Coolier - 新生・東方創想話

椛と香辛料

2008/10/28 01:03:07
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――文様が死んだ、たった一撃で、一息付く間もなく、
椅子の背もたれにその身を預け、力なく天を仰いだまま。

「……がっ……ふぐ……」

いや、何とか生きていた、しかし白目を剥き、
涙と鼻水と涎を垂らしながら、無残に果てていた。

「こりゃアウトうさ! 早く運ぶうさ!」
「文様、だからお止めくださいと……」
「そっち持ってー! せーのっ!」

私は、犬走椛は、兎達に運ばれていく文様の姿を見る事は出来なかった、
しかしその体が運ばれていく前に、文様が握り締めていた匙をそっと左手で取る。

「……文様、仇はきっと討ちます」

そして今、私の目の前にも文様を屠り去った物と同じものがあった。


 ―――――


それとの出会いは突然だった。

「かれぇ?」

ある日私が暇を持て余していた時のこと、突然文様が私の元を訪れたかとおもうと、
その口から唐突に飛び出してきた謎の単語、それが「かれぇ」だった、
文様曰く、外来人が人里で開いた料理店の食べ物だとか。

「というわけで食べに行きましょう」
「……もしかして私は毒見役ですか?」
「いやですねー、可愛い椛ちゃんにそんな事させるわけが……あははは」

毒見役だ、間違いない、そう思いながらも私は文様に連れられ、
例の店の前へと来た、店の名は『大往生』一体何を往生させる気なのだ。

「さっそく入りますよ!」
「で、なんで私が前なんです?」
「気にせずにほらほら!」
「ああもう分かりましたよ入りますよ」

一歩踏み込んで店内を見渡してみる、和風とも、そして洋風とも違う
独特な雰囲気が漂っていた、そして何よりも店内に漂う香辛料の匂いが嗅覚を刺激する。

「この刺激臭は何でしょう?」
「香辛料ですね……唐辛子とはまた違うような」
「よくもここまで来たものだ」
『ひょっ!?』
「好きなところに座るがよい」

私達に声をかけてきたのは店長と思しき人物だった、
厨房の陰に隠れて顔などは拝見できないが、声だけで強い威圧感を感じ取れる。

「……文様、とりあえず座りましょうか、それと私の後ろに隠れないでください」
「そ、そうですね、早く座りましょう、ほら早く座りなさい!」

困ったお方だ、と溜め息を付きながらも、
一番近い席にしぶしぶ座る、特に罠の気配も無い。

「お冷とおしぼりです」
「……えーと、アリスさん、ここで何を?」
「見ての通り、ウェイトレスだけど?」

直後、文様の知人らしき方がお冷とおしぼりを持ってきた、
服は薄い青と白の二色を主に、細かい装飾がごちゃごちゃと付いていて目に悪い。

「何でこのお店でウェイトレスを? その経緯は? 従業員としての感想は?」
「ドール繋がり、さてご注文は? といってもカレーしかないけどね」
「質問に答えてくださいよー」
「ご注文の品はお決まりですか?」
「アリスさーん……」

文様の言葉を無視するどころか、お品書きを強引に押し付けるこのお方、
ううむ、妖怪の山以外に住む者からも見習うべきところはあるものだ。

「……本当にカレーだけなんですね」
「お品書きを用意する意味がないですね」
「じゃ、とりあえずカレー二つ」
「かしこまりました、店長! カレー二つです!」

それから程なくして、料理が二人分運ばれてきた。

「ほほう、これがカレーですか」
「う……これですか、匂いの元は……中々きついですね」
「椛は敏感ですからね、鼻とか、耳とか……ふふふ」
「妙な含み笑いは止めてください」

店内に充満する匂いはこの料理から発せられたもののようだ、
白米の上に濃い茶色の汁がかけられたこれがかれぇなのだろうか。

「ささっ、食べてみるのです」
「やっぱり毒見役なんですね」
「ほらほら、スプーンですよ」

どうせいつもの事だ、と溜め息を付きながら、
文様から手渡された匙にてかれぇをすくう。

「ううむ……」

未知の食べ物である、中々口へと運べない、しかし文様が見ているのだ、
私を目を瞑り、意を決してぱくりと食らいついた。

「……んっ?」
「どうしました!?」

それを含んだ瞬間、口の中に甘みがぶわりと広がった、
やがて一拍遅れてぴりっとした辛みが甘みの中から顔を出し、
咀嚼して飲み込めば、口から喉へとまろやかな後味がすっと突き抜ける。

「ふぅ……」
「も、椛?」
「……美味しい」
「へ?」
「かれぇとやら、美味しいです!」

たった一口で、私の匙は止まる事を忘れてしまった、
呆然と見つめる文様を他所に、かれぇを口へ運び続ける。

「はむっ、はふはふ、はふっ!」
「……わ、私も一口……」

文様からてーれってれー、とかいう妙な音が鳴った気がしたが、
その時の私はかれぇに夢中で気にする余裕などなかった。

「うまっ! ちょっ、これまじ美味い!」
「はふはふはふはふはふはふはふはふ!!」
「ほふほふほふほふほふほふほふほふ!!」
『ふはぁ……店長! おかわり!』

すっかり私はかれぇの虜、文様も見事にかれぇの虜、
腹がかれぇで埋まるまで一体何皿食べたことか。

「これは号外にすべきです! 急ぎますよ椛!」

やがて、文様の新聞によって幻想郷中にかれぇの美味さが伝えられるのに
半日とかからなかった、当然ながら私も新聞を配らされたわけだが。

「アリスー、カレーまだかー?」
「ああもう待ちなさいよ! 店が混んでるんだから!」
「お腹一杯……だけどまだ食べたい……けどお腹一杯……」
「幽々子様、いい加減にしてください」
「ああ、この味が懐かしいわ……」
「早苗、やっぱ日本人にはカレーだよねー」
「そうですね……って泣くほどの事じゃないでしょう神奈子様!!」

あれから一週間、今では店内の席の全てが埋まり、店の外にも行列が出来ている、
文様と私も半刻ほど待ち続けてようやく座る事が出来たほどだ。

「ふぅ、ようやく食べれますね」
「一日一回は食べないと落ち着きませんからね」

今日も私たちは期待に胸を躍らせてお品書きを開く、
いつものように真っ白なページの中央に、かれぇと小さく書かれたそれを、
別に毎度毎度開く必要はないが、わざわざ用意してあるお店への礼儀でもある。

「……あれ?」

だが私はその時気付いてしまった、
お品書きの右下の隅っこに小さく書かれた「辛ぇ!」という文字を。

「つ、つらぇ?」
「椛? どうしました?」
「いえ、お品書きの隅に辛ぇというものが」
「あ、本当だ……」
「とうとう気付いたみたいね!!」
『アリスさん!?』

今ではすっかり顔馴染みになったありすさん、
何やらぽぉずを決めて格好つけている。

「今日より始めた新メニュー、それこそが『辛ぇ!』よ!」
『か、かれぇ?』
「語尾はクエスチョンマークじゃなくてエクスクラメーションマークでお願いね」
「はぁ……それでアリスさん、この辛ぇ!と言うのは一体?」
「よくぞ聞いてくれました……辛ぇ!とは、その名の通り辛さを増したカレーのこと!
 しかもそれだけではないわ、なんと好きな辛さを選ぶ事が出来るのよ!」
「好きな……辛さを?」
「そう、最低レベルの1.5倍から、果ては百倍まで……辛さを求める方々の為に!!」

そういえば世には辛い食べ物を追い求める人が少なくない、
それにかれぇは辛さが美味さの重要な点を占めている、
とすればこのような一品が出てくるのもおかしくはない。

「さて、どうする? カレーにするか、辛ぇ!にするか」
「……椛」
「すみません、私は辛い物に強くはないので」
「私はカレーを、椛には辛ぇ!の3倍を」
「かしこまりました」
「文様っ!?」

心底恨みました。

「3倍辛ぇ!お持ちしました」
「う……」

ありすさんが運んできたそれは、明らかに普通のかれぇより匂いがきつく、
色もやや濃くなっており、私の視力にかかれば辛いのが一目でわかる。

「もみちゃんの! ちょっといいとこ見てみたい!」
「ふぬぅぅぅ……!」

文様が満面の笑みで私をせかす、まったくもって腹立たしい顔だ、
だが上司の命である、覚悟を決め、文様を恨みを込めた目で睨みながら、辛ぇ!を一口。

「……んむ?」

辛い、確かに辛い、だがそれは恐れるほどの物ではなかった、
むしろ今までのかれぇが物足りないと感じるぐらいの代物。

「(私、辛党だったのかなぁ)」
「どうです、椛?」
「あ、美味しいですよ」
「……そうですか」

平然と食べる私を見て、文様はがっかりしたような表情を浮かべる、
どうせ私が苦しむ様子を記事にでもする気だったのだろう。

「アリスさーん、私のかれぇはまだですかー?」
「あ、今持っていくわー」

遅れて文様のかれぇが運ばれてくる、私はそれを横目で見たとき、
ありすさんの顔が笑みで歪んでいるのが確認できた、
だが文様はそっぽを向いており、まだそれに気付いていない。

「はい、店長がいつも来てくれてるお礼に10倍辛ぇ!をサービスですって」
「はひっ!?」

すこし見知らぬ店長の事が好きになりました。

「あやややや! わ、私は普通のカレーで――」
「ドールズロック!」
「あやっ!?」

ありすさんが懐から取り出した人形で文様の手足を捕らえると、
すぐさま私のほうを振り向いてすぷぅんを指差す。

「も、椛、何とかしなさい!」
「分かりました、私がお口にお運びいたしましょう」
「あややー!? 裏切りましたね椛!」
「はい、あーんしてください、あーん」
「あややややややんもぐっ!!」

文様があやややと叫ぶ癖を狙って口の中へと辛ぇ!を放り込む、
顎を押さえて無理矢理咀嚼させること数回、文様の顔がみるみる赤くなる。

「か、辛ーっ!!」
「私利私欲の為にカレーを使うものは、カレーによって裁かれる運命なのよ」
「水っ! 水を!」
「水など飲ませはしないわ、崇高なるカレー神の怒りを思い知りなさい」
「はい、二口目です」
「むぐっ!」

日頃の鬱憤を晴らす機会とはこういう事を言うのだろう、
文様が10倍辛ぇ!を食べ終えるまでの間、私は悪魔の笑みを浮かべていたに違いない。

「あやややや……酷い、酷いです、椛に汚されちゃいました……」
「意外と余裕残ってますね」
「10倍完食っと、お店に記録として貼っとくわ、おめでとう」
「辛いってレベルじゃないですよ……って、記録?」
「ちょっとした催しでね、一番辛い辛ぇ!を食べた人の絵を飾るのよ」
「……はめましたね」

ありすさんはどこからか取り出した紙に
手際よく文様の似顔絵を書きはじめた。

「文句言うならこのはひはひ言ってる痛々しい顔で飾るけど?」
「文句は言いませんから普通の顔でお願いします」
「よろしい、二割美しく書いてあげるわね」
「うう、この私が後手に回るとは……」

