Coolier - 新生・東方創想話

みすちー繁盛記~a strange kind womans~

2009/05/24 00:12:55
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~注意~
この作品、若干こいしちゃんとてんしちゃんとみすてぃあちゃんが可哀相なことになっております。
可愛いことではなく可哀相なことです。
仕様です。
よろしい方だけどうぞ。








次の瞬間、貴方は『これは酷い』と言っている予定。



******


梅雨も明け、日も長くなり始めた頃。
徐々に気温は上がり、けだるい熱気が幻想郷を覆い尽くす。

初夏。

天界では下界が漸く梅雨明けしたというのを、何を今更と言わんばかりに快晴が続いていた。
そもそも、雲の上に展開は存在しているのだから、梅雨も何もないのだが……


少女は落ちる。


何故かと問われれば、桃を踏ん付けて転んだからと答えるしか無い。

とにかく落ちる。

少女は落下を続けながらも、数十秒前の自らの失態に、頭を抱えた。
重力加速度を受け、直も落下速度は上がって行く。
地上がま近に見え始めた頃、へたすりゃこれは死んだなぁという思考に行き着いた彼女は、ふと閃いた。



そういえば、私飛べるじゃん。



――幻想郷に、どぉんという爆音が響き渡った。


******


赤提灯の明かりが、夜の森をぼんやりと浮かびあげる。

「でね、変わりたければ行動を起こすべき。変えたければ行動を起こすべき。それは当然の意見で、当然の選択だと思うの」

屋台の前に腰掛け、赤ら顔の少女は何の前触れもなくそんなことを言ったかと思うと、再びジンフィズをちびちびと舐め始めた。
自らを天人と名乗った女、比那名居天子の突然の脈絡のない話題に、ミスティアは案の定乗り遅れると、ぽっかりと口を空けた。

「この世界は、待っていれば変わる程親切じゃないし、自ら変わろうとするほど働き者でもない。だから怠け者の世界を変えるには、私達が動くしかないのよ。主に神社を壊したりとか」
「ああ、続くんだ、その話し」
「あたり前田のクラッカーよ」
「愉しくお酒を飲むのもいいけど、あんまり他のお客さんの迷惑にならないようにしてねー」

酔っているのか、不必要に大きな声で話す天子に半ば呆れつつ、ミスティアは彼女にそう言うと、再び鰻を焼く作業に戻った。
天子は不機嫌そうに頬を膨らますと、迷惑も何もないじゃないと言った。

「他にお客なんて居ない」
「隣で竜宮の使いのオネーサンがぐったりしてるじゃない。自分の胸をクッション的に利用して」
「ふんっ、胸なんて飾りよ。偉い人にはそれがわからないのよ。たかだか脂肪の塊なのに」
「まぁ、柔らかそうではあるわよね」
「きっと人を殺せるわ。圧迫死で」
「窒息死じゃないの?」
「巨乳ね」
「そうね」

竜宮の使いの豊満な胸を羨まし気に眺める天子に、ミスティアは苦笑いを零す。
そして、二人は声を揃えるようにしてこう言った。


『羨ましいわねぇ』


*******


じゅうじゅうと脂の落ちる音がする。
鰻からゆらゆらと立ち上る香ばしい香が鼻孔を擽る。
そして、それに反応するかのようにぐぅという音が鳴り響いた。

「……お客さん?」
「……私じゃないわよ?」
「私でもないわ」

天子とミスティアは顔を見合わせる。
そして、つかの間の静寂を破るかのように、再びぐぅと音が鳴った。

「私です」

そう言ってのっそりと赤い顔をあげると、竜宮の使い永江衣玖は恥ずかしげに頬をかいた。

「私としたことが御見苦しいところを……」
「あ、あら、衣玖ったらいつの間に起きていたの?」
「そうですね、総領主娘様が『お客なんか居ない』とおっしゃった辺りからです。空気を読んで黙っていましたが」
「へ、へぇ……そうだったの」
「そうだったのです。ところで総領主娘様。私、人を殺せるほど胸は大きくないと思いますが」

衣玖と呼ばれた少女の瞳がキラリと光ったのを、ミスティアは見逃さなかった。
……まぁ、だからといってどうこうできるわけではないのだけれど。

「本人が隣で寝ているというのに、随分と言ってくださいますね」
「あう」
「大体ですね、最近の総領主娘様は弛んでらっしゃいます。先日の緋色の雲の件以来博麗神社に入り浸るわ、かと思えば何をするわけでもなく御家でごろごろと――」
「あー、あーあーあー。やめやめ、お酒をがまずくなっちゃうじゃない」

