Coolier - 新生・東方創想話

雨の降る夜

2008/10/28 23:15:25
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※ 本文には、流血表現や残酷な描写が含まれます。お読みになる際はご注意ください。






















雨が降っている。

私の眼前には血に塗れ横たわる名も知らぬ妖怪の姿。私がたった今退治した妖怪の姿。

この妖怪は人を襲い、殺した。だから私が退治した。ただ、それだけの事。

それなのに…


「お母さん! お母さん!」


この光景はなんだというのだろう。妖怪の遺骸に縋る、小さな妖怪の姿。

私が退治した、私が殺した妖怪の子供が、物言わぬ骸に泣き縋っている。

雨が降っている。

全てを流し去るかのように、この血に塗れた手を洗い流すかのように、幼子の流す涙のように…


「よくもお母さんを…!」


キッと幼子が私に目を向ける。そして一息で距離を詰め、私にその爪で襲いかかる。

そんなもの、私には届かない。だって遅すぎるし、迫力も感じられない。

そんなもので私は怯まない。だから私はそれをかわし、その子供からは距離をとる。


「逃がさない! 殺してやる!」


私はどうしたらいいのだろう。退治すべき妖怪は既にいない。

私がこの子を退治しなければならない理由が見当たらない。だからと言って、このまま大人しく殺される理由もない。

幼子は再び襲い来る。私は再び避ける。

襲う、避ける、襲う、避ける、襲う、避ける、襲う、避ける……

何回この作業を繰り返したことだろう。気付けば幼子の動きは鈍り、息も上がっている。

    コロスナライマガコロアイカ…

なんの違和感も無く、私の頭にそんな言葉が浮かぶ。

私はその考えを振り払うかのように、頭を一度、二度左右に振る。

相手はまだ何もしていない。誰も殺してはいない。何の罪も犯していないはずだ。


「はぁっ、はぁっ…諦めない…! 必ず…!」


必ず、何だというのだろうか。考えるまでも無い。私を殺すというのだろう。

ここでこの子供を見逃したとしたら、いずれ必ず私を殺そうと現れることになる。

それどころか、私と無関係な人間を殺してしまう可能性だってある。

この小さな子どもは、きっと今日のこの出来事を未来永劫忘れないだろう。そして、人間を恨むだろう。

    ダッタラ、イマコロシテシマオウカ…

この幼い妖怪は、一人で生きてゆくには余りに小さすぎる。ここで私が見逃したとしても、いつかは死ぬ運命にある。幾許かの罪を重ねて死を迎えるだろう。

    ソレナライッソノコト、コノバデ…

幼子の眼光はギラギラしている。その眼は憎しみで満ち溢れ、憎しみが零れている。

もはや言葉は通じないだろう。この子は私を殺すためだけに動いている。

    …………セ…

私は博麗の巫女。役目を全うするまで、迂闊に死ぬわけにはいかない。

    ………ロセ…

再び幼子が向かってきた。初めの動きに比べ、その動作は重鈍の一言に尽きる。

    ……コロセ…!

