Coolier - 新生・東方創想話

人形のイロ、死神のパレット トマドイ

2009/06/03 22:36:51
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あれから一週間がたった。
今日も朝日が昇り、眠い目をこすりながらカーテンを開ける。
視界に入るのは、眩しい朝日、流れ止まぬ三途、風に揺れる彼岸花。
花言葉は「悲しい思い出」、別名は「相思華」。
そんな事を思っては、不意に考え込んでしまう。
どうして、白黒を欲しがったのか……。
なんでこんなに痛いのか……。


――――――――――――――――――――――――――

「ちょっと、待ちなさいよ、魔理沙」
白黒と交わりだしたのは幾年か前の冬の寒い日。
湖も凍りついた夜、私を白黒が家から引きずり出す。
「良いだろ、付き合ってくれたって、一人で見ても面白くないんだよ」
どうしようもなく利己的な意見。
こんな寒い日に星が見たいだなんて、迷惑極まりない。
思わずあきれ顔になるが、こんなでも私の友達に当たるらしい。
「全く……しょうがないわね……今回だけなんだから。」
思わず口が尖る。それでも白黒は笑う。
邪気も裏表もなく、素直で魅力的な笑みを私に見せる。
そして、邪気も裏表もなく、私を見てくれる。
「おう、恩にきるぜ」
そんな言葉も私に聞こえていない。
星を見に行っても、空よりも隣が気になる。
星よりも圧倒的な魅力に気づいてしまったから。
それから、白黒とは、何かにつけて一緒にいた。
キノコ狩りや魔法の開発、図書館にも一緒に通ったり。
その度に白黒は笑った。そして私は溺れていった。
笑ってもらいたいからと、白黒に尽くした。
傍から見れば道化のように尽くした。
それでも幸せだった。
淡い、「願望」で組み上げられた、積み木が崩れるまでは。
白黒に尽くすだけの人形であったとしても。


――――――――――――――――――――――――――

「おや、考え事かい?」
小町の声で私は現実へ連れ戻される私。
「なんでもないわ」、と小町に言って、朝食へと向かう。
気づけば、何でもないウソが増えた。
自分を偽ることにも慣れてしまったけど……
それで丸く収まるならいいと思えた。


――――――――――――――――――――――――――

いつも通りの朝食を終える。
小町とたわいのない事を話して、温かい朝食を頬張る。
最近は良く笑うようになった。
小町が拠り所となってくれているから。
でも、魔理沙の二の舞だと思うと、少しさびしくなった。
小町も誰かを必要として、だれかも小町を必要として。
私は小町が必要で、小町には……
解ってしまうのが嫌で慌てて白米を口にかきこんだ。
独りにはもう戻りたくなかった。


――――――――――――――――――――――――――

「今日は少し映姫様に用事があるんだ、一人でも大丈夫かい?」
朝食の後に小町がそう切り出した。
「ええ、大丈夫。人形でも縫ってるから、安心して。」
小町が上司に用事などと言うのは珍しい、嘘だとは思えない。
嘘だとしても私の反応は一緒だっただろうが。
私はニコリと笑って小町を送り出す。
小町がいない間一人で人形を作っていた。
結局小町が帰ってきたのは月が昇ってからだった。


――――――――――――――――――――――――――

今朝はやけに早く起こされた。
小町は眠い眼を擦りながら布団をたたみ
「今日はちょっと職場復帰さ。
お前さんも一緒に…って事らしい。大丈夫かい?」
なんとも気の締らない声で私に告げた。
「ええ、小町と一緒なら私は良いけど……邪魔にならない?」
私は控えめな声色で反応をうかがう。
すると、小町は一つ欠伸をして
「心配はいらないよ。大丈夫、あたいに任せときな」
そう言って、微笑んだ。
姉御肌な小町の性格は自信を錯覚に陥らせる。
本当のお姉さん。そんな感じだ。
森に引き籠っていては味わえない錯覚。
幻だとしても幸せに感じられる。
釣られる様に私も控えめな笑みを返しては
       慣れない死神の制服に袖を通してみた。
小町の物を借りたのだが、
胸の部分がやけに余り、少し恥ずかしかった。
顔を赤くする私に
「ま、見てくれはあんまり関係ないさ。
仕事内容の方が大切なのさ」
小町はそう言うと今日は仕事がおして居ると言う事もあり
朝食も早々に三途へと足を進めた。
私も遅れないように重い鎌を持ちフラフラと着いて行く。
まるでヒヨコの様だと我ながら思ってしまい
また小町に依存してしまっている自身が分かって少し怖かった。


