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エンゲージ~続・星熊勇儀の鬼退治~

2008/12/14 17:23:04
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*ご注意*
このお話は作品集63「星熊勇儀の鬼退治」の流れを引き継いでおります。




























 鬼に、捕まった。


 鬼ごとの、ではなく、正真正銘の鬼に。


 どうしようもないほどに。


 逃げられないように。


 捕まった。


 鬼に捕まって――



 ……私は、どうなったのだろう



 私は、どうなるのだろう
































 どうしよう。

 家に帰るべきだろうか。

 いや、下手に家に居てはあいつに家に来る口実を与えることになる。

 それはまずい。何がまずいかよくわからないがまずい。

 なんか、危険が危ない。

「……うん。自分でなに考えてるのかわからなくなった」

 ……なんか、胸がむかむかする。

 なんでこうまであいつのことなんか考えなくちゃいけないのよ。

 忘れよう忘れよう。

 その方が健全だ。

 いやいっそ妬み倒せば……

 ってなんであいつのこと考える方にシフトしてんのよっ!?

「っく」

 頭の中がこんがらがってまともに思考できない。

 イライラが治まらない。

 なんであいつはこんなにも……っ。

「う~れしぃねぇ~」

「ひぃっ!?」

 いきなり、抱きつかれた。

 耳にかかるこの酒臭い吐息は……!

「私のこと考えてたろぱ~るすぃ~?」

「ほ、ほ、ほ、星グまっ!?」

 いかん。声が裏返った。

 冷静に、冷静になれ私……っ!

 ゆ……星熊に弱みを見せるな!

 ってなに!? 心読まれた!?

