Coolier - 新生・東方創想話

毒を以て毒を制すとかなんとか

2009/07/11 02:03:18
最終更新
サイズ
11.44KB
ページ数
1
閲覧数
1224
評価数
3/30
POINT
1330
Rate
8.74

分類タグ

※ある意味でグロい展開かもしれません。ある意味でバカな奴らしかいません。
 ある意味で不謹慎かもしれません。ある意味でこんな幻想郷は嫌だ。








「いいか! 絶対にそれを飲むなよ!! 絶対だぞ!!」
「しつこいわねぇ。飲まないったら」
「絶対だぞ!! それを飲んでも、別にお金ががっぽり入るわけでも、生活が豊かになるわけでもないんだぞ!?」
「あんたは私をなんだと思ってるのよ」
「いいか、絶対飲むなよ!! 絶対だぞ!!」

 それだけを言い残して、魔理沙はお風呂に入りに行った。
 あいつは、私を子供かなにかと思っているのだろうか。
 そりゃあ、確かにちょっとばかり飲みたくなるような色だけども。
 確かに、今お風呂上がりでちょっと喉が渇いてるけども。
 そんな、どこぞの芸人じゃあるまいし。

 現状を把握しましょう。
 今ここは魔理沙の家で、私は先にお風呂を借りていて、今魔理沙がお風呂に入っている。
 机の上には、謎の小瓶に入った液体。
 琥珀色の綺麗な液体。
 きっと、私がお風呂に入っている間に作ったんでしょうね。
 で、これが危険だから飲むな。とすごく念を押して魔理沙はお風呂へ。

 以上。
 ふむ、どこもおかしい所はないわね。
 魔理沙は烏の行水だと有名だ。私の中で。
 もうそろそろ ゴクリ 上がってくるんじゃないかしらね。

「ふぅーいい湯だったぜ」
「ほらやっぱり。いつもいつも早いわね」
「あぁ? いいだろ別に って飲んでるじゃん!!!!!」
「え?」

 はっ!!!
 わ、私の手元に、謎の空きビンが……?

「……ど、どういう事よ、魔理沙」
「こっちが聞きてぇよ! というか11行前でゴクリとか言ってるよ!!」

 くっ……不覚だわ。
 まさか魔理沙の罠にかかってっていうの?
 あの危険だから飲むなっていうのは、とても綿密に計算されたサブリなんたら効果だというの?

「いや、完全にお前の自主的な動きだ。ったく、危険だから飲むなって言ったじゃないかよ」
「はいはいはいはい。飲みましたよ飲みました。私が悪かったです。ほら、これで満足?」
「なんでそんな上目線で謝れるか、私には不思議だぜ」

 ったく、細かいことでぐちぐちと。
 これだから魔理沙は。
 なによ、なんの効果は分からないけど、たかが液体状の薬でしょ?
 そんなに私に飲ませたくないようなものなわけ?

「はいはい、悪かった悪かった。それで、これは何の薬なの?」
「……聞いて驚くなよ」

 はいはい、そうやって話を大きくすると後でつらいのよ?

「毒薬」










「え?」
「毒薬」
「……え?」

 これ?

「毒薬」

 この空きビンの中?

「毒薬」

 私が飲んだやつ?

「毒薬」
「…………」


 あぁ、そういうことね。
 はいはい。

「……魔理沙、いくら試作品の薬が飲まれたからって、そんな嘘ゴフリ」
「うわー!!!! れ、霊夢が血ぃ吐いたぁぁぁああああああ!!!!」

 吐いたぁぁぁぁあああああああ!!!!じゃねぇええええええええええ!!!!!!!!!

