Coolier - 新生・東方創想話

異変との境界とは…?

2008/12/06 16:06:24
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オリジナルキャラの要素を含むかもしれません
そういうのが嫌いな方は戻るをお願いします。




「異変かしら?」



空を眺めながら一定の方角を見ている
縁の下で金色に輝く髪と端整な顔立ちの女は、呟くように言った。
そして彼女の目の前に気味の悪い裂け目が出来る

「お出かけですか?紫さま」

気味の悪い空間に片足を掛けた所で止まり、女は振り返る
そこに居たのは見慣れた顔の女
先ほど名を呼ばれた八雲紫の「式」八雲藍であった。

「えぇ…ちょっとね」
「私も行きましょうか?」

「大した用事になったら呼ぶから、いいわよ」

そう言い残し気味の悪い空間「隙間」と呼ばれる空間にスッと入ってしまった。
空間が閉じ一人立っている藍は考え込む

「大した用事になったら?」

一人考え込むがすぐに部屋の方に移動し始めた




――――


妖怪の山より少し離れた寂しい名も無い草原
人も妖怪も滅多に訪れない名も無き草原に場違いな赤と白の服を着た少女が立っている
博麗の巫女 霊夢である
容姿からは想像出来ないが、数々の異変を解決した幻想卿屈指の実力者。
そんな彼女が一点を見つめたまま、悩んでいる

「異変と思ったのになぁ・・・」

此処に来る途中、異常に攻撃的になっている妖精達を蹴散らし
異変を確信しながら辿り着いた草原。
しかしそこには何も無く、道中が嘘のように静寂に包まれている。

「私もそう思ったんだけどね」

不意に後ろから声が聞こえた。
霊夢が振り返ると隙間から紫が上半身を出し肘を着いている
なんとも不満そうな顔である

「何もいないのね」
「何もいないわね」

二人とも拍子抜けしてぼーっとして会話している

「来る途中には、妖精達も気が立っててね…異変ぽかったんだけどなぁ」
「あら、異変だった方が霊夢は良かったのかしら?」
「そういう訳じゃないけど…」

紫が意地悪そうに此方を見ている
こういう顔している紫は見慣れてて何処か安心する時がある

「まぁぼーっとしてても仕方ないし私は神社に帰るわね」
「あら…じゃあ私はしばらくこの静かな草原でも眺めているわ」

そう…とだけ言い空を飛びあっという間に視界から霊夢は消えていった
残された紫は隙間から出て周りを見渡した

「この辺りは不自然なほど静かね」

妖怪や人間は兎も角、妖精すら居ない
何かこの草原を警戒しているのかそれとも…と考えていると奇妙な音がした
ごぼごぼと何か湧き出るような音がするのだ

音を頼りに草を掻き分けるとそこには得体の知れない液体が沸いていた
それは色が忙しなく変わり蠢いている

「何かしら…綺麗な色をしているけれど…」

紫は訝しげに顔を近づける
すると「それ」からぎろりと片目が現れて紫を見つめた
紫は突然の事に驚き少し後ろに下がった

「何よこれ?」

紫はすぐに色々な事が滝のように思考を埋め尽くした
しかし直後にその不気味な液体から口が形成される
そして紫は本能的に身構える

「まさか私を食べる気なのかしら?」

食べられたら天狗の格好のスクープになってしまうなと考え少しだけ口が緩む
そんな余裕がある程に八雲紫という存在は実力があるのだ

「…マ……な……?」

その液体の様な物は突然喋り始めた
見た目と裏腹に幼い子供の、女の子の様な声で
紫はあまりのギャップのある声に拍子抜けしてしまった
何故か判らないが警戒すら解いてしまっている

「え?今なんて言ったのかしら?」

紫はしゃがみ込んで液体のような物に聞き返した
その可愛らしい声が聞こえるようにと顔を近づける
液体は妖しく蠢きながら口を開く

「ママ……なの?」
「………………はいっ!?」


――――――


藍が困惑した顔で紫を見つめている

「なんですか?これは?」
「私もわからないわ…」
「ママ、この人誰?」

異様な光景である
紫の手には蛇の様な触手が握られているけれど触手の先は何か変な液体
それを見つめる従者
そして従者が液体が喋った事に驚きもしない
また主が変な物を持ってきた。程度の事と受け止めているからだ