瞬間、雷鳴が轟いた。








雨が降っている。

私の眼前には血に塗れ横たわる妖怪の姿。重なり合うように倒れ伏す二つの骸。

いや、正確にはまだ一つ。


「…お…母……さん………」


震える手で既に事切れた妖怪の手を握る幼子は、その言葉を最後に動かなくなった。

私は右の二の腕を押さえながら、冷めた目でその光景を眺めていた。

幼子の最期の鈍重な猛襲は、私に小さなかすり傷を与えており、そこからは血が流れている。

何故あのような拙い一撃が私に当たったのかわからないが、もう済んだ事だ。

妖怪とはいえ、このまま放置するのは忍びない。私は亡骸を埋葬してやる。

私がこの手で殺めた親子を…

もしかしたら、この妖怪が人を襲ったのには何か理由があったのかも知れない。

もしかしたら、この妖怪が人を襲ったのは子供のためだったのかも知れない。

関係ない。いかなる理由があろうと、この妖怪は人を殺した。この事実は覆らない。だから、私には関係のない事だ。

私は今日、妖怪を退治した。妖怪の親子をこの手で殺した。ただ、それだけの事。

日常茶飯事、とまでは言わないけれど、いつも通りの私の仕事。

それが終わったからには家に帰ることにしよう。濡れてしまい、体が冷えた。風呂も沸かさなくては。

いや、それは最近湧き出た温泉があるからわざわざ沸かす必要も無い。ともかく帰ろう。

    …お…母……さん………

声が聞こえたような気がして振り返る。しかし、そこには誰もいない。

ただ、即席の粗末な墓が二つ、並んでいるだけだった。

今度こそ帰路につく。その私の心に、幼子の最期の言葉が、沁みついて離れなかった。

雨が降っている。

だけど、私の心を洗い流してはくれなかった。








空っぽの神社に帰り、温泉から上がった私は床につく前の一杯に興じている。

冷えた体には熱いくらいのお湯加減だったが、温まるにはこの上なかった。しかし、お湯が少しだけ傷に染みた。

ほんのかすり傷だったので、消毒だけして今は放置してある。その傷口は少しだけ血が滲んでいた。

雨はいまだ大地に降り注いでいる。

これだけ降れば、あの場で流れた血も綺麗にその痕跡を消すことだろう。

この傷も、二、三日すればその痕跡を消すことだろう。

そうなれば、名も知らぬ親子の痕跡はこの世から消えてなくなる。あの墓を残して消える。

雨の降る境内を眺めていると、先程の親子を幻視した。

あれはもう終わった事だ。それなのに、どうして今ここでそんなものを見なくてはいけない。

軽く目を閉じて深呼吸する。そうして目を開くと、そこはいつもの境内だった。当然、妖怪の親子など、いない。

それでも、私の心は先程の光景を鮮明に思い返している。

幼子は幾度も私に向かってきた。

幾度も転び、泥まみれになりながらも足掻く様は惨めだった。勝てないと、分かっているはずなのに向かってくる様は愚かだった。

幼いならば、より本能が強いはず。それなのにあの子供は私に向かってきた。

本能が強いならば、彼我の実力差など見抜けるはず。現に私はあの子の母親を眼前で葬ったのだ。普通勝てるとは思わないだろう。

それなのに、何故?

向かってこなければその場は生き延びることができた。生きてさえいれば、道が開けていたかもしれない。それなのに、幼子は向かってきた。

    …お…母……さん………

心に沁みついた言葉が、私の疑問をいとも容易く氷解させた。

    あぁ…そうか。あの幼子は、それほどまでに母を愛していたのね…

母、家族、愛…全て私の手元には無い代物だ。だからあの子供の気持ちは理解できない。

一時の感情に流されて、命を失ってしまう愚行など、理解したくもない。

だけれども、私にはあの子を笑うことなどできなかった。

親を愛するが故に、勝てないと分かっていても立ち向かう。親を愛する故に、諦めなかった。

愛深き故に……それは、なんと純粋で、尊い行いなのだろう…

妖怪であるあの子供はそれ故に私に牙を剥き、人間の私はそれを無情にも断ち切った。

私とあの幼子の、一体どちらが人間らしいのだろう…?

私にはあの子供を笑うことなど、到底できなかった。








「難しい顔して酒なんて飲んで、どうしたんだ霊夢?」


ひょっこり顔を出したのは、すきま妖怪の式である藍だった。

普段はマヨヒガに居る彼女が、どうしてこんな時間にこんな場所にやってきたのだろうか。


「さっきお前がフラフラと飛んでいるのを見かけて、元気が無さそうだったから気になってな……それで、どうしたんだ?」


どうした…なんてこと、私が知りたい。

私はいつも通り妖怪を退治しただけだというのに、どうして今日に限ってこんな事を考えているのだろう。

答えに窮した私に残された選択肢は、黙ることだけだった。


「…本当にどうしたんだ?」


心配そうに声をかける、妖怪の藍。そして不気味に押し黙る私は人間。わかりきっていることだ。だけど…

今の藍と私……どちらが人間らしい……?

なんて馬鹿馬鹿しい考え。私が人間である事実は変わらない。だから、そんな考えは無意味でしかない。


「その腕……怪我したのか?」


藍は、血の滲む腕の小さな傷に気付いた。

放置したままだったのが拙かったのだろうか、その傷に、今更ながら少し痛みを覚えた。


「ちゃんと手当てしないと駄目じゃないか。ほら、見せなさい」


どこから取り出したのだろうか。藍は傷を消毒し、そこに包帯を巻いた。

藍の手は淀みなく動き、包帯を巻くまでの手際は無駄が無かった。


「…手慣れてるわね」

「お、ようやく喋ったな。余りにも静かだから、喋れなくなったのかと心配した」


場を和ませるための冗談のつもりなのだろう。それでも、私がこの場で初めて口を開いたのは事実だ。

いや、この場で…ということはない。言葉を発したのは、自分の感覚でも本当に久しぶりに感じた。まるで、今までそれを失くしてしまっていたかのよう。

あまりに久しぶりだったので、私はちゃんと喋れただろうか…?


