Coolier - 新生・東方創想話

ただ強く在りたいという願い

2009/06/19 02:31:24
最終更新
サイズ
4.75KB
ページ数
1
閲覧数
1424
評価数
2/17
POINT
360
Rate
4.28

分類タグ


「貴方がここの主か」
 彼女は目の前の少女に問いかけた。
「一応ね」
 彼女の前に広がる異常な光景も、少女がここの主であるならば納得がいく。
 圧倒的な暴力の前に敗れていった者たちの成れの果て。強さを求めた者、弱きを守ろうとした者、名誉を求めた者、報酬を求めた者、それらの全てが、希望を摘み取られ、絶望を与えられ、場違いな笑みを浮かべている眼前の少女にその命を奪われて、倒れている。
 再び問いかけた。
「レミリア・スカーレットか?」
「そうだ。貴様は?」

 ──ただ強きを求めるもの。

そう呟き、吸血鬼レミリア・スカーレットへ向かって駆けた。

 レミリアの衣服は血の一滴さえも浴びていなかった。彼女の周りは文字通り血の海だというのに。ただ一点、右手の手首から下だけは真紅に染まっていた。
 走りながら、レミリアの周辺に築かれた死者たちの山を一瞥する。恐らく、全員が心臓を一撃で貫かれている。故にレミリアも十中八九同じ場所を狙ってくるはず。
 彼女は自分の間合いにレミリアを捉えた。しかしこちらから手は出さない。身体能力で劣る彼女が勝つ方法、それはレミリアの初撃の位置がほぼ特定されているのを利用して、後の先を取ること。相手が仕掛けてきた時点で初めて動く。通常なら相手が動くのを待つのだが、相手の攻撃誘う為に敢えて自ら動くことにした。間合いに入ったにもかかわらず、攻撃を仕掛けてこないことに動揺したのか、レミリアがたまらず手を出した。血に染まった右手を矢の様に尖らせて、狙うは彼女の心臓。如何に人間や妖怪を遥かに上回るスピードを以ってしても、攻撃される場所が分かっているなら、対処方法など幾らでもある。自分の心臓目掛けて突き出される紫電の如き一撃を、左の掌打で軌道を変える。身体を貫くはずだったその一撃は、彼女の右肩付近へと逸れていった。同時に左足を力強く踏み込み、十分に引き絞られた右腕を解き放ち、がら空きになった腹部にこれ以上にないぐらいのインパクトで右の掌打を叩き込んだ。
「がぁっ!?」レミリアの目が見開かれ、一瞬動きが止まった。
 この機を逃せば勝機は無いと確信した。腰を回転させ、再び右の掌打を、今度はその右腕ごと螺子のように回転させてレミリアの心臓へと放った。
 悲鳴を上げることもなく、その小さな体は後方へと吹き飛んだ。そして受け身を取らずにそのまま地面へと落下した。
 拳ではなく掌打にした理由は、体の内部にダメージを与えることができるからだ。過去に数度、吸血鬼を合間見えたことがある彼女は、外傷を負わせるよりも、内部への攻撃が有効であると知っていたからだ。
 手応えがあった。心臓を破壊までとはいかなくとも、相当のダメージは与えたはず。今までの経験上、これで立ち上がった吸血鬼は居ない。このまま放っておけば、やがて日が昇り、レミリアの身体は灰になる……はずだった。
 レミリアが立ち上がった。
「手応えは確かにあったはず……!」
「この私に一度ならず二度までも! 面白い! おい貴様。強い奴を探しているといったな。ちょうどいい仕事があるぞ」
 彼女は怪訝な顔をした。レミリアにはもう戦意はない? そうとしか取れなかった。
「確かにその通りだけど……一体どういう……」
「ここの門番をさせてやる。私を倒して名を上げようとするハンターや妖怪が多くてな。正直面倒なんだよ。騒がしいのは好きじゃないし、戦闘狂でもない。まったくどいつもこいつも……」悪態をつきながら、周りに倒れている者たちを見渡した。
「そういうセリフはまず私を倒してからにしなさい。まだ勝負は終わっていない」冷たく言い放つ。
「終わっていないだと? 思い上がるな。貴様など直ぐにでも殺せる」
「では続きを」腰を落とし、再び戦闘態勢に入る。
「こうしよう。私が今から一度だけ攻撃をする。避けてもいい、反撃してもいい、とにかく、死ななければまた相手をしてやる。もし駄目だった場合は、門番をやってもらうことにしよう。これでどうだ」
「悪くない」吸血鬼のスピードにはある程度慣れている。避けるもしくは捌くだけならそう難しいことではない。
「ハンデをやろう。私は真っ直ぐ行って、そうだな。右手で貴様の心臓を狙う。どうだシンプルだろう?」言い終えると、後方へ大きく跳躍し、距離をとった。
「……?」
「さぁ行くぞ。構えておくがいい」
 何故こちらが有利になるようなことを教えるのか理解できなかった。
「しかし、貴様はこの勝負に負ける、何故なら……」
 レミリアの姿が突如ゆらめき、掻き消えたと同時に地面が派手な音を立てて陥没した。「なっ……!」
 正に神速。目で追うことができない速さ。先ほどまでは手を抜いていたというのか。
 
 ──運命だから

 耳元でそんな声が聞こえた。

 何かが真横を通過した気がして後ろを振り返ると、そこにはレミリアが立っていた。
 レミリアが彼女の胸の部分を指差した。つられて視線を下に落とすと、ちょうど心臓のあたりの布地に小さな穴が開いていた。
 これほどまでに力の差があったことに驚きを隠せない。相手が悪かったのか。実力不足だったのか。
 視線を戻すと、レミリアは笑っていた。
「約束通り門番をやってもらう。安心しろ。強い奴なら山ほどやってくる。それと、いつでも私に挑んでもいい」
「ええ……。約束は守ります」
「あともう一つ頼んでもいいかな」
「なんです?」
「メイドも兼任してくれ」
「……」
「朝昼晩、三食つける」
「任せてください」

 少し間の抜けた会話をしながら、明るくなり始めた空の下を、紅魔館に向かって歩いていく。

「そういえば名前聞いてなかったな」
「紅 美鈴です。貴方のことは何とお呼びすれば?」
「好きなように呼べばいい」
「こんな大きいお屋敷に住んでるから、お嬢様で」

 ──宜しく頼むよ、美鈴

 ──畏まりました、お嬢様
紅魔館のメンバーはみんな過去にレミリアと戦ったことがあると思うんです。長く続けると美鈴がフルボッコにされて終わりなので、短めにしておきました。
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.310簡易評価
4.10名前が無い程度の能力削除
バトルシーンだけを切り出しただけという感じで話に中身が無い。
6.40K-999削除
>>死ななければまた相手をしてやる。もし駄目だった場合は、門番をやってもらうことにしよう。これでどうだ
 死んだら門番出来ないんじゃ……。しかも門番やることになってもいつでも私に挑んでもいい、って言ってるし。

>>メイドも兼任してくれ
普通に考えたら門番とメイドは兼任できないでしょー。絶対どちらも疎かになる。

 こういう突っ込みどころが散見されたので素直に楽しめませんでしたねー。
11.無評価名前が無い程度の能力削除
タイトルが思いっきり浮いてるなあ。
作中で「ただ強く在りたいという願い」の動機や発露が、全然示されておらず、
ただの美鈴とレミリアの出会い話にしかなってないのは、どうかと思う。