってしまった。

魔界の神の子、アリス。


彼女は、霊夢の憧れが具現化したような存在だった。

神の子という身分。
偉大なる母。
多くの家族に愛されて育ち、その容姿はまるでビスクドール。
妖怪となった今では、母の力で最も美しい容姿を与えられ、寿命も得た。

だが、霊夢が彼女に憧れた最大の要因は、そんなことではない。


自由。


そう、アリスは自由なのだ。


彼女は自分で全てを選択できたのだ。

妖怪になったのも彼女の選択。
故郷を離れたのも彼女の選択。
そして、夢を追うのも彼女だからこそできた選択だった。


彼女に、霊夢は憧れを感じずには居られなかったのだろう。
彼女に対して霊夢にあるものは、神社とお茶と、「博麗」の宿命。

「全てに平等であれ」

いつからか、大勢の人妖がこの神社に集まってくるようになった。
人の集まるところには感情が生まれ、喜怒哀楽が生まれ、良くも悪くも好き嫌いが生まれる。
苦手とする相手とは付き合い難いし、嫌いな相手よりも好きな相手を優先してしまうのも人間としては仕方のないことだ。
好きなものは好き、嫌いなものは嫌いと、人間は自分の中できっぱりと決める。それが無意識でもだ。
好きなものには近寄ればいい。嫌いなものからは離れればいい。
自分の周りが全て好きなもので構成される世界なんて、まさに桃源郷のようだ。
周りの人妖は自分自身の桃源郷を創り出そうと、当たり前のようにすきなものばかり集めている。


そして、全てに「平等」でなければならない霊夢には、それは許されないことだった。


例え嫌いな人間でも、身を呈して守らなければならないこともあるだろう。
例え好きな妖怪でも、幻想郷のバランスを崩した瞬間に退治しなければならなくなるだろう。

人妖のどちらにも傾かないということは、自分の好き嫌いで行動を決められないということだ。

好き嫌いといっても、食べ物がどうとかいうのとは次元が違う。

どんなに愛した者だろうと、倒さねばならなくなるかもしれない。
どんなに憎んだ者だろうと、守らなければならなくなるかもしれない。
全ては幻想郷のために。
それが「博麗の巫女」


人間が力を持てば妖怪退治を断り、助けず、時には人をも滅する。
妖怪が力を持てば妖怪退治を己の判断で行う。


そして、それを行うには絶対中立でなければならない。


もしも、人の側に傾いたら、
妖怪が四六時中命を狙うだろう。

逆に妖怪の側に傾いたら、
人間は巫女から離れ、巫女を忌み嫌うことになるだろう。


どちらも、一人の少女が背負うには辛すぎる。
だからこそ、昔から厳重に慎重に育ててきた。


愛というものを霊夢はまだ知らない。
だが、将来大切なものを自分自身で壊さねばならなくなるかもしれない・・・
そんな思いはさせたくなかった。心が耐え切れるとも思えなかった。
だから、「平等に接する」という理由をつけて、霊夢の心にだれも入ってこないように蓋をした。
ずっと昔から蓋をした。
心が脆くなる要因を作ってはいけない。そこをついて、「博麗」が霊夢に牙をむくかもしれない。


妖怪の中には、巫女を幼少のうちに洗脳し、妖怪側に傾けようとする不届き者が少数だが存在した。
そして、人間の子供と遊ぶと、やはり人間に傾いてしまう。
だから、中からも外からも破れない、四重結界で神社を囲った。
せめて、霊夢が一人前になるまで。


そう、知らなければ繋がりなんて求めない。
このままでいいんだ、このまま・・・



そう考えていたのが、甘かった。

その甘さが、霊夢を妖怪側へと傾けようとしている。



霊夢が子供の時とは違い、今はスペルカードルールがある。
多少なら人間の側に傾いても問題はなくなっていた。
なぜならこれは、人間と妖怪がむやみに死なないように取り決めた、平和的決闘法だからだ。
妖怪側は以前のように、巫女に問答無用で滅されることが無くなった。
己の存在が危うくなるから、妖怪は巫女を重視していたのだ。
今の妖怪にとって博麗の巫女は、悪い奴をお仕置きする見張り程度の認識しかない。


だが、妖怪側は駄目だ。
巫女が妖怪と仲良くしていると聞いて、気分の良い人間は一人も居ない。
魔理沙や早苗、咲夜といった例外を除くと、人間は護ってもらう側なのだ。
護ってくれるはずの巫女が、敵である妖怪と親交を持っている。
これは、知られてはならない。

