Coolier - 新生・東方創想話

蓬莱山輝夜は夢を見る

2009/08/04 02:24:02
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 須臾――しばらくの間









 不可思議ほどの須臾を集めて繋げて、永遠とする。
 それが私の永遠。
 須臾を生き続ける?






 須臾は平行に進んでいることが確認されています。







 待っていると、彼方から、黒い黒い、夜のような長い髪をした女が現れた。
「ごきげんよう、私」
「そちらこそ、私」
 それからも待っていれば、それは続々と集まって来た。
「お久しぶり私」
「まったくね私達」
 数え切れないはずなのに、全員を知覚している。
「さて、報告を」
 切り出したのは誰だ?



「私の須臾はエントロピーの果てに消滅したわ」
「それは残念ね」
「世界は無常だわ」
「全くね、それで私の須臾はお終い」
「終わり?」
「終わったの?」
「肉体も魂も無くなったわ、何もかも」
「それはよかった」
「また私は終わった」
「ええ、また須臾は永遠となった。さようなら、私」




「私の須臾は、肉体を失って意識の集合体になった」
「陳腐な結末ね」
「まだ終わってはいないわよ」
「それはお気の毒」
「なに、しばらくの間よ」
「ええ、しばらくだわ」
「永遠にね」





「また人に怨まれた」
「我が侭ばかりだからね」
「まったくだわ」
「変わらないわね」
「私だもの」




「月を追い出されたわ」
「うらやましい、私はまだ月にいるわ」
「月は消滅した」
「月こそが唯一無二だわ」
「月なんて最初から無いわ」
「月?」
「月」
「その定義を失った私は本当に私なの?」
「私よ。私がいちばんよくわかっているでしょう」
「どう生まれても、きっと私は私」
「私の須臾」
「私の永遠」
「永遠の中の須臾よ」





「今回も多くの須臾が終わった」
「それでも永遠は終わらない」
「私の元が終われば、きっと私達の須臾も終わる」
「元が最後に終わるとしたら?」
「意識して終われるなら幸せね」
「そもそも元自体が存在するのかしら」
「どう思う、私?」
「私」
「私」
「自分が複製という自覚もなく、元だという自覚もなければ」
「それはきっと」
 全部





「終わり自体が来ないかもしれない」
「終わる須臾があることは確かよ」
「でもここに来る」
「そもそも私達は減っているの?」
「循環しているのかもね」
「恐ろしい」
「何回この話題も繰り返してきたのかしら」
「永遠よ」
「永遠ね」
「では、永遠の先があることを願って」
「ええ」
「さようなら」
「さようなら私」
「きっとまた、しばらくの間」







 何もないことと、何もかもありすぎることは、結局同じような意味なんだろう。








 おはよう。
 おはよう、――。









 重ねる罪も、また須臾の数だけ。
 罪が永遠にあるならば、罰もまた永遠なのだ。











 今夜は満月だった。
 黒い黒い、夜のような長い髪をした女は、天へ上る竹の切れ間からそれを見上げながら、しばらくの間。
 それから視線を正面へ向けた。
「こんばんわ輝夜」
 女の見る先、白い白い、灰のような長い髪をした女が言った。
「こんばんわ、妹紅」
 白い髪の女は、ズボンのポケットに手を突っ込んだまま。
「今夜こそお前を殺してやるわ」
 睨みつけ。
「私に永遠を与えた怨み」
「それが永遠?」
 黒い髪の女はため息をつく。
「ああ、気が狂いそうなほどのな」
 さらに視線を鋭くする白髪。
 しかし、黒髪の女はしばし考え込む。
 駄目だ。
「殺せるわけがない」
 言葉に、少し震える白髪を見つめて。
「お前に殺せるわけがない」
 挑発ではない、それは嘆きに近い声。
「お前も蓬莱人だからか?」
 言い返す言葉の強さを受けて、黒い髪の女はまた月を見る。
「そういう問題ですらないわ。私とお前は、同じ場所にすら立てていないのだから」
 ああ。
「殺せる道理がない……」
 今一度、視線を戻す。
 燃え上がるような、正面の女の顔。
「妹紅、お前が永遠だなんて、冗談ですらないわ」
 息を吐き。
「永遠はここよ」
 しばらくの間で。
「孤独はここよ」
 殺し合いは始まる。







「でも、まあ、期待してはいるわ」
 仰向けに月を望みながら、視線の先に手を翳した。
「私の須臾を終わらせられるなら、早いとこ終わらせて頂戴、藤原妹紅」
 夜風が、焼け焦げた竹の香りを運んでいく。
 目を閉じて。








「しばらくね、私」
lunatic princess
亀井
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コメント



0.750簡易評価
11.100名前が無い程度の能力削除
哲学な輝夜。

どの二次でも姫様はあんまり自分の能力発揮しませんね。
この方法を使えば擬似的にレミリアの能力使えますねw
12.80名前が無い程度の能力削除
覆水盆に帰るとかいうレベルじゃないなw

輝夜の能力は解釈が色々出来て面白いですね
13.100名前が無い程度の能力削除
これは面白い
15.70名前が無い程度の能力削除
発想は上手いと思いました。もう少しストーリー性があれば良かったかもしれません。そこに期待してこの点数で。