Coolier - 新生・東方創想話

死なない太郎の鬼退治 前編

2008/11/25 00:58:06
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「見つけたよ、死なない太郎!」

 闇夜に沈む迷いの竹林に、興奮に浮き立った甲高い声が響き渡る。今夜はやけに霧が深いな、と思っていたが、
案の定異変が起きたようだ。藤原妹紅はくるりと身を翻して背後に向きなおりながら、隣を歩いていた男を背中
に隠した。
 周囲を漂っていた霧が、吸い込まれるようにして妹紅の眼前に集まっていく。一瞬の後、そこには小さな人影
が立っていた。逢魔が時を思わせるくすんだ色の髪を夜風になびかせ、頭の両脇から生えた大きな二本角を誇る
ようにして仁王立ちしている。それ以外は里の子供が迷い込んだのかと見紛う幼げな容姿だったが、ふてぶてし
い笑みから放たれる威圧感は、歴戦の戦士を思わせた。

「鬼、か」

 呟く。背中にかばっていた男が小さく息を飲んだ。妹紅は彼を肩越しに見やり、

「大丈夫、あんたに手出しはさせない。ここから永遠亭までは一本道だ。走って」

 ですが、と言いかける男を、いいから行って、と肘で突く。男は数瞬迷っていたが、やがて身を翻して走り出
した。永遠亭は目と鼻の先だから、おそらく一人でも辿りつけることだろう。

(さて)

 改めて、目の前の鬼を睨み据える。男が走り去るのを見ても、動く様子はない。周囲に仲間がいるような気配
もなし。

「野盗ってわけじゃなさそうだけど」
「ご挨拶だねえ」

 小さな鬼がからから笑う。

「もちろんそんなチンケな輩じゃあない。あんたに用があるのさ、死なない太郎」

 妹紅は眉をひそめる。

「……死なない太郎って、さっき走ってったおじさんのことじゃなかったの?」
「まさか。ありゃただの人里の人間だろ」
「そうだけど。じゃあなに、死なない太郎ってのはわたしのこと?」
「もちろんだよ」
「……わたし、見ての通り女なんだけど」
「分かってるよ。でもあんたは死なない太郎だ」

 妹紅には理解不能なことを言いながら、小さな鬼は嬉しそうに手をすり合わせる。

「いやあ、今日は本当にいい日だなあ。まさか、あの鬼殺しの英雄、死なない太郎に会えるとはね!」
「人違いだと思うんだけどねえ」

 ぼやきながらも、妹紅は緊張を緩めない。目の前の鬼は、先ほどから足を踏み鳴らしたり拳の骨を鳴らしたり、
こちらと戦う気満々のようだ。童女のような見た目と言っても鬼は鬼、油断しようものなら妹紅は一瞬で肉塊と
化すだろう。

(死なない体と言っても、痛いものは痛いからね。見た目からして子鬼って感じだし、適当に追っ払うとするか)

 炎の妖術を行使する準備を整える妹紅の前で、「そういえばさあ」と鬼が首を傾げる。

「あんた、わたしが現れてもあんまり驚かなかったね」
「そりゃあね。なんだか霧が深くて妙だなあとは思ってたし。その霧から妙な妖気を感じるとなれば、なおさらね」
「ほう、つまり気づいてたってことかい!」
「鬼だとは思ってなかったけど」
「いやいや、さすがは死なない太郎だ、ますますわくわくしてきたよ」

 一人で勝手に盛り上がりながら、鬼はぶんぶんと腕を振り回し始めた。こうして見ていると、ただの子供が玩
具か何かを前にしてはしゃいでいるようにしか見えない。ちょっと微笑ましくなるような光景である、が。

「よーっし、じゃあまずは小手調べといこうか!」

 張り切りながら、鬼が一本の竹の前に立つ。周囲に細い竹が多い中、養分を独り占めしているのではないかと
疑ってしまうほどに、一際太い巨大な竹である。何をする気かと眉根を寄せて見つめる妹紅の前で、鬼は「よっ
こいせ」などと気の抜けた掛け声を漏らしながら、その竹を軽々と引っこ抜いた。

「なっ」

 あまりの光景に愕然とする妹紅に向かって、物凄い勢いで無数の土の塊が飛んできた。竹の根が無理矢理引っ
こ抜かれた衝撃で、周辺の土が爆ぜたのだ。思わず腕で顔を庇った瞬間、背筋に悪寒が走る。

(来るっ)

 慌てて身を屈める。凄まじい唸り声をあげながら、何かが頭上を通過した。前方に飛びのきながら振り向くと、
そこには巨大な竹を横薙ぎになぎ払った姿勢の鬼が、きょとんとした顔で立っている。

「やあ、さすがにいい身のこなしだね。当たったと思ったんだけどなあ」

 感心した様子で言いながら、鬼は足元に竹を投げ捨てる。重い音がした。いかに中身が空洞と言っても、あれ
だけの大きさなら竹もそれなりの重量を持つ。妹紅ならば持ち上げることもできないだろう。

(それを、ああも容易く振りまわすとはね。鬼ってやつは本当に馬鹿力だ)

 顎の汗を拭いながらふと見ると、周囲の竹が何本か、幹の中程でへし折られている。さっき鬼が竹を薙いだと
き、巻き添えを喰らったらしい。本当に、馬鹿力としか言いようがない。
 そんな膂力を見せつけながら、鬼は汗一つ掻いていない。それどころかますます元気になったようで、目を輝
かせながら大きく手を打ち鳴らす。

「さーって、小手調べはここまでだ。いよいよ死合と行こうじゃないか、死なない太郎!」
「だからさあ、人違いだってば」
「いーや、あんたは死なない太郎だ。さあ、山の四天王が一人、伊吹萃香と死合ってもらおうか!」

 有無を言わさぬ口調で叫びながら、鬼の萃香が拳を上げる。どうあっても戦いは避けられぬらしい、と、妹紅
はため息交じりに認める。

(輝夜以外と本気の殺し合いするのは久しぶり……いや、輝夜相手のを含めたって、殺し合いは久しぶり、か)

 軽い不快感に身じろぎしつつ、妹紅もまたいつでも動ける体勢を取る。
 その姿勢のまま、二人はしばらく無言で向かい合った。闇夜の竹林を緩やかな風が吹き抜け、月光の下に不死
人と鬼の髪が揺れる。
 そうして、どのぐらい経ったころだろうか。相手が全く動かないので、妙だな、と妹紅が訝り始めた頃になって、

「ねえ」

 不意に、焦れたような声で萃香が言った。

「なに」
「なに、じゃないでしょ。名乗ってよ」
「は? ああ、名前? わたしは藤原」

 と言いかけると、萃香は怒ったように腕を振り回した。

「違う違う、そうじゃないって!」
「なにがさ」
「そこはさあ、もっとこう、『やあやあ、我こそは幻想郷迷いの竹林住まいの根なし草、死なない太郎である
ぞ! 山の四天王伊吹萃香よ、いざ尋常に勝負いたせ!』とかそういう感じに声を張り上げて」
「なんでそこまで細かく指定すんの!? っていうか誰が根なし草だって!?」
「違うの?」
「違わないけど」

 妹紅はため息をつく。どうも、調子が狂ってきた。

「あんたさ、何がしたいのよ」
「さっきから言ってるじゃないか、死なない太郎と死合がしたいんだよ」
「だったらわたしの名前なんかどうでもいいでしょ。さっさとかかってきなさいよ」

 妹紅がそう言うと、萃香は不満そうに唇を尖らせた。

「それじゃあつまんないじゃーん。鬼退治って感じがしないよ」
「いや、つまんないとか言われても」
「だからほら、早く堂々と名乗りを上げてよ。昔の鬼殺しの英雄たちみたいにさあ」
「そんなん知らないし」

 どうにも相手の考えが読めず、妹紅は困惑するばかり。
 そのとき、闇を貫いて銀光が走った。妹紅のすぐそばを掠めて、鋭利な何かが一直線に飛ぶ。萃香は瞬時に飛
びのき、己を貫かんとした何かを避けた。次の瞬間、竹林の地面に一本の矢が深く突き刺さっていた。

「なんの騒ぎかと思ってきてみれば」

 上品な声音が、妹紅の背後から静かに響いた。

「あなたが姫様以外と殺し合いだなんて、珍しいこともあるものねえ」

 ――ああ、イヤなババァがきやがった。

 妹紅は小さく舌打ちしながら振り返る。するとそこには案の定、永遠ババァこと八意永琳が、たおやかな笑み
を浮かべて立っているのであった。

「……あなた、今物凄く失礼なこと考えてるでしょう」
「いつものことでしょ」

 そっけなく返す。永琳の表情は変わらない。ただ、上品な笑顔の隅っこで、青筋が一つ立ったのが見えた。つ
いで、手に持っていた弓に矢をつがえて、こちらに向けて構えてみせる。

「お、やろうってのかい」
「お望みならね。ところで、いいの?」
「なにが」
「小鬼ちゃん、退散したみたいだけど」

 振り返ってみると、確かに萃香の姿が忽然と消えていた。周囲を見回しても、気配はない。現れたとき同様、
霧と化してどこかへ行ってしまったものらしい。

「やれやれ」
「結局、なんなのかしら」

 弓を下ろした永琳が、小さく首を傾げる。妹紅は肩をすくめた。

「知らないね。あっちが急に襲いかかってきただけだから」
「あなたのこと知っていたみたいだけど」
「人違いでしょ。大体なによ、死なない太郎って」

 毒づくと、永琳がおかしそうに笑った。彼女をじろりと睨みつけながら、妹紅は手から炎を立ち上らせる。

「で、何の用よ。殺し合いなら受けて立つけど」
「違うわよ。わたしは、お客様からあなたの危機を聞いて駆け付けただけ」

 お客様、と言われて、妹紅は自分が逃がしてやった男のことを思い出す。そもそも今夜は、彼に永遠亭までの
護衛を頼まれてここまでやって来たのだった。出産を控えた妻の体調のことで八意先生に相談したいことがある、
と、幸せそうに話していた。いろいろと用があって、今夜でなければここまで来る時間がなかったとか。

(そっか、あのおじさん、無事に永遠亭まで辿りつけたんだ)

