Coolier - 新生・東方創想話

七色☆恋色乙女

2008/10/22 06:26:42
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原題:カラフル☆ピュアガール

※マリアリ(ry ジャス(ry
※人によっては乙女成分を摂取してしまう可能性があるかもしれません。
※中和のためにプロテインでも用意しておいてください。
※特に問題ない方は以下へどうぞ。

※作品集60でのイチャ物とお話的な繋がりは特にないですが
※アレよりだいぶ前のことだと思ってやってください。永よりも前くらいに。




私はにぎやかなのが好きだ。
宴会とか、宴会とか……、宴会とか。
だが別に静かな空間が嫌いってわけでもない。
閑散とした真っ昼間の神社しかり、薄暗い図書館しかり。

──と言うわけで、私こと霧雨魔理沙は極めて静かなアリスの家でお茶飲んでるのであった。

その家主は私の向かいに座って黙々と針仕事。
針を踊らせているのは霧雨魔理沙の目印とも言うべき帽子だ。
私が来るなり、アリスはいつものように紅茶を淹れると、

「その帽子、ずいぶんくたびれてるわね。
 トレードマークならもう少し気を使いなさいよ」

などと、裁縫道具を取り出して至極当たり前のように繕い始めた。

カチカチと時計の音だけが響く。
先の一言以降、アリスは何もしゃべらず作業に没頭している。

厚意でしてくれてることをジャマするほどバカではないので作業風景をぼけっと眺める私。
手際よく直されていく帽子。
それは修繕というよりも、時間を巻き戻してんのかとツッコミ入れたくなるほどだ。
何となく手持ちぶさたになって、空になったカップにポットの紅茶を注ぐ。
ふわりと立ち上る湯気。
いくらか時間が経っているのに冷めた様子がない。
ポットに保温の魔法がかかっているとか。

器用なヤツだ、と思う。
アリスはたいていのことをそつなくこなす。
種々の魔法であり、家事全般であり。
これが苦手、というようなことを特に見せない。
器用貧乏などと言うヤツもいるだろうが、ここまで来ればもう器用大富豪とかそんな感じだ。

じっと見てると気取られそうなので適当に視線を巡らせる。
ふと、アリスの顔が目に入った。

人妖問わず何かと美形の多いこの界隈。
中身のことを気にしなければ、紫や幽々子は私から見ても美人に区分されるであろう。
霊夢や……たぶん、私にも年相応の愛らしさといった物は備わっている……と思う。思いたい。
だが「美少女と言ったら誰か」と問われりゃ、多分私はアリスを挙げるだろう。

透けるような白い肌。
ゆるくウェーブのかかった金の髪。
サファイアのような蒼い瞳。
均整の取れた体つき。
胸も──私と違って年相応。ちくしょう。

等々。
周囲からは「人形のよう」と評されることもあったりする。
要するに、アリスは一種作り物めいた美しさを持っていた。

……まあ、多少欲目は入ってるかもしれないが。


ぷつん、と糸を切る音。
修復を終えた帽子を回しながら漏れが無いか確かめるアリス。

おっと。
顔を見つめてたのを気取られると厄介なので、とっさにカップを口へと運ぶ。

「ねえ魔理沙。あなた、私のことどう思ってるの?」

「ぶふっ!」

お茶吹いた。
あまりに唐突な問いかけに思いっきりむせる私。

「大丈夫?」
「……ああ、けほっ。
 ったく、口を開いたかと思えばいきなり何だよ」
「ええ、最近ちょっと思うんだけど……。
 あなた、うちを喫茶店やレストランか何かと思ってるんじゃないかなって」

ぐっ、と言葉に詰まる私。
確かにここに来るときはお茶の時間、夕食時、本を借りに来るといったことがほとんどだ。
弁解のしようがないが、目的はそればかりじゃ──

「別にそれが悪いって言ってるわけじゃないわ。
 代金取らなきゃいけないほど困窮した生活送ってるわけでもなし。
 食事時に来るなら、作る量が一人分増えたところで手間に大した違いもないから」

紅茶を淹れ直し、静かに口を付けるアリス。

「私も魔法使いって言ったって、成って日の浅い元人間。
 独りであるべきなんだろうけど、無性に人恋しいときもたまにあるわ。
 そういうときに誰かいてくれるのはありがたいもの」