そのままさらさらと似顔絵を書き終えると、
記録も添えて店内で一番目立つ場所に貼り付ける。

「どう? ちょっといい気分でしょ?」
「うーん……まぁ、悪い気はしませんね」

文様も記録として残されては記事として取り上げないわけにはいかない、
自らの新聞にこの事に関する事柄をのせ、大々的に辛ぇ!の宣伝を行う、
その効果があったのか、また私たちがかれぇを食べに来た時には、
文様の記録はあっさりと塗り替えられていた。

「あややー、15倍ですか……」
「やっぱり辛い物が好きな人はいますしね」

店内を見渡せば、普通にかれぇを食してる人に紛れて、
真剣な表情で辛ぇ!と向き合ってる者が数人。

「天人たる私に30倍を食す事など容易いわ!」
「総領娘様、普通のカレーでいいではないですか……」
「50倍を食べきってあたいが最強な事を教えてやるわ!」
「チルノちゃん、明らかにやばい匂いがするよ!」
「とりあえず現実的に20倍でいってみましょう」
「師匠、何か企んでません?」

やはり記録に残るとなれば心をくすぐられる者は少なくない、
彼女等はそれぞれが選んだ辛さの辛ぇ!を、躊躇する事無く口に運ぶ。

「辛っ!! 何これっ!!」
「ぎゃーっ!! 口が燃えるーっ!!」
「う……!」

そういえば、幻想郷に辛い食べ物はあんまり無いなーと、
三者三様の苦しみを見せる彼女達を見て思う。

「じゃあ私たちは普通のカレーにしますか」
「そうですね……ん?」
「おや?」

そして私達がかれぇを注文しようとした時、
店の入り口から、なにやら威圧感のようなものを感じ取った。

「妖夢、百倍の辛さとは如何なるものかしら?」
「辛さを決める香辛料の量が百倍に増えた、ただそれだけの事でございましょう」
「ふふふ……ならば今日、西行寺家の名は幻想郷中に響き渡るわね」

西行寺幽々子、冥界の姫のお出ましだった、
以前にこの店で何十皿もかれぇを積み上げていた様子を見た事があるが、
今日のあの方の雰囲気は今までとは違う、それはまさしく上に立つ者としての風格。

「……ご注文は?」
「辛ぇ、百倍よ」
「……かしこまりました」

何のためらいもなく百倍を注文する冥界の姫に、
店内の他の客からは驚きの声が上がった。

「……うっ!」
「椛?」

やがて、厨房から流れてくる香辛料の匂いが一際強くなり、私の鼻を刺激する。

「こ、これは……食べ物といえるレベルなのか!?」
「椛が匂いだけでここまで怯むとは……百倍辛ぇ!とは一体……?」

私達と他の客が見守る中、厨房からありすさんが辛ぇ!を持って出てきた、
そしてお盆の上に載せられた辛ぇ!を見た客達は、次々に顔をしかめる。

『(あ、赤い……!)』

その赤さ、例えるならば地獄の業火、
その存在、例えるならば地獄の番犬。

「百倍辛ぇ!お持ちしました」
「(これが……辛さの最高峰……!)」
「ふふふ、いい勝負が出来そうね」

西行寺家の主はそれを前に不敵な笑みを浮かべ、従者は冷や汗を垂らす、
冥界の姫の威圧感と、辛ぇ!の威圧感が混ざり合い、大気を歪めていった。


 ―――――


思えば、私は不甲斐ない主だ。

「幽々子様、私があなたの剣となりましょう」

私の十分の一も死んでいない従者は真っ直ぐに私を見てそう言った、
その心は私よりも遥かに強く、その目は私よりも遥かに真っ直ぐで。

「幽々子様、私があなたの盾となりましょう」

いつかは妖夢の忠義に報いたいと思っていた、
だけども私に出来る事は、考えるほどに無くなっていく。

「幽々子様が剪定などなさらないでください」

妖夢の仕事を手伝おうとすれば、木を根元から断ってしまった。

「幽々子様が料理をなさる必要などありませんってば」

ならばと腕を振るってみても、妖夢は喜んでもくれずに戒められて。

「幽々子様はご飯だけ食べていればいいんですよ」

迷惑をかけても尚、妖夢は私の楽しみである食事を常に満喫できるようにしてくれて。

「あまり近寄らないでもらえます?」

されど妖夢は私の邪魔にならぬよう、常に私から距離を取っていた。

「私の視界に入らないでください、修行の邪魔です」

頑なに主と従者の関係を守り続ける忠義の士、
常に私の為にその心身を捧げ続ける最愛の僕。

「(食べきってみせる……妖夢、あなたの為にも!)」
「あ、私は普通のカレーで」

唐辛子ならば食したことはある、妖夢がおやつにと鷹の爪をよく持ってきてくれた、
だがこの辛ぇ!は確実にそれの何十倍も辛いと見ただけで分かる。

「妖夢、私の生き様をしかと見届けなさい!」
「死んでるでしょうに」

赤い悪魔、そう例えるのがぴったりなこの食物、
だが私は怯まない、何故なら私は紅い悪魔に二度勝利した女なのだから。

「いざっ!」

私と悪魔の戦いが今始まった、悪魔の身を切り取り、
私の口の中へと運ぶ、やがて崩れた赤が私の舌の上に広がった。

「……っ!!」

辛い、まるで口の中で不夜城レッドを放たれたような辛さが襲い掛かってくる、
舌だけではない、辛さは頬も喉も、そのすべてを焼きつくさんと暴れまわる。

「ふ……ふぅっ!」

だけども……我慢できぬ辛さではない、僅かに耐えた瞬間に飲み込む事が出来た、
そして僅かに耐えれるという事は、無限に耐えれるということ。

「はぁ……はぁ……」
「諦めたほうがいいんじゃないですか?」
「大丈夫よ、勝ち目は見えたわ……あなたの忠義に報いるためにも、私は食べきってみせる!」
「(……報われないなぁ)」


 ―――――


からん、と匙が乾いた音をたて、何も無い皿の上に落ちた。

「ご馳そっ……様で……した」

業火の残り火を口の中に残しながらも、冥界の姫はその優雅さを崩す事無く
両手を合わせて辛ぇ!に別れの言葉を呟いた、その精神力、感嘆せざるをえない。

「百倍完食おめでとう、新記録達成ね」
「ふ……ふふ……妖夢、見てくれた……? 私、やったわよ……」
「とっくに代金置いて帰ったわよ?」
「……ねぇ、私って……妖夢に嫌われてるのかしら……ぐふっ」

前のめりに力なく倒れこむ冥界の姫、
ありすさんが寸前で皿を抜き取る事で二次災害は回避できたが、
記録を達成したとは思えぬ悲哀の気に、同情が漂う。

「しかし百倍ですか、これほどまでに早く最高記録達成者がでるとは……」
「意外とあっけなかったですね」

これで記録達成者としてあの冥界の姫の顔が飾り続けられるだろう、
私はそう考えた、しかし、直後にその浅はかな考えは覆されてしまった。

「アリスさんアリスさん! 百倍を完食された感想はどうですか?」
「どうってことないわね、まだ上があるし」
「どうってことない、まだ上がある、と……はいっ!?」

そう言ってありすさんは不敵に微笑んだ。

「明日また来なさい、店長の本気が見れるわ」
「は、はぁ……本気、ですか」

店長の本気、というかどこに本気を出す余地があるのだと疑問に思う、
しかしその本気を文様はいち早く確かめたいのか、翌日は開店前に連れてこられる始末。

「……なんですかこれ」
「さぁ……これが本気とやらでは?」

そこで見たのは店の戸に貼り付けられた一枚の紙、
それには店長の本気とやらが文字となって書かれていた。



     ご苦労だった・・・と言いたいところだが、

         君等には死んでもらう。
 
         貴様等は知らんだろうが

  我が千倍の辛ぇはここで完成と言う終焉を迎える

    これから貴様等はなんの手助けも受けず、

          ただひたすら、死ぬだけだ。

     どこまでもがき苦しむか見せてもらおう。


           死 ぬ が よ い

                               』

「そんな……百倍であれだったものが、千倍なんて……!」
「単純比にして十倍……死人が出かねない!!」

文様と私の背に戦慄が走る、今日よりこの店内は本物の地獄と化すだろう、
その光景を思い浮かべると、私達の足は自然と店から遠のき始める。

「……今日は帰りましょうか」
「そうですね」

その日は大往生が開いてから初めてかれぇを食べない日となった、
舌をよぎる香辛料の味を堪えながら私は普段通りの職務をこなす、
文様も必死に耐えながら、冥界の姫と千倍辛ぇ!の記事を書いていた。
今思えば、この日の新聞の発行を止めることが、
惨劇を回避する最初の機だったのかもしれない。

「あやや……これは一体どういうことです?」

翌日、いち早くかれぇを食べんと大往生の前に来てみれば、
開店前だというのに前日以上の人だかり。

「紅魔のメイドオブパドゥーに八雲のナインテールテンコー、
 永遠亭のフルオートザヤッカーに加えて冥府のマスターオブサボタージュまで……」
「何ですかその妙な通り名は」

文様が驚愕の形相を浮かべているが、どうにも私には伝わってこない。

「あらマヨヒガの狐じゃない、何でこんなところにいるの?」
「これはこれは紅魔の狗、そちらこそ何故ここに?」
「千倍を食して主の名声を高めるためよ、あなたと違って主思いでして」
「そうか、すまない、お前も苦労してるんだな」
「えっ……うん、分かってくれるのね……」
「私も紫様になぁ……はっはっは」
「目が笑ってないけど」

狗と狐は仲が良いようだ、むしろ同情というものだろうか。

「酷いもんだよ、ちょっとサボってただけなのに罰として千倍とかさ」
「私も香辛料のデータが欲しいからとほぼ毎日辛ぇですよ……」
「……あまり辛いもの食べ過ぎると大変だって聞くけど?」
「トイレが怖い……」
「よーく分かった、それは大変だ」

どうもこの四人を見るために野次馬が萃まっているようだ、
確かに狗と狐と兎と死神が店の前に立っていれば興味もわく。

「はいはーい、今開けるわー」

ありすさんが店を開き、最初にあの四人が、続いて文様と私が店に入る、
集まってきていた人達はどうやら外から覗くだけのようだ。

「あら、昨日は来てくれなかったから心配したのよ?」
「ああすみません、仕事があまりにも溜まっちゃって……」

文様がありすさんと会話をしている間に、私は店内に先に入った四人を探す。

「……千倍、ね」
「橙も私に期待してくれてるんだ……」
「座薬……言ってくれればすぐに処方できるから」
「昨日ぐらい真面目に働くんだったよ……」

いた、というか四人で同じ卓に付いている、その光景を見て私はすぐに理解した、
彼女達は今この時より戦友なのだと、同じ死地に向かう仲間であると。

「面白そうな光景ですねぇ」
「補給物資の一つでも差し上げたい気分です」

文様はその様子がよく見れるよう、通路を挟んですぐ隣の席に座った、
程なくしてありすさんがお冷を運んできた。

「辛ぇ!を千倍で」
「辛ぇ!の千倍を」
「辛ぇ!を今日は千倍で」
「……千倍で」
「辛ぇ!千倍を四つですね、かしこまりました」

お冷が置かれたのを確認するや否や、お品書きも見ずに注文を飛ばす四名、
ありすさんはそれを手際よく受け取ると、くるりと回って私達のてぇぶるにお冷を置く。

「あなた達も千倍?」
『カレーで』
「かしこまりました、けど残念ね、是非とも味わって欲しかったのに」
「あれはちょっと……辛いのは苦手ですし」
「そう、それは残念ね、ちなみに昨日は二十二人が挑戦したわ」
「……結果は?」
「言わなくてもわかるでしょう?」