 自然と安堵の息が漏れる。永琳がこちらに穏やかな眼差しを向けているのに気がついて、妹紅は慌ててそっぽ
を向いた。

「へん、なんだい、この間まで刺客を差し向けてきたと思ったら、今度は恩を売ろうっての?」
「あら、この程度のことで恩を感じてくれるのかしら」
「感じるわけないでしょ。あんたの馬鹿姫にも伝えておくことね、その内貴様の骨から肉をそぎ落として、永遠
亭のウサギたちと一緒に鍋でぐつぐつ煮込んでやるからって」

 憎まれ口を叩く妹紅に、永琳は困ったような笑みを向けてきた。ちょっと眉を傾げながら、言う。

「その割には、最近姫様のこと避けてるみたいだけど」

 一瞬、妹紅は返答に窮した。「別に」と言いかけて、また言葉に迷う。

「……そりゃ、嫌いな相手とはなるべく顔を合わせないようにするのが自然でしょ」
「さっきの科白と矛盾してるわよ」
「細かいことにこだわる。これだからババァは」

 さあ怒れ、怒って疑問を忘れてしまえと妹紅は構えを取るが、永琳は敵意すら向けず、ただじっと静かな瞳で
こちらを見つめるばかり。

「……変わったわね」
「なにが」
「もう十分恨みが晴れた、というわけでもないでしょうに。なにか、今のあなたは以前よりも無気力に感じるわ」
「それは」

 妹紅は永琳から目をそらした。

「……お互い死なないのに殺し合いってのも、馬鹿らしいからね。何か別の手を使ってあの馬鹿を苦しめてやろ
うと、いろいろ考えてるのよ」
「あらそう。まあ、なんでもいいけど」

 あっさりそう言い、永琳は苦笑する。

「たまにはいらっしゃいね。姫様が退屈そうにしてたから」
「自分の姫をつけ狙ってる相手に対してそれはないでしょうよ」
「あなたの存在など所詮その程度ということよ、とでも言ってほしいのかしら」
「なんとでも言えば」
「やっぱり無気力ねえ。まあいいわ。それじゃあ、ね」

 永琳が踵を返して去りかける。その背中に向かって、妹紅は慌てて手を伸ばした。

「ちょっと」
「なにかしら」
「あ、いや」

 妹紅は数秒そのままの姿勢で固まったあと、伸ばした手をひっこめて頭を掻いた。

「別に、なんでもない」
「あらそう。歳を取ると、一瞬前に考えていたことまで忘れるのかしら」

 軽い皮肉を言い残し、永琳が去る。
 残された妹紅は頬を引きつらせながら、唾とともに吐き捨てる。

「ホント、いけ好かないババァ」

 矢が飛んできて股の下に刺さった。小さく悲鳴を上げて飛びのいて、震える矢に紙がくくりつけられているの
に気がつく。開いてみると、乱れまくった物騒な筆跡でまず一言。

 ――あまり失礼なことばかりほざきやがると、再生が追い付かない程度の速度でリズミカルにブチ殺すぞ。

 背筋に悪寒が走る。ところが、その一文のすぐ下には、逆に物凄く穏やかな筆跡でこう記してあった。

 ――というのは冗談として、あのお客さんのことなら心配ご無用。奥さんの経過も特に問題ないので、もうす
ぐ元気な赤ちゃんが生まれることでしょう。帰りの護衛は永遠亭が責任を持って引き受けますから、こちらも心
配しないように。それと、人里の先生のところにも、たまには顔を出してあげなさい。心配していたわよ。

 読み終わった妹紅は、無言で紙を握りつぶした。

「別に、気にしてないっての」

 呟きながら、ちらりと永遠亭の方を見やる。
 生い茂る竹林の隙間に、暖かい人家の光が揺れている。ウサギたちが賑やかに騒ぐ声が、夜風に乗って聞こえ
てくるよう。
 しばし目を細めてじっと見つめたあと、妹紅は黙って、その灯に背を向けた。



 妹紅の家は迷いの竹林の片隅にある。家、と言うよりは小屋と言う方が相応しい、今にも崩れそうなあばら家
である。簡素というよりは貧相で、家具の一つどころか床板すらない。ただ寝て起きるだけの場所だ。客人が訪
れるでもなし、それで十分だと思っているから、建て替えようとは微塵も思わないが。
 そのあばら家の入口、戸の代わりに吊るしてある茣蓙を手でのけて、妹紅は無言で中に入る。

「よ、おかえり」
「なんであんたがここにいんのよ」

 素で突っ込んでしまった。胡坐をかいて頬杖を突いた小さな鬼が、なにもない殺風景な小屋の真ん中で悪戯っ
ぽく笑っている。周囲を漂う鬼火の明かりの中で、妹紅を出迎えるように、ぴらぴらと手を振った。

「いいじゃん、細かいことは気にしなさんな」
「不法侵入が細かいことだっての?」
「まあまあ。それなりの対価は払うからさ」
「ここは旅籠じゃない」
「まあ飲みねえ」

 手に持った瓢箪から、もう一方の手にある湯のみに酒を注ぎ始める。話を聞く気は全くないらしい。妹紅は舌
打ちをしながら、萃香の前に座り込む。酒を注ぎ終わった萃香が、笑顔で湯のみを差し出した。

「ほい」
「勝手にわたしの湯のみ使わないでほしいんだけど」
「いいじゃん。しっかしさあ、何もない家だよねえ。人が生活してるたあ思えない。そもそもにして杯の一つも
置いてないなんて、ホントにここは幻想郷か」
「みんながみんなのん兵衛じゃないってことよ」
「つまんないねえ。まあいいか、じゃあ乾杯」

 妹紅が握る湯呑に、無理矢理瓢箪をぶつけてくる。萃香はその中身をぐいぐいと煽り、幸せそうな笑みと共に
酒臭い息を吐き出した。

「いいねえ、やっぱり戦ったあとの酒は最高だねえ」
「すぐにババァの邪魔が入ったじゃないの」

 言いながら、妹紅は湯のみの中の酒を一口だけ口に含む。舌の上に広がる独特の苦みに、つい顔をしかめてし
まった。それを見て、萃香が笑う。

「なんだいなんだい、あんただって千年以上も生きてるんだろうに」
「何年生きようが、慣れないものは慣れないよ。あんたには悪いけど、わたしは酒があんまり好きじゃないの」
「じゃあなにが楽しみで生きてるの?」
「酒飲む以外に人生の楽しみがないみたいな言い方だね」
「それが大半だと思うがねえ」

 瓢箪を傾けながら、萃香が夢見るように頬を緩ませる。妹紅はため息をついた。

「鬼ってのは、誰も彼もみんな一緒なのかね」
「おお、それそれ」

 萃香が手で膝を打ちながら、目を輝かせて身を乗り出してきた。

「なあ死なない太郎、あんたが鬼退治したときのこと、詳しく聞かせておくれよ」

 またそれか、と妹紅は少しげんなりする。

「だからわたしはそんな変な名前じゃないって」
「いやあ、でもわたしらの間じゃあ死なない太郎だったからね。やっぱりあんたは死なない太郎さ」
「どんな風に伝わってたの、わたしは」
「鬼殺しの豪傑、弱きを助け強きを挫く、不死身の女死なない太郎!」

 萃香が拳を握り締める。妹紅は呆れて肩を落とした。

「女って分かってたのに太郎呼ばわりしてたの?」
「そうだよ。鬼だって童子なんだから鬼退治の英雄は太郎に決まってんじゃん。西洋の巨人殺しはジャックらし
いしね」
「分かるような分からんような」
「ま、細かいことは気にしなさんな。それよりほら、早く聞かせておくれよ」

 萃香は馴れ馴れしく妹紅の体にすり寄ってくる。手で押しのけようとしてもびくともしない。やはり、小柄な
体の割に物凄い力だ。もっとも、妹紅自身どちらかと言えば小柄な方ではあるのだが。

(これだから、鬼って奴は厄介なんだよねえ)

 「なあなあ、教えてよぅ」と、ほとんど無邪気にまとわりついてくる萃香のことを、妹紅は一時期意識の外に
追いやった。

(鬼殺し、か)

 心当たりがないわけではない。ただ、あまり思い出したくない記憶であることは確かだ。
 そのときのことに想いを馳せると、同時に蘇ってくる顔と、言葉があるのだ。

 ――化け物!

 恐怖に歪んだ少女の顔が脳裏を過ぎり、妹紅は軽く胸を押さえる。

「んあ、どうした?」

 萃香が少し、体を離した。妹紅は虚を突かれて驚きながらも、無表情を取り繕う。

「別に、どうもしてないけど」
「そっかな。なんか、一瞬辛そうな顔してたよね、今」

 萃香にじっと見つめられ、妹紅は苦々しく顔をそらす。どうもこの鬼、豪快で図々しくはあるが、鈍いという
わけでもないらしい。

「まあいっか、それより鬼退治の話聞かせてよ、ね」

 それでも「話したくないならいいや」とは言ってくれない辺り、やはり相当図太い性格であるとは思う。
 やれやれ、とため息をつきながら、妹紅は観念して喋り始めた。

「……多分、あんたが言ってるのはあれじゃないかな……わたし、外にいた頃、妖怪退治屋の真似事して生活し
てたことがあったから。そのとき、鬼も何匹……いや、何人か倒した、と思う」
「んー、もうちょっと詳しく覚えてない? 地名とかさ」
「さてね。なにせいろんな場所を転々としてきたからね。大抵はどこぞの山に住みついた鬼が、人里を襲っては
女をさらって……みたいなパターンだったってことぐらいしか覚えてないよ」
「そっかー。じゃあ、こっちがあんたに倒されたと思われる鬼の名前出しても、分かんないだろうね」
「多分」
「それで、さ」

 萃香は興奮したように小鼻をひくひくさせながら問いかけてくる。

「あんたが戦った鬼って、強かった?」
「どうだろうね」

 妹紅は肩をすくめる。

「個体差はあったけど、まあ全員が全員、力は凄かったかな。拳で人間の頭を粉砕するような奴が、金棒まで振
りまわすんだもの。普通の人間じゃあ、まず対抗できなかったでしょうよ」
「おうおう、そうかいそうかい。苦戦した?」
「そりゃあね。でもまあ、わたしが今ここに立っているってことは、だ……分かるよね?」
「うんうん、あんたの全戦全勝ってこったね! さすがは死なない太郎だ!」

 上機嫌にべた褒めしながら、萃香が勢いよく何度も背中を叩いてくる。手の中の湯のみから酒が零れ落ちそう
になったので、妹紅は慌ててバランスを取った。馬鹿力め、と萃香の方を睨むが、相手はその視線をものともせ
ず、豪快に笑っている。
 それが、物凄く不可解だった。

(……酔ってるから、か?)

