Coolier - 新生・東方創想話

幻想竹取物語

2004/11/07 08:59:13
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 鋭い、無音の、一陣の疾風。
 水面―中庭の池―に映った月が揺らめいた。
 形が崩れるが、それは刹那。元の形に戻る。
 月は、白く、淡い光を放っている…禍々しい『気』と共に。
 水面という鏡を介してもこの『気』は一向に衰えを見せない。
 むしろ、こちらのほうが、強い。


 今夜は満月だから。
 今夜も、誰かが狂うのだろう。




 それは、遠い昔。
 私がまだ、地上の人間とともに暮らしていた頃の話。
 思い出すのは、五人の人物。
 私に婚姻を申し込んできた五人。
 だが、私はその申し出を受けるわけにはいかない。
 私は月の民だから。
 だから、難題を出した。
 始めから人の力では無理な難題を。

 皇子の彼には、仏の鉢を。
 もう一人の皇子の彼には、蓬莱の玉の枝を。
 右大臣の彼には、火鼠の皮衣を
 大納言の彼には、竜の頸の玉を。
 中納言の彼には、燕の子安貝。

 ある者は資産に物を言わせ、またある者は策を巡らせた。
 けれど、結果は皆、失敗。最終的には、自分から、立場上から五人は私の元から去って行った。
 そして、私は彼らと出会う前の平穏な生活を取り戻すはずだった。…帝が私の噂を耳に入れさえしなければ。
 養父である翁の立場から、彼には難題を出すことが出来ない。
 仕方なく、私は文通の返事だけはすることにした。あと三年―永遠を手に入れた私にとっては雀の泪ほどの時間―もすれば、迎えが来て、文字通り永遠に別れられるのだから。

 そして、その別れの時。
 私は彼女と再会した。
 彼女―永琳―は私と共に地上で暮らすことを望み、同行してきた使者を裏切った。
 しかし、「ここ」に居るわけにはいかない。
 私たちは都を後にした。
 ―すべての元凶である、蓬莱の薬を残して。


 道中、いくつかの噂を耳にした。

 養父母の翁と嫗は、娘を失った悲しみに気が触れて「自分たちも月へ行く」と言い残し、月の映った湖面に身を投げた。
 蓬莱の薬が山に捨てる途中で何者かに盗まれた。
 帝が月に戦を仕掛けるつもりである。

 数々の噂を聞いても私は何も感じなかった。
 もう、終わったことだから。

 だから、私は赦さない。
 未だ「終わったこと」を引き摺るあの小娘を。
 薬を残してきた私にも責任はあるかもしれない。
 けれど、もともとはあちらが悪い。
 あの薬は捨てられるはずだったのだ。
 それをあの小娘は…



「さて、又あいつは生き残るのかしら。でも、今回の刺客は手ごわいわよ。何せ、私を倒したつわもの達だもの」
 私―輝夜―は博霊神社で一人、呟いた。
 月を眺めながら。
 口元に笑みを浮かべて。
はじめまして、俳諧という人間です。
いつも楽しく読ませていただいています。
今回、いつも読んでばりなのもなんだと思い、書いてみましたが…よく判らない雑文になってしまいました(苦笑)。
とはいえ、記念すべき(?)初作品なので、恐れ多くもここに献上させていただきます。

作中には竹取物語の設定が微妙に混ざっていたりします。設定に無い部分はそこから引用しました。
輝夜さんの登場するSSは少ないから。という理由から書いてみたものですが果たしてどうでしょうか?
最後の一文で黒さが際立ってしまった気がしますが…
ご意見等いただけると幸いです。
俳諧
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コメント



0.1130簡易評価
19.無評価名前が無い程度の能力削除
シンプルで、いい感じですね。
こういう雰囲気もいいかも。