Coolier - 新生・東方創想話

ヒトバシラ

2009/03/12 21:17:02
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 朝、いつものように朝がやってきました。ちゅんちゅかちゅんちゅか雀の鳴く朝です。お布団の中で、んっ……と伸びをして温もりから抜け出します。私、ここに来てから初めて知りました。もうすぐ夏だと言うのに、朝がこんなにも寒いことを。

 大きく欠伸をすると、開いた口から冷え冷えな空気がなだれこんできてぽけぽけな私の頭を完全に目覚めさせます。身体をふるふる震わせながら枕元に畳んであった装束に袖をとおしました。身も心も引き締まる一瞬です。

 トンタカトンタカ。お台所からリズムの良い音が聞こえてきます。トンタカトンタカ。まな板の上を包丁がおどる音です。トンタカタカタン。神奈子さまが朝ごはんを作っているのです。神奈子さまはあまり料理が得意な方ではないので包丁も重々しく、威厳のあるステップを刻みます。諏訪子さまの時はタン、タ、タン、と可愛らしい、軽い音が響くのですから。壁にかかっている当番表もそう言っています。ええ、間違いありません。私の部屋まで御御御付のおいしそうな香りがただよってきました。

 神奈子さまはお塩やお味噌を贅沢に使った料理が好きなのです。身体に障りますから、と私が注意しても中々聞いてくれません。こちらに来てからというもの、神奈子さまはますます元気ですから、そんな心配なんて要らないのかもしれませんけどね。私のおなかもきゅるくる鳴ってきましたので早速、神奈子さまにおはようのご挨拶がてら、つまみ食いしにいっちゃいます。

 台所ののれんをくぐると、予想通り、神奈子さまでした。握りの部分を足にして台所に立ち、器用に包丁を巻きつけて大根を切っていました。どう見ても、私が学校で使っていた飛び縄です。あのビニール製の安っぽいヤツです。そんな縄が大根をトンタカ刻みながら「おはよう、早苗」なんていうものだから私は泣きたくなりました。トンタカタン。

 神奈子さまや諏訪子さまは私をからかうのがお好きなので、いたずらされることは多々あるのですが、今回のは特にひどすぎました。一週間と一日ほど前、元気な神奈子さまに少しふくよかになられましたね、なんて呟いてしまった私が悪いんです。それからと言うもの、神奈子さまはこのようなお姿で私達と暮らしています。地味に陰険です。神さまですから。残機がいくらあっても足りませんので私ももう気にしません。涙さんさようなら。「おはようございます、神奈子さま」と挨拶してお茄子の漬物を一口、ひょいぱく。きゅきゅっと良く漬かっています。

 神奈子さまがお料理当番の時は、お洗濯当番は諏訪子さま。私は好きなことをしてて良い決まりなのです。お料理当番、一回休み、お洗濯当番、一回休み、と三人で協力しあって生活しているのです。ああ、家族って、共同生活って素晴らしい。クシで髪を梳かしながらちゃらーんと思わず鼻歌まで出てしまいます。「おはよー早苗ー」と諏訪子さまの声がしたので振り返ると、私はまた泣きそうになってしまいました。私の視界に飛び込んできたのは薬局の門番をしている蛙ちゃんの置物でした。いえ、いつもの帽子をかぶっているから諏訪子さまです。昨日のお夕飯の時に落ち着きが無いって注意したのが原因でしょう。だからって何も蛙ちゃんに化けなくても、とは思いますが、恐れ多くて口にはできませんでした。陰険です。私は気がつかなかったことにして諏訪子さまに「おはようございます」と微笑みました。ケロケロ。

 お料理よりもお洗濯の方が早く終わってしまうので、居間には私と諏訪子さまの二人きり。私はウキウキしながら神奈子さまの作ってくれる朝ごはんを待ちます。

 諏訪子さまは小さな机に向かって本を読んでいました。こっそり、後ろから覗いてみると幾何学模様がいっぱい描かれたページを開いています。弾幕のお勉強、というフレーズが浮かびましたが、ウチにはそんな本なんてありません。諏訪子さまの正面に回ると本の正体がわかりました。3Dマジカルなんとかって言う、視力回復の本でした。諏訪子さまがそんな本を読んでいるなんて、一体何があったのでしょう。眼を悪くしたのでしょうか。思い切って聞いてみると「うんにゃ、この子がねー」と帽子をずずいと被りなおしました。赤目ちゃんです。「あ、そうだ」と諏訪子さまが何かを思いつき、私の胸元をじっと見つめだしました。やがて諦めてため息をつくとケロケロ「早苗の胸も立体的に見えるかと思ったけど無理だったー」ええ、これは僻みです。アハハハと笑って諏訪子さまの頭をぶったたきます。ガコガコ。あの蛙ちゃんって首の部分は可動するんですね。一発だけで許してあげちゃいます。私、風祝ですから。それに、のびしろの有る無いは大きいんです。そんなことをしているうちに神奈子さまの朝ごはんができました。

 朝ごはんは香ばしい五穀ご飯。脂がたっぷりのったお魚に御御御付。海苔に卵、きゅきゅっとお茄子の漬物。何故かお味噌がどかっと山盛り。流石はラメ入りビニールです。言い間違えました。神奈子さまです。蛙ちゃんの諏訪子さまは首をビョンビョンガコガコ動かして大興奮。

 とび縄の神奈子さまに蛙ちゃんの諏訪子さま。姿かたちは違えど、どちらも私の大切な家族、神さま。

 さぁ、今日も元気に美味しいご飯です。

「いただきます」
 美味しそうに朝ごはんをほお張る早苗をよそに、とび縄と蛙の置物はこそこそと耳打ちをしあう。

「諏訪子が先に謝りなよ」
「嫌。神奈子が先でしょ」

 東風谷早苗、奇跡を起こす程度の能力の持ち主――。
沙月
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コメント



0.1370簡易評価
3.100名前が無い程度の能力削除
これは良いほのぼの。
……じゃねえ!

何か黒いモノがうずまいてるのが見える。
6.70名前が無い程度の能力削除
誰か厄神様連れてきてーw
8.80名前が無い程度の能力削除
奇跡て神さまにも効くんだw
13.100名前が無い程度の能力削除
おお怖い怖い
15.100名前が無い程度の能力削除
オチに笑ったwwwww早苗さんすげぇwww
19.90奇声を発する程度の能力削除
さすが早苗さんだwww
21.80名前が無い程度の能力削除
それでめ残る辺り、凄いよケロちゃん帽!
24.90名前が無い程度の能力削除
しゅーるww
25.100名前が無い程度の能力削除
ホントにミラクルな当番表やでー
27.100名前が無い程度の能力削除
ほのぼののなかに何か緊迫感がw
32.80名前が無い程度の能力削除
あとがき……!!
33.100名前が無い程度の能力削除
3人で4人ローテしてる