妖怪と違って、人間の心は醜さの塊だ。
己の保身のためならなんでもするし、平気で他者・弱者をも切り捨てる。
もちろんそういう面だけではない。それはわかっている。

だが、前例があった。

そう、幻想郷から鬼が消え去った。
これこそが、人間の醜さの象徴だ。

古参の妖怪であればあるほど、人間を警戒している。
それは、紫とて例外ではなかった。



もしも、霊夢がアリスにこれ以上近づけばどうなるか。
それを、人間に知られたらどうなるか。


博麗の巫女は、護るべき人間からの迫害を受ける事になるだろう。



紫は、焦っていた。
それは、幻想郷を護る大妖としてではない。

霊夢を育てた母の一人として、焦っていたのだ。


手段を選べなくなるほどに。








神社の境内。
「・・・ふう」
朝の日課の掃除を終えて、私は一息ついた。
あんなにぐちゃぐちゃしていた私の心は、今は澄み切っている。

「そろそろ行こうかしらね」

アリスの話から、彼女の出発の時間はおおよそ把握していた。
今から出れば、調度出発するアリスと鉢合わせるだろう。

行くのが怖くないと言えば、嘘になる。
だけど、ようやく気付いた気持ちに正直でいたいから。
自分の全てをアリスに聞いて欲しいから。

軽く身支度を整えて、私は飛び立った。
目指すは魔法の森のアリスの家。

目的は一つ。



アリスに伝える。

自分の正直な気持ちを。










「紅茶をお持ちしましたー」
「ありがとう。そこに置いておいて」

相も変わらず、パチュリーは覗きを続けていた。
彼女には珍しく、ニヤニヤと笑いながら成り行きを見ている。


「・・・なんで今更、恋になったんでしょうかね」


使い魔の彼女は、パチュリーから全てを聞かされていた。
霊夢のこと。紫のこと。アリスのこと。
だからこそ、不思議に思った。
なぜ今更と。


「・・・・・・そうね、たとえ話をしましょうか」
「はい?」

パチュリーが、やはり水晶を見ながら言った。
使い魔はパチュリーの邪魔をしないように、隣に立つ。

「貴女がすごくすごく欲しいドレスが、ショーウィンドゥに飾られている。だけど、どうやっても手に入らない。だから、ガラスの向こうのドレスをただ見ているだけ。それだけで貴女は満足していた」
「・・・あのぉ、ショーウィンドウってなんですか?」
「・・・・・・」

話の腰を折られたが、パチュリーは気にせず続きを話す。話したいだけなのだろう。

「でもある日、そのガラスが無くなったらどうするかしら?手が届く距離に来てしまったらどうかしら?」

パチュリーが話すのならと、使い魔は聞く事に専念する事にした。ここは図書館だ。後でいくらでも調べられる。

「欲のある者ならば間違いなく手を伸ばすわ。だってそれは、毎回毎日毎月毎年ずっと焦がれていた、目的の品なのだから」
「・・・・・・」
「今回の場合、飾られていたのはアリス。ガラスは、霊夢の心の壁」

パチュリーはだんだんと饒舌になってきた。こうなったら誰にも止められない。

「霊夢は、自分でもわからないうちにアリスに憧れていた。あの人形に抱いていたのと、同じ憧れ。でも、やはり人形は人形でしかないの。その点アリスは人形とは違う。ちゃんと生きて、そこに存在している。そんな彼女が、自分に近づいてきた」

パチュリーは紅茶を一口飲む。
ダージリンの独特の苦味が、口をさらに滑らかにした。

「憧れの王女様が、手が届く位置に来てしまった。憧れになれないのなら、憧れが欲しくなる。手に入れたくて我慢できなくなる。その王女様の全てを自分のものにしたいっていう独占欲が生まれる」


「その独占欲こそが、恋なのよ」


使い魔は、結構真剣に聞いていた。
なるほど、理解できなくもない。
でも、一つわからないことがある。

「霊夢さんの心の壁は、どうして消えたのですか?」
「・・・ここからは私個人の考えなんだけれど」

パチュリーは一言念を押してから、再び語りだす。

「霊夢はね、アリスが手に入らないものだと思っていたのよ。だから、無意識に壁を作っていた。そんななかで、アリスは自分から霊夢に近づいた」

言いながら、ニヤリと笑った。

「さらに私が、霊夢にちょっとした勘違いをプレゼントしたのよ。霊夢はまんまと『アリスのことが好きかもしれない』って思い込んだわ。」

ふむふむと、使い魔は相槌をうつ。

「好きかもしれない相手が、近づいてきた。手に入る位置にきたことを霊夢が自覚した。その自覚こそが、壁を消したのよ。壁がなくなった霊夢には、独占欲が芽生えたの。少しづつ、少しづつね」