迷い人以外でうちに来る物好きなんてあなたくらいだしね、と付け足す。

何だよ「誰か」って。
他に来るヤツがいりゃ誰でもかまわないってのか。

「だから、あなたがうちを喫茶店と思ってるならそれはそれでかまわないわ。
 私もそう思って接するから」

そう思って、ってのは今は違うってことだろうか。
気になって聞いてみる。

「……そう言うお前はどうなんだよ。
 アリスは、私のこと、どう思ってんだ」

「好きよ。私の物にしたいわ」

「っ!! な……、なっ……!」

思ってもみなかった一言に動揺の色が隠せない。
かぁっと顔が赤くなるのを感じる。

「冗談よ」
「おっ、お前なぁっ!」

顔色ひとつ変えずにさらりと言い放たれ、さすがに激昂する。

「あなただって普段から息をするように嘘ついてるじゃない」
「ぐっ……、でもこういう冗談はタチ悪いぜ。
 マジメな話なんだろ」
「……そうね、悪かったわ。
 でも、質問に質問で返すのは──」
「アリスが答えなきゃ、私も答えないぜ」


「──ふぅ、仕方ないわね。
 あなたは──」

しばしのにらみ合い。
ため息を吐いて先にアリスが折れた。

「と──、……知り合いよ」

何か言いよどみ、わずかに顔を伏せて言うアリス。

「何だよそりゃ……。
 友達ですらない、ただの知り合いだってか……?」

何かが突き抜けたかのように、胸が痛む。

「そうよ。あなたも、霊夢も、ただの知り合い。
 私に友達なんて──いないわ」

アリスの一言一言が刃物のように突き刺さる。
今も私の顔が赤くなってるんなら、そいつは頭に来てるからだ。

「これで満足? じゃあ今度はあなたの番よ」

「ッ……! 私は……!」

何を言いたいのか、何を言えばいいのか自分でもわからない。
と言うか今の沸いたアタマじゃ何を口走るかわかったもんじゃない。
下手すりゃ感情にまかせてアリスを罵るような言葉が出かねない。

──思うが早いか、私は箒をひっ掴んでアリスの家を飛び出していた。






 くうはだん
「昇 龍 弾ッ!!」

どかっ、と背中にドロップキック(3A)が炸裂する。
……真剣な考え事してるんだからツッコミ所しかないボケはやめてくれ。
というか、わかるヤツいるのかこんなの。

「まったく、うざったいわね。
 神聖な神社で陰気を撒き散らすんじゃないわよ」

悶々と考え込んでいた私の隣に座る霊夢。
何も考えず箒をかっ飛ばしていたらいつの間にか神社に来ていたらしい。
いつもの習性というヤツか。

「ふん、仮にも神様に仕える身なら迷える子羊を導いたらどうだ」
「神様にすがるならお賽銭くらい入れてから言いなさいよ。
 だいたい悩み相談なんて牧師の仕事でしょ」

牧師ってーとアレか。頭掴んでお別れさせてくれるとか言う。
アレはダメだ。悩みより先に人生とお別れしかねん。

「でもちょうど暇してた所だし、話くらい聞いたげるわ。
 解決するかどうかはわかんないけど、一人でうじうじうなってるよりゃマシよ」

お茶を差し出し、話せとうながす霊夢。
やや不安はあるが、他に話を聞いてくれる心当たりもないし。
霊夢なら言いふらしたりもしないだろう。たぶん。

「……わかった。まあ霊夢もまったく関係ないってわけでもないだろうしな」

湯飲みを受け取った私は、先ほどの出来事を語り始めた。


アリスの家を飛び出した所まで話した私は、霊夢に尋ねる。
普通、親しく思ってない相手にこんな色々するもんなのかな、と。

「ふーん、まあアリスは誰にでも親切なところがあるからねぇ。
 あんたが引っ張ってこないと宴会にもあまり顔出さないけどさ、来たときは準備から後片付けまで手伝ってくれるもの。
 他のヤツは飲んで暴れてグースカ寝てるってのに。
 片付けが終わったら終わったで、酔い潰れたあんたを背負って送ってあげてるし。
 ずぼらで危なっかしいあんたを見てると、つい世話焼いちゃうんじゃないの?」

マジか。
宴会の翌朝、いつの間にかベッドで寝てたりするのにはそんなカラクリが。
ちゃんとパジャマに着替えてて、服は丁寧に畳んで置いてある時点で気付けという説もあるが。
……それはつまり、少なくとも下着姿くらいまではばっちり御披露しちゃってるってことかよ。

「しっかし話聞いてるとアレねー。
 あんた、アリスに迷惑かけっぱなしね。
 いつも夕食時を狙ったように押し掛けてくるとか、誰だってアタマ来るでしょ」
「う……。
 だ、だって……。何か口実が無いと、何しに来たんだって聞かれたら返答に困るじゃないか……。
 って何だよ、その顔」

