Coolier - 新生・東方創想話

東方の金曜日Part6

2009/05/18 08:14:57
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東方の金曜日



第6話「恐れと裏切りと」
とある丘のふもとで、サボリ魔として有名な死神、小町は焦っていた。
この任務は今までの異変とは違う。そしてこれはただの弾幕ごっこじゃない。
幻想郷の住人と殺人鬼機械人形の殺し合いだ。
そして、自分達の中に死んだら困る者が多すぎる。
まずは上司である映姫。もし、彼女が死んでしまったら、誰が霊を裁く?
次の閻魔が決めるのに100年位かかるのに、それはマジでやばい。
次に、西行寺幽々子。元々死んだ身である彼女だが、もし彼女に何かあったら、幻想郷の人間界にも霊がやって来てしまう。
八雲紫も危うい。彼女が死ねば、幻想郷を維持できなくなる恐れもある。無論、博麗霊夢も同じ理由だ。
いつもなら寝てばかりで映姫に怒られている小町だが、流石にこの状況には考えずにはいられない。
何より・・・。と小町はいきなり、自分の肩を抱く。震えていた。そう、彼女も怯えていた。
「(あいつには勝てない・・・きっとあたいも殺される・・・。嫌だ・・・死にたくない・・・。)」
死神が外の世界の機械人形に殺されるのはきっと笑い物かもしれない。けど、小町自身は笑えなかった。
「(死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくないよ・・・。)」
震える手で、携帯を取り出す。小町専用の防水携帯だ。
開いてみるとその待ち受け画面には、幸せそうに笑っている自分と・・・小町と同じ顔の死神が写っていた。
髪の長さや服装は異なり、右腕には金色のアクセサリーを付けているが、異常なほど、顔が小町と似ていた。
「彼女」・・・は小町のかつての同僚だった。
当時、小町と「彼女」は顔が似ている故か、非常に仲が良かった。
いつも昼寝ばかりの小町と違い、「彼女」はとてもない熱血馬鹿だが、正義感あふれ、優しかった。
また、特別に舟漕ぎでは2人一緒に行くことになった。当然、舟を漕ぐのは週別に交代だが。
「彼女」と自分達の話はとても面白く、三途の川を渡る霊達も楽しんだに違いない。
だが、そんな2人に悲劇が襲いかかる。
それは、ある日のこと。いつものように2人は霊を運び終わり、往復している時、突如、小町はとある話を思い出す。
昔、自分達の先輩格の死神がある霊を運んでいた時、その霊は生前はとんでもない殺人犯で、裁かれるのを恐れて、引き返せ、と死神に懇願した。死神が無理だと断った時、突如、その霊が死神に襲いかかった。しかし足を滑らせ、三途の川へ落ちてしまう。
当然、霊が三途の川に落ちれば、浮き上がることもできずに沈んでいくのである。だが、霊は沈みながらも死神に言う。
「俺はこれまで、悪魔と契約して、他人に最高の悪夢を見さして、殺してきたことがある。今度はお前達に悪夢を見してやる。愉快じゃないか?俺はこの川の底で待ってるぜ。絶対に貴様ら死神に悪夢を見してやる。」
その話を終えるや否や、「彼女」は縁起が悪い、と呆れ気味に言った。
だが、その話は本当になってしまった。
突如、三途の川から人間の手が出てきて、「彼女」を掴んだのだ。醜く焼けただれた手が。
「彼女」はその手に引っ張られ、三途の川に落ちて行った。小町は慌てて、落ちたほうへ向かう。
「彼女」はその川に溺れていた。助けて、と小町に言い、手を差し伸べる。小町はどうしたらいいのか分からなかった。
その時、溺れている彼女の背後から再び、腕が出てきた。今度は鍵爪のような凶器をつけた右腕とともに。
その右腕の爪が「彼女」の背後から一気に刺した。「彼女」の胸から爪が飛び出す。
小町はその光景に怯えた。「彼女」はまだ小町に手を差し伸べている。だが小町は・・・。
恐れのあまり、逃げ出した。
今でも覚えている。「彼女」の悲痛そうな声を。
―――あんたとあたしは・・・友達じゃなかったんで・・・・!―――
―――裏切りも・・・!―――
そして、「彼女」の声が聞こえなくなり、どこからか、男の凶悪な笑い声が響いていた。
その後、報告を受けた閻魔達の計らいにより、三途の川のルートが変更された。
小町はどんな罰でも受けても構わないと思った。だが、小町の行動は仕方がない事とされ、許された。
仕方がないこと?何故?自分は友を見殺したんだぞ。
その夜、小町は「彼女」のことを思い出し、生まれて初めて大声で泣いた。