「おま、これまじでゴフリ」
「うわー!! さ、さらに吐いたぁぁぁあああああ!!!!!!」
「いや、ちょ、これまじでゴフリ」
「さ、さらに吐いたぁぁぁああああああああ!!!!」
「ちょうるさゴフリ」
「うわぁぁぁあああああああああ!!!!!」


 いったん落ち着け。





「はい。というわけで、ほぼ死ぬレベルの吐血はしました」
「よかったな霊夢。私の家に輸血するための装置があって」

 もはやわざととしか思えないわ。
 なんとか点滴しつつイスに座っている私と魔理沙。

「大丈夫か? 顔色すごい青いぞ」
「とりあえず、毒薬をそうやすやすと机に置かないでほしい」
「いや、だってお前。私は危険だから飲むなってすごい念押したぞ?」
「ぐっ……」

 そう言われると、何も言えない。
 言えないけども。

「というかむしろ、なんで毒薬なんて作ったのよ。誰か殺そうとでも思ったの?」
「人聞きが悪いな。魔法の研究が失敗したらできただけだぜ」

 まじでか。
 魔法の研究まじで怖いわ。
 ちょっと失敗しただけで、致死量の吐血しちゃう毒薬ができちゃうのか。
 へー、すげー魔法使い。魔法使いすげー。

「じゃなくて」
「オブ」

 ベシリ
 と、魔理沙の頬を弱弱しくはたく。
 だけで、頭がふらっとした。あぁ、これは本格的にまずい。
毒薬ききすぎでしょ、私。

「……とりあえず、聞くわ」
「おう」
「……これは、私死ぬ流れ?」
「…………」

 ……無言が肯定。なんでしょうねこれは。
 はぁ。

「……まさか、博麗霊夢の最後がこんなものなんてね」
「……ごめん、霊夢」

 向かいのイスに座っていた魔理沙が、ぺこりと、頭を下げた。
 顔はとても真面目なものだった。

「……なんで魔理沙が謝るのよ」
「いや、これは私の不注意だ。もっと早くに処分していれば、こんなことには……」

 うつむいている魔理沙の、悔しそうな顔が見えた。
 そんな魔理沙の頭に、私はちょっと無理して、そっと手を置いた。

「……霊夢」
「……魔理沙」



「……当たり前じゃない」

 なんで魔理沙が謝るのよ。
 じゃないわよ。
 なんだか雰囲気で言っちゃったけど、どう考えてもこれ魔理沙が悪いじゃない。
これ私被害者でしょ。どう考えても。
今すぐに閻魔に引き渡したいくらいじゃない。

「なんだよ、人が感傷にひたってるときに」
「あのー、勝手に殺さないでくれますか?」
「そんな事言っても、しょうがないだろ。飲んじゃったものはよ」
「いやだから。解毒剤とかさ、ないの?」
「……お前、偶然できた失敗作の毒薬の解毒剤があると思ってんのか?」

 あ、なんか腹立つ。
 いやまぁ確かにそうなんだろうけども。
 ちょっとそれは無責任じゃないだろうか。

「と思うゴフリ」
「うわー、血ぃはいたー」
「リアクション薄くなってるし」
「その吐血は、私に罪悪感を抱かせるための意図的なものだと判断した」

 ちっ。

「まぁいいわ。それじゃあパチュリーよ。パチュリーなら分かるでしょう」
「んー、まぁ、あいつならあるいはな。でも今夜中だぜ?」
「どうせ図書館に閉じこもりっきりでしょ。いつ夜でいつ朝かなんて分かんないわよ。いくわよ」
「……その体調で飛べるか?」

 …………。




 魔理沙の箒の助手席(?)にまたがって数分。
 やってきました紅魔館。
 ぐーぐー寝てる門番は無視して、図書館へと乗り込む怪しい2人。

「邪魔するぜパチュリー」
「邪魔するなら……うお。ど、どうしたの霊夢その顔色」

 あのパチュリーに心配されるほどの顔色ってどんなのかしら。
 自分の顔が見れないのが悔やまれるわ。

「どうもしてないわよ。ただ魔理沙に毒薬飲まされただけよ」
「あー……霊夢。いくらお腹減ってたからって」
「そうじゃない」

 こいつは、私をなんだと思ってやがんだ。
 魔理沙も笑ってんなよ。
 くそう。いま点滴してなかったらこいつら張り倒してるのに。

「私より顔色悪い人なんて久しぶりに見たけども、見たところ、その毒薬の解毒剤を求めてきたのね?」
「さすがね、ご都合主義論者」
「勝手に変なキャラをつけないで」
「ある程度は合ってるだろ?」
「合ってるだろ? じゃないわよ。まったく……まぁ、こんなこともあろうかと用意はしてたけども」