 いや、そんなはずはない。心の中で否定しながら、妹紅は萃香に問いかける。

「ねえ」
「なに」
「分かってるの?」
「なにがさ」
「わたしが勝者としてここに立ってるってことは、その鬼たちはもう全員殺されてるってことだよ?」
「そうだね」

 萃香の笑顔に曇りはない。ますます不可解。

「……同朋の仇討ちに来た、ってわけではないのよね?」
「仇討ち! いいねえ、素晴らしい響きだ!」

 萃香はまた嬉しそうに膝を打つ。

「わたしの友達にも一人いたよ、仇討ちで死んじゃった奴。そいつを退治しにきた陰陽師だかなんだかの男を返
り討ちにしたら、十数年後ぐらいにそいつの娘っ子がやってきてね。こいつがまた、綺麗な顔してるくせに、そ
れこそ鬼みたいに強くってね。あいつもずいぶん頑張ったんだが、最後は見事にやられちまった」
「……殺されたの?」
「もちろん。全身の至るところから血を流しまくって、見事な満月に向かって吼えるように笑いながら地に倒れ
て……実にいい死に様だったよ。あいつも鬼らしく豪快でさっぱりした奴でね、今思い出しても泣けうわあああ
あああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 萃香が急に泣き叫び始めた。瓢箪片手に地に突っ伏し、もう片方の手でばしばしと地面をぶっ叩く。鬼の剛力
でそんなことをされたものだから、軽い地震みたいに小屋全体が揺れた。

「お、おい、どうした急に!?」
「いい奴だった! ホントいい奴だったんだあいつ! なのにもう会えない、一緒に酒飲めない!」
「わ、分かった、分かったから落ち着け、な!?」
「これが落ち着いていられるかってんだぁぁぁぁぁぁぁ!」

 叫び声を上げながら、萃香が小屋の壁を突き破って外に走り出した。小さな穴の開いた壁の向こう、闇夜の竹
林に、甲高い泣き声が高く高く響き渡り、遠ざかって、また近づいてくる。
 そうしてその穴から小屋の中に戻ってきたとき、萃香は半べそと表現できる程度には落ち着いていた。赤い目
で鼻を啜りあげながら、照れたように笑う。

「……いや失敬失敬」
「あとで壁直してね」
「そりゃもちろんさ。いやー、悪い悪い、どうも、あの時代を知ってる人間と酒飲んでるんだと思うと、思い出
が色濃く蘇っちゃってねえ」

 頭を掻きながら、また妹紅の隣にどっかりと腰を下ろす。

「お、酒がなくなってるじゃあないか」
「零れたんだよ、あんたが起こした地震のせいで」
「ありゃそうかい、そりゃあ悪いことしたねえ。まあ飲みねえ」

 言いながら、また妹紅の手の中の湯呑に瓢箪の酒を注ぐ。別に飲みたくないんだけどなあ、と少々うんざりし
ながら、妹紅はちびちびと酒を飲み始める。多少でも酔っ払わないと、この鬼のテンションについていけないだ
ろうという予感があったからだ。

「それで」

 またぐびぐびと瓢箪の酒を煽り出した萃香に、妹紅はちらりと目をやる。

「仇討ちじゃないって言うなら、いったい何の用なのよ」
「最初っから言ってるじゃあないか。わたしは鬼退治の英雄、死なない太郎さんに会いに来たんだよ」
「まあ、その死なない太郎ってのがわたしのことらしいってのは納得したけどさ。会ってどうするつもりだったのよ」
「もちろん戦うのさ」
「戦ってどうするのさ」
「楽しむ」

 萃香が白い歯を見せてニカッと笑う。妹紅は肩をすくめた。

「理解できないね」
「そう?」
「そうよ。わたしが死なない体だってことは知ってるんでしょ? なのになんで戦うんだか……復讐だの仇討ち
でもないっていうし」
「ふうん。おかしいなあ」
「なにが」
「いやさ、わたしが聞いた話じゃ、あんたも永遠亭のお姫様との殺し合いを楽しんでるってことだったからさあ。
楽しく力比べが出来ると思ったんだけどなあ」

 当てが外れた、といった感じの表情。妹紅はじろりとその顔を見ながら、吐き捨てるように言う。

「楽しんでないよ。それに、そういうのはもう止めた」
「なんで」
「お互い死なないんだし、やってもやっても空しくなるだけだから」
「へえ。あんた、変な考え方するんだね」
「あんたの方がよっぽど変でしょうよ」
「そうかねえ。ま、いいや」

 萃香はまた人懐っこい笑みを浮かべた。

「それよりさ、あの頃の話、聞かせてよ」
「あの頃の話って?」
「もちろん、まだ我々鬼が、外の世界で人の平和を脅かしていた頃さ! あの頃の鬼って、人間の目からはどん
な風に映っていたんだい?」
「どんな風に、と言われてもねえ」

 話が逸れたことに若干ほっとしながら、妹紅はだいぶ薄れつつある当時の記憶を回想する。そして、訥々と、
言葉少なに語って聞かせた。
 当時、鬼の名前は、どんなときでも恐怖とともに語られていた。町や村を襲い、財産や家畜、果ては娘までさ
らっていく悪鬼どもは、憎むべき、また恐れるべき対象だったのだ。だからこそ、そういった鬼を退治する力を
もった者たちが英雄視されたりもした。

「うんうん、分かるよ。鬼退治の英雄ってのは、どいつもこいつも人間の中じゃあ一等強い奴らばっかりだった
からねえ。わたしらも、風の噂で聞いた鬼殺しどもと一度は死合ってみたいもんだと、いつも酒飲みながら話し
てたもんさ」

 と、萃香も上機嫌に同意してくれたのだが、具体的な英雄の名前が出ると途端に不機嫌になった。

「渡辺綱、ねえ」

 フン、と鼻を鳴らす。先ほどまでとは違って打って変わったその態度に、妹紅は少々戸惑いを覚える。

「どうしたの? 渡辺綱って言ったら、鬼退治の英雄としては一番有名だと思うんだけど」
「ああ有名だろうよ、あれだろ、大江山で卑怯な騙し討ちしやがった糞野郎だろ」

 鬼から見ればそうなるのか、と、妹紅は少し納得した。その前で、萃香は拗ねた子供のように唇を尖らせる。

「まったく、人間ってのはなんも分かっちゃいないね。なんで酒に毒混ぜて寝首を掻くような卑怯者が、鬼退治
の英雄なんだか。鬼退治ってのはさ、もっとこう、知恵とか勇気とか愛とかを振り絞って正々堂々やるもんだろ。
元来矮小な人間が努力に努力を重ねて真正面から鬼を打ち破るから心躍るんじゃあないか。だからこそ我々も、
仲間が刀で首落とされようが式神に内蔵食い破られようが、恨みなく気持ちよく戦えるんじゃあないか。そこん
とこを誤解してもらっちゃ困るんだよ。分かる?」
「はあ、そうですか」

 地面を叩いて力説する萃香に、妹紅はつい敬語で答えてしまう。

「じゃあ、あんたが一番好きな鬼退治の英雄って誰さ」
「そんなの決まってるじゃあないか、この日の本を代表する鬼退治の英雄って言ったら、奴しかいない!」

 萃香は胸を張って言う。

「その名も貴き、桃太郎さ!」
「お伽話でしょうがそれは!」

 呆れる妹紅の前で、しかし萃香は悦に浸ったような表情で何度も何度も頷いてみせる。

「いやあ、あの英雄譚はいいよ。最高だね。正しい鬼退治に必要な要素が何もかも詰まってる。好き放題に都を
荒らす悪鬼ども、嘆き悲しむ弱き人々、安穏とした生活を捨て、彼らを救わんと立ち上がる正義の英雄、桃太
郎! その正しい目的に動物たちまで感化されて、桃太郎に手を貸すのさ。それでいて変な策は弄さずに、真正
面から鬼が島に突撃して、たくさんの鬼たちを蹴散らしたあとに鬼の首領と一騎討ちし、見事勝利を収める! 
そして財宝を持ち帰っていつまでも幸せに暮らす。いやあ、いいね、実にいい。これこそ正しい鬼退治だよ」
「はあ。そんなもんかね」

 動物たちはきび団子につられただけなんじゃないか、とか、そもそも桃から生まれた奴を人間と言っていいの
か、とか、いろいろと言いたいことはあったが、萃香の顔があまりにも嬉しそうなので、言葉にする気をなくし
てしまう。
 妹紅は鼻を掻きながら尋ねた。

「というか、さ」
「なんだい」
「なんで、そんなに鬼退治の英雄とかが好きなの? そういうのって、結局最後は鬼が負ける話なのに」

 萃香と話していて、ずっと疑問に思っていたことだった。殺されたり負けたりするのが好きなわけでもあるまいに。

「そりゃもちろん、負けるのが好きってわけじゃあないさね」
「じゃあなんで?」
「鬼を退治できるぐらいに強い人間と戦うのが、好きなんだよ。想像しただけでもわくわくしてくるじゃないか」

 体が疼いてたまらない、とでも言いたげに、萃香は嬉しそうに身を震わせる。

「ああもう、ホント楽しいだろうなあ、好き放題やってるところに、桃太郎みたいな強い奴が殴りこみかけてき
やがったらさ。酒飲むのも忘れて全力でぶつかるだろうよ、そんときゃ」
「なんでそんなに戦うのが好きなの?」
「血が滾るからさ。悪行三昧尽くしてるときよりも、酒飲んでるときよりも、何よりも楽しい瞬間なんだよ、強
い人間と戦うってのは。人と鬼の絆と言ってしまってもいいぐらいだ」
「絆?」

 予想だにしない単語が飛び出してきたので、妹紅は少々驚いた。萃香は深々とうなづく。

「そう、絆さ。鬼は限度を知らず横暴に、残虐にふるまって、人の怒りを煽る。人はその怒りを糧として、正義
の旗の下に力を合わせて鬼に立ち向かう。真正面から刀と拳でぶつかり合い、月夜の下に血を流し、肉を削り、
骨を砕き合って語り合う。愛し合うと言ってしまっても過言じゃあないね。それが鬼と人との絆。我々の、正し
い関係なんだよ」

 だからね、と、萃香はまっすぐに妹紅を見つめてきた。

「あんたと戦って負けて、死んでいった鬼たちだって、きっと楽しかったはずだよ。なにせ、何度殴っても死な
ない強い英雄が、弱い人間を守るために立ち向かってくるんだから。鬼としてこれほど喜ばしいことはないよ。
あんたみたいな強い人間に打倒されることに、感謝しながら死んでいったはずだ。だから、そいつらに代わって
礼を言わせてもらうよ。正々堂々鬼と戦ってくれて、本当にありがとう、死なない太郎殿」

 胡坐を掻いた萃香が、深く頭を下げる。彼女の話が人間の倫理とはあまりにもかけ離れていたために、妹紅は
どう答えていいものやら分からなかった。
 なにより、はたして自分のような者が人間と呼べるのか、と。そう思ってしまうと、答えるになれない。

 ――化け物!