「藍がこんなことできるなんて…いえ、意外でも何でもないわね」

「そうだなぁ。でも、こんな事が出来るようになったのは、橙を式にしてからだよ。

 こう見えて昔は腕白だったんだ。いろんなところで怪我して帰ってきて、その度に紫様がこんな風に手当てして……ふふ、懐かしいな」


そんな紫と藍の姿を幻視した。

それはまるで、母と子のようで、それを懐かしみ微笑む藍の顔は、慈愛に満ちている。

あの妖怪の親子も、もしかしたらこんな風に過ごしていたのかも知れない。


「だから橙が家に来るまでは、専ら私が手当てを受ける側だったんだよ。橙もあれで…というか見た目通り腕白だからな。こんなことはしょっちゅうさ」


それもまた、母と子のようで…私には余りに遠い…


「…聞かないの?」

「何を聞くんだ?」

「なんで怪我したか」

「聞いて欲しいのか?」


そう言われると答えに詰まる。

どうして私はそんな事を訊いてしまったのだろう。でも、今はただこの思いを吐き出してしまいたい。

それが何かも分からないが。


「…今日、妖怪を退治したわ」

「その怪我はその時に?」


藍の返事に首肯する。私の話は続く。


「問題の妖怪はすぐに退治できた。だけど、それだけでは終わらなかったの」

「何があったんだ?」

「その妖怪に…子供がいたわ」

「…それで、霊夢はどうしたんだ?」

「退治した。私を殺そうとしたから…傷はその子につけられたの」

「そうか…」


短い話が終わりを告げ、沈黙が流れる。

藍もそれ以上何かを聞きだそうとはしなかった。ただ、静かに私を見つめるだけ。

雨の音がやけに五月蝿かった。


「ねぇ…」

「なんだ、霊夢?」

「お母さんって、なに?」


沈黙を破り、突如投げかけられた質問に、藍は困惑した顔を見せる。

お母さん……幼子はその言葉を遺してこの世を去った。

それほどまでに親という存在は重いのだろうか。それほどまでに愛とは大切なものなのだろうか。

そして何より、それを妖怪に訊ねようとする私は、本当に人間なのだろうか…?