 なんというご都合主義論者。
 こんな事もあろうかと。って、どういう思考したらこんな事あると思うのよ。
 まぁ、そんなパチュリーの手には、さっき飲んだのと同じ、琥珀色の液体が入った瓶があったわけでして。
 …………。

「……」
「霊夢、こういう言葉知ってるかしら?」
「……一応、聞いておくわ」
「毒をもって毒を制す」

 あ、この知識人バカだわ。
 一周回ってバカだわ。
 魔理沙なんて露骨に笑ってるじゃない。

「ブフフー。おま、パチュリー、それどうやって作ったんだよブフフー」
「なんてことはないわ。ただ、実験に失敗したらできただけよ」
「同類かよ!!!」

 うわー、幻想郷の魔法使い怖ぇー。
 これ絶対アリスの所行っても同じ展開になるじゃん。絶対。
 怖ぇー。

「ほら、霊夢。グイッと」
「グイッと。じゃないわよ。どう考えても小町のお世話になるのが早まるじゃない」
「安心しろ、博麗神社は私が責任もって見ておいてやるぜ」
「そんな心配してない」

 くそう。まさか魔法使いという人種がここまで恐ろしいものだとは。
 魔理沙なんてまだ人間のはずなのに。
もうこれ、こいつ完全に魔法使いに片足どころか両足突っ込んでるじゃない。

「……霊夢、こういう話を知ってるかしら」
「……一応、聞いておくわ」
「……はるか昔、外の世界の中国という国で、"毒手"という秘伝があってね」
「み――んめ――いしょぼうか―――ん!!!!!!」

 今自分が毒に侵されてるなんてお構いなしに、私は、パチュリーの頭をひっぱたいた。
 すんごい力でひっぱたいた。
 音で表すとしたら、   ゴスッ   くらいの。

「くっ……や、やるわね霊夢」
「やるわね。じゃないわよ。ははーん、あんたさてはバカね? いや、バカでしょ? 違うわ、バカだわ」
「落ち着け霊夢。取り乱すな」

 これが取り乱さずにおれるか。
 というか、どちらかと言えば魔理沙の方がひっぱたきたい。
 四六時中ひっぱたきたい。
 もう親でも顔の見分けがつかないくらいにひっぱたきたい。

「そんなにはしゃぐとまた」
「はしゃいでなんてゴフリ」
「ほら吐いた」

 さも日常みたいに言うな。
 と言いつつも、すでに慣れちゃってる自分が怖いわ。

 乙女のたしなみとして、口元をぬぐいつつも。
 再びパチュリーに対峙する。

「……一応、聞いておくわ。パチュリー、これは、本当に飲めば治るのね」
「えぇ。自信を持って言えるわ」
「それは私も保障するぜ霊夢。こいつは、やる時はやるやつだ」

 ……正直、そういう保障ってあまり安心できないのだけども。
 だって少なくとも、あの毒薬は失敗作なわけで。
やれてないじゃん。やれてないじゃん。

「……あーもうどうでもいいか。どうせ死ぬんだ。それが早まるか早まらないかだけよね」
「おっと、なにやら霊夢からすごく刹那的な発言が」
「自分を見失わないで霊夢」

 こいつらに飲ませたい。

 …ええい、ままよ!!!


 ゴクリ



「…………」
「…………」
「…………」


 …………ん?
 なんだか、体調が……。

「おぉ!! 霊夢の顔色がみるみる!!」
「あ、なんだかちょっとスッキリしたと言うか、何と言うか」
「ほら見なさい。私に間違いはなかったでしょ?」

 少なくとも、さっきみたいな体調の悪いさは感じないわね。
 ちょっと不思議理論だけども、確かに効果はあるみたいね。

「ごめんねパチュリー。私あなたをちょっと誤解してたわ」
「いいのよ。こうやって霊夢が元気になってくれれば」
「パチュリー……」
「いやぁ、よかったよかった」

 ……なんだか、魔理沙が関係ないような顔して騒いでるけども。
 とりあえずは、死期は去ったようね。
 もうこの点滴もいらないわね。

「まったく、魔理沙のせいで酷い目に合ったわ」
「おいおい、だから飲んだのはお前の責任だろ?」
「そうだけども。だからそもそもあそこにゴブリ」









「……ゴフッ」
「う、うわぁぁぁああああああああ!!!!! れ、霊夢がすっごい吐血したぁぁあああああああああ!!!!!
 やっぱりみるみる顔色が悪くなったのは気のせいじゃなかったんだぁぁああああ!!!!」