「ママ?紫様が?どういう事です?」
「さぁ?すり込みか何かかしら?」
「妖怪でも妖精でもない様ですけれども・・・」
「もちろん人間でもないわねぇ…」

そんなやり取りをしていると液体が蠢く

「ママ?この人誰?」
「そうねぇ…私がママならあなたのお姉さんて所かしら?」

飼う気なのかと頭を悩ませている藍
得体の知れない物にいつも通りの態度の主には関心させられる

「何を食べるんでしょうね?」
「さぁ?適当に食べさせてみましょう」
「それでもしかして先ほどの用事というのは・・・」
「この子の事・・・なのかしらね」
「はぁ・・・」
「少しこの子を調べるから夕ご飯出来たら呼んでね」

そう言い残し主と一匹?は庭の方に向かっていった

「橙に危害加えなきゃいいけど」

藍はそう言ってから今日の夕ご飯の献立を考えながら台所に向かった
いつもの主の気まぐれだろうと藍はあまり気に止めなかった


――――――


夕食を終えた紫は庭を見つめて考えている
庭では忙しなく形を作ろうとして水面に戻るそれが居た

「妖怪でも人間でも妖精でも無い、勿論神の類でも無い」
「能力も不明、何を食べるのかも解らなかったし謎が多すぎるわ」
「声から察するに女の子で恐らく生まれたばかり?」
「知識も低そうだし…」

一人ブツブツ喋っている紫に二股の人妖が駆け寄る

「あら橙」
「紫様何をしてるんですかー?」
「ん、あの子の事でね」
「あー今日来た子ですね」

橙の視線は「あの子」の方に向けられる
ぷるぷる震えて何かしているが橙には解らない

「何をしているんでしょうね?」
「多分、自分の姿を作ろうとしているのよ」
「姿ですか?」
「そう、姿」
「多分生まれる時に姿を考えないできちゃったのかもね」

いたずらっぽい笑顔で紫は橙に言う
どこか優しさを帯びていている

「お名前は決めているのですか?」
「そうねぇ…」
「無いんですか…」
「じゃあ、あの子が姿を作った時に決めましょう」
「それまでなんて呼べば良いんでしょうか?」


「…さぁ?」



――――――



あの物体に出会って数週間
紫が観察を続けたが未だに謎の部分が多く
屈指の頭脳を持っての研究は続けられた
今の所藍や橙には害意は無くそれなりに仲良く?やっている
一応異変の原因ではあると思われるので監視下という意味合いもある

いまだ形を作れない「それ」と八雲藍とその式、橙が「それ」の生まれた平原に来ていた
橙ははしゃぎ野を駆けている
それを優しそうに見守りながら藍は何かを探している

「この生まれた場所で何かヒントが在れば良いんだが…」
「ごめんなさい…」
「お前が謝る事じゃないよ」

藍は悲しそうな声を出す「それ」に笑顔で答えた。
しばらく辺りを探索したが何も見つからなかった
そしてお昼時になり弁当を広げはじめる

「紫様も来ればよかったのにね」
「そういうなよ橙、紫様も色々と忙しい身なのだよ」

紫は朝早くから何かを見つけた様に出かけてしまった
藍はその時には気にも留めて居なかった
すると橙が声を上げる

「あれ?」
「どうした?」
「あの子居なくなっちゃったよ?」
「本当だ、ちょっと探してくるから橙は遊んでいなさい」

そういうと藍は飛んで行ってしまった
残された橙も草原を捜索し始めた
藍は考える、あの子は霊力とかそういう類の物を持たないから
少し目を離すと厄介なんだよな。と
近くの森に入られると妖怪の山の領域になる
一応秘密にしたいと紫様が仰ってたので急いで探さないと
そう考えて森の方に移動した