パチュリーは得意げに話ながら、水晶の変化に気がついた。
霊夢が誰かと会ったようだ。
遠見の視点を少し変える。

写ったのは、魔理沙だった。

「さあて、恋の魔法使いの登場よ」





「霊夢!!」

森を飛んでいると、友人の魔理沙が声をかけてきた。
いや、呼び止めたと言ったほうがいいだろうか。

「なによ。今急いでいるんだけど」
「・・・・・・」

なんだろう。
魔理沙がこんな、苦しい顔をするなんて。
常に笑っている、笑顔の彼女しか見ていなかった私は、言い知れぬ不安感に襲われた。

「・・・用がないなら行くわよ?」
「いや!・・・用は、あるんだ」

どうも様子がおかしい。
挙動不審だし、どうも落ち着かない。
まるで、何かに追い詰められているような・・・

「・・・実はな」
じっくり30秒ほどしてから、ようやく魔理沙は重い口を開いた。



「アリスが・・・魔界に帰った」



   え?



「置手紙があって、そう書いてあったんだ。もう、家はもぬけの殻だった」



  な

 

 なに  



      を




「―――――っっなによそれ!!!!」



頭が一瞬で沸点に達した。
もう、魔理沙は見えない。
景色も、空も太陽も見えない。
ただ、アリスの家の方向だけを見る。
どこまでも続く針葉樹林しか見えない。

私は、ただ飛んでいる。
それしか今はわからなかった。



なによ。なんなのよ。

ようやく私が・・・
やっと、手が届くところまで来てくれたと思ったのに!!!
いなくなっちゃう気?
私を置いて?

冗談じゃないわよ!!

もう、寒いのは・・・絶対にイヤ!!!





魔理沙は、全力で飛んでいく霊夢を見送った。
すこし、ニヤリと顔を歪めて。


「魔理沙・・・」


いつからいたのか、紫が後ろから声をかけてきた。
魔理沙は振り返らずに、結果のみを報告する。


「紫。確かに約束は守ったぜ。さあ、魔道書をよこしな」






風が邪魔だ。
向かい風で、速く飛べない。

鳥が邪魔だ。
群れを避ける時間が惜しい。


もう消えないで!
ようやく気付いたのに!
やっとわかったのに!

何も・・・何も言えないまま終わりなんてイヤだ!!!


森の一角にアリスの家が見えてきた。
もう、すぐそこだ。


アリス・・・

アリス・・・

アリス

アリス

アリス!

アリス!!




「アリスぅ!!!」


「あれ、霊夢?」


「へ?」



玄関を見ていた頭が、ぐるりと右を向く。
そこには一瞬だが、確かにアリスが見えて・・・・・・


「あ、アリズグふぅうぐ!!?」

ゴガンという大きな音を轟かせて、私は玄関に激突した。







「ふざけないで・・・」

紫は怒りを隠さない。
魔理沙はふてぶてしさを隠さない。

「ふざけてなんかいないぜ?今からアリスに手紙を渡してくる。これで、契約成立だろ?」

悪気のかけらも無く言い張る魔理沙を、よりいっそう強くにらみつけて、紫は非難する。

「私は、アリスの方から行くようにと言ったはずだけど?」
「そうだったか?お前の言葉は音速が遅すぎて、私の耳に届かなかったみたいだな」



だが、魔理沙は怯むことなく返す。
さっきまでの、欲に眩んだ彼女はもういなかった。


「・・・どうして裏切ったの?」

紫の言葉を聞くや否や、魔理沙は
「・・・・・・くっ・・・くっくっふふはは、ははははっはっはっは!」
声高らかに笑い出した。

「はははっはははははは!!そんなこともわからないのかよ、紫ぃ!」

慎ましやかな胸をドンと叩き、声を大にして言い放った。

「この恋の魔法使い様ともあろうものが、目の前の恋をぶち壊すような真似をするとでも思ったか!?」

紫の表情は、まるで苦虫を噛み潰したかのように険しくなった。
自らの優勢を確信した魔理沙は、ここぞとばかりに紫を攻め立てる。

「そう、私は恋の魔法使い!自分の恋だろうと、他人の恋だろうと、私に成就させられないものはないぜ!!」
「・・・・・・」
「アリスと霊夢を離れさせようとしたみたいだが、失敗だったな!もう二人は、離れられないところまで来ちまったんだろう!?」
「・・・!」