厨房に去っていくありすさんの姿を見届け、文様と顔を見合わせる、
共に合掌し、挑戦した二十二人の往生を祈りながらお冷を一口。

「きゃうっ!!」
「わっ! 汚い!!」

突然猛烈な刺激が私の鼻を襲った、
少し遅れてそれが強烈な香辛料の匂いだと気付く、
間違いなく匂いの元は厨房からである。

「一体どうしたというんですか?」
「は、鼻がいきなりつぅんと……!」
「……千倍ですか」
「多分そうです……」

鼻を押さえてうずくまっていると、何か複数の視線が私に突き刺さる、
ちらりとその方向を横目で確認すれば、どうともいえぬ表情で四人がこちらを見ていた。

「匂いだけであれってどういうことよ」
「うっ、私も鼻が……!」
「逃げちゃ駄目だ逃げちゃ駄目だ逃げちゃ駄目だ逃げちゃ駄目だ」
「……恨みますよ四季様」

どうやら私のせいでさらに追い込んでしまったようだ、
だが私は悪くない、悪いのはこの店の香辛料だ。

「千倍辛ぇ!お持ちしましたー」

来た、台車を押して悪魔の食物がやってきた、
その赤さは百倍をも遥かに凌いでいる、もはや地獄すら超えたか。

「……なにこれ、食べ物?」
「気をつけるんだ、どうやらご飯も香辛料で炒めてある」
「先に胃薬飲んどいたほうがいいですよ、どうぞ」
「おお、ありがたくいただくとするかい」
「お冷撤収しまーす」
『ええぇぇぇぇ!?』

死神が胃薬を飲もうとお冷に手を伸ばした瞬間、
それを横から回収するありすさんの残酷な右手。

「み、水無しで食べろというの?!」
「しっかり書いてあったじゃない、何の手助けも受けずって」
「確かに書いてあったが……私たちに死ねと言うのか?」
「死ぬがよい、とも書いてあったはずだけど?」

これは酷い。

「あややや……水無しは辛いですよ」
「死の宣告ですね」

四人がちらりとこちらに助けを求めるような視線を送ってくる、
それと同時に私達の卓に置かれるかれぇ、いただきます、ごめんなさい。

「んふっ! おふっ!!」
「んぅっ!! しふぁがっ!!」
「……たふけてひひょう……」
「もう……にろとさふぉるふぉんか……」

ああ、かれぇがおいしいなぁ。

「お嬢様……あなたにお会いできて、私は幸せでした……」
「しっかりしろ! まだ三口しか食べていないぞ! それでも紅魔館のメイドかーっ!!」
「体内の辛み成分が限界量を超えました、超えましたコエマシタコエ……」
「ウェイトレス!! この兎を早く手洗い場にっ!!」
「あがががががががががががが……」
「小野塚小町ー!! もうさぼっていい! さぼっていいんだ!!」

かれぇ美味しい美味しいよかれぇ。


 ―――――


紫様、あなたに仕えてもうどれくらいの時が過ぎたでしょうか、
あなたとの思い出の数々が、私の頭の中に鮮明に浮かび上がります。

「すべてはこの藍が悪いのです、藍が天狗を逆恨みして起こした事ですわ」

一緒に妖怪の山に攻め入って暴れまわった事がありましたね、負けましたけど。

「飲み比べですって? 面白いじゃない……藍、負けたら許さないわよ?」

鬼と酒で勝負した事もありましたね、後で肝臓を壊しましたよ。

「私は先に地球に帰ってるから、後始末はお願いね」

月との戦争も昨日のように思い出せます、生身で大気圏は大変でした。

「幽々子!? これは違うのよ! 藍が勝手にあなたのお菓子を食べたの!」

美味しい金鍔を共に味わった事もありましたね、その後の記憶がありませんが。

「満月は返してもらうわよ、さあ藍、頑張って叩きのめしなさい!」

霊夢と三人で満月を取り返しにもいきましたね、私一人でよく勝てたと思います。

「藍……幻想郷中に私の名声を高めるために千倍を完食してきなさい!」

これは昨晩のことか、新聞を片手に輝いた目で言い放ってくれましたね。

「明日の予定は三十分ほど空きがありますが、一ヶ月ぶりの睡眠に当てる時間でして……」
「そういえば、橙ちゃんは元気にしてる?」
「……はぁ、元気にしておりますが」

紫様は近頃、私の式である橙をよく気にかけてくださる、嬉しい事です。

「はしゃぎすぎて、怪我とかしないといいんだけど」
「猫ですから着地はお手の物ですよ」
「ほらでも、いきなりどこかから弾幕が飛んできたりする物騒な世の中でしょう?」
「猫ですから回避はお手の物ですよ」
「電車に轢かれて死ぬ猫って稀にいるのよねぇ」
「……千倍ですね」
「そう、千倍よ、藍ったら分かってるじゃない」

しかし私の主たる紫様に私の式を心配させるわけにはいかない、
これ以上橙のことを思わせるよりは、早めに頷いておくべきだろう。

「では、私はまだ仕事が残ってますゆえ」
「期待してるわよ?」
「……応えてみせましょう」

その時の紫様のこの世の物とは思えぬ微笑が、頭にこびりついて離れません。

「――はっ!? そ、走馬灯……?」

いけない、あまりの辛さに意識が飛びかけていたようだ。

「くぅ……水が欲しい」
「良かった、生きてたのね」
「……咲夜か、お互い無事なようだな」

対面では咲夜が汗だくの状態で椅子に寄りかかっていた、
そして尚も口の中では香辛料が鬼神の如く暴れまわり私を苦しめる。

「鈴仙はお手洗いから帰ってこず、小町は失神……残ったのはあなただけ」
「私だけ?」
「ごめんなさい、私はもう限界……後は任せたわ……」
「咲夜!? 咲夜ぁーーー!!」

なんたることだ、とうとう生き残ったのは私だけになってしまった、
私一人でこの殺舌兵器と戦わねばならないというのか……。

「負けない……私は負けない! 負けるわけにはいかないんだ!!」

すでに半分は食した、ならば完食できぬ理由は無い、
スプーンを掴みなおし、反逆の意思を示す口に辛ぇ!を放り込む。

「うぐ……ふっ……」

だが辛ぇ!は強かった、ラストスペルに突入した私の体力を容赦なく削り取っていく。

「うう……」

手は震え、握力も落ち、スプーンを今にも落としそうになる、
だが私は自らの尻尾で手とスプーンを巻き付け、無理矢理に辛ぇ!を食べ続けた。

「……くっ、視界が……」

しかし視界が揺らぎ始める、もう限界なのか、
ここで終わりなのか、あと三口分も無いというのに……。

「意識を失っては駄目です!」
「――はっ!?」

この声は鈴仙?

「そうだよ……何かは知らないが、やるべきことがあるんだろう?」
「こま……ち?」
「せめて、あなたに応援だけでも……」
「咲夜……まで……」

三人の応援を受け取った途端、あれほどぼやけていた視界が鮮明になる、
右手に握力が戻り、体に僅かながら力が戻ってくる。

「藍さん!」
「藍!」
「八雲の!」

皆の応援が温かい、だが今のこの状態でも精々あと一口が限界だろう、
ならば取る手段は一つしかない、八雲藍一世一代の大勝負だ。

「皆……一つだけ、聞いてくれないか?」
「何を今更……水臭いわよ」
「この耳でしっかりと聞き届けますよ!」
「さあ、どんときな!」
「私、この辛ぇ!を食べきったら……橙と一緒に喫茶店をはじめるんだ」

それは昔からの夢だった、紫様の式を引退し、長年溜め続けた開業資金で
人里に小さな小さな喫茶店を開く、マスターは私、ウェイトレスは橙、
懐かしの知人達と和やかに語り合い、物静かな雰囲気を楽しんで。

「……うぉぉぉぉぉ!!」

だから私は最後の賭けに出た、三口弱の辛ぇ!を口に放り込み、
飲み込む事が出来るか、それとも飲み込む前に体力が尽きるか、
私は飲み込む事が出来るほうに賭けたのだ、その結果は――。


 ―――――


「……藍? しっかりして! 藍っ!」
「尻尾が枯れ始めてる! 一刻も早く永遠亭に!」
「ウェイトレス! 千倍完食だ! 文句はないだろうね!!」
「……ないわ、早く連れて行ってあげなさい」

三人に抱きかかえられて八雲の式が店を後にする、
彼女が食べつくした皿が、狐火色に光り輝いて見えた。

「くっ!!」
「あやっ!?」

それにただならぬ反応を見せたのが店員のありすさんだった、
彼女は握りこぶしで卓を叩き、悔しそうな表情を浮かべている。

「ど、どうしたんですか?」
「あっ……いや、なんでもないわ、気にしないで」

ありすさんは慌てたながらも皿を台車に載せて厨房に姿を消した、
当然ながらその行動に文様と私が何かを感じないわけがない。

「椛、どう思います?」
「……何故ただの店員であるありすさんが悔しがる必要があるのか、ですね」
「その通り、そして私達はこの店の店長の姿を一度も見ていない」
「客の対応はすべてありすさん一人で行われている、つまりは……」

文様と私は席を立つ、向かう先は決まっている、厨房だ、
しかし何故文様が私の後ろに隠れているのかは相変わらずの疑問だ。

「……ここが厨房か」

厨房の入り口から首だけを突っ込んで中を覗く、
そこは清潔に保たれてはいたが、やはりかれぇの匂いが一際強く鼻にくる。

「さあ早く中に!」
「押さないでくださいよぉ」

文様に押されて厨房に踏み入る、何かの煮える音以外は何もしない、
ありすさんの姿もないが、店の奥に人影らしき物を見つけた。

「あれは……店長?」
「いましたか?」
「……はい、ですが人形のようです」

それは精巧に出来ていたが私の目は誤魔化せない、
ただひたすらに大鍋をかき混ぜているそれに生命の色はなかった。

「予想通りというわけですか」
「……やっぱり、気付いたのね」
「っ!」

厨房の陰からありすさんが唐突に現れる、
彼女は軽く右手をかざすと、店長の人形が床に倒れた。

「そう、私こそが大往生の店長よ」
「何故その事を隠していたんです?」
「……怖かったのよ」

ありすさんはふいと顔を背けながら語り続けた。

「幻想郷がカレーを受け入れるのかどうか、半信半疑だったもの」
「ではもし受け入れられなかった時は……」
「あなたの考えてる通り、その人形をスケープゴートに消える予定だったわ」