 またあの顔と声が蘇ってきて、妹紅はぎゅっと胸を押さえる。
 萃香が顔を上げて、不思議そうに眉をひそめた。

「またその顔だ。どうしたんだい?」
「別に。あんたの話が、よく分かんなかっただけ」
「えー、まだ分かってもらえないの? よし分かった、じゃあ今度は実体験を話してやろう」

 そう言うと、萃香は突然服を脱ぎ始めた。こちらが止める間もなくあれよあれよと言う間に素っ裸になり、子
供のような小さな裸身をぼんやりとした鬼火の明かりの中に晒す。
 妹紅は息を飲んだ。服の下に隠されていた萃香の体は、至るところが傷だらけだったのだ。切り傷もあれば、
刺し傷もある。何か、大きな獣に喰われたかのような大きな歯型まである。ところどころに残る火傷の跡も、非
常に痛々しい。
 幼い少女の体にそんなものが無数に残っているのだから、妹紅にしてみれば目も覆わんばかりの悲惨な光景で
ある。だが、萃香はそんな傷の一つ一つを誇るかのように、堂々と立っている。

「どうよ、なかなかのもんでしょ」
「いや……なんというか」

 妹紅はなんとも答えられなかった。彼女にしてみれば、萃香の傷はただただ痛々しいものでしかない。しかし
鬼の少女は嬉々とした様子で、傷の一つ一つを指差して、心底楽しそうに解説を始めた。

「この傷は都の武者につけられたやつ。会心の一太刀ってやつだったねあれは。もっともそのあとわたしの拳で
顔がぺちゃんこになってたけど。この火傷は、あんたみたいな妖術使いにつけられたやつだ。物凄いやつだった
よ、ほとんど何の才能もなかったのに、執念だけでわたしに傷をつけるほどになりやがった。あいつがあれだけ
しつこかったのも、やっぱりわたしがあいつの母ちゃん喰っちゃったからだろうなあ。んでね、この刺し傷は旅
の坊さんの槍で突かれたときのもんだ。逃げ足も速い奴だったから、こっちが殴り返す前に逃げられたんだけど。
生きてる内に再戦したかったよ。それから、これはねえ」

 大事な宝物を自慢する子供のように、萃香は次々と自分の傷の由来を語り聞かせてくれる。どれもこれも、凄
惨な戦いの中で負った傷らしい。そして、自分に傷を負わせた相手のことを、萃香は全員正確に覚えていた。

「相手に対する敬意ってやつさ。まあ、あんたを見てる限りじゃ、人間には理解しがたい感覚なのかもしれない
けど。どいつもこいつも、『こいつにだったら殺されてもいい』って思えるような凄い奴らばっかりだったな」

 懐かしむように目を細めたあと、萃香は少し恥ずかしそうに笑う。

「もっとも、そういうのも、最近までは忘れちゃってたんだけどね」
「どうして?」
「人間が、嫌いになってたんだよ」

 萃香の笑みが、悲しげな色を帯びる。彼女はくるりと身を翻した。細く小さな背中に、大きく斜めに、一際深
い切り傷が走っている。

「それは?」
「幻想郷の外の世界で、一番最後につけられた傷。今まで生きてきた中で、一番痛かった傷。あんたみたいに、
物凄くしぶとい奴がつけたんだよ」

 こちらに背を向けているため、淡々と語る萃香の顔は見えない。

「こいつもやっぱり凄いやつでね。辺境の村に住んでた武者崩れの息子だったんだが、わたしをつけ狙って、何
度も何度も山に入りこんできた。わたしたちはいつだって堂々と戦ったよ。わたしはあいつの刀を何本もへし
折ったし、あいつは幾度もわたしの懐に潜り込んできた。危うい場面も何度かあった。あいつの動きは回を重ね
るごとに速く、鋭くなった。ああ、わたしはいつかこいつに殺されるだろうって、予感してたぐらいだった。だ
からわたしは、成長していくあいつを見るのが楽しくて、何度かわざとあいつを見逃したし、あいつも何度か、
わたしへの止めを刺さずに見逃した。そうして互いに生き残ったあとで、酒を酌み交わしたことだって一度や二
度じゃない。殺し、殺される関係だったけど、わたしたちは確かに友達だった。だけど」

 萃香の肩が、小さく震えた。

「互いに見逃した回数が差引でゼロになった夜。いよいよ今夜が決着だって、わたしはいつになく張り切ってた。
あいつは物凄く強くなった、最初会った時からは想像もつかないぐらいにね。こいつに殺されるんだったら、わ
たしは誇りを持って笑いながら死んでいけるって確信すらしてたよ」

 その日、男はいつもよりもずっと口数が少なかったらしい。何か妙だな、とは思っていたが、萃香は体の奥か
ら湧き上がる昂揚感に身を任せていて、最後までその気配に気づかなかった。

「気づいたときには、もう遅かった。いつも決闘している山の広場への道を歩いてる途中、不意に夜空が明るく
なってね。闇を払う術法の光さ。それが何かの合図だと悟ったとき、背中に焼けるような痛みが走った。斬られ
た、とすぐに思った。誰にだ? もちろん、あいつにだ」

 驚くよりもむしろ呆然として振り返った萃香が見たものは、斬られた彼女よりも苦しげに顔を歪め、鬼の血に
濡れた刀を握り締めて肩を震わせる、彼の姿だった。何故だ、と問いかけると、涙と共に答えが返ってきた。
 ただ一言、すまん、と。

「あいつは刀を振り上げたが、物凄く鈍い動きだった。わたしは咄嗟に腕を突き出した。避けることだって出来
ただろうに、あいつは避けなかった。そうして、決着がついた。お互い、全く望まぬ形でね」

 腹を貫かれて絶命した男の亡骸を前にして、萃香はただ呆然と立ち尽くすしかなかった。何故こんなことに、
という疑問が、ぐるぐると頭の中を駆け巡る。だが、現実は思い悩む時間すらも与えてはくれなかった。

「周囲の森から悲鳴と怒声が聞こえてきたんだ。刀で切り合う音、地を駆ける式神ども、闇を舐める妖術の炎。
追い立てられ、殺されていく仲間たち。わたしは無我夢中で戦った。何人も仲間を助けて、薄汚い人間どもを数
えきれないぐらい殴り殺した。でも、負けたのはわたしたちだった。途中で気を失って、次に目を覚ましたとき
には、鬼の仲間に背負われてた。生き残ったのは、ほんのわずか。大敗ってやつさ」

 後で萃香が聞いた話によると、その夜、彼女らが根城にしていた山に妖怪退治屋の集団が奇襲をかけたものら
しい。同時期、全国各地で似たようなことが起きていた。人間の科学が目覚ましい進歩を遂げ、誰もが闇に蠢く
者どもを否定しはじめたのも、このころ。物理的精神的、その両面から、闇と妖怪の一掃が始まったのだ。

「わたしは人間を憎んだよ。あいつに誇りを捨てさせた、弱い人間どもを。でも、同時に悟らざるを得なかった。
もう、人間と正々堂々勝負できる時代は終わったんだって。人は増えすぎた、満ちすぎた。鬼との力の均衡を保
てぬほどに、鬼との絆を保てぬほどに」

 そうして流れ着いた幻想郷で、生き残った鬼たちは卑怯な人間を嫌って地下に篭った。博麗大結界が構築され、
外の世界との行き来がなくなり、長い時間が流れ……その間ずっと、外の世界には目を向けず、ただ怠惰に酒ば
かり飲んで暮らす日々。

「で、最近なんとなく、本当になんとなく、フラッと地上に出てきたんだけどね」

 服を着直しながら、萃香は嬉しそうに笑う。

「吃驚したよ。随分とまあ、楽しいところになってるじゃないか。スペルカードルールは少々物足りないが、人
間との戦いを楽しむ分にはまあ悪くない。見ていて面白い奴らもたくさんいるしね」
「面白い奴ら?」
「うん。霊夢の……博麗の巫女の周りの連中。特にあの魔法使いだ」

 萃香は笑いを噛み殺しながら言う。

「あいつはまさにわたしが思い描く理想の人間だね。ひねくれてはいるが卑怯ではなく、ただただ純粋に、ひた
すら己を高めようとするあの姿勢。他人の力も取りこんで、貪欲に強くなろうとしてやがる。いつか本気で死
合ってみたいもんさ」
「そんなもんかな」
「まあ、ともかくだ」

 萃香は手を打ち鳴らす。

「ある一件であの連中との宴会に正式参加するようになってから、わたしは思い直したのさ。やっぱり人間って
奴は面白いってね。恨みつらみは消えないが、やっぱりわたしは人間って奴が大好きだ」

 確信の篭った萃香の声音に、妹紅の胸が小さく疼いた。

「そう?」

 ぽつりと、ほとんど独り言のように、疑問が口を突いて出る。そんな小さな呟きにも、萃香は満面の笑みで頷
き返した。

「うん。人間はいい、面白い。昨日涙を浮かべてわたしを怖がってた奴が、今日刀を振り上げて勇敢に立ち向
かってきたりする。奴らは一瞬たりとも同じじゃない。物凄く面白いよ。そんなことを、また思い出すことが出
来たんだ。地下に篭ってたころとは比べ物にならないぐらい、毎日が楽しいよ」