紫はギリッと歯噛みをする。
紫の表情を見て、魔理沙の背には冷たいものが走った。
だが、攻撃の手は緩めない。


「そもそもお前だって、引き裂くことが最善だとは思ってないんじゃないのか!?だから、こうやって回りくどく邪魔をする!後ろめたいところがあるから、おまえ自身が止めるに止められないんだろ!?」


「っ・・・!わかったような口を!」

「わかってるんだよ!お前だって本当は、霊夢の変化が嬉しいんだろ!?」

「なんでそうなるのかしら!ここで裂くことこそが、あの子の幸せに繋がるのよ!今は少しつらいかもしれないけど、それも一瞬で終わる!!一生痛み続けたり、一生苦しみ続けるよりはずっとましなのよ!!」

紫も負けじと言い返す。
だが、どれだけ怒鳴っても、覇気が伝わってこない。

「はっ!何を心配しているのか知らないが、霊夢はそんなに弱っちく無いぜ!」

「あなたに何がわかるって言うのよ!」

「わかるさ!!!!」


魔理沙は高らかに叫ぶと、会心の笑みを浮かべた。
これこそが、恋の魔法使いの真骨頂とでも言うかのように。



「恋する乙女っていうのはな・・・この世界で最強の存在なんだぜ!!」







「落ち着いたかしら?」
「ええ、もう大丈夫・・・あいたたた」
「駄目じゃないのよ・・・」

衝突した私は今、アリスの部屋で手当てを受けている。
勢いよくぶつかったが大事には至ることなく、大きなたんこぶ一つですんだのは奇跡的だった。
人形達が、やれ包帯だ やれ消毒だとおおわらわだ。

「・・・で、何を慌てていたのよ。あなたから来るのも初めてだし」

どうやら私は魔理沙に騙されたみたいだ。この間の仕返しだろうか?だとしたら、逆恨みもいいところだ。
騙されたことを言うのは私のプライドが許さないので、用件だけを伝えることにした。


「・・・アリスに、どうしても伝えたいことがあったからきたのよ」
「私に?」
「そうよ。大切なことだから、最後まで聞いてくれる?」

出来るだけ真摯に、フェアに、正々堂々と伝えたい。
そう思った。

「・・・もちろん、いいわよ。聞いてあげる」

調度手当ても終わったらしく、アリスは私の正面の椅子に腰掛けた。
人形達は棚に戻って、動いているのは私とアリスの二人だけ。
緊張は否応なしに高まっていく。

「・・・私はね、アリスに憧れていたの。アリスは、私に無いものを全部持っていて、それが羨ましかった」

少し面食らったようだが、真剣に聞いてくれている。
それが嬉しい。
この瞬間、一言一言を噛みしめて、受け止めてくれているのが嬉しい。


「でもね、いつの間にか“羨ましい”じゃなくなっていたの。もっと近くて、もっと高くて、もっと深いものに変わっていた」

アリスは、何も言わない。
私は続ける。

「私は今の関係も好き。だけど、この気持ちを隠しておくことはできないの。ようやく掴めるところに来てくれたのだから、離したくないの」

心臓が、高鳴る。
手に汗がにじむ。
ぶつけた頭がガンガン響く。
包帯巻かれた状態でいうなんて、情けないわね。
ああもう、手が震えるわ。
あと少しじゃないの、がんばるのよ、私。

「・・・・・・・・・」

これを言ったら、もう戻れない。
楽しくお茶をしていた関係には、多分もう戻れない。
これ以上深くなるか、離れてしまうか。
このどちらかだけ。

怖い。
拒まれたら、私はどうなってしまうのだろう。
もう、この暖かさは私にとって麻薬。
無くなったら、発狂してもおかしくないんじゃないか。
誇張でもなんでもなく、そう思う。


でも、でもね。

伝えずに終わってしまうことのほうが、もっともっと怖いから。



今ならまだ戻れると、弱い私が囁く

また、「博麗」に縛られる日々にもどれと、誘う。

だって、それが今までの私。

それが一番簡単だったでしょう?



冗談じゃない。

だってもう、気付いてしまった。
だってもう、知ってしまった。

今戻ったら、私は間違いなく凍え死ぬ。
我慢など、もう出来るわけがない。


「私・・・は・・・」


そうだ、私は自由になるんだ。
今ここで、「博麗の巫女」としての自分を殺して、
変わりに生まれるのは、新しい自分。



「私、博麗霊夢は・・・アリス・・・マーガト・・・ロイドが・・・・・・」


今日は私の生まれる日。
ただの「霊夢」の誕生日。




「――――!!」
























「ハッピーバースデー」

どこかの魔女が、そう呟いた。






FIN
長いです。二分割しようか迷いましたが、ドカンと載せてみました。
創想話に投稿するのにも慣れて(?)きたので、PCの奥深くにしまいこまれていた処女作を引っ張り出してきました。
ただでさえ文章力構成力が無いのに、この頃のはそれが激しいです。如実に現れています。ああ酷い。