床に倒れたまま動かない人形を見つめ、ありすさんは悲しげな表情を浮かべる。

「何故、カレーの店を開いたのですか?」
「……そんなの決まってるじゃない、カレー好きだからよ!!」

文様の問いに一転、ありすさんの口調が強まる。

「一日カレー! 三食カレー! 朝昼晩カレー! 毎食カレー! カレーこそ至高の食物!!
 魔界から幻想郷に移り住んだ時に私は愕然としたわ! 何故カレーが存在しないのかと!!
 だけど無い物は無いのよ! だから私はひっそりと一人でカレーを食し続けた!
 しかしある日魔理沙は私にこう言ったの、お前、独特な匂いがするな、ってね!!」
「は、はぁ……」
「当然のことよね、カレーは幻想郷に無かったもの、香辛料の匂いなんか誰も知らない、
 だから私はその日以来カレーを食べる事を止めた、何年もの間我慢し続けた!!
 しかしそれももう限界! けどその時私は気付いたのよ……自分で広めればいいと!!」
「成る程、そんな経緯が……」
「やはりカレーに間違いは無かったわ! 幻想郷のほぼ全ての人妖がカレーを受け入れた!
 そう、カレーこそ全ての食物の頂点に立つべき存在! カレーこそ世界を救う!!
 ビバ・カレー!! ハイル・カレー!! カレー・ノーレッジ!!」

段々と狂気じみた気配がありすさんを包みはじめる、
一体どこまでカレーに心を奪われているというのか。

「しかし幻想郷の住人はその崇高なるカレーの領域を汚そうとしている!!
 彼奴等は百倍どころか千倍ものカレーを食しきってしまった!!
 カレーがカレーである為の辛さという領域を幻想郷の者達は侵略し始めたのだ!!
 これはいかんともし難い出来事である! ならば私に出来る事は何か!!」
「あの、アリスさん? 人格変わってません?」
「そう! ならばより辛いカレーを作ればいいのよ!! 誰も踏み入る事の出来ない領域を!
 より濃くより強い香辛料を!! 一心不乱の激辛を!! そして全ての人妖はカレーの前に
 ひれ伏して生きるの!! それこそが真の平和! 何故ならばカレーこそが全ての生命の
 源にして終点なのだから!! カレーを崇め! 讃え! 求めよ!! されば救われん!!」
「文様、今の間に逃げましょう」
「そ、そうですね」
「そもそも偉大なるカレーの歴史を紐解けば二十七億年前、まだ地球が――」

演説に陶酔しきっている間に私達は厨房からの脱出を試みる、
しかし出口まであと一歩というところで文様が急に倒れこんだ。

「待てぇぇぇゐ!! 射命丸文ぁぁぁぁ!!」
「ひぃぃぃ!! 何なんですか!! 何なんですかあなたはぁー!!」
「三日後! 三日後よ! 私は三日後までに新たなる辛ぇ!を作り上げる!!
 その事を新聞で幻想郷全土に告知しなさい!! わかったわね!?」
「分かった! 分かりました! ですから離れてください顔を近づけないでください!!」
「(息を切らしながら迫るありすさんとそれに襲われる文様、うん、中々の構図だなぁ)」

この出来事から三日間、かれぇ屋『大往生』は臨時休業となっていた、
しかし約束の今日、文様の新聞の効果もあいまってか、
まだ朝も早い頃だというのにいつもの何倍もの客が開店前から列を成していた。

「椛、待たせましたね」
「……なんで私が丸一晩も並び続けなければならないんですか?」
「場所取り、列取り、買出し、これら全ては部下としてこなすべき仕事です」
「文様と私の部署は違う筈ですが」
「白狼天狗以下は全て私の部下も同然です」
「……わふん」

このお方は無駄に長生きしてるから性質が悪い、
しかも強さも兼ね備えている者だから口出しできる者も限られる、
それでいて部下を店の前に一晩中立たせ続けるという部下使いの悪さ、
ああ、何で私だけがこんなにもこき使われなければならないのか。

「で、何か変化はありましたか?」
「先程ありすさんが店の前にこんな看板を立てたぐらいですね」
「ほうほう、どれどれ?」



      千倍辛ぇ!は鎮圧された
    水でも飲んで十分休んでくれ……
      と、言いたいところだが、

    カレーの未来をより輝けるものに
      するために、私は今日から
      新たな倍数を築くことにした。

      さしあたり貴公らには私の
    獄滅極戮香辛料と戦ってもらおう


     涙と鼻水の覚悟はよろしいか?

                           』

「……予想通り千倍を超えてきましたか」
「店の前に立ってただけで鼻が利かなくなりました、これ労災おります?」
「それはあなたの上司に聞いてください」

じとりとした目で文様の後頭部を見つめながら開店を待つこと一刻、
とうとうかれぇ屋『大往生』に営業中の立て札が掲げられた。

「いきますよ椛!」
「ですからなんで私が前なんです?」

ぐいぐいと背中を押されながら店に一歩立ち入る、
三日前のありすさんの様子から何か変な事になっていないかと考えてはいたが、
店内は初めてここに来た頃と特に変わってはいなかった。

「いらっしゃいませ、お席のほうへどうぞ」

ありすさんもいつも通りの応対をし、私達を案内してくれた、
取り越し苦労ということか、と安心しながらもメニューを開く。

「……あややや」
「これは……」

メニューにでかでかと書かれた一万倍の文字、間違いなく辛ぇ!の新たな倍数である。

「千倍であれだったのに一万倍……辛ぇ!はどこまで進化する気なのでしょう」
「進化とはいいますが、これって食物としては退化してません?」

一万倍など明らかに食べ物の領域ではないと私は思う、
ありすさんにかれぇを注文する頃には店内は並んでいたお客で埋まりきっていた。

「一万倍!」
「こっちも一万倍だ!」
「一万倍を四人前」

威勢の良い声で飛び交う一万倍の声、文様の新聞に引き寄せられた猛者か、
それとも何も知らずに注文している無知ゆえの馬鹿なのか。

「ぎぇぇぇぇぇぇぁぁぁ!!」
「痛っ!! 辛いというか痛っ!!」
「はーっ! あーっ! あぁー!!」

客の悲鳴を音楽にしてかれぇをもくもくと食す、
気付けば一皿食べ終えた頃には全ての客が死屍累々と。

「一万倍、食しきれる方は出てくると思います?」
「私の部下の白狼天狗がきっと食べてくれるでしょう」
「それは無理ですよ……むっ!?」

その時だった、店の空気が激変し、入り口からとてつもない威圧感が私に襲い掛かる、
何事かと座りながら振り向けば、羽根を生やした幼き少女が仁王立ちしていた。

「ククク……」

れみりあ・すかぁれっと、紅魔館の主自ら部下の敵討ちにでも来たのだろうか、
奴は不敵な笑いを浮かべながら席に座ると、そっとお品書きを指差す。

「一万倍ですね、かしこまりました」
「ククク……」
「あやや、これは予想外ですね、まさか紅魔館の主が直々にお出ましとは……」

やがて辛ぇ!が目の前に運ばれてきても、その笑みを崩すことはない、
優雅な手つきで匙を持つと、見下すような表情で一口。

「……ククク」
「一万倍の香辛料に動じない?! さすがはレミリア・スカーレット……!」

まったく不敵な態度を崩さない吸血鬼の姿に文様が驚愕の表情を浮かべていた、
しかし私は何か違和感が見える、というか羽根が小刻みに震えている。

「ククク……」
「せ、席を立ち上がった?」
「ククク……!」
「そのまま店の入り口に……?」
「クククッ!」
「外に……出た? 何をするつもりなんでしょう?」
「ククク……!!」
「と、飛びました! どこかに飛んでいきましたよ椛!」
「帰ったんでしょう」

最後まで己を崩さなかったあの執念、あれこそがかりすまの源なのか、
しかしながらこの行動には一つだけ問題点がある。

「これって食い逃げですよね」
「……紅魔館の主、白昼堂々食い逃げと、いい記事になりそうです」
「逃げたくなる気分も分からないでもないですが……」
「おらっしゃぁー!! 一万倍持ってこーい!!」
「あや?」

いつの間にか来店していた新たな客の声が会話を遮る、彼女もまた一万倍を食すようだ、
頭の両側から飛び出る大きな角、間違いない、奴こそかつて妖怪の山で名をとどろかせた鬼。

「伊吹萃香が来ましたか……果たして鬼と辛ぇ!はどちらが強いのか!」
「うっし! 今日はカレーで酒が飲ぼぁっ!!」

一撃だった、たった一撃で鬼の口から酒が勢いよく溢れ出し、小さな虹を作る、
伊吹萃香に体の構成物質とまで言わしめる酒を噴き出させたのだ、何という破壊力か。

「うべっふ! おえっ!! 何じゃこりゃ!? 口が痛ぇー!!」

口を押さえながら逃げるように去っていく鬼、
明日には炒った大豆や鰯の頭に加えて、かれぇも弱点に含まれていることだろう。

「さて、カレーでもおかわりしますか」
「そうですね」

あまりの店内の惨状に外の客も事情を察したのか、
それ以降誰一人客が入ってくる事は無く、私達がかれぇを食べる音だけが響く。

「藍をどこにやったのぉぉぉ!!」
『ぶふっ!!』

しかし唐突にあの方は現れた、幻想郷の賢者が一人、八雲紫だ。

「いらっしゃいませ」
「いらっしゃいませじゃないわ! 私の藍を返しなさい!!」
「そう申されましても、当店はお客様の行方までは……」
「しらばっくれないで!! この店のカレーで藍に一体何をしたの!?」
「辛ぇ!を食されただけですが」
「御託はいいから早く藍を……らぁぁぁぁん!!」
「あの……お客様……」

八雲紫が視線を向けた先には千倍完食と書かれた八雲藍の記録が貼ってある、
しかしそれを剥ぎ取って号泣するのはさすがに異常だと言わざるをえない。

「ああっ、藍! こんなところに閉じ込められているなんて!!」
「それは私の手書きですが……」
「すぐに……すぐに私が出してあげるから……ウェイトレス! 早く一万倍を持ってきなさい!!」
「一万倍ですか?」
「そうよ! 私が記録を更新すれば藍はここから出てこれるんでしょう!?」
「あの、ですから……」
「早く持って来なさい!!」
「……かしこまりました」