 萃香は自信を持って断言するが、妹紅はどうしても納得できなかった。

「本当にそう思う? あれだけ深い傷負わされて、大嫌いな卑怯な手を使って追い立てられて……それでもまだ
人間が好きって言えるもの?」
「好きだよ」

 あっさりそう答えたあと、萃香は苦笑する。

「まあ、卑怯者は嫌いだけどね。結局、鬼は強い奴が好きなのさ。でもそれは肉体の強さだけを言うんじゃない。
何度やられても立ち上がってくる執念の強さや、自分の弱さを努力で克服しようとする意志の強さなんかも、
我々にとっては好意の対象なんだ。人間ってのは、特にそういうところが凄い。だからわたしは、今でも人間が
好きだよ。強くなろうと努力する人間が、好きで好きでたまらない。そういう奴と思う存分戦って、殺したり殺
されたりしたいのさ。もっとも、そこまで激しいのは、今の幻想郷じゃあ無理だけどね」

 残念そうに言ったあと、しかし萃香はにやりと笑う。

「そこであんただ、死なない太郎」
「お断りよ」

 相手の話を聞かず、妹紅は即座に断った。「えー」と、萃香が抗議の声をあげる。

「なんでさー。戦おうよー」
「いやだっての。死なない体って言ったって、痛いものは痛いんだから」
「でもさあ、昔はそういうのを堪えて、弱い奴らのために戦ったんだろう?」
「うるさいわね!」

 妹紅は怒鳴った。そうでもしないと、またあの声が蘇ってきそうだったからだ。

「そんな昔のことなんて忘れたわよ。今のわたしはこの竹林の片隅で細々と暮らす、見るところもない根なし草。
あんたが興味を抱くような強い人間とは縁もゆかりもございませんね」

 だからとっとと帰れ、と、妹紅は萃香に向かって邪険に手を振る。鬼の娘は不満げに頬を膨らませた。そうし
ていると、本当にただの子供のように見える。

「そんなこと言わないでさあ、戦おうよ。戦ってればまた楽しくなるって」
「イヤだってば」
「なんでさー」
「やかましいっての。駄々っ子かあんたは。いいからさっさと帰って、その魔法使い辺りと思う存分戦えばいいでしょ」
「あいつはまだ弱いんだよぅ。それにスペルカードルールの内じゃ、あんまり激しくやり合えないしさあ」
「じゃあ我慢すれば」
「そんなー」

 萃香はなかなか引き下がらない。どうあっても死なない太郎と死合いたいらしい。だが、妹紅の方もこれに答
える気はなかった。たとえ萃香が今襲いかかってきても、適当に逃げるつもりだった。戦うのが好きと言ってい
る以上、戦う気がない相手には興味を失くすだろう、という腹づもりである。
 ところが、萃香は存外あっさり引き下がった。

「分かった。じゃあ今日のところは諦めよう」
「いつ来たって同じだから」
「いいや、違うね。あんたは必ず、わたしと全力で戦うことになるよ。あんたがあの死なない太郎ならね」

 萃香が不敵に笑う。その笑みに、妹紅は何か不吉なものを感じた。

「なに。なにを企んでんの?」
「楽しいことだよ」
「具体的には?」
「教えない」
「……鬼は嘘をつかないんじゃないの?」
「嘘はついてないよ。今はまだ秘密だから、喋らないだけ。でもそうだね、一部なら教えてあげようか」

 萃香は悪戯っぽく片目を瞑る。

「わたしはねえ、死なない太郎。鬼退治を、復活させようと思ってるんだよ」
「……なにそれ。消極的な自殺?」
「んなわけないじゃん。こんな楽しい世界なのに、自分から死のうだなんてバカなことを考えるもんかい」

 笑いながら、萃香は小屋の外に向かう。妹紅は慌てて後を追った。
 竹林の向こうの空が白みつつあった。暗い夜が明け、また新しい朝がやって来る。白い朝の光の中に、萃香の
長い髪がゆるゆるとたなびいた。

「鬼の中にも、恨みつらみばっかりに目を向けてる奴がいてねえ」

 肩越しにこちらを見やり、ほんの少し嫌味な口調で付け足す。

「誰かさんみたいに、さ」
「……仕方のないことじゃないの? あんたら鬼は、ずいぶん酷いことされたみたいだし」

 付け足された言葉は無視して、妹紅が言い返す。すると萃香は大きく首を横に振った。

「そうは思わない。いや、思いたくないね」
「どうしてよ」
「だってさ、楽しいことだってあったのに、それを忘れて暗いことばっかり思い出すなんて、阿呆のすることだ
よ。だから、わたしは鬼退治を復活させたいんだ。また、鬼の仲間に人間と戦うことの楽しさを思い出してもら
うのさ。ついでに人間にも、鬼という壁を乗り越える楽しさを思い出してもらう。古の絆の復活さ」

 とっておきの悪戯について語る子供のような、無邪気な表情。妹紅は気まずくなって目をそらす。

「あんたが何を企んでるのかは知らないけど、わたしは乗らないよ」

 宣言すると、萃香は意地悪げに目を細めた。

「ふうん、そうかい。頭を潰されても腕をもがれても立ち上がる、不死身の英雄死なない太郎ともあろうお方が、
人と関わって傷つくのに怯えてるわけだ?」
「ちがっ」

 反射的に言い返しかけて、妹紅は口をつぐんだ。萃香の真っ直ぐな視線が、心の内まで射抜くように、強くこ
ちらを見つめている。数瞬、呼吸が止まった。

「……違うよ。単に、人と関わるのに飽きただけさ。悲しいのも楽しいのも知りつくしちゃってね」

 知らず知らずの内に、声が震えた。苛立ちで顔が歪む。そんな妹紅を見て、萃香が舌打ちを漏らす。

「ああ、嫌いだ。あらゆる嘘の中でも、そういう嘘は一等嫌いだよ。ますます、あんたをこのままにはしておけ
なくなった」
「ならどうするっての」
「意地でもこっち側に引きずり込んでやるさ。泣いたり笑ったりできるようにしてやる」
「何をしようが、わたしは動かないよ」
「出来るもんならやってみな。こっちは無理やり引っ張るだけさ。んじゃね」

 現れたとき同様、萃香は霧と化して文字通り霧散した。
 一人残された妹紅は、昇りつつある朝日から逃げるように、薄暗い小屋の中に引っ込む。
 土がむき出しになった小屋の隅っこに、寝床代わりにしている茣蓙と、薄っぺらい毛布が敷いてある。その中
に潜り込みながら、妹紅は舌打ちした。

(全く、無駄な時間を)

 思いかけて、自嘲する。今の自分に、無駄でない時間など一瞬たりとも存在しない。全てが無駄だ、何もかも
無駄だ。
 長く長く、息を吐く。頭の中を、様々なことが駆け巡っていた。永琳の手紙、萃香の傷跡、泣き顔、笑顔。そ
して、遠い昔に聞いた、あの叫び声。

 ――化け物!

 妹紅はぎゅっと目を瞑った。

(ああそうだよ、わたしは化け物だとも。だからお前らには近づかないようにしてるんじゃあないか)

 それが強がりだということは、自分自身でもよく分かっていた。毛布にくるまりながら、妹紅はきつく唇を噛む。
 寝てしまおう、と思う。眠って何もかも忘れよう、と。誰が何を言っても、ここを動かなければいいのだ。
 幸い、夜通し起きっ放しだったためか、睡魔はすぐに妹紅の意識を引きずりこんでくれた。



 ああ、これは夢だな、と妹紅は思う。
 ずっと昔に現実だった夢だ。今と全く変わらぬ姿の自分が、枯れ木のようにやせ細った誰かの手を取って、鼻
水垂らして泣きわめいている。涙で濁ったその声は、その誰かに向って必死に呼びかけていた。

 ――行かないで。

(無茶言うなよ)

 妹紅は過去の自分を嘲笑った。いつかこうなることぐらいは分かり切っていただろうに、誰かに愛し愛される
甘い時間の中で、いつまでもまどろんでいられるかのような錯覚を覚えていた。それが単なる現実逃避にすぎな
いことも、分かっていたつもりだったのだが。
 妹紅が愛していたその人が、悲しそうに微笑んで呟いた。

 ――すまん。

 その人の手から力が抜けて、昔の妹紅がさらに大きな声で泣き喚く。
 愛していた人を最後の最後まで苦しませてしまった自分が、憎くて憎くてたまらなかった。
 その後、妹紅は何度も何度も死のうとした。崖の上から身を投げてぐちゃぐちゃになってみたり、毒キノコを
大量に食って泡を吹いてのたうちまわったりした。だがどうしても死ぬことができず、最後には逃げるようにそ
の地を立ち去った。
 最後にあの人の墓の前に立ったときのことは、よく覚えている。一人で泣きじゃくり、胸の痛みに耐えながら、
そっと花を添えたのだ。
 小さな墓石には、妹紅が自分で彫った下手くそな字が刻まれている。

 ――上白沢慧音。



 妹紅は毛布をはね除けながら飛び上がった。
 萃香が開けた壁の穴から、穏やかな朝日が差しこんでいる。竹林に住む鳥たちが鳴き交わす声が、ひそやかに
聞こえてきていた。
 さっき毛布をひっかぶってから、まだそれほど時間は経っていない。だというのに、びっしょりと汗を掻いていた。
 荒く呼吸し、顔の汗を拭いながら、妹紅は無理やり自分を笑う。

「バカか。慧音はまだ生きてるじゃないか」

 でも、いつかは必ず同じことになる。
 誰かが、心の中でそう言った。
 妹紅は黙って毛布を抱きよせ、膝を抱えて震えた。震えが抑えられないほどに、全身がひどく冷えている。

(バカ鬼め)

 八つ当たり気味に、胸中で萃香を罵る。

(誰が死なない太郎だって? 死ねない阿呆だ、わたしは)

 少しだけ、涙が出た。



 それからしばらくの間は、特に何事もなく日々が流れた。
 起きて食い物を探して、たまには小川で体を洗ったり、汚れた服を洗濯したり。護衛の依頼も何件か引き受け
た。自分からは何も話さず、相手が話しかけてきたら適当に相槌を打つ。その人の家族の話などになるとつい頬
が綻んでしまう自分に、苛立ちを覚えることまでいつも通り。
 時折、永遠亭の輝夜が小屋の近くを通りかかることがあった。しゃなりしゃなりと気取って歩き、いかにも散
歩の途中に偶然通りかかりましたという風に、妹紅の小屋の中を覗いていく。だが決まって相手がいないので、
唇を尖らせたつまらなそうな表情で去っていく。妹紅はそんな輝夜を、竹林に隠れて見つめていた。あいつと関
わるのはもう止めだ、と、一人で勝手に決めていた。
 そうして、一月ほどの時間が経ったある日、変事が起きた。



 出せる限りの速度を出して、妹紅は黄昏時の空を飛んでいた。山の向こうに沈みゆく夕陽に不吉なものを感じ
ながら、一直線に人間の里へ向かって飛ぶ。

(……遅い!)