両手で耳を塞ぎ、天子はその場に突っ伏した。
まぁ、店をやっている以上、こういった場面に直面するのも珍しくはない。
ぷらぷらと手を振る天子の様子に、慣れた様子でミスティアは助け船を出すことにした。

「まぁまぁ、お二人さん。お酒の肴にお一つ、当屋台名物の歌は如何かしら?」

ミスティアがそう言うと、衣玖の説教がぴたりと止んだ。

「……歌ですか?いいですね、是非とも一曲歌っていただきましょうよ、総領主娘様」
「そうね、地上の妖怪ってのがどんな歌を歌うのかも気になるしねぇ」

さ、歌って歌ってと促す天子。
クールに装う彼女であったが、衣玖からは見えないよう影でこっそりガッツポーズをしている姿はどこか面白く、ミスティアはクスリと笑った。

「それでは、夜雀の歌をとくと堪能あれ」

ミスティアは、すぅと深く息を吸った。


―大気が揺れる―


*******


おーちたおちた

なーにがおちた

ももをふんずけすってんころりん

そらからてんにんおっこちたー

りゅうぐうのつかいあわてておって

みこにみつかりぼこられたー♪


*******


「喧嘩を売っているような空気であると見受け致しますけれど」
「まぁ空気読むまでもなく、間違いなく喧嘩売ってるわよね、事実なんだけど」
「あら、私が売っているのは美味しいお酒と焼き八目鰻」
「誰が上手いことを言えと言いましたか、誰が」

呆れたようにため息をつく二人に対し、ミスティアはこう続けた。
「あとは愉しい一時と、精一杯の愛嬌を」

天子と衣玖は顔を見合わせ、それから揃って笑い声をあげた。
ミスティアは楽しげに笑うお客達にクスリと微笑み、美味しいお酒と八目鰻を彼女達に差し出した。
「私の奢り」
「よろしいんですか?」

衣玖がそう尋ねると、ミスティアはにこりと微笑み、こう言った。

「お客さん達が楽しく飲めればそれでいいのよ」

そう言って胸を反らすミスティア。
妖怪の癖に、妙に商売人らしい彼女の様子に、二人は声をあげて笑った。


*******


ゆらゆらと、夜の暗闇を少女達は天へ昇る。

「地上にあんな屋台があるなんてねぇ」
「ええ、いい所でしたね」
「今度、お父様を招待しようかしら」
「総領主様をですか?」
「ええ、最近あまりお父様とお酒を飲んでないし――」


たまには、娘らしいこともしたいじゃない?


照れ臭そうにそう話す天子の様子に、衣玖は笑みを浮かべる。

「きっと、総領主様もお喜びになられますよ」


*******


わがままてんにんそらをまう

りゅうぐうのつかいそれをおう

ふたりなかよくそらとんで

ふたりなかよくほほえんで

ゆらゆらひらひら

おうちにかえっていきましたー♪

******


「どっと疲れたわ」

誰もいなくなった屋台で、ミスティアはぼそりと呟いた。
以前、死神と閻魔様が店に来た時も感じたことだが、どうもあの手の空気は疲れるのだ。

まさか、空の上の住人どもは皆あんな調子何だろうか?
だとしたら天界では屋台は開きたくないなぁ、行く予定もないけど等と考えながら、ミスティアは腰を下ろした。

「お疲れのようだね」
「ほんっと疲れたわよ」
「天人はお気楽だからねぇ」
「あー、見るからにそんな感じだったわ。飲むだけ飲んで、話したいことだけ話して、また来るわーって帰って―――」

いったと言おうとして、ミスティアは口をつむんだ。

「ふぅん、お店をやるのも大変なんだねぇ」
「だ、誰よあんた!というか、いつの間に私の隣に!?」
「お客さんに向かって誰あんたはないんじゃないかなぁ」

そう言って、赤ら顔の少女はけたけたと笑う。
見れば、卓上にはいつの間にやら無数の空のボトルが無造作に置かれていた。

……ウォッカって、はたしてボトルをバカバカ空ける飲みものだっただろうか?
そもそも、出した覚えすらないミスティアは、眉間に深いシワを刻みつつ、首を傾げた。

「私はこいし、古明地こいしだよぅ。何時から居たかって言われればぁ、私は最初からここにいたよ、天人さん達と一緒に」

天人達と一緒ということは、大体ニ刻近くの間、少女は飲み続けていたということになる。

「そ、そんなわけないじゃない。現にさっきまで誰も居なかったもの」

そう、不可能だ。
ニ刻もの間、全く気付かれず、全く存在を悟られずに屋台で飲み続けるなんて芸当が……
混乱するミスティアに、ご機嫌そうな様子で、こいしは口を開いた。

