Coolier - 新生・東方創想話

小噺「メディと力強い花」

2009/05/03 22:08:15
最終更新
サイズ
4.19KB
ページ数
1
閲覧数
349
評価数
6/26
POINT
1150
Rate
8.70

分類タグ


美しいものには棘がある。
名を体で表したような少女が一人、白昼の空の下を小さな妖精をつれて麦畑の中を歩いていた。
「もう四月も終わりだというのに、まだまだ肌寒いわねスーさん」
紅いドレスを身にまとい、ウェーブがかかった短い金色の髪にリボンをした少女が物憂げに呟いた。
スーさんと呼ばれた妖精もまた、物憂げに頷き同意の意を示した。
少女の名はメディスン・メランコリー。幻想郷にある鈴蘭畑に生まれた比較的新しい妖怪だ。
メディスンは鈴蘭畑で生まれ、鈴蘭畑で育った。外の世界を全く知らない、所謂世間知らずといった
状態の妖怪だったが、ついこの間起こった春騒動で多くの妖怪や人間と接触し、メディスンは外の
世界に興味を持ち始めていた。
しかし、全く人の来ない鈴蘭畑に居る彼女には他人と話す機会も無い。
そして何より、メディスンを孤独にさせているのは彼女自身の能力だ。
毒を操る。単純明快な能力だが、その単純さ故に圧倒的な殺傷能力を秘めており、それを扱いきれていない
メディスンに近づく者など居なかった。遊びたいがために何人かに自分の能力を使ってみたが、やはり
人を遠ざけるだけだった。
―――人に逃げられるくらいなら、人を遠ざけてしまおう。そうすれば誰も傷つかない。
幼いメディスンが自分の欲求と理性を戦わせた結果得た結論である。それはあまりにも大人びていて、幼い結論だった。
後ろを振り向くと、自分が歩んできた道にあった麦はすべて腐り果てて、何も生まれない。
以前戦った者が言うに、自分は周りに毒の瘴気のようなものを纏っていて、それに触れた植物や生物は衰弱し、
腐り果てて行く。
「鈴蘭は平気なんだけどなぁ・・・」
枯れてしまうものは仕方がない、腐ってしまった麦に祈りをささげ、また前へと歩を歩めた。
鼻歌を歌いながら麦畑を抜けると、メディスンは歌の続きを忘れて眼の前に生えていた花を見つめていた。
悠然と咲いている、小さな黄色い花。
小さな、それでもたくましく咲く妖精の冠のような花。
メディスンはフラフラと吸い寄せられるようにその花に近づき、屈みこんでその花をずっと見つめていた。
ここでメディスンはあることに気がついた。
「この花、腐らない。」
いつもならメディスンから駄々漏れになっている瘴気に当てられて花などは直ぐに腐り果ててしまうのに、この
小さな冠のような花はただ悠然と咲いている。
メディスンは恐る恐る花に指を添えてみた。やはり花は咲いたままだ。
「・・・・・・ふっ・・・・・・うう・・・・・・んっ・・・うぇぇ・・・」
いつの間にかメディスンは泣いていた。初めてなのだ、自分を前にして悠然と咲いている花を見るのは。
悲しみで泣いたことは多々あるが、喜びで涙を流したのはこれが初めてかもしれない。
「ごめんね」
優しく、できるだけ痛めないように。綺麗に根元からその花を引き抜き、足早に鈴蘭畑へと帰った。
メディスンは家の前の庭にその花を植え、毎日欠かさず水をやった。
やがて日が過ぎ、その花は白い綿のような綿毛を生やした。
ある風が強い日、メディスンは花の様子を見ようと家から出ると、綿毛はすべて風に流されてしまっていた。
メディスンは元々この花が生えていた場所まで走ったが、そこも同じ状態になっていた。
メディスンはその後三日ほど泣き明かした。やがて季節は巡り、また同じ春が来た。
散歩に出かけようとドアを開けると、昨年花を植えていた周辺に沢山のつぼみが芽吹いていた。
メディスンはやっとあの綿毛のことを理解し、短い人生で二回目の嬉し涙を流した。
やがて季節は巡り、五回目の春を迎えた。
黄色い花が咲き乱れる畑の真ん中で、赤と青を基準にした服を着た銀髪の女性と、白いブラウスに赤いチェック柄のベストを羽織った
緑髪の女性がメディスンと共にテーブルを囲んでいた。
「それにしても、よくこんなに育てたものね。なんていう花なの?」
関心したように銀髪の女性が言う。
「名前は知らない、おさんぽしてたら偶然見つけただけだから。幽香は知らない?」
幽香と呼ばれた緑髪の女性は少し考える素振りをしながら
「私も四季のフラワーマスターを自称してるけど、こんな花は見たことないわね・・・折角だからメディが
名づけたらどうかしら」
銀髪の女性はえっとした顔で幽香を見るが、幽香はウインクを返すだけだった。
「うーん、そうね・・・」
メディスンは暫く考えた後、閃いたように言った。
「出逢花はどうかしら!この花のおかげで二人に出逢えたんだもの」
「あら、いいじゃない」
「でしょ?あ、えーりんちょっと待っててね、すぐ毒を集めて来るから」
そういうとメディスンは向こうの鈴蘭畑へと走っていった。
コンパロー、コンパローという呪文が聞こえる中、えーりんと呼ばれた銀髪の女性が幽香に尋ねた。
「ねぇ・・・あの花、麦畑に咲くとは思えないんだけど」
幽香はゆっくりとティーカップを置き、笑みを浮かべていった。
「あら、たんぽぽはどこにでも咲くのよ?」

出逢畑と呼ばれる場所が人々の噂となっていた。
鈴蘭畑の直ぐ隣に面し、太陽にも負けない黄色さで悠然と咲く小さな黄色い花の畑だ。                         



終わり
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.690簡易評価
1.10名前が無い程度の能力削除
友人のリクエストで書いたんなら友人に見せてりゃいいんじゃないですか?
そんな事情を言われてもこっちは「だから?」といか言えません。
3.無評価ネルソン削除
あー、確かに余計な情報ですね、すいません。消しておきます。
ただ友人に見せたらここに載せて見たら?とアドバイスされたので、一応と思いまして。
アドバイスありがとうございました。
4.100名前が無い程度の能力削除
ほのぼのとしてていい話でした。
コンパロ~コンパロ~。
10.80名前が無い程度の能力削除
ほのぼのまったり、でもちょっとしんみりな良い話
11.80名前が無い程度の能力削除
基本妖怪の思考は増せてるか、我儘の両極端ですからねえ。
これはいいメディスン。
20.100名前が無い程度の能力削除
うひゃっほう
24.90名前が無い程度の能力削除
メディスンかわいいよメディスン