 己の飛行速度に舌打ちを漏らす。自分はこんなにもノロマだったか、と、胸が激しくざわついた。

 ――人間の里の寺子屋が、鬼の襲撃を受けた。教師上白沢慧音が子供たちを守ろうと立ち向かったが、返り討
ちに遭って重傷。子供たちも連れ去られてしまった。

 里からの手紙の概略を思い出しながら、妹紅は強く唇を噛む。鬼、というのが誰なのかは、いちいち考えるま
でもない。伊吹萃香に決まっている。

(鬼退治を復活させるってのは、こういうことだったのか……!)

 そのために慧音に怪我を負わせ、子供たちを攫うとは。鬼は卑怯な真似が嫌いだったのではないか、と思い、
あの連中の倫理観と人間の倫理観を照らし合わせても仕方がない、と即座に思い直す。そもそも、あの鬼は言っ
ていたではないか。できる限り残虐に振舞って人間の怒りを煽ることが、鬼たるものの本性だと。
 夢の中で見た墓石が脳裏をよぎり、妹紅は飛びながら首を振る。

(慧音……! 子供たちも、無事でいてよ……!)

 何もかも忘れてただそれだけを願いながら、妹紅は夕闇迫る空を飛び続けた。
 幻想郷はさほど広くない。里の明かりはすぐに見えてきた。まずはどこに行こうか、と考えて里全体を見渡し
たとき、寺子屋の辺りに多くの篝火が焚かれていることに気がつく。大結界の構築以降平和ボケしていた幻想郷
だから、こんな変事は滅多になかったはずだ。となれば、事件の現場となった場所に大勢の人間が集まっている
のは自然な流れだろう。
 妹紅は煌々と明かりが灯る寺子屋の前に着地した。その場に集まって不安げに顔を見合わせていた多くの大人
たちが、彼女に気がついて驚きの声を上げる。

「いらっしゃったぞ」
「お話通りのお方だ」
「あれが死なない太郎様か」

 ざわめきの中に、何か聞き捨てならない単語が混じっていたような気がする。

(いや、そんなことよりまずは慧音だ)

 とにかく、誰かに詳しく話を聞こう。そう思って一歩踏み出したところへ。

「うう……妹紅か」

 呻くような声と共に、寺子屋の中から誰かが姿を現した。付添らしき里の女性に肩を支えられ、全身の至ると
ころに包帯を巻いたその人物が誰なのか、妹紅は最初分からなかった。いや、分からなかったのではなく、信じ
られなかった、というべきか。

「……慧音……?」

 呆然と呼びかけると、包帯だらけの慧音は自嘲的な笑みを浮かべて頷いた。

「ああ。ふふ、ざまあないな、人里の守護者が聞いて呆れる……小兎さん、もう大丈夫だ。手を離してくれ」
「だけど」
「妹紅も来てくれたんだ、わたし一人、おちおちと寝てはいられん……!」

 支えていてくれた女性を腕で押しのけ、慧音はふらつきながらも二本の足で立とうとする、が。

「がふっ」

 不意に吐血して、がっくりとその場に膝を突いた。信じがたい光景に、妹紅は我も忘れて友人に駆け寄る。

「け、慧音、大丈夫!?」

 慧音のそばに駆け寄り、彼女の体を抱き起こす。嗅ぎ慣れない臭いがした。血というのはこんな臭いだっただ
ろうか。

「す、すまん、な、妹紅……竹林で平和に暮らしていた、お前を巻き込んでしまって……」

 慧音が苦しげに、声を途切れさせながら言う。妹紅は首を振った。

「いいんだよ、気にしなくても、子供たちのことはわたしに任せて、ゆっくり休んでよ」
「そ、そうも言ってはおれん。これでも里の守護者を守る者、お前一人に押しつけるわけには……!」

 慧音がよろよろと立ち上がる。が、急に顔をしかめ、包帯の巻かれた右腕で無傷の左腕を押さえながら地に膝
を突いた。

「ぐっ……くそっ、情けないな……傷の痛みでろくに動けんとは……」
「先生、無理しないで。あとはわたしたちに任せて、休んでても大丈夫だから」
「いや、小兎さん、そういうわけにはいかない。わたしは里の守護者として」
「あのー」

 深刻そうな顔で話し続ける二人の会話に、妹紅は割って入った。本来邪魔してはいけないところなのだろうが、
どうしても、言いたいことがあったのだ。

「な、なんだ、妹紅? わたしなら大丈夫」
「いや、そうじゃなくてさ」

 頭を掻きながら、妹紅は淡々と指摘する。

「慧音。怪我してる方の腕と押さえる方の腕、逆だよ?」
「え?」

 慧音が下を見る。包帯が巻かれた右腕で、無傷の左腕を押さえている。
 しばしの間、周囲を間の悪い沈黙が包み込んだ。

「あの」
「妹紅。ちょっと待っていてくれるか」
「あ、ああ、いいけど」

 慧音は何事もなかったかのように立ち上がると、小兎さん、と呼んでいた女性と共に寺子屋の中に入っていった。
 しばらくして、また小兎さんに支えられてよろめきながら歩み出てくる。

「うう……妹紅か」
「やり直すのかよ!」

 思わず突っ込んでしまった。慧音が罰の悪そうな顔で頭を掻く。

「駄目だろうか」
「いや、駄目とかそういうんじゃなくて……」

 どう反応したものか、妹紅は迷ってしまった。もちろん、慧音が生きていたことが嬉しくはある。一か月前に
あんな夢を見てしまったものだから、彼女の元気な姿を見て非常に安堵している。
 だが、それ以上に、この状況は意味が分からない。

「なに、なんなのこれ?」

 妹紅はきょろきょろと周囲を見回す。だが、周りに集まっていた人間たちは、そんな妹紅をむしろ不思議そう
に見返してきた。

「おい、どういうことだ」
「死なない太郎先生は、鬼退治に来て下さったんじゃなかったのか」
「しかしどう見ても事情を知らない顔だぞ、あれは」

 ひそひそと、ささやき声が聞こえる。妹紅は頬を引きつらせた。

「……つまり、あれか。これは、そういう茶番なわけか」
「いや、茶番というか……妹紅は何も聞いていないのか?」
「誰から何を聞くっての」
「萃香から、だ。鬼退治ごっこをして妹紅が勝てたら里に財宝を持ち帰れるという遊戯だと聞いているんだが」
「あの馬鹿鬼ぃぃぃぃぃぃぃっ!」

 まんまと嵌められたことに気がついて、妹紅は悔し紛れに地団駄を踏む。それを見た慧音が、気まずそうに眉
根を寄せた。

「そうか、何も聞いていなかったのか……となると、相当に悪趣味な冗談をやらかしてしまったようだな。すま
ん妹紅、許してくれ」
「ああいや、別に慧音に謝ってほしいわけじゃあ……」

 頭を下げる慧音を慌ててなだめつつ、妹紅はため息交じりに問いかけた。

「……とりあえず、状況をちゃんと説明してほしいんだけど」
「うむ、事の起こりは一か月ほど前……」

 ――おう坊主ども、『死なない太郎の鬼退治』ってぇ、楽しい楽しいお伽話を演じてみないかい?

 酔いにふらつく千鳥足で、小さな鬼が寺子屋に入り込んで来たのだという。妖怪など既に見慣れている幻想郷
の子供たちと言えど、長い間姿を消していた鬼を見るのは初めてのこと。萃香はあっという間に彼らの心をわし
づかみにしたらしい。
 とりあえず授業中だったということもあって、彼ら全員を頭突きで黙らせたあと、慧音は授業後に萃香から詳
しい話を聞いた。

「……つまり、彼らに『悪鬼にさらわれた罪もない子供たち』の役をやってほしいと。そういうことだな?」
「そういうことさ。もちろん、身の安全は保障するよ。鬼の名誉にかけてね」
「ふむ。鬼は嘘をつかん種族だというからな。その言葉は信用できるのだろうが」

 慧音は当初返事を渋った。萃香が面白おかしく誘うものだから子供たちはすっかり乗り気だったが、仮にも親
御さんから彼らを預かる身の上である以上、軽々しく承諾するわけにはいかないのだ。
 その旨を萃香に伝えると、「うんうん、分かるよそういうの。あんたにも立場ってのがあるもんねえ」と納得
して帰って行ったあと、今から一週間ほど前に全ての親から承諾を取り付けて帰ってきた。

「どうやったんだ一体」
「へへ、酒飲みに国境はないってことさあ」

 萃香は瓢箪の酒を煽りながら、誇らしげにそう語ったという。

「……というわけで、今こういう状況になっているわけだが」
「のん気すぎでしょ幻想郷の人間……」

 妹紅は頭を抱える。とは言え、少し安堵もしていた。先ほどまで危惧していたような、血生臭い事態にはどう
やってもなりそうにない。そもそも大結界の影響で妖怪がおいそれと人間を襲えなくなっている現状、ただでさ
え嘘をつくのが嫌いな鬼が、里の人間をだまして子供たちを喰らう、ということ自体がまずあり得ないだろう。
加えて、萃香自身幻想郷でも屈指の強者であろうから、他の妖怪の横やりが入って子供たちが危険に晒される、
ということもおそらくあり得ない。
 そこまで考えて、妹紅は寺子屋に背を向けた。慧音が慌てて追いかけてくる。

「お、おい妹紅、どこに行くんだ!?」
「どこって、帰るんだよ。決まってるじゃない」
「いや、しかし、子供たちは……」
「知らないよそんなの。別にそんな危険な事態でもなさそうだし、わたし以外の誰かに頼んだら?」
「それはいけませんわねえ」

 不意に、胡散臭い声が会話に割り込んだ。見ると、前方の闇に奇妙な隙間が開いている。その中から、扇子を
片手に持った金髪の美女が身を乗り出した。

「お久しぶりですわね、死なない太郎さん」
「そういうあんたは、肝試しのときの巫女の相棒ね。八雲紫だったっけ」
「ええ、そう。改めて、よろしくお願いいたしますわ」

 紫は優雅に頭を下げたあと、「ところで」と、にっこり笑って首を傾げた。

「本当に、お帰りになるつもりなのかしら」
「そうだよ。こんな茶番に付き合うつもりはないね」

 妹紅は紫の脇を通り過ぎて去りかける。後ろから冷やかな声が追いかけてきた。

「あなたって酷い人なのね」
「なにが」
「だって、子供たちの心にトラウマを作るつもりなのでしょ?」

 その言葉に、妹紅はつい足を止めてしまう。振り返ると、八雲紫が意地悪げに目を細めている。どっかのバ
バァみたいにいけ好かないやつだ、と思いながら、妹紅は妖怪を睨みつける。