ぶつぶつとつぶやく私を、未知の生物に直面したような顔で見ている霊夢。

「うあ……、忘れてた。
 あんた根は結構オトメだったっけ……」

久々だったからちょっとクラッと来たわ、と手で顔を覆う。

失礼なヤツめ。
私ほど乙女がそうそういるかってんだ。

「別にちょっと遊びに来た、でいいじゃない。
 あんたいつも何か目的持ってうちに来てんの?」
「……霊夢とはガキの頃からの付き合いだし、
 ここに来るのとは、何て言うか……その……、何か違うんだよ」

自分でもどう言えばいいのかよくわからん。

しばし半眼で私を見ていた霊夢が、やおらぽんと手を打ち

「ああ、つまりアレだ。
 惚れたんだ。アリスに。あんたが」
「ばっ! ばばばばばばか言うな! そんなわけあるか!
 そんなんじゃ……、えっと、とにかく、違うんだよ色々と!」
「どう違うのよ。
 言ってみなさいよ、ほらほら」

ええい、にやにやすんな。
肘でつつくな。
しつこい霊夢の追及に、ぽつぽつと話を始める。


最初に会ったのは霊夢と魔界に行ったとき。
自信満々に出てきたアリスを返り討ちにした、ただそれだけ。
そのときは特に何でもなかった。
ヤバげな魔道書を持ち出して仕返しに来たときは、
半ば暴走した力に振り回されてて、むしろ私よりガキだと思ったくらいだった。

再会したのは寒い春。
前とはまるで違う魔法を身に付けて現れたアリス。

魅魔様の魔法の威力に感嘆したことはあった。
パチュリーの多彩な魔法に驚いたこともあった。

でも。

──魔法に見とれたのは初めてだった。

血の滲むような努力の成果であることは想像に難くなく。
特別な才も無く、努力するしかない私は少しだけの共感と、少しだけの興味を持った。

そんなアリスが同じ魔法の森に居を構えていることを知り。
森の中で、神社の宴会で、あるいは彼女の家で、顔を合わせる機会は増えていった。


「ゴメン。やっぱ、どう聞いても初恋体験談にしか聞こえないわ。
 シラフで聞くのは結構カユいわね」

横槍を入れるように霊夢がこぼす。

「まだ肝心な部分が残ってんだよ、ったく……。
 ……なあ、霊夢。
 アリスが笑ったところ、見たことあるか?」
「はぁ? 
 ……あんたみたいなバカ笑いしないだけで、機嫌の良いときは笑ってるじゃない」

霊夢でもそんな風に思うのか。
けれど、私はそうは思えない。

「上手く言えないけど……
 あいつが他人に見せてる顔はいつも同じなんだ」

宴会で酒飲んでるとき、誰かと話してるとき、私と話してるとき。
先ほど私と話してたときも、アリスはいつものすまし顔を崩さなかった。

「ふぅん……。まあ、あんたが言うならそうなんでしょうね」

私はあんたみたいにアリスばっかり見てるわけじゃないからー、とにやにやする霊夢。
いちいち一言多いんだよコノヤロウ。

「だから、もっとアリスに近づけば……
 もう少し打ち解ければ、違う顔も見せてくれるんじゃないかなって、思ったんだ」

ほら見たことか。
やっぱり惚れた腫れたじゃなくて純粋な興味じゃないか。うん。

どうだ、誤解は解けたかと言わんばかりの晴れやかな私の顔に

「それで毎日毎日押し掛けてるってか。
 ずいぶん入れ込んでるのねー。おお、あついあつい」

霊夢は「墓穴」と書いたハンコを押してくれた。

「ああ、くそっ。もういいよ、わかったよ。
 認めりゃいいんだろアリスが気になってしょうがないよこれでいいんだろ!」

一気にまくし立て、息をついてお茶を一口。

「はぁ……、まさか恋色魔法使いが恋に悩むことになるなんてな……」
「いいんじゃないの。
 恋の魔法使いがお金に悩んだりするよりはカッコが付くでしょ」

フォローのつもりならもう少しマシに頼む。
うつむく私を何というか目尻の下がった生ぬるーい目で見ている霊夢。

「何だよその目」
「ん、温かーい目で見守ってあげようかなと。
 応援するわよー。アリスが付いてりゃ、あんたの無鉄砲も少しはおとなしくなるかもしれないし」

やべぇ。
十数年生きてきて、これほど殴りたい顔は初めて見た。

「まあとにかく、何度も顔合わせて、少しはアリスに近づいてたと思ってたんだけど……。
 そこで、あれだ」

「魔理沙も私も、ただの知り合い、か」

「好きの反対は無関心ってのはよく言ったもんだぜ。
 『嫌い』って言われるよりこたえたよ。
 ……かまって欲しいガキんちょをなだめてただけなのかな」

言いよどむ所があったにせよ、断言したのならそういう意志があるってことだろう。
何だかんだ言って私は一番近いところにいると思ってた。
それは勝手な思い込みでうぬぼれだったんだろうか。
あいつにとっちゃ里の人間やそこらの妖怪と変わりゃしないってことなのか。
考えれば考えるほど余計に落ち込んでいってしまう。