 いや、言えよそれは。
 言えよそこはおい。

「な……っ! ば、馬鹿な!!」

 馬鹿な!! じゃねぇよ知識人。
 おい知識人。

「……ねぇ、霊夢。こういう話しってるかしら」
「……一応、聞いておくゴブリ」
「ひじが痛かったら、ひざをそれ以上の強さで痛めつければひじの痛みは無くなる」
「…………ゴブリ」
「うわぁぁあああああああ!!! 霊夢がツッコミすら放棄して吐血したぁぁぁああああああああ!!!!!!」


 薄れていく意識の中で、私はパチュリーと魔理沙の会話を聞いた。

「つまりは、魔理沙製毒薬以上の毒性の毒薬を飲ませれば、魔理沙の毒薬の効果は無くなるのよ」
「あ、なるほど。すげぇな知識人」

 もう知識人とか名乗るの辞めちまえよ。







 意識が戻ると、そこはアリスの家だった。
 もうこの時点で嫌な予感しかしない。

「あら霊夢。やっと意識が戻ったのね」
「……あれ、体が、軽い?」
「魔理沙の毒薬も、パチュリーの毒薬も、抜け切ったわよ」
「……次はアリスの毒薬」
「あなたね。私をバカにしないでよ」

 むくりと体を起してみると、ベットの傍らにはアリスだけじゃなく、パチュリーと魔理沙もいた。
 2人ともどこか心配そうな顔だった。
 今更すぎるだろ。
 って、ん? なんか違和感が……。

「……ねぇ霊夢」
「……なによ、アリス」
「こういう話しってるかしら?」
「……一応、聞いておくわ」

 アリスは、少しだけ言いにくそうな顔をした後に。
 冷静に。きわめて冷静に話を切り出した。

「……はるか昔、外の世界の中国という国で、"毒手"という秘伝があってね」
「やっぱり嫌な予感しかしねぇ!!!!!」

 バッと、私は自分の肌を見た。






 私の目がおかしくなってないのならば。
 これは肌色なんかじゃない。
 ほら、キュウリとかさ、キャベツとかさ、エメラルドとか?
 そういう色してる。
 私、絶句

「…………」
「すまねぇ、霊夢」
「これは私の不注意よ」
「もっと早くに処理していれば、こんなことには……」

 まったくよ。




 はい、こうして外の世界でははるか昔に"毒手"という秘伝が伝わっていて、
 はるか現在の幻想郷では"毒霊夢"という秘伝が伝わりましたとさ。
 めでたしめでたし。


 というかもう妖怪じゃないこれ。妖怪。
 なにがめでたいってのよ。
すごく久し振りの投稿が、こんな頭が悪いものでいいのだろうか。
だなんて思わない。


お久しぶりな人はお久しぶりです。そうでない人ははじめまして。
こんなSSしか書いてない少年です。

なんで魔理沙は烏の行水なのを知ってるのか。とか、なんで特に説明もなく霊夢はお泊りする気満々なのか。とか。
それを説明するってのは野暮ですよね。えぇ。
少年
http://koso-ado.hp.infoseek.co.jp/index.html
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.1100簡易評価
2.70名前が無い程度の能力削除
この後遺症で風神録の霊夢はあんな肌の色してたのか……
12.60名前が無い程度の能力削除
おお、グロいグロい……

すんません、僕頭悪いんで何で当然のように霊夢がお泊りする気満々だったのかわかりませんですので続編としてその辺の話を1から100までぜんぶ夜のことも交えて書いてくださいお願いします
18.100名前が無い程度の能力削除
もう幻想郷の魔法使いみんな魔法使いやめちまえよwww