マリアリって、接点がたくさんあるじゃないですか。
お互い魔女だったり、同じ森に住んでいたり、異変を一緒に解決したり。
パチュアリ、パチュマリも、魔女という接点から、いくらでも話が広がると思うのです。
じゃあ、レイアリってどうして生まれるのだろう。特に、霊夢がアリスに惹かれるとしたら、一体どんなところにだろう。それを自分なりに考えたらこうなりました。

私の考えは、全て作中で言われています。
言わせすぎて、ちょっと小説としてはどうなのか・・・という感じになった気がしますが;

ともかく、レイアリはいいものです。これからもレイアリでがんばりたいものです。
ほむら
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コメント



0.6950簡易評価
2.90名前が無い程度の能力削除
>>霊夢がアリスに惹かれるとしたら、一体どんなところにだろう

私もよくそれを考えますね。
私の中ではアリスはむしろ今作の霊夢と同じような境遇というか、似た者同士惹かれ合うようなことを考えたりしていたのですが(アリスの場合は博麗の掟というより「死と孤独」でしょうか。考察的に)
でもこういう霊夢の持っていない幸せや部分を持っているアリスというのも良いものだと思いました。
レイアリがシリアスになりやすいのはそれぞれが持つ暗い部分の駆け引きこそが魅力だからだと思います。
一つのレイアリの形、素晴らしかったです。
13.60削除
誤字報告
>ほおって置かなかっただろう
放って置かなかっただろう

書きたいことを書ききったということで、氏の考えなどがよくわかるお話でした。
若干、違和感もありましたがこういった巫女ではなく人間としての霊夢もいいものですね。
気になった点として、お話の展開がやや力任せであったところや、また想像の余地を残した終わり方でしたがここまで書いているのであればその後の成り行きも是非書いて欲しかったです。
しかし、先に先にと読み進みたくなる構成で一気に読むことができました。素敵なお話をありがとうございます。
15.90名前が無い程度の能力削除
現実的に考えて、人間には全てに対して中立である、なんて無理ですよね。
そして偏りの結果、紫が危惧していたような未来が想像できてしまうのも、
シリアスな展開になる理由の1つかもしれませんね。

魔理沙のかっこよさ、パチュリーの魔女っぽさ?もすごく良かったです。
17.100名前が無い程度の能力削除
素敵な話をありがとうございます。
出来れば後日談やアリス視点の話を読んでみたいです。
もっと広がれ、レイアリの輪!!
18.100無休削除
とても良い霊アリを読んだ

届かない憧れが届く恋に変わる所や母親な紫、魔女として生き生きしているパチュリーなど良かった。

この後の展開や後日談があればなーと期待してたりします。
20.100名前が無い程度の能力削除
とても良かった。
28.100名前が無い程度の能力削除
これは…いつか私が夢見たレイアリそのもの…!二人について語ると長くなるので他の面子をば…
パチェが一々かっこいいなぁ。特に最後。女として大先輩って感じがして良い。
逆に紫は…ちょっとへちょい?心配になるのは分るけど。今回の貧乏籤?
魔理沙はまさに魔理沙。いい意味でも悪意味でもぶれない

とりあえず二人の関係についてはハッピーエンドで終わりましたが、これからが大変そうですね。続きが読んでみたいなぁ
重めの問題はなにも解決して無いも同然ですし…
でもこの二人なら乗り越えられると信じましょう。魔女組も協力してくれそうだしw

素敵な御話有難うございました!次も期待してます
35.100名前が無い程度の能力削除
久しぶりにレイアリものを読みましたが違和感なくスラスラ読めました。
霊夢の思いの遷移がじっくりと描写されていて最後の方では霊夢がんばれーと
応援しながら読んじゃいましたよ。
36.100名前が無い程度の能力削除
凄く良いレイアリでした。
この形いいなぁ。

魔理沙やパチェもカッコイイし
読んでて凄く楽しかったです。

皆さん言ってるように、続きや後日談を読んでみたいです。
40.90名前が無い程度の能力削除
やっぱりビターな結末かなあと思っていたらいいほうに裏切られました。
41.100名前が無い程度の能力削除
とても良かったです。悩む霊夢、萌えるアリス、良い相方の魔理沙、母ゆかりん。
丁寧に描かれた霊夢の葛藤がびしびしと伝わってきました。
霊夢がんばれ、超がんばれ。
そして保護者というか母として進んで手を汚そうとする紫が燃え…!
しかし本当にアリスは三国、いや幻想郷一のお嫁さんだ、霊夢の。