明らかに目が逝ってしまっている、どれだけ式を溺愛しているのだろうか、
文様は文様で写真を取りっぱなしだ、このままでは取材もしかねない。

「お待たせしました、一万倍辛ぇ!です」
「藍……こんな変わり果てた姿に……」

辛ぇ!を前にしても意味不明な言葉を呟きながら泣き続ける八雲紫、
悲しみながらも匙を手にとると辛ぇ!を掬い上げる。

「藍の仇ぃぃ!!」

あの方は突如叫びだしながら辛ぇ!を口に運んだ、
しばらくそのままの体勢で停止し、文様も私も生唾を飲んで見守る。

「……ウェイトレスさん、代金、ここに置いておくわね」
『諦めたぁーーーっ!?』
「藍、さようなら、あなたとの思い出は永遠に私の中に……」

そのまま八雲紫は何処かへと姿を消した、薄情な主もいるものだ、
喫茶店を開こうとした八雲藍の気持ちがよく分かる。

「結局、完食者は無しですね……」

誰もいない店内を見て文様が溜め息を付く、文様と私が合わせて九十四皿目のカレーを
食し終えた時には、閉店時間まであと四半刻と迫っていた。

「もう誰も来なさそうですね、あと一回おかわりして帰りますか」
「文様……すみません……私はもう限界です……」
「あや? 何を言うんですか椛、まだあなた三十皿程度しか食べてないじゃないですか」
「どうやったら文様の体に私の倍以上のかれぇが入るのか疑問なんですが……」
「まったく、それでも山を守る白狼天狗のはしくれですか、情けの無い」
「……わふん」

鴉天狗の文様の身長はどう多く見ても五尺強である、対して私の身長は七尺強、
白狼天狗は男女問わずその程度の背を有しているのだ、そして体格すなわち食事量、
なのに積み上げた皿の数を見ると文様の方が倍以上多いのは明らかに天狗の仕業に違いない。

「いらっしゃいませー」
「おや、まだ来ますか」

文様が六十五杯目のカレーに手を付けたとき、とうとう彼女は現れた、
赤い長髪と大陸の衣装が特徴的な紅魔館の門番である、名前は覚えていない。

「あ、すみません、辛ぇ!の一万倍もらえます?」
「かしこまりました」

彼女は席に着くとひょうひょうとした顔で一万倍を注文した、
それどころか待つ間に鼻歌を奏でるほどの余裕まで浮かべている。

「さすがは幻想郷我慢大会覇者……その風格はまさに王者というに相応しいですね」

文様が冷や汗を浮かべながら解説者に変貌し始めた、
ここからが文様の本領発揮である。

「おまたせしました、一万倍辛ぇ!です」
「(これが一万倍……お嬢様、完食せよとの命、今果たします!!)」


 ―――――


「ククク……」
「え、辛ぇ!の一万倍を完食してこい、と? はい、お任せください」


 ―――――


「ごちそうさまでした!!」
『早ーっ!!』

それはほぼ一瞬の出来事だった、門番は皿を持ち上げると一気に口に掻き込み、
まるでただのかれぇを平らげるようにあっさりと食べつくしたのだ、
その突然の出来事に、文様や私どころかありすさんですら驚いていた。

「か、完食した感想は!? 辛くなかったのですか!?」
「感想ですか? そうですねぇ……期待はずれですかね」
「期待はずれっ!?」
「確かに辛かったですけど、辛いだけですし」
「辛いだけっ!!」
「それも対したこと無かったですし」
「対したことない!?」
「唐辛子を貪ってるのとなんら変わりなかったですよ」
「唐辛子ぃぃぃぃ!!」
「ありすさん、落ち着いてください」

文様の取材に答えている門番の言葉に壊れたかのように叫ぶありすさん、
やがて門番が店を去った時、彼女はがっくりと膝を落としてうなだれた。

「あのー、アリスさん、完食された側としての感想は?」
「…………」
「アリスさーん?」
「……帰って」
「え?」
「お代はいらないから……帰って」
「アリスさん? どこに行くんですか? アリスさーん!!」

呼びかける文様を無視し、ありすさんは厨房へと姿を消す、
文様はそれでも後を追おうとするが、私は腕を掴んでそれを止めた。

「帰りましょう、今はそっとしておいたほうが……」
「離しなさい! 誇りある新聞記者として取材しないわけにはいきません!」
「ですが……」
「しつこいですねぇ! いいですか! そもそも新聞というのは――」
「カルァァァァァ!! 門番風情がぁぁぁぁ!! スパイシャァァァァァ!!」
「情報をいち早く……」
「命の方が大事でしょう」
「そうですね」

厨房の奥からはひっきりなしに悲鳴と怒声を併せたような叫びが聞こえてくる
もし文様を止めなければ今頃酷い目に遭っていただろう、
むしろ止めないほうが良かったのかもしれないと考える私は不埒者か。

「カレーの神よ!! ゴッドカリーよ!! 力を! 究極の香辛――」

店の戸を閉じると共にその声もぴたりと聞こえなくなった、
しかし最後の言葉から考えるとさらなる辛ぇ!を作り出す気なのだろうか、
そんな悪い予感が頭をよぎる、そして翌日、その予感は現実への道を少しずつ進んでいた。

「やっぱり閉まってますね」
「あややや……一晩たてば取材できると思ったんですがね」

臨時休業のお知らせと書かれた紙が店に張り出されている、
すなわちこれは新たな辛ぇを作っている証拠にも等しい。

「一万倍の次は十万倍とでもでっち上げますかね」
「さすがに三万倍程度でしょう、十倍はいくらなんでも……」

それから三日が過ぎた、店は開いていなかった、
さらに四日が過ぎた、それでも店は閉じたままだった、
加えて七日待ち続けた、しかし店はその戸を閉ざして開かない。

「自宅にもいませんし、アリスさんどうしてしまったんですかねぇ」

店の前で文様が心配そうに呟く、無理もない、かれぇの記事が新聞の売り上げを
倍近く押し上げていたのだ、誰よりもかれぇの復活を待ち望んでいた事だろう、
されどもそれから一月も立てば文様の頭からもかれぇは消え、
かれぇの事を覚えているのは私だけだと思えるぐらいになっていた。

「(また食べたいなぁ……)」

妖怪の山から人里を見下ろし、あの辛みを少しだけ思い出す、
こみ上げる唾を飲み込めば、出てくるのは溜め息ばかり。

「口惜しい……ん?」

その時だった、何やら人里から立ち上る黄色い煙が目に入る。

「火事にしてはおかしい……」

煙が天に昇らない、それどころか人里を包み込まんと周囲に広がっている、
やがて私の目は人里から必死に逃げ出す人と妖怪達の姿を捉えた。

「……異変か!?」

それは後に香辛料異変と呼ばれる出来事の幕開けだった。

「慧音さん! 一体何があったんですか!!」
「はぁはぁ……か、か、か」
「蚊?」
「辛いぃーー!!」
「辛い!?」

異変の元に駆けつけた文様と私は人里の守護者を見つけて状況を聞いた、
しかし守護者は目と口を押さえてうめき続けるばかり。

「一体あの煙には何が……ううっ!!」
「文様!?」
「こ、この匂いは……もしやカレー?!」

徐々に煙が迫りくる中、文様は突如鼻を抑える、
やがて口から飛び出したのはなつかしの言葉。

「かれぇですか?」
「椛、あなたならわかるでしょう、この香辛料の匂いが!」
「すみません、まだ鼻が治ってないようです」

見渡せば異変を見に来た他の妖怪達も皆一様に鼻を抑えている、
怪我の功名ではあるが、あまり褒められた状況でもない。

「文様、しばしお待ちを」

鼻が効かないのならばと私は煙に近寄る、
傍で見れば、それはあまりの濃さにうごめく壁のようにも見えた。

「(色は確かにかれぇっぽい……)」

巻き込まれぬよう右手を最大限伸ばし、煙に触れる、
そっと掌の空間に煙を取り、手元に持ってきて確かめる。

「(煙より雲に近いな)」

それが散ったあと、掌に残る黄色い粉、
匂いでそれを判別する事が出来ない私はそれを舐めて確かめる。

「……辛ぁっ!!」
「椛っ!? 大丈夫ですか椛!!」
「だ、大丈夫です! 今戻ります!!」

わずかに掌についた粉ですら脳天に突き抜けるようなこの辛さ、
人里の者達が逃げ出すわけである。

「文様、かれぇです、あの煙はかれぇの粉で構成されています」
「かれぇの粉!? まさか……」

文様と私の脳裏に浮かぶのは、もちろんかれぇ屋『大往生』の姿と。

「アリス」
「まぁがとろいど」

その店の店長の姿だった。

「間違いないですね……」
「ええ、間違いようもないでしょう……」
「――違うわね」
「えっ?」

二人で犯人を断定した時だった、かれぇの煙の中から女性の声が響いてきたのだ。

「私はすでにアリス・マーガトロイドじゃないわ」
「……アリス、さん……?」

やがて煙の一部がすっと開き、中からありすさんがゆっくりと姿を現す。

「私はゴッドカリーに認められしカレー十二辛将が一人! アリス・カレートロイドよ!!」
「カ、カレー十二辛将……?」
「そうよ、カレーへの愛を神に認められし十二人のカレーの伝道師、それがカレー十二辛将」

むしろかれぇの神とやらが実在していた事に驚きを禁じ得ない。

「すでに人里は私の手に落ちた……あなた達に残された道はカレーに従う道のみ」
「アリスさん! あなたは何故こんな事を!」
「あなた達がカレー神の誇りを汚したからよ、一万倍、それはカレーの聖域、
 恐れるだけでよかった、見上げているだけでよかった、でもあなた達はそこに踏み込んだ、
 荒らし、食いつくし、汚し……そう、これは天罰! ゴッドカリーの怒りなのよ!!」
『(無茶苦茶すぎる!!)』

もう私にはありすさんの言ってる事が何一つ理解できない。

「このままいけば、七日後には幻想郷をカレーが支配するわ、
 あなた達がどう抗ってもカレーの前に屈するだけよ」

ありすが私達に背中を向け、煙の中に消えようとすると停滞していた煙がまた少しずつ
膨張を始めた、まるで紅霧異変の時のように幻想郷を侵略する気なのだ。

「そうは……させんぞぉ!!」
「慧音さん!?」
「食らえ! 天地粉砕ヘッドバッドォ!!」

直後、その隙を狙って人里の守護者がありすに跳びかかりその頭を振り下ろす、
しかしその攻撃は届かない、かれぇの煙がありすを纏い、それを受け止めたのだ。

「無駄よ、カレーの力は絶大にして絶対、如何なる力を持ってしても
 この私にかすり傷一つ負わせることは出来ないわ」
「貴様……!」
「……もしあなた達がカレーの支配を拒むのならば、私の店に来て私が作り上げた
 究極の辛ぇ!を完食するのよ、それならば私も負けを認めざるを得ない」
「くそっ……完食すればいいんだな……?」
「そうよ、究極の辛ぇ!こそが私の力の源……ただし、できるものならだけどね」

やがてありすは完全に煙の中に消えた、香辛料異変、
それはたった一人の妖怪によってもたらされた破滅の危機だった。


 ―――――


「因幡隊! 防カレースーツの装着はできた!?」
「イエスうさー!!」

人里の外れ、香辛料異変対策本部に白い防護服に身を包んだ兎達が一列に並ぶ、
指揮を取るのは永遠亭の薬師、一糸乱れぬ統率で着々と準備を進めていく。

「駄目だ、マスタースパークが全然通用しない」
「あんたのそれでも駄目なのね、一体どういう煙なのよあれ」
「さあな、だが唯一ついえるのは……人や妖怪程度でどうにかできる物じゃないってことだ」

