Coolier - 新生・東方創想話

八意医院へようこそ! ⑤~医院

2004/11/22 02:20:05
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                    そこは 冥い世界
 
                 果てなき闇黒  明けない夜

             自らの姿も見えず  何もかもが冥き衣を纏う

               全ての存在は 優しき漆黒に抱かれ


  
                  ただ・・・深淵にまどろむ










幾多の試練に悉く敗北し
ただ悪運のみで前へ進んだ。
自らの力で為し遂げたことなど
ただの一つも無く
山河の水が 大海に到るように
無為なる流れに身を任す。








           だから これは 当然の報い

              姉さま、 僕は 
















・・・・・・トントン、トン
心地よいリズムで刻まれる音。
その音はどこか懐かしく、僕の耳朶を打ち
闇に閉ざされていた思考を呼び覚ます。



「・・・・・・う、ううん・・・」

心地よい音と、何処からとも無く漂ってくる芳しい匂いに誘われ
僕は目を開ける。
見知らぬ天井
ひなたの匂いのする暖かな布団
枕もとにキレイに置かれた背負い袋
ここは六畳ほどの小さな和室
少し開かれたふすまからは、なにかを刻むような音と
聴く者の心を和ませるような鼻歌が聴こえてくる。


 それは  どこか   姉さまを 思い出させて

   ・・・ぼくの頬を 一筋のしずくが伝う






しばらくその歌に耳を傾けていた僕の頭は
徐々にいまに到る状況を思い起こす。
そうだ、僕は姉さまの病気を治して貰うために
玄じいのヨタ話を信じて旅に出て・・・
そのお医者様・・・永琳さまの住むという医院のある竹林に、辿り着いたんだ。
そのあと、遭難して・・・ええっと・・・・・・
・・・・・・駄目だ。思い出せない。
なにかトンでもないことが在ったような気がするが、僕の頭はその忌まわしい出来事を忌避するかのように
記憶領域へのアクセスを拒絶している。

・・・・・・まぁ、いいか。思い出せない程度の記憶など、亡くとも構うまい。

それより、いまの状況を理解することが先決だ。
どうやらここはどこかの民家らしい。遭難した僕を、親切な方が救助してくれたのだろうか・・・?
ならばまず、その親切なお方に礼を言わなければなるまい・・・。
そう思い立った僕は 布団から  身を 起こそうとして









「・・・・・・。」

ひょこん、とふすまから顔を覗かせた、うさ耳の可愛い少女と目が合った。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・脳裏を駆け巡り、細胞の一片までも灼き尽くすような映像素子。    残忍な狩猟者の笑み。


肺腑を抉る、迷い無き拳。    目もくらむような絶望。   宙を浮く頼りない感覚。

 
       
       最期に網膜に焼きついた、美しい・・・スカートの中身。








なんてこと




こんな状況で、すべてを思い出してしまった自分の記憶力が恨めしい。
なにもかも忘れていれば・・・・・・せめて、最後は幸せな記憶のなかで逝けたのに・・・


自分の迂闊さを呪いながら、僕はいままですっかりその存在を忘却していた、懐に眠る『切り札』
のことも思い出した。まだ望みが全て潰えた訳ではない。僕には心強い相棒、玄じいから託された
スペルカードが在るではないか!片時も離れず僕を見守る玄じいの遺志の結晶、すべての不利を覆す
ワイルドカード。いまこそ!その真価が問われる時!さぁ、いくよ・・・・・・玄じい。




ようやく日の目を見た『スペルカード』

そのちからは出鱈目。伝承いわく




あるものはすべてを貫く光条にて、三千世界を焼き払い

あるものはすべての時を支配し、完全なる世界を現出させる 

あるものはすべての境界を操り、あらゆる現象を封じ込める



唯一つ、言える事は・・・これを喰らって無事でいられるモノなど、居ない。ということだッ・・・!
この玄じいからの札に、どのような種類の力が眠っているにしろ・・・
充分、目の前の脅威に対抗できる筈だ!!!!
僕は、我ながら惚れ惚れする程の速度で懐の札を一枚抜き放ち、相手に突きつける。



  
         「「スペルカードだッ!!!!」」
























   「・・・・・・・。」

   「・・・・・・・。」


ち、ちちち、ちゅんちゅん・・・・・・・・・
外の竹林から、平和そうな雀の鳴き声が聴こえる。
さらさらと風にそよぐ葉の音が、ささくれ立った場の雰囲気を嘲笑う。
長い、僕にとっては悠久に感じた静寂が、少女の声で打ち破られる。




「・・・・・・ぷっ、うふふふ・・・あははははははは・・・・・・」

「・・・・・・。」

札を掲げたまま固まり続ける、僕の緊張がほぐれる。
くすくす笑い続けるうさ耳に、害意は見受けられない。
気まずくなった僕は、そそくさと札をしまい、無かったことにする。
(しかし、なんで発動しなかったんだろう・・・?)
結局活躍の機会を奪われた札は、どこか寂しげな気を放っていた。
どんなに力があろうと所詮は物。僕の気のせいだろう・・・。




「あはははは・・・・・あー可笑しい・・・ぷっ、クスクスクス・・」

なおも笑い続ける少女。よくよく見ると、記憶の傷に残るあの少女とは
うさ耳という共通点を除けば、まったく別人だ。
目の前の少女は、何かの本(たしか玄じいの)で見た『ブレザー』という制服に身を包み、
腰まで届く綺麗な銀髪は、昔見た花嫁衣裳に使う絹糸よりも清楚な輝きを放つ。
なにより印象的だったのは・・・・・・その真紅の瞳。
ずっと見ているとなにやらおかしな気分になってくるようだ・・・・・・。
かぶりを振り、妄想を頭から追い出す。
そして、改めて少女に話しかける。


「・・・・・・とんだ醜態を晒し、申し訳ありません。僕の名はOO。ゆえあって八意医院の主、
 永琳さまを訪ねて参りました。ですが、途中の竹林で妖怪に襲われ・・・そこからはどうやって
 ここに来たのか分かりません。もしや、貴方がたす・・・・・・ぐぇっつ!!??」


布団から起き上がり、礼を述べるさなか、僕のお尻に激痛が走る。
たまらず僕は奇妙な格好で悶絶する。



「あ、あ~ぁ・・・まだ動いちゃだめだよ?てゐが貴方の足を掴んで引きずってきたときなんか、
 そりゃあもう、ひどい有様だったんだから・・・。血なんかどばどば出てるは、・・・の状態
 もこりゃ駄目かな?って思ったもん。師匠に言われて仕方なく・・・貴方の・・・・に座薬を
 突っ込んでおいたけど・・・完治するまではちから入れちゃ、だめよ?分かった?」




・・・気が遠くなる程の痛みの中、彼女がとんでもないことを言っていたような気がしたが、
いまは・・・それどころじゃ・・・あふぅ。







またも意識を失い、崩折れる僕。


こんどの眠りは・・・・・・永く・・なり・・・そ、う・・・・だ・・・・・・













なんか、うどんげが書きたくなったのでorz
・・・ある人物との約定により、アレを使わずにはいかなかった。
気がついたらタイトルに反し、またも永琳が・・・・・・
諸々の都合で話を区切ってしまいましたが、見捨てないでくれるとありがたいです。
しん
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