アリスや魔理沙、紫はその時その時に何を思っていたんだろう。
各視点の話が読めたら良いなと呟いてみる。
42.100名前が無い程度の能力削除
これはいいレイアリ
このあと前作の外道戦記に続くんですね
……いや、ないない、それはないと信じたいw
47.100名前が無い程度の能力削除
てめぇーっ!!・・・てめぇーっ!!!
50.無評価ほむら削除
コメント返しになります。誤字脱字も若干修正いたしました。

>>2様
何故か私は、不幸なアリスというものを、寿命差以外で考え付きません。不思議ミステリー。
ですが、似たもの同士というのはかなり共感できます。
>レイアリがシリアスになりやすいのはそれぞれが持つ暗い部分の駆け引きこそが魅力だから
これこそがレイアリの真骨頂ですね。
でも、だからこそいいじゃない。ハッピーエンドでもいいじゃない。

>>あ様
誤字報告、ありがとうございます!
構成力の無さ→話の展開はパワーだZE☆ の悪い癖が直りませんorz ああ、もっと上達したい。
私の中では、この話は「霊夢がアリスに惹かれ、気付き、告白する」というところで完結してしまっています。
霊夢の告白に、アリスがなんて返すのか・・・その情景が思い浮かばなかったのも要因の一つです。
お褒めいただき、光栄ですとも。

>>15様
無理でも、やらねばならない。
これこそが呪縛なのかと、書いていて確認しました。
パッチェさんは、私のなかではこんな感じです。
魔女って、かっこいいものじゃありませんかね? え?そう感じるのは私だけ?

>>17様
お褒めの言葉、ありがとうございます!
感謝のメールを送れない、チキンな私orz コメントで失礼しますw
もっと広がれ、レイアリの輪!!

>>無休様
この作品の紫とパチュリーには結構思い入れがあるので、そう言っていただけると嬉しいです。
↑に書いたように、私の中でこの作品は完結です。
ですが、アリス視点などは面白いかもと思いました。
私のなかで妄想が形になったら、またお目汚しするかもしれません。

>>20様
最高の賛辞、ありがとうございます!

>>28様
>いつか私が夢見たレイアリそのもの
そんなこと言っちゃダメです。きっと、もっともっと素晴らしいレイアリが私たちを待っています。
魔理沙はこんなもんでしょう。というか、これ以外が魔理沙だと思えないですw
今後を考えると、苦難の方が多いのは明らかですが、きっとお母さんゆかりんがスキマパワーで何とかしてくれると期待しています(マテ
次も気合入れてがんばらせていただきます!

>>37様
違和感なくっていう感想は、構成力に悩んでいる私には至高の賛辞です!
やっぱり霊夢は、つい応援しちゃうくらいの乙女っぷりがいいと思うのですが、どうでしょう?

>>38様
良いといわれて、やる気が心に満ちていますw単純だなぁ。
続きや後日談・・・書くかわかりません。
書くとしても、残り二つの話を〆てからになりそうです。
ああ、不幸物の難産辛いなぁorz

>>42様
意地でもハッピーエンドにしようと思っていました。
レイアリはいいものだけれど、ちょっと不幸が多すぎる。

>>43様
霊夢がんばれ、超がんばれ。
アリス総受けで世界平和だと思っています。はい。でも最近はレイアリは原点で固定ですw
あなたのコメントで、想像力がかきたてられたと言わざるをえない。
その呟き、いつになるかはわかりませんが、形に・・・できればいいなぁ。

>>44様
・・・これがアレに繋がると想像したら、アリスに告白を拒んで欲しくなったのはなぜでしょうw
アレは別次元のお話・・・だよね?繋がらないよね?確証はもてません。

>>49様
ひぃぃ(((゜д゜;)))
お許しを!変態巫女さん早めに書き上げるのでお許しを!(マテ
51.100名前が無い程度の能力削除
良い話だったな~とか思ってたら外道戦記の人かよww
※44見るまで気付かなかった。
いや、あれも楽しませてもらいましたがね。
これからあれにつながるとしたら今までの反動ってことかなぁとか思ったり。

霊アリは大好きなので、面白い話を読ませていただきありがとうございました。
53.100名前が無い程度の能力削除
霊夢は平等であるが故に孤独っていうのは凄く共感できるとか、
アリスと霊夢は良く似てるとこがあるとか、和風黒髪美少女と西洋金髪美少女の組み合わせは良く映えるとか、
語りたい事は山ほどありますが、ただ一つに絞るなら、

  レ  イ  ア  リ  万  歳  !  !
54.100名前が無い程度の能力削除
私はレイアリが大好きです。このお話が大好きです。
56.100名前が無い程度の能力削除
あぁもうちくしょうめww
確かに霊夢がアリスに惹かれる理由ってのは肝ですよね
それにしても魔理沙、かっけーなおい!!