少し離れた位置では異変の解決に乗り出した者達が
意見を交換し合い、どうにかして突破口を見出そうとしている。

「霊夢、四重結界だけでも煙を防ぐ事は出来そうよ」
「私の結界は必要ない?」
「そうね、私のだけで何とかなりそう」
「アリス……あいつは一体どうしちまったんだ?」
「そんなの私に聞かれても分からないわよ、でも今なら……まだ間に合う」
「……そうだな」
「紫様、幽々子様は大事な用の為、この異変を解決にはこれません」
「用ねぇ……妖夢、危険すぎるから木の幹に縛り付けてきたって正直に言ってもいいのよ?」
「さて何のことでしょうか」

博麗霊夢に霧雨魔理沙、そして三人目はあの庭師
八雲紫は店までの道を確保する役割か。

「ククク……」
「お任せくださいお嬢様、必ずや異変を解決してお嬢様のご威光を広めてみせましょう」
「あや、来てくれましたか幽香さん」
「べ、別に向日葵畑まで煙が来たら困るから来ただけよ!」

我慢大会の覇者の門番に幻想郷でも屈指の実力者の風見幽香、
どうやらこの五人で辛ぇ!を完食しに向かうようだ。

「あんた達、道案内頼んだわよ」
「お任せください、しっかりと案内させてもらいますよ、椛が」
「わおん」

やはり案内役は私である、確かに店の位置を完璧に把握しているのは
ほぼ毎日通っていた文様と私に限られるのだが……。

「と言いたい所ですが、椛、あなたは外で待ってなさい」
「えっ?」
「私も久々に辛ぇ!を食べたくなったのですよ、だからいくのは私一人で――」
「お断りします」
「……椛?」
「散々私を連れまわしたんです、こうなれば地獄までとことん連れまわしてもらいますよ」
「これはお願いではありません、命令です」
「私も久々に命令違反をしたくなったんです、ですから行くのは二人一緒にです」

そう言い返すと、文様はそれ以上は何も言わなかった、
溜め息を付いて俯くと、私の胸に顔をうずめてくる。

「危険だと思ったらすぐに引き返すように、いいですね?」
「……はい」

結局、文様と私を含めて七人と救助を担当する兎達とでの突入となった、
壁の様な煙の前に揃い立ち、その光景を他の者達が心配そうに見つめる。

「さあ、結界を張るわよ、皆動かないで」
「一体何が出てくるか、わくわくしません?」
「いや、かれぇしか出てこないでしょう」
「……四重結界!!」

結界が各々の体を包むように張られる、
互いに目配せをし、文様を先頭に私達は一斉に煙の中に突入した。

「皆離れないで! 私の後ろに続いてください!」

煙の中は殆ど視界がない、案内役の私達がいなければ
店にたどり着くのはまず不可能と言ってもいいほどに、
その為に距離感が狂わぬよう普通に歩くほどの速度で人里の上を飛ぶ。

「この煙が全てカレーかよ……」
「文、まだつかないの?」
「もう少しです、この通りの半ばに……」

そして店にある程度近づいた時、急に煙が晴れた。

「なあ、店ってあれか?」
「……多分、そうなんじゃないでしょうか」

私達の視界に映ったのは奇妙な建築物だった、
大きく、異国風であり、屋根には大きな玉ねぎのような物が付いていた。

「タージマハルじゃねーか、アリスの奴、カレーのイメージ間違えてるな」

たぁじまはるが何なのかはよく分からないが、
大往生と書かれた看板が掲げられているので、店には間違いない。

「なによ大往生って、一体何を往生させんのよ」

ああ、どうやら考える事は巫女も妖怪も一緒のようだ。

「それじゃ、中に入りますよ」

文様を先頭に店内へと入る、中の様子はまるで様変わりしており、
私たちを出迎えるように大きな円卓が店の真ん中に鎮座していた。

「……出迎えの準備は万端ってか?」

円卓の上に並べられたいくつものかれぇ、恐らくあれが新しい辛ぇ!なのだろう、
そして私達の真正面、円卓奥中央の椅子に異変の元凶は座っていた。

「果たしてここまで来たのね、腹立たしいまでに優秀じゃない、
 だけどもっとも望ましい形に進んできているのはとても愉快ね」
「ふーん、最初から私達を纏めて始末して、のんびりと幻想郷を制圧……ってところかしら?」
「いい度胸じゃない、辛ぇとやらを完食されて涙目にならなきゃいいけど?」

気圧される事無くおもむろに風見幽香が席に着く、続いて巫女達も、文様と私も続いて着いた、
そのまま全員でありすを見つめるが、彼女はそれを受け止めてなお不敵に微笑む。

「私の幻想改窮素敵計画はあなた達の強い命を以ってついに完遂されることになる、
 いよいよもって死になさい、そしてさようなら」

ありすが手を振ると、人形達が匙を各々の元へ運ぶ、
勿論水はない、助けてくれるものなどありはしないのだ。

「皆さん、今から私が辛ぇ!に挑戦します、どんなものか……しかと見ていてください」
「文様……?」
「椛……後は任せましたよ」
「お、お止めください! 文様ぁぁぁ!!」

それは突然の事だった、しかし文様は最初からこうしようと考えていたのだろう、
自らを犠牲に敵の強さを、辛ぇ!の恐ろしさを皆に見せるつもりだったのだ、
そして私が止める間もなく、文様は辛ぇ!を自らの口に放り込んだ――。


 ―――――


「お止めくださいと……文様っ……!」

私は文様を一撃で屠り去った目前の辛ぇ!をみて奥歯を噛み締める、
止めるべきだった、外にいる時に力ずくでも止めるべきだったと後悔がよぎる。

「ふふ、さっそく犠牲者が一人……」
「ありす……貴様ぁ!」
「丁度いいわ、この辛ぇ!の倍数を教えて差し上げましょう……16億よ」
『っ!?』

16億、その言葉に私達は全員が凍りついた、
十万倍どころではない、桁どころか位が違う。

「カレーの形をした16億の香辛料、それがこの辛ぇ!の名よ」
「……ふ、ふん、何が16億倍だ、所詮はカレーだろ、こんなの……」

その倍数を聞いてもなお動いたのが霧雨魔理沙だった、
彼女は匙の先端に辛ぇ!をわずかにつけるとそれを口に運ぶ。

「ほらな、全然たいした事な――」

それが彼女の最後の言葉だった、白目を剥き、床へと落ちる、
匙の先端に付く程度の極少量でその意識を、魂を粉砕したのだ。

「魔理沙、あなたって本当に馬鹿ねぇ、こんなのまともに食べなきゃいいのよ」

次に行動を起こしたのは風見幽香だ、彼女は持ってきた傘の先端を辛ぇ!に向けると、
妖力を放ち、辛ぇ!を焦がし始めたのだ。

「完食すればいいんでしょう? たとえ極僅かな燃えカスでもね」
「……幽香」
「何よ? 何か文句あるの?」
「無いわ、だけど……カレーを馬鹿にしたものにはカレーの制裁が下るわよ」
「制裁? カレーがいきなり立ち上がって私を殴るとでも言いたいわけ?」

その時、ぴちっという音と共に辛ぇ!が跳ねた、そして皆が見守る中、
飛び散った辛ぇ!は意思を持つが如く風見幽香の目へと入り込む。

「――あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「……カレーの制裁よ」
「あぁぁぁあぁ!! ああああああ!! あぁぁぁーーー!! いああぁぁぁぁ!!」

口に入らなかった事が逆に仇となったのだろう、風見幽香は気絶する事が出来ず、
ただひたすら激痛に襲われ、できる事は転がり続けることだけだった。

「半霊に食させればダメージははんぶっ!!」

続いて冥界の庭師も倒れた、16億倍を半減したところで
どうにかなるという物でも無かったのだから。

「…………」

巫女はいつの間にか死んでいた、もしかしたら誰よりも先に死んでいたのかもしれない、
それほど静かに、呻き声一つ立てず、いつもの表情のまま巫女らしく死んでいた。

「最強の敵、ですね」

とうとう残ったのは私と門番だけになってしまった、
救助隊の兎達も絶望の表情で私達を見る。

「……幻想郷我慢大会優勝者紅美鈴、その忍耐力……今こそ生かすとき!!」

そして紅美鈴と辛ぇ!の死闘が始まった、
紅美鈴は辛ぇ!を口に放り込むとしばしの後、一気に顔を赤らめる、
同時にとてつもない量の汗が体中に浮かびあがってきた。

「(強い……なんという辛さ……!)」

それでもなお咀嚼を続け、辛ぇ!を粉砕し続ける、
すでにあまりの発熱に汗が蒸発し、湯気すら浮き立っているというのに。

「(だが耐えれる!!)」

やがて紅美鈴はごくりと辛ぇ!を飲み込む、
誰もが舌に乗せただけで粉砕されたそれを食物として扱いきったのだ。

「飲み込めましたよ! そして飲み込めたという事は食しきれるという事!!」
「あら、果たして本当にそうかしら?」
「ふ……この辛ささえ耐えれば……ぐっ!?」
「紅さん!?」

突然苦悶の表情と共に紅美鈴はうずくまった、
喉と腹を押さえ、呻き声を上げながらもありすを睨み付ける。

「うぅ……アリスさんこれはっ……ぐぅっ!!」
「辛さを耐え切った? 甘いわね、辛ぇ!の洗礼は舌だけじゃない」
「喉が……ああっ……胃が……!!」
「辛ぇ!は全てを焼き尽くす、そう、あなたの体内ですら!!」

紅美鈴の体が床へと崩れ落ちる、六人目の脱落者が兎達に運ばれていく、
それを見送るのは私だけ、すなわち最後の一人となった。

「いよいよ、私の番ですね」
「椛、あなたがそれを食べる前に一つ話があるんだけど」
「……何でしょう?」
「もしここで食べなくてもいいと言ったら……あなたはどうする?」
「どういうことですか?」
「カレーに忠誠を誓いなさい、そうすれば幻想郷を支配した後にそれなりの権力をあげるわ」

信じられない提案だった、彼女は私に幻想郷を裏切れと言ってきたのだ。

「どう? お望みなら妖怪の山全てをあなたにあげてもいいわ」
「何故、そのような事を私に?」

ただのしがない白狼天狗、それが私である、強いわけではない、
すぺるかぁども使えない、なのに何故か、その疑問を問うてみる。

「あなたがカレー好きだからよ」
「……私が?」
「そう、あなたは間違いなく幻想郷で私に次ぐカレー好き、
 あなたのカレーに対する思いはどれだけ離れていても私に伝わってきたわ、
 皆がカレーの事を忘れても、あなたはカレーを忘れたことは無かったはず」