「ねえ魔理沙。
 あんたと私の共通点って何だと思う?」

ぐるぐると思考のダウンスパイラルに陥る私に問いかける霊夢。

「美少女……は違うな。
 私はともかく霊夢はありえん」
「ぶん殴ってほしいの?
 そういう上っ面じゃ私たちかぶってるとこなんか無いでしょ」

上っ面じゃない。
もっと根本的なところ……。

「……『人間』か?」
「はい、正解。
 付け足すなら『百年くらいしか生きられない人間』ね」

百年。
短い時間ではないが、永い妖怪の生と比べれば瞬きのようなものだろう。

「仮にも一番付き合いのある私たちを知り合い扱いってのは
 意図的に距離を置こうとしてるってことでしょ。
 ヘタに情が移っちゃったらキツいのはアリスだけだもの」

人間と妖怪。
考えなかったわけではない。
でも、なるべく考えないようにしていたんだろう。
私に都合の良い答えは出ないだろうから。

「アリスは私たちとの間に壁を作ってる。
 ……遠ざけてるのは私たちだけじゃないのかもしれないけど。
 あんたがこれからどうするのか知らないわ。
 でも、まずはその壁を越えなきゃ話になんないってことね」

壁。壁か。
そしてアリスは壁に囲まれた中に籠もっている。
それは私や霊夢に限らない、人妖問わず他者すべてを遠ざける閉じた世界だ。
壁を乗り越えてお姫様を外の世界へとエスコートする。
そんなのはおとぎ話の騎士の役目だ。私にゃできん。
騎士じゃないなら、私は何だ。

「くっくっ……っはははははは!
 まったく何を悩んでたんだろうな、私は」
「ちょ、ちょっと魔理沙。どうしたのよ、いきなり」

残ったお茶を飲み干し、箒を取って立ち上がる。

「ありがとな、霊夢。ちと吹っ切れた。
 博麗お悩み相談所、案外流行るかもしれないぜ」
「──そう。なら、がんばんなさい。
 私にとってもアリスは大事な友達なんだから、あんま泣かすようならぶっ飛ばすわよ」
「おっと、当方にも迎撃の用意ありだぜ。
 まあもしそうなったらお手柔らかにな」

箒にまたがり、私は空へと舞い上がった。

騎士じゃないなら、私は何だ。
そうだ、私は普通の魔法使い。
私のやることなんて一つしかないぜ。






「こんな時間に何の用?
 夕食には遅すぎるわよ」

時刻はそろそろ日付が変わりそうな頃。
マーガトロイド邸を訪ねた私に、アリスはいつもの顔でそう口にした。

「一勝負、付き合ってくれないか。
 ──確かめたいことがあるんだ」
「……ま、いいわ。
 新しいスペルの実験台にでもなってもらおうかしら」

アリスからすれば特に理由のない弾幕勝負。
あまり気乗りしない様子ではあったが、私の真剣な面持ちを見て取ったか承諾してくれた。

「よし、じゃあ早速──」
「ええ、その前に忘れ物。
 これが無いと始まらないでしょ」

ふわり、と私の頭に愛用の帽子が被さった。



操符『乙女文楽』を回避し、再び上空でアリスと対峙する私。
アリスは初手で相手の力量や、その時の調子を計る。
ならば次は私を追い立てにかかってくるはず。

「体も温まってきたし、次に行くわよ」

アリスの周囲に槍を構えた人形が十数体展開され、一斉に解き放たれる。
マジックミサイルをばらまき迎撃するも、私めがけて来たのはほんの二、三体。
中には最初からまるで別方向へ飛んでいったのもあるくらいだ。

「あら、よそ見してていいの?」
「っと!」

アリスの手から数条のレーザーが撃ち出された。
しかしこれも同様に、そのほとんどが回避するまでもない明後日の方向へ発射される。

「何だよ、狙いがバラバラじゃ……つッ!」

肩をかすめる灼熱感。
だが、今の一撃は真後ろから飛んできた。

──さっき飛んでいった人形が撃ったのか?