いいものを見させてもらいました。レイアリは原点!!
57.100名前が無い程度の能力削除
いいレイアリをありがとうございます!
58.100謳魚削除
後日談が、見たいです(キリッ)

駄目ですかそうですか。

霊アリってすんばらすぃ。

因みに私の中で『ド』マイナージャスティスは霊レティとか藍レミとか空ゆかやら萃勇衣等です。有り得ませんね(爽やかに言い切るな)
62.100名前が無い程度の能力削除
久々にレイアリを読みました。違和感なく、とても面白かったです。
好きになる過程って大事ですよね。
63.100奇声を発する程度の能力削除
言える事は一つだけ…
レイアリ最高!!!!!
69.100a-削除
霊夢の心の機微がひしひしと伝わってきて、一体どうなってしまうのか、最後までドキドキしながら読ませていただきました。ほんと・・・レイアリは素晴らしいものですね。というか、レイアリを求めている人って、実はかなり大勢存在しているんじゃないでしょうか!?!
とりあえず、ほむらさんのレイアリが読めて幸せです!!!これからも頑張ってください!!
71.無評価ほむら削除
引き続きコメ返しになります。本当、ありがとうございます!

>>53様
はい、ごめんなさい、私なんです。
あんな変態を生み出してしまってごめんなさい。
そうか、今まで押さえつけていた分、積極的に・・・・・・なりすぎな気がしますorz

>>55様
感想全てに受け答えしてもいいのですが、あえてこれでいきましょう。

 レ イ ア リ 万 歳 !

>>56様
私もレイアリが大好きです。そういってもらえて感激です!

>>58様
ひたすらにその肝を追い続けたのが、今作かと思います。
魔理沙はかっこいいのも好きですが、個人的にはヘタレなほうがいいという(マテ
レイアリは原点!!

>>59様
そういってもらえて、こちらが感謝したいですよ!

>>謳魚様
みんなー!後日談がーみたいのかー!?
・・・・・・ここまでいわれちゃうと、つい考え始める自分がいますw
まあ、できても一番後回しですが。

霊レティは聞いたことあるけど、藍レミに空ゆかだと・・・?
私は今、妹にアリ萃を書けと脅迫されています。
接点無えええぇぇぇぇーーーー!!!orz

>>61様
こういう、描写関連はまだまだ未熟だと思っています。
素直に嬉しい!でも、もっといい描写を書いて、もっと読み込んでもらえるようになれたらと思います。
アリスかっこいいよアリス。

>>69様
マイナーカプですが、違和感無くてよかったw
恋は過程です。愛は終着点です。

>>奇声を発する程度の能力様
全くです。レイアリは最高です!
・・・先ほど、創想話のタグ検索で「レイアリ」で調べてみました。
私含めて三名しか書いておらず、小説数は私含めてまだ4つorz(外道戦記は除く)
もっと普及すればいいと思います!

>>a-様
最古のカップリングですし、好きな人はいるはずなんです。
・・・・・・いるはずなんです・・・ッ!!
幸せといわれて幸せです!頑張りますとも、ええ。
72.無評価謳魚削除
二回目失礼致します。
アリ萃は昔々ねっちょりしそうなWikiに一つだけSSが有りましたよ。

萃夢想を軸にしていて要約するとアリっさんが萃香さんをいただいちゃう凄く好みな御話でしたが今はもう天に召されたと思います。

…………フラ様の前でちゅっちゅする『美こあ』とか、四つのたわわな果実が終始メインな『ゆか×琳』とか凄いSSが有ったのに消えちゃうなんてー。
78.100名前が無い程度の能力削除
とても素晴らしい、やはりレイアリはいいものだ。
コレは文句なくこの点数です
80.50名前が無い程度の能力削除
霊夢がこうなるとはちょっと想像できないな。
レイアリフィルターで自分の目が曇ったのかもしれないけど。
ハッピーエンドではないあたりが好きです。
84.100名前が無い程度の能力削除
全然ほのぼのじゃねーよ
そうだな・・・
表現するとすれば神かな
86.100名前が無い程度の能力削除
珍しいタイプの霊夢でしたが違和感なく読めました。
霊夢の心の動きがしっかりと書かれていて良かったです。
あと、魔理沙がカッコ良かったです。
あれは、すごく魔理沙らしいなぁ、なんて思いました。
93.100名前が無い程度の能力削除
語るに及ばず!
97.100たぁ削除
なぜ…、なぜ最後の言葉を書かなかった…。