「匂いも無いのは変な存在だよな・・・。」


草原の近く妖怪の山にも近い森の中
一人の天狗が見回りをしている
身分の低いその天狗は気だるそうに座り込んでいる

「今日も暇だな」

そう天狗が呟くと後ろの茂みからがさがさと音がする
天狗は動物でも出たかな?と思い振り返る
いわゆる妖気やそういう類の物が感じられなかったからだ
茂みの方に近寄ってみる。

「――は――――・・・」

不気味に感じたが見回りという役目
引くに引けない天狗は茂みを掻き分け声のした所を見つめる
そこには何も無い
静かに木々が揺れているだけだった。

「なんだ…何も無いじゃないか…」

「――――は――――……」

確かに声の様な音が聞こえる
しかし何も無い
身構えたまま天狗は辺りを見回した

「!?」

「――――…」




――――――


藍が必死の捜索の甲斐も無く
主にどう説明しようか考えて橙の所に戻ると
橙の傍には見覚えのある「それ」が居た

「お前どこに行ってたんだ?」

少し強めの口調で問いただす
橙は少しびっくりして尻尾がピーンッとまっすぐに伸びる
ぷるぷると震えた後「それ」は口を開いた

「ご飯…ご飯」
「ん?どういう事だ?」

藍は違和感を覚えた
「それ」は出会った日から一度だって何かを食べているのを見た事が無い

「お前、一応食べるんだな」
「で、何を食べたんだ?」

「鳥…珍しい、美味しかった」
「肉食なのか・・・」

こいつは鳥が好きなのかと思いその時は気にせず帰路に着く
その夜、紫と藍は部屋で向かい合って真剣に話している
橙は遊び疲れているのか別の部屋で熟睡している

「あの子について色々考えたわ」
「何か解ったのですか?」
「ある程度はね…その上での考察に過ぎないけど」

普段の飄々とした雰囲気からは想像出来ない位
紫は張り詰めた雰囲気をしていた
その紫を見て藍は大変な事が起こるのでは?、と脳裏に過った。

「推測の域を出ていないけどあの子は異変の出来損ない」
「なんらかしらの力が働いて異変として生まれようとしたけど」
「何かの種族として成立する前に形が保てなくなった」
「繭の様な状態なのかもしれないし、そうじゃないかもしれない」

「なら紫様の力で形を保てるように境界をいじれば…」
途中まで藍が言いかけたところで紫が言い放った

「もう何度もやったわ」
「え?」
「あの子の能力かもしれない」
「予想だけど能力を無効化するとかそういう類の物じゃないかしら?」
「そんな馬鹿げた能力……」
「ありえないとも言い切れないわ」
「そんな力が生まれれば幻想卿のバランスが…」
「崩れるわね」
「もっとも制御出来ればの話しだけど」

関心が無いように冷たく紫は言い放つ

「紫様!そんな能力直ちに消してしまわないと!」
「どうするの?殺すの?あの子を」
「……」
「それにまだ能力がそうと断定できた訳じゃないわ」

藍ははっとした。
紫様はあの子を家族として扱っている
藍が俯くが紫は話を進める

「幻想郷は全てを受け入れる」
「だから矛盾が生じたのかしらね」
「?」
「バランスを保つために何にも成れずに生まれてしまったのかも」
「そんな事が…」
「そして自分の力が生まれ姿を作るという理も消した」
「なんとか保っているのがあの子のあの姿」
「世界の理すらも消してそれでも存在する矛盾があの子なのかもしれない」
「あくまで仮説だけどね」

「なんという…不憫な…」
「そう…ね」

「受け入れられたのに、生まれた結果があの姿?」
「藍…」
「あんまりじゃないですか?」


紫は考える妖怪は基本的に身勝手な存在
だけど、いやだからこそ絆を大切にするのかもしれないその純粋さ故に
だから藍も人間の様な言葉を言うのかもしれない

「どうすればあの子を立派な姿にさせてあげれるのでしょうか?」
「能力の封印が出来ればだけど…」
「既に試されたのですね…」
「残念だけど……」
「なら能力を制御出来るように…」
「色々試したわ」
「力の制御方法、あらゆる薬、食事療法なんてのもね…」
「食事?」
「そう…食事」
「そういえばあの子、食事をしたと言ってました」
「何も食べないあの子が?詳しく聞かせて?」