狙い撃ちされないように箒を走らせ、撃ってきた方に視線を飛ばす。
予想通り先ほどの人形だ。
が、槍を捨てたその手には魔法陣の輝きが。
アリスのレーザーがそれに当たるたびに、鏡のように反射され私を狙う。
そうこうしている内にレーザーの数は増え、人形は私を囲むような位置に移動していく。
私の移動を阻害するように反射と移動を繰り返す、まさに光の檻と言ったところか。

本命の一撃が来ないうちにとっとと切り返さないと致命的だ。

「まとめてやってやるぜ! 魔空『アステロイドベルト』!」

掲げた指先から全方向に撃ち出される星形の弾。
レーザーを相殺しながら人形を撃墜し──

「闇雲に撃たない方がいいわよ」

ごっ!
星弾が当たった人形がはじけ散り、無数の弾を撒き散らす!

「ちっ! 今日は凝った仕込みだな!」

至近距離で炸裂した弾をかわしきれず、手に足に細かい被弾が増えていく。
これだけじゃ決定打にならないのはアリスもわかっているはず。
次が来る!

「さあ、そろそろお終いにしましょうか。雅符『春の京人形』!」

アリスの周囲を回る人形から撃ち出された緑、青、黄色の弾幕が私に向かって殺到する。

──罠だ。

密度の薄い方へ逃げれば、アリスの思惑通りに誘導されることになる。
なら、どうする?

「私の取る手はいつも一つだぜ! 魔符『スターダストレヴァリエ』!」

全方位に撒き散らす弾幕を展開したまま、箒に魔力を注ぎ込み一気に加速!
星弾を障壁代わりにした突撃技だ。
向かい来る弾を相殺しながら、アリスへ向かってまっしぐらに突き進む。
さすがに予想外の手だったらしく、体勢を崩しながら身をかわすアリス。

「ふぅん。力任せに撃ち出すだけかと思ったら、少しは工夫した真似もできるじゃない」
「へっ、今度はそっちがあわてる番だぜ!」

アリスを通り過ぎた所で弾幕を撃ち切り、鋭く急旋回をかける。
すでに八卦炉の魔力チャージは完了。
向こうの手札が何であろうと、出力なら私の独壇場だ!

「さあ行くぜ! 私の魔砲、受けてみな!!」

射線に魔法陣を構えた数体の人形が割り込んでくるが、もう遅い。
夜空を染め上げる白光がアリスと人形をまとめて飲み込んだ。

「……ふぅ、やったぜ」

膨大な魔力を撃ち出した反動が疲労となって体を襲う。

「──相変わらず、撃った後は隙だらけね」

「ッ!」

上空から響き渡る声。
見上げれば、月を背負って浮かぶアリスの姿。
その周りでは円陣を組んだ人形が眩いばかりの閃光をたたえて。
それはさながら一枚の絵画のような。

──魔光『デヴィリーライトレイ』

ああ、やっぱりアリスの魔法は──

っと、見とれてる場合じゃない。
今回ばかりは負けるわけにゃいかないんだ。

「あいにく、切り札を取っとくくらいは学んでるぜ!」

──恋心『ダブルスパーク』

残りの魔力を八卦炉にぶち込み、夜空の月めがけて二発目を叩き付けた。



「……魔理沙、大丈夫?」

墜落して大の字になった私の元にやってくるアリス。
さすがに妖怪の体、相打ちに持ち込んだものの回復の早さまでは勝負にならないか。

「大した怪我はしてないぜ。
 ……最後のは何だ? 瞬間移動でも覚えたのかよ」

上体だけ起こして答える私。
レーザーのおかげで服がだいぶやられてしまったようだ。

「そんな大層なもんじゃないわよ。
 あなたとの弾幕勝負は、突き詰めれば対マスタースパークに尽きるわ」

ざっとした説明を始めるアリス。

「私の障壁でも一瞬なら持ちこたえられるから。
 あなたがレーザーと遊んでる間に障壁を張る人形を用意しておいて、
 追い込めば最後はマスタースパークを撃ってくるだろうから、それに合わせて展開。
 防いだ瞬間に、上空に固定しておいた人形に糸を巻き取らせて脱出したのよ。
 後は隙だらけのあなたに一発お見舞い……って所だったけど、まさかあんなの連続して撃つなんて」

負担が大きいのに無茶もいいところよ、と叱るような目で私を見る。

そうは言っても仕方ない。
アリスとの交戦は霊夢に次いで多いし、お互い魔法使いだけあって手口や癖もだいたい把握済み。
そうなると戦術で後れを取る私は、意表を突くような一手でもないと分が悪いのだ。