「心でも読めるの? 星熊」

 そう、冷静。冷静になれ私。

 声が震えているけど気にするな。

「いや読めないねぇ。だから不安なのさ~」

 ふらふらへらへら。

 ……いつもの酔っ払いぶりだけど、なにかおかしい。

 なんか、いつものどっしりした感じがしない。

「……なに? いつもより酔ってない?」

「ははは、悪い酔い方しちまったね~」

 珍しい。

 あの勇儀が酒に呑まれてるなんて。

「酒を楽しんでるんじゃなくて、酒に逃げてるって風情ね」

 皮肉を言ったつもりだったけれど、勇儀は否定もしないで笑った。

 ――嫌な笑い方だ。

 なんの気迫も魅力も無い、ガランドウの笑み。

 らしさなんて一かけらも無い、いつもと真逆の笑み。

 まるで、別人。

 大柄な体も、赤い角も、紅色の瞳も、いつも携える朱塗りの盃も。

 陽の光を思わせる金の髪も、手足の鉄の輪も、同じデザインの髪止めも、淡い色のマフラーも。

 何一つ変わらないのに別人のよう。

 妬む気も起こらない。

 こんな笑い方をするのは、私の妬む星熊勇儀じゃない。

 こんな奴に、妬む理由を考えるのも馬鹿らしい。

 顔を見るのも嫌になって、上を見上げる。

「いつも見上げてるねぇ」

 背に鬼の声がかかる。

「空もないのに、ずっとあの縦穴を」

 ……よく見てるものだ。

 でも、不自然じゃない。

 だって私は、地上と地下を繋ぐ縦穴を守護する――





「地上が、恋しいのかい」





 ずきりと、胸が痛む。

 自覚のなかった弱ささえも、鬼は見逃さない。

「……そうかもね」

 言われて、気づく。

 誰かが通るのを待っている……

 それすらも言い訳だったのだろう。

「あの光が、あの輝きが……恋しくて、妬ましい」

 無自覚に遠ざけていた羨望。

 今さら飾ることに意味はない。

 孤独と静寂を好むふりは、必死に隠した強がりは、見透かされている。

 弱い自分が嫌になる――



 ……あぁ、そうか。

 だから、腹が立ったのか。

 弱さとは無縁に思える強い鬼。

 星熊勇儀。

 その強さを、そのあり方を、ひどく妬んだ。

 私の望んだ生き方だったから、私には出来ない歩み方だったから。

 私の、理想の姿だったから。

 だから、嫌だった。

 妬めるはずもない。

 あれはまるで私の笑い方だ。

 達観した笑み。

 諦めを混じらせた笑み。

 私の嫌いな、私の否定した、弱い私そのものだ。



「妬ましいね」



 だから、その言葉が認識できなかった。

「……え?」

 振り返れば、ぎらつく鬼の瞳。紅の瞳。

「おまえの心を縛る光が、妬ましい」

 睨みつけるのは私ではなく天を貫く地上への孔。

「おまえの心が、私ではなくあの光に向けられているのが妬ましい」

 その声には、鬼らしい不遜さと、力強さが戻っていた。

 否……これは、力強さじゃない。

 傲慢で、不遜だけれど――これは、雑多な暴力だ。

 ついぞ見たことのない、荒ぶる力。

 理性のタガが外れた、見るに堪えない稚拙な暴力。

 本能が危険を告げる。

 逃げた方がいい。

 これは、私の知る星熊勇儀じゃない。

「私じゃあおまえを照らすには足りないのか?」

 逃げ出すよりも早く、勇儀だったモノは立ち上がる。

 私を真正面に捉えて、逃げ道を奪う。

「なに……言ってんのよ」

 盃を放り捨て、私の肩を掴む。

 私を見据えるその眼は――嫉妬に狂う、鬼女の瞳。

 いつの間にか、酒気が散っている。

 軽く掴まれてるだけの筈なのに、私の肩が悲鳴を上げる。

「い、つ」

 肉が、骨が、軋む。

「私じゃあ、おまえの心を占める光になれないのか」

 いつかのように、酔いの醒めた言葉が突き刺さる。

 しかしそこに余裕など無く、優しさも笑みも混じりすらしない。

 焦り、妬み、狂っている。

「私じゃあ……おまえを捕まえられないのか」

 手が首にかかる。

 爪が突き立てられる。

「星熊、く、くるし、い……」

 首に爪が食い込む。

 血が滲む。

「パルスィ」

 かくんと、力が抜けた。

 私を掴むというより……もたれかかるように脱力した。

 あの鬼とは思えない、虚脱。

「おまえは、私を星熊と呼ぶ。名前では呼んでくれない」

 声すら、違う。

「それが、恐ろしい」

 弱々しく、覇気の欠片も感じられない。

「あの時おまえは私を拒まなかった。受け入れてくれたと思った」

 声も、私に触れる手も、震えている。

「でもあれは、おまえの優しさで、一時の気の迷いで、本当は私を受け入れてくれてなんかいないんじゃないかって」

 勇儀の顔が歪む。

「お前の心には、私なんて居ないんじゃないかって」

 泣くと、思った。

 それほどまでに勇儀の顔は悲しそうに歪んでいて、首と肩にかかる重さは弱々しかった。

 でも、涙は流さなかった。

 鬼の矜持なのか、彼女が鍛え上げた強さが許さないのか……泣く寸前の顔のまま、私を見つめている。

「パルスィ」

 そこに居るのは、怪力乱神を語る無双の鬼ではなく――

「私じゃあ――陽の光にはなれないのか」

 泣きじゃくる……少女だった。









 首にかかっていた手が落ちる。

 すまないと、消え入りそうな声で呟いて、後ずさる。

 旧都に降る雪に掻き消されてしまいそうなその腕を――私は捕まえた。

 鬼を。勇儀を。捕まえた。

 じゃらりと、勇儀の腕輪の鎖が鳴る。

 逃がさない。

 絶対に、この手を放さない。

 僅かに、勇儀の体が強張るのが手に伝わる。

 怯えている。

 無双を誇る鬼が、私に怯えている。

 それでも……許さない。

 一人で怯え、一人で逃げるなんて許さない。

 私に何も言わさずに逃げ去るなんて、絶対に許さない。

 初めて、私から勇儀を抱きしめる。



「……あなたは、いつだって私の光だった」



 出会ったその時から、眩しかった。



 言葉で否定し尽くしても、心の底では憧れた。



「私を照らして焦がして、嫉妬させた」



 妬まない日は無かった。



 その声を、その姿を、忘れる日は無かった。



「私の手が届かない輝きだった」



 雪降る地下世界で、ただ一人の――燃え上がる太陽だった。



「だから、泣かないで。……雨で、太陽を隠さないで」



 襟首を掴んで屈ませる。



 背伸びして、紅に燃える瞳を正面から捉えて



「――勇儀」



 口づけた






































 ああああああああああああ。

 か、顔から火が出る。

 は、はず、恥ずかしい、恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしいっ!