藍はその時の事を紫に語る
何か怪訝な表情で紫は黙って聞いている

「妙ね…」
「急に食事を取り始める事がですか?」
「それもあるけど…」

紫は何か考え始めてしまい長い沈黙が始まった
藍も藍なりの答えを考えていた

そのまま話は終わってしまった
眠いからという理由で紫が寝てしまったのだ
紫は眠りに着きながらも
半人半妖など半端な存在の事を思い浮かべる
あやふやな存在でも笑って生きているその人達を


――あの子の笑顔はどんなかしらね――



夜型の妖怪なのに最近は朝に起きる
紫はぼーっとしたまま居間に移動する
「生活リズム、おかしくなっちゃたわね」

すると藍が慌てて飛び込んできた
見るからに何かあったという感じだ

「あの子がいません!」
「え?」
「朝何時ものようにあの子の寝床に行ったのですが…」
「不味いわね…」

異変として巫女に一度認知されてしまっている
何か起こせば即座に退治されてしまう
いやそれよりももし…万が一…逆の事が起これば…

「藍すぐに探して頂戴」
「はい!紫様は?」
「先手を打って霊夢の所に行くわ」
「先手?」

そして隙間に入り込む
藍も消えるようにその場を後にした。

博麗神社に紫が到着すると何やら霊夢と天狗の記者が騒いでる
天狗の方は何かしきりに説明している
霊夢も真剣に聞き入っている

「だから――」
「異変かも知れない?」

突然会話に入り込む、しかし霊夢達はいつもの事なので驚きもしない

「あ、紫。賽銭箱はあちらよ?」
「えぇ…それは無いわ」

いつものやり取りを済ませると紫が天狗の記者、文に訊ねる

「何かあったのかしら?」
「それがですね!」

天狗の仲間が行方不明になった事
天狗達が必死に探している事

「犯人とかいたらタダじゃ済まないでしょうねぇ…」

と霊夢は他人事の様に言った。
霊夢は時々、確信を突く事をさらりと言う
そして文は話を続けた

「今朝も人里の方で行方不明が出てるんですよー!」
「え?そうなの?」
「少し能力がある人間だったらしいんですよ」
「天狗に人間ねぇ…」
「人間は兎も角、妖怪が襲われるのも変な話しでしょう?」

黙って紫は聞いていた
もしかしたらでは無く、あの子がやったのだろうと
証拠が無いといえば無いのだけど確信していた
しかし何故人間なら解るけど妖怪も?
力があれば見境が無いのか?なら何故私達に牙を向けない?

「どうしたの?」

考えを邪魔されるように霊夢に尋ねられた。
こういう時異常に勘が鋭いから困る

「天狗が行方不明になった森…」

と霊夢が呟く
紫は冷静に聞く、あの事に触れると直感したからだ
半端な誤魔化しは通用しない

「そういえばその森の近くっていつだか異変の気配がした所の近くね紫?」
「そういえばそうね?」
「何か知ってる?」
「知っていれば私が聞きたいわ」

悟られないように振舞うけど時間の問題だ
霊夢は私に対して何か疑いの目をしている、正直怖い
でも今は時間を稼がないと…と考える
頭の中も整理したい事で一杯だ
あの子が食べた鳥が天狗の事として人間は…?
何故?妖怪も人間も見境が無いのか?
ならば何故私達は大丈夫なのか?と

「ん?何あれ?」

霊夢が見た方向に何か蠢いている物体が居る
見覚えのある、というかあの子しか居ない
何故此処に?と思ったと同時に紫は最悪の事態になったと思った
頭が真っ白になるってこんな感じかとも考える

説明を考えるより先に霊夢と文が即座に構える

「何あれ!?」
「わ、わかりませんよ!」

「それ」は恐らく二人の力という匂いに誘われて来たのだろう
そして紫は知っている「それ」の大きさが少し違う事に気がついた
恐らく話しに聞いていた人間を捕食した事が原因だろう
僅かながら姿が形成出来ている。
紫は想定する

力のある存在を捕食して力を高める生物?
なら霊夢やそこの天狗を狙ってきたの?