「それわぁ、私の能力でぇ――」


*******


「へぇ、無意識を操る程度の能力ねぇ」
「うん、理解してくれた?」
「さっぱりだわ。生憎わたしゃあ鳥頭ですから」
「あはははは」

大声で笑うこいし。
お代わりという言葉に、ミスティアはカウンター越しに空になったグラスを新しいものと取り替える。
すぐさまグラスのウォッカは飲み干された。

こいしは、ほうっとアルコール混じりの息をはいた。
というか、息どころかアルコールそのものをはきそうな感じだ。
顔青いし。

「あーおかしい。普通、自分で自分を鳥頭なんて言うかなぁ。使い方も違ってるしぃ」
「さようで」
「おーおー、もちとちこうよれー」
「お客さん、ちょっと飲み過ぎなんじゃない?」
「だいじぶだいじぶ」

心配そうに見つめるミスティアに、こいしはぱたぱたと手をふるう。
流石にウォッカを三本も空ければ、これは飲み過ぎだろう。

「私はお酒に強いほうぷっ」
「あ」

まるで、蛙のように、こいしの頬がぷくりと膨らんだ。
端から見ればかわいらしいとも言えそうだが、そのまま正面に捉えられたミスティアからしてみれば、それは恐怖の対象でしかない。
つぅっと、冷や汗が頬を伝う。

まずい。

「ちょっと――」


待ってと言おうとしたが、それは既に手遅れだった。





「ぇ――――――」

「きぃいやぁぁぁぁあぁぁぁぁぁああぁあぁぁぁぁぁぁぁあん……」


その夜、一人と一羽の少女が、大切な何かを失ったという。


******


おーまいごっと

むいしきのしょうじょ

おーまいごっと

むいしきにのみすぎ

おーまいごっと

むいしきによいつぶれ

おーまいごっと

……


勘弁してください(泣き)


******


その後、彼女達は永遠亭に運ばれたそうな。

めでたくない、めでたくない。
やぁ、また会ったね。
え、初めてだって?
それはきっと前世で(ry
さておき、すまない、またなんだ。
黄昏やってたらこんなの思い付いちゃってさ、いても立ってもいられなくてね。
なんだか続編の希望者も居てくださったからうひょぉぉおみたいな感じで。

Q何故こいしちゃん?
A仕様です。
彼女のテンションがおかしいのはお酒のせいです。
なほ、古明地こいし氏に怨恨怨念や呪恨や愛憎などの類はいっさいございません。

あ、そういやこの作品書いてるときに作者誕生日迎えました。
HAPPY BIRTHDAY TO ME!
漆野志乃
[email protected]
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コメント



0.920簡易評価
6.80名前が無い程度の能力削除
……たまには萃香にもいてほしい(笑
褒め言葉にきこえないかもしれませんが、筋立てのフラつき感がお酒の酩酊じみていて、なんだか和みます。こいしちゃんの粗相も許せるほどに。

あと、お誕生日おめでとうございます。
9.100朋夜削除
続編ひそかに待ってました、
毎度のこといい作品を書いてくれますねw
何処か癖があってまた、何処かすっきりした文章は私の中で脳内麻薬を過多分泌し中毒症状を引き起こしてますw

もっとやれば良いと思います。

あ、あと誕生日オメデトウゴザイマス、応援してます。
10.100名前が無い程度の能力削除
みんな最高や!
こいしちゃんの介抱は俺に任せ(ペタフレア
13.無評価漆野志乃削除
>6
筋立てのふらつき感
↑べ、別によってなんかいないんだからね?
本当なんだからね?
>9
ひそかに続編待ってました
↑その一言が、オラをワクワクさせる……

もっとやればいいと思います。
↑私がこの程度で自重するとでも?
>10
こいしちゃんの(ry
↑介抱といわず、このこいしちゃんは、是非とも貴方の嫁に差し上げよう(何様だ