「──それで、確かめたかったことってのは何なの?」
「ん。やっぱりアリスの魔法は綺麗だなってこと」
「……は?」

目を点にしてあっけにとられるアリス。

「何それ、確かめたかったってそんなことなの?
 ……褒めてくれるのはいいけど、相手があなただと何だかぞっとしないわ」

アリスがしゃがみ込み、私に手を差し出す。
その手を取って──

「それと、もう一つ。昼間の話の答えだ」

ぐいっと引っ張った。

「きゃっ」

バランスを崩し、アリスの体はどさりと私の上に倒れ込んだ。

起き上がろうとする背中に手を回し、がっちりと捕まえる。
そして耳に口を寄せ、小さく囁く。

────私は、アリスが好きなんだなってこと。

ぴたりと動きの止まったアリスの頬に軽く口付ける。

「なっ! いきなり何言い出すのよ……!」

バネが跳ねるように飛び退いて、私をにらみ付ける。
頬が少し赤らんでたりするのは、多少は脈があると見ていいのだろうか。
正直、いきなりひっぱたかれることも覚悟してたくらいだ。

「何だもなにも、聞いての通り。
 お茶してるときも、弾幕してるときも、今こうしてるときでも、
 私はアリスといる時間が一番楽しい」

立ち上がり、落ちてた帽子を拾ってかぶる。
にっと笑ってみせるが、相変わらずアリスの眼はキツいままだ。

「……本気で言ってるの?」
「誰かさんと違って、私はいつでも本気がモットーだぜ」

一歩、前に進む。アリスは一歩下がる。

「……私たち、女同士よ」
「たまたま私もアリスも女だった、それだけだ。
 好きなもんは好きだからしょうがない。
 私は気にしないし、妖怪が今さら常識に囚われるもんでもないだろ。
 幻想郷はすべてを受け入れるのよ、ってな」

また一歩。アリスも一歩下がる。
その背中をどん、と木に押しとどめられる。

「あなたの言うとおり、魔理沙は人間、私は妖怪よ。
 ……私が遠ざけようとしてたのくらいわかるでしょ。
 人間は人間同士──」
「そうだな。それが自然なんだろう。
 雨が降ったら傘差すくらいに自然なことだ」

もう一歩。アリスは下がれない。
手を伸ばせば届く距離。

「でも、私は雨の中で傘を差さないようなひねくれ者だ。
 人間が妖怪を好きになったっていい。自由ってのはそういうもんだぜ」

実際、世の中には……っつーかごく近所に半妖だっているんだ。
人間と妖怪は一緒にいちゃダメなんてこたない。

「何よそれ。勝手すぎるわ……!」

「ああ、私はバカでワガママで自分勝手な魔法使いだからな。
 お前が壁を作りたいなら好きなだけ作りゃいい。
 野魔法使いは壁を壊すことしか知らないぜ」

「いずれ別れるのがわかってるのに!?
 私だけ悲しい思いをしろって言うの!?」

最後の一歩を踏み出し、ぎゅっ、とアリスの体を抱きしめる。
私より背も高いのに、その体は子供のように小さく感じた。

「なあ、アリス。別れが悲しいのは私だってわかるさ。
 でも他人と関わるのを避けても、得られるもんは後悔くらいだよ。
 私はアリスに、後悔だけはしてほしくない」

腕の中でびくっ、とアリスの体が強ばる。

「……ッ!
 そんなの、わかってる……。わかってるわよ……」

震えるようなアリスの声。

「そっか。
 ガラにもないこと言っちまった。恥ずかしいから忘れてくれ」
「……いやよ。忘れてあげない、ずっと」
「そりゃ困った。弱みが増えたかな」

抱きしめるアリスから力が抜ける。
私に体を預けるように。

「……もうちょっとだけ、ここ借りていい?
 今まで溜まってたぶん、あふれてきちゃった」
「何だったら専用席にしておくぜ。
 っと、そういやお前に泣かれると霊夢にぶっ飛ばされるんだったっけ」
「なら遠慮無く泣かせてもらうわ。
 ……ありがと、魔理沙」

両手で私の服を掴み、アリスは声を殺して泣き出した。
ぽたりぽたりと、頬を伝って落ちる涙が私の肩に染みを作っていく。
髪を梳くように頭をなでてやる。
抱く腕に力を込め、顔を見ないように目を閉じた。
アリス自身も見られたくないだろうし、私も泣いてる顔はあまり見たくなかった。
自分で泣かせたようなもんなのに我ながら虫の良いことだ。