「(あいつも、こんな気持ちで死んだかもしれない・・・。今の状況は、あたいの罰かもしれない・・・。)」
小町はそう思い、携帯をポケットにしまう。
とりあえず、Zから支給された物を確認しよう。バッグの中身を見てみる。
インスタント食品、地図やコンパス、それにサブウェポンか、スナイパーライフルが入ってあった。
こんなもの、役に立たないのに・・・と小町は訝しく思いながらも、そのスコープを覗き込む。
「なるほど、外の世界の人間にしては、よくできているな・・・。ん?あれは?」
見ると、そこにはリグルとミスティアが歩いていた。遠くなのに近くにいるような錯覚をした。
だが、小町は他場所に移った時、絶句する。
「・・・・・いたっ!」
T‐Jがいた。2人から約1キロメートル離れているが、あの容貌は忘れやしない。
T‐J。抹殺対象。殺人鬼マシーン。そして、ルーミアを殺した者。
ふと、小町はある事に気付いた。
「(あいつ、自分の足だけを頼りに人を殺しまわっているのか?)」
よく見ると、T‐Jはリグル達を追っかけているわけじゃなく、周りを見ながら進んでいた。
どうやら、今までT‐Jは歩き回って、鉢合わせしたものを殺してきたらしい。
なんという単純さに小町は呆れる・・・だが、突如、妙案を思い付く。
それは悪魔の囁きか、心に魔が差したというか。
確かに、自分達の中には死んだら困るものが多くいる。
だが、リグルとミスティア、こいつらはどうなのだ?ただの邪魔者にすぎない。
T‐Jを殺すには、奴の行動を知る必要がある。
そして、それを知るには、生贄が必要だ・・・。
そう・・・・・。