「お母さん…か。霊夢を産んでくれた人…ということを聞きたい訳じゃないんだろ?」

「当り前よ。そうじゃなくって、子供にとって、親って…愛って何?」

「…まいったなぁ、紫様なら簡単に答えそうなものだが…」


さらなる質問に、藍はさらに困った顔をする。

それはそうだろう。こんな突拍子も無い質問の答えを用意している方がおかしい。


「…答えになるかは分からないが、少し私の話をしよう」

「藍の…?」

「ああ、そうだ。私が紫様をどう思っているか、ということだ。

 普段はこんなこと照れくさくて言わないんだが、今日は特別だ。くれぐれもあのお方には内緒にしてくれよ?」


藍は少しおどけた様子で――それでも真剣な表情で――私に語りかける。

その雰囲気に、私はただ首を縦に動かすしかできなかった。


「普段の紫様は…まぁとても褒められた生活をしていないな。二度寝なんて当たり前だし、起きたら起きたで悪戯ばっかりだ。

 今の話だけで考えれば、世話の焼ける子供という表現が一番しっくりくるな」

「それは…知ってる」

「はは、そうか。でもな、私はあのお方が大好きなんだ。どうしてだか、わかるか?」

「…わからないわ」

「それはな、紫様が私にとっての『お母さん』だからだよ」

「あなたが世話を焼くのに、お母さんなの?」

「それでもさ。私は紫様から多くのものを頂いた。沢山の心を貰った。

 春の日差しが暖かい時は手を繋ぎ歩いた。夏の焼けるような暑さの時は一緒に川で遊んでくれた。

 秋の空が高くなった頃には共に焼き芋を齧り、冬の寒さが厳しい頃には一緒の布団で寝たりもした。

 どれもがあのお方の温もりで満ちていて、私はあのお方に見守られて育ったんだ」


幼い藍と、その傍でいつも優しげな笑顔を向ける紫……きっとそれは、正しい親子の在り方。

私にそんな記憶があるだろうか…母親、のような人物はいた。

それは先代博麗の巫女で、私に修行をつけるだけだった。そして、修行が終わると同時に彼女は姿を晦ませた。

その時から私は、博麗となった。その時から私は、一人だった。


「私が何か悪いことをすれば、もちろん怒られたりもした。喧嘩もしたことだってある。

 あのお方との思い出は、全部が幸せに満ちたものじゃない。お仕えするのが嫌になったこともある。だけれども――」


    ――独りぼっちだった私に差しのべられた、あの手のひらの温もりが、今でも忘れられないんだ…


一呼吸置いて締めくくられた言葉には、今まで耳にしたどんな言葉よりも力がこもっていた。

純粋に紫を慕う心。敬う心。そして、愛する心が一つの形を為して、私の耳朶を打つ。

あぁ、同じなんだ。あの妖怪の子供と藍は、きっと同じ。

けれども私は違う。藍の言うような思い出は見当たらないし、温もりなんて望むべくもない。

そんな私は、人間でいてもいいのだろうか……




「…今の霊夢は、私と同じだな」


不意にそんな言葉が聞こえた。

私と藍が同じ…? 何を言っているのか。こんなにも違うのに、同じだなんて。

あまりにも的外れで、気休めにもならない。冗談にしては馬鹿げてる。


「紫様と出会う前の私と、きっと同じ眼をしている」

「…あなたとは違うわ」

「それに、私と出会う前の橙と、同じ眼だ」

「…橙とも違うわ」

「同じさ。寂しい、って眼が訴えている」


寂しい…久しく忘れていた言葉の様な気がする。私の心からは抜け落ちてしまったもの。

一人でいることは苦ではなかった。親というものを欲したこともなかった。それが普通だった。

それなのに、どうして今更、そんな零れ落ちたはずの感情が鎌首をもたげ、私を締め付けるのだろうか。


「きっと私は、紫様との出会いが無ければこの世にはいなかっただろう。その前に心が壊れていたかもしれない。

 だから、私は恵まれている。あのお方は、私の全てだ。私の全ては、あのお方で満ち溢れている。

 少しでもあのお方に近づきたくて、橙を式にした。そして、かつての私がそうであったように、紫様がそうしたように、私は橙を愛する。あの子の母として」


子から子へと受け継がれる温もり。母から子へ、子から母へ注がれる愛情。

私が命を奪ったあの親子も、きっと…


「橙は…恵まれているのね」

「そうであると願いたいものだ。なにせ、私はまだまだ紫様には及ばないからな」

「恵まれているわよ」

「…そうだな。きっとそうだ」


知らなかった。親とは、家族とはそういうものだったのか。

いくら私に正当性があったとしても、あの幼子にとって私は、唯一無二の愛を注いでくれる母を奪った悪魔でしかない。

私を怨むには十分な理由がある。それこそ、殺したいと思う程に憎む理由がある…


「私は、どうしたら良かったの?」

「退治した親子のことか?」

「えぇ…」

「答えなんて見つからない。霊夢だって、死ぬ訳にはいかなかったんだ。こんな言い方は良くないのかも知れないが、仕方なかったんだよ…」


仕方なかった…愛を知らない私が生き残り、それを知るあの親子がこの世を去った。それが仕方なかったのだろうか…?