「どういう意味よ」
「言葉通り。いかにごっこ遊びとは言え、子供たちは不死身の英雄死なない太郎が自分たちを助けに来てくれる
のを、今か今かと待っているのでしょう? なのに、その英雄さんが自分たちを見捨てて帰っちゃった、と知っ
たら、ねえ」

 紫はくすくすと笑いながら、扇子を広げて口元を隠す。

「ああ、なんてかわいそうな子供たちなんでしょう。この出来事をきっかけとして、彼らは大人を信用できなく
なっていくのね。勃発する七日間戦争、大人はみんな敵だ、授業なんかさぼれ給食なんかぶちまけろ、宿題なん
か破り捨ててしまえ……あらあら悲劇ですわ」
「そ、それは困るぞ!」

 慧音が割と本気っぽく、焦りに上ずった声を上げる。

「ただでさえ最近授業態度の悪化が目立つというのに、これ以上成績が下がるようなことをされては……!」
「でもねえ先生、仕方がないんじゃございません? なにせ、あなたのお友達ったらあんなに淡泊なんですもの。
以前見た熱苦しい女とは大違いですわねえ」

 ちらり、と紫が嫌味な視線を流してくる。いちいち勘に触る奴だな、と思いながら、妹紅は悩む。関わるべき
ではない、と思うのだが。

「妹紅……」
「慧音……頼むからそんな目で見ないでおくれよ」
「すまない……だがわたしには子供たちを立派な大人に育て上げるという使命が……くっ」

 慧音が苦しそうに唇を噛む。友情と使命の狭間で迷っているらしい。妹紅はため息をついた。

(仕方がない、か)

 今日一日だけ、今日一日だけだ。自分にそう言い聞かせながら、軽く両手を挙げる。

「分かった、降参。今日だけは付き合ってあげるよ」
「本当か!?」

 おお、と周囲の大人たちもどよめいた。誰もが喜びと期待に目を輝かせて、こちらを見ている。慣れない視線
に、妹紅は軽く身じろぎする。どうにも居心地が悪く、さっさとこの場から逃げ出したい気分になってくる。

「で、わたしはどこに行けばいいの? お伽話とか言ってる以上、一応筋書きみたいなものはあるんでしょ?」
「うむ。それに関しては」
「こちらになりますわ」

 紫が音を立てて扇子を閉じると、妹紅の頭上に隙間が開いて、何かが落ちてきた。受け止めてみると、ずっし
り重い。見ると、それは無闇に分厚い冊子だった。軽く見積もっても1000頁以上はありそうな、本当に
分厚い冊子だ。

「……なにこれ」
「ふふふ。よくぞ聞いてくれました」

 紫がぐっと拳を握りながら、自信満々に言う。

「それこそ、私こと八雲紫と伊吹萃香が持てる知恵とセンスを総動員して作り上げた超大作、その名も幻想郷新
お伽噺、『死なない太郎の鬼退治』の脚本、第一版」

 妹紅は無言で脚本を燃やした。紫が悲鳴をあげる。

「ひ、ひどい! 中身も読まずに燃やすなんて!」
「やかましい! こんな長ったらしいもの読んでられるかっての! ただでさえなかったやる気が一気になく
なったよまったく」

 ぼやく妹紅を、「まあまあ」と慧音がなだめる。

「そう言うな妹紅。わたしも読ませてもらったが、確かになかなかの力作だったよ」
「当然ですわ。なんたってこの一ヶ月間執筆にかかりきりでしたもの」
「暇人かあんたは」
「まさか。とても忙しい身の上だけど、今はこっちを優先して、仕事を式に丸投げしただけですわ」
「訂正するよ。あんたは最低の暇人だ」

 妹紅の暴言を、紫は妖しく笑って受け流す。舌打ちする不死人を、里の教師が必死になだめた。

「まあそう言わずに機嫌を直してくれ。お前もきっと楽しめると思うぞ」
「万に一つもあり得ないと思うけど……」
「そう言わずに……そうだ、子供たちだけでなくて、美しい姫君も捕らわれていてな!」
「ほう。姫君ね」
「うむ。英雄譚の定番中の定番だろう。ちなみにその姫君というのはこんな人だ」

 慧音が一枚の写真を差し出してくる。妹紅が受け取って見ると、そこにはこちらに向かって優雅に中指を突き
たてている蓬莱山輝夜の姿が。

「どうせこんなこったろうと思ったよ!」

 妹紅が写真を地べたに叩きつけて踏み付け始めると、慧音が驚いたように目を見開いた。

「なに、捕われの姫君を助けてくれないのか!」
「っつーか慧音は本気でわたしがあいつを助けに行くと思ってんの!?」
「……まあ、わたしもちょっと配役に無理があるんじゃないかなーと思ってはいたが」
「その時点で止めてよね頼むから」
「ううむ。しかし」

 慧音は首を傾げた。

「最近は彼女とも殺し合いをしていないと聞いていたし、和解したのかと思っていたんだが。輝夜の方もずいぶ
ん乗り気だったしな」
「……知らないよ、そんなの」

 舌打ちして、妹紅は慧音から目をそらす。ますますこの場にいづらくなった。

「もういいよ。とりあえずさっさと終わらせてくるから、萃香がいる場所教えて」
「うむ……分かった。だが妹紅、一応、最低限のルールは守ってもらえないだろうか」
「ルール?」
「ああ。その場所までは飛ばずに歩いていくこと、だ。いろいろとイベント用意してあるそうでな」
「ああ分かったよ、もうどうでもいいよ。歩いて行けばいいんだね。他には?」
「出発する前に、寺子屋の中である人物と会っていってほしい」
「それもイベントってことね。分かった、じゃあその人のところに案内してよ」
「承知した。ついてきてくれ」

 慧音の先導に従って、妹紅は寺子屋の中へ足を踏み入れる。
 廊下を通り抜け、慧音は一番奥の教室の前で立ち止まる。

「ここだ、入ってくれ」

 促す慧音に頷いて、妹紅は教室の中に足を踏み入れる。そして、息を飲んだ。教室の中は、夜だというのに眩
い黄金の光に満たされていたのだ。壁も、置いてある調度品も、何もかもが黄金色に光り輝いている。本当にこ
こはあの味気ない学び舎の中なのだろうか。かつて噂に聞いた、太閤様の金の茶室もかくやという眩さである。
おそらく、これも演出の一つというやつなのだろうが。

(……たかがお伽噺ごっこにここまでやるか、普通)

 心の片隅では呆れつつも、しかし妹紅は圧倒されていた。これほどの光景、不死人としての長い人生の中でも
未だかつて見たことはなかったし、これから先もお目にかかれるかどうか。
 そうして入口の辺りで呆然と立ち尽くしていると、部屋の奥から声がかかった。

「来ましたね、死なない太郎」
「って、お前かよ!」

 妹紅は瞬時に炎弾を作って、部屋の奥に向かって投げ放つ。火の粉を散らしながら飛んだ炎弾は、相手に到達
する前に、ぱっくり開いた空中の隙間に飲み込まれる。

「あらあら、乱暴ですわねえ」

 扇子で口元を隠してそう言うのは、誰あろう隙間妖怪の八雲紫である。教室の一番奥に設えられた雛壇の上に
優雅に座り、雅な空気を漂わせている。

「私は、あなたをそんな子に育てた覚えはありませんよ」
「いや、育てられた覚えないし……っていうかなに言ってんのあんた」
「……だから脚本を読んでとあれほど……」
「ああなるほど、そういう筋書きなわけね」
「そう。ちなみに今のわたしは、隙間妖怪八雲紫ではなくて、竹林で拾った赤ん坊に運命を感じて立派な鬼退治
の勇者へと育て上げたおば」

 一瞬、八雲紫は声を詰まらせた。頬を引きつらせ、こめかみに青筋を立てながら、絞り出すような声で、

「おばあ、さん、よぉぉぉぉおっ……!」
「そんなに嫌がるぐらいなら断れよ」

 どうやらわたしはババァという人種に対してロクな縁を持てない運命らしい、と妹紅はうんざりしながら思う。

「まあそれはそれとして、近う寄りなさい、死なない太郎」
「へいへい」

 気だるげに歩み寄る妹紅を見つめながら、紫がゆっくりと虚空に手をかざす。また空中に隙間が開いて、そこ
から一振りの刀が落ちてきた。それを両手で捧げ持った紫は、妹紅に向かって恭しく差し出した。

「さあ、受け取りなさい、死なない太郎」
「ちなみにこの刀はどういう設定なの?」
「ふふ、よくぞ聞いてくれました。これこそ、我が家に代々伝わる鬼殺しの名刀。その名も」

 勿体ぶるように一呼吸置いて、

「聖剣、えくすかりばぁです!」
「おかしいだろそれは!」

 妹紅は突っ込んだ。突っ込まずにはいられなかったのだ。

「え、なんで急に西洋風になるの!? 普通に童子切安綱とかそういうのでいいじゃん!」
「えー、だって、そういうのって意外性がなくてつまんないもーん」

 もーんじゃねえよババァ、と、妹紅は口に出しては言わなかった。これでもお年寄りと子供には優しい不死人
なのである。最近人と関わっていなかったせいで、すっかり忘れていたが。

(ええいくそっ、いちいちそんなことを思い出させるなよ)

 苛立ち紛れに刀を引ったくり、妹紅はさっさと紫に背を向ける。背後から焦ったような声が響いた。

「ええっ、ちょ、待ちなさい! 今からその刀の謂れを優雅に解説してあげようと思ってたのに!」
「知らん。一人で勝手にやってろ」
「ま、待ってったら! いい、その刀は緋緋色金とオリハルコンとダマスクスとある物質とを一定の分量で混ぜ
合わせた超合金ゆかりんZで作られていて、かざせばイナヅマを呼ぶし地に突き立てれば地割れを起こすし、名
前を呼べば戻ってくるし、さらに極限状態においては食糧にもなる超優れ物の」

