Coolier - 新生・東方創想話

花咲かせる友人

2009/03/02 01:28:35
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 この作品は作品集の中にある『忌み嫌われた友人』の設定を受け継いでいます。
 そちらを読んでからのほうが読みやすいかもしれません。
 とりあえずさとりと幽香は友達です。



 ~0~

 巫女や魔法使いが地上からやってきて、早くも半年がたった。
 あれから変わったことは、地底と地上の行き来が楽になった事くらいだが。
 私は結局地上には行ってなかった。(ペットたちはしょっちゅう遊びに行っているみたいだけど)
 もし地上に行ってあの妖怪と会ってしまったら。
 さらに私のことを忘れてしまっていたら、それを考えると怖かった。

「私は逃げてばっかりね、これじゃこいしのことを言えないわ」

 せめて変わるきっかけになれば、と昔のことを思い出す。
 本当はそんなの言い訳で、失敗だらけの過去にしがみついて未来から逃げているだけなのに。




 ~1~

 無名の丘をさらに奥、幻想郷の最南端に私の住居はあった。
 ここは南向きのすり鉢状になっており遠くからだと見つけづらい構造をしているからだ。
 南向きの土地のおかげで日当たりがいい、今度家の周りにヒマワリでも植えてみようと思いながら、私はキキョウの一輪挿しの水を取り替えていた。
 このキキョウは1年ほど前に、私の唯一無二の友人である風見幽香に貰ったものだ。
 この花は何故か1年たっても枯れずに、綺麗な花を咲かせていた。
 キキョウのお返しにもピッタリだろうし、やっぱりヒマワリを植えてみよう。

「最近は人間も妖怪もこないし、平和ねぇ」
「花の妖怪なら毎日来てるじゃない」

 私の独り言に答えたのは、妹のこいしであった。

「幽香はいいのよ、友達なんだから」
「わたしはよくないの、今日も来るんでしょ?」

 もしかしてこいしは幽香のことが嫌いなのだろうか?
 不安になったが、心からそう思っていないことに気付いた私は聞いてみた。

「なんで良くないのかしら?」
「あいつはわたしの好敵手だからね、お姉ちゃんを盗られるわけにはいかないわ!」
「幽香はそんなつもり無いと思うわよ」

 そんなとりとめのない会話はノックの音に中断された。

「きたわね!トラウマを呼び覚ましてあげるわ!」

 こいしは意気揚々と扉を開けた。
 最近はこいしも楽しそうで何よりだ。

「元気がいいねえ、相手をしてあげたいけど今日はおまえのお姉ちゃんとお話に来たんだ」

 しかし出てきたのは幽香ではなかった。
 角を一本生やした、背が高い鬼だった。

「こいし、奥に行ってなさい」
「うん・・・・・・」
「はじめまして、古明地さとりと申します。こんな所に何のようですか、勇儀さん?」
「そんなに怖い顔をしないでおくれ、あんたらに不利益になるようなことはしないさ」

 とりあえず勇儀の言葉に嘘がなかったので、お茶を出すと彼女は早速話を始めた。

「さとりは地獄の縮小の話を知っているか?」


 彼女の話を要約すると、地獄の縮小によって開いた土地を鬼が貰ったと言うこと。
 そこに都市を造って移住したと言うこと。
 そこには地上で嫌われている妖怪を率先的に受け入れると言うこと。
 そしてそこに私達も来ないか?と言うことだった。
 確かに悪い話ではない、地底ならば妖怪退治の人間や暇をもてあました妖怪達にいきなり襲われることもないだろう。
 しかし簡単に「はい」と言えない理由があった。

「悪い話ではないですが、あなたが私を地底に誘うのは私の能力に利用価値があるからでしょう?」
「利用価値って言い方はやめてほしいね」
「あなた達は地底で暮らす変わりに怨霊の管理を任された、心を読める私は怨霊と会話が出来ますし適任だと思ったのね」

 冗談じゃない、それに地底に行ったら幽香とは会えなくなるじゃないか!
 それだけで断る理由には十分だった。

「そうかい、まあ無理強いはしないさ」

 そう言うと、彼女は帰っていった。

「その気になったらいつでも言ってくれ、これでもあんた達のことを心配してるんだ」

 と、言い残して。



 勇儀が帰ったあと、すぐに幽香が遊びに来た。
 勇儀が家から出て行くところを幽香も見ているはずだが、とある悩み事を抱えていたのでそれどころでは無いのだろう。
 私はその悩みを解消してあげることにした。

「私、幽香のお家に行ってみたいわ」
「え?」

 彼女の悩み、それは私を夢幻館に招待したいと言うことだった。
 普通に誘えばいいのに、と思わなくもないのだが照れくさかったらしい。

「半年も前からそのことばかり考えてたじゃない・・・・・・」

 幽香が口にするまで待っているつもりだったがいつまで待たせるつもりだ。

「でも、この家にこいし1人残しても大丈夫?」
「それは・・・・・・」
「大丈夫だよお姉ちゃん、それに幽香も心配しすぎよ」

 こいしも覚り妖怪だ、私がどうしたいのかこの子には分かっている。
 なのでその言葉に甘えることにした。

「ありがとうこいし、ちょっと家を空けるわね」
「だから心配しすぎだよ、まかせといて!」





「すっかり遅くなってしまったわね」

 夢幻館を隅々まで案内して貰って、いろいろな事を話していたら帰るのが遅くなってしまった。
 ヒマワリの種を買ってから急いで帰り道を飛んでいたのだが、いつまでたっても家が見当たらなかった。
 
「え?なんで・・・・・・」

 それもそのはず、私の家はその姿を炭へと変えていたからだ。
 誰がやったかなんて分かっている、根拠のない正義感を振りかざした人間の仕業に決まっている。
 そんなことより、こいしの姿が見当たらない、こいしは何処に行ってしまったの!