ありすの言葉を否定することは出来なかった、
私はかれぇ好きだ、それは認めざるをえない。

「だからこそあなたにはゴッドカリーに従う資格がある、
 さあ選びなさい、偉大なるカレーと生きるか、幻想郷と共に死ぬか!」
「お断りします」
「なっ……!?」

しかし私はその誘いに乗るわけにはいかない。

「正気!? ゴッドカリーの寵愛を拒むというの!?」
「ここでそんな誘いに乗ってしまえば倒れた他の六人に示しがつきません、
 そして何よりかれぇ好きだからこそ! その提案は飲み込めない!!」
「なんですって……?」
「私はかれぇを食べたときその美味しさに感動した! また食べたいと思った!
 かれぇとは食物! 食す者を満たす物! 支配するためにあるのではない!」
「な、何を戯けた事を!」
「ありすまぁがとろいど! これがお前の望むかれぇなのか!?
 かれぇにひれ伏して生きる世界がお前の望む世界なのか!?」
「……っ!!」

かれぇと妖怪、そして人は共存して生きていくものだ、
かれぇが私達を満たし、そして私達がかれぇを広める、
それがかれぇの本来あるべき姿ではないのか、共に満たしあうべきではないのか。

「お前の望む世界は間違っている!! かれぇとは……優しくて暖かい物なのだから!!」
「違うわ! カレーとは絶対にして至高の存在!! それを否定すると言うのなら!
 その言葉を押し通したいと言うのなら……私を! 辛ぇ!を食い倒してから言いなさい!」
「私はあなたを止める! かれぇ好きとして同じかれぇ好きのあなたをここで救ってみせる!」
「戯言ね!! 私はすでに救われている!!」
「いいや! あなたはかれぇの妄執に囚われているだけだ!!」

そして私は右手で自らの匙を掴み、辛ぇ!と正対した。

「すでにこの辛ぇ!の弱点は見えている……それは五秒の時間差!!」
「……時間差ですって?」
「この辛ぇ!は食物として想定外すぎる辛さ、食した側も辛い物だと舌が認識するまでに
 きっかり五秒の時間差がある、ならばその五秒で食しきればいい!!」
「ハッ! 五秒で食しきるですって!? そのスプーン一つで!? それこそ不可能よ!!」
「いいや、一つではない! 私の左手には文様の残した匙がある!!」
「なっ……二刀流!?」
「妖怪の山が自警団員! 白狼天狗犬走椛! 参るっ!!」


 ―――――


からんからんと、銀の匙の奏でる音が戦いの終焉を告げる。

「……終わったのね」

白狼天狗が兎達に運ばれていく、アリスはそれを最後まで見届けると、
紙とペンを手に取り、絵を描き始めた。

「16億倍完食、おめでとう」

書き上げた白狼天狗の似顔絵をそっと店の壁に貼る、
そして米粒一つ残っていない皿を見て、アリスは何故か幸せな気分に包まれた。

「(……そうよね、間違っていたのは私)」

されどそれ以上に彼女を襲うは後悔。

「(私はただカレーを受け入れてもらいたかっただけなのに……どうしてこんな事を……)」

どこから道を踏み外したのだろうか、しかし記憶を思い返しても、もはや意味はない。

「うっ……ぐっ……!」

アリスは泣いた、声を押し殺して、一人で静かに泣き続けた。

「ぐすっ……泣いてる場合じゃない、わね……けじめは、ひくっ、付けなきゃ……」

泣きに泣いた後、アリスは立ち上がり、涙を拭き取る、
そのまま歩を進めて向かう先は厨房、香辛料異変の元凶地。

「ありがとう椛、あなたのおかげで……私は救われた」

アリスの前にある小さな鍋の中には、半分ほどに量を減らしたカレーがあった、
それは彼女の目からすれば、自らの醜悪さを形にしたものにも見えただろう。

「私利私欲の為にカレーを使うものは、カレーによって裁かれる運命か……皮肉ね」

そしてアリスは熱さをものともせずにそれを持ち上げると、そっと口元へ運ぶ。

「(願わくば……カレーが幻想郷から消えることのありませんように……)」

やがて鍋が落ち、少女が倒れた時、香辛料異変は終わりを迎えた――。





        朝カレー お昼にカレー 夜カレー

        おやつはカレー 夜食もカレー

               アリス・マーガトロイド




.
ええ、こんなに長くなるとは思ってもいなかったのですよ、
さくさく進んでましたので、作品数が30~40の頃に投稿できると思っていたんです、
しかしアリスさんがはっちゃけました、ええ、私は悪くありません、
別に私がカレー好きだからとか、ゴッドカリーを崇拝してるとかは関係ないんです、
アリスさんがはっちゃけたのが悪いんです、月を隠したのもkb数を倍にしたのも全部アリスさんの仕業なんです、
ですからカレーを食べましょう、カレーを食べれば世界は平和になるんです、ビバカレー!

ちなみに自分はLEEの30倍を辛いではなく美味いと感じる派です。

~隠しフラグ成立一覧~
・お嬢様が全裸である事がばれました(10)
・作者が大往生好きなのがばれました(18)
・実は幻想郷にすでにカレーがあることがばれました(22)
・やはり七尺弱にすべきでしたか(57)
・アリスがオトコノコだったのを指摘されました(69)
・PADOU拳!(100)
・もうやめて! 作者のライフはとっくに0よ!(126)
・豪ルガゆか!豪ルガゆか!(131)
・消、耐、悶、吹、しっくりこなたん(135)
幻想と空想の混ぜ人
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コメント



0.9390簡易評価
2.100七氏削除
読んでたらカレー食べたくなった作品でした。
我慢出来そうにないからちょっとココイチ行ってくるwwwwwwwwwww
4.100あjfぁ削除
むちゃくちゃ笑わせてもらいましたw
6.100名前が無い程度の能力削除
ハウスばーもんどかれ~♪

いやはや笑かしてもらいましたw
10.100名前が無い程度の能力削除
最後の短歌w

あとレミリアはシュール系4コマ仕様ですかね?w
13.100名前が無い程度の能力削除
ちょっと長くてだれました。悪ノリしすぎという気もします。
それでも100点なのはきっとアリスが悪いんでしょう。
明日ココイチで10辛に挑戦してみようと思います。
15.100名前が無い程度の能力削除
OK、作者とはカレーについて一晩語り明かせそうな気がするんだ。
カレーライスLOVE! 点数は同士への手向けだ、受け取れ!
16.100名前ガの兎削除
何か間違ってる
いや、これは全部おかしいぞwwwwww
どっからこんな発想でてくるんだ!100点
18.100名前が無い程度の能力削除
冒頭で、タイトルの意味が理解出来た時点で全ての予測を放棄した。
せーの、これはひでええええええええええええ!!!
椛は緊急開腹手術。間違いない。
ホント大往生好きだなアンタ愛してる
22.100名前が無い程度の能力削除
カレー好きとしては100点を入れざるを得ないw
タイトルで狼と香辛料のパロかと思ったのに、見事に騙されましたw
後、無粋ですが最後に一つ。……幻想郷には普通にカレー有りますよ?東方香霖堂の3話で霊夢が言ってました
24.100名前が無い程度の能力削除
無駄に感動してしまった。
25.100名前が無い程度の能力削除
22.のセリフは真実だ(確認した)。が、それでもこの話が素晴らしいことに変わりわない。
ってーかもういろいろ突っ込みどころありすぎて何が何だかwwwwwwww
レミリアが終始「ククク・・・」とアカ●笑いしかセリフがなかったとか、ほかの5ボス6ボスEXボスクラスのやつらが食えないものを何でみーりんは食えたのかとか、
そもそもタイトルがあってるけど「狼と●●料」を予想していたらとんでもないとか、
スクロールバーが何でこんなにちびっちゃいのとか、羅列したらキリがないほどのネタ満載っぷりはもはやノーベル賞ものだと感じましたw
・・・主従関係がひどい?そんなんギャグ東方じゃ珍しくもなんともな(スキマ送り
26.無評価25.追記削除
そうそう、この作品に限り、アリスの声はシエr・・・じゃねぇや、知恵r・・・でもない。折笠富美子さんがC.V.ですね。
28.100謳魚削除
椛っちゃんがカッコ良かった。
只それだけで良い。
でもアリスさんはCV:佐久間紅美嬢でもオッケイかと。
31.100名前が無い程度の能力削除
ココイチ5辛で涙目になった俺が通りますよ
やっぱカレーはちょっと辛いくらいが一番うまいと思うんだ
LEEの30倍はまだうまいの領域だけど
しかしカレーはいい…今日の昼もカレーにしよう
36.80名乗ってもしょうがない削除
長いはずなのに冗長さを感じない。主人公は椛!

しかしいろいろひどいもとい巧いwww しばらくカレー食ってないなぁ。
37.70名前が無い程度の能力削除
カレーの凄まじさを知りました。
あと、なにげにみょんひでえ。
45.100名前が無い程度の能力削除
なんなんだこの話はwwww
さすが美鈴、中国なだけあって辛さには強い。あれ?中国?韓国?
そして果たして椛は生きてるのか…。…よく頑張った!立ち絵無き椛!
46.80名前が無い程度の能力削除
カレーの王○様、美味い!
53.100Unknown削除
こういうノリ大好きですよww
たまにはみ〇き先輩のことも思い出してあげてください…まぁ私も知○留を思い付きましたが(笑)

16億を食べた反応が生々しくてよかったですw(何
56.無評価名前が無い程度の能力削除
やっぱりコーポさんのレミリア仕様かwww
どうでもいいけどカレーハウス大往生って、カレー好きとしてはリアルにあったら絶対入ってみたい店名だな。
57.100名前が無い程度の能力削除
カレー怖ッ!!私もうカレー食えないよ!