 バタン、と妹紅は教室の扉を閉じた。背後からすすり泣きのようなものが聞こえてくる気がするのは、気のせ
いだと思いたい。
 非常に気まずい沈黙の中、ごほんと咳払いをした慧音が微妙に硬い口調で言う。

「うむ。実に立派な姿だ、死なない太郎。わたしはお前の友人であることを今日ほど誇らしく思った日はないぞ」
「……慧音。それ、ひょっとして台本に書いてあった台詞?」
「ああ。いや、わたしもこういうのをやるのは初めてでな! なかなか緊張するものだな」

 照れ笑いを浮かべる友人の目の下に隈を見つけて、妹紅はなぜか非常に申し訳ない気分になった。

 とにもかくにも、一度流れに乗ってしまった以上、行きつくところまで行かないと岸には上がれないものである。

「死なない太郎様ーっ!」
「お気をつけてーっ!」
「子供たちのこと、よろしくお願いしまーっす!」

 たくさんの声援に見送られながら、藤原妹紅こと死なない太郎は、悪鬼伊吹萃香が陣取る妖怪の山に向かって
歩き出したのである。
 言うまでもなく、その足取りは非常に重ったいものであった。

<続く>
無表情で動いてる僕は、生きているんでしょうか、死んでいるんでしょうか。

なんかそんな感じの話。
分かる人には分かるであろう某曲の影響をモロに受けております。
相変わらず俺設定垂れ流しですけどー。続きはまた後日ってことで、はい。
aho
[email protected]
http://aho462.blog96.fc2.com/
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コメント



0.7190簡易評価
1.100yuz削除
参った。面白い。降参。
2.100名前が無い程度の能力削除
紫、自爆!

犬、猿、キジ出るのかなー誰かなーわくわく
6.100名前が無い程度の能力削除
えくすかりばぁの所で盛大にむせました
7.100名前が無い程度の能力削除
これは懐かしくも恐ろしい鬼の姿…!

……そんな風に思ってた瞬間が私にもありました。
もうね。紫と萃香が楽しそうに悪ノリして相談してる姿が目に浮ぶんですよ。
どういう話になるのか今から続きを期待しております。
8.100発泡酒削除
新作見てクリック余裕でした。
いつもながら活き活きとしたキャラクターたち。すいすいと読める小気味よい流れに脱帽です。
気が付けばこんな時間まで読みふけってしまいました。勿論後編も首を長くして待っていますね。
13.90名前が無い程度の能力削除
確かに酒天は源頼光以下でだまし討ちにしたがッ、茨木には正々堂々タイマンしてガチで勝ったんだッ!
と、渡辺綱擁護はこれくらいにして
妹紅は鬼退治の英雄だと、俺も思っていた!
後編非常に楽しみです
14.100ルル削除
いつもながらシリアスとギャグの緩急が絶妙。見習いたいものです。

後篇も楽しみに待っております。
19.80名前が無い程度の能力削除
湿っぽい話で終わらせずに、適度なギャグを挟んでお話を締める手腕が相変わらずお見事です。
萃香もかっこよくていいなあ。
しかしこれ、もう半分行ったとは思えません。きっと次は中編ですよね? そして後編の後に完結編があるんですよね?
22.90名前が無い程度の能力削除
…ババァババァとアナタは幻想郷の高齢者達に何か恨みでもうわなにをするやめr
26.100名前が無い程度の能力削除
結構分量あるはずなのに読み始めたら一瞬でした。
今回はシリアスか?って思ったらやっぱりいつまでも湿っぽくいられない幻想郷にニヤニヤしました。
次回も楽しみにしています。
28.100名前が無い程度の能力削除
ページまだ終わらないよな?終わってくれるなよ?
そう思いながら読んでた。実にいい時間だったよ。
30.100名前が無い程度の能力削除
全体的にキャラが生き生きしてて面白いです。

慧音せんせーの大根役者っぷりに吹いたw
あと何気に小兎姫が出演してる!?
39.100名前が無い程度の能力削除
毎回ババァの使い方が秀逸すぎるw
相変わらずクオリティの高い作品でした。
ただ、まだ前編だからなのかもしれませんが、以前の作品に比べると少し勢いが落ちるような……
それでも十分面白かったですが。
次回も期待!
40.100ぴぴん@削除
これはひどいwwww(褒め言葉)
とりあえずけーねとゆかりん自重しろww
43.100名前が無い程度の能力削除
いやはやこれは面白い。
猿が誰になるか気になる。
44.100名前が無い程度の能力削除
えくすかりばぁ を えくすかりばばぁ と読んでしまったぜ
ん?誰か来たようだ
45.100名前が無い程度の能力削除
引き込まれました
妹紅のツッコミには激しく同意せざるをえないですwww
50.100名前が無い程度の能力削除
>とりあえず授業中だったということもあって、
 彼ら全員を頭突きで黙らせたあと、
さりげなく怖いwww
52.100名前が無い程度の能力削除
砕月~天零萃夢~ですね、わかります。
53.100名前が無い程度の能力削除
超合金ゆうかりんZ www
後編期待してます。
54.無評価名前が無い程度の能力削除
>リズミカルにぶち殺すぞ
 ツボったww
59.100Unknown削除
aho氏の小説には「ババァ」と言うワードが必ず含まれてますねww

上手く表現できないんですが
こう言う昔話引用系ってやり尽くされた印象があったのですが、こう最初から中盤までの話の流れがあるとこうも興味をそそる印象の話になるのかと…凄い感動しました
60.100名前が無い程度の能力削除
なんと言うかaho氏の書く幻想郷が好きすぎるw
シリアスとギャグの切り替えも丁度いい感じで呼んでいて心地よいです。
61.100名乗ってもしょうがない削除
ahoさんのつむぐお話は何故こんなに安心して読めるのか。

さて。
63.100名前が無い程度の能力削除
小兎姫、創想話(たぶん)初出演おめでとう!

しかしこれ、やろうと思えばとことんシリアスにできる気がするんだが…
流石aho氏だ、全然そんな事はなかったぜ
64.100名前が無い程度の能力削除
aho氏の名前見てクリック余裕でした。
後編?に期待してます
65.100名前が無い程度の能力削除
後編期待。内容?とても面白かったです。とても
66.100名前が無い程度の能力削除
リズミカルにぶち殺すってwwww
しかし面白いな、読んでて非常に負担が少なく楽しめる作品を書いてくれるよahoさんは
70.100名前が無い程度の能力削除
慧音が天然すぎだあ
確かに妹紅は鬼退治の経験はありそうですから
萃香にとっては良い相手役でしょうね
72.100名前が無い程度の能力削除
くっそーw慧音の腕のくだりまではちょっとハラハラしてたのに、作者さんの思うつぼにはまった感じで騙されました。
さすがに萃香も本気で人里襲わないですよねw
慧音もゆかりんもいい味出してますね。
妖怪の山に行く途中に現れる人物や、妖怪の山の天狗や神様たちにも期待しちゃいます。
続きが楽しみです。
74.100名前が無い程度の能力削除
ギャグのキレが増してる気がw
ストーリーの展開も非常に楽しみです
80.100名前が無い程度の能力削除
コメント見て小兎姫出ているのに気がついた・・・小技が効いてますなぁ。
慧音といい輝夜といいキャスティングに無理が有りすぎるw
ゆかりんはぴった(スキマ
88.100名前が無い程度の能力削除
ええい、後編はまだか!? すでに3回読んでしまったじゃないか!
89.100名前が無い程度の能力削除
まさに「酔狂」の一言が相応しいwwww
後編楽しみにしてます。
93.100名前が無い程度の能力削除
慧音が素晴らしすぎるw
後編も期待してるよ
96.100名前が無い程度の能力削除
その文才が妬ましい・・・
100.100名前が無い程度の能力削除
aho氏の俺設定は悉くこちらのつぼにはまるなあ。
読んでいて本当に楽しいです。色々な要素を詰め込んでよく破綻せずに綴っていけるなあ…

後編も楽しみにしております。
103.100名前が無い程度の能力削除
ぼくらの7日間戦争とか超なつい
104.90謳魚削除
冒頭の「見つけたよ、死なない太郎!」に完敗しました。
105.無評価名前が無い程度の能力削除
犬・サル・キジは誰になるんだろう
楽しみだ
106.90名前が無い程度の能力削除
犬=藍
サル=てゐ
キジ=ミスチーって勝手に想像してしまいました。

続き楽しみにしています。
110.100名前が無い程度の能力削除
>照れ笑いを浮かべる友人の目の下に隈を見つけて、妹紅はなぜか非常に申し訳ない気分になった。

一生懸命、頑張ったけいねがとてもぐっときました。
続きwktkです。
113.90名前が無い程度の能力削除
ゆかりんが困ったちゃんすぎるw
114.100名前が無い程度の能力削除
えくすかりばぁ食糧にもなるのかwww
124.100マイマイ削除
すでに殿堂入りだこれwwwww
127.100名前が無い程度の能力削除
完結編まで読みました
本当にいい話だった
133.100名前が無い程度の能力削除
萃香が鬼と人間の絆を語る下りが秀逸。
絶対の力を持った鬼に立ち向かった昔の人間達と、
それを見下すでもなく敬意を表した鬼。こういう仲は良いなあ。
136.100名前が無い程度の能力削除
あぁ、最高だ
137.100名前が無い程度の能力削除
なんだ、ただの神作品か。
142.100名前が無い程度の能力削除
もうどこから突っ込んでいいのかわからなくなるくらい笑った
143.100名前が無い程度の能力削除
続きが気になる
151.100名前が無い程度の能力削除
話の枕の時点で、この期待感…!
159.100名前が無い程度の能力削除
>>妹紅は無言で脚本を燃やした。紫が悲鳴をあげる。
咲夜が淹れてくれた紅茶吹いたじゃないか
162.100名前が無い程度の能力削除
(か)の印が入ってそうなえくすかりばぁですね
164.100名前が無い程度の能力削除
幻想郷最強のいじられ役だな妹紅は。
「不老不死」の真の恐怖、ここにあり。

・・・しかし、もうちょっと良い家に棲めよ。妹紅。
167.100名前が無い程度の能力削除
人間の中では英雄、鬼の中では卑怯者なんですよね。渡辺綱、他の人達は。
176.100名前が無い程度の能力削除
>給食なんざぶちまけろ!
盛大にコーヒー吹いたwww
183.90名前が無い程度の能力削除
楽しいなあ。荒事は心躍るよね
ちょくちょく変な場所で改行されてるのはミスなのかな?