リグルとミスティアは黙って歩いていた。あてもなく、ただ黙って。
リグルはどうすればいいか分からなかった。目の前でルーミアが殺されたのに何もできなかった。
それはミスチーも同じ気持ちかもしれない。
いつものミスチーはいつでもどこでも、歌を歌っていた。しかし、今の彼女は歌う気などしないらしい。
「・・・ミスチー。これからどうする?」
「わかんないよ・・・。」
そう言うミスティアの声は悲しそうだった。
リグルも考える。一体、自分達はどうすればいいんだ?
私達2人じゃ、T‐Jには勝てない。
チルノはどうして、T‐Jを倒そうと考えているんだろう?何も考えないのが、チルノのいけない所だ。
霊夢は大丈夫だろうか?彼女は人間だが、性格上、妖怪にも親しまれている。
皆、どこにいるんだろう・・・。
その時、背後に何か嫌な予感がした。ものすごく嫌な予感が感じる。
後ろを振り返る。ミスティアも同じように振り返る。
そこには・・・。
右手に鉈を持ったT‐Jだった・・・。
「走って!」
とっさにリグルはミスティアに叫び、走る。
ミスティアも慌ててついて行く。
T‐Jはスピードを早めず、その2人を追いかけていく。
リグルとミスティアは思いっきり走った。
当然、速く走るリグル達と速さを変えずについて行くT‐Jとでは差がありすぎる。
だが、いくら走っても、走っても・・・。
リグル達とT‐Jの差が小さくなっていた。
リグルは混乱していた。思いっきり走ってもT‐Jに追いつかれているからだ。彼は歩いているだけなのに・・・。
この現象はT‐Jの能力か?後ろを見てみる。
やがて、追いかけっこに飽き飽きしたのか、T‐Jは脚に収納してあるアイスピックを取り出し、リグルに向けて投げた。
これ位なら、避けきれるとリグルは確信して避ける態勢に入る。
だが、その時、避けきれる筈のアイスピックが異常にも近かった。投げた時とは違う距離に見えた。
アイスピックがリグルの左足に刺さる。
「がっ・・・!」
転倒するリグル。それを見て、ミスティアも止まる。
「リ、リグル!?」
「だ、大丈夫だよ・・・。」
そうしている中、2人はとうとうT‐Jに追いつかれる。
駄目だ・・・とリグルは確信する。このままでは、やられてしまう・・・。そして、リグルは覚悟を決める。
「ミスチー、僕に構わず、逃げて!!」
普通ならここでミスティアは躊躇うか、彼女をかばう、という2択がある。
しかしミスティアはその2択をとらなかった・・・。
本当にリグルに後ろを向け、逃げたのだ。
だが、リグルはこういう事を予想していたのだ。
「(ミスチー・・・今まで、友達でいてくれてありがとう・・・。)」
そしてリグルは過去を振り返る。
いつ、友達になったかは覚えていないが、楽しい毎日だった。
ルーミアやチルノと一緒に遊んだ日が懐かしい。
今はそれができないと思うと、悲しい気分だった。
ふと、リグルは思い出す。ルーミアが最後に言っていたあの言葉を。
『・・・ひょ、ひょっとして妖怪を憎んでいるの?』
『・・・そ―なのか―。』
その事を思い出したリグルはT‐Jに向けて、怒りを含んだ叫び声をあげる。
「命を・・・命を、何だと思っているんだ―――――!!!」
そして、自分の能力で一気にこの島一帯の蟲を呼び集める。
スズメバチや毒蛾、ムカデ等、毒虫が彼女の周りに集まる。
「皆、頼む・・・。行け―――!!」
リグルは蟲達に指示し、T‐Jを攻撃した。いくら1匹1匹が弱くても、この数は尋常ではない。
大の人間でも刺されまくったら、一瞬で死に至るくらいの量だ。
やったか!?リグルは確信した。いくらあいつでも、これだけ攻撃すれば、死んじゃうだろう。
だが、リグルの確信は、絶望へと変化する。
「・・・っ!?そ、そんな!?」
なんとT‐Jは蟲に刺されているにも関わらず、まだ動いていた。
それ所か、鉈で一気に蟲を数匹落としていた。
何故・・・?リグルは絶句する。その時、あることを思い出す。
T‐Jは人間ではなく、機械人形だったのだ。それをすっかり忘れていた!
自分は不要になった情報はすぐに切り捨てるようにしているのだ。自分は蟲達になんてひどい事をしたんだ・・・。
『蟲の頭の中ってどれだけ小さいのでしょうか?』
ふと、そんな言葉が頭の中に響く。
確か、かつて自分が行った「蟲の知らせサービス」についてインタビューしに来た鴉天狗の声だ。
『昔は蟲の力ももっと強かったような気がするのです。』
『昔に比べれば、今の貴方のレベルの妖怪では今の蟲もたかが知れています。貴方なんて只の見世物でしょう?』
そういった嘲りの声が脳内に響く。
もう・・・もう、蟲の力はそんなものなのか?
蟲の地位はもう向上できないのか?
いや・・・リグルはふと、ミスティアを思い出す。
ミスティア。蟲の天敵である夜雀だが、彼女だけは許せる存在になっていた。そして・・・。
リグルはポケットをまさぐり、箱を取り出し、開ける。
中には不格好だが、虫型のアクセサリーだった。それをミスティアに渡し・・・告白するつもりだった。
彼女を守らなくてはならない・・・絶対に!
それを握って、リグルは走った。走って飛びあがる。
空中で回転し、T‐Jの背後に近づき、得意の不意打ちキックを仕掛ける。
「うあぁぁぁぁ―――!!」
咆哮とともに放つリグルキック。その威力はともかく、流石の霊夢も避けきれない程の不意打ちぶりだ。
だが、T‐Jは後ろに向き、リグルが怪我した左足を掴む。
「うっ!」
襲いかかる痛みにリグルは顔をしかめる。彼女に構わず、T‐Jはリグルを地面にたたきつける。
「ぐあっ!」
地面に叩き付けられ、大の字での寝ころぶような状態となったリグル。
そして、T‐Jは彼女の胸に向けて、鉈を振り下ろす。
「・・・ガハッ・・・!」
リグルに襲いかかる激痛。彼女は鉈に貫かれていたのだ。まるで、昆虫の標本のように。
リグルは力を振り絞って鉈を抜こうとしたが、もうそのような力が残っていない。
手から、アクセサリーが落ちる。T‐Jはそれを見、拾おうとする。
「や、止めろ・・・それはミスチーのものだ・・・!」
リグルは声を振り絞って言う。それを聞いて、T‐Jは首を傾げる。
「それは僕がミスチーに・・・ミスチーに渡すものだったんだ・・・。お前にとってはどうでもいいかもしれないが、僕にとってはどうしても渡さなきゃいけない大切なものなんだ・・・。」
そして、リグルはミスティアのことを思い、言う。
「ミスチー・・・御免。先にルーミアの所に逝って来る・・・大好きだよ。」
それが・・・リグルの最後の言葉だった・・・。
「R-221 リグル・ナイトバグ T‐Jの手により、死亡 現在脱落者2名」
T‐Jはリグルが絶命しているのを確認して、鉈を抜いた。そして、アクセサリーを凝視している。
アクセサリーを拾い、隅々まで見る。
「・・・・・・・・・・。」
すると、T‐Jは予想もつかない行動に出る。何を思ったか、箱にしまい、そっと胸ポケットにしまったのだ。
そして、再び歩き始める。あてもなく、ただ単に・・・。