 穴を掘って入り込みたいっ!

 私はなんてことを――っ!!

「パルスィ」

 赤面して蹲ってんだからほっといてよ!

「パルスィ」

 だから……っ!

「パルスィ」

 っく! こいつ、私が応じるまで続ける気だ……!

「な、なによ。ゆ、ゆ、ゆ、ゆ、ゆう、ぎ」

「……えへへ」

 にやにやするなへらへらするなさっさと帰れよっ!

 恥ずかしくて死にそうなのよっ!

 真面目に純粋に一人になりたいのよっ!

 私をこれ以上辱めてどうする気よっ!?

「パルスィが名前を呼んでくれるのが嬉しくてしょうがないんだ」

「恥ずかしいのよっ! 察しなさいよっ! その鈍感さが妬ましいっ!!」

 うああ、耳まで熱い。

 今鏡見たら絶対首まで赤くなってる。

 自分のそんな顔、想像もできない。したくもない。

「えへへ」

 ずしりと、全身に重みが被さる。

 抱きつかれてる。

 赤子のように脱力して全身で私を覆っている。

「お、重いわ……」

「愛の重みさ」

 歯の浮くようなことを……!

 こいつ実はもう酔ってるんじゃないのか!?

 酔いが醒めたような顔しといていつの間にか一升くらい呑んだのか!?

 ええい撫でまわすな!

「……」

 ふいに、その手が止まる。

「すまないパルスィ」

 声に、真剣さが戻ってる。

 ……不意打ちをするな。

「なによ、急に」

「綺麗な肌に傷をつけてしまった」

「綺麗って……どの口が言うか。あなたのほうが綺麗じゃない」

 皮肉としか思えない程度に私の心は狭い。

 でも、それほど深い傷というわけでもないし……そこまで気にしては……

「いや。パルスィの肌は綺麗だ。淡い金の髪がよく似合う白い肌だよ」

「だから歯の浮くようなセリフさらっと言うなっ!」

「私は本気だよ」

「うぐ」

「思うに、無意識でそう望んでいたんだね。

 パルスィの雪のように白い肌を蹂躙したい欲望が抑えきれずに、傷つけてしまったようだ」

 本当にすまない、と抱きついたまま頭を下げる。

 ……なんにつけストレートに言うやつだ……

 本当に顔から火を噴くぞ。

「証が、欲しいな」

 ええい次から次へと……今度は何よ?

「私と、おまえが繋がってる証が欲しい」

「なに、それ。どういう意味」

「不安、でね。想いだけでも、言葉だけでも、まだ足りない。

 目に見える形で、繋がりが欲しい」

 わ、我儘な……

「わ、わ、私の口づけだけじゃ不満だって言うのっ」

 ああくそっ。釣られて私まで変なことを口走ってしまう。

「そうじゃないが――」

 言いかけ、撫でまわし続けていた手を止める。

「……細い、首だね」

 傷に触れられて、ちょっと痛い。

「……うむ」

 なにを納得した。

 嫌な予感がひしひしと、



 がちゃん



 なにがちゃんって。

 なんか首が冷たいんですけど。

 なんかじゃらりって音が首からするんですけど。

 顔に集まっていた血が一気に引く。

 赤から青へ。

 体感温度までがらりと変わる。

 弾かれるように勇儀を撥ね退け、彼女を見る。

 ……無い。

 腕輪と同じデザインの彼女の髪留めがなくなっている。

 まとめられてた髪が獅子のように広がっている。

 首に触れる。

 冷たい鉄の感触。

 じゃらりと揺れる鎖の感触。

「これでよし」

 よし、って。なにこれ。これじゃ、まるで。

「なにしてんのよ勇儀っ!?」

「なにって、おまえが私のものだっていう証だよパルスィ」

「ば、馬鹿! こんなの誰かに見せれるわけないじゃない!!」

 首に掛けられた鉄の輪を引っ張る。

 痛い。痛いだけ。びくともしない。

 ……外れない!?