「落ち着いたなら、そろそろ離れていいか。
 正直、私の方が限界だ」

アリスを抱きしめるなんて初めてのことであり。
これだけ密着してると、ふわふわの髪の匂いとかうっすら汗ばんだ肌の匂いとか押しつけられる体の柔らかさとか
意図せずとも五感が鋭敏に察知してしまう。
それだけで頭の中がピンク色にかき乱されてしまうのだ。

感覚の方は名残惜しさでいっぱいなのだが、頭の隅っこのたぶん理性的な部分が頑張っており。
何とか肩を押して、アリスを少し遠ざける。

「これでもかなり我慢してるんだぜ。
 さっきのも本当は唇にしたかったんだけど、さすがに了承無しじゃな」

その人の本当に大切な物は盗まない主義なのだ、私は。

「ま、そいつは先にアリスのハートをいただいてからにするぜ」

ばぁん、と胸のあたりを狙い撃つ真似をしてみる。
自分で言っててさすがにちょっと恥ずかしい。
ははは、と笑ってごまかそうとした所に──ふわっと何かが唇に触れる。

柔らかい。
甘い。
熱い。
何だこりゃ。

私のじゃない、金色の髪がさらりと頬をくすぐる。
見開いた目に映ったものを、あり得ないだろと頭の端っこが否定する。
だが、総動員した全身の感覚はこの瞬間を逃すまいと一点に集中されて。

たっぷり時間をかけて──たぶん一瞬のできごとだったんだろうけど──唇が離れる。

はっと気が付いたときには、アリスはもう背を向けて歩き出していた。

「先払いよ。
 大見得切ったんだから、ちゃんと責任持ってよね」

振り返ったアリスの笑顔は、私が初めて見るもので。
一番見たかった顔だったのは言うまでもない。

「ああ、まかせとけ」

ぐいっと帽子を深くかぶって、アリスの後を追いかける。

──こんなにやけ面、見せられるわけないだろ。





「うちに寄っていきなさいよ。
 そのボロボロの服、直してあげるから」
「そりゃ助かる。
 助かるついでに風呂も借りようかな。
 髪が泥だらけだぜ」
「はいはい。あとは何をご所望ですか、お姫様?」
「うむ。
 んじゃお茶でも……んにゃ、コーヒー淹れてもらおうかな」
「コーヒー……?
 まあ無くはないけど。珍しいわね」
「ああ、あれって夜明けに二人で飲むもんだろ?」
「何その偏った知識。あんた一応十代の女の子でしょ。
 ……ってもしかしなくても泊まっていく気?」
「服の修繕は明日ゆっくりでいいぜ」





◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「ふぅ……、さっぱりした」
魔理沙の後、私も汗を流しにお風呂へ。
ゆっくり浸かって出てみれば、貸した私のパジャマに身を包みソファーで眠る魔理沙の姿。
ってよく考えなくても、洗ったの貸しちゃったら自分のが無いじゃない。
……ワイシャツでいいや。どうせ今晩だけのことだし。

しかし強引にお泊まりイベントに持ち込んだかと思えば、私をほっぽって爆睡ってどうなのよ。
そりゃさっきの今でいきなり押し倒して来たりしようもんなら、縛って放り出すけれど。
疲れてたのはわかるが、お茶でも飲みながら軽く話すくらいの余裕は無いものか。

ふと、苦笑する。
今までお茶を淹れてやっても、自分から話すことはあまり無かったというのに。
こういう変化が関わることで得られるものだろうか。

──まあ、悪くない。

箱庭の外に連れ出された私は、多くの出会いと別れを経験するのだろう。
別れは悲しくても、そこに至るまでの出会いと思い出はそれを埋めて余りあるものになってくれるはず。

「そんなとこで寝てたら風邪引くわよ。ほんとに子供なんだから」

すやすやと眠る魔理沙の体を抱え上げ、ベッドまで連れて行く。
邪気のない安心しきった寝顔。
柔らかい頬をつついてみれば、にへらと顔をゆるめて私の名前をつぶやいたり。
夢の中にまで出張とは、私も忙しいことだ。

本当に責任持ちなさいよ。
私は結構さみしがり屋なんだぞ。


──翌朝、私は「きゃぁっ」などとおとめちっくな叫び声で目を覚ますことになる。
曰く、やっぱり同衾はまだ早いと思ったからソファーで寝てたそうだ。
……夜明けのコーヒーとか言っときながら、何なのよそれは。
シリアス物やギャグ物が多い中、カプ物を書いて踊るアホがいてもいい。
自由とはそういうことだ。ってネゴシエイターが言ってた。
つまりフリーダムかつジャスティス。ならばこれを書いたのはデスティニーであったということか。
さすが、スケコマシは魔理沙のお家芸だな!