形が崩れては造られている
見覚えのある流動的な体は固形になりつつある
なんとなくだけれど人型に成ろうとしている感じで
そして「それ」は口を開く

「ママ…ご飯用意してくれたの?」

紫はその一言で一瞬頭が真っ白になった
隠し事もそうだけど一番考えたくなかった事
二人を食事と見た時点で
止めないと、説明して霊夢達にそう考えた瞬間に霊夢が叫ぶ

「ちょっと!紫!後で詳しく説明して貰うわよ!」

紫は静止を掛ける事も遅れた、それほど頭は一杯だった
恐ろしいほどの知識と経験を持つ妖怪ですら悩ませた


間違いなく幻想郷に害を成すという証明
調律を保つ者としての立場
親しい友人である博麗の巫女
その大切な者を餌と認識する家族
止めないと…そう止めなければいけない


しかし「それ」と霊夢達の戦いは既に始まっていた
戦いとは到底呼べない物かもしれない

退魔針や文の術で巻き上げた石があの子の体を撃ち抜いた
前にかき消されていた術や弾幕が効いていた
物理、霊撃問わず受けていた
防御の手段を持っていないのかもしれない
全てが一瞬とも言える出来事だった
紫は様々な事が頭に巡り、まとまらない

「葛藤なんて人間の物でしょう?
 なんで私がそんな物に思考を邪魔されないといけない?」
「止める?霊夢達を食べようとしてるのに?」
「でも、とりあえずで良いから止めないと」

一方的に攻撃される
隙間を出して攻撃を止めさせようとした

だけど攻撃の第一波で全てが終わっていた
流動の物体はこの神社に来ていた時には固形に近い形を保っていた
流動であれば無効だったのかもしれない
タイミングが悪かったのかもしれない
あの子は姿が出来るから私に見せに来て…神社に来た。
運悪く姿が出来上がる前に、そう思いたかった
誰だって得体の知れない物に餌扱いされたら防衛本能が働く
霊夢達は当然の事をしたのだ

退魔針の刺さった所から亀裂が走るパキン…パキン…と音を立てて
それを霊夢と文は警戒しつつ距離を取って見ている
目に入ったのは紫がそれにふらふらと駆け寄る姿だった
いつもの毅然とした態度の紫ではなかった

「紫?」

霊夢は文と顔を見合わせた後、紫の傍に降り立った
紫の抱きとめていたそれは先ほどと違い人の姿をしていた
皮のように剥がれる何かから幼い少女が顔を出す
霊夢と文は状況が飲み込めていない、ただ事の顛末を見ていた

「紫さん!その子の説明を――」

と言いかけた文を霊夢は制止した
あの胡散臭いが服を着て歩いているような紫
だけど私達を見る目はどこか温かさがあった
その温かい時の穏やかな表情で紫は少女に語りかける
理由は分からないが邪魔をしてはいけない、そう霊夢は直感した

「霊夢さん!なんで止めるの?」
「説明は後でも受けれるわ…」

そこに藍が先ほどの力の衝突を感じて来たらしく紫の傍に降り立つ

「紫様!」
「見てよ藍、この子ったらこんなに可愛い顔してたのね」
「その子が?あの?」

藍は驚く事も仕方が無い、誰だってそう思うだろう

「ようやく姿が出来たのよ、名前も決めないとね」

返事は無いだけど紫は続ける

「これで橙もお姉さんね、きっと喜ぶわ」
「紫様…」

「まだちゃんとした会話もしてないわ」
「帰ったらたくさんお話ししましょうね」

「幻想郷は良い所よ、いっぱい色々な所に連れて行ってあげるから」
「紫様…その子はもう…」





――――――




後日博霊神社に紫と霊夢が縁の下でお茶を啜っていた
二人空を、抜けるような空を見ながら

「幻想郷は全てを受け入れる…かぁ」

霊夢は空を見ながら言う

「受け入れる物にもよるけどね、とんでもない物は認められないわ」
「それもそうね…」
「あの子の事は気にしていないわ」
「紫…」
「聞きたい事があるなら遠慮なく聞きなさいな、いつものように」
「あの子は結局なんだったの?」
「そうねぇ…」
「幻想郷のバランスの調整の為に生まれようとしたけど認められなかった存在」
「だから生まれているようでそこには存在しない」
「無い物には理は通用しないそんな推測だったけど」
「今となっては答えは謎のままね」
「理を無効にする程度の能力?」
「いいえ、違うわ」
「存在が確立してくれば効くわ、あの時の様に」
「ごめんなさい…」
「霊夢が謝る事は無いわ、誰だって得体の知れない物が襲ってきたら防衛するわ」
「私が立場と家族を天秤に架けれなかっただけ」
「だから止めるのが遅れたの」
「紫…自分を責めないで、あなたらしく無いわ」

紫はいたずらっぽく笑う

「あら、慰めてくれるの?嬉しいわぁ」

紫は霊夢の胸に飛び込む、いつもならグーで迎撃されるのに今日はされない
それどころか優しく抱きしめられた

「紫だって完璧じゃないわ、上手くいかないこともあるよね」

異質な生まれ方をしようとしたのも悪い方向に拍車をかけた
何も知識が無い事は対策がしようが無いのだ
それでも一生懸命に迎えるように努力した、結果がどうあれ
紫はあの子の事を思い浮かべながら呟く




「あの子の笑顔が見たかったわ…」
アレとかソレとか陳腐ですよね御免なさい
これはゆかれいむの壮大で長い前振りなんだ
もちろん嘘です御免なさい

異変にならなかった幼女は
もし神主様が物語を作ろうとして失敗して作品化しなかった物を
手違いで具現化しちゃったとかそんなノリです
世界に入れる可能性を貰ってダメだったものがこっそりと・・・
あとアラクネ、エディ、ネロを想像した方は
間違っていないですが似て非なる感じです

全体的に説明不足で展開も目まぐるしいので不快になった方に
深くお詫び申し上げます。
また出す必要が無い位の扱いのキャラ達とそのファンに
深くお詫び申し上げます
平謝りの人
簡易評価

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コメント



0.640簡易評価
3.60名前が無い程度の能力削除
句読点がある所とない所があって、そこが少し気になりました。
紫の葛藤がよく現れていて、色々と考えさせられる作品だったと思います。
でも、ふっと湧いて出た成り損ないに、すぐさま感情移入するほど彼女人間臭いかなぁ…。
もうちょっと前置きというか、育てるまでの名目や描写が欲しかった。
これは個人的に感じた違和感なので御気になさらず。次回作にも期待します。
10.70煉獄削除
もし成り損ねたあの子が生きていたとしたらどのようになっていたのでしょうね?
異変になどならず、紫の下で笑い合っていたのでしょうか?
私もその子の笑顔を見てみたかったなぁ…。
16.無評価削除
>>3
すぐさま感情移入するほど
↑これは私も思いました、ありえないですよね
どちらかというとそんな気にしてないと思うっていうのが私の答えですが
紫様は気まぐれなので読み手の方々に答えを依存する形にさせて貰ったつもりです
句読点は勉強させて頂きます。
何分初めて尽くしなのでとても貴重な指摘として受け止めさせて頂きます
ありがとうございました。

>>10煉獄さん
そういう予想も面白いですよね
これも人それぞれにいくつもの予想があると思います。
答えは神のみぞ知るという奴ですね…神奈子様にちょっと聞いてきます!
20.80名前が無い程度の能力削除
しっかり幻想郷のお母さんなんだねゆかりんは。