>対して私の身長は七尺強
でけえ!椛でかいよ!!
58.100名前が無い程度の能力削除
犠牲者多過ぎwww

アリスもまた被害者の一人・・・なわけないな、うん。加害者だ。
60.80名前が無い程度の能力削除
アホすぎる。何がありすと作者をここまで駆り立てたんだろうw
ところで十二辛将アリス・カレートロイドさんは
私の好物であり既に市民権を得ている納豆カレーを認めるのでせうか?
62.無評価名前が無い程度の能力削除
16億とかwww本家のスコア並みの辛さじゃねえかwww
63.100名前が無い程度の能力削除
↑点数入れ忘れましたごめんなさい
65.90名前が無い程度の能力削除
死 ぬ が よ い
67.100名前が無い程度の能力削除
ちょっとカレーくってくる
68.100名前が無い程度の能力削除
ところどころの王道ネタが笑えた
69.100名前が無い程度の能力削除
いいアフォさでしたw
カレーは辛くても通用するがカレーライスは美味くないとならない。
アリスはそこを忘れてしまったんです。
いやな……事件だったね……なわけはない。
そういやサラリと書かれてましたがアリスはウェイターとのことですが、ウェイトレスでは? いやアリスが実はオトコノコとかそれはそれで。
70.80名前が無い程度の能力削除
次回作はラーメン魔神で。
72.100名前が無い程度の能力削除
バカアリス!カレーとはただ辛いだけのものではないわ戯けが!
面白いからちゃんと100点入れるけどね
74.100名前が無い程度の能力削除
読んでるだけで汗が出てきた。
75.90名前が無い程度の能力削除
ギャグだよね?
ギャグなのに何故こんなにかっこいいんだwwww
77.100てるる削除
あほカッコイイギャグSS

・・・新ジャンル!?
78.100名前が無い程度の能力削除
怒首領蜂吹いたw
79.100亜虎削除
大往生の時点で既にネタには察しがついたけど、
……この後にデスレーベルがありそうで怖い。
82.100名前が無い程度の能力削除
最初見たとき、えっ!?てなりましたが、少し読んで納得しましたw

私はリアルに四倍でカレーが嫌いになりかけました
84.100名前が無い程度の能力削除
勝手に想像
カレー十二辛将
ナツメグ カルダモン シナモン クローブ ローレル ジンジャー 
ガーリック ターメリック コリアンダー クミン ブラックペッパー アリス・カレートロイド

作中のキャラも皆それぞれいい味出してますね(うまくない)
85.100名前が無い程度の能力削除
いやあ、痛快にも程のあるバカ話をありがとうwwwwww
つかLEE30倍って……うp主もおかしいwww
90.100名前が無い程度の能力削除
なんだこのカレー食いたくなるSSはw
椛かっこよすぎるぜw
99.100名前が無い程度の能力削除
アwwwwwwwwwwリwwwwwwスwwwwww
100.90名前が無い程度の能力削除
実にどうでもいい事だと思うが、"パドゥー"の意味が解らず、それが気になってしょうがない。
excite辞書さんに"PADOU"で聞いてみても、見つかりませんと返答されたし。
102.90名前が無い程度の能力削除
これは素晴らしいアホさとかっこよさwwwいいぞ、もっとやれwwwwww
103.無評価名前が無い程度の能力削除
って今調べたら一尺30cmだから椛2m越え!?
105.100名前が無い程度の能力削除
すばらしいノリでした。椛かっこいいよ椛。

パドゥーは咲夜さんが胸に入れてるパッドのこ…ピチューン
116.100ぱるー削除
ココイチの十辛ですら相当きついと聞くのに…
暴君ハバネロを最初に食べた時、腸とアレが大ピンチになったのを思い出したのに…

それじゃLEEの30倍買ってきますね
120.100名前が書けない程度の脳力削除
このアリス、どこの知恵先生ですか! あほらし過ぎて、もはやこの点数をつけざるをえないwww
とりあえず今日はココイチにカレー食いに行くことにします。
123.100水鏡削除
ご苦労だった。見事な働きである。
モニターに茶を吹いたところで
ここから私が新たに茶を淹れなおすことにした。
諸君らの仕事はここまでだ。

とまぁ、盛大に吹かせていただきました。今からカレー食ってオーラ撃ちしてきますww
124.100名前が無い程度の能力削除
実家近くのインド人が経営してたカレー屋思い出した
辛かったなあ
125.100名前を表示しない程度の能力削除
いくら辛さが来るまできっかり5秒あったとしても、いくらスプーン二刀流だとしても
どうやったら5秒で食いきれるんだよwwwww
あと一尺30cmなので
>五尺強である、対して私の身長は七尺強→やはり七尺弱にすべきでしたか
文が最小150cmであるのに対して椛が最大210cmwwそりゃでかいよww

とりあえずカレーがないので作り置きのハヤシを食べてきますね。
……あれ、宅急便でも届いたかn(アーティフルサクリファイス
126.100猫翔削除
自分が食べられないものを作っちゃ駄目だよありーす。
椛のかっこよさに感動。

誤字っぽいものと、
紫様、あなたに使えてもうどれくらいの時が過ぎたでしょうか
意味が通ってないっぽいものです。
「命よりは大事でしょう」
127.100名前が無い程度の能力削除
我が故郷も、カレーの街を自称するなら、これくらいやってほしい。
130.100名前が無い程度の能力削除
タイトルからそっちのネタかと思ったが……良い意味で裏切られた
131.100名前が無い程度の能力削除
>PADOU拳!
貴様!某動画を見ているな!
134.100名前が無い程度の能力削除
カレーにふぐ刺しが入るのかと思いましたが、流石にそれはありませんでしたね。

あと、某大佐が大鍋かき混ぜてるとこ想像して吹いてしまったw
135.無評価名前が無い程度の能力削除
あと、誤字……ではないんですが↓

>ご苦労だった・・・と言いたいところだが、君等には死んでもらう。

「消えてもらう」が正しかったかなぁ、と。
意図して変えたのであればすいません。あと細かくてすいません。
136.100マイマイ削除
バーカバーカwww
140.100名前が無い程度の能力削除
ボリウッド・バーナー
145.100ルル削除
タイトル見て把握、出来ませんでしたよええ(笑)

そういえば最近カレー食べてないな……ジャワ辛口でも買ってきますか。
146.100雨四光削除
文、魔理沙、幽香、妖夢、霊夢、美鈴、椛……計七人。
当然一人一人前な訳なので、鍋の中が半分ほどに減ってたってことは……
アリス、16億倍辛ぇ七人前完食!?
まさかと思うけどただ満腹で倒れた訳じゃないよね?
16億倍食べて平気だった訳じゃないよね!?
150.100名前が無い程度の能力削除
湯島デリーのカシミールカレーで舌がもげるかと思った私には恐ろしすぎる・・・。
151.100名前が無い程度の能力削除
カレー十二辛将の内訳が気になる今日この頃
面白かったです。
152.無評価名前が無い程度の能力削除
カレーの形をした16億に吹いたww
最高の馬鹿だよアンタ(←ほめ言葉)

カレーを食って大往生をプレイしたくなった、まったくどうしてくれるww
154.100名前が無い程度の能力削除
従者たちが最高でした!!GJ!!
だがなぜアリスなんだ?
156.100名前が無い程度の能力削除
おもしろすぎる
160.100名前が無い程度の能力削除
どうしたら、こんな狂った発想が出てくるのかさっぱり分からない、
「あー、はいはい、狼と香辛料の東方パロね、はいはい」と読み始めたら
中身はカレーと怒首領蜂ネタに溢れた、狂った物語でしたというww

作者の脳みそにはカレーが詰まってるんじゃね?と本気で思ったわ

面白かった、最高だ
167.100みゃ削除
わふん、っていう椛が可愛かったです
175.100名前が無い程度の能力削除
CoCo壱の十辛ですら、攻撃的なのに16億倍だと!?

これは死ねるな。

そして面白かったぜ、あんた最高だ!!
176.100三文字削除
シュバルリッツ・ロンゲーナ大佐吹いたw
そして藍しゃまの死亡フラグとジャンプ的展開でさらに吹いたw
さて、明日はカレーにするか。
177.100名前が無い程度の能力削除
ここまで来ると東方でやる意味がw
でも腹抱えて笑ったw
178.100名前が無い程度の能力削除
面白かったです。
ちなみに、わたしはココイチの3倍カレーでいっぱいいっぱいです。
10倍とかもはやカレーではない何かだと思う。
180.100名前が無い程度の能力削除
妖夢ひでえwww
182.100名前が無い程度の能力削除
こんなとこで怒首領蜂ネタに会えるとわw
184.100名前が無い程度の能力削除
> 「カレーに忠誠を誓いなさい、そうすれば幻想郷を支配した後にそれなりの権力をあげるわ」
> 信じられない提案だった、彼女は私に幻想郷を裏切れと言ってきたのだ。

腹 が よ じ れ て 涙 が 出 た
上記のセリフを登場人物に真面目に語らせることができるあなたを本気で尊敬していますwww
186.100名前が無い程度の能力削除
こんな夜中に思わずレトルトカレー開けちまったよwwあなたとアリスのおかげで

藍は橙と無事喫茶店を開けたのか。それだけが、気がかりです。
188.100有風削除
面白すぎ。
タイトルからは、想像できない狂いっぷりでしたwww
198.100MOT削除
緋蜂様www緋蜂様じゃないですかwwwwww
うあああトラウマが(ガクブル)
と、ともかく楽しませていただきましたw
199.50名前が無い程度の能力削除
内容は愉快である。楽しく読ませて頂きました。


でも俺はバーモンド中辛で汗が出るので-50点
200.100名前が無い程度の能力削除
良かったです。最後の短歌に吹いたw。これは毒殺なのですかね?w
203.90名前が無い程度の能力削除
こういうのは本当に好き。
中々笑いが止まりませんでした。殺す気か。
207.80名前が無い程度の能力削除
なんだこれwww
208.100名前が無い程度の能力削除
よし、カレーを食べよう。
211.90名前が無い程度の能力削除
だめだわらいしぬ
219.100名前が無い程度の能力削除
正 に 恐 悦 至 極
220.100名前が無い程度の能力削除
辛味ってのは、実は“痛覚”だと聞いた覚えがあります。
ショック死するんじゃないだろうか、人間だと。
まさに「死 ぬ が よ い」
223.90名前が無い程度の能力削除
>そして僅かに耐えれるという事は、無限に耐えれるということ。
密かに片岡さん何やってんのw
230.100七人目の名無し削除
笑い死ぬかと思ったwww
こんな作品があったとは……創想話は奥深いな。
235.100名前が無い程度の能力削除
まさに死ぬがよいwwwwwwwwwwww
緋蜂様ご降臨にくっそ吹きましたwwww
カレーって美味しいよね!
236.100名前が無い程度の能力削除
本当に、本当に

恐怖でした。
237.90名前が無い程度の能力削除
そうだ、カレーだ。
241.100名前が無い程度の能力削除
はらぁ、へったなぁ・・・
245.100名前が無い程度の能力削除
ドール繋がり…?
策士やら国家権力最強説のレストラン?
249.100名前が無い程度の能力削除
そうだ、カレー食おう
254.100名前が無い程度の能力削除
涙でた……
259.100名前が無い程度の能力削除
椛と一緒にカレー食べたい
261.無評価名前が無い程度の能力削除
真緋蜂・改 撃墜記念に見に来ました。
点はもう入れてるのでフリーですが。
263.無評価名前が無い程度の能力削除
なんでかしらないけどある日急に読みたくなります
まさにこの作品こそカレー
点数はもうつけてしまったので残念ですがフリーレス
266.100名前が無い程度の能力削除
最初にこの作品を見たのは確か数年前。今でもしっかりと記憶に残る、そして今一度見て確信しました。
これは何度見ても飽きない名作だと。椛に乾杯、そして貴方の笑いのセンスに乾杯!
273.100名前が無い程度の能力削除
物凄い大爆笑させていただきました!!!
最初に読んで大笑い、冷静になって大笑い、あとがきを読んで大笑い!
・・・・貴方は我々を笑い殺す気ですかw
275.100名前が無い程度の能力削除
カレー食いたい
282.100名前が無い程度の能力削除
トンカツ乗っけてな
287.100油性削除
俺は半熟の目玉焼きを
292.100名前が無い程度の能力削除
この黄色いフグ刺し状のカレー弾幕・・・
ゆ っ く り と 食 す が よ い
296.100名前が無い程度の能力削除
強さがインフレしていくドランゴンボールみたいだ。
次があるのなら∞倍を作るアリス19号とアリス20号が出てくるに違いない。