けれども藍の言う通り、私は死ぬ訳にはいかなかった。その思いであの子を殺したのだから、そこに後悔は無い。

後悔は無く、ただ胸が痛むだけ…


「もし霊夢がその親子を悼むなら…どうしたら良かったではなく、どうすればいいかを考えればいいんじゃないか?」

「…なら、私はどうすればいいの?」

「ただ、忘れないでやってくれ。今は亡きその親子は、確かに生きていたということを…」


穏やかな暮らしがあったのかも知れない。人を手にかけるまでは、静かな日々があったのかも知れない。

そんな生活を送っていたかも知れない親子を、忘れるなと藍は言う。

忘れろという方が無理な話だ。あの幼子の爪は私に痕を残し、その言葉は私の心を穿ったのだから。


「忘れ…られない」

「そうか……はぁ、私も大概お節介焼きだな」

「何の話?」

「話も済んだ様だから帰ろうかと思ったんだけどな…そんな眼をされたら放っておけない」


それは先程の藍の言葉。寂しい…と訴える眼。

私は寂しいのだろうか。家族に、親に、愛に飢えているのだろうか。

延々と繰り返される自問に答えは見えず、私はいつまでも闇の中を彷徨っている。


「ほら、霊夢」


藍は私の正面に立つと、右手を前に突き出した。きめ細やかな肌で、綺麗に整った指だ。

しげしげと突き出された手を眺める私には、藍の意図が読めない。彼女は何をしたいのだろう。


「今夜ぐらいは一緒にいてあげる。だから、そんな眼はもうするな」


この手をとれ、ということなのだろうか…? 他に選択肢は思いつかない。

その手に吸い寄せられるように、おずおずと私の手が伸びる。

そして、私と藍の手の平が重なる――


「…あったかい」

「そうか、それは良かった」


そう言うと、藍は私の体を抱き上げた。いわゆる『抱っこ』というやつだ。

この年になってそれをされるにはいささか抵抗がある。有り体に言えば、恥ずかしい。


「大人しくしなさい。それに、子供はもう寝る時間でしょう」


突如、藍の口調が変わる。厳しく、そして優しく叱りつけるような、そんな口調に。


「今日は一晩中霊夢の傍にいてあげる。抵抗しても無駄だからね」


よく見れば、藍の頬も赤く染まっている。慣れない喋り方が恥ずかしいのだろうか。


「…変な喋り方」

「自分でも分かってる。顔から火が出そうだ」

「でも……似合ってる」

「ふふ、変なのに似合っているのか?」

「えぇ、とても」

「ありがとう」

「…私こそ」


あっという間に寝室に連れられた私は、敷いてあった布団に寝かせられる。

その横には、穏やかな目をした藍が横たわる。布団の上から私の体をポンポンと叩く。

その一定のリズムが、何とも心地よい眠りを誘う。


「さぁ霊夢、もうお休みなさい」

「うん…わかった…」


目を閉じて、甘い眠りに身を委ねる。すぐ傍から優しい歌声が聞こえてくる。

その温もりはまるで…


    …お…母……さん………


不意に零れたその言葉は、いったい誰のものだったのだろう…








雨はまだ降り続いている。それでも、少し小降りになったようだ。
ちょっとスッキリするようで、あまりスッキリしない終わり方。

本当はもっと鬱展開にするつもりでしたが、そんな話はどうも私には書けないようです。

後日、霊夢は親子の墓参りに向かいます。ちゃんと弔ってやるために…

ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
お腹が病気
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コメント



0.1780簡易評価
3.90煉獄削除
なんかドッシリと重く感じるような話でしたがそこが良かったです。
愛をしる妖怪の子と愛を知らない霊夢。
霊夢にはきっと愛情を注いでくれる人物がいるんじゃなかなぁ・・・と。
紫様とかね。 なにかと世話焼いてそうな感じがするけど。(苦笑)
面白い作品でした。
6.10こほん削除
マァマァだったかなぁ、今後の活躍に期待
古人曰く、ローマは1日にして成らず 焦らずジックリと歩むのが良かろうて
7.80こほん削除
↑のレス点数付け間違えた><
15.60削除
本当に良い話だとは思いますが、どこか話し自体に深みが足りないと感じました。
霊夢自身は話の中では完璧に聞き手になっているので、藍の話の深い部分が浅く感じます。
たしかに、話の内容としては有りなんでしょうが、少し読み終わった後に物足りなく感じました。
20.100名前が無い程度の能力削除
藍しゃま×お母さん属性=魅力無限大

疑問も後悔も浮かばなくなったら博麗という幻想郷を維持する為だけのシステムになっちゃうのかねぇ
悩める内は十分人間らしいよ霊夢さん。そして妖怪にも巫女にも非はないよ。互いに生きるためだったんだから
22.90名前が無い程度の能力削除
人間らしいからしくないかってのは幻想郷ではヤボな気もしますけどね
でも、やっぱり見えないところでは本当に獣のような妖怪もいるんだろうなぁ

霊夢はこれから先も、周りの妖怪さんから色々学ぶといいさ
30.80名前が無い程度の能力削除
妖怪が人間を襲うのは仕方がない事。そして、襲った妖怪が退治されるのも仕方がない事。しかし、襲われた人間、退治された妖怪にとっては、全然仕方がない事ではないのです。客観的に見るか、主観的に見るかの違いですね。そして、博麗の巫女は、つねに客観的に物事を捉えなければならない。私からすれば、それは随分と難しい事だと思います。考えさせられる作品でした。 
43.100名前が無い程度の能力削除
霊夢には、公式でも二次創作でも家族的な団欒の香りがしないと思っていました。
強いかわりに、とても孤独なイメージがありました。
だからこそこのSSを読ませていただいて、とても心動かされるものがありました。
ちくしょう、家族っていいよなあ…。