「こいし!どこにいるの!こいし!」
「おねえちゃん・・・・・・ごめんなさい!」

 こいしは近くの岩陰に隠れていた、私に抱きつくと「ごめんなさい」とただただ謝っていた。
 このままではこいしが何を謝っているのか分からなかったので、こいしの心を読んでみた。


 人間共はいきなりやってきて、こいしを攻撃してきたらしい。
 こいしは戦ったが多勢に無勢、仕方なく逃げ切ったが家はこの通りだという。
 こいしはお家を守れなかったことを謝っていたのだった。

「ごめんなさい、ごめんなさい」
「いいのよ、こいし。あなたが無事だったのだから」

 こいしの小さな背中を抱きしめながら、私はこいしをこれ以上傷つけまいと心に誓ったのだった。





 私達の新しい住居は、前とは比べものにならないくらい立派で大きかった。
 灼熱地獄の跡地にあるというその館の名前は『地霊殿』
 怨霊がうようよしているのが玉に瑕だが、ここには妖怪退治も妖怪も襲ってこないし猫や鴉がたくさんいるので寂しくもなかった。
 しゃべれない動物たちは私達の仲良くしてくれるのだ。
 ここにいれば、こいしもあの時のことを忘れてくれるだろう。

 私はあのあとすぐに、勇儀に会いに行った。
 すでに勇儀は地底に住んでいて、事情を話すとすぐに地霊殿を与えてくれた。
 勇儀は「これだから人間は・・・・・・」と剣呑な目つきになったが、私が気にしないで欲しいというと渋々了承してくれた。

「地霊殿に住まわせてもらう以上怨霊の管理も、灼熱地獄の火力調整もやらせてもらうわ」
「ああ、そうして貰うと助かるよ」
「でもね、勇儀。こいしは自由にさせてあげてほしいの」
「かまわないさ、誰かが仕事をしてくれればいいんだから」
「ありがとう。それともう一つお願い、これを幽香に渡して欲しい」
「ヒマワリの種? 別に地上に行って直接渡しても構わないぞ」
「こいしのそばを離れるのは不安なの、それに会ったら別れるのがつらいでしょ?」
「わかったよ、しっかり渡しておく」

 これでこいしは幸せになれるはずだ、私も地上に未練は無い。
 ただひとつ、幽香に直接お別れを言えなかったことを除いて・・・・・・。



 ~2~

 こいしの為に地底に来たはずなのに、結局あの子は心を閉ざした。
 嫌われ者だらけの地底ですら疎まれることに気付いたからだと言っていた。
 それはつまり、あの子は逃げずに自分を変えようとしたってことだと思う。
 自分から人々に歩み寄った過程があったからこそ、能力を封じる決心をしたんだと思う。

「自分を変えなきゃあの子の心を開くなんてとうてい無理ってことね」

 幽香のことを思い出していると、自然と足はあんなに嫌がっていた地上へ向かっていた。
 かつて私の住んでいた土地に行ってみると、普通よりもひとつ多いはずの自分の目を疑った。
 数百年前は何もない土地だったのが、一面に黄色いヒマワリの花が咲き誇っていた。

「あらやだ、こんな所に嫌われ者がいるわ」

 景色に見とれていると、後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。
 今一番会いたくなくて、そのくせ一番会いたかった妖怪だった。

「久しぶりね、幽香。うれしいわ憶えててくれて」
「忘れるわけ無いでしょ、私はあなたに永遠の愛を誓ったんだから」

 キキョウの花では遠回し過ぎて、心が読めなきゃ伝わらないと思う。
 まあ彼女らしいといえばらしいけど。

「私もお返しに花を贈る予定だったんだけど、渡し損ねてたわね」
「変わりに種を贈るなんてロマンチックの欠片もないわね、腹が立って全部埋めちゃったわよ」



 数百年分って言ったら言い過ぎかもしれないけど、色んな話をした。
 昔の思い出とか、これまでどんなことがあったかとか。

 まわりに生えたたくさんの黄色い目は、優しく私達を見つめている気がした。
さとりに『私の目はあなただけを見つめる』って言われたら、むしろ怖いと思います。

今回で2作目になりますが、全作の続きみたいなものを書いてみました。
誤字、脱字などや感想があればコメントして頂くとありがたいです。

最後に、ここまで読んで頂いてありがとうございます。
幽遊
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コメント



0.800簡易評価
14.70名前が無い程度の能力削除
夢幻館に招待って悪魔姉妹や子分達にも会わせたってことになるような・・・