魔理沙:72。開き直って強気なようでいてヘタレ全開乙女全開。
    さあ今夜からピロートークの練習だ。……アリスにもらった人形相手にだけど。
    夜明けのコーヒーを飲む日はまだ遠い。
    ……アレ、何でこれがあんなハッキリスケベになってんの?
アリス:78。クールなお姉さんを装っていたけど、いったん気を許したのが運の尽き。
    振り回されてペースに巻き込まれる内に、もういいや的な境地へ。
    「グランギニョル座の怪人」は個人的に一番綺麗な弾幕だと思う。
霊夢 :74。一見人の良さそうな巫女と思いきや、ツッコミが獄屠拳だったりする世紀末覇者。
    一撃必殺奥義はもちろん飛翔博麗。オーモーイーガー シュンヲ カーケーヌケテー
    周りに寄ってくるのが胡散臭いのや自己中ばっかでそろそろ悲しみを背負いたくなってきた。


妖々夢Stage3
霊夢は「夜は冷えるし視界は最悪」とか言ってる所で、魔理沙は「何だか居心地が良いぜ」とか。
そんな程度でももうキュンキュンですよ。アホか。
一方のアリスは萃とか永では「あんた」で、妖の登場時は「あなた」
その間に何があったんだヒャッホゥとか思ってたら、すぐ後にもう「あんた」呼ばわりだったりチェッ。
これがいわゆるフィルター脳である。
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コメント



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2.100こうが削除
 マリアリが俺のジャs(ry
  もうそろそろマリアリも考えようかと思った矢先にこれだよ!
 終始ニヤニヤしました。
  あとがきワロタwwwwww
11.100名前が無い程度の能力削除
とりあえず作者落ちつけwww種でも割れたか?www
あとがきに反してやたらハイクオリティなマリアリごちそうさまでした。こいつらの心に瞬間接着剤をプレゼントしたいです。
それはさておき、あとがきの数字は何ですか?Bですか?Hですか?まさかWじゃないでしょーね。
そこいら辺どうなのよ!?はっきりしなさいよ!?
あとオープンボルトの銃は投げるなよ!体に気をつけてね!
13.50名前が無い程度の能力削除
作品集60の作品は魔理沙の嫌なところとアリスの安っぽさが鼻について個人的に
駄目だったのですが、今回は抑えられていて大丈夫でした。
ただ、物語前半の内容がとある同人誌と似すぎているのが気になります。偶然?
ラストのアリスが「寿命の差」の葛藤をあっさり乗り越えている辺りも不自然かと。
更に致命的なのは、アリスは魔理沙のどこが好きなのかが書かれていないこと。
人恋しさを解消してくれる相手を求めているなら、魔理沙である必要はありませんし。
15.100名前が無い程度の能力削除
久々にマリアリ分をいただきました もう結婚しちまえよこいつらwwwww
あとがきの数字が気になるwwwww
26.100名前が無い程度の能力削除
最近の乙女アリスが多すぎてマリアリからパチュアリや咲アリに浮気してて、
これもタイトル見て まーたこのパターンか と思ったのですが。
魔理沙が乙女なのかよ!

いやぁ、なかなかいいものでした。マル。
27.100名前が無い程度の能力削除
おお、あついあつい 
これはいいニヤニヤ作品ですね
32.80名前が無い程度の能力削除
別の方と同じく、前半部分が某同人誌と酷似してるのが気になりました。
ただの偶然であることを祈るばかりです。

それにしてもマリアリは良い。想像を絶する。
やっぱ個人的に魔理沙→アリスが俺のジャスティスだと、再認識させられました。
33.100名前が無い程度の能力削除
ふむ、なかなか良いアリスだ
こういうアリスが大好きです
35.100名前が無い程度の能力削除
やっぱりわざわざ百合やるなら甘くないとね!
37.90名前が無い程度の能力削除
このまま結婚(?)しちゃった後の日常なんてものを(ry
期待しております。

同じく、葛藤を乗り越える部分をもう少しkwsk。
40.60名前が無い程度の能力削除
某PCチックですな。
45.80名前が無い程度の能力削除
乙女な魔理沙もいいものだ。
57.100名前が無い程度の能力削除
甘いぜ甘いぜ甘くて吐くぜ。
ファイナルトゥギャザーするのも時間の問題ですなw
58.100名前が無い程度の能力削除
いいなぁいいなぁこのアリスと魔理沙いいね。