悶絶して死にそうなんだが…。レイアリが俺のジャスティス
101.100名前が無い程度の能力削除
霊夢が心に風が吹いてるときの慟哭にゾクゾクしました
自分はMだと思ってたのに、悔しいッ(ビクンビクン
何はともあれ素敵なレイアリを有難う御座いました
106.100名前が無い程度の能力削除
なんだ、ただの神か
二人の未来には、簡単には幸せは訪れないかもしれないけど...私は二人の恋を応援していきたい。
レイアリ、そして作者様に幸あれ。
109.100名前が無い程度の能力削除
レイアリは俺たちの原点だっ!!!
何か良いんですよね、この二人はw
ほむらさんがレイアリの未来を素敵に色付けてくれるのをひたすらに待ってます

本編で一番結局どうなったのか知りたいのは実はコレ↓でしたww
>>ナイフに我慢できなくなった美鈴が、咲夜に決闘を申し込んだって話よ
勝てたのか?美鈴…あのパーフェクトメイドにっ……!!
113.100sk削除
凄い。
未知の感情に戸惑う様を丁重に書いてるなぁ…(´-`)
ギャグ担当かと思いきや最後にかっこいいところを見せる魔理沙とか、
脇を固めるキャラクターもしっかり描かれていると思いました。
古き良きレイアリを復活させるのはほむらさんしかいない(キリッ
さぁ頭の中の妄想を全て吐き出すんだ。
117.100名前が無い程度の能力削除
レイアリあるところに私が湧く・・・
いやはや、レイアリが圧倒的に少ない今、数少ないレイアリ作者様。ありがたい限りです。
贅沢を言うならこの話、アリス視点で読んでみたいなぁ・・・
122.100名前が無い程度の能力削除
あぁ、なんだか、納得。
恋愛感情なんて些細なキッカケで生まれるもんですよね。
らしくてよかったと思います。霊夢もアリスも。
136.100名前が無い程度の能力削除
オリ設定に愛があるなぁ・・・。
キャラへの気持ちが伝わってくる作品でした。
良い作品をありがとうございます。
レイアリ良いよレイアリ!
151.100名前が無い程度の能力削除
アリス「悩みなんて無いわ!」
↑これのせいで僕のアリス像が大変な事になってしまった。
162.80名前が無い程度の能力削除
恋の魔法使いがいい仕事してますね。
このアリスは霊夢のことどう思ってるんだろう?
165.100名前が無い程度の能力削除
最後のどこぞの魔女の台詞がいい味出してる
172.100名前が無い程度の能力削除
うむ、100点を持って行きたまえ。
レイアリはジャスティス。
173.100クソコテに定評のある程度の能力削除
激甘SSでした^q^;
糖尿病にするつもりですかw
178.100名前が無い程度の能力削除
終わらせ方が堪らなく好き。ニクいなこんちくしょー!
179.100紅魚群削除
たしかにアリスは綺麗で可愛くて優しいから霊夢ちゃんが好きになるのも仕方ないね。まあそういう理由だけってわけでもなかったけども…。
霊夢の心理描写がとても丁寧で悶えざるを得ませんでした。魔理沙にせよ紫にせよ、別に悪気があるわけでもないって言うね。
ハッピーエンドにも見えつつも紫が危惧していたことが起こらないとも限らない。でも、アリスちゃんならきっと、霊夢を幸せにしてくれると信じています。
181.100非現実世界に棲む者削除
素晴らしいレイアリでした。
惜しむらくはせめてアリスの返事だけでも書いてほしかったという、切な願いです。
魔理沙、良い役回りをしてくれますね。流石は恋の魔法使い!
とても良い作品でした。
185.無評価名前が無い程度の能力削除
途中で今回ずっとこんな役回りか!?と言いながら最後に美味しいところを持っていく魔理沙さんぱないっす。

それにしても自分はパチュアリが本命なのにレイアリに素晴らしい作品がいっぱいあって困る。
お互いの内面を引き出す絶妙な組み合わせなんだろうなぁ。
186.無評価名前が無い程度の能力削除
途中で今回ずっとこんな役回りか!?と言いながら最後に美味しいところを持っていく魔理沙さんぱないっす。

それにしても自分はパチュアリが本命なのにレイアリに素晴らしい作品がいっぱいあって困る。
お互いの内面を引き出す絶妙な組み合わせなんだろうなぁ。
189.100嘘っ子大好き削除
レイアリ大好きです。応援しています。