――――――――――――――――――――――――――

「へぇ……そりゃまた難儀な死に方だ」
船頭として働く小町は仕事量は多くないものの
普段以上に饒舌な感じがした。
閻魔様はああ言うが小町は働き者なのかもしれない。
と、思えたのも三時間くらいの話だった。
わずか5人ばかりの霊魂を運んでは
彼岸花の咲き誇る花畑に二人で寝転んだ。
「小町ったら……また怒られちゃうわよ?」
私は大して心配などしていないもののそうからかってみた。
「毎度の事さね。今さら怖くなんてな―――
                   ……あれは……」
小町は何の気なしにそう告げるが人影を見つけては眉をひそめた。
「小町?なにか――――……っ!?」
私と小町の視界に飛び込んだのは黒白のとんがり帽子だった。


――――――――――――――――――――――――――

「よっ、アリス。今までどこに居たんだよ?」
黒白は空気を察することもなく笑顔を讃えて尋ねてきた。
「ぁ……ぅ……わ、私は……」
上手く喋れない。体が強張って、汗が頬を伝う。
嬉しいはずなのに、実感がない。
私の状態に気づいたのか、そうでないのか黒白は告げる
「ま、そんな事は良いんだ。一緒に帰ろうぜ?」
黒白は固まる私に手を差し伸べた。
一度切れた糸を結びなおすのは正しいのだろうか?
「また切れるのではないか?」
そんな意識が脳から剥がれない。身体が震える。
「どうしたんだよ、アリス?
       ほらっ、行こうぜ?」
黒白の手が私の細腕を掴む、このまま引かれて良いのだろうか?
抵抗の意志も無く、私の身体が引っ張られる。
「ちょっと待った、アリスはまだ善行中だ」
いきなりの静止に黒白の力が緩む。
すると私の身体はふわりと持ち上げられて小町の胸元におさまった。
「善行?少しばかり意味が不明だぜ。」
黒白は不服そうに小町を見ては説明を求める。
そんな黒白に小町は
「時期尚早ってやつだ。分からないなら辞書でもひきな」
そう言って自宅へと私を連れ帰った。
―――――――――――――――――――――――――――

「余計なお世話だったかい?」
小町は帰るなり私に尋ねた。
正直なところ助かった。答えも出ていないまま帰る訳には行かない。
でも、なぜか涙が溢れてくる。
「アリス……?」
「分からない…っ……分からないよ……
       私、どうすれば良かったの?」
半ば自棄になって尋ねる。
大粒の涙が溢れて止まず畳に黒く染みていく。
そんな私を見かねた小町は
先日と同じように私を抱き締める。
まるで母と娘のように
「全部を分かる必要なんてない。それこそ閻魔でも無い限り。
感じられているならそれで良いと思うよ……
少なくともあたいは、そう……思ってる」
この日、私は久々に泣いた。
そして泣き疲れて眠った。
でもそれは、寂しいものでは無くて
              どこかしら温かかった。


カナシミの蒼
フアンの紫
二色が人形を染め上げる。
人形が求めるのは何色なのか?
それを語るのはまた、別のお話
はい。性懲りもせずに二話目です、くーです。
久しぶりになりますが、以前書いた「人形のイロ、死神のパレット ハジマリ」
の続編となっています。
まだまだ拙い文章ですが読んで頂いた方々に感謝いたします。
ありがとうございます。 
くー
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