Coolier - 新生・東方創想話

最後に誰が笑ったか

2009/01/11 11:44:11
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輝夜と妹紅。二人は常に殺し合っている。
どっちも不老不死なので、殺し合いは永遠に続く。
このままではらちがあかない。そこで月の天才こと永琳は考えた。白黒つける方法を。

「というわけで、いい? 二人には今からあの小屋の中に入ってもらうわ」

二人の目の前には小屋と言うには大きめな建屋があった。

「そして、この小屋の中に隠されている、薬を調合するための4つの材料を持ってこの小屋から脱出した人が勝ちよ」

それを聞いた輝夜は思わず不敵な笑みを浮かべる。

「ふっ、なーんだ。そんなの楽勝だわ。私が勝つに決まってるじゃない!」

その言葉を聞いた妹紅がすかさず反応する。

「ふーん。そんな事言ってられるのも今のうちよ。ねぇ? てるよ」
「誰がてるよよ! てるてる坊主じゃあるまいし!」
「てるてる坊主、そっくりじゃない。頭がまるいとことか」
「なんですって! 調子に乗るんじゃないわよ! このひょうたんぼく!」

早くも二人は一触即発状態となっていた。

「……ちなみに小屋を壊さない限り、いかなる方法を使って相手の邪魔をしてもかまわないわ」

彼女の言葉を聞いた二人の目の色が明らかに変わる。

「……ふーん、い・か・な・る方法を使ってもねぇ……」
「へぇ~? ……それは怖いわねぇ……気をつけないとねぇー……?」

そう言いつつ二人からは殺気立ったオーラが立ち始め、彼女らの放つ殺気で辺りは異様な雰囲気に包まれる。
遠巻きにいた鈴仙や、その他の大勢組のイナバ達が、このままでは逃げ出しかねないほどだった。
すかさず永琳が二人の間に割って入る。

「そうねぇ。このままだと普通に殺し合い始めそうだから、とりあえずこの妨害グッズを渡すことにするわ。これをうまく使って相手より先に材料を見つけるのよ」
「望むところよ!」
「負けないからね!」

二人はにらみ合ったまま妨害グッズの入った小さなポシェットを受け取る。

「さ、それではスタートよ! ちなみにこの砂時計が終わるまで、二人とも脱出できなかったら小屋は自動的に爆発するから気をつけてね」
「さらっと怖いことを言ってくれるわね……流石永琳だわ」
「それじゃいくよ! 覚悟なさい! 輝夜!」
「その言葉そっくりそのまま返してやるわ! 妹紅!」

かくして二人は意気揚々と小屋へと入って行ったのだった。

「……ふーん、案外こぢんまりとしてるわね」

輝夜が侵入した部屋には、机が一つあるだけの小さな部屋だった。

「こういう何気ない所に隠されてるものよね」

そう言いながら輝夜が机を調べると早速、大きめの瓶に入った材料が見つかる。

「これは幸先いいわ! これで残りは3つね!」

彼女は喜々として、次の部屋へと進む。するとそこには怪しい額縁があった。

「ふふん。あからさまに怪しいわね~」

そう言って彼女が額縁をずらした瞬間、額縁の奥から大きなばねが勢いよく飛び出して彼女の体を大きく弾き飛ばした。

「うぎょぉああ!?」

そのまま彼女は反対側壁に思いっきりたたきつけられ、あえなくKOしてしまう。

「……ふっ、ひっかかったわね。単細胞ニートめ……」

物音を聞いた妹紅が、思わずほくそ笑む。というのもこれは、彼女が仕掛けたトラップだったのだ。
このトラップは永琳が渡した妨害グッズに入っていたものだった。この強力バネ以外にも、家が壊れない程度の時限式地雷や火薬、それに硫酸のつまった瓶なんかが入っていた。
しかも、ご丁寧なことにそれぞれ効果的な使い方を記した説明書まで添えられていた。
そんなこんなしてるうちに輝夜は復活する。そして彼女は妹紅の仕業と、知るや否やたちまち額に血管を浮かび上がらせる。

「……あ・い・つ・めぇ……っ!! やってくれるじゃないのよ!」

そう言って彼女は、怒りに震える手で妨害グッズをあさりはじめるのだった。
その頃、妹紅は材料を求めて建屋をさまよっていた。

「うぬぬぅ~……どこにあるのよ!! もう!!」

彼女が探せど探せど材料は見つからなかった。しかも部屋と言う部屋が、皆似たような作りになっているので、ずっと同じところをうろうろしてるような錯覚すら覚えた。

「あぁ……もう! 面倒だわ!」

そうどなり散らして彼女が、ドアを蹴り開けた瞬間、何かがバシャリと顔にかかった。次の瞬間、彼女は顔が焼け落ちるような激痛に襲われる。

「ひぎゃああああああああああああっ!! あついぃいい!! 目がぁああ!! 目がぁあああああああっ!!」

そう、それは硫酸だった。輝夜が仕掛けたトラップにひっかかってしまったのだ。
彼女は、しばらくの間喚きながら転げまわっていたが、やがて微動だにしなくなった。すなわち死……もとい行動不能に陥ったのである。

「……愚かね。大声なんか出してるからどこにいるのかバレバレなのよ」

そう言って今度は輝夜がほくそ笑む。そして彼女は妹紅の亡骸から転げ落ちた薬の材料を奪い取って部屋を後にした。



「おおっと、今度は妹紅が輝夜のトラップにひっかかったみたいよ」

外では永琳達イナバ勢をはじめとして、更にいつの間にか集まった野次馬達が二人の勝負の行方を二画面式大型ビジョンで観戦していた。

「なかなか面白いことやってるよな~。いい暇つぶしになりそうだぜ」
「まったく……バカじゃないの?」
「ま、そう言うなって。こういう一風変わった対決も楽しいぜ」

などと言いながら、もてなしのお茶を飲みつつ観戦しているのは魔理沙と霊夢だ。その横にはアリスや萃香の姿もある。
更には新聞のネタを探してふらふらしていた文も一緒になって勝負の行方を見守っていた。

「ああ! も、妹紅! 私の妹紅になんてことをするだー!!」

妹紅が無残にやられるのを見た慧音が思わず永琳に詰め寄ってくる。

「ちょ、ちょっと興奮しすぎよ! だいたい最初に手を出してきたのは妹紅の方でしょ? それにどうせすぐ復活できるんだから大丈夫だって」

永琳の言葉に彼女は、腑に落ちない様子ながらもひとまず下がった。
そうしてるうち妹紅が復活する。

「うぬぬ、迂闊だったわ! 負けないわよ。輝夜!」


その後も、妹紅が自分で仕掛けた罠にはまって自爆したかと思うと、輝夜は輝夜で、行き止まりと知らずにドアにトラップを仕掛け身動きが取れなくなったりと、二人の仁義なき戦いは続いた。そして……。

「やったわ! ついに念願の薬の材料を全部手に入れたわ!」 

声を上げたのは妹紅だった。彼女は奪い合いの末に材料をすべてそろえることに成功したのだ。

「さあ、こんなとこからは、さっさと脱出してやる!」

彼女は早足で出口の方へと向かう。そしていよいよ出口のある部屋まで来た時だ。
物陰から突然、誰かが姿を現す。言うまでもなく輝夜だった。

「ふっふっふ……待ってたわよ? 妹紅!」

そう言いながら彼女はゆっくりと妹紅に近づいてくる。

「さ、その材料を大人しく渡しなさい」
「冗談じゃないわ! 私が集めたんだから私のものに決まってるでしょ!」
「ふん、そう言うと思ってたわ……だったら力づくで奪うまでね!」

輝夜は、そう言うとにやりと笑う。

「何だかんだ言っても結局、最後はこうなるのね……いいわ、ぶっ倒してやる!」
「望むところよ! さあ、最終決戦と行きましょう!」

そう言って二人は対峙する。
輝夜の手には、どこで手に入れたのか、銀のダガーが握り締められていた。

「ちょっと、そんなぶっそうなのどこで手に入れたのよ……?」
「ああ、これ? 机の中にあったのよ。きっと、これも永琳が用意してくれたんだと思うけど……ねぇ」

輝夜はナイフを妹紅へ向けたままじりじりと近寄っていく。対する妹紅はどこか余裕のある笑みを浮かべながらも後ずさりする。

「何よ。逃げることないじゃない。こんなので刺されるくらいどうってことないでしょ。不老不死なんだから」
「不老不死でも痛いのは痛いんだよ。それに……ここでやられたら負けちゃうしね!」
「ご心配なく、どの道あんたは、やられる運命よ」
「それはどうだろうねぇ?」

やがて、妹紅は壁際まで追いつめられる。

「ほら、やっぱりやられる運命じゃない。虚勢張ったところで無駄だったみたいね」

そう言うと輝夜は、その得物を妹紅の急所めがけて突き刺す。突き刺された妹紅は、よろけながらとなりの部屋へ直も後退していく。
すかさず輝夜は彼女を追いかけた。

「待ちなさい! キレイに息の根止めてやるわ!」

そして輝夜がとなりの部屋に入った時だ。

カチリ

何かを踏んづける感触を覚え、それが何か理解した輝夜は思わず顔を青ざめさせた。

「ふふ、ひ……ひっかかったわね……単細胞ニート」

妹紅は息も絶え絶えに、そう呟くと、己に刺さっているナイフを引き抜き、そのまま床に崩れ落ち動かなくなる。
同時に輝夜は地雷の爆発によって消し飛んでしまった。


「……あらあら、これは予想外の展開だわ。まさかの両者KOね」
「あ、あの、師匠様。この場合の勝敗は……?」

思わず永琳に鈴仙が質問すると、彼女は平然と言い放った。

「どうせ、二人とも放っておけばそのうち復活するでしょ」
「は、はぁ……」

ほどなくして最初に輝夜が復活する。彼女は、床に転がった材料入りのバッグをつかむと、すぐさま出口に向かおうとする。しかし、遅れて復活した妹紅が、とっさに彼女の足首をつかんで引きずり倒す。

「うきゃっ!? なにすんのよ!」
「逃がさん……お前だけは……」

その時だ。

「あら、時間切れだわ!」

永琳があっけらかんと言い放つ。

「なんですと!?」

ギャラリーの誰ともなく声が上がる。
と、次の瞬間、建屋は大爆発し、天まで届かんばかりの火柱を上げつつ、もうもうと真っ黒いキノコ雲を作り、がれきの山と化してしまった。
慧音は、「妹紅!」と叫びながらまっしぐらにがれきの中へ突入していく。
そして呆然とするギャラリーを尻目に永琳はぽつりと言う。

「……さて、疲れましたし、そろそろお開きにしましょう」

彼女の言葉で、ギャラリー達は、やれやれといった様子であっと言う間に帰っていってしまった。

「さ、それでは私たちも帰りましょ」
「ええぇ!? いいんですか? これ……」
「いいのいいの。いつものことよ」
「は、はぁ……」

鈴仙は、いつもながら師匠の考えてることはよくわからないなと心の中で思いつつ、後ろ髪ひかれながらも永琳と一緒にその場を後にした。

 その後、怒り狂った二人の不老不死の者によって、永遠亭もろとも永琳は10回程焼き尽くされることになるが、それはまた別の話である。
今年初投稿になります。
今年もどうぞよろしくお願いします。

ちなみにこれの元ネタのゲームは有名ではありませんが
個人的にはかなり面白いと思っています。
友情崩壊系ですけど。
それではまた。
B・G・M
http://id40.fm-p.jp/12/fujinahu/index.php?
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コメント



0.270簡易評価
3.100名前が無い程度の能力削除
友人を罠で嵌め殺し、悠々と脱出していた日々を思い出したw
5.90名前が無い程度の能力削除
何年も昔に携帯ゲームで遊んでたなぁ。
なんとも懐かしい。
10.40名前が無い程度の能力削除
うーん、結局は白黒着いていなくてガッカリしました。
冒頭の文章で、決着がつく斬新な方法が提示してあると思ったので…。
11.80名前が無い程度の能力削除
冷静に読むとすげぇグロいよなぁ
12.60煉獄削除
う~ん……結局は決着してないですよねぇ。
どっちかが勝って、その薬の材料で何かがあると
思ってただけにちょっと残念です。

私がしってるトラップとか仕掛けるのは
トラップ○ンナーぐらいかな。
15.20名前が無い程度の能力削除
なんというか書きたいこと書いたのはいいけど、オチが思い浮かばなかったから適当にお茶を濁してごまかしたように見えました。


……このゲームかなりメジャーだと思うんですがね。