ミスティアは泣いていた。木に寄り添って、泣いていた。彼女もリグルの死を知ったのだ。
自分はリグルを見殺したんだ。そんな後悔が胸を締め付ける。
そして、彼女はあることに気づく。T‐Jに追いつかれたあの現象を。
自分はあの現象を覚えている。確か、1年中の花が咲き乱れた時・・・。
ふと、彼女は思い出す・・・「距離を操る程度の能力」を操る彼女を・・・。
「どうして・・・どうしてこんなひどいことをしたの、死神さん・・・!!」
今、彼女の心には、深い悲しみと怒りがあった・・・。



小町は望遠鏡を見、ため息をつく。
T‐Jの行動を知る為には、仕方がなかったが、リグルが死んでしまうのは残念に思えてきた。
何故、能力を使って、T‐Jとリグル達の距離を縮めたのか?そんな理由も今は思いつかない。
リグルとミスティアのやり取りを見て、かつての自分と「彼女」のことを思い出したのだ。
「何やっているんだ、あたいは・・・・・・。っ!」
突如、頬に何か硬い物で殴られた。思いっきりぶたれたので、小町は転んでしまう。
上半身を起き上がり、“彼女”を見上げる。
「・・・本当、何をしているのかしら貴方は・・・!」
笑っているが、目が笑っていない。怒りの眼差しだ。その視線に小町は寒気を覚える。
「・・・最低ね・・・!」
怒りを抑えきれずに呟く彼女を小町は知っていた。確か、彼女はリグルと関係があった。
だが、彼女はいつもリグルを苛めたりしていたのだ。
それなのに、どうしてこんなにも激怒しているんだ?
小町には理解できなかった。
「・・・覚悟なさい・・・T‐Jを殺したら、次は貴方を後悔させてあげるわ、小野塚小町・・・!」
小町に向けて、フラワーマスター・風見幽香は吐き捨てるように言った。



続く
ZRXです。
今回は小町の視点から書きました。
小町は1人で行動しているので、セリフが少なめです。
次回は、あの⑨が活躍します。
ZRX
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コメント



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20.無評価名前が無い程度の能力削除
自己投影した気持ち悪い無敵キャラを出してオナニーかよ…tjてのはお前の名前の頭文字なんだろ、どうせ。
投稿した奴、お前気持ち悪いんだよ病気野郎が