「外せないよ。外せないように呪いをかけたからね」

「なんてことしてくれてんのよっ!?」

 うわ襟上げても隠れないっ!

 なにか、なにか隠すもの……!

 ふわりと、なにかが首にかけられた。

 ……勇儀の、マフラー?

「どうしても隠したいならそれを巻くといい。外すのは許さないけどね」

「う、ぐぅ」

「私と、おまえだけの秘密にしよう」

 ……殺し文句のオンパレードだ。

 これ以上抵抗しても、延々続けられて骨抜きにされてしまう。

 卑怯だ。

 私に反撃もさせてくれない。

 睨みつけると、勇儀は仰々しく跪いて私の手を取った。

「契約だ」

 優しく微笑まれる。

「いついかなる時も、お前の命を脅かす輩は私が殺し尽くす。私が必ずお前を守る」

 立ち上がり、抱き締められる。

「星熊勇儀が誓う」

 紅い瞳に射抜かれて、

「私はおまえだけの鬼神となろう」

 優しく唇を奪われた







「――頼もしいことね」




 まったく――強引で、身勝手で、我儘で、傲慢で、綺麗で、力強くて――




「おまえは、私だけのモノだから」




 他の誰かなんて考えられないくらいに――妬ましくてたまらない
勇パルが好き過ぎて妄想が止まらない

五度目まして猫井です

勇儀さんも女の子

好きな人に好きって伝えてもらわないと不安なんだよ、というお話でした

パルスィかわいいよパルスィ!
猫井はかま
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コメント



0.4080簡易評価
1.100名前が無い程度の能力削除
くそぅ、、 ニヤニヤが止まらん。
しかし途中でヤンデレENDに行くかと思ってひやひやした。
2.100こうが削除
やべえ、やべえ・・・すっごいいい話だった。
もう胸がドッキドキ(お
勇パルはやっぱりすばらしいということを再確認した。
今回はデレデレな姐さんとデレデレなパルスィ。
ごちそうさまでした。
12.100名前が無い程度の能力削除
やべぇーーー!いいな。勇パル
パルスィの首に巻いてるのはそういう意味があったのか!
ごちそうさまでした。
マジ、読んでていいと思いました!
15.100名前が無い程度の能力削除
ひゃっほおおおおおおおおおおう!!
20.100芳乃奈々樹削除
まさかの続編ktkr
危ういラインをふらふらするのってすごく好きですw
後半はとてもにやにやさせてもらいました!

勇パルいいね!
23.100名前が無い程度の能力削除
この勇儀ちょっとイケメンすぎない?
34.100名前が無い程度の能力削除
なんという可愛いパルスィ。
勇儀テライケメンw
36.100名前が無い程度の能力削除
死んだ…。
いいぞもっとやれ!
37.100名前が無い程度の能力削除
あなたのおかげで勇パルが大好きになりました!
40.100名前が無い程度の能力削除
やばすぎるww
41.100名前が無い程度の能力削除
なんやねんこれなんやねんこれなんやねんこれなんやry
こっちまで恥ずかしくなるくらい甘い!甘すぎる!!!
もうニヨニヨした口元が戻らないんですがどうしましょうか。
よしいいぞもっとやれ!
45.100名前が無い程度の能力削除
勇儀さまはこうやって地獄のタラシになってきたんですね、わかります
50.100名前が無い程度の能力削除
もっとやれw
62.100名前が無い程度の能力削除
なんというヤンデレw
パルスィがかわいすぎるww
65.100名前が無い程度の能力削除
勇儀イケメンすぐるwwwww