Coolier - 新生・東方創想話

料理の暇人

2008/11/30 22:19:45
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――あまりに暇なので、今日はみんなでケーキを作ってみよう大会を開くことになったらしい。

というわけで、それでは、私、射命丸が、はりきって出場者を紹介していきましょう。
エントリーナンバー1
 
彼女を語らずして東方語れず!
博麗の貧乏脇巫女 博麗霊夢!

「……誰が貧乏よ。誰が」

続きまして、エントリーナンバー2

幻想郷随一のトラブルメーカー!
きのこの森からやってきた。毒きのこ魔法使い! 霧雨魔理沙!

「あいつ、いつか絶対ぶっ飛ばす……!」

さあ、さらにエントリーナンバー3

誰が呼んだかマルキュー妖精
今日も、おバカキャラ全開 氷精チルノ!

「ふふん、あたいが、さいきょーなのよ!」

そして、エントリーナンバー4

自他とも認める根っからのエンジニア!
鉄くずこそが我恋人 かっぱのにとり!

「……河城にとりだっつーの」

そして以下、その他大勢の参加者!

「ちょっ、ふざけるなー! 私たちもちゃんと紹介しなさいよー!」

えーと、めんどいのでパスってことで。

「ひ、酷過ぎるわ……そう思わない? 静葉姉さん……」

「まぁ、仕方ないわ。もう秋も終りだもの……」

「そっか……そうね……私たち、このまま地味に枯葉に埋もれていく運命なのね……」

「あら、穣子、負けちゃだめよ。どうせなら最後に一花咲かせましょう。大輪の枯葉を!」

「そうね。どうせ散りゆく運命なら、最後に一花咲かせましょう! 大輪の枯葉……って、だめじゃん、それ!」

「ねえねえ、ちょっと、どーなってるのよ。えーりん! 何で私は紹介されないのよ!?」

「姫様。残念ながらその他大勢組に括りつけられてしまったようです。どうやらきっと端から相手にされていないのですよ」

「なんですって!! この私を無視するとはいい度胸ね! 頭に来たわ! こうなったら本気の蓬莱人の恐ろしさ教えてあげないと

!」

「その意気ですよ! 頑張ってください!」(ああ、姫様があんなにやる気になってる姿なんて何百年ぶりかしら……涙が出そうだわ……)

さて、そろそろ競技を始めたいと思います。
それでは、電流爆破24時間耐久ケーキ作り競争デスマッチ、用意……

「ちょっと待った! 電流爆破うんたらって何よ! 普通に作らせなさいよ」

えー、だってその方が面白そうですし……。

「ふざけんな! もう許さん! お前もこの大会に出ろ!」

わ、ちょっと……やめ……きゃああっ……!?

「……とほほ……というわけで、私まで出ることになってしまいました」

「よーし、これで公平に腕を競うことができるな!」

さてさて、捕まってしまった文さんに代わりまして、ここからは幻想郷のアイドルこと、私、ミスティア・ローレライが実況いたしまーす♪
それでは今からルールを説明しますねー。
この、私が手に持ってる時計のベルが鳴るまでケーキを完成させてくださ~い!
時間にしては、大体一、二時間くらいでーす!

「なーんだ。かんたんじゃない! やっぱあたいがさいきょーね!」

「チルノちゃーん! 頑張るんだよー!」

「だいじょーぶ! どーせ、あたいがさいきょーなんだから!」

「……ねぇ、静葉姉さん。少なくともあのマルキューの妖精には、負けたくないわね」

「ええ、そうね。でも、もし負けても仕方ないのよ」

「え! どうして?」

「だって、もう秋も終りだもの……」

「……ああ……そっか……そうだよね……また長くて辛い、あの耐久の日々が……やってくるのね」

「もー、いちいち陰気くさいわね。あの二人は……!」

「姫様。周りは気にせず、自分のペースで行ってくださいね」

「もう、えーりんったら、そんなの言われなくてもわかってるわよ!」 

それではいきますよー!
いちについてーよーい、はぁ~じぃ~めぇ~♪

「……歌うな、気が抜けるから……」

さあーというわけで今、世紀の対決が始まりました。果たして誰が優勝するのでしょうかー!
皆、一斉に動き出しましたー!

「はー、めんどくさい。さっさと終わらして、お茶でも飲みたいわね……ねぇ、まり……さ?」

「ふっふっふっふ!! 言っておくが、私は絶対、負けないからな! 霊夢!」

「……なんで、たかがケーキ作りにそんなに対抗心燃やしてるのよ……」

「霊夢、生憎だが、私は負けるという事が、何よりも嫌いでな」

「そ。ま、頑張ってね。私はテキトーにやるから」

「ふ、だめだな。……こういう時に燃えず、何時燃えるって言うんだ!?」

「……どうでもいいけど、あんた、何作ってるの?」

「もちろん、ケーキだぜ!」

おおっと魔理沙選手、なんとキノコをフライパンで炒め始めました~!
これは、いきなり奇抜な行動に出ましたよ~!

「……なんで、ケーキ作るのに、キノコなんか炒めてるのよ」

「ああ、それはな。……おっといかん! それは企業秘密なんだぜ」

「もう、嫌な予感しかしないんだけど……」

さーてー、別な方に目を移してみましょう~。
おっと、こちらは射命丸選手、全く手が動いてませんね~!

「……困りましたね……私、ケーキなんて作ったことないですし……」

「奇遇だね。私もさ!」

「その声は、萃香さん!」

「萃香でいいってば」

「いえ、一応私は、今日は記者として来ているのですから」

「まったくめんどくさい奴だねぇ……ま、いいけど」

「そういや貴女も、参加してるんですか」

「まあねー。退屈しのぎにはなるかなーと思ってね」

「ふーむ、とりあえず周りの人のを参考にしながら、作ることにしましょうか」

「お、それ、名案!」

「では、とりあえず……私の横にいる輝夜さんなんかどうで……」

おっと、輝夜選手も全く手が動いてませーん! 厨房の椅子に座って寛いでいますー!

「ちょっと! 姫様!? 何をしてるんですか! もう試合は始まってますよ!?」

「わかってるわ。そんな初めっから躍起になることもないわよ。もう少ししたら動くわ」

「……こりゃダメそうですね……」

「う~ん、そのようだねぇ」

「あたいさいきょー!」

おっと、チルノ選手! なんと卵の殻を割らずに、ボウルに入れてそのまま小麦粉と、かき混ぜ始めましたー!
これはひどい!

「ちょっとー!? チルノちゃーん! ダメダメ! 卵は殻を割らないと! 食べられないよそれじゃー!」

付添いの大妖精さんは、早くも涙目です~。 

「ねえ、静葉姉さん。なんか見たところ、まともに料理してるのは、極わずかな人だけみたいよ?」

「ええ、そうね。これは私たちが目立つチャンスかもしれないわ」

「そうね! 頑張りましょう! 秋の神様の力を見せてあげましょう!」

「ええ。……でももう、秋も終りなのよね……」

「ああ、そういや、そうだったわね…………。はぁ……」

さてー突然ですが、今日は特別ゲスト解説をお呼びしてますので、ここで紹介しておきますねー。
自称、大の甘党と言う魂魄妖忌さんですー。

「うむ、わしはケーキより、羊羹の方が好きだがのう」

さて、妖忌さん。早速ですが、この勝負、一体決め手は何なると思いますかー?

「うむ! やはり羊羹のうまさの決め手は、いかに濃厚な味わいが出せるかによるな。ケーキごときではあの味は再現できぬわ」

……さーて、それでは、競技中継の方に戻りましょうね~。

「よし、回路接続完了! ……あとは充電するだけっと」

おっと! これは、にとり選手ー! なんと、いつの間にか、大きな装置を作り上げてしまいましたよー!

「ふふ……にとり特製調理マシーン! 名づけて『クッキングコング9号』 さあ、こいつでさくさくっとケーキをつくってやるもんね!」

「うぉ!? なんだありゃ! またエラく派手なの持ち出してきたな! 河童のやつ」

「……あんたも十分派手だけどね」

「え、どこがだ?」

「どこがって……なんでケーキ作ってるのに、今度はキノコ茹でてるのよ!?」

「ふふふ……それは秘密なんだぜ!」

さあ、各自、それぞれ調理が進んでるんだか進んでないんだか微妙な状況ですが、それでも時間だけは刻一刻と過ぎていきますよー!

「うむ、時間というものは実に残酷だ。かく言うわしもな。朝起きてぼけーっとしてるうちに、気がついたらもう夕方になっていたりしてな……」

……えー、みなさんはこの人みたいになっちゃダメですよー。

「ふーむ……」

「どうしたんだい? 結局私たち、あれから全然進んでいないわけなんだが……」

「ちょっと気になったことがありまして」

「ん?」

「いえですね。この大会の主催者は誰なのかってことなんです」

「ああ、そう言えば」

「ざっと見たところ、主催者らしき人はどこにもいませんよね……」

「ってか、あんたは主催者もわからずに勝手に実況なんかしていたのかい?」

「ええ、まぁ。楽しそうでしたし、ネタにもなるかと思いまして」

「まったく、呆れたねぇ……それより、ケーキ作り始めないと、そろそろ時間的に不味いんじゃないのかな?」

「ええ……まぁ……そうなんですけど……」

さあ、只今、一刻を過ぎました~。ここからは後半戦ですよー。皆さん頑張ってくださいねー!

「もう! 姫様! いつまでそうしているつもりなんです! あと半分しかありませんよ!?」

「そうね、流石に、そろそろ動かないとだめよねー」

「って、そう言いつつ何でデコレーション用の苺なんかを啄んでるんですか!」

「動く前の腹ごしらえよ。お、この苺なかなかの味じゃない」

「もう、姫様ぁ~……」

ああ、大妖精さんに続いて永琳さんも涙目です~!

「ねえ。チルノちゃーん! ダメだよぉ~。泥だんご作ってるんじゃないんだよぉー?」

「だいじょーぶ! まるまるけーきつくってるんだから! あたいったらさいきょーね!」

さあチルノ選手は、卵のから入りの生地を団子状に丸めはじめましたー。いったいどうするつもりなんでしょうかー?

「さてと、スポンジも焼き終わったわね……次はデコレーションっと……」

「よし! いいキノコのエキスが取れたぜ。こいつを使って……!」

おっと魔理沙選手、今まで煮続けたキノコの出汁をケーキの生地に混ぜましたー! これは驚きましたねー!

「……なんか、あっちもこっちも、ゲテモノの塊ばっかな気がしてきたんだけど……」

「私たちも負けてられないわよ。穣子。」

「もちろんよ! さあ、焼きあがったスポンジの上に、蒸かしたサツマイモをペースト状にしたのを乗せるわよ!」

「ああ、穣子ダメよ。自分で解説しちゃったら、実況の人に振ってもらえなくなるわ。 ただでさえ、まだ一回も振ってもらえてないのに……」

「しまった……! なんてこと……それもこれも秋が終わるのがいけないのよ! はぁ……鬱だわ……」

「……ふむ、確かに秋ももう終わりだ。そうか、羊羹のおいしい季節も過ぎようとしてるのだな……鬱だのぉ」

おっさん、いい加減、羊羹から離れろですー! さあ、間もなく残り半刻を切りますよー! いよいよ各自ラストスパートですー!

「よーし、充電完了!! さあ、クッキングコング9号! さあ、思う存分にケーキを作るがいい!」

「ウィイイイイイイ!!」

おっと! 出ました! にとり選手のクッキングマシーンが、ついに動き出しましたよー! 
果たして美味しいケーキはできるのでしょうかー?

「ちっ! あんなガラクタなんかに負けたくないぜ!」

「それは同感ね」

「ところで、霊夢のケーキは何なんだ?」

「何なんだって何よ?」

「いや、何て言うか、ずいぶんとオーソドックスと言うか無難と言うか……」

「無難な方が、お茶うけにいいでしょ? どうせなら普通の味のケーキ食べたいしね」

「お前が食うのかよ?」

「あたりまえじゃない。だって、別に私、この勝負に勝ちたいとか、全然思ってないし」

「お前なぁ……」

「……っていうか、あんたのケーキこそ何なのよ?」

「ああ、霧雨魔理沙特製マッシュルームケーキだぜ!」

「マッシュルームって……きのこのケーキなんて聞いたことないわよ……」

「だろ? 私の自信作だぜ!」

さあ、魔理沙選手のケーキが出来上がってきたようですよー!果たして、このマッシュルームケーキの味はいかに!

「へぇ~。皆、なかなかやるねぇー。参考になるなぁ。作る気はさらさらないけど」

「とりあえず、見よう見まねですけど、私も作ってみましたよ」

「早!?」

「伊達に幻想郷最速ではありませんよ」

おっと! まったく手が動いていなかった文選手、いつの間にかケーキを完成させてましたよー!

「おぉー。なかなかのもんじゃない。どれ、味見味見っと……」

「言っておきますが、味はあまり期待できませんよ?」

「いや、なかなかどうして。おいしいよ。うん。これは案外、酒の肴になりそうだね」

「言われてみれば、ケーキで酒盛ってのも悪くはなさそうですよね」

「あれだね。ケーキは甘いから、お酒は辛めが丁度いいってね」

「ああ、それいいかもしれません!」

「どーれ。じゃ、早速試しに……」

あららら~萃香選手。文選手のケーキ片手に、お酒を飲み始めてしまいましたー。

「ん~。いぃ~ねぇー。このキリっとした辛口の米酒が、生クリームのとろっとした触感に濃厚な甘みのケーキにマッチしてると言うか、……うーん、これは絶品だねぇ」

「本当ですか?」

「本当だとも。ほら、飲んでみ」

「どれどれ。では……あくまでも取材の一環として試飲させていただきますね」

「どう、どう?」

「……これは、イケますね! では、もう一杯……」

おおっと、何と言うことでしょうかー。射命丸選手まで、お酒の餌食になってしまいましたー!

「まったく……あの鬼と烏天狗は、何やってるのかしらねー。まともにやる気あるのかしら」

「姫様はとても言えた立場じゃありませんよ! 結局、何もしてないじゃないですか!」

「そんな怒らなくてもいいじゃない。なんかね~。こんな事で本気出すのも馬鹿らしいと思って」

「……はぁ……結局は、そうなるんですか……」

「さ、疲れたし、そろそろ帰りましょ。えーりん」

「ああ、姫様! 待ってくださいよー!」

ああっとー! 輝夜選手。なんと競技をほったらかして勝手に帰ってしまいましたー!
蓬莱人の真の力をお披露目するのは、果たしていつになるのでしょう~。

「うむ、能ある鷹は羊羹を隠すというが、羊羹は隠し過ぎても腐ってしまうからのう。出しどころが肝要だ!」

「……結局、あいつは何しに来たんだ……?」

「さあ、苺食べに来たんじゃないの?」

「静葉姉さん、一人帰っちゃったわ」

「ええ、見ればわかるわ。これでライバルが一人減ったわね」

「よし! これで私たちが勝てる確率が増えたってわけね」

「そうね。でも、惜しむべくは……」

「……ええ、そうね。もう、秋も終りなのよね……」

「ふ~っふっふ! 順調。順調! 流石は私の発明品!」

さあ、にとり選手の料理マシーンは順調のようです!
がっちゃんがっちゃんと動いてますよー!

「もし私が、この試合で勝ったらこいつを量産して製品化してやるもんね! 夢は一家に一台!」

「ウィイイイイイイイイイイイイイッ!!」

「あんなごっついの家に置いたら、寝る場所なくなっちゃうわよ……」

さあー残りも僅かとなりましたー! そろそろ明暗が分かれてきたでしょうかー?

「うむ、名餡と言えばやはり、とらやの羊羹だな。あの羊羹の餡は異質にして美味の極み!」

「魔理沙、さっきからあのおっさん羊羹の事しか話してないんだけど」

「知るか。きっと羊羹の精霊とかあたりなんだろ。それより霊夢、私のケーキを見てくれ! どうだ?」

「……ええと、なにこれ?」

これはー! 魔理沙選手のマッシュルームケーキ、なんと形までキノコです! まるで、どこぞのスーパーキノコそっくりですよー!
それこそ食べたら巨大化しちゃいそうなくらいですー!

「なんでそこまでキノコに拘るのよ」

「それは、私のアイアンメイデンというかな……」

「……もしかしてアイデンティティのこと?」

「そうそう、それだぜ」

「あんたさー、言葉の意味わかってんの?」

「わからん! そう言う霊夢はどうなんだ?」 

「私が知るわけないじゃない」

「自信満々に言うなよ」

「おーおー。でっかいきのこだなーっと。そーいやあんたもでっかいよね?」

「え? 何がですかあ~?」

「ん~さあね?」

「もぉー振っておいてそれはないですよぉー。萃香さんのいけずぅ~!」

「あっはっはっはっは! まぁまぁ、もっと飲もう飲もう飲もう飲もう!」

あ~……。文選手と萃香選手は、完全にへべれけになってしまいました~。もう、この二人は無視することにしましょう。

「まーるまるーけーき、でーきた。やっぱあたいってさいきょーね」

さあ、こちらチルノ選手は、まるめた生地を氷結させて、その上からクリームを塗ったケーキのようですよー。

「チルノちゃんすごーい!」

「もちろんよ! あたいさいきょーだもんねー」

「……でも、確か、あれの中には、卵のからが入ってるんだよね……食べられるのかなぁ。あれ」

「静葉姉さん。もうすぐタイムリミットよ!」

「ええ、思ったより短かったわね……。そう、例えるなら、まるで秋のように……」

「そうね、祭りの後は常々、儚くかなし……」

はーい! そこまでですよー! 試合終了でぇ~すぅ~よぉ~♪


では、ここからは試食タイムです!
今回試食する審査員を紹介しますね!

自称、大の甘党という魂魄妖忌さんですー。

「うむ。よろしく」

「うおい、またお前かよ!?」

「うむ! いかにも!」

「なんか嫌な予感してきたぜ……」

「あたいさいきょー!」

それでは早速試食タイムスタートですよー!
では、最初に、穣子選手の制作したスイートポテトケーキからです。

「はい、これは、秋をテーマにした食材であるサツマイモをペースト状にして、生地に塗りつけて表面に焦げ目をつけ……」

「うむ、羊羹じゃないのぉ。失格!」

おっと! 穣子選手残念でしたー!

「そんな! 食べる前に失格ってっ!?」

えー、失格になったケーキは、没収となりますのであしからずですよー。

「うぇーん! 静葉姉さ~ん! ひどいよぉ! ひどいよぉ! 私、一生懸命に作ったのに~!!」

「ええ、その気持ちよくわかるわ。穣子。さあ、私の胸でお泣きなさい」

さあ、続きましては、早苗選手のミラクルフルーツケーキですよ~!

「はい!」

「ちょっと待った! あんたいつの間に出場してたのよ?」

「え? いつって普通に出てたけど……台詞もちゃんとあったじゃないですか」

「……お前の台詞なんかあったか?」

「ちょっと! 失礼しちゃいますね! 『ちょっ、ふざけるなー! 私たちもちゃんと紹介しなさいよー!』とか、ちゃんと喋ってたじゃないですか!」

「あれ、お前だったのか……って、んなのわかるか!」

「いいですよ、もう! どうせ私は影が薄いですよ!」

「……ふむ。ねーみんぐせんすが最悪だのぉ。失格だ」

はーい、早苗選手残念でしたー!

「ちょっとお待ちください! どうして試食する前から失格なんですか!?」

「甘党のわしが言うのだから間違いない!」

「そ、そんな理由って……! やっぱり幻想郷って、常識が通用しないんですね……」

「……おい、霊夢、なんかおかしくないか? これ」

「んん……そう……?」

「……って、お前、なんで、ここで自分のケーキ食ってるんだよ?」

「だって、考えてみたら持って帰るの面倒だし、それに、ケーキ作ったらお腹すいちゃったし」

「お前なぁ……」

さあ、続いてにとり選手のかっぱっぱーケーキです!

「言っておくけど、私のケーキは、見た目からして一味も二味も違うよ! さあ、見て驚け!」

おっと! これはすごい! にとり選手のケーキは、スポンジからクリームまでぜ~んぶ濃い緑色ですよー!

「ふむ、この色、もしや……きゅうりか」

「流石、ご名答!」

「生憎だが、今はきゅうりに、味噌付けて食べたい気分なのでな。失格!」

「なんだよそれー!? ケーキ関係ないじゃん!!」

にとり選手残念でした~!

「さあ、次はいよいよ私の番だぜ!」

えー。ここで都合により、暫しの休憩時間とさせてもらいますね~。

「最近、歳のせいか厠が近くなってのぉ……」

「なんだそりゃ!! ……まったく調子狂うぜ」

「ふう、御馳走様っと」

「んで、結局、お前は全部自分で食べてしまったのか」

「ええ、そうよ。たまにはケーキも悪くないわね。なんか食べたら眠くなってきちゃったわ……」

「呑気なもんだな。まったく……」

「ねぇ、静葉姉さん! 私、認めないわ! こんなの……!」

「ええ、そうね。せっかく穣子が一生懸命に作ったケーキなんだもの。不味い訳ないわ。大丈夫。私が保証するから」

「なぁ、そこの悲劇の姉妹さん達」

「あら、何? キノコの魔法使いさん。せっかく今いいところだったのに……」

「おかしいと思わないか? まだ試食しないうちから失格なんて」

「ええ、それは私も思うわ。でも、仕方ないのよ、秋も、もう終わりだもの……」

「そうね……私たちは、このまま枯葉とともに散っていく運命なのよ……悲しいわ。静葉姉さん……」

「仕方ないのよ。これが秋の定めなのだから……運命って、なんて残酷なものなのかしら……」

「ええ、でも、私負けないわ! この運命を乗り越えてみせるわ!」

「その意気よ! それでこそわが自慢の妹だわ!」

「はぁ…………ダメだこりゃ」

「……ふぅ……私はまだまだ幻想郷に馴染めてないのですね……もっと常識外れの事をしないと……」

「おい、そこの地味な方の巫女さん。おかしいと思わないか?」

「誰が地味ですか! そりゃ確かに紅白巫女に比べれば露出は少ないですけど……って何がですか?」

「なんで、食べないうちから失格になったのかってことさ」

「うーん……確かにおかしいと言えばおかしいんです……」

「だろ?」

「でも、これがここの常識と言うことなんですよね、きっと。私がいたところの常識が通用しない。それがこの幻想郷という場所なのでしょう!」

「は?」

「私、負けませんよ! 絶対、立派な幻想郷の住人となってみせますから!」

「……あの、もしもーし?」

「そう! 今回だってミラクルフルーツケーキではなくて、ライスシャワーケーキだったらよかったのかもしれません」

「うーむ、どっちもどっちだと思うが……?」

「なんと! 更に上の発想にいかないといけないのですね!? 本当、幻想郷は奥が深いのですね……」

「だから私の話を聞けって~の! もういい! まったくどいつもこいつも……」

「おい、そこの人間!」

「お、かっぱっぱー。どうした?」

「私は納得がいかないぞ! 盟友のあんたなら分かるだろ? この、私の気持ち!」

「ああ、まぁな。よくわかるぜ! それで主催者を探してやろうと思ってな」

「よし、それなら私も手伝うぞ。このクッキングコングマーク2を使って!」

「ヴィィイイイ!」

「マーク2? 改造でもしたのか」

「そう! グレネードランチャーに、ミサイルポッドと、光子力ビーム砲に、あと飛行機能を追加したのさ。ついでに目も光るよ」

「そりゃまた物騒なシロモノを……」

「ふふふ……あの二人見つけたらこいつで爆撃してやる! そう、私はたった今、復讐の河童となったのだ!」 

「はぁ……」

「そうだ、もし、見つけたらこいつ使って呼んでくれ」

「お、おう……わかったぜ……」

「さあ、行くぞ! クッキングコングマーク2! 飛行モードだ!」

「ヴィイイイイイイイイイ!!」

「……行っちまった……なんか、爆弾の導火線に火をつけてしまった気分だぜ。……ま、いいか」

「さささ、萃香さん! もっと飲んで飲んで」

「おぉーとっとと、これはこれは、済まないねぇ」

「……おまえら、まだやってたのかよ」

「ん? やあ、魔理沙。一緒にどうだい?」

「生憎だが、今はそんな気分じゃないんだ。私は黒幕を探しているのさ」

「黒幕? 何のだい?」

「この大会の黒幕さ」

「あぁ、それなら知ってるよ~」

「何だと!? 誰だ?」

「妖夢さ。あいつが私に人をあつめるように頼んできたんだよ。外の世界の幻の大吟醸なんか持って来られた日には、断るわけにはいかないよねぇ」

「って、お前もやっぱグルだったのかよ!」

「あ、言われてみれば、そう言うことになるね。まぁいいか。私は、ただ人をあつめただけさ。妖夢に頼まれてね」

「そうか! 妖夢だな!」

「萃香さん、それって確かしゃべっちゃいけなかったのではないですか? 妖夢さんから口止めされてたはずですよねー?」

「ん~? あれ、そうだっけ? そんな事忘れちゃったよ。まぁいいや、とりあえず飲もう飲もう」

「そうですね。まぁ、飲みましょう。飲みましょう。きっと、なるようになりますよね」


「よーし! あの銀髪未熟剣士め! 見つけたらただじゃ済まないぜ……お? あれは……」

「よし……誰もいないわね………いまのうちに……」

「噂をすればなんとやらだな! 妖夢のやつ、没収したケーキ持ってどこ行くつもりだ? よーし、後をついてってみるか」

「はぁ……こういう事するのは、やっぱ気が引けるわね……でも仕方ない、これも幽々子様のため……」

「ん? ……あいつケーキ持って、トイレなんか行ってどうする気だ?」

「……お師匠様……! 私です。妖夢です」

「よし、窓からのぞきこんでやるぜ。あ! トイレだと思ったら、中は大会事務所になってたのか! 道理で探しても見つからないわけだぜ」

「おぉ、妖夢。ケーキは持って来たか」

「はい、この通りです!」

「……お師匠様、うまく行きましたね」

「……うむ、これで残りのケーキも没収すれば、幽々子様の胃袋がようやく満足出来る数のケーキが手に入るわけであるな。それにしても妖夢よ。なかなか考えたではないか。ケーキ作り大会と言う名目で、多くのケーキを集めようとは」

「いえいえ、お師匠様の入れ知恵がなければ、こんな考え浮かびませんでしたよ。それに恥ずかしながら、私ケーキ作るの苦手でして……」

「よし、では、もうひと踏ん張りじゃ、残りのケーキも全部手に入れるぞ」

「……話は聞いたぜ! 御二人さん!」

「む、何奴だ!?」

「ハハハハハ!天が呼ぶ! 地が呼ぶ! 人が呼ぶ! 悪を倒せと私を呼ぶ!」

「あ、その声は!」

「そう、幻想郷のヒーロー! 霧雨魔理沙だ! 悪いが妖夢の後をつけさせてもらったぜ!」

「ばかもん! 後をつけられておったのか!」

「しまった!? 全然気付かなかった!」

「ふっふっふ、私情のために、私たちを利用したその罪は重いぜ!」

「おのれ! 曲者! 皆のども! であえ! であえ!」

「であえって……お師匠様! 私たち以外誰もいませんよ!?」

「うぬぬ、そうであったな! かくなるうえは……!」

「かくなるうえは……!?」

「逃げるのだぁああっ!」

「あ、待ってください!? お師匠様ぁ~!」

「逃がすか! 喰らえ『恋符マスタースパーク』!」

「いやゃああああっ!!?」

「おぉ! 気持ちいいくらい直撃したな」

「む、無念……おゆるしください幽々子さ……ま……ガクッ」

「よしっ! まずは一人だな。次は……」

「それ! 逃げろぉ! やれ! 逃げろおおおぉ!」

「ちっ逃げ足の速いやつだぜ! こうなったらこいつを使って……『あーあー、こちら霧雨魔理沙、霧雨魔理沙、復讐に燃える河童、応答せよ、犯人の一人が現在、妖怪の山に向かって逃走中。あとは任せる。以上!』」

「ふっふ……了解! そんじゃま、派手に行きますか!」

「ヴィィイイイイ!」

「ふう、ここまで来れば、もうあんし……ん!?」

「みーっけたーっと!」

「ぬぉおおお!? 何じゃ、あの空飛ぶ鉄塊は!?」

「さあ、もう、逃がさないよ~。ターゲット補足! 全武装展開!」

「ヴィイイイイイイイイイッ!!」

「ひぃいいいい!? 幽々子さまぁーーーーおたすけぇー!」

「神に祈りな! ファイヤー!」

「gyわぁああぉjtwygぉーーーーーーー……っ!!?」

「爺さん! いい夢見ろよ。」

「ヴィイイイイイイイ!!」




「……というわけで、この勝負は二人の陰謀だったんだぜ!」

「なんてこと! 静葉姉さん! 私たち利用されていたのね!?」

「ええ、そのようね。私も気づかなかったわ」

「なんか骨折り損ね……はぁ、また神奈子様達に笑われちゃうわ」

「よくわかったわ、あたいったらさいきょーね!」

「チルノちゃん、本当にわかってるの……?」

「私、全然わからないで司会してましたよ~。恥ずかしいです~」

「……それで。このケーキはどうするの? みんな、せっかく作ったわけなんだけど」

「そうだな……せっかくだし……」

「せっかくだし……?」

「こうなったら、皆、呼んでケーキパーティーでも開こうぜ!」



      ・
      ・
      ・
      ・




「へぇ~……このケーキ、あなたが作ったの?」

「はい、秋をテーマにした食材であるサツマイモをペースト状にして、生地に塗りつけて表面に焦げ目をつけ……」

「うん! 美味しいじゃない! あなたやるわね!」

「ほ、ほんとう!?」

「ええ、これならお嬢様にも出せるくらいだわ」

「静葉姉さん! 私、紅魔館のメイド長に褒められたよ!」

「ええ、良かったわね。穣子……。今までの苦労が報われたのね! お姉ちゃん、涙が止まらないわ……」

「どお? あたいのケーキ、おいしい?」

「うん、美味しいよ、チルノちゃん! とっても」(本当は卵のからがなければ、もっと美味しかったんだけどね……)

「とーぜんよ! やっぱ、あたいったらさいきょーね!」

「神奈子様、諏訪子様。こっちにあるのが、にとりさんのキュウリケーキで、こっちが私のミラクルフルーツケーキです」

「へぇ~。じゃあ、私はせっかくだし、早苗のをいただくとするよ……」

「んじゃ、私はキュウリケーキを……」

「どうかな……結構頑張ったんだけど……秋のフルーツとか一杯入れて……」

「お、案外、さっぱりしてるね~。いけるいける!」

「良かったー! 諏訪子様の方はどう?」

「んむぅー……なんかさー。か、かっぱ巻きの味がする~……んぅ!? わ、わさび入ってるよ、これぇー水、水っ!!」

「そう! つーんとしたわさびが大人の隠し味さ! お供にキュウリ味のビールが欲しくなるってところでしょ?」

「ふざけるなぁー!」

「……で、なんで私のケーキは、誰も食べてくれないんだ!?」

「だってキノコだし」

「そこがいいんだろ」

「良くないわよ。誰もキノコのケーキなんか、食べたく……」

「……ねぇ、魔理沙、あんたのケーキってどこ?」

「お、アリスじゃないか! これだ。是非食べてくれ!」

「これって…………………………え゛?」

「見事に固まったわね。ねえアリス……悪いことは言わないから、食べない方が身のためよ」

「何を言う! 私は料理の天才だ!」

「……まぁ、せっかく魔理沙が作ったんだから食べてみる……わ……。じゃあ一口……」

「あ~あ、どうなってもしらないわよ?」

「どうだ? 美味いか?」

「んむ…………なんか妙に甘くて…………う゛ぅうううううっ!?」

「あぁ!!? アリスしっかりしろ!! 大変だ! あまりの美味さに泡吹いて倒れちまったぜ!」

「だから言わんこっちゃない……。馬鹿な事言ってないで、早く医者呼んできなさいよ!」

「……いやー……平和だねぇ~」

「そうですねぇ~」

「で、私たち結局、途中からずーっとお酒飲んでただけだねぇ~」

「そうですねぇ~」

「でも、まぁいいか。なるようになったみたいだしねぇ~」

「そうですねぇ~……終わりよければすべてよしって事ですね~」

「そうそう。さ、それはそうと、もっと飲まないかい?」

「ええ、飲みましょう、飲みましょう!」
     



――所変わって白玉楼


「まぁ、妖夢……どうしたの? そんなボロボロの姿で……」

「いえ……その、ちょっと失敗してしまいまして……」

「そう、まぁいいけど、お腹すいたわ。パイが食べたいわ~」

「ええ!? 幽々子様。だって今朝はケーキが食べたいって言ってたのでは……」

「気が変わったのよ。今はパイをたらふく食べたいわ。早く作って~!」

「そ、そんなぁ……私の苦労は一体なんだったの……もういや、こんな生活……」



――おしまい
そういやもうレティの季節なんですね。
次はレティの話を書こうかなと、思ったり思わなかったりな今日この頃です。
でも、秋姉妹も捨てがたいなとか思ったり……。
それでは。
B・G・M
http://mimimo.blog34.fc2.com/
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コメント



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6.70名前が無い程度の能力削除
セリフだけでは少し寂しい気がします。
レティや秋姉妹の話ではセリフ以外も書いてみてはいかがですか?
かなり重要なものだと思うのです。
15.50名前が無い程度の能力削除
ネタのひとつひとつは悪くないと思います。
ただ、終始支離滅裂というか・・・若干読者置き去り感が否めません。
私は途中で力尽きました。
17.80ヤクザ憲兵削除
ツッコミどころが多すぎてどこからツッコンでいいものやら……羊羹、私も好きです。

どのケーキもそれぞれの個性がたっぷり詰まっていて私も食べたい(切実)。大変美味しそうなケーキばかりでした。妖忌がケーキを食べないのも伏線だったんですね……おみそれしました。楽しかったです!