Coolier - 新生・東方創想話

思い出の本

2008/12/31 19:35:58
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目を開くと、暗い天井が目に入った。
酒のきつい臭いがつんと鼻を突く。
その不快感に表情を思い切り歪め、霖之助はもぞもぞと右手を動かした。
何度か手当たり次第に布団を叩いた後、彼は自分の眼鏡を探り当てて、ゆっくりとそれを持ち上げる。
欠伸をかみ殺し、衣擦れの音と共に体を起こし、寝ぼけ眼で明かりの消えた奥の間を見やる。
一升瓶が幾つも転がり、卓袱台もひっくり返ってしまっている。

どうやら今宵は羽目を外しすぎてしまったらしい。
楽しかった。本当に楽しかった。
こんなに愉快な宴会は二度と無いかも知れないと思ってしまうほどに、それは素敵な宴会だった。
それだけに、終わってしまうと空しいものである。
新年を祝い、酒を酌み交わし、そして訪れたこの寂寞。

ふと視線を動かすと、柔らかな髪を乱し、大きめの枕を抱きしめて霧雨魔理沙が静かに寝息を立てていた。
夜遅くまで働いてくれたストーブの前に、布団も被らず丸くなって転がっている。
掛け布団は弾き飛ばされてしまっているようで、彼女の脇で小さな山になっていた。
小さく息を吐いて、霖之助は体を起こした。
そして、ふかふかとした重量感のある布団でそっと魔理沙を覆った。
ん、と小さく溜息を吐いて彼女は身をよじる。
しかし目を覚ますことはなかった。
にやにやと笑いながら弾丸のように次々と言葉を放つこの少女も眠ってしまえば可愛らしいものである。
そんな彼女の眠りを妨げる事がないよう、霖之助はそっと体を起こした。

その時、ふと頬に冷たいものを感じ、彼ははてなと後ろを振り返る。
奥の間の戸が小さく開いていた。
そこからすきま風が流れ込んできているらしい。
ストーブの余熱によって暖められているこの部屋だが、放っておけば朝には冷え込んでしまうことだろう。
彼はのそのそと戸の方へ歩いていったが、そこでふと思い返す。
折角目を覚ましたのだし、少し外の風に当たるのも悪くないかも知れない。
軽く衣類の乱れをただし、彼は音を立てぬよう下駄をひっかけてそっと静かに奥の間を出た。

彼の見た客の居ない店内は何も音を立てるものはなく、酷く無機質に感じられた。
そもそも外の道具というものがやたら排他的なのだ、と霖之助は思う。
芸術品はその限りではないが、
道具については、その鋭角的な造形は温かで角張ったところのない幻想郷の空気と相反しているように感じるのだ。

彼はふむ、と息を吐いてカウンターを見やった。
そこに腰掛けて、自分はいつも接客をしている。
不思議なものだな、と霖之助は思った。
かつん、かつん、と足音のひとつひとつが大きく響く。
その音は、内包する意味において本の頁を捲る時のそれにどこか似ていた。

淋しいものだ。
本当に、淋しいものだ。

彼の溜息に混じり、ひゅうう、というか細い音が耳に入る。
香霖堂の戸もまた、小さく開いていた。
霖之助はそれに導かれるように歩を進めて、外に出て、後ろ手で扉を閉めた。
容赦なく寒気の棘が突き刺さる。
それを気にすることなく、一歩、二歩。
ここ数日の雪を嘲笑うかのように空には冷然と月が浮かんでいる。
この寒さのためだろうか、平時は温かに感じるその光は今日に限って敵対的に思える。

積もった雪も、揺れる梢も、何もかもが白々しい。
外は自然である。
香霖堂は人為である。
敵対視されるのは当然の事だろうか、と霖之助はそんな事を考えてみる。
無論、それは下らない妄想に過ぎない。
センチメンタリズムに浸るのは心が弱っている証拠だろうか。
それとも逆に感傷に浸る余裕があると捉えて構わないのだろうか。

自分の心情を把握しかね、霖之助はそれを持て余したままふらりとまた一歩踏み出す。
その時、夏の香りがふわりと彼の鼻腔を撫でた。
人間には感じ取れないような、本当に幽かなものだったが、それでも確かに感じたのだ。
はてな、と首を傾げていると、背後から静かな声がかかった。

「呆れたわね。こんな夜中にぶらぶら何をやってるのよ」

はっとして振り返ると、博麗霊夢が井戸の縁に腰掛けていた。
彼女の脇にはろうそくの火が頼りなげに揺れている。
こんなに寒い夜だというのに、いつもの服装であり、そして裸足だ。

「呆れたのはこっちだよ。こんな夜中に抜け出してどうしたんだ?」

自分の声がやけに大きく響いたことに彼は驚いた。
霊夢も風情がないわね、と表情を歪めている。
完全な沈黙の支配するこの夜にいつもと同じ声の調子で話すことが間違いだったらしい。
霖之助は素直に詫びて、彼女の方へ歩み寄った。

「こら、前に立ったら月が見えない」

霊夢は溜息を吐き、そして自分の隣を軽く叩いた。
霖之助はまた詫びて、彼女の隣に大人しく腰掛ける。
彼は静寂に潜む美を楽しむ事の出来ない男ではない。
しかし、その美しさを他人と共有する事なくいつも独占してきたために、
複数人でそれを愛でる事に慣れていないのであった。

なので、霖之助は何も語らない事にした。
沈黙を守り、静かに空を見上げる。
特に何かを考えるわけではない。
空の黒と、星の白や青をただ目に焼き付けるだけだ。
それはとてもとても静かな愉悦だった。
そして、その繊細さ故に月の明かりすら無粋で邪魔なものに思われてしまう。

目を細め、わざと口を大きく開いてほうと長い息を吐く。
白いもやもやとしたものがゆっくりと空にのぼり、拡散し、そして闇に紛れて消えていった。

「子供みたいな事をするのねえ」

それを見て、霊夢は目を細めてくすくすと笑った。
普段とは違う、落ち着いた、そして静かな声だった。
思えば霊夢もまた閑散とした神社に住まう巫女である。
時には空を見上げ、物思いに耽ることがあるのかも知れない。

「寝付けなかったのかい」

しばらくの沈黙をおいた後、霖之助はそう質問した。
霊夢は白い足をぱたぱたと軽く揺すった。
草に付着していた夜露がぱっと散るのが目に入る。

「そんなものかしらね」

曖昧な返事をして、霊夢は再び黙りこくった。
何かはぐらかしているようにも思われる声の調子だった。
しかし霖之助はそれについて尋ねる事なく、彼女をまねて草を蹴った。
水滴は非常に冷たく、ただただ冷えた足の甲に鋭い痛みをもたらすだけだった。

「それで、霖之助さんはどうしたのよ」

霊夢は結局ぺたんと足の裏を地面につき、そう彼に尋ね返した。
特に理由というものはなくふらふらと出てきただけだったので、彼は返答に窮した。
しかし、誠意のない答えはこの不思議な夜を詰まらないものに変えてしまうだろう。
なので霖之助は難しい言葉で煙に巻くことなく、珍しくぽつりと一言で解答した。

「惹かれたから、だろうね」

ひどく抽象的で無愛想な答えだったが、それが正しいような気がした。
逐一状況を説明するのはかえってつまらないように思われた。
霊夢はただ、ふうん、と気のない返事をして視線を地面に向ける。
霖之助もまた彼女の視線を追い、そして小さなガラス瓶をその足下に見つけた。
外の世界のカップ酒の容器である。
月見酒でもしていたのだろうかと彼は半ば呆れたのだが、
その容器をよく観察し、どうやらそれが誤りである事に気が付いた。
真新しく、汚れのないカップにはこよりのようなものが二本、突っ込んである。
霖之助がそれに手を伸ばそうとすると、霊夢はぴしゃりとその手を叩いた。

「花火をしていたのよ」

花火、と霖之助は霊夢の言葉を繰り返した。
ぼおお、と大きな音を立てて目にも鮮やかな光と火を放つそれを思い、
霖之助はやや不快な色をその顔に浮かべた。
霊夢はそんな彼の考えを汲んだのか、

「一応言っておくけど、線香花火」

と半眼で付け加えた。
ふむ、と霖之助は少しだけ感心したように息を吐いた。

「君にそんな儚い花火が扱えるとは驚きだ。
二秒で消えてしまいそうな気がするが――」

無言で霊夢は霖之助の頭を叩いた。
彼はカップの中のこよりに視線を戻す。
人里か中有の道にでも行って買って来たのだろうか。
それにしても季節はずれの一品である。
花火は夏の凪いだ夜だからこそ楽しむことのできるものであり、
寒風吹き荒ぶ冬にはあまり似つかわしくないだろう。

今宵は不思議なことに風が弱く火が消えるような事は無いだろうが、
この寒さの中で何時間も佇む愚行を考えればやはりそれはあまり現実的ではない。
しかし、乾燥し、緊迫し、何もかもが遠くに感じられるこんな夜に
静かにぱちぱちと音を立てて静かに消える線香花火は似つかわしい。

ふと、井戸の縁に腰掛けて静かに線香花火の爆ぜる火花を見つめる霊夢の姿を思いやった。
人間というものはやはり変わっていないように見えても変わってしまうものだ。
花火をする霊夢を想像して、微笑ましい、ではなく、似つかわしい、という感想を抱いてしまうとは。

「霊夢」

霖之助はじっと空き瓶を見つめたまま尋ねた。
尋ねられた彼女は何よ、とぶっきらぼうに返す。
どうやら少しだけ機嫌を損ねてしまったらしかった。
だがそれに気が付く鋭敏な男はこの場には居ない。
霖之助は素直に自分の欲求を口にした。

「僕もやってみてもいいだろうか」

霊夢は不機嫌そうに一本こよりを取り出すと、それを彼の目の前でゆらゆらと二、三回揺すった。

「あと一本しか残ってないのよ。だから駄目」

霖之助はそれに対してはあまり落胆した様子を見せず、

「なら君が使ってくれても構わない。
線香花火なんて長らく見ていないからな、ふと懐かしくなったんだ」

二秒とか言って無かったかしら、と霊夢はなおむっとした調子でなじるが、本気で怒っている訳ではないだろう。
彼女としては霖之助を苛めているつもりなのだが、当の本人は霊夢が怒っていようがいまいが興味は無いようだ。
霊夢もそれに気が付いたのか、やれやれと溜息を吐いて、そっとろうそくを足下に移動させた。
火はちかちかと大きく揺らめいたが、消えることはなかった。
不思議に思えるほど風の弱い夜である。
霊夢はそっとろうそくこよりを近づける。

「二秒経っても大丈夫だったら、逆立ちして紅魔館一周走ってもらうから」

拗ねたようにそう言う霊夢に、霖之助はやれやれと息を吐いた。
悪いのは繊細さの欠如した店主なのだが、
本人は霊夢がだだを捏ねているだけであり自分は全く悪くはないと思っているようだ。
彼は彼なりに余裕のある大人の対応をしているつもりなのだろう。
二人の視線がこよりの先端に移る。
それは火によって踊るようにねじれ、焦げる。
そして、暗闇に赤い色が浮かびあがる。
二人はごくり、と小さく息を呑んだ。
しかし――それまでだった。

こよりの先は縮れ、黒く焦げ、そしてぼとりと地面に落ちた。
え、という声を発したのは霊夢だったろうか、それとも霖之助だっただろうか。
線香花火が鮮やかな火花を散らす事は、無かった。
先が千切れ、ただのこよりと化したそれを、霊夢は呆然として見つめた。
後に残されたのは、無様にふらふらと揺れるただのこよりである。
花火の成れの果てであり、今となってはただのごみだ。
霖之助は、ふうと長い息を吐いて、背中を伸ばした。

「不発のようだね」

ひどく残念そうな声だった。
それだけ楽しみにしていたのだろうということが霊夢にはよく分かった。
こよりの先に火が付いたときの霖之助の表情は、驚くほど真剣だった。
それだけに、この思わぬ状況に対する落胆は大きいようだった。
彼は苦笑して顔を上げる。

「まあ、これで紅魔館一周は無しということだ」

その言葉を言い終えた時には、もう彼の表情はいつも通りだった。
彼の顔を、ちらちらとろうそくの淡い光が照らしていた。
霖之助の頭の中からは、もう線香花火の事など消えて無くなったのかも知れない。
彼の興味はなんということはない平凡なろうそくの見せる橙色の混じった炎の揺らめきに移っていた。

「線香花火は、もう良いの?」

霊夢は思わずそんな事を尋ねた。
霖之助はやや驚いたように顔を上げ、そしてその表情のまま首を傾げて言った。

「無いものをねだっても仕方がないからね。別の物で代用するさ」

ひどく落ち着いた声だった。
残念な事は残念だが、それは仕方のないことだと割り切っている様子だった。
霊夢は自分の右手に残ったこよりを見つめた。
すでに花火としての意義を失ってしまったそれにはもう、何の意味は無いのだろうか。
使った後は、ただのごみ。
ならば、と霊夢は少しだけ穿った思考に陥った。

「霖之助さんは私たちが居なくなっても、そういう風に割り切ることが出来るかしら」

霊夢は少しだけ白けたように霖之助に尋ねた。
ただの他愛ない疑問のはずだった。
昔から思っていた事ではある。
人が死んだら妖怪はどう思うのか、と。
彼らにも心はある。
きっと悲しむだろう。
だが、長い生の中で彼らは何度も別れを経験して、それに耐えることが出来るのだろうか。
それはずっと疑問だった。

しかし、いつからだろう、その疑問に対する解答を切に求めるようになったのは。
紫に聞くのは腹立たしいが、かといって自分で答えを出すことは出来ない。
霖之助に尋ねてみるのは良い機会かも知れない。
人妖である彼ならば納得できる解答を提示してくれるかも知れないからだ。
しかし、霖之助の答えは霊夢のそのような期待を裏切るものだった。
彼はろうそくをじっと見つめながら、言う。

「君は線香花火を楽しむ時、火の消えたそれを想像するのか?
火が消える事を恐れる事はあるだろう、惜しむ事もあるだろう。
だが、火が消えた後の事を考えるのは無粋というものだ」

抽象的な言葉に、霊夢は小首を傾げた。
彼の言葉を、彼女は自分なりにかみ砕いてみる。

「つまり、人が生きている時にその人の死んだ後の事は考えないって事かしら。
私の質問に対する答えになってない気がするけど」

そんなことはないよ、と霖之助は首を横に振った。

「暗に解答を示しているじゃないか。
僕に君たちの死んだ後の事など考えたくもない。
その時になれば分かる事を今うじうじと考えるのは無駄でしかないからね」

霧雨の剣の事などで、魔理沙の寿命を考慮に入れたことはある。
だがそれは、直截彼女の「死」について考えたわけではない。
魔理沙の死に顔を、魔理沙がいなくなった後のがらんとしているだろう店のことを考えたわけではない。

「逃げに聞こえるんだけど」

霊夢の言葉はもっともである。
霖之助のその答えはその場しのぎのものである。
事実、彼も深く考えて答えたわけではない。
霊夢との会話よりも、彼はろうそくの火に関する考察を優先しているようだった。
彼女は質問を変えた。

「じゃあ私たちに限らないで質問するわ。
霖之助さんは、一般的に人が死んだ時にどう思うの?」

彼は肩をすくめて、そして答えた。

「人間と同じだよ。
他人が死ぬならどうでもいいし、知人が死んだら悲しむさ。
妖怪と人間の間にその点での差異は無いよ。
いや、あることにはあるし個体差も大きいが……まあ僕に限って言えばほぼ無いと言っていいだろう」

またしても詰まらない解答に、霊夢は少しだけ落胆した様子だった。

「でも、悲しんだ後すぐにその人の事を忘れるんでしょう?
さっきの線香花火みたいに」

彼女の質問に、霖之助は苦笑を零した。
話題をふってからはじめて、彼が自分を意識の範疇に入れたような気がした。
今までの彼はどう考えても自分を無視していた。
霖之助はすわりが悪いのか、軽く足を振った。
その影響で、先程まで彼が興味深く見つめていたろうそくは無様に倒れた。
当然、じゅっ、と短い音を立ててその火は消えた。
きょとんとした様子の彼女の頭をぽん、と霖之助は軽く叩いて笑う。

「なるほど。君の妖怪に対する考えはそういうものだったのか」

なるほどなるほど、と本当に面白そうに霖之助は頷いた。
彼にしてみれば他者の疑問ですら面白いのだろうか。
何を考えているのか分からない、本当に妙な男である。
しかし、遠回りはするが黙って話を聞いていれば
求める答えを提示してくれる事を霊夢は知っていたので、黙って彼の話に耳を傾けることにした。

「あんまり妖怪を侮辱しないで欲しい。僕は絶対に死んだ友人を忘れはしない」

霖之助は、そう切り出した。
隣に座っているので、見つめ合う距離は非常に近い。
霊夢は霖之助の表情をじっと観察した。
蘊蓄を語る時のやたら得意気な表情ではない。
それよりもむしろ、彼は誇りと共に語っているように見えた。
彼の表情は、古い妖怪――つまり、鬼やすきま妖怪が時折見せるそれと酷似していた。
とてもそうは忘れないなんて思えないけど、という霊夢の言葉に、いいやと彼は首を横に振る。

「彼らは過去というものを人間の何倍も大事に扱う。
過去と現在の区別を明確に付けることができない妖怪だって多いんだ。
八雲紫の言葉を聞いていると、時々混乱してしまうことは無いかい?」

あるけど、と霊夢は首肯する。
彼女は今この時の事を語っていながらにして、何の脈絡もなく数百年前の事を語り出したりする。

「でもそれって、ただ長く生きすぎて呆けただけじゃない」

違う、と霖之助はきっぱりと首を横に振った。

「ただ呆けただけなら、どうしてあんなに詳しく過去の事が語れるのか答えて欲しいものだ」

だけど、と霊夢は複雑な様子だった。

「紫はどんな事も詳しく語るわよ。霖之助さんの意見に従ったら、あいつは何でもかんでも大好きな妖怪になっちゃうじゃない」

はあ、と霖之助は首を傾げた。
彼は純粋に呆れているようだった。

「君は本当にあの子の事を何も知らないんだな」

「知ってるわよ。賢いから全部覚えてるって言いたいんでしょ?」

「違う」

霖之助は否定した。

「あの子は昨日食べた夕食の内容だってまともに覚えちゃいないよ」

じゃあ何で、と尋ねる霊夢に、霖之助は複雑な表情で答えた。

「君は認めないかも知れないが――彼女が幻想郷の全てを、
本当に全てを、いとおしいと思っているからだ」

「嘘ね」

霊夢の答えに、霖之助はがっくりと肩を落とした。
やはりまだ子供か、と彼は内心苦笑を禁じ得なかった。

「ばかねえ、霖之助さんは。
あの妖怪はどうせ食って寝る事しか考えてないわよ」

「そうかも知れないね」

言いながら、燕雀安くんぞ鴻鵠の志を知らんや、と彼は心の中でそう付け加えた。

「なら僕のことに置き換えてもいいさ。
君と出会った事、魔理沙と出会った事。
全てちゃんとこの胸の奥に、大切にしまっているよ。
絶対に忘れることがないよう、絶対に風化させる事がないようにね」

でも、と霊夢はまた反駁する。

「鳥頭の妖怪だっているわよ」

そういう連中は、と霖之助は笑う。

「いつも楽しく暮らしているが、記憶する程度の事じゃないと思っているんだろうさ。
だがね、霊夢。
そういう妖怪だって、例えば死にかけている時に恩を受ければ、絶対に忘れない。
三歩歩けば物事を忘れる妖怪がいるとする。
その妖怪が人間から恩を受けたとしよう。
その瞬間から、彼、または彼女は戦い始めるわけだ。
三歩歩けば忘れる自分とね。
忘れるものかと一歩進み、
その時のうれしさを噛み締め、一歩。
そして恩を返すと誓って一歩。
その時、その妖怪は三歩歩けば忘れる妖怪ではなくなる。
四歩でも、五歩でも、いくら歩いたってその事だけは忘れない妖怪になる。
そうやって妖怪は成長する。
試しに君が間抜けだと決めつけている妖怪に尋ねてみると良い。
一番素敵な思い出は何かとね。
きっと、とても懐かしそうな、嬉しそうな顔で、何時間も語ってくれるはずだ」

信じられないわね、と言う霊夢に対し、霖之助は余裕と共に答える。

「それなら明日にでも尋ねてみると良い。
僕の答えはいつも正しいということが分かるだろう」

そうでもないけどなあ、と霊夢は苦笑した。
霖之助の語るとんでもない話の大抵は与太話である。
たまに正解どんぴしゃりの事もあるが、
ほとんどは明後日の方向に飛んでいくのだ。

「そして、特に賢い妖怪は楽しい事はできるだけ覚えておこうとするものだ。
特に、親しい友人との間での事なんかはね。
どこそこで彼女がこうしてくれた。
あの時に彼女はこうやって笑った。
そんな事を、ずっと、ずっと、蓄積していく――どうかしたのかい?」

途中で半眼になった霊夢を見て、霖之助は言葉を止めた。
いや、と霊夢は霖之助の襟首を左手で掴んで尋ねる。

「どうして、『彼』じゃなくて『彼女』なのかなあって思っただけよ」

何故か霊夢のこちらを見る視線がとても鋭い。
どうやら何かを勘違いしているようだ。
その手を軽く払いのけて、彼は答える。

「君との事を思い出しながら語ったから、彼女としたまでだよ。
残念ながら深い意味はない」

ふうん、と霊夢は大人しく払われた手を引いて、そして笑みを見せる。

「安心した。霖之助さんが勝手にどっかで女作って遊びほうけてるのかと思ったわ」

「そうしたら君は困るのかい?」

困るに決まってるじゃない、と霊夢は霖之助の額をぱちん、と指で弾いた。
霖之助が魔理沙に時々やる仕草と同じである。

「こうやって甘える相手が居なくなったら困るでしょ?」

霖之助は辟易したように肩を落とす。

「甘えているのか、これは」

甘えているのよ、と霊夢は頷いた。

「ほら、弱い妖怪はすぐに逃げ出すし、紫みたいのはうざったいじゃない?
私にしても魔理沙にしても、
頼れるのは霖之助さんだけなんだから
勝手にほいほい女作ったりなんかしたら二人で殺しにかかるのは当然の事ね。
魔理沙なんて、ミニ八卦炉壊れたら友達が居ない可哀想な女の子になりさがるわよ?
ほら、霖之助さんに女が居るかどうかは死活問題」

やれやれと霖之助は溜息を吐いた。

「魔理沙はともかく君はどうなんだ」

さっき答えた、と霊夢は少しむくれる。

「霖之助さんは甘える事の大切さを知らないのよ」

いつの間にか、教える立場と教えられる立場が入れ替わってしまったようだ。
霖之助は苦笑して話しを聞く側に回った。

「霖之助さんみたいな奇妙奇天烈で一人で天下統一出来るもん、
とか言ってるようないかれた男の人はおいておいて、女の子は甘えないと死ぬのよ」

「天下統一できるもん、などと言った事はないよ。
まあ、可能かどうかと問われればそれは可能だが。
僕にとってそんな事は造作もない。
どれ、少し語ってみようか?」

「黙って」

霊夢はきっと霖之助を睨め付ける。
もしかしたら宴会の酔いが抜けていないのだろうかと、霖之助はそんな事を思った。
だが、彼としては追及したいことは他にもある。

「君は女の子は甘えるものだと言ったが」

彼は人差し指を立てる。

「八雲紫や風見幽香がごろごろと甘える所を想像すると鳥肌が立つのだが。
彼女達は絶対に人に甘える事はないように思うが」

「あいつらは女じゃないのよ。あんな頭の中がおかしい連中と一緒にしないでよ」

「君も大概だと思うがね。それに彼女達は君よりよっぽど紳士的だ」

「……」

失言だったかと霖之助は慌てて続きを語るのを止めた。
霊夢は余裕を見せているつもりなのだろうが、頬が膨らんでいる。
口元でもひくつかせるかと思ったが随分可愛いものだな、と彼はのんびりとその様を観察した。

「今のは見逃すけど、次はないから」

それで、と霊夢は続ける。

「とにかく甘え云々は抜きにしても私の道具の大半は霖之助さんに作ってもらってるし、
そこそこ気に入っているの。
だから優先順位一位の座は譲れないのよ。分かったかしら」

そうかい、と霖之助はやけに嬉しそうな表情をして頷いた。

「甘えなど訳の分からない事を言わずにはじめからそう言ってくれれば良いだろう。
それにしても嬉しいものだね、道具屋冥利に尽きる。
だが、僕は君のことを優先してきたつもりはないとは言っておこうかな」

「私だけじゃない。私と魔理沙」

霊夢は胸を張る。
優遇しているつもりは無いが、と霖之助は苦笑するのだが、

「だって閉店時間だろうが何だろうが、助けてくれるでしょう?」

霊夢にそう尋ねられては、首肯せざるを得なかった。
そのようなサービス行為は他の客に対しても行っているのだが、
それをさしおいてもやはり霊夢と魔理沙は霖之助にとって特別な二人だった。
ふふん、と霊夢は目を細めて霖之助の頬を突く。

「いつもぐちぐち言っていながら本当は私たちの事が好きで好きでたまらないんでしょう?」

霊夢は完全に自分がイニシアチブを握ったと思っているらしい。
その表情はとても楽しげである。
霖之助の困った顔を見て楽しもう、というそんな小悪魔的なにやにや笑いが浮かんでいる。
いつもならここでからかい返してやるのだが、
今日はそういう気分にはならなかったのか、彼は抵抗する事なく霊夢の言葉を受け入れる。

はじめは有頂天だった霊夢も次第にそれが妙だと思ったのか、はてなと首を傾げる。
自分の言葉を楽しげに聞いてくれているのは分かるが、反応が鈍いのだ。
切れ味鋭いようでいてどこかズレたいつもの彼の言葉が返ってこない。
そうだね、とか、ああ、とかいうようなつまらない返事だけだ。
むう、と霊夢は唸る。

「どうしたのよ。いきなりむっつりを決め込んで」

その言葉によってはじめて自分が考え込んでいた事に気が付いたらしく、
霖之助は、はっとして顔を上げた。
霊夢はその様子を見て、むう、と彼を見上げた。

「また何か考えてたの?」

ああ、と霖之助は頷いた。
彼が霊夢を見下ろす表情は、どことなく楽しげだった。

「君も去年と比べて随分大きくなったなあと思っていたんだよ」

ああ、と霊夢は空を見上げた。
未だに雲一つ無い静かな夜空だ。
ひゅうう、と風が細い枝々を揺らす音がどこからか聞こえてくる。

「あと数十年もすれば立派なばあさんのできあがりね」

そうだね、と霖之助は頷いた。
眼鏡の奥に隠れた表情は見えない。
霊夢はにやりと笑う。

「私がしわくちゃになるのはやっぱり嫌かしら?」

しわくちゃの顔にのんびりとした笑顔を浮かべて、
ずずずと茶を啜り、そして骨張った手で自分の肩を叩く彼女の姿を彼は思い浮かべた。
皮はひきつり、白い頬にもしみが浮き出ているかも知れない。
艶やかな黒髪は白くなっているだろうし、歯だって欠けていることもあり得る。

「ちょっと。あんまり真剣に想像しないでよ」

慌てたように霊夢は言うが、霖之助はそれが聞こえなかったのか、穏やかに笑んで言った。

「ふむ……いいかも知れないな、割と」

えっ、と霊夢は言葉に詰まった。
霖之助の口にしたことの意味がよく分からなかったのだ。
単なる強がりには思えない。

「その時にはもっと厚手の生地で服を作ってあげないといけないだろうね。
今のような服装は若い時こそいいが、年を取ったら体にも気を使うことが大切だ。
将来のことを考えれば永遠亭とコネクションを持っておくのも悪くないな」

勝手に霖之助はべらべらと語りだし、状況が理解できない霊夢はぽかんとするしかない。

「えーっと、霖之助さん」

「なんだい」

霖之助は問われてはじめて言葉を止めた。
何とも言えない表情で、霊夢は言う。

「私がおばあさんになるの、嫌じゃないの?」

ああ、と彼は首を振る。

「君は現時点でこれ以上迷惑な存在になることができないくらいにうざったい。
だから君が精神的に成長して、少しはマシになっているだろう老年期は非常に楽しみなんだよ」

「いちいち癪に障る事を言うわねえ」

「いちいち癪に障ることをするのはどこのどいつだ」

全く、と霖之助は溜息を吐く。
この少女の横着ぶりにはほとほと呆れ果てる。
霊夢は霊夢でデリカシーの欠片も無い男だと思ったが、そこでふと首を傾げる。
何か霖之助は妙なことを言わなかったか、と。
そもそもこの話はどこか変だ。
前提とされているものがとてもとてもおかしい。
霊夢は尋ねた。

「もしもし、霖之助さん」

いちいち相槌を打つのも億劫になったのだろうか、霖之助は視線だけを霊夢に向けた。

「私が大きくなって、段々老けていって、最後死ぬまで面倒見てくれるつもりなの?」

彼はどうだろう、と答えた。
自分でも分かっていないようだった。

「君たちがそれを望むなら、世話をしないわけにはいかないだろう。
ここに来てくれるなら、いつでも相談くらい乗ってやるさ」

霊夢は視線を少しだけ動かした。
古ぼけた建物、香霖堂という名を与えられた建物を見た。
三十年経っても、四十年経っても、それはここにあるのだろう。
だけど、

「そういうことなら私が死ぬ時には、隣に霖之助さんは居ない事になるわね」

茶化すようにそう言ったが、冗談が通じなかったのか、霖之助は真面目な表情で言った。

「確かに君が香霖堂で急死する確率は天文学的だろうな」

それでも、と彼は言う。

「安心して逝ってくれ。僕が君を忘れる事などありはしない。
明瞭に、人なんかよりずっと正確に、僕は君を記憶する」

淡々とした調子だった。
当然の事を当然のように語る、そんな声だった。
だけれど、何故かすとんと腑に落ちた。
理論がまだ認めていないのに、感情が霖之助の言葉を受け入れてしまった。
それが答えだ、と。
はじめに尋ねたことの答えだ、と。
彼は何度も何度も、ことあるごとに自分のことを思い出してくれるのだろう。

「でも……」

霊夢はこよりを片手に霖之助に問う。

「それじゃあ、妖怪は悲しい思い出に押しつぶされるんじゃないの?」

本当に霊夢らしい考えだ、と霖之助は感想を漏らした。
どういう事だと彼女に問われる前に、彼は言う。

「そういう疑問は、大切な人を失った事がない、
もしくは失って間もない人しか口にしないだろうな。
誰も彼もが等しくどうでも良い君なら、今の問いを発するのも道理か」

「別にどうでも良い訳じゃないわよ」

「だが、君に『特別』は無いだろう。
魔理沙にはある。僕にもある。
だが、君にはないだろう」

その事について論争すれば、ただの喧嘩になってしまいそうだった。
反論したいが、反論する為の言葉が見つからなかった。
違う違うと言い張るだけでは子供が意地を張っているのと相違ない。
結果として霊夢は不快感を露わにするためにむう、と頬を膨らませる事しかできない。
相手が弱っちい妖怪ならば牙をむくだろうし、
相手が紫や幽香ならば舌打ちするだろう。
つまり、これが霊夢が霖之助に甘えているという状況であるわけだが当然本人は意識していない。

本当に空気の読めない男である。
放つ言葉にしても、オブラートに包めば良いだろうに、
彼は気にせず思った事を口にする。
正しい事を言って何が悪い、と思っているのだろう。
意外と子供っぽい所もある男なのだ、彼は。
仕方がないので霊夢が折れて話題を戻す。

「じゃあ、分からない私に教えてくれても良いんじゃないかしら。
妖怪が悲しみで押しつぶされない理由」

霖之助は、それを聞いて鼻で笑った。
珍しく、本当に小馬鹿にした様子だった。

「理由も何もあるか、馬鹿者」

馬鹿者とは何よ、とむくれる霊夢の頭を霖之助はぺしぺしと叩く。

「馬鹿者は馬鹿者だよ、霊夢。
僕らにとって失った友人との思い出は大切な本と一緒だ。
たまに手にとって、
つまりたまに思い出して、そしてくすりと思い出し笑いをするためのものだ。
あの頃はああだったなあ。あいつはあんな奴だったなあ。
楽しかった、楽しかった。
そんな事を思い出すためのものだ。
思い出すのは少しだけ淋しいが、そんな感傷だって懐かしく思えるものだよ。
好きな人との思い出は、楽しい事に充ち満ちている。
どうして悲しみで押し潰される事があるのか逆に問いたいな」

偉そうな口調で語られるその言葉は、何故だかとても温かだった。
反論は簡単に出来る。
それでも辛い事の方が記憶に残りやすいだろう、とか。
だったらその人が死んだ時のことはどうでもいいのか、だとか。
だけれど、そんな言葉は無粋以外の何物でもない。
食って掛かっているのと同じである。

せっかく霖之助が本心を吐露しているのに、それを無下に扱う霊夢ではなかった。
そんな事よりも、彼女はもっと聞いてみたいことがあった。

「じゃあ、私たちが死んだら――」

ああ、と霊夢は思う。
最終的に問いたかったのは、このことなのだと。
ただの疑問のはずなのに、彼の返答を期待してしまう。
霊夢は少しだけ真剣な調子で、だけれど霖之助と決して目を合わせることなく、尋ねた。

「私たちが死んだなら、霖之助さんはそういう風に私たちを思い出してくれるのかしら。
つまり、楽しい時に私たちを思い出したり……」

声はぼそぼそと小さくなって、最後に消えた。
彼は一息吐いて、そして頷く。
もやもやと白い息が夜空に立ち上り、かすみ、拡散し、そして消える。
眼鏡の奥のその目に迷いはなかった。
いつもと同じ木訥としているようで意外と饒舌な調子で彼は言う。

「君たちがくたばった後、僕は紅茶片手に、紫でも相手にして君と魔理沙の武勇伝を自慢げに語るだろうな。
レミリアにも語る。
そのメイドにも語る。
訪れる客、その全てに語る。
迷惑だろうが何だろうが、つい口をついて出てしまうだろうね、君たちの話題は」

何故なら、と霖之助は背丈の低い茅の葉を蹴った。ぱっ、と夜の滴が舞い散った。

「僕にとって、大好きな君たちの事を口にするのはとてもとても幸せな事だからな」

自分の死んだ後のことなんかどうでも良い。
だってそうだ。
死んだら何も残らない。
幽霊になって、閻魔様の所へ行くだけだ。
霖之助が何をどうしようが関係ないはずである。
しかし、何故だか嬉しかった。
とても嬉しかった。

自分の居なくなった香霖堂で、霖之助や紫が自分たちの事を語り合っている。
くすぐったいような、誇らしいような、変な気分になった。

「茶化さないでよ」

霊夢はぼそぼそと言うが、霖之助はそれとは正反対にはっきりと言う。

「そういうつもりで言ったんじゃない。
今のは正直な僕の気持ちだ」

そう言って、霖之助は空を見上げた。
霊夢は反対に地面をじっと見つめる。
風が、吹き始めた。
薄着に冷ややかな感触は毒だった。
霖之助は小さく身を震わせた。
よもや風邪をこじらせることはないだろうが体は大事にしてし過ぎることはない。

「それじゃあ、僕は中に戻るよ」

そう言って霖之助は立ち上がる。
霊夢はついてくるものだとばかり思っていたが、うつむいていて顔を上げることはなかった。
まだここでのんびりしていくつもりらしい。
彼は一歩を踏み出した。
しかし、ぎゅ、と袖を引かれる感覚を覚えると共に、彼はバランスを崩して、どさっ、と地面に倒れた。
それと同時に小さな悲鳴のようなものも聞こえた。
霖之助はごろりと寝返りを打って仰向けになると、その上に霊夢がのしかかってきていた。
いや、のしかかっているのではない、倒れ込んできているのだ。
見れば、その手は霖之助の袖を強く握りしめている。

「いたた……いきなり歩き出さないでよ、びっくりするから」

自分を転ばせておきながらの勝手な言葉に霖之助は呆れ半分怒り半分で、しめだしても良いんだが、と恨みがましい口調で文句を垂れた。

「こらこら、可愛い妹分のおいたくらい許しなさいよ。度量の少ない人ね」

「黙れ、君に言われたくはないよ。あと、勝手に僕の妹分になるな。恥だ」

「恥って何よ」

「大恥ということだ。分かったか」

それで、と霖之助は腰をさすりながら言う。

「僕の体を痛めつけてまで君が頼みたかった事は何だ。
どうでも良いことだったら叩くからな」

彼の言葉に、霊夢は大丈夫大丈夫、と腕を組んで自慢げな表情を作った。
些事ではあるが、彼のアングルだと、構造上霊夢の服の中が丸見えだった。
この寒い時期に腋だけではなくへそまで露出した衣装はどうか、と彼は思う。
わざわざあたたかいものを幾つも作ってあげたというのに。
ただ、そのあたたかいものも腋だけは露出しているのだが。

「どこ見てるのよ」

呆れたように霊夢が言い、

「貧相な君の胸だが」

と霖之助は冷静に答える。
強がっているのか本当に興味がないのかは微妙な線だった。
ちなみに霊夢のカンは、ちょっとはどきどきしただろう、と告げている。

「まあいいけど。
そんなもん頼めば採寸の度にいくらでも見せてあげるわよ」

「お断りだ」

そういう言葉を吐くことが大人らしいと思っているあたりがまだまだ子供なのだ、
と霖之助は自分のことを棚にあげてそう思う。
精神の成長は身体の成長の影響を多分に受ける。
彼の外観はどう悪意的に見ても三十代を大きく下回っている。
まだまだ若造である。
その容姿に精神が引きずられている部分もあるのだろう。
そのうち霊夢が彼の精神年齢を上回る日が来るかも知れない。
少なくとも、霖之助が精神的に成長するにはかなりの月日を要するだろうし、
彼女が成長するには大した時間はかからないに違いない。

「で、頼みだけど……」

彼女は言う。

「靴はいてくるの忘れたから、奥の間まで連れていって欲しいのよ」

ほほう、と霖之助は口元をひくつかせた。

「先程まで思い切り大地を踏みしめていたその足をして、そんな事を言うのかい?」

ふふん、と霊夢も得意気に笑う。

「それは強がりの演技だったのよ。博麗の巫女の迫真の演技」

「面白くないぞ。洒落にもなってない」

すぱこん、と軽く頭を叩く音が響いた。
そして、あいたっ、という霊夢の気の抜けた声がそれに続く。

「ひどいじゃない」

むう、と不機嫌そうに霊夢がうなる。

「君が嘘を付くからだ」

霖之助は断固とした態度でそう告げる。
彼の言葉は確かに正しい。
だが、少々思いやりが足りないのはいつものことだ。

「うう、本気でぶたないでよ。なんかじんじんしてきた。
さっきの言葉は嘘じゃなくてただの口実よ。
本気にして打たなくてもいいじゃない」

頭をさすりながら霊夢は恨めしそうに言う。

「呆れたな。こんな短い距離も歩きたくないのか。太るぞ」

霖之助は半眼になってそう言うが、
霊夢は、はいはい、とそれを受け流した。

「そういう理由じゃないわよ。
ほら、さっき霖之助さんは思い出は大切にしまっておくって言ったじゃない」

彼女の言葉に、確かにそうだね、と霖之助は頷いた。

「で、昔の魔理沙はべたべたに霖之助さんにひっついてたじゃない?
でも私は昔からこんな感じだった。
そしたら自然と私より魔理沙の話題が多いって事になるでしょ」

それで、と霖之助が呆れた調子で言う。

「打倒魔理沙の苦肉の策が――部屋まで連れて行ってくれ、なのかい?
君だって僕の服を着たりなんだり色々しただろう。
この年になって恥ずかしくないのか。
常識を持て常識を」

はん、と霊夢は腕を組んで笑う。

「常識なんて鎖に私はとらわれないわ。
どんな重圧にも屈しない、それが博麗の巫女」

「風船巫女のくせに随分凄そうな口上じゃないか。ふわふわしているだけの奴が偉そうな口をきくものではないよ」

「すごいのよ」

「いいや、僕の方がすごいだろうね」

霖之助はふふん、と胸を張ってそう言った。
何がすごいのか霊夢には皆目分からなかったが、ご機嫌な様子なのでそこを突くことはやめておいた。
ひゅぅうう、と風が吹く。

「ほら、冷えてきたじゃない。さっさと私を部屋に連れて行きなさい」

ぶるる、と霊夢は身を震わせた。
案外強がっていたという彼女の言葉は本当だったのかも知れない。
彼の目の前に投げ出されている足の甲は可哀想なくらいに真っ赤になってしまっている。
奥の間の畳に泥がついてしまうかも知れないが、これを見て放っておくほど彼は冷酷な男ではない。

「全く……注文の多い子だな。ほら、首に手を回してくれ」

ん、と返事をして霊夢は両手を霖之助の首に回した。
二人の距離がぐっと近くなる。
後は彼が自分を持ち上げて運んでくれるだけである。
良かった良かった。
霊夢はうんうんと頷いたが、しかし。
ここに至ってはじめて、彼女は何か変だと思った。

運んでくれと、霊夢は頼んだ。
しかしこの人はどういった方法でそれをなすつもりだろうか。
霊夢本人としてはおんぶだろうと思っていた。
楽だし、なんだか微笑ましいからだ。
こてんと顎を彼の頭に乗せてみても面白いかもしれない。
そんな事を思っていた。

しかし、正面から首に手を回して、それでどうやっておんぶをするというのだ?
答えを出すよりもなおはやく、霖之助は悩みもなく自分の手を霊夢の両膝の裏に持って行き、
腰にもう片方の手を添えて、ひょいと持ち上げた。
これは、いわゆる――

「ちょ、ちょっと待って! 待ってってば、霖之助さん!」

「……うるさい子だな。運べと言ったのは君だ」

確かに言った。
言ったがしかし。
誰がお姫様抱っこで運べと頼んだだろうか。
ずかずかと不機嫌そうな表情で霖之助は歩みを進める。
霊夢はその様子にあわあわとうろたえるが、どうしようもない。

「恥ずかしいってば! 常識的でもないし! ほら、霖之助さんも恥ずかしいでしょ?」

霊夢は懐柔策を講じたが、

「常識にとらわれないのだろう、博麗の巫女は」

「恥を知れって言ってるのよ恥を!」

「うるさいな。紫が笑っているじゃないか」

「え……っ!」

今度こそ本当に顔を真っ赤にして霊夢は辺りを見渡した。
だが、誰も居ない。
しいん、と暗闇が広がっているだけである。

「霖之助さん、紫って……」

「嘘に決まっているだろう。こんな姿を見られたら流石の僕も切腹する」

ははは、と邪悪極まりない笑顔を浮かべて霖之助はずかずかと歩く。
もしかしてこの人はまだ酔ってるんじゃないか、と霊夢は思った。
ぎゃあぎゃあと騒ぎながらわずか一分ほどで香霖堂の扉の前に二人はたどりついた。
だが、霊夢にとってそれは一時間にも二時間にも感じられた。
決して、恋する少女よろしく夢にものぼるような幸福に打ちひしがれていたわけではない。

「いやはや。それにしても、やってみるものだな。
まさかただ抱っこするだけでこんなにも愉快な反応が返ってくるとは思わなかった」

「うっさい!」

最早赤鬼よろしく顔を真っ赤にした霊夢はぎゅうぎゅうと彼の首を引っ張る。
しかしその結果霊夢と霖之助の距離は益々縮まり、二人は更に仲睦まじい恋人同士に見えてしまう。
そのまま二人は開いた扉から、中に入っていった。
愉快の絶頂に居るらしい霖之助と、恥ずかしいという感情が七割を占めている様子の巫女は、
扉が開いているというその奇妙な状況には全く目が行かなかったようだ。
当然、奥の間の戸も開いているのだが。
誰も居なくなったはずの森に、くすくす、と笑い声が響く。
そして、ぱちんっ、と扇を閉じるような音と共にまたその場所を静寂が支配した。


















ずきんずきんという頭の痛みに唸りながら、霖之助は体を起こした。
どうやら昨日は酔っていたらしい。
霊夢はうつぶせになってまるで死んでいるように寝転けているし、
魔理沙は布団を吹き飛ばして元気いっぱいな様子でむにゃむにゃ寝言を零している。
なかなか可愛らしいその内容に、霖之助は苦笑を零した。

手櫛で無造作に髪を整え、眼鏡を手に取り彼は体を起こした。
くらり、と一瞬だけ視界が揺らぐ。立ち眩みのようだった。
彼は、ううん、と大きく伸びをした。
昨日、奥の間に到着しても馬鹿のように霊夢を抱えて走り回っていたのが間違いだったらしい。
途中で魔理沙の腹を蹴飛ばしてしまい(胸だったかもしれないが、魔理沙なら胸でも腹でもそれは同じ事だ)、
怒り狂った彼女は霖之助の背中に飛び乗ってぼかぼかと頭を叩き始め、それそれは激しい乱闘になった。
そのためか、腰が痛くて痛くて仕方がない。永遠亭に行って看て貰おうか。
そんな事を考えながら、彼は身なりを整え、ふらふら歩いて奥の間の戸を開く。

新鮮な冷たい空気が淀んだ生ぬるい空気を駆逐していく。
放っておけば魔理沙たちも目を覚ますだろう。
そう思い、彼は戸を開いたまま奥の間を出た。
戸締まりをし忘れていたので一応店の中を見て回ろうと思ったのだ。
その心構えは殊勝であり、果たして彼には一つの収穫があった。

カウンターに、何か置いてある。
なんだろうかと思って近づいてみると、それは昨夜地面に置いてあった瓶である。
こよりも二本入れてある。
まったく、何を馬鹿な悪戯を……。
そう思って彼はふらふらとそれに近づくが、
やがて、むう、と首を傾げた。
こよりを取り出して、じっと見つめる。

「……これは、線香花火じゃないな」

そう結論づけた理由は非常に単純だ。
こよりの先端が焦げていないのである。
燃え殻を捨てるための瓶に何故新品を捨てる必要があるのか。
そうであるならば、このこよりには何か別の目的があるのだろう。

「例えば――」

彼は注意深くこよりを観察する。
そして、ある一点を発見すると、そこを引っ張る。
びろびろとこよりだったものを解き、それを一枚の紙にする。

「――手紙だとかね」

もう片方もやはり手紙のようだった。
魔理沙の書いたものと、霊夢の書いたもの。
二つのこよりが、二枚の手紙になった。
しわくちゃのそれに書かれているのは、それぞれたった二言、三言。
あけましておめでとう。
今年もよろしく。
そして、もう一言。
霖之助は頬を緩めた。
彼はかつかつと足音を響かせ、店の扉を開け放つ。

さあっ、と陽の光が降り注ぎ、薄暗い店を明るく照らし出した。
霖之助はそのまぶしさに、思わず片手で目を覆う。
だけれど、何故だかとても心地よかった。
素晴らしい朝日だった。
だが霖之助は、それとは対照的な夜の事を思う。

いつの日にか、自分の人生の中で最もあたたかで、そして最も素敵な物語が完成する日が来るだろう。
その本の一頁を懐かしさとともにそっと捲る日が訪れるのだろう。
それが楽しみであり、同時に何故だか少し、恐ろしく、そして淋しくもあった。
いつまでも本の続きを綴る事が出来るなら――ふとそんな事を思い、彼は苦く一笑した。

「香霖、あけましておめでとーっ!
……って、あれ?
どこ行ったんだあいつ。
おーい、こーりん!」

底抜けに明るい魔理沙の声が、奥の間から響く。
ぶつぶつと眠そうに文句を垂れる霊夢の声も、また。
そうして彼と魔理沙と霊夢の物語に、新たな言葉が刻まれる。
完結へ、終わりへと向かって刻まれ続けていく。

霖之助は一度だけ、大きく息を吐いた。
そして、大きく首を振る。
その時には、彼はもういつもの仏頂面だ。
奥の間からひょっこりと顔を出した二人を見て、彼は気怠げに右手をあげた。

「やあ、二人とも。あけましておめでとう」

二人から、騒がしい返事が返ってくる。
幸せだと、霖之助は思った。
本当に幸せだ。
やいのやいのと大はしゃぎしている二人は本当に可愛らしい。
だから、と彼は願った。
この二人が長生きしてくれるように。
そして、いつまでもこの香霖堂を訪れてくれるように。

霖之助はまた、外の景色を見やった。
風はなく、光は静かに降り注ぐ。
魔理沙と霊夢もふらふらと、そんな景色に惹かれたように、店の外へと導かれた。
とてもとても、静かな朝だった。
とてもとても、幸せな朝だった。
そうして太陽は、今日もまた東方の空を鮮やかに染め上げていく。
少し早いですが、お正月の話を。
これが今年最後の投稿となってしまいました。
未熟な作者ではありますが、
向上心をもって来年も楽しくSSを書いていきたいと思いますので、
来年もまた宜敷お願いします。
与吉
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コメント



0.7280簡易評価
6.100名前が無い程度の能力削除
 すばらしい寝正月ですな。
年が明けたらまた、ゆっくり読もうと思います。
 一つ気になった点なのですが、途中『がらんどうとした』という表記がありますが、この場合は『がらんとした』が正しい用法ではないかと思われます。

あとこーりん手前ェ何しれっと胸チラ拝んでんだこの野郎うらやま死刑!
14.100名前が無い程度の能力削除
ただ一言「いい」
19.100名前が無い程度の能力削除
お姫さま抱っこ霊夢っていいものですね
良いお年を
22.100名前が無い程度の能力削除
すばらしい
今年最後にいいもん読ましてもらいました。来年からも体に気をつけて、よろしくお願いします。

さりげない紫の存在よかった
23.100名前が無い程度の能力削除
素晴らしい。
霖之助を語り手の話は並べて素晴らしい。

あと上にもありますが、『がらんどう』の用法が少し違うかと思われます。
確か、『がらんどうな~』『がらんどうの~』が正しいかと。
違ったらスイマセン。
24.100名前が無い程度の能力削除
年の暮れに良い物を読ませて頂きました!
これで、心置きなく新年を迎える事が……、いや、香霖堂の発売はまだか?
28.100名前が無い程度の能力削除
自然な流れにこそばゆい動作がなんとも……
長くも短かった今年一年お世話になりました。
度々氏のSSは某所で報告があり次第見に来ては顔を綻ばせたものです。
来年もまたよい年であるようささやかながら評価点とともに祈りを遅らせていただきます。
29.100名前が無い程度の能力削除
「終わりの無い物語なんて無いんだよ、フロド」
指輪物語の最後の一節を思い出し、目頭が熱くなってきました。
物語の続きを知りたい、もっと主人公達と触れ合いたい
なのにいつか来る”終わり”が怖くて怖くて仕方が無い。
この相反した気持ちをどう受け入れていいものか…未だに答えの出ない難題です。

来年も是非、是非この若輩者に一時の安らぎを届けてくださるよう、重ね重ねお願いします。
32.無評価与吉削除
まさかの文法ミス……申し訳ありませんでした。
ブロントさんに憧れていたからという言い訳をさせてください。
本当にもう、このようなミスをしないように自分のミスをここで晒しておきましょう。
今年の私の巨大なミスは、無情、がらんどう、そして出涸らし。
ああ、恥ずかしい恥ずかしい。
ここに投稿するようになって自分の汚点が物凄い勢いで修正されていく気がします。
嬉しいやら恥ずかしいやら……。これからも見つけたらフハハと笑って嘲って頂ければ
悶絶した後で作者は歓喜の涙を流します。
ああ、恥ずかしい……
34.100名前が無い程度の能力削除
これはいい。すごくいい。
年の瀬にこんなにも素晴らしいSSが読めるとは。
40.100名前が無い程度の能力削除
大変良いお話ですね。
来年も、すばらしいSSを楽しみにしています。
47.100名前が無い程度の能力削除
年明けから幸せな気分になりました。
嗚呼、いい正月です。
51.100マイマイ削除
この野郎……。最高じゃねえか。
永く生きるものと儚き人間の問答ですね。きっと交わる事のない、しかし、とても大事な感情なのでしょう。
個人的には霖之助が言った、妖怪がどのように最高の思い出を語るかを見てみたいです。
52.100名前が無い程度の能力削除
すばらすぃぃぃ
年明け直後からいいものを見させてもらいました。
62.100名前が無い程度の能力削除
素晴らしい作品でした。今年も頑張って下さい
64.100名前が無い程度の能力削除
この上なく暗い題材なのに、この上なく救いのある話でした。
本を読み返すという例えが特に。
しかし霖之助は酔っているのか正気なのか。
霊夢は中立なんだか我侭なんだか。
紫は持ち上げられているんだか軽く見られているんだが……
67.100名前が無い程度の能力削除
たまらんです。
やはりいつか来るべき別れのことを書く作品というものはつらいのもあるから書きたくないのはわかりますが、
あえて書かれる書き手の方には尊敬の念を禁じえないです。
与吉さんの作品の紫は実においしいというか、大事なところで出てきますね。
霖之助が好きで紫が好きな私にはたまりません。
79.60名前が無い程度の能力削除
最近あなたの書く霖之助話を読むのが少々辛くなってきた。
切なくいい話です。
でも私のこうあって欲しいという願望とは少しずれてしまって。
彼に感情移入できなくなったからかな。
90.70名前が無い程度の能力削除
なんだか、最近コーリンやりすぎ、な感じがしてきました。
恋愛もの?は、ちょっとしたすれ違いを楽しむものだと、僕は思ってるので
キャラクターも、物語も、素直すぎるきがします・・・

すごく私的ですが、あなたの作品は、人間関係重視の作品より、何か思い立たせる、香林堂を描く作品の方が、魅力的だと思っています
99.100名前が無い程度の能力削除
いつまでも続いてほしい物ですが……
107.100名前が無い程度の能力削除
いいですね、霊夢が分かりやすいんだか、分かりにくいんだかww
与吉さんの書く香霖堂は温かいです。
読み終わった後になんだか田舎が恋しくなる、そんな話ばかりで
今年も香霖をよろしくおねがいします。
111.100名前が無い程度の能力削除
まさに香霖堂。感動した
霖之助、霊夢、魔理沙の3人はいつまでも仲むつましく生きていくのでしょうね、きっと。
別れの時がきても悲しいのはその一時だけで、
後は楽しかった思い出を後の友人達と共に語り合う・・・
忘れないってことは死者にとって一番嬉しいことかもしれません
113.100名前が無い程度の能力削除
感無量です…
2009年もよろしくお願いします!!
115.100名前が無い程度の能力削除
でばがめババアめっw
124.100名前が無い程度の能力削除
>好きな人との思い出は、楽しい事に充ち満ちている。
どうして悲しみで押し潰される事があるのか逆に問いたいな。
>僕にとって、大好きな君たちの事を口にするのはとてもとても幸せな事だからな。

この台詞がたまらなく来ました。
つまりはそういうことなんですよね。霖之助が出会った人たちの思い出を出会った人たちに伝えてその人の本に書き記される。
たとえその人がいなくともここにいる、みたいな感じで。
上手く言い表せない表現の無さに絶望しますが、いい話でした。
126.100名前が無い程度の能力削除
いい男だなぁ香霖
133.90右足を挫く程度の能力削除
いやはや紫は本当にいいところを持って行きますね。
間違いなく霊夢のことが好きで、恋人でもない、母親でもない、でも友人よりずっと近い距離から
笑顔で霊夢のことを見つめているような。そんな紫がたまらなく愛おしく感じます。
174.100名前が無い程度の能力削除
このお互い素っ気無くも確かな絆が感じられるのが・・・ イィ。
あとスキマさん、覗きとは感心しませんなぁ。
178.無評価名前が無い程度の能力削除
素晴らしい。それに尽きます
線香花火で燃え尽きない所に言葉を記す
そういったものにセンスを感じます
180.100うみー削除
良かった