Coolier - 新生・東方創想話

咲夜の世界

2009/03/11 22:29:03
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※めーさくのような、さくめーのような。
百合要素強めでお送り申し上げ候。短い上に中身がうすいお。
小話感覚で読んでいただければ幸いだす。sssくらい















雨が降っている。
風は強く、雷も唸り声を上げていた。

・・・嵐だ。

雨の降らぬ紅魔館で、その威力を直接知る事はできないが、遠くから聞こえてくる音で、その強さの程はなんとなく知れた。
もう三日三晩になるだろうか。
叩きつける雨粒は、ガラスに当たったかのように遮られ、はじかれている。
あそこが結界の境目なのだろう。

あぁ、明日は晴れるだろうか。
至極間近にあるその光景を見つめながら、直立不動の美鈴はぼんやりと考えた。






■  ■  ■  ■





「あー!!晴れたっ!!」

翌朝、美鈴の願いともつかぬ思考をすくい上げたかのように、空は近日珍しいほどに晴れ渡った。
真っ青な空と、それを反射する水溜り。
青の二重奏に、メイド長である十六夜咲夜が大きく伸びをする。

滅多にあげない大声を上げて、朝霧に濡れる空気を深く吸い込んだ。
明るい二重奏に目がちかちかしたが、これだけ清々しく晴れた空は久しぶりで、踊りだしたい気持ちを抱きながら、咲夜は軽やかに地を蹴った。
ぬかるみを踏まぬように、早足で進んでいく。
いつか美鈴に教えてもらった、リズムを刻む遊びを思い出した。
あの時のように地面に丸は描かれてはいないが、水の溜まっていない場所を探して歩いていくのも、これはこれで楽しい。

(・・・けんけん、ぱっ。)

心の中で呟きながら、ぽ、ぽ、ぽ、と地面を踏みしめる。
誰か見ているだろうか、と思ったが、今日はなんだかあまり気にならなかった。

「楽しそうですね。」

足元を見つつ、てこてこと歩いていると、前方から面白そうな声が聞こえる。
相手の足が、視界の端に入った。

「楽しいわ。久しぶりの晴れだもの。」
「晴れではしゃぐ咲夜さんなんて、何年ぶりでしょうか。」

目的地まではあと少し。
顔を上げずに答えながら、咲夜は確実に歩を進めていく。
目の前の人物は楽しそうに笑って、咲夜を待ち構える。
もう相手の胸まで視界に入っていた。
小さく短く息を吐いて、心持ち大きくジャンプする。
それと同時に顔を上げたら、両腕を広げて待ち構える、にこにこ顔の美鈴が視界いっぱいに映った。

「はい、いらっしゃい。」

嬉しそうな美鈴は、自分からも一歩踏み出しながら咲夜を引き寄せ、抱きとめる。
暖かな腕に包まれながら、咲夜は、ふふ、と笑った。

「あぁ、なんだか懐かしいわ。」
「私もです。」

足が地面につかない。
腰の辺りをしっかりと抱きしめる腕が、言葉と共にもう少しだけ強くなる。
鳩尾の辺りがきゅんとして、咲夜は頬を穏やかに緩めた。

「いつになく逞しいのね。」
「いつになく、が余計ですよ。」

お互い軽口を叩き合って、くすくすと笑う。
足は相変わらず地面につかない。
空を飛ぶ以外で足が地面につかないのは久しぶりで、嬉しいような、落ち着かないような。
美鈴の肩に手を置いて安定を取りながら、宙ぶらりんの足を小さくパタパタと動かしてみた。

「ふふ、本当に今日はどうしたんですか?」

微かな揺れが美鈴の体も動かしたが、その腕も、足も、ぴくりともよろける事はない。
力強い腕がいつにも増して嬉しくて、咲夜は満面の笑みと共に、その頭を抱きしめた。

耳の裏を指で撫でたら、くすぐったそうに美鈴が頭を振る。
額がぐりぐりと心臓の上を押して、咲夜も声を上げて笑った。

「たまには甘やかしてよ、ね?」
「たまにじゃなくても大歓迎なんですがね。」

美鈴の帽子を取り、ヘッドドレスの上からぎゅっと被る。
彼女の額にかかる前髪をどけて頬を包んだら、至極嬉しそうな笑顔と視線が合った。
群青の瞳が、穏やかな光で咲夜を見つめている。
その目を見つめ返しながら、咲夜もゆっくりと目を細めた。

あぁ、愛おしい。

包み込んだ頬を引き上げながら、同時に身をかがめる。
柔らかな額をつき合わせたら、不意に泣きたいような気持ちになった。

「可愛いなぁ、可愛い。」
「ふふ。」
「大好きですよ、咲夜さん。」

優しい妖怪は、嬉しそうに笑いながら、ただ咲夜の熱を感受する。
何度も何度も可愛いと囁いては、咲夜を抱きしめる腕の力を強くした。

「あら、私のほうが好きだわ。」
「なにをおっしゃる。私のほうが好きに決まってるじゃないですか。」

二人、言葉にむっと表情を変えながら、絡む腕は決して弱くならない。
それどころか余計に強くなって、咲夜は息苦しさに耐え切れず、ふっと小さく息を吐いた。

「苦しい、苦しいわ美鈴。」
「それくらい好きってことです。愛ですよ、愛。」
「ちょ、卑怯者。あぁもう、苦しいったら!」

遠慮なくぎゅうぎゅうと力をこめてくる美鈴に、さすがに顔をしかめる。
このままでは、背骨をぽきっとやられかねない。
さすがにそれは困るので、早めに降参を申し立てた。
慌てる咲夜に満足したのか、美鈴は腕を緩めて咲夜をおろす。
吸えなかった分の酸素を吸い込んで、咲夜はほっとため息をついた。

「わかりました?私がどれくらい咲夜さんのことを好きか。」
「・・・・・。」

そんな咲夜の前で、美鈴がにこにこと笑っている。
下手に文句を言って、圧死するまで抱きしめられるのはごめんだが、このまま引き下がるのも癪だ。
さて、どうしようか。

「・・・そうね。あなたの想いはよくわかったわ。」

とりあえず、苦しくなる程度には好きでいてくれているらしい。
それは咲夜も美鈴も、という意味だろうか。
その能天気な笑顔からは、想いに身を焼いて苦しむ姿はあまり想像できない。
けれどまぁ、本人がそういうのだからそうなのだろう。

なら、さて自分はどうだろうかと思った。
彼女なしでは生きていけないくらい?
まぁそれは確かにそうなのだが、何か今ここで体現できるものがいいな、と思う。
しばらく腰をさすって考えて、やがて一つだけいい考えが浮かんだ。

「うん、じゃあ・・・。」
「?」
「私はね。」

にっこりと笑いながら、頭一つ分高い美鈴を見上げる。
首をかしげる彼女に笑い返してから、すばやくナイフを引き抜いた。

「っ!」
「私は、殺したいくらい愛してるわ。」

ひゅっと風を切り、そのナイフの切っ先を美鈴の喉に押し付ける。
一瞬身を固くした美鈴は、咲夜の言葉をしっかりと咀嚼して、やがてしまりの無い顔で、にへら、と笑った。

「じゃあ私も言葉をかえましょう。」

そうしてから、やおら真剣な顔になって、ゆっくりと身を屈める。
その拍子にナイフが皮膚を裂いて、真っ赤な血がとろりと流れた。
身を引く咲夜を反対に抱き込んで、ぐっと引き寄せる。
門の影にするりと入り、自分の背中を壁に押し付けた。

先ほどまで見えていた景色が見えなくなり、代わりに美鈴の笑顔と風雨に汚れた壁が見える。
ナイフの切っ先は、いまだ美鈴の喉に押し付けられたまま。
鮮血が徐々に銀のナイフを伝っていくが、双方とも動じる事はしなかった。

「咲夜さんが殺したいほど私のことを好きだって言うんなら。」

自ら退路を断って、妖怪は笑う。
先ほど咲夜がしたようにその頬を包んで、綺麗な面差しをそっと引き寄せた。

「私は、殺されてもいいくらい愛してます。」

上向いた咲夜を、いささか乱暴に抱きしめる。
ナイフを持った腕はすでにだらりと投げ出されており、彼女の瞳は喉元を流れる血を見つめていた。

しばらく何も言わずにいて、やがて咲夜はその血に舌を這わせる。
ざらざらとした舌が、丁寧に血を拭っていく。
傷口に直接舌先を当てられると、ぴりぴりとした痺れがあって、くすぐったかった。

「くすぐったいです。」

だからそう言ってくすくすと笑うと、喉の上下が面白いのか、咲夜は軽く歯を立てて喉元に喰らいついてくる。
あぅ、と変な声を上げながら、美鈴はされるがままのほほんと笑った。

どうやら今日の咲夜は、ひたすらかまってモードらしい。
こういうときは無駄な抵抗などせずに、したいようにさせてやるのが一番だ。
一応死角には入ったし、見られたところで美鈴は痛くも痒くもない。
むしろ仲良しなんだからいいじゃないですか、と、胸を張って言ってやりたいくらいだ。

揺れる銀灰の髪を撫でながら、やっぱり美鈴は笑う。

「咲夜さん。」
「・・・・・。」
「咲夜。」

二度目の呼びかけでやっと顔を上げた咲夜の後頭部を捕らえて、深く唇を押し当てた。
咲夜は一瞬体を強張らせたが、すぐに緊張を解いて目を閉じる。
美鈴の背中に空いている腕を回すと、長い髪をくしゃりとつかんだ。

時折、ふ、と息をつく美鈴の体温を全身で感じながら、もう片方の手で握っていたナイフを放る。
かしゃんと音を立てて地に落ちたナイフを見もせずに、咲夜はぎゅっと美鈴にしがみ付いた。

交わされる吐息が熱い。

「めい・・・りん・・・。」

息継ぎの折に名前を呼んだら、咲夜を抱きしめる腕が強くなる。
乱暴にも感じるその力が嬉しくて、咲夜も美鈴の背に回した腕の力を強くした。

あぁ、愛おしい。

あいにくと、美鈴が唇を離してくれないから愛を囁く事はできなかったが、その分甘く、その唇を受け入れた。
一つ触れるたびに、笑いたいような泣きたいような、不思議な感覚が胸を締めた。

その感情に名前を付けるのは難しかったが、咲夜はただ胸中で、愛おしい、と言う言葉を転がし続ける。



晴れ渡った空は、見えない。
あえてそれから逃れるように、咲夜は小さな世界で束の間の休息を得るのだ。

赤の占める、世界で。
こんばんは狗月です。
今回は甘めに。

咲夜さんのいう小さな世界ってのは、美鈴で埋め尽くされた空間のことで、自分が唯一ありのままをさらけ出せる場所ってこと。
それは小さくて、自分の中では微々たる割合しか占めていないけれど、それでも、その場所を失ったら疲れて立ち上がれなくなってしまうだろう。
みたいな!!みたいな!!
今まではどーよ、って感じだったんですが、今回は胸張ってめーさくって言える気がする!!
あれ、気だけですか・・・?

誤字脱字は一応チェックしましたが、もしありましたらご指摘お願いいたします。
では、拙作ですが、読んでくださってありがとうございました!!
狗月
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コメント



0.3720簡易評価
2.60名前が無い程度の能力削除
甘くて良いんだがヤマが欲しかった
6.無評価名前が無い程度の能力削除
う、うん。そうだ。ヤマが必要に違いないが、これはこれで良い様な気もしないではないんじゃないか?
お、俺は好きだぞ。
7.80名前が無い程度の能力削除
甘い話でグットです。
8.100名前が無い程度の能力削除
言葉や表現がやわらかくて好きです。あったかくなりますね。
9.100名前が無い程度の能力削除
あ、甘いぜ……。
でもいいなぁ、こういうめーさくも。
読んでてにやにやでした。
15.100名前が無い程度の能力削除
甘いぜw
18.100名前が無い程度の能力削除
終始ずっとイチャイチャか!これは点数を入れざるおえない。
あー最高です。めーさく最高です。こんなに素直な咲夜さんは珍しいかも。
19.90名前が無い程度の能力削除
これはかわいすぎる咲夜さん
いいぞもっとやれ!!
21.60名前が無い程度の能力削除
糖死するw
22.無評価名前が無い程度の能力削除
オチもヤマも何もないね。
ぷちにでも載せなさいな。
24.100名前が無い程度の能力削除
甘すぎて死んだ。
たまらん。
26.100名前が無い程度の能力削除
だ、誰か、塩辛を…
28.100nanashi削除
さささ最高やないか!!
30.100名前が無い程度の能力削除
甘いぜっw
ラブラブ過ぎる二人の日常がもっとみたいな!!
32.100名前が無い程度の能力削除
今なら醤油飲めるぜ
おつ
33.90名前が無い程度の能力削除
ヒュー
34.100名前が無い程度の能力削除
至高のめーさくをここにみた
37.100名前が無い程度の能力削除
百合
38.100名前が無い程度の能力削除
甘党にはこの甘さがたまらん!
もっとやれ!!
39.100名前が無い程度の能力削除
文句なしのめーさく
42.90名前が無い程度の能力削除
めーさくはやはりいいな
43.100名前が無い程度の能力削除
甘すぎて舌がどこにあるのか分かんなくなった
48.100削除
これは甘いめーさくだ              いいぞもっとやれ
49.90名前が無い程度の能力削除
鼻から砂糖出た
54.100名前が無い程度の能力削除
最高!
58.100名前が無い程度の能力削除
鼻血でた
59.100名前が無い程度の能力削除
なんという甘さ
カカオ0%のチョコくらい甘い
60.100名前が無い程度の能力削除
砂糖吐いた。
ぐふぉっ。
61.100名前が無い程度の能力削除
(吐血)
76.100名前が無い程度の能力削除
何という体が拒否しそうなほどの甘さ
しかしそれが今更ながら点数をつけたくなる効果がある
80.100名前が無い程度の能力削除
うごご。最高!
これは良いさくめー。
85.100名前が無い程度の能力削除
あまあまなにも良いですなw
100.90名前が無い程度の能力削除
あまくて良い。
想いの強さを言い合うなんてさ! 素晴らしい。
106.100名前が無い程度の能力削除
あれ、鼻から赤いものが。