Coolier - 新生・東方創想話

弾幕

2009/07/05 10:20:44
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「では始めようか」

今日の授業はいつもより活気に充ち溢れていた。

いつもの寺子屋では太古の歴史や信仰についてを教えている慧音がなぜか今日は全く違うことを
話そうとしている。いつも慧音の話を数分だけ聞いては寝るを繰り返していた人間たちも今日は
起きていた。

「あれ?いつもみたいに歴史のお話はしないんですか?」

一人の人間が挑発的な口調で質問してきた。慧音はそれを聞き流した。

「今日は戦闘に関する授業を行う。つまらないと思ったら出てってもいいぞ。
 外の人間達にはあまり関係ないからな」

途中退室は厳禁のはずだが今日は特別らしい。
確かに教室を見渡すと見慣れない人たちがいる。紅い長髪に緑の人民帽をかぶっている
やや背の高い女性、頭に2本の細い触角があって黒いマントのようなものを着ている少女、
そして長い耳、羽根のついた帽子をかぶっている鳥のような少女。

「実は、戦いの基礎を教えてやってほしいとある一人の人間に頼まれてな。
 最初は断ったのだがその人の話を聞いているうちに・・・不覚にも興味がわいてしまった・・・」

慧音はことのいきさつを話してくれた。

「構いませんよ。こっちの方が面白そうだ」
「そうそう。早く始めましょうよ」

外の人間たちの反応は上々である。それに今日はいつもより人数も多い。

「で、今日は弾幕の避け方を教えてくれるんですよね」

羽根のついた帽子をかぶった雀の少女が言った。

「そうだ。みんな知ってるとは思うが弾幕とは・・・」
「多数の弾丸を一斉に発射し、弾丸の幕を張ったようにすること、ですよね?」

紅い髪の中国人っぽい女性が答えた。

「そう。正確に相手を狙うことを目的とせずに確率論的に命中させる射撃法だ。つまり・・・」
「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる、ですね」

緑の髪の蛍のような少女が口をはさんだ。

「そういうことだ。最初にこの方法を使ったのは1915年、イギリス軍のヌーヴチャベルの戦いだ。
 あっちの言葉では『barrage』というらしい。相手の弾幕、まあ弾幕に限らず相手の攻撃を受けるには4 つの方法がある。美鈴、言えるか?漢字2文字だ。」

「え?え・・・と」

美鈴は焦りながらも答えた。

「!・・・避ければいいんですよね。『回避』ですか?」
「正解。危害を最小限に抑えることができるのが『回避』だ。最も簡単でコストもかからない。
 しかし弾幕をすべて避けきるのはそう簡単なことではない。」

慧音は少し興奮しながら解説する。今までやったことのない内容だから
だろうか。

「実際は弾幕をうまく回避しながら攻撃するという戦い方が多いようだ
 が・・・」

確かに博麗の巫女とかの戦い方を見ているとそうだ。
常に神がかり的な身のこなしで弾幕を回避している。

「私もその戦い方が普通だと思ってました。他にもあるんですか?」
「ではリグル。2つ目の方法を漢字2字で答えてみろ」
「ええ?!・・・・・・あぅぅぅ~」

突然話を振られたので混乱した。突然最後列に座っていた白い髪の人間が笑顔で答えた。

「『防御』だろ?」
「さすがは妹紅だな。正解だ」

慧音は笑顔で説明を始めた。

「簡単な話だ。盾でもバリアーでもいい。自分の身を守ることで相手の攻撃を受け止める。
 おそらくこれが一番リスクが小さいだろう」
「でも盾もバリアーも使えなかったらどうするんですか?」

リグルが質問してきた。慧音は待ってましたと言わんばかりに答える。

「そこが問題だ。『防御』にはできる者とできない者が存在する。
 できない者は必然的に弾幕の対処方法が3つに絞られる。
 その残り2つだがなかなか思いつくのが難し  い。ミスティア、答えられるか?」
「回避しない、防御しない、・・・・・・・・・・『攻撃』?」

慧音は満面の笑みを浮かべた。

「やるじゃないか。その通りだ。『相殺』という表現の方が合ってるかもしれないがな。
 相手の弾幕をこちらも弾幕を張って打ち消しあう『相殺』。立派な対処法の一つだ」

いつもとはまるっきり違う内容を教えているはずなのによどみなく授業が進んでいる。
伊達に授業をしてきたわけではないことは分かっていたがこうもスムーズにいくものなのか。
みんな実に楽しそうに授業しているのが感じられる。

「さて、最後の1つだ。これが一番難しいが絶対に見落としてはならない方法だ。
 誰か答えられるか?」
「・・・・・・」

誰も答える気配がない。沈黙が数秒続いたのちに慧音が進めようとしたとき、
着物を着た子供が話しかけた。

「どうした阿求?」

慧音がすかさず反応した。阿求は少したじろきながらも答えた。

「・・・違うかもしれませんが、相手の弾幕を素で受け止める・・・とか?」
「それってだめじゃん。もろ喰らってるし」
「で、ですよね・・・」

阿求の発言に周りの人達は小馬鹿にしたような口調で突っ込んだ。
慧音はその対話をただ聞いていた

「結果から言うと阿求の言ったことは正解だ。4つ目の対処法『被弾』だ。」
「ダメージを受けるのが対処法なんですか?全く意味ないような気が・・・」

リグルの突っ込みに慧音はすぐ反応した。

「もちろん被弾してやられたら意味はない。
『戦いにおいて大切なのは相手の裏を如何に叩くことができるか』だ」

慧音以外の人達はみんな頭に?が浮かび上がっている。しかし阿求は理解したようだ。

「相手の放つ渾身の一撃を生身の状態で受け止め、なおかつそれでもひるまずに相手に向かって行った  ら・・・相手は驚くでしょうね」
「な、なるほど!そのスキがこちらの攻撃を当てる絶好のチャンスになるわけですね!
 でもそんな芸当をするには強い身体と精神が必要ですね。」
「相手の攻撃にも恐れずに向かっていく勇気、瞬時に相手の技の威力や
 効果を判断する洞察力、被弾してもひるまない強い肉体、
 そしてその行動を選択できる自分への信頼、一つでも欠いてはいけない高レベルの手法ですね」

阿求とミスティアの会話ですっかり全員が理解していた。慧音が話を進
めた。

「『運用の妙は一心に存す』という言葉がある。
 戦術は方式であって、それを生かすのも殺すのもその人の心にあり、という意味だ。
 今日教えたことをどう受け止め、どう活用していくかはす
 べてその者次第だ。
 私の話すべきことはさっき阿求たちにすべて言われたからな。今日の授業はここまでだ。
 ちゃんと理解できたのか?」
「はい!ありがとうございました!」

美鈴が元気に答えた。他の人たちも満足している様子だった。慧音自身
も非常に勉強になったと言って教室を後にした。



慧音が里に帰る途中、美鈴が後ろから話しかけてきた。

「今日はありがとうございました。この授業の続きを楽しみにしています。
 今度は具体的に弾幕の避け方を教えてくださいね」
「・・・これが最後だな、心底疲れた」
「ええ?またやって下さいよ」
「・・・そうだな。気が向いたらな」
「ところで、戦いの基礎を教えてやってほしいと頼まれた、って言ってましたけど、その人って・・・」
「・・・さあな。誰だったかな。忘れた」
「そんなぁ~」
たまにはこういう視点で描くのも新しくていいかなと思って書いてみました。弾幕の由来とか調べると意外といろいろ出てくるので自分自身勉強になりました。

追記 改行がおかしいので修正しました。ご指摘ありがとうございます
ブレイズ
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コメント



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2.無評価名前が無い程度の能力削除
とりあえずこの